(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】リコメンド装置、コンテンツ提供システム、及びリコメンド方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240730BHJP
G06Q 30/02 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/02
(21)【出願番号】P 2021051910
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】渡部 浩行
【審査官】山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103832(JP,A)
【文献】特開2005-084752(JP,A)
【文献】特開2015-177526(JP,A)
【文献】特開2014-191501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの嗜好に適すると推定する確率に関する、コンテンツが属するジャンル別の確率分布を記憶する記憶部と、
前記ユーザーにリコメンドするコンテンツを前記確率分布に基づき選択する選択部と、
前記リコメンドの採否をフィードバックした学習によって前記確率分布を更新する更新部と、
前記ユーザーのプロフィール情報を取得する取得部と、
を備え、
前記確率分布の初期設定に前記プロフィール情報が反映される、リコメンド装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記確率が所定値以下であるジャンルのコンテンツを選択候補から除外する、請求項1に記載のリコメンド装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記リコメンドするコンテンツを複数選択する、請求項1又は請求項2に記載のリコメンド装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記確率の範囲を複数のグループに分類し、少なくとも2以上の前記グループそれぞれから、前記リコメンドするコンテンツを選択する、請求項3に記載のリコメンド装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記リコメンドするコンテンツを選択するためのルールを、前記学習の進捗具合に応じて変化させる、請求項1~4のいずれか一項に記載のリコメンド装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のリコメンド装置と、
前記リコメンド装置によってリコメンドされたコンテンツが前記ユーザーに採用された場合に、前記採用されたコンテンツを要求するコンテンツ要求装置と、
前記コンテンツ要求装置からの要求に応じてコンテンツを提供するコンテンツ提供装置と、
を備える、コンテンツ提供システム。
【請求項7】
ユーザーの嗜好に適すると推定する確率に関する、コンテンツが属するジャンル別の確率分布を記憶する記憶工程と、
前記ユーザーにリコメンドするコンテンツを前記確率分布に基づき選択する選択工程と、
前記リコメンドの採否をフィードバックした学習によって前記確率分布を更新する更新工程と、
前記ユーザーのプロフィール情報を取得する取得工程と、
を備え、
前記確率分布の初期設定に前記プロフィール情報が反映される、リコメンド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツをリコメンドする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテンツをリコメンドするリコメンド装置の中には、個人の嗜好を機械学習等の利用によって学習するものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、個人の嗜好を機械学習等の利用によって学習するリコメンド装置は、リコメンド装置が使用されていかないと嗜好学習が進まないため、個人の嗜好に合ったコンテンツを提供するまでに時間を要してしまうという問題を有する。
【0005】
ここで、個人の嗜好を推論する手法として協調フィルタリング等の手法がある。個人の嗜好を推論する手法は、他の人の選択履歴、コンテンツの属性等からコンテンツの類似度を判断し、コンテンツの類似度を利用して個人の嗜好を推論するものであり、個人の嗜好そのものを学習するのものではない。したがって、個人の嗜好を推論してリコメンドを行う場合、的外れなリコメンドになるおそれがある。また、他の人の選択履歴、コンテンツの属性等からコンテンツの類似度を判断するため、有効な推論を得るには大きなデータベースが必要になる。
