(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240730BHJP
B28B 11/24 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04G21/02 104
B28B11/24
(21)【出願番号】P 2021053409
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】東 邦和
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036546(JP,A)
【文献】特開2017-057113(JP,A)
【文献】特開2014-005716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得部と、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得部と、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御部と、
を備え、
前記パラメータ制御部は、前記管理用温度推移データの開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度に到達する時間であるピーク時間を基準に、前後に所定時間間隔で複数の区間に区切り、前記複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、前記複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、前記パラメータを制御
し、さらに、前記ピーク時間よりも前の期間である第1期間において、前記第1期間における複数の区間のうち、最初の区間である第1区間においては、前記目標温度が前記コンクリートの練り上げ直後の温度となるように前記パラメータを制御するコンクリート養生装置。
【請求項2】
前記パラメータ制御部は、前記第1区間以降の区間においては、前記目標温度が当該区間の開始時の温度となるように前記パラメータを制御する請求項
1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項3】
前記パラメータ制御部は、前記ピーク時間よりも後の期間である第2期間において、前記目標温度が前記第2期間における複数の区間のそれぞれの中心温度となるように、前記パラメータを制御する請求項
1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項4】
前記パラメータ制御部は、前記ピーク時間よりも後の期間である第2期間において、前記目標温度が前記第2期間における複数の区間のそれぞれの中点時間における温度となるように、前記パラメータを制御する請求項
1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項5】
前記パラメータ制御部は、前記ピーク時間よりも後の期間である第2期間において、前記目標温度が前記第2期間における複数の区間のそれぞれにおける前記管理用温度推移データと、当該区間の開始時間における温度軸に平行な時間線と、当該区間の終了時間における時間軸に平行な温度線と、で囲まれる領域の重心位置に相当する温度となるように、前記パラメータを制御する請求項
1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項6】
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
を含み、
前記パラメータ制御ステップにおいて、前記管理用温度推移データの開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度に到達する時間であるピーク時間を基準に、前後に所定時間間隔で複数の区間に区切り、前記複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、前記複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、前記パラメータを制御
し、さらに、前記ピーク時間よりも前の期間である第1期間において、前記第1期間における複数の区間のうち、最初の区間である第1区間においては、前記目標温度が前記コンクリートの練り上げ直後の温度となるように前記パラメータを制御するコンクリート養生方法。
【請求項7】
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記パラメータ制御ステップにおいて、前記管理用温度推移データの開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度に到達する時間であるピーク時間を基準に、前後に所定時間間隔で複数の区間に区切り、前記複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、前記複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、前記パラメータを制御
し、さらに、前記ピーク時間よりも前の期間である第1期間において、前記第1期間における複数の区間のうち、最初の区間である第1区間においては、前記目標温度が前記コンクリートの練り上げ直後の温度となるように前記パラメータを制御するコンクリート養生プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水とセメントとの化学反応によって硬化する際に熱を発生する。特に、コンクリート打設後数日は、反応が急速に進み多量の熱が発生するため、熱の影響によりコンクリートのひび割れが生じる場合がある。そのため、コンクリート打設時のひび割れ対策として、パイプクーリングによってコンクリートの温度上昇を抑制して、ひび割れの低減が図られている。パイプクーリングを行う場合、パイプの配置やパイプ径、クーリング水の流量や温度設定等について適切に管理する必要がある。
【0003】
