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特許7529603コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラム
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  • 特許-コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20240730BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
E04G21/02 104
B28B11/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021053410
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150696
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】東 邦和
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036546(JP,A)
【文献】特開2018-178377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
B28B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得部と、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得部と、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき第1管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御部と、
を備え、
前記パラメータ制御部は、
前記パラメータを制御した結果、前記第1管理用温度推移データにおいてピーク温度に到達した時点の前記コンクリートの実測温度データが、前記第1管理用温度推移データのピーク温度よりも高温となった場合、前記第1管理用温度推移データの少なくとも前記ピーク温度以降の前記第1管理用温度推移データについて、前記実測温度データの実測ピーク温度を基準として、前記第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線と同一曲線形状となるように前記第1管理用温度推移データを前記実測ピーク温度に向けてシフトさせることにより、前記コンクリートが従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する管理用温度推移データ生成部をさらに有するコンクリート養生装置。
【請求項2】
前記パラメータ制御部は、前記コンクリートの冷却期間を前記第2管理用温度推移データに基づいて、延長する請求項1に記載のコンクリート養生装置。
【請求項3】
前記パラメータ制御部は、生成された前記第2管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御する請求項1または2に記載のコンクリート養生装置。
【請求項4】
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき第1管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
を含み、
前記パラメータ制御ステップにおいて、
前記パラメータを制御した結果、前記第1管理用温度推移データにおいてピーク温度に到達した時点の前記コンクリートの実測温度データが、前記第1管理用温度推移データのピーク温度よりも高温となった場合、前記第1管理用温度推移データの少なくとも前記ピーク温度以降の前記第1管理用温度推移データについて、前記実測温度データの実測ピーク温度を基準として、前記第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線と同一曲線形状となるように前記第1管理用温度推移データを前記実測ピーク温度に向けてシフトさせることにより、前記コンクリートが従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する管理用温度推移データ生成ステップをさらに含むコンクリート養生方法
【請求項5】
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき第1管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記パラメータ制御ステップにおいて、
前記パラメータを制御した結果、前記第1管理用温度推移データにおいてピーク温度に到達した時点の前記コンクリートの実測温度データが、前記第1管理用温度推移データのピーク温度よりも高温となった場合、前記第1管理用温度推移データの少なくとも前記ピーク温度以降の前記第1管理用温度推移データについて、前記実測温度データの実測ピーク温度を基準として、前記第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線と同一曲線形状となるように前記第1管理用温度推移データを前記実測ピーク温度に向けてシフトさせることにより、前記コンクリートが従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する管理用温度推移データ生成ステップをさらにコンピュータに実行させるコンクリート養生プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生装置、コンクリート養生方法およびコンクリート養生プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、水とセメントとの化学反応によって硬化する際に熱を発生する。特に、コンクリート打設後数日は、反応が急速に進み多量の熱が発生するため、熱の影響によりコンクリートのひび割れが生じる場合がある。そのため、コンクリート打設時のひび割れ対策として、パイプクーリングによってコンクリートの温度上昇を抑制して、ひび割れの低減が図られている。パイプクーリングを行う場合、パイプの配置やパイプ径、クーリング水の流量や温度設定等について適切に管理する必要がある。
【0003】