【0006】
また、学習を早める手法として例えばバンディットアルゴリズムのように意図的に推論結果を提示し、その提示に対するフィードバックで学習効率を高めるものがある。しかしながら、推論結果をまんべんなく提示するため、個人の嗜好に合わないコンテンツを提示することが多くなり、ユーザーの不満につながることになる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、ユーザーの満足度を向上させることができるリコメンド技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るリコメンド装置は、ユーザーの嗜好に適すると推定する確率に関する、コンテンツが属するジャンル別の確率分布を記憶する記憶部と、前記ユーザーにリコメンドするコンテンツを前記確率分布に基づき選択する選択部と、前記リコメンドの採否をフィードバックした学習によって前記確率分布を更新する更新部と、前記ユーザーのプロフィール情報を取得する取得部と、を備え、前記確率分布の初期設定に前記プロフィール情報が反映される構成(第1の構成)である。
【0009】
上記第1の構成のリコメンド装置において、前記選択部は、前記確率が所定値以下であるジャンルのコンテンツを選択候補から除外する構成(第2の構成)であってもよい。
【0010】
上記第1又は第2の構成のリコメンド装置において、前記選択部は、前記リコメンドするコンテンツを複数選択する構成(第3の構成)であってもよい。
【0011】
上記第第3の構成のリコメンド装置において、前記選択部は、前記確率の範囲を複数のグループに分類し、少なくとも2以上の前記グループそれぞれから、前記リコメンドするコンテンツを選択する構成(第4の構成)であってもよい。
【0012】
上記第1~第4いずれかの構成のリコメンド装置において、前記選択部は、前記リコメンドするコンテンツを選択するためのルールを、前記学習の進捗具合に応じて変化させる構成(第5の構成)であってもよい。
【0013】
本発明に係るコンテンツ提供システムは、上記第1~第4いずれかの構成のリコメンド装置と、前記リコメンド装置によってリコメンドされたコンテンツが前記ユーザーに採用された場合に、前記採用されたコンテンツを要求するコンテンツ要求装置と、前記コンテンツ要求装置からの要求に応じてコンテンツを提供するコンテンツ提供装置と、を備える構成(第6の構成)である。
【0014】
本発明に係るリコメンド方法は、ユーザーの嗜好に適すると推定する確率に関する、コンテンツが属するジャンル別の確率分布を記憶する記憶工程と、前記ユーザーにリコメンドするコンテンツを前記確率分布に基づき選択する選択工程と、前記リコメンドの採否をフィードバックした学習によって前記確率分布を更新する更新工程と、前記ユーザーのプロフィール情報を取得する取得工程と、を備え、前記確率分布の初期設定に前記プロフィール情報が反映される構成(第7の構成)である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、的外れなリコメンドを低減することができるので、ユーザーの満足度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るコンテンツ提供システムの概略構成例を示す図
【
図2】ユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布を例示的に示す図
【
図3】ユーザーが女性且つ20代である場合の確率分布を例示的に示す図
【
図4】リコメンド装置の初期動作を示すフローチャート
【
図6】プロフィール情報入力画面での入力完了例を示す図
【
図7】プロフィール情報入力画面での他の入力完了例を示す図
【
図9】プロフィール情報入力画面での更に他の入力完了例を示す図
【
図11】リコメンド装置のリコメンド動作を示すフローチャート
【
図16】選択候補から除外基準を
図12から変更した場合の確率分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<1.コンテンツ提供システムの構成>
図1は、実施形態に係るコンテンツ提供システムの概略構成例を示す図である。コンテンツ提供システム100は、スマートフォン1と、第1サーバ2と、第2サーバ3と、を備える。
