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特許7529610医療用先端チップ、および、内視鏡用処置具
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  • 特許-医療用先端チップ、および、内視鏡用処置具 図1
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  • 特許-医療用先端チップ、および、内視鏡用処置具 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】医療用先端チップ、および、内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/221 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61B17/221
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021063246
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158388
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友朗
(72)【発明者】
【氏名】相場 洋之
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-19937(JP,A)
【文献】特開2006-263159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0060206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22 - A61B 17/221
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の医療用デバイスの先端に装着される医療用先端チップであって、
長尺状のチップ本体であって、前記チップ本体の軸方向に対する傾斜方向に沿って貫通孔が形成されたチップ本体を有し、
前記チップ本体のうち、前記貫通孔の中心軸に平行であり、かつ、前記軸を含む、少なくとも1つの特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁は、前記傾斜方向において前記貫通孔の中央側から先端に向かって前記貫通孔の径が増大する先端側部分と、前記貫通孔の中央側から基端に向かって前記貫通孔の径が増大する基端側部分と、の少なくとも一方を有している、医療用先端チップ。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用先端チップであって、
前記チップ本体のうち、前記少なくとも1つの特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁は、前記先端側部分と前記基端側部分との両方を有している、医療用先端チップ。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用先端チップであって、
前記貫通孔を構成する内壁のうち、前記先端側部分と前記基端側部分との間の中間部分の前記傾斜方向の長さは、前記先端側部分の前記傾斜方向の長さと前記基端側部分の前記傾斜方向の長さとのいずれよりも短い、医療用先端チップ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の医療用先端チップであって、
前記特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁のうち、前記先端側部分と前記基端側部分との間の中間部分の前記傾斜方向の位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における先端寄りの位置である、医療用先端チップ。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の医療用先端チップであって、
前記特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁のうち、前記先端側部分と前記基端側部分との間の中間部分の前記傾斜方向の位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における基端寄りの位置である、医療用先端チップ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の医療用先端チップであって、
前記チップ本体は、中実体の外表面における第1の部位から第2の部位まで貫通するように前記貫通孔が形成された構造である、医療用先端チップ。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用先端チップであって、
前記第1の部位は、前記中実体の外側面の部位であり、前記第2の部位は、前記中実体の先端面の部位である、医療用先端チップ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の医療用先端チップであって、
前記傾斜方向から見て、前記先端側部分における先端側の開口形状は、所定方向に長い形状であることと、前記傾斜方向から見て、前記基端側部分における基端側の開口形状は、所定方向に長い形状であることと、の少なくとも一方を満たしている、医療用先端チップ。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の医療用先端チップであって、