上記技術分野において、特許文献1には、コンクリートを冷却するために、パイプを循環させる流体の温度をコンクリートの外部温度と内部温度との温度差に基づいて、自動制御する技術が開示されている(同文献請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-89357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、コンクリートの内部温度と外部温度とに基づいた温度制御を行うものであり、コンクリートの特性、例えば、コンクリートの管理用温度推移データに基づいた温度制御ではないため確実にコンクリートを冷却させることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生装置は、
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得部と、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得部と、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき第1管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御部と、
を備え、
前記パラメータ制御部は、
前記パラメータを制御した結果、前記第1管理用温度推移データにおいてピーク温度に到達した時点の前記コンクリートの実測温度データが、前記第1管理用温度推移データよりも高温となった場合、前記第1管理用温度推移データの少なくとも前記ピーク温度以降の前記第1管理用温度推移データについて、前記実測温度データの実測ピーク温度を基準として、前記第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線と同一曲線形状となるように前記第1管理用温度推移データを前記実測ピーク温度に向けてシフトさせることにより、前記コンクリートが従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する管理用温度推移データ生成部をさらに有する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生方法は、
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき第1管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
を含み、
前記パラメータ制御ステップにおいて、
前記パラメータを制御した結果、前記第1管理用温度推移データにおいてピーク温度に到達した時点の前記コンクリートの実測温度データが、前記第1管理用温度推移データよりも高温となった場合、前記第1管理用温度推移データの少なくとも前記ピーク温度以降の前記第1管理用温度推移データについて、前記実測温度データの実測ピーク温度を基準として、前記第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線と同一曲線形状となるように前記第1管理用温度推移データを前記実測ピーク温度に向けてシフトさせることにより、前記コンクリートが従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する管理用温度推移データ生成ステップをさらに含む。
【0008】
さらに、上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート養生プログラムは、
打設後のコンクリートの温度データを取得する温度データ取得ステップと、
前記コンクリートの温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、前記コンクリートの内部に設置された冷却パイプに供給する冷媒の流量および温度を取得するパラメータ取得ステップと、
予備解析により取得した前記コンクリートが従うべき第1管理用温度推移データに基づいて、前記パラメータを制御するパラメータ制御ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記パラメータ制御ステップにおいて、
前記パラメータを制御した結果、前記第1管理用温度推移データにおいてピーク温度に到達した時点の前記コンクリートの実測温度データが、前記第1管理用温度推移データよりも高温となった場合、前記第1管理用温度推移データの少なくとも前記ピーク温度以降の前記第1管理用温度推移データについて、前記実測温度データの実測ピーク温度を基準として、前記第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線と同一曲線形状となるように前記第1管理用温度推移データを前記実測ピーク温度に向けてシフトさせることにより、前記コンクリートが従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する管理用温度推移データ生成ステップをさらにコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリートの管理用温度推移データに基づいて、コンクリートを冷却するためのパラメータ制御をするので、より確実にコンクリートを冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の動作の概略を説明するための(a)概略全体斜視図、(b)コンクリート断面模式図および(c)コンクリート平面模式図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の構成を示すブロック図である。
図2B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置が取得する予備解析による管理用温度推移データの一例を示す図である。
図3A】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置が有するセンサテーブルの一例を示す図である。
図3B】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置が有するシフト量テーブルの一例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るコンクリート養生装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのコンクリート養生装置100について、図1図5を用いて説明する。コンクリート養生装置100は、打設したコンクリート110が従うべき管理用温度推移データのプロット曲線140を参照して、打設したコンクリート110を冷却するために、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122に対して供給する冷媒の流量および温度を制御して、コンクリート110の温度を管理する装置である。