【0019】
スマートフォン1は、ユーザーにコンテンツをリコメンドするリコメンド装置の一例である。リコメンド装置は、スマートフォン以外の電子機器であってもよい。なお、本実施形態では、スマートフォン1がユーザーに楽曲をリコメンドするが、楽曲はコンテンツの単なる一例であり、コンテンツは楽曲に限定されない。コンテンツは、楽曲、動画、Webの記事、雑誌の記事、漫画などの他にも、目的地、店舗、目的地までのルート、店舗までのルートなど個人の嗜好や癖、習慣的に行われる行動として表れる全てのものを含む。
【0020】
また、スマートフォン1は、コンテンツ要求装置の一例でもある。コンテンツ要求装置は、リコメンド装置によってリコメンドされたコンテンツがユーザーに採用された場合に、その採用されたコンテンツを要求する装置である。本実施形態では、リコメンド装置及びコンテンツ要求装置は同一の電子機器であるが、リコメンド装置及びコンテンツ要求装置はそれぞれ別個の電子機器によって実現されてもよい。
【0021】
第1サーバ2は、スマートフォン1に確率分布の初期設定を提供する。確率分布の初期設定の詳細については後述する。
【0022】
第2サーバ3は、コンテンツ提供装置の一例である。コンテンツ提供装置は、コンテンツ要求装置からの要求に応じてコンテンツを提供する装置である。
【0023】
<2.スマートフォンの構成>
スマートフォン1は、記憶部11と、制御部12と、通信部13と、操作部14と、表示部15と、音出力部16と、を備える。
【0024】
記憶部11は、システムソフトウェア、アプリケーションソフトウェア、各種データ等を記憶する。
【0025】
システムソフトウェアは、制御部12により読み出され、制御部12がスマートフォン1を制御するために実行される。
【0026】
リコメンド装置用アプリケーションソフトウェアが制御部12により読み出されて実行されると、スマートフォン1はリコメンド装置として機能する。コンテンツ要求装置用アプリケーションソフトウェアが制御部12により読み出されて実行されると、スマートフォン1はコンテンツ要求装置として機能する。リコメンド装置用アプリケーションソフトウェア及びコンテンツ要求装置用アプリケーションソフトウェアは、統合された単一のアプリケーションソフトウェアであってもよく、別々のアプリケーションソフトウェアであってもよい。
【0027】
記憶部11は、各種データの一つとして、ユーザーの嗜好に適すると推定する確率に関する、コンテンツが属するジャンル別の確率分布を記憶する。当該確率分布は、例えばデータテーブルの形式で記憶部11に記憶される。
【0028】
制御部12は、少なくとも一つのプロセッサを備えるコンピュータである。具体的には、制御部12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を備えるコンピュータである。制御部12は、記憶部11に記憶されたプログラムに基づいて情報の処理及び送受信を行い、スマートフォン1の全体を制御する。
【0029】
制御部12は、選択部12aと、更新部12bと、取得部12cと、を備える。記憶部11に記憶されたリコメンド装置用アプリケーションソフトウェアにしたがってCPUが演算処理を実行することにより、選択部12a等の制御部12の各種機能が実現される。
【0030】
選択部12aは、ユーザーにリコメンドするコンテンツを、記憶部11に記憶されている確率分布に基づき選択する。
【0031】
更新部12bは、リコメンドの採否をフィードバックした学習によって確率分布を更新する。学習のアルゴリズムとしては、例えばベイジアンネットワーク等を用いることができるが、学習のアルゴリズムは特に限定されない。
【0032】
取得部12cは、ユーザーのプロフィール情報を取得する。具体的には、取得部12cは、操作部14に対するユーザー操作によってスマートフォン1に入力されたユーザーのプロフィール情報を取得する。
【0033】
通信部13は、図示しないネットワークを介して第1サーバ2の通信部23及び第2サーバ3の通信部33と無線通信を行う。
【0034】
また、通信部13は、スマートフォン1の近くに存在する他の電子機器と近距離無線通信又は有線通信を行ってもよい。例えば、スマートフォン1が車両の車室内で使用される場合、スマートフォン1の通信部13は、車両に固定的に搭載される車載機器と近距離無線通信又は有線通信を行ってもよい。
【0035】
操作部14は、ユーザー操作を受け付け、ユーザー操作に応じた操作信号を制御部12に出力する。操作部14としては、例えばタッチパネル、ハードスイッチ等を挙げることができる。
