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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】無線通信装置および車両
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20240730BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240730BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
H01Q21/28
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021061934
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157613
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩延
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 経明
(72)【発明者】
【氏名】川崎 宏記
(72)【発明者】
【氏名】中川 博人
(72)【発明者】
【氏名】池田 悟
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149612(JP,A)
【文献】特表2019-505119(JP,A)
【文献】特開2018-101956(JP,A)
【文献】特開2011-035652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 1/32
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部のネットワークと無線通信を行う通信モジュールと、
前記通信モジュールに接続された第一のアンテナと、を有し、
前記車両のルーフパネルとルーフライニングとの間の空間収納れ、
前記ルーフパネルには切り欠きが設けられており、前記ルーフライニングの上に、アースに接続された導電体が配置され、前記導電体の上に前記通信モジュール及び前記第一のアンテナが装着されて、前記通信モジュール及び前記第一のアンテナの上方に配置された樹脂製のルーフパネルカバーによって前記切り欠きが塞がれる、
無線通信装置。
【請求項2】
前記通信モジュールは、V2X通信によって前記無線通信を行う、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
V2X通信用の外部アンテナである第二のアンテナを接続するポートをさらに有する、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第二のアンテナは、前記車両のフロントウインドウ上方に配置される、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記車両に搭載された電子制御モジュールであって、V2X通信を利用した車両機能を提供する電子制御モジュールが行う通信を中継する、
請求項からのいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記通信モジュールは、セルラ通信によって前記車両の外部ネットワークとの間で無線通信をさらに行う、
請求項からのいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
自装置の位置情報を発信する機能を実行する、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
測位衛星から送信された信号を受信する第三のアンテナをさらに含む、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記第三のアンテナが、前記車両の前記ルーフパネルと前記ルーフライニングとの間の空間収納されて、前記導電体の上に装着される、
請求項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
外部のネットワークと無線通信を行う通信モジュールと、
前記通信モジュールに接続された第一のアンテナと、
を有する無線通信装置を、ルーフパネルとルーフライニングとの間の空間収納
前記ルーフパネルには切り欠きが設けられており、前記ルーフライニングの上に、アースに接続された導電体を配置し、前記導電体の上に前記通信モジュール及び前記第一のアンテナを装着して、前記通信モジュール及び前記第一のアンテナの上方に配置された樹脂製のルーフパネルカバーによって前記切り欠きが塞がれてなる車両。
【請求項11】
前記通信モジュールは、V2X通信によって前記無線通信を行う、
請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記無線通信装置は、V2X通信用の外部アンテナである第二のアンテナを接続するポートをさらに有する、