【0013】
打設されたコンクリート110の内部に設置される冷却パイプ122は、例えば、図1(a)に示したように、シース管123の内部に設置されている。そして、冷却パイプ122に接続した送水用ホース121を介して冷媒供給装置120から冷媒を供給すると、シース管123の内部に冷媒が満たされ、シース管123から冷媒が溢れ出す。なお、溢れ出した冷媒は、不図示の冷媒回収機構に回収され、再利用されることにより、循環するようになっている。また、冷却パイプ122の設置形式は、図1(a)および(b)においては、コンクリート110の上部から下部に向けて垂直に埋設された形式となっているが、これには限定されない。さらに、冷却パイプ122の下端は、シース管123の底面とは接触していない。なお、図1(a)に示した管理用温度推移データのプロット曲線140においては、横軸は、時間、縦軸は、コンクリートの温度をそれぞれ示している。
【0014】
次に、図1(b)および(c)を参照して、コンクリート110に設置される温度センサ130の配置位置について説明する。コンクリート110には、複数の温度センサ130が設置される。温度センサ130は、図1(b)および(c)に示したように、コンクリート110の高さ方向には、中央付近および下方付近に設置されている。また、コンクリート110の表面付近(表面から約10cm)と、コンクリート110に配置された冷却パイプ122(シース管123)の近傍(冷却パイプ122近傍約10cm)と、冷却パイプ122(シース管123)同士の間の位置(中間の位置)と、に設置されている。なお、温度センサ130の配置位置はここに示した例には限定されない。
【0015】
そして、コンクリート養生装置100は、温度センサ130により計測された温度データを取得し、取得した温度と、管理用温度推移データのプロット曲線140が示す温度とを比較して、冷却パイプ122に供給する冷媒の流量および温度を制御する。なお、温度センサ130は、熱電対形式のセンサであるが、温度を計測可能なセンサであれば、いずれのセンサであってもよい。また、供給される冷媒の流量は、好ましくは、0~100(l/min)である。供給される冷媒の温度は、好ましくは、5℃~30℃であり、より好ましくは、10℃~20℃である。さらに、冷却パイプ122の径は、好ましくは、φ25~φ75であり、より好ましくは、φ25~φ50であり、冷却パイプ122の長さは、好ましくは、~100mであり、より好ましくは、~50mである。冷却パイプ122(シース管123)の配置間隔は、好ましくは、0.5m~1.2mであり、より好ましくは、0.5m~0.8mである。
【0016】
次に図2Aおよび図2Bを参照して、コンクリート養生装置100の構成および制御の内容について説明する。コンクリート養生装置100は、温度データ取得部201、パラメータ取得部202およびパラメータ制御部203を有する。パラメータ制御部203は、さらに、管理用温度推移データ生成部231を有する。
【0017】
温度データ取得部201は、打設後のコンクリート110の温度データを取得する。コンクリート110の温度は、コンクリート110に設置された温度センサ130により計測された温度である。コンクリート110に設置される温度センサ130の数は、複数であることが好ましい。温度センサ130は、所定間隔、例えば、数秒間隔、数分間隔でコンクリート110の温度を計測する。
【0018】
そして、温度データ取得部201は、コンクリート110に設置された温度センサ130のそれぞれと有線または無線により接続されており、計測された温度データを有線または無線を介して取得する。温度データ取得部201は、所定時間間隔、例えば、数分間隔、数時間間隔で、温度センサ130から温度データを取得する。
【0019】
パラメータ取得部202は、コンクリート110の温度を管理して、冷却するために、パラメータとして、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122(シース管123)に供給する冷媒の流量および温度と、を取得する。
【0020】
ここで、冷却パイプ122に供給される冷媒は、水が代表的であるが、供給される冷媒はこれには限定されず、コンクリート110を冷却するのに適した他の液体であってもよい。また、冷却パイプ122に供給される冷媒は、液体には限定されず、例えば、ガスなどの気体であってもよい。
【0021】
冷媒供給装置120は、コンクリート養生装置100と有線接続または無線接続されており、冷媒の流量および温度は、例えば、冷媒供給装置120に設けられた流量センサおよび温度センサから取得される。パラメータ取得部202は、所定時間間隔、例えば、数分間隔、数時間間隔で、冷媒の流量および温度に関するデータを取得する。
【0022】
パラメータ制御部203は、予備解析により取得したコンクリート110が従うべき管理用温度推移データのプロット曲線140(第1管理用温度推移データ)に基づいて、パラメータを制御する。パラメータ制御部203は、例えば、管理用温度推移データのプロット曲線140の開始時間から終了時間までの期間を、ピーク温度Tに到達する時間であるピーク時間tTpを基準に、前後の期間を所定時間間隔で複数の区間に区切り、複数の区間のそれぞれの温度特性に応じて、パラメータを制御する。
【0023】
そして、パラメータ制御部203の管理用温度推移データ生成部231は、パラメータを制御した結果、第1管理用温度推移データにおいてピーク温度Tに到達した時点のコンクリート110の実測温度データが、第1管理用温度推移データのピーク温度Tよりも高温となった場合、第1管理用温度推移データの少なくともピーク温度T以降の第1管理用温度推移データについて、実測温度データの実測ピーク温度(Tp2)を基準として、第1管理用温度推移データをプロットした場合に得られる曲線(プロット曲線140)と同一曲線形状となるように第1管理用温度推移データを実測ピーク温度(Tp2)に向けてシフトさせることにより、コンクリート110が従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成する。つまり、管理用温度推移データ生成部231は、管理用温度推移データのプロット曲線140においてピーク温度Tに到達するまでの間の、温度センサ130から取得した温度データ(実測温度データ)のプロット曲線250が、管理用温度推移データのプロット曲線140が示す温度よりも高温となった場合(例えば、5℃)、管理用温度推移データのプロット曲線140のピーク温度Tをプロット曲線250のピーク温度Tp2(実測ピーク温度)に合致させるようにシフトさせることにより、コンクリート110が従うべき新たな管理用温度推移データのプロット曲線251(第2管理用温度推移データ)を生成する。このように、プロット曲線140をシフトさせることにより、プロット曲線140と同一曲線形状のプロット曲線251を得ることが可能となる。