上記技術分野において、特許文献1には、コンクリートを冷却するために、パイプを循環させる流体の温度をコンクリートの外部温度と内部温度との温度差に基づいて、自動制御する技術が開示されている(同文献請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリートの内部温度と外部温度とに基づいた温度制御を行うものであり、コンクリートの特性、例えば、コンクリートの管理用温度推移データに基づいた温度制御ではないため確実にコンクリートを冷却させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置は、
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得部と、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得部と、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御部と、
を備え、
前記パラメータ制御部は、前記管理用温度推移データの開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度に到達する時間であるピーク時間を基準に、前後に所定時間間隔で複数の区間に区切り、前記複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、前記複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、前記パラメータを制御する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生方法は、
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
を含み、
前記パラメータ制御ステップにおいて、前記管理用温度推移データの開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度に到達する時間であるピーク時間を基準に、前後に所定時間間隔で複数の区間に区切り、前記複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、前記複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、前記パラメータを制御する。
【0008】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生プログラムは、
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記パラメータ制御ステップにおいて、前記管理用温度推移データの開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度に到達する時間であるピーク時間を基準に、前後に所定時間間隔で複数の区間に区切り、前記複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、前記複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、前記パラメータを制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリートの管理用温度推移データに基づいて、コンクリートを冷却するためのパラメータ制御をするので、より確実にコンクリートを冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の動作の概略を説明するための(a)概略全体斜視図、(b)コンクリート断面模式図および(c)コンクリート平面模式図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を示すブロック図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置が取得する予備解析による管理用温度推移データの一例を示す(a)全体図、(b)部分拡大図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置が有するセンサテーブルの一例を示す図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置が有する目標温度テーブルの一例を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのコンクリート養生装置100について、
図1~
図5を用いて説明する。コンクリート養生装置100は、コンクリートをより確実に冷却させるため、コンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、コンクリートの温度を管理して、冷却するための冷媒の流量および温度を制御する装置である。まず、
図1を参照して、コンクリート養生装置100の動作の概要を説明する。
【0013】
コンクリート養生装置100は、打設したコンクリート110が従うべき管理用温度推移データのプロット曲線140を参照して、打設したコンクリート110を冷却するために、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122に対して供給する冷媒の流量および温度を制御して、コンクリート110の温度を管理する装置である。
【0014】
打設されたコンクリート110の内部に設置される冷却パイプ122は、例えば、
図1(a)に示したように、シース管123の内部に設置されている。そして、冷却パイプ122に接続した送水用ホース121を介して冷媒供給装置120から冷媒を供給すると、シース管123の内部に冷媒が満たされ、シース管123から冷媒が溢れ出す。なお、溢れ出した冷媒は、不図示の冷媒回収機構により回収され、再利用されることより、循環するようになっている。また、冷却パイプ122の設置形式は、
図1(a)および(b)においては、コンクリート110の上部から下部に向けて垂直に埋設された形式となっているが、これには限定されない。さらに、冷却パイプ122の下端は、シース管123の底面とは接触していない。なお、
図1(a)に示した管理用温度推移データのプロット曲線140においては、横軸は、時間、縦軸は、コンクリートの温度をそれぞれ示している。