請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記第二のアンテナは、前記車両のフロントウインドウ上方に配置される、
請求項12に記載の車両。
【請求項14】
V2X通信を利用した車両機能を提供する電子制御モジュールをさらに含み、
前記無線通信装置は、前記電子制御モジュールが行う通信を中継する、
請求項11から13のいずれか1項に記載の車両。
【請求項15】
前記通信モジュールは、セルラ通信によって前記車両の外部ネットワークとの間で無線通信をさらに行う、
請求項11から14のいずれか1項に記載の車両。
【請求項16】
前記無線通信装置は、自装置の位置情報を発信する機能を実行する、
請求項15に記載の車両。
【請求項17】
測位衛星から送信された信号を受信する第三のアンテナをさらに含む、
請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記第三のアンテナが、前記車両の前記ルーフパネルと前記ルーフライニングとの間の空間収納されて、前記導電体の上に装着される、
請求項17に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車載されたコンピュータが無線通信を行うシステムが普及している。これに関連し、例えば、特許文献1には、車載された通信アンテナの配置位置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-130115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、無線信号の伝送効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施形態の一様態は、
車両の外部のネットワークと無線通信を行う通信モジュールと、前記通信モジュールに接続された第一のアンテナと、を有し、前記車両のルーフパネルに近接した箇所に装着される、無線通信装置である。
【0006】
また、本開示の他の様態は、
外部のネットワークと無線通信を行う通信モジュールと、前記通信モジュールに接続された第一のアンテナと、を有する無線通信装置を、前記車両のルーフパネルに近接した箇所に装着してなる車両である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、無線信号の伝送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における車両システムの構成の一例を示す概略図。
図2】DCMおよび車両コンポーネントの構成の一例を示す概略図。
図3】DCMが有する機能構成の一例を概略的に示すブロック図。
図4】DCMのハードウェア外観図。
図5】第一の実施形態におけるDCMの配置位置を説明する図。
図6】DCMの配置位置を説明する断面図。
図7】車両の屋根の構造を示した斜視図。
図8】第二の実施形態におけるDCMの配置位置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
通信端末を搭載する車両が増加している。また、近年、車両機能の向上に伴い、通信データ量が増大する傾向があり、通信の効率を最大化することが求められている。
【0010】
本開示の実施形態に係る無線通信装置は、車両の外部のネットワークと無線通信を行う通信モジュールと、前記通信モジュールに接続された第一のアンテナと、を有し、車両のルーフパネルに近接した箇所に装着されることを特徴とする。
【0011】
無線通信装置は、アンテナを介して無線信号の入出力を行う。アンテナは、車両の外部が見通せる場所(例えば、フロントウインドウ付近)に配置される。特に、直進性が高い高周波数帯の電波を利用する無線通信装置においては、地上高を確保するため、アンテナを車両の上部(例えば、屋根付近)に配置する場合が多い。
【0012】
しかし、通信モジュールが格納された装置の本体は通常、エンジンルームやインストルメントパネルの内部に配置されるため、アンテナを車両の上部に配置した場合、同軸ケーブルによって、装置の本体とアンテナとを接続する必要が生じる。これにより、コストの上昇や利得の低下といった課題が発生しうる。
これに対応するため、本開示に係る無線通信装置では、通信モジュールとアンテナの双方を、車両のルーフパネルの近傍に配置する。これにより、アンテナの地上高を確保するとともに、アンテナと通信モジュールとの距離を最小化することができる。
なお、車両の外部のネットワークとは、車々間通信や路車間通信といった、直接接続によるネットワーク(V2Xネットワーク等)を含む。
【0013】
また、前記無線通信装置と、前記第一のアンテナが、前記車両のルーフパネルとルーフライニングの間に装着されることを特徴としてもよい。
ルーフパネルとは、車両の屋根を構成する部材である。ルーフパネルは、車両の屋根を構成するものであれば、その材質等は限定されない。例えば、鋼板であってもよいし、樹脂パネル等であってもよい。
また、ルーフライニングとは、車両の屋根部分に配置される内装材である。