【0024】
なお、温度データのプロット曲線250は、温度センサ130から取得した温度データを、管理用温度推移データのプロット曲線140と同じグラフ上にプロットしたものであり、コンクリート110の温度の実測値を示している。つまり、プロット曲線250は、実測温度曲線を示している。
【0025】
このように、管理用温度推移データのプロット曲線140を高温側(実測ピーク温度T)に向けてシフトさせると、結果として、最終的な冷却温度である目標冷却温度Tに到達するまでの時間が、時間tから時間te2へと延長される。つまり、管理用温度推移データ生成部231により、新たな管理用温度推移データのプロット曲線251を生成させると、冷却の終了時間が、当初の管理用温度推移データのプロット曲線140で示された終了時間である時間tよりも長くなる(時間te2)。すなわち、プロット曲線250が高温となっているため、つまり、コンクリート110の温度が、当初の想定よりも高くなっており、そのため、コンクリート110を冷却させるのにより多くの時間が必要となる。これにより、冷却の終了時間を当初想定していた時間tよりも、延長することにより(時間te2)、コンクリート110を確実に冷却できるようにしている。
【0026】
つまり、プロット曲線250が高温となった場合に、当初予定していた終了時間である時間tに合わせてコンクリート110を冷却しようとすると、コンクリート110を急激に冷却しなければならず、コンクリート110にひび割れ等が発生する可能性が高まる。そのため、パラメータ制御部203は、冷却期間は、当初の想定よりも長くなるが、ひび割れ等を発生させずにコンクリート110を確実に冷却させるために、冷却に要する時間(冷却期間)を延長して(時間t→時間te2)、これに対処している。
【0027】
上述したように、パラメータ制御部203は、管理用温度推移データのプロット曲線140をシフトさせて得られる新たな管理用温度推移データのプロット曲線251に従って、冷媒の流量および温度を制御して、コンクリート110を冷却させる。
【0028】
ここで、予備解析は、以下の手順に従って行われ、これにより、管理用温度推移データのプロット曲線140が導出される。(1)躯体にクーリングパイプの所定の位置に配置し、一定流量で冷媒を流す設定をしたうえで、3次元FEM(Finite Element Method:有限要素法)解析を実施する。(2)FEM解析により、ひび割れ指数が一定値以上となっていることを確認する。(3)制御用の温度計を配置する位置(パイプから10cm程度が目安)における温度履歴をFEM解析結果から取り出し、それを、管理用温度推移データのプロット曲線とする。
【0029】
図3Aは、コンクリート養生装置100が有するセンサテーブル301の一例を示す図である。センサテーブル301は、温度センサID(Identifier)311に関連付けて設置位置312を記憶する。温度センサIDは、打設されたコンクリートに設置された温度センサのそれぞれを識別するための識別子である。設置位置312は、打設されたコンクリートに設置された温度センサが設置されている位置を示すデータである。
【0030】
図3Bは、コンクリート養生装置100が有するシフト量テーブル302の一例を示す図である。シフト量テーブル302は、経過時間321に関連付けて温度プロファイル322、目標冷却温度323およびシフト量324を記憶する。経過時間321は、コンクリート110を打設してからの時間を表す。温度プロファイル322は、コンクリート110の温度の実測値である。目標冷却温度323は、コンクリート110の冷却において、コンクリート110の温度が目指すべき温度を示す。シフト量324は、コンクリート110の温度の実測値と目標冷却温度323との差分から導き出される、管理用温度推移データのプロット曲線140をシフトさせる際の移動量を示す。そして、コンクリート養生装置100は、センサテーブル301およびシフト量テーブル302を参照して、新たな管理用温度推移データのプロット曲線251を生成する。
【0031】
図4を参照して、コンクリート養生装置100のハードウェア構成について説明する。CPU(Central Processing Unit)410は、演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで図2Aのコンクリート養生装置100の各機能構成を実現する。CPU410は複数のプロセッサを有し、異なるプログラムやモジュール、タスク、スレッドなどを並行して実行してもよい。ROM(Read Only Memory)420は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース430は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU410は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース430は、CPU410とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)440の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM440とストレージ450との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、CPU410は、RAM440にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU410は、処理結果をRAM440に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース430やDMACに任せる。
【0032】
RAM440は、CPU410が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM440には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する記憶領域が確保されている。計測温度データ441は、打設後のコンクリート110の温度の計測データを示す。目標冷却温度データ442は、管理用温度推移データのプロット曲線140から導出される任意時間における目指すべきコンクリート110の温度のデータである。シフト量データ443は、ピーク温度Tp2の実測値と管理用温度推移データのプロット曲線140におけるピーク温度Tとの差分から導出される、管理用温度推移データのプロット曲線140をシフトすべき量を示すデータである。冷媒流量・温度444は、コンクリート110を冷却するために供給される冷媒の流量および温度に関するデータである。