前記特定断面で見たとき、前記先端側部分の先端部のうち、互いに対向する一対の部分について、前記貫通孔の中心軸からの距離が互いに異なることと、前記基端側部分の基端部のうち、互いに対向する一対の部分について、前記貫通孔の中心軸からの距離が互いに異なることと、の少なくとも一方を満たしている、医療用先端チップ。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の医療用先端チップであって、
前記チップ本体の基端面には、前記医療用デバイスの先端部が挿入される凹部が形成されており、
前記凹部の先端部は、前記チップ本体の軸方向に直交する方向から見たときに、前記貫通孔の基端側と重なっている、医療用先端チップ。
【請求項11】
請求項10に記載の医療用先端チップであって、
前記凹部は、前記チップ本体の軸方向から見たときに、前記貫通孔と重なっている、医療用先端チップ。
【請求項12】
内視鏡用処置具であって、
可撓性を有する管状のシースと、
前記シース内に前記シースの軸方向に沿って進退可能に配置された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤの先端に接続されたバスケット部であって、複数のワイヤから構成され、前記操作ワイヤが基準位置にあるときに、前記シース内に縮径した状態で収容され、前記操作ワイヤが前記基準位置から先端側に移動したときに、前記シースの先端から突出して拡径するように構成されたバスケット部と、
前記バスケット部を構成する前記複数のワイヤの先端をまとめて保持する先端保持部と、
前記先端保持部に装着される、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の先端チップと、
を備える、内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、長尺状の医療用デバイスの先端に装着される医療用先端チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばバスケット型の内視鏡用処置具の先端に装着される医療用先端チップが知られている。この先端チップには、内視鏡用処置具を体腔内における所定箇所にガイドするためのガイドワイヤが挿入される貫通孔が形成されている。
【0003】
先端チップには、貫通孔が先端チップの中心軸に沿って形成されており、ガイドワイヤが内視鏡用処置具に形成されたルーメンを介して先端チップの貫通孔に挿入されるものがある(以下、「軸上挿入型の先端チップ」という)がある。この軸上挿入型の先端チップでは、内視鏡用処置具をガイドワイヤに沿って円滑に移動させることができないという問題がある。例えば、体腔内において内視鏡用処置具が曲げ姿勢になると、その内視鏡用処置具のルーメンに挿入されたガイドワイヤも曲げ姿勢となり、比較的に剛性の高いガイドワイヤが、先端チップの貫通孔を構成する内壁に押しつけられることにより生じる反発力に起因して、内視鏡用処置具をガイドワイヤに沿って円滑に移動させることができなくなる。
【0004】
そこで、従来から、貫通孔が先端チップの中心軸に対して傾斜する方向に沿って形成された先端チップ(以下、「斜め挿入型の先端チップ」という)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。この斜め挿入型の先端チップでは、ガイドワイヤが、内視鏡用処置具に形成されたルーメンを介さずに先端チップの貫通孔に挿入されるため、内視鏡用処置具の曲げ姿勢に影響されることなく、内視鏡用処置具をガイドワイヤに沿って円滑に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-19937号公報
【文献】特開2020-36663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記斜め挿入型の先端チップでは、その先端チップに形成された貫通孔が全長にわたって同一径である。本発明者は、このような従来の斜め挿入型の先端チップでは、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤの安定性とガイドワイヤの自由度確保との両立、という新たな課題が存在することを見出した。すなわち、斜め挿入型の先端チップでは、その貫通孔に挿入されたガイドワイヤの基端側は、内視鏡用処置具の外周側に配置されており、内視鏡用処置具とは独立に変位する。このため、例えば、先端チップの貫通孔の内径がガイドワイヤの外径に対して相対的に大き過ぎると、ガイドワイヤが先端チップおよび内視鏡用処置具に対してぐらつくなど不安定になる。一方、ガイドワイヤの安定性を向上させるために、先端チップの貫通孔の内径をガイドワイヤの外径と略同一にすると、ガイドワイヤの先端側が貫通孔に沿った斜め方向に固定され、自由度が低くなる。その結果、例えば、ガイドワイヤの基端側が、内視鏡用処置具の外周側に大きく突出して体腔内の内壁に接触し、内視鏡用処置具をガイドワイヤに沿って円滑に移動させることができなくなる。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される医療用先端チップは、長尺状の医療用デバイスの先端に装着される医療用先端チップであって、長尺状のチップ本体であって、前記チップ本体の軸方向に対する傾斜方向に沿って貫通孔が形成されたチップ本体を有し、前記チップ本体のうち、前記貫通孔の中心軸に平行であり、かつ、前記軸を含む、少なくとも1つの特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁は、前記傾斜方向において前記貫通孔の中央側から先端に向かって前記貫通孔の径が増大する先端側部分と、前記貫通孔の中央側から基端に向かって前記貫通孔の径が増大する基端側部分と、の少なくとも一方を有している。
【0010】