【0014】
また、前記通信モジュールは、V2X通信によって前記無線通信を行うことを特徴としてもよい。
本開示に係る無線通信装置は、高周波数帯の電波を利用するV2X通信を行う装置に好適に適用することができる。
【0015】
また、前記無線通信装置は、V2X通信用の外部アンテナである第二のアンテナを接続するポートをさらに有することを特徴としてもよい。
また、前記第二のアンテナは、前記車両のフロントウインドウ上方に配置されることを特徴としてもよい。
【0016】
高周波数帯の電波を利用するV2X通信機においては、指向性を確保するために外部アンテナを接続するケースがある。特に、フロントウインドウ上方に外部アンテナを設置することで、車両の進行方向に指向軸を向けることができ、走行の安全性を向上させることができる。
一方、本開示に係る無線通信装置は、ルーフパネルの近傍に配置されるため、斯様な外部アンテナとの距離を最短にすることができる。すなわち、ケーブルを介することによる無線信号の損失を最小化することができる。
【0017】
また、前記無線通信装置は、V2X通信を利用した車両機能を提供する電子制御モジュールが行う通信を中継することを特徴としてもよい。
無線通信装置は、V2X(Vehicle to everything)機能を利用する電子制御モジュー
ル(例えば、自動運転ECU)が行う通信を仲介する装置であってもよい。
【0018】
また、前記通信モジュールは、セルラ通信によって前記車両の外部ネットワークとの間で無線通信をさらに行うことを特徴としてもよい。
このように、通信モジュールは、直接接続方式以外の通信を行ってもよい。
【0019】
また、前記無線通信装置は、自装置の位置情報を発信する機能を実行することを特徴としてもよい。
このようなサービスとして、例えば、緊急通報サービス、セキュリティ監視サービスなどが挙げられる。無線通信装置は、車両内における通信を仲介する装置であるが、このような重要なサービスを独立して実行可能にすることで、サービスの可用性を確保することができる。
【0020】
また、無線通信装置は、測位衛星から送信された信号を受信する第三のアンテナをさらに含むことを特徴としてもよい。第三のアンテナは、第一のアンテナの近傍に配置するようにしてもよい。
【0021】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態に記載されているハードウェア構成、モジュール構成、機能構成等は、特に記載がない限りは開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る車両システムの概要について、図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る車両システムは、車両1を含んで構成される。
【0023】
車両1は、外部装置との通信機能を有するコネクティッドカーである。車両1は、DCM(Data Communication Module)10と、V2X-ECU20と、複数のECU30と
、を含んで構成される。
外部装置とは、車両1の外部にある装置である。外部装置は、例えば、インターネットに接続されたサーバ装置であってもよいし、車両1の近傍にあって、DCM10と直接の通信が可能な、(他車両に搭載された)車載端末や路側装置などであってもよい。
【0024】
V2X-ECU20は、車両1が有する複数の電子制御ユニット(Electronic Control
Unit)のうち、V2X通信を利用した車両機能を提供する電子制御ユニットである。こ
のような機能として、例えば、自動運転機能、車々間(路車間)通信による情報提供機能などが挙げられる。
ECU30は、車両1が有する複数の電子制御ユニットのうち、V2X通信以外の通信を利用する電子制御ユニットである。
【0025】
DCM10は、ネットワーク経由で他の装置(または外部ネットワーク)と無線通信を行う装置である。DCM10は、車両1が有するコンポーネント(以下、車両コンポーネント)を、車両外部のネットワーク、または、外部装置に接続するためのゲートウェイとして機能する。
【0026】
DCM10は、二種類の通信を提供することができる。
第一の通信は、移動体通信網に向けた通信である。移動体通信網は、インターネット等の広域ネットワークに接続されており、これにより、車両コンポーネントは、任意の外部装置と通信を行うことができる。第一の通信は、セルラ通信を利用して行われる。
第二の通信は、車両1の近傍に位置する他の車両や、路側装置に搭載された通信装置(以下、V2X端末)に向けた通信である。第二の通信は、V2X通信とも呼ばれる。第二の通信は、センチメートル波の電波や、ミリ波の電波を利用して行われる。
【0027】
車載されたDCMで取り扱われる通信データ量は、車両機能の向上に伴い、今後増大していくと考えられる。このため、DCMの通信効率の向上が求められている。
そこで、本実施形態に係るDCM10は、アンテナと通信モジュールの双方を、車両の屋根の近傍であって、ボディの影響を受けない箇所に設置する。これにより、通信装置間