【0033】
送受信データ445は、ネットワークインタフェース430を介して送受信されるデータである。また、RAM440は、各種アプリケーションモジュールを実行するためのアプリケーション実行領域446を有する。
【0034】
ストレージ450には、データベースや各種パラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ450は、センサテーブル301およびシフト量テーブル302を格納する。センサテーブル301は、図3Aに示した、温度センサID311と設置位置312との関係を管理するテーブルである。また、シフト量テーブル302は、図3Bに示した、経過時間321とシフト量324などとの関係を管理するテーブルである。
【0035】
ストレージ450は、さらに、温度データ取得モジュール451、パラメータ取得モジュール452、パラメータ制御モジュール453および管理用温度推移データ生成モジュール454を格納する。温度データ取得モジュール451は、打設後のコンクリート110の温度データを取得するモジュールである。パラメータ取得モジュール452は、コンクリート110の内部に設置された冷却パイプ122に供給する冷媒の流量および温度を取得するモジュールである。パラメータ制御モジュール453は、パラメータとして、冷媒の流量および温度を制御するパラメータである。管理用温度推移データ生成モジュール454は、コンクリート110の温度データのプロット曲線が、管理用温度推移データのプロット曲線140よりも高温となっている場合、管理用温度推移データのプロット曲線140のピーク温度Tpをシフトさせて、コンクリート110が従うべき新たな第2管理用温度推移データを生成するモジュールである。これらのモジュール451~454は、CPU410によりRAM440のアプリケーション実行領域446に読み出され、実行される。制御プログラム455は、コンクリート養生装置100の全体を制御するためのプログラムである。
【0036】
入出力インタフェース460は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース460には、表示部461、操作部462、が接続される。また、入出力インタフェース460には、さらに、記憶媒体464が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ463や、音声入力部であるマイク(図示せず)、あるいは、GPS位置判定部が接続されてもよい。なお、図4に示したRAM440やストレージ450には、コンクリート養生装置100が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0037】
図5に示したフローチャートを参照して、コンクリート養生装置100の処理手順について説明する。このフローチャートは、図4のCPU410がRAM440を使用して実行し、図2Aのコンクリート養生装置100の各機能構成を実現する。
【0038】
ステップS501において、コンクリート養生装置100は、管理用温度推移データのプロット曲線140(第1管理用温度推移データ)に従って、打設後のコンクリート110の冷却のために供給する冷媒の流量および温度を制御し、制御の結果得られる、コンクリート110の温度の実測値を温度のプロット曲線250として計測する。ステップS503において、コンクリート養生装置100は、経過時間がピーク温度Tを示す時間であるピーク時間tTpに到達したか否かを判断する。ピーク時間tTpに到達していないと判断した場合(ステップS503のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS501へ戻る。ピーク時間tTpに到達したと判断した場合(ステップS503のYES)、コンクリート養生装置100は、ステップS505へ進む。
【0039】
ステップS505において、コンクリート養生装置100は、打設したコンクリート110の温度データのプロット曲線250が、管理用温度推移データのプロット曲線140に対して高温となっているか否かを判断する。高温となっていると判断した場合(ステップS505のYES)、コンクリート養生装置100は、ステップS507へ進む。ステップS507において、コンクリート養生装置100は、管理用温度推移データのプロット曲線140のピーク温度Tをプロット曲線250のピーク温度Tp2にシフトさせて、コンクリート110が従うべき新たな管理用温度推移データのプロット曲線251を生成する。ステップS509において、コンクリート養生装置100は、新たな管理用温度推移データのプロット曲線251に従って、供給すべき冷媒の流量および温度を制御する。ステップS511において、コンクリート養生装置100は、時間te2(終了時間)に到達したか否かを判断する。時間te2に到達していないと判断した場合(ステップS511のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS509に戻る。時間te2に到達していると判断した場合(ステップS511のYES)、コンクリート養生装置100は、処理を終了する。
【0040】
また、高温となっていないと判断した場合(ステップS505のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS513へ進む。ステップS513において、コンクリート養生装置100は、管理用温度推移データのプロット曲線140に従って、打設後のコンクリート110に供給すべき冷媒の流量および温度を制御する。ステップS515において、コンクリート養生装置100は、時間tに到達したか否かを判断する。時間tに到達していないと判断した場合(ステップS515のNO)、コンクリート養生装置100は、ステップS513に戻る。時間tに到達したと判断した場合(ステップS515のYES)、コンクリート養生装置100は、処理を終了する。
【0041】
本実施形態によれば、打設したコンクリートの温度データのが、当初の管理用温度推移データに対して高温となっている場合であっても、当初の管理用温度推移データのピーク温度をプロット曲線のピーク温度に合わせるようにシフトさせるので、コンクリートにひび割れ等を生じさせず、確実に冷却させることができる。
【0042】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0043】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5