【0015】
次に、
図1(b)および(c)を参照して、コンクリート110に設置される温度センサ130の配置位置について説明する。コンクリート110には、複数の温度センサ130が設置される。温度センサ130は、
図1(b)および(c)に示したように、コンクリート110の高さ方向には、中央付近および下方付近に設置されている。また、コンクリート110の表面付近(表面から約10cm)と、コンクリート110に配置された冷却パイプ122(シース管123)の近傍(冷却パイプ122近傍約10cm)と、冷却パイプ122(シース管123)同士の間の位置(中間の位置)と、に設置されている。なお、温度センサ130の配置位置はここに示した例には限定されない。
【0016】
そして、コンクリート養生装置100は、温度センサ130により計測された温度データを取得し、取得した温度と、管理用温度推移データのプロット曲線140が示す温度とを比較して、冷却パイプ122に供給する冷媒の流量および温度を制御する。なお、温度センサ130は、熱電対形式のセンサであるが、温度を計測可能なセンサであれば、いずれのセンサであってもよい。また、供給される冷媒の流量は、好ましくは、0~100(l/min)である。供給される冷媒の温度は、好ましくは、5℃~30℃であり、より好ましくは、10℃~20℃である。さらに、冷却パイプ122の径は、好ましくは、φ25~φ75であり、より好ましくは、φ25~φ50であり、冷却パイプ122の長さは、好ましくは、~100mであり、より好ましくは、~50mである。冷却パイプ122(シース管123)の配置間隔は、好ましくは、0.5m~1.2mであり、より好ましくは、0.5m~0.8mである。
【0017】
次に
図2Aおよび
図2Bを参照して、コンクリート養生装置100の構成および制御の内容について説明する。コンクリート養生装置100は、温度データ取得部201、パラメータ取得部202およびパラメータ制御部203を有する。
【0018】
温度データ取得部201は、打設後のコンクリート110の温度データを取得する。コンクリート110の温度は、コンクリート110に設置された温度センサ130により計測された温度である。コンクリート110に設置される温度センサ130の数は、複数であることが好ましい。温度センサ130は、所定間隔、例えば、数秒間隔、数分間隔でコンクリート110の温度を計測する。
【0019】
そして、温度データ取得部201は、コンクリート110に設置された温度センサ130のそれぞれと有線または無線により接続されており、計測された温度データを有線または無線を介して取得する。温度データ取得部201は、所定時間間隔、例えば、数分間隔、数時間間隔で、温度センサ130から温度データを取得する。
【0020】
パラメータ取得部202は、コンクリート110の温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122(シース管123)に供給する冷媒の流量および温度を取得する。
【0021】
ここで、冷却パイプ122に供給される冷媒は、水が代表的であるが、供給される冷媒はこれには限定されず、コンクリート110を冷却するのに適した他の液体であってもよい。また、冷却パイプ122に供給される冷媒は、液体には限定されず、例えば、ガスなどの気体であってもよい。
【0022】
冷媒供給装置120は、コンクリート養生装置100と有線接続または無線接続されており、冷媒の流量および温度は、例えば、冷媒供給装置120に設けられた流量センサおよび温度センサから取得される。パラメータ取得部202は、所定時間間隔、例えば、数分間隔、数時間間隔で、冷媒の流量および温度に関するデータを取得する。
【0023】
パラメータ制御部203は、予備解析により取得したコンクリート110が従うべき管理用温度推移データのプロット曲線140に基づいて、パラメータを制御する。より詳細には、パラメータ制御部203は、管理用温度推移データのプロット曲線140の開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度(Tp)に到達する時間であるピーク時間(tTp)を基準に、前後の期間を所定時間間隔で複数の区間に区切り、複数の区間のそれぞれの温度変化に応じて、複数の区間のそれぞれにおいて一定の目標温度を設定して、パラメータを制御する。
【0024】
パラメータ制御部203は、予備解析により取得した管理用温度推移データのプロット曲線140を、ピーク温度に到達する時間を中心に、第1期間241および第2期間242に分ける。そして、パラメータ制御部203は、ピーク時間を基準(中心)として、所定時間間隔で、第1期間241および第2期間242を複数の区間に分ける。この複数の区間は、例えば、
図2B(a)に示したように、t
0~t
1の区間(第1区間)、t
1~t
2の区間(第2区間)、t
2~t
3の区間(第3区間)のように分けられる。なお、所定時間間隔は、例えば、6時間であったり、8時間であったりするが、これらには限定されず、冷却対象となるコンクリート110の性質や規模などに応じて適宜選択される。
【0025】
そして、パラメータ制御部203は、管理用温度推移データのプロット曲線140により示される、各区間における温度変化に応じて、パラメータを制御する。パラメータ制御部203は、具体的には、ピーク温度Tpへの到達の前後において、以下のように目標温度を設定して、パラメータ(冷媒の流量および温度)を制御する。
【0026】
≪第1期間241におけるパラメータ制御≫
まず、
図2B(a)を参照して、ピーク温度T
pに到達する前の期間である、第1期間241における、パラメータの制御について説明する。パラメータ制御部203は、以下の2つの方法により、パラメータを制御する。
【0027】
<1.ピーク温度到達前の最初の区間(t0~t1)>
パラメータ制御部203は、ピーク時間tTpよりも前の期間である第1期間241において、第1期間241の複数の区間のうち、最初の区間である第1区間(t0~t1の区間)においては、コンクリート110の温度が、コンクリート110の練り上げ直後の温度Tt0となるようにパラメータ(冷媒の流量および温度)を制御する。
【0028】
<2.ピーク温度到達前の最初の区間以降の区間(t1以降の区間)>