【0036】
表示部15は、制御部12による制御に従って表示を行う。表示部15としては、例えば有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等を挙げることができる。
【0037】
音出力部16は、制御部12による制御に従って音を出力する。音出力部16としては、例えばスピーカ等を挙げることができる。
【0038】
通信部13がスマートフォン1の近くに存在する他の電子機器と近距離無線通信又は有線通信を行っている場合、操作部14、表示部15、及び音出力部16の代わりに、又は、操作部14、表示部15、及び音出力部16に加えて、上記他の電子機器の操作部、表示部、及び音出力部がスマートフォン1と連動してもよい。
【0039】
<3.第1サーバ及び第2サーバの構成>
第1サーバ2は、記憶部21と、制御部22と、通信部23と、を備える。
【0040】
制御部22は、少なくとも一つのプロセッサを備えるコンピュータである。具体的には、制御部22は、図示しないCPU、RAM、及びROMを備えるコンピュータである。制御部22は、記憶部21に記憶されたプログラムに基づいて情報の処理及び送受信を行い、第1サーバ2の全体を制御する。
【0041】
記憶部21は、確率分布データベース21aを含む。確率分布データベース21aは、ユーザーの嗜好に適すると推定する確率に関する、コンテンツが属するジャンル別の確率分布を、ユーザーのプロフィールの典型的な類型毎に登録している。当該確率分布は、例えばデータテーブルの形式で確率分布データベース21aに登録される。
【0042】
図2はユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布を例示的に示す図であり、
図3はユーザーが女性且つ20代である場合の確率分布を例示的に示す図である。確率分布データベース21aには、
図2に示す確率分布、
図3に示す確率分布、それ以外の例えばユーザーが男性且つ50代である場合の確率分布等が登録される。確率分布データベース21aに登録される確率分布は、例えば、ユーザーのプロフィールの典型的な類型毎に複数人にあらかじめアンケートを取り、そのアンケート結果に基づき作成される。また、確率分布データベースは、アンケートをとらずに、あらかじめ何かのデータを元に、任意で設定されてもよい。
【0043】
通信部23は、図示しないネットワークを介してスマートフォン1の通信部13と無線通信を行う。
【0044】
第2サーバ3は、記憶部31と、制御部32と、通信部33と、を備える。
【0045】
制御部32は、少なくとも一つのプロセッサを備えるコンピュータである。具体的には、制御部32は、図示しないCPU、RAM、及びROMを備えるコンピュータである。制御部32は、記憶部31に記憶されたプログラムに基づいて情報の処理及び送受信を行い、第2サーバ3の全体を制御する。
【0046】
記憶部31は、コンテンツデータベース31aを含む。コンテンツデータベース31aには、複数の楽曲が登録される。コンテンツデータベース31aでは、各楽曲の音データに、楽曲名、歌手名、ジャンル等の情報が付随する。なお、以下の説明において、ジャンルAに属する楽曲を「楽曲An」(nは算用数字)と表記する。ジャンルB~Gに属する楽曲も同様である。すなわち、ジャンルGに属する楽曲を「楽曲Gn」(nは算用数字)と表記する。
【0047】
通信部33は、図示しないネットワークを介してスマートフォン1の通信部13と無線通信を行う。
【0048】
<4.リコメンド装置の初期動作>
次に、リコメンド装置の初期動作について説明する。スマートフォン1において、リコメンド装置用アプリケーションソフトウェアが初めて実行されると、リコメンド装置の初期動作が行われる。なお、一例として、リコメンド装置の初期動作は本願の出願日に行われるものとする。
【0049】
図4は、リコメンド装置の初期動作を示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートが開始されると、まず表示部15は、
図5に示すプロフィール情報入力画面を表示する(ステップS10)。
【0050】
図5に示すプロフィール情報入力画面の一例では、性別及び生年月日が必須の入力項目となっており、好きなジャンル及び趣味が任意の入力項目となっている。また、
図5に示すプロフィール情報入力画面の一例では、性別、好きなジャンル、及び趣味はそれぞれ自由記入項目ではなく、プルダウン選択メニューの中から任意の一つを選ぶ選択形式になっている。