の見通しを確保するとともに、アンテナと通信モジュールとを結ぶケーブルを可能な限り短くすることができる。具体的な配置方法については後述する。
【0028】
図2は、本実施形態に係るDCM10の構成要素を説明する図である。本実施形態に係るDCM10は、セルラアンテナ100、セルラ通信モジュール110、V2Xアンテナ120、V2X通信モジュール130、GPSアンテナ140、GPSモジュール150、CPU200、記憶装置300、通信インタフェース400、および補助バッテリ500を有して構成される。
【0029】
セルラアンテナ100は、無線信号の入出力を行うアンテナ素子である。本実施形態では、セルラアンテナ100は、セルラ通信(例えば、3G、LTE、5G等の移動体通信)に適合したものである。なお、セルラアンテナ100は、複数の物理的なアンテナを含んで構成されてもよい。例えば、高周波を介した移動体通信を利用する場合、通信の安定化を図るため、複数のアンテナを分散して配置してもよい。
セルラ通信モジュール110は、移動体通信を行うための通信モジュールである。
【0030】
V2Xアンテナ120は、V2X通信によって利用される無線信号の入出力を行うアンテナ素子である。本実施形態では、V2Xアンテナ120は、DSRC(Dedicated Short Range Communications)等を利用したV2X通信に適合したものである。なお、V2Xアンテナ120は、複数の物理的なアンテナを含んで構成されてもよい。例えば、V2Xアンテナ120として、それぞれ異なる方向を向いた複数のアンテナを利用することもできる。
V2X通信モジュール130は、V2X通信を行うための通信モジュールである。
【0031】
GPSアンテナ140は、測位衛星(GNSS衛星とも称する)から送信された測位信号を受信するアンテナである。
GPSモジュール150は、GPSアンテナ140によって受信された信号に基づいて、位置情報を算出するモジュールである。
【0032】
CPU200は、所定のプログラムを実行することで、DCM10の各種機能を実現する演算ユニットである。
記憶装置300は、主記憶装置および補助記憶装置を含むメモリ装置である。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。
【0033】
CPU200は、外部装置と、車両1が有するコンポーネント(車両コンポーネント)との間でなされる通信を仲介する機能を実行する。車両コンポーネントとは、例えば、V2X-ECU20またはECU30である。外部装置とは、例えば、ECU30に情報を提供するサーバ装置であってもよいし、V2X-ECU20に交通情報を提供するV2X端末であってもよい。
例えば、ある車両コンポーネントが、外部装置との通信を必要とする場合、CPU200は、当該車両コンポーネントから送信されたデータを外部装置(または外部ネットワーク)に中継する機能を実行する。また、外部装置(または外部ネットワーク)から送信されたデータを受信し、当該データを適切な車両コンポーネントに転送する機能を実行する。
【0034】
さらに、CPU200は、自装置に固有な機能を実行することができる。例えば、CPU200は、セキュリティシステムの監視機能や通話機能を実行可能に構成されており、車内で発生したトリガに基づいて、セキュリティ通報や緊急通報等を行うことができる。
【0035】
通信インタフェース400は、DCM10を車載ネットワークに接続するためのインタフェースユニットである。本実施形態では、電子制御ユニット(V2X-ECU20,ECU30)を含む複数の車両コンポーネントが、ネットワークバス40を介して相互に接続される。車載ネットワークの規格として、例えば、CAN(Controller Area Network
)を例示することができる。なお、車載ネットワークが、複数の規格を利用するものである場合、通信インタフェース400は、通信先の規格に合わせた複数のインタフェース装置を有していてもよい。CAN以外の通信規格として、例えば、イーサネット(登録商標)などを例示することができる。
【0036】
補助バッテリ500は、DCM10にバックアップ電源を供給するバッテリである。DCM10は、車両1から供給された電源によって動作するが、交通事故や不正行為などによって電源の供給が絶たれる場合がある。このような場合に、補助バッテリ500は、DCM10に対する電源供給を行う。これにより、DCM10は、非常時においても動作を継続することができる。なお、補助バッテリ500は、車両1から給電を受けている場合に充電を行ってもよい。
【0037】
次に、CPU200によって実行される機能について説明する。図3は、DCM10が有する機能モジュールを説明する図である。図示した機能モジュールは、ROM等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPU200によって実行することで実現することができる。
【0038】