次に、パラメータ制御部203は、第1区間以降の区間においては、各区間の開始時の温度となるようにパラメータを制御する。例えば、パラメータ制御部203は、時間t1~時間t2の区間(第2区間)においては、コンクリート110の温度が、第2区間の開始時である時間t1における温度Tt1となるように、パラメータである冷媒の流量および温度を制御する。同様に、パラメータ制御部203は、時間t2~時間t3の区間(第3区間)においては、コンクリート110の温度が、第3区間の開始時である時間t2における温度Tt2となるように、冷媒の流量および温度を制御する。パラメータ制御部203は、以降、ピーク温度に到達する時間tTpに至るまで、同様の制御を繰り返す。
【0029】
上述のように、コンクリート110の温度の上昇局面である第1期間241においては、パラメータ制御部203は、コンクリート110の温度を下げる方向へパラメータを制御する。このように、第1期間241においては、パラメータ制御部203は、コンクリート110の温度を下げる方向へパラメータを制御することにより、コンクリート110の温度の急上昇を抑制している。
【0030】
≪第2期間242におけるパラメータ制御≫
次に、
図2B(b)を参照して、ピーク温度T
pに到達した後の期間である、第2期間242における、パラメータの制御について説明する。パラメータ制御部203は、以下の3つの制御方法のいずれかの制御方法を選択してパラメータを制御する。つまり、ピーク温度T
pに到達した時間t
Tp以降の期間(第2期間242)における各区間においては、以下の3つの制御方法のいずれかに従って、冷媒の流量および温度を制御する。なお、パラメータ制御部203は、以下3つの制御方法のうちいくつかを組み合わせて、パラメータを制御してもよい。
【0031】
<1.中心温度による制御>
パラメータ制御部203は、例えば、
図2B(b)に示したように、時間t
aにおける温度T
taと、時間t
bにおける温度T
tbとの間の真ん中の温度T
C(中心温度)となるようにパラメータを制御する。
【0032】
<2.中点時間による制御>
パラメータ制御部203は、例えば、
図2B(b)に示したように、時間t
aと時間t
bとの間の真ん中の時間t
c(中点時間)における温度T
tcとなるようにパラメータを制御する。
【0033】
<3.重心温度による制御>
パラメータ制御部203は、例えば、
図2B(b)に示したように、第2期間242における複数の区間のそれぞれにおける管理用温度推移データのプロット曲線140と、当該区間の開始時間における温度軸に平行な時間線245と、当該区間の終了時間における時間軸に平行な温度線246と、で囲まれる領域244の重心位置に相当する温度となるように、パラメータを制御する。すなわち、パラメータ制御部203は、管理用温度推移データのプロット曲線140、時間線245(点線)および温度線246(点線)で囲まれる領域244の重心243(G)の温度T
Gとなるようにパラメータを制御する。つまり、領域244は、時間t
aにおいて、垂直上方に管理用温度推移データのプロット曲線140に向けて伸ばした線と、時間t
bにおいて、垂直上方に管理用温度推移データのプロット曲線140に向けて伸ばした線と管理用温度推移データのプロット曲線140とがぶつかる点から温度軸に向けて水平に伸ばした線と、管理用温度推移データのプロット曲線140とにより囲まれる、略三角形形状の領域である。
【0034】
以上のように、パラメータ制御部203は、コンクリート110の温度が下降していく局面(時間tTp以降の期間)においては、コンクリート110が急激に冷却されないように、コンクリート110の温度が徐々に、ゆっくりと下降するようにパラメータを制御する。このような制御を行うことにより、コンクリート110にひび割れが生じることを防止することが可能となる。
【0035】
ここで、予備解析は、以下の手順に従って行われ、これにより、管理用温度推移データのプロット曲線140が導出される。(1)躯体にクーリングパイプの所定の位置に配置し、一定流量で冷媒を流す設定をしたうえで、3次元FEM(Finite Element Method:有限要素法)解析を実施する。(2)FEM解析により、ひび割れ指数が一定値以上となっていることを確認する。(3)制御用の温度計を配置する位置(パイプから10cm程度が目安)における温度履歴をFEM解析結果から取り出し、それを、管理用温度推移データのプロット曲線とする。
【0036】
図3Aは、コンクリート養生装置100が有するセンサテーブル301の一例を示す図である。センサテーブル301は、温度センサID(Identifier)311に関連付けて設置位置312を記憶する。温度センサIDは、打設されたコンクリートに設置された温度センサのそれぞれを識別するための識別子である。設置位置312は、打設されたコンクリートに設置された温度センサが設置されている位置を示すデータである。
【0037】
図3Bは、コンクリート養生装置100が有する目標温度テーブル302の一例を示す図である。目標温度テーブル302は、経過時間321に関連付けて目標温度322およびセンサ温度323を記憶する。経過時間321は、コンクリートを打設してからの時間である。目標温度322は、コンクリートを打設してからの時間に応じて定められている、その時間帯における達成すべきコンクリートの温度である。センサ温度323は、打設されたコンクリートに設置されている温度センサにより計測された温度である。そして、コンクリート養生装置100は、センサテーブル301および目標温度テーブル302を参照してパラメータを制御する。
【0038】
図4を参照して、コンクリート養生装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図2Aのコンクリート養生装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0039】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。管理用温度推移データ441は、打設したコンクリート110を冷却する際に、従うべきコンクリート温度を示す。計測温度データ442は、温度センサ130により計測されたコンクリート110の温度を示すデータである。目標温度データ443は、ある時間における打設されたコンクリート110がとるべき温度を示すデータである。冷媒流量・温度444は、冷媒供給装置120から送水用ホース121を通じて冷却パイプ122に供給している冷媒の流量および温度を示すデータである。