本医療用先端チップでは、貫通孔が、チップ本体の軸方向に対する傾斜方向に沿って形成されている。また、チップ本体の貫通孔を構成する内壁は、貫通孔の中央側から先端に向かって貫通孔の径が増大する先端側部分と、貫通孔の中央側から基端に向かって貫通孔の径が増大する基端側部分と、の少なくとも一方を有している。このため、本医療用先端チップでは、例えば貫通孔が全長にわたって同一径であり、かつ、その径が相対的に大きい構成に比べて、貫通孔に挿入されたガイドワイヤは、チップ本体の貫通孔を構成する内壁のうち、径が相対的に小さい中央側部分で安定的に支持される。また、本医療用先端チップでは、先端側部分または/および基端側部分の存在により、例えば貫通孔が全長にわたって同一径であり、かつ、その径が相対的に小さい構成に比べて、ガイドワイヤのうち、貫通孔より先端側または/および基端側の自由度が確保される。すなわち、本医療用先端チップによれば、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤの安定性とガイドワイヤの自由度確保との両立を図ることができる。
【0011】
(2)上記医療用先端チップにおいて、前記チップ本体のうち、前記少なくとも1つの特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁は、前記先端側部分と前記基端側部分との両方を有している構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤの安定性を確保しつつ、ガイドワイヤのうち、貫通孔より先端側および基端側の両方の自由度を確保することができる。
【0012】
(3)上記医療用先端チップにおいて、前記貫通孔を構成する内壁のうち、前記先端側部分と前記基端側部分との間の中間部分の前記傾斜方向の長さは、前記先端側部分の前記傾斜方向の長さと前記基端側部分の前記傾斜方向の長さとのいずれよりも短い構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、貫通孔を構成する内壁の中間部分の傾斜方向の長さが、先端側部分の傾斜方向の長さや基端側部分の前記傾斜方向の長さと同等以上である構成に比べて、ガイドワイヤと貫通孔を構成する内壁との接触抵抗に起因して医療用先端チップに対するガイドワイヤの移動の円滑性が低下することを抑制できる。
【0013】
(4)上記医療用先端チップにおいて、前記特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁のうち、前記先端側部分と前記基端側部分との間の中間部分の前記傾斜方向の位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における先端寄りの位置である構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤのうち、貫通孔より基端側が、相対的に長い基端側部分によって保護されるため、例えば、ガイドワイヤの基端側の屈曲の発生を抑制することができる。
【0014】
(5)上記医療用先端チップにおいて、前記特定断面で見たとき、前記貫通孔を構成する内壁のうち、前記先端側部分と前記基端側部分との間の中間部分の前記傾斜方向の位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における基端寄りの位置である構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤのうち、貫通孔より先端側が、相対的に長い先端側部分によって保護されるため、例えば、ガイドワイヤの先端側の屈曲の発生を抑制することができる。
【0015】
(6)上記医療用先端チップにおいて、前記チップ本体は、中実体の外表面における第1の部位から第2の部位まで貫通するように前記貫通孔が形成された構造である構成としてもよい。チップ本体が、中実体の外表面における第1の部位から第2の部位まで貫通するように貫通孔が形成された構造では、例えば、筒体の外周面から内周面まで貫通するように貫通孔が形成された構造に比べて、貫通孔が長くなるため、特に本発明の課題が生じやすい。本医療用先端チップによれば、このような中実体に貫通孔が形成された構造を有するものに対して、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤの安定性とガイドワイヤの自由度確保との両立を図ることができる。
【0016】
(7)上記医療用先端チップにおいて、前記第1の部位は、前記中実体の外側面の部位であり、前記第2の部位は、前記中実体の先端面の部位である構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、例えば、貫通孔が中実体の外側面の一の部位から外側面の他の部位まで貫通するように形成された構成に比べて、貫通孔に挿入されたガイドワイヤをチップ本体の軸方向に沿わせるように配置できるため、医療用先端チップに対するガイドワイヤの移動の円滑性が低下することを、より効果的に抑制できる。
【0017】
(8)上記医療用先端チップにおいて、前記傾斜方向から見て、前記先端側部分における先端側の開口形状は、所定方向に長い形状であることと、前記傾斜方向から見て、前記基端側部分における基端側の開口形状は、所定方向に長い形状であることと、の少なくとも一方を満たしている構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、ガイドワイヤのうち、貫通孔より先端側または/および基端側の自由度を所定方向に限定して確保することができる。
【0018】
(9)上記医療用先端チップにおいて、前記特定断面で見たとき、前記先端側部分の先端部のうち、互いに対向する一対の部分について、前記貫通孔の中心軸からの距離が互いに異なることと、前記基端側部分の基端部のうち、互いに対向する一対の部分について、前記貫通孔の中心軸からの距離が互いに異なることと、の少なくとも一方を満たしている構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、貫通孔に挿入されたガイドワイヤについて、チップ本体の径方向外側の首振り可能範囲と、チップ本体の径方向内側の首振り可能範囲とを異ならせることができる。