データ中継部201は、車両コンポーネント間で送受信されるデータの中継を行う。例えば、車載ネットワークに接続された第一の装置によって送出されたメッセージを受信し、必要に応じて、当該メッセージを、車載ネットワークに接続された第二の装置に転送する処理を実行する。第一および第二の装置は、V2X-ECU20またはECU30であってもよいし、他の車両コンポーネントであってもよい。
また、データ中継部201は、車両コンポーネントから、外部装置を宛先とするメッセージを受信した場合に、当該メッセージを外部ネットワークに中継する。また、外部ネットワークから送信されたデータを受信し、当該データを適切な車両コンポーネントに転送する。
【0039】
緊急通報部202は、車両1に異常事態が発生した場合に、車外のオペレータに対して緊急通報を行う。異常事態の一例として、交通事故や車両故障の発生が挙げられる。緊急通報部202は、例えば、車内に設けられたコールボタンの押下、エアバッグの展開といった所定のトリガが発生した場合に、オペレータとの接続を開始し、車両の乗員とオペレータとの間での通話を可能にする。なお、緊急通報時に、緊急通報部202は、車両の位置情報をオペレータに送信してもよい。この場合、緊急通報部202は、GPSモジュール150から位置情報を取得してもよい。
【0040】
セキュリティ管理部203は、セキュリティ監視処理を行う。セキュリティ管理部203は、例えば、車両の電子ロックを管轄するECU30から受信したデータに基づいて、正規の手順によらずに車両が解錠されたことを検知し、所定の装置に対してセキュリティ通報を送信する。なお、セキュリティ通報には、車両の位置情報が含まれていてもよい。この場合、セキュリティ管理部203は、GPSモジュール150から位置情報を取得してもよい。セキュリティ管理部203は、自車両のセキュリティに問題が生じたと判定した場合に、位置情報を取得し、取得した位置情報を、予め指定された外部装置に周期的に送信するようにしてもよい。
【0041】
V2X-ECU20は、V2X機能を提供する電子制御ユニットである。V2X機能と
して、例えば、車々間通信によって他の車両とデータを交換することで車両同士の衝突等を防止する機能、路車間通信によって交通信号に関するデータ等を取得する機能などが挙げられる。なお、自動運転機能の一部として、V2X機能が備わっていてもよい。この場合、V2X-ECU20は、自動運転機能(ADAS機能)を提供するECUなどであってもよい。
V2X-ECU20は、規定されたメッセージを生成し、車両外に周期的にブロードキャスト送信する機能や、他のV2X端末によって送信されたメッセージを取得し、当該メッセージに基づいて自車両の走行を制御する機能などを実行する。
【0042】
ECU30は、車両1が有するコンポーネントを制御する電子制御ユニットである。なお、本例では一つのECU30を図示しているが、車両1に含まれるECU30は複数あってもよい。複数のECU30は、例えば、エンジン系統、電装系統、パワートレイン系統など、それぞれ異なる系統のコンポーネントを制御する。ECU30は、規定されたメッセージを生成し、車載ネットワークを介して周期的に送受信する機能を有する。また、ECU30は、DCM10を介して外部装置と通信することで、リモートサービス(例えば、リモート空調サービス)等を提供することができる。
【0043】
V2X-ECU20およびECU30は、DCM10と同様に、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROMやディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。
【0044】
ネットワークバス40は、車載ネットワークを構成する通信バスである。なお、本例では、一つのバスを例示しているが、車両1は、二つ以上の通信バスを有していてもよい。複数の通信バスは、DCM10や、複数の通信バスを取りまとめるゲートウェイによって互いに接続されていてもよい。
【0045】
図4は、DCM10のハードウェアの外観を示した図である。
DCM10のハードウェアは、メイン基板、セルラアンテナ100、V2Xアンテナ120、GPSアンテナ140、補助バッテリ500を含んで構成される。
メイン基板は、CPU200、記憶装置300、セルラ通信モジュール110、V2X通信モジュール130、GPSモジュール150、通信インタフェース400が実装された基板である。また、メイン基板は、外部ポートを介して、セルラアンテナ100、V2Xアンテナ120、およびGPSアンテナ140と接続される。
メイン基板と、セルラアンテナ100と、V2Xアンテナ120と、GPSアンテナ140が、本開示における無線通信装置を構成する。
【0046】
また、本例では、通信インタフェース400は、複数のコネクタを含む。複数のコネクタのうちの一方は、CANやイーサネット等の、車載ネットワークバスに対応したものである。また、他方のコネクタは、拡張用のコネクタとすることができる。このようなものとして、例えば、DCM10に外付けアンテナを接続するためのポート、DCM10に外部機器(例えば、メンテナンス用端末)を接続するためのUSBポート等を例示することができる。
【0047】