【0051】
図5に示すプロフィール情報入力画面の内の入力完了ボタンに対応するタッチパネルの領域をユーザーがタッチすることで入力が完了する。なお、必須の入力項目に情報が入力されていない状態で
図5に示すプロフィール情報入力画面の内の入力完了ボタンに対応するタッチパネルの領域をユーザーがタッチした場合には、表示部15がエラー表示を行うようにすればよい。
【0052】
制御部12は、プロフィール情報入力画面での入力が完了したか否かを判定する(ステップS20)。
【0053】
プロフィール情報入力画面での入力が完了すると、制御部12の取得部12cはプロフィール情報を取得し(ステップS30)、制御部12は確率分布の初期設定を実行し(ステップS40)、記憶部11は制御部12によって初期設定された確率分布を記憶する(ステップS50)。ステップS50の処理が終了すると、
図4に示すフローチャートの動作が終了する。
【0054】
例えば
図6に示すように、性別に男が入力され、生年月日に1985年1月1日が入力され、任意の入力項目に何も入力されていない状態で、プロフィール情報入力画面での入力が完了した場合、制御部12は、通信部13を経由して、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布の送信を第1サーバ2に要求する。第1サーバ2は、要求に応じて
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布をスマートフォン1に送信する。制御部12は、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布をそのまま、確率分布の初期設定として利用する。また、あらかじめ、スマートフォン1の内部記憶領域に複数の初期確率分布データが格納されていれば、第1サーバ2から送信しなくても、スマートフォン1の内部記憶領域から初期確率分布データを読み出してもよい。
【0055】
また、例えば
図7に示すように、性別に男が入力され、生年月日に1985年1月1日が入力され、好きなジャンルにジャンルEが入力されている状態で、プロフィール情報入力画面での入力が完了した場合、制御部12は、通信部13を経由して、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布の送信を第1サーバ2に要求する。第1サーバ2は、要求に応じて
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布をスマートフォン1に送信する。制御部12は、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布を修正して、確率分布の初期設定として利用する。
【0056】
好きなジャンルが入力された場合にどのように確率分布に反映させるかはあらかじめ決定しておき、その決定内容は記憶部11に記憶される。例えば、プロフィール情報の好きなジャンルは確率を10%高くすることをあらかじめ決定しておいたとすれば、制御部12は、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布を
図8に示す確率分布に修正して、その修正した確率分布を確率分布の初期設定として利用する。
【0057】
また、例えば
図9に示すように、性別に男が入力され、生年月日に1985年1月1日が入力され、趣味にYが入力されている状態で、プロフィール情報入力画面での入力が完了した場合、制御部12は、通信部13を経由して、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布の送信を第1サーバ2に要求する。第1サーバ2は、要求に応じて
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布をスマートフォン1に送信する。制御部12は、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布を修正して、確率分布の初期設定として利用する。
【0058】
趣味などの確率に間接的に影響する項目が入力された場合にどのように確率分布に反映させるかはあらかじめ決定しておき、その決定内容は記憶部11に記憶される。例えば、趣味がXであればジャンルAの確率を3%高くし、趣味がYであればジャンルCの確率を5%低くすることをあらかじめ決定しておいたとすれば、制御部12は、
図2に示すユーザーが男性且つ30代である場合の確率分布を