【0040】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0041】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、センサテーブル301および目標温度テーブル302を格納する。センサテーブル301は、
図3Aに示した、温度センサID311と設置位置312との関係を管理するテーブルである。また、目標温度テーブル302は、
図3Bに示した、経過時間321と目標温度322などとの関係を管理するテーブルである。
【0042】
ストレージ450は、さらに、温度データ取得モジュール451、パラメータ取得モジュール452およびパラメータ制御モジュール453を格納する。温度データ取得モジュール451は、打設後のコンクリート110の温度データを取得するモジュールである。パラメータ取得モジュール452は、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122に供給する冷媒の流量および温度を取得するモジュールである。パラメータ制御モジュール453は、パラメータとして、冷媒の流量および温度を制御するモジュールである。これらのモジュール451~453は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム454は、コンクリート養生装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0043】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、
図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート養生装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0044】
図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート養生装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、
図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、
図2Aのコンクリート養生装置100の各機能構成を実現する。
【0045】
ステップS501において、コンクリート養生装置100は、現在の時間が、第1期間241であるか否かを判断する。第1期間241であると判断した場合(ステップS501のYES)、コンクリート養生装置100は、ステップS503へ進む。
【0046】
ステップS503において、コンクリート養生装置100は、現在の時間が、第1期間241の最初の区間(t0~t1)であるか否かを判断する。最初の区間であると判断した場合(ステップS503のYES)、コンクリート養生装置100は、ステップS505へ進む。ステップS505において、コンクリート養生装置100は、打設したコンクリート110の温度が、コンクリート110の練り上げ直後の温度となるように、冷媒の流量および温度を制御する。
【0047】
ステップS503において、最初の区間(t0~t1)でないと判断した場合(ステップS503のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS507へ進む。ステップS507において、コンクリート養生装置100は、コンクリート110の温度が、各区間の開始時の温度となるように冷媒の流量および温度を制御する。ステップ509において、第1期間241の全区間における制御が終了したか否かを判断する。全区間における制御が終了していないと判断した場合(ステップS509のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS507へ戻る。第1期間241の全区間における制御が終了したと判断した場合(ステップS509のYES)、コンクリート養生装置100は、ステップS501へ戻る。
【0048】
ステップS501において、第1期間241でないと判断した場合(ステップS501のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS511へ進む。ステップS511において、コンクリート養生装置100は、現在の時間が、第2期間242であるか否かを判断する。第2期間242であると判断した場合(ステップS511のYES)、コンクリート養生装置100は、ステップS513へ進む。ステップS513において、コンクリート養生装置100は、所定の方法に従って、冷媒の流量および温度を制御する。ステップS515において、コンクリート養生装置100は、第2期間242の全区間における制御が終了したか否かを判断する。第2期間242の全区間における制御が終了していないと判断した場合(ステップS515のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS513に戻る。そして、第2期間242の全区間における制御が終了したと判断した場合(ステップS515のYES)、コンクリート養生装置100は、処理を終了する。最後に、第1期間241でもなく(ステップS501のNO)、第2期間242でもないと判断した場合(ステップS511のNO)、コンクリート養生装置100は、パラメータ制御の処理を終了するか、または他の処理を行う。
【0049】
本実施形態によれば、打設したコンクリートが従うべき管理用温度推移データに基づいて、打設後のコンクリートを冷却するために、冷媒の流量および温度を制御するので、打設後のコンクリートにひび割れを発生させることなく、コンクリートを冷却することができる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0051】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。