図示したハードウェアは、車両1が有するルーフパネルの近傍に配置される。
図5は、図4に示したハードウェアが配置される位置を説明する図である。図示したように、DCM10と、V2X-ECU20が、車両が有するルーフパネルと、ルーフライニングの間に配置される。
【0048】
装置の配置位置について、より詳細に説明する。図6は、図5における点線部分を拡大した断面図である。また、図7は、車両1のルーフ付近の俯瞰図である。
符号2はルーフパネル、符号3はルーフライニング(内装部材)、符号4は樹脂製のルーフパネルカバー、符号5は導電体である。
ルーフパネル2と、ルーフパネルカバー4が、本開示における「ルーフパネル」に相当する。
【0049】
本実施形態に係る車両1は、ルーフパネル2に切り欠きを設け、ルーフライニング3との間の空間に、DCM10およびV2X-ECU20を収納する。なお、当該空間の底面には、アースに接続された導電体5を配置することが好ましい。これにより、通信のノイズ耐性を高めることができる。ただし、導電体5は必須ではない。そして、樹脂製のルーフパネルカバー4によって切り欠きを塞ぐ。
図示した構成によると、V2Xアンテナの地上高を確保することができ、他のV2X端末に対する見通しを確保することができる。さらに、V2XアンテナとV2X通信モジュールとの間の距離を最短に抑えることができ、信号の損失を抑えることができる。セルラアンテナとセルラ通信モジュールについても同様である。
【0050】
従来型のDCMでは、メイン基板とアンテナとの間が同軸ケーブルによって接続されていた。例えば、ルーフパネルの近傍に、V2Xアンテナが収納された筐体を配置し、ケーブルを、DCM本体(メイン基板が収納された筐体)まで引き回す必要があった。
【0051】
従前、DCMの本体は、他のECU30が格納されている場所、例えば、グローブボックスの奥、シート下、センターコンソール内部、エンジンルームなどに配置される。かかる構成によると、ケーブルが介在することに起因して信号の損失が発生し、これを補填するためにアンプを追加する必要等が生じてしまう。
一方で、本実施形態に係るDCM10は、アンテナとメイン基板との間の距離を最小化することができる。すなわち、無線信号の伝送効率を向上させることができる。これにより、同軸ケーブルと、伝送損失を補填するためのアンプが必要なくなり、機器の製造コストを抑えることができる。
【0052】
(第二の実施形態)
第一の実施形態に係るDCM10は、単一のV2Xアンテナ120を利用してV2X通信を行う。一方、V2X通信は直進性の高い周波数帯の電波を利用するため、死角を無くすために、異なる複数の位置にV2Xアンテナを配置することが好ましい。第二の実施形態は、複数のV2Xアンテナを利用するため、外部アンテナを追加する実施形態である。
【0053】
図8は、外部アンテナの配置位置を説明する図である。図示したように、第二の実施形態では、フロントウインドウの上部に、第二のV2Xアンテナ(外部V2Xアンテナ160)が配置される。車両の前方に向けて外部アンテナを配置することで、車両1の進行方向にビームを向けることができる。外部V2Xアンテナ160と、DCM10との間は、同軸ケーブル170によって接続される。
【0054】
本実施形態では、外部V2Xアンテナ160と、DCM10との間を同軸ケーブルによって接続する必要がある。しかし、DCM10が車両のルーフ部分に配置されているため、DCM10から外部V2Xアンテナ160までの距離を最短にすることができる。すなわち、V2X通信の感度を向上させつつ、ケーブルを介することによる無線信号の損失を最小化することができる。
【0055】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
【0056】
例えば、実施形態の説明では、V2X通信とセルラ通信を利用する通信モジュールおよびアンテナを例示したが、DCM10は、これ以外の通信規格に対応した、通信モジュールおよびアンテナのセットを複数個搭載していてもよい。このような通信方式として、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などが挙げられる。
【0057】
また、実施形態の説明では、車両のルーフパネル後方に無線通信装置を配置する例を挙げたが、車両のルーフパネルに近接した箇所であれば、その配置位置は限定されない。例えば、車両のルーフパネルの中央または前方に無線通信装置を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1・・車両
10・・DCM
20・・・V2X-ECU
30・・・ECU
40・・・ネットワークバス
100・・・セルラアンテナ
110・・・セルラ通信モジュール
120・・・V2Xアンテナ
130・・・V2X通信モジュール
140・・・GPSアンテナ
150・・・GPSモジュール
200・・・CPU
300・・・記憶装置
400・・・通信インタフェース
500・・・補助バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8