図10に示す確率分布に修正して、その修正した確率分布を確率分布の初期設定として利用する。
【0059】
つまり、スマートフォン1は、確率分布の初期設定にユーザーの初期情報が反映されるという第1の特徴を有する。これにより、学習の初期段階における的外れなリコメンドを低減することができる。また、学習の初期段階における的外れなリコメンドが低減するので、学習の収束を早めることができる。したがって、ユーザーの満足度を向上させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、任意の入力項目に応じた修正はスマートフォン1側で実行されたが、スマートフォン1が任意の入力項目の情報を第1サーバ2に送信し、上記修正は第1サーバ2側で実行され、修正後の確率分布が第1サーバ2からスマートフォン1に送信されるようにしてもよい。
【0061】
<5.リコメンド装置のリコメンド動作>
次に、リコメンド装置のリコメンド動作について説明する。上述した初期動作が終了すると、リコメンド装置のリコメンド動作の実行が可能になる。
図11は、リコメンド装置のリコメンド動作を示すフローチャートである。
【0062】
制御部12の選択部12aは、ユーザーにリコメンドするコンテンツを、記憶部11に記憶されている確率分布に基づき選択し、表示部15は、選択部12aによって選択されたコンテンツの名称等の識別情報(以降、コンテンツ名を表示例とする)を表示する(ステップS110)。なお、制御部12の選択部12aは、ユーザーにリコメンドするコンテンツを、記憶部11に記憶されている確率分布及びリコメンド装置の使用状況に基づき選択してもよい。リコメンド装置の使用状況としては、例えば、時間、曜日、場所、天候等である。リコメンド装置が車両の車室内で使用される場合には、同乗者の有無、同乗者に子供が含まれるか否か等をリコメンド装置の使用状況に含めてもよい。
【0063】
ステップS110に続くステップS120において、制御部12の更新部12bは、リコメンドの採否を確認する。つまり、制御部12の更新部12bは、選択部12aによって選択されたコンテンツ(楽曲)が選択再生されたか否かを確認する。
【0064】
そして、制御部12の更新部12bは、リコメンドの採否をフィードバックした学習によって確率分布を更新する(ステップS130)。なお、更新された確率分布は、更新前の確率分布と同様に記憶部11によって記憶される。
【0065】
ステップS130の処理が終了すると、ステップS110に戻る。リコメンド装置用アプリケーションソフトウェアが終了するまで、
図11に示すフローチャートの動作が継続する。
【0066】
本実施形態では、選択部12aは、確率が所定値以下であるジャンルのコンテンツを選択候補(選択用の表示対象)から除外する。例えば、ステップS110において選択部12aが選択処理を行う際の記憶部11に記憶されている確率分布が
図12に示す確率分布であって、上記の所定値を3%とした場合(以下、「第1の場合」という)、ジャンルGのコンテンツ及びジャンルHのコンテンツは、ユーザーにリコメンドするコンテンツになり得ない。裏を返すと、第1の場合において、学習のアルゴリズム次第で、選択部12aは、ジャンルA~Fのコンテンツを、リコメンドするコンテンツとして選択することができる。つまり、ステップS110において、
図13に示す各リコメンド表示を行うことができる。
図13に示す表示例では、例えば、表示部15が、コンテンツ名「楽曲A1」の表示、コンテンツ名「楽曲B3」の表示、・・・、コンテンツ名「楽曲F70」の表示を順次行う。そして、各表示において「再生」又は「非再生」のいずれかがユーザー操作によって選択され、「再生」選択された楽曲が順次再生される。或いは、リコメンド装置は次のような処理を行ってもよい。
図13に示す表示例では、例えば、表示部15が、コンテンツ名「楽曲A1」の表示を行う。そして、コンテンツ名「楽曲A1」の表示において、「再生」がユーザー操作によって選択された場合はコンテンツ名「楽曲A1」の楽曲が再生され、「非再生」がユーザー操作によって選択された場合は表示部15がコンテンツ名「楽曲B3」の表示を行う。そして、コンテンツ名「楽曲B3」の表示において、「再生」がユーザー操作によって選択された場合はコンテンツ名「楽曲B3」の楽曲が再生され、「非再生」がユーザー操作によって選択された場合は表示部15がコンテンツ名「楽曲C100」の表示を行う。ユーザー操作によって「非再生」が選択され続けると、最後に表示部15はコンテンツ名「楽曲F70」の表示を行う。なお、上述した
図13に示す表示例における表示の順序はあくまで一例であり、他の順序であってもよい。
【0067】
本実施形態では、スマートフォン1は、確率が所定値以下であるジャンルのコンテンツがリコメンドの選択候補から除外されるという第2の特徴を有する。これにより、的外れなリコメンドを低減することができる。また、的外れなリコメンドが低減するので、学習の収束を早めることができる。したがって、ユーザーの満足度を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、選択部12aは、リコメンドするコンテンツを複数選択し、表示部15は、選択部12aによって選択された複数のコンテンツのコンテンツ名を同時表示する。つまり、スマートフォン1は、リコメンドするコンテンツが複数選択され、リコメンドする複数のコンテンツの識別情報が同時表示されるという第3の特徴を有する。例えば、第1の場合において、選択部12aは、ジャンルA~Fのコンテンツの中から、リコメンドするコンテンツとして3つのコンテンツを選択する。つまり、ステップS110において、
図14に示すリコメンド表示画面のように、リコメンドするコンテンツのコンテンツ名を複数同時に表示することが可能となる。これにより、リコメンドの採否も複数同時に実行されることになり、学習が早まる。また、リコメンドするコンテンツが複数になるため、再生される楽曲としてユーザーに採用され易くなり、ユーザーの満足度が向上する。なお、複数のコンテンツの識別情報が同時表示される態様は、
図14に示すような1画面に限定されず、複数のコンテンツの識別情報を表示する領域が1画面に収まらない場合には、スクロールやページ送り操作などで表示画面が切り替わるようにしてすればよい。つまり、上述した同時表示とは、選択部12aによって選択された複数のコンテンツのコンテンツ名の一部又は全部を操作部14に対するユーザー操作によって一括して選択できるような表示を意味している。なお、選択部12aによって選択された複数のコンテンツのコンテンツ名を表示する順番は確率の高い順にすればよい。
図14に示す例では、コンテンツ名「楽曲F70」の楽曲の確率が最も高く、コンテンツ名「楽曲C5」の楽曲の確率が次に高く、コンテンツ名「楽曲E5」の楽曲の確率が3つの中で最も低くなっている。ただし、或る頻度で確率の低いコンテンツのコンテンツ名を優先して表示するのもユーザーにとって新鮮味のあるコンテンツをリコメンドする観点からは効果的であるため、コンテンツの確率に応じた表示順で表示してもよい。例えば、確率10%であるコンテンツのコンテンツ名を、10回中に1回は最優先で(表示画面の最も上の領域に)表示してもよい。また、例えば、最も確率が高いコンテンツのコンテンツ名を常に最優先で(表示画面の最も上の領域に)表示し、2番目に優先して表示されるコンテンツ名のコンテンツをコンテンツの確率に応じて入れ替えてもよい。また、選択部12aによって選択された複数のコンテンツのコンテンツ名を表示する順番をランダムにしてもよい。
【0069】
なお、
図14に示すリコメンド表示画面では、操作部14に対するユーザー操作によってチェックボックスCB1にチェックが入っている場合にコンテンツ名「楽曲A1」の楽曲が再生対象となり、操作部14に対するユーザー操作によってチェックボックスCB2にチェックが入っている場合にコンテンツ名「楽曲A10」の楽曲が再生対象となり、操作部14に対するユーザー操作によってチェックボックスCB3にチェックが入っている場合にコンテンツ名「楽曲B3」の楽曲が再生対象となる。
図14に示すリコメンド表示画面の状態、すなわちチェックボックスCB1及びCB2にチェックが入っている状態で、再生ボタンに対応するタッチパネルの領域をユーザーがタッチすると、コンテンツ名「楽曲A1」の楽曲及びコンテンツ名「楽曲A10」の楽曲が順次再生されることになる。
【0070】
図14に示すリコメンド表示画面では、選択部12aは、確率の高いジャンルのコンテンツのみを選択している。常に確率の高いジャンルのコンテンツがリコメンドされ、確率の低いジャンルのコンテンツがリコメンドされないと、学習が進まなくなる。また、常に確率の高いジャンルのコンテンツがリコメンドされる場合、似通ったコンテンツのリコメンドが続くことになり、ユーザーの不満につながるおそれがある。
【0071】
そこで、選択部12aは、確率の範囲を複数のグループに分類し、少なくとも2以上のグループそれぞれから、リコメンドするコンテンツを選択することが望ましい。これにより、リコメンドの採否に応じた確率の変化が生じやすくなるため、学習が早く進む。また、似通ったコンテンツのリコメンドが続くことを抑制することができるので、ユーザーの満足度が向上する。
【0072】
例えば、選択部12aは、確率の範囲を上位(30%以上)、中位(10%以上~30%未満)、下位(3%超~10%未満)、選択対象外(3%以下)に分類し、上位、中位、下位それぞれからリコメンドするコンテンツを1つずつ選択すればよい。例えば、第1の場合において、選択部12aが上位、中位、下位それぞれからリコメンドするコンテンツを1つずつ選択すると、表示部15は、例えば
図15に示すリコメンド表示画面を表示することになる。なお、選択部12aが複数のグループそれぞれから同数のコンテンツを選択するのではなく、最も確率が高いグループから選択する数を他のグループから選択する数より多くしてもよい。これにより、ユーザーの嗜好に合う可能性が高いコンテンツを多めにリコメンドすることができる。例えば、選択部12aが上位から3個のコンテンツを選択し、中位から2個のコンテンツを選択し、下位から1個のコンテンツを選択してもよい。また例えば、選択部12aが上位から2個のコンテンツを選択し、中位から1個のコンテンツを選択し、下位から1個のコンテンツを選択してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、スマートフォン1は、リコメンドするコンテンツを選択するためのルールが学習の進捗具合に応じて変化するという第4の特徴を有する。これにより、学習が進んでいることをユーザーが実感し易くなり、ユーザーの満足度が向上する。
【0074】
例えば、学習の進捗具合が一定レベルに達すると、選択部12aは、上記の所定値を3%から20%に変えるとよい(
図16参照)。学習の進捗具合は、例えば、所定範囲におけるリコメンドしたコンテンツに対する、ユーザーによって採用されたコンテンツの割合とすることができる。所定範囲としては、1時間、1日、1週間、リコメンド回数等を用いることができる。
【0075】
リコメンドするコンテンツを選択するためのルールの変化は、上記の所定値に限定されない。例えば、学習が進んでいないときは、確率の上位、中位、下位それぞれからリコメンドするコンテンツが1つずつ選択され、学習が進むと、確率の上位からリコメンドするコンテンツが3つ選択されるようにしてもよく、学習が進むと、確率の上位からリコメンドするコンテンツが2つ選択され、確率の中位からリコメンドするコンテンツが1つ選択されるようにしてもよい。つまり、学習が進むと確率分の信頼性が増すので、上位のものを多めにリコメンドするコンテンツとする方が、ユーザーの嗜好に合ったコンテンツのコンテンツ名が多めに表示されるので、より効果的・現実的な選択用の表示となる。
【0076】
また、上述した例では、学習の進捗具合が一定レベル未満と一定レベル以上の2つに区分しているが、区分数は2つ限定されることはなく、3つ以上であってもよい。
【0077】
<6.変形例>
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0078】
例えば、周期的にスマートフォン1がプロフィール情報及び確率分布のセットを第1サーバ2に送信するようにしてもよい。第1サーバ2は、取得したプロフィール情報及び確率分布のセットを、例えば確率分布データベース21aの登録内容を補正するために利用することができる。
【0079】
スマートフォン1がプロフィール情報及び確率分布のセットを第1サーバ2に送信する方式は、スマートフォン1から第1サーバ2へは、個々のリコメンドの採否等の個人情報が送られることはなく、大雑把なプロフィール情報が送られるに過ぎないため、スマートフォン1が個人情報を第1サーバ2に送信する方式と比較して個人情報保護の観点から優れている。
【0080】
上述した実施形態では、スマートフォン1は第1~第4の特徴を全て備えるが、リコメンド装置は第1~第4の特徴の少なくとも一つを備える構成であってもよい。つまり、第1~第4の特徴はそれぞれ単独での実施が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 スマートフォン
2 第1サーバ
3 第2サーバ
11、21、31 記憶部
12、22、32 制御部
12a 選択部
12b 更新部
12c 取得部
13、23、33 通信部
14 操作部
15 表示部
16 音出力部
21a 確率分布データベース
31a コンテンツデータベース
100 コンテンツ提供システム
CB1~CB3 チェックボックス