【0019】
(10)上記医療用先端チップにおいて、前記チップ本体の基端面には、前記医療用デバイスの先端部が挿入される凹部が形成されており、前記凹部の先端部は、前記チップ本体の軸方向に直交する方向から見たときに、前記貫通孔の基端側と重なっている構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、チップ本体の軸方向の短縮化を図ることができる。
【0020】
(11)上記医療用先端チップにおいて、前記凹部は、前記チップ本体の軸方向から見たときに、前記貫通孔と重なっている構成としてもよい。本医療用先端チップによれば、チップ本体の外径の増大を抑制しつつ、チップ本体の軸方向の短縮化を図ることができる。
【0021】
(12)本明細書に開示される内視鏡用処置具は、可撓性を有する管状のシースと、前記シース内に前記シースの軸方向に沿って進退可能に配置された操作ワイヤと、前記操作ワイヤの先端に接続されたバスケット部であって、複数のワイヤから構成され、前記操作ワイヤが基準位置にあるときに、前記シース内に縮径した状態で収容され、前記操作ワイヤが前記基準位置から先端側に移動したときに、前記シースの先端から突出して拡径するように構成されたバスケット部と、前記バスケット部を構成する前記複数のワイヤの先端をまとめて保持する先端保持部と、前記先端保持部に装着される、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の先端チップと、を備える。本内視鏡用処置具によれば、先端チップの貫通孔に挿入されたガイドワイヤの安定性とガイドワイヤの自由度確保との両立を図ることができる。
【0022】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、医療用先端チップ、内視鏡用処置具やその使用方法や製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態における内視鏡用処置具100の構成を概略的に示す説明図
図2】本実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ70の詳細構成を示す説明図
図3】傾斜方向Lから見た貫通孔74の基端側を示す模式図
図4】貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGの先端側の首振り可能範囲を模式的に示す説明図
図5】変形例における傾斜方向Lから見た貫通孔74の基端側を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
A.実施形態:
A-1.内視鏡用処置具100の構成:
図1は、本実施形態における内視鏡用処置具100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、後述する拡径状態の内視鏡用処置具100の縦断面構成(YZ断面)が示されている。図1では、内視鏡用処置具100の一部分の図示が省略されている。また、図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。本明細書では、内視鏡用処置具100およびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0025】
本実施形態の内視鏡用処置具100は、いわゆるバスケット型の内視鏡用処置具であり、胆管等の体腔内に挿入され、結石等の異物を破砕したり回収したりするために用いられる医療用器具である。内視鏡用処置具100は、シース10と、操作ワイヤ20と、バスケット部30と、先端保持部40と、基端保持部50と、操作部60と、先端チップ70と、を備える。
【0026】
シース10は、可撓性を有する長尺の管状部材である。シース10は、例えば樹脂や金属により形成された可撓性のチューブを有する。なお、シース10は、チューブの先端に接合され、例えば金属(ステンレス等)により形成された略円環状のシースチップを有する構成でもよい。操作ワイヤ20は、長尺のワイヤ部材であり、シース10内の空間12に、シース10の軸方向(図1の例では、Z軸方向)に沿って進退可能に配置されている。
【0027】
操作部60は、本体部61と、操作パイプ62と、把持部63とを有する。操作パイプ62は、操作ワイヤ20の基端に接続された棒状の部材である。把持部63は、操作パイプ62の基端に接続され、手技者により把持される部材である。本体部61は、シース10の基端に接続された略円筒状の部材である。本体部61の中空部65は、シース10の空間12と連通しており、該中空部65には、操作パイプ62が軸方向に進退可能に収容されている。なお、本体部61には、図示しない注射器等を取り付けてシース10の空間12内に薬液等を送液できるように構成された送水口66が設けられている。
【0028】
バスケット部30は、操作ワイヤ20の先端に接続されており、複数の(図1では2本のみ図示)ワイヤ32から構成されている。各ワイヤ32は、例えば金属により形成されている。バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の先端は、先端保持部40(図2参照)によってまとめて保持されている。また、バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の基端は、操作ワイヤ20の先端に設けられた基端保持部50によってまとめて保持されている。これにより、バスケット部30は、基端保持部50を介して操作ワイヤ20の先端に接続されている。先端保持部40および基端保持部50は、例えば金属(ステンレス等)により形成されている。
【0029】
バスケット部30を構成する複数のワイヤ32は、湾曲して外側に向けて膨らむように自己付勢されている。そのため、操作ワイヤ20が比較的基端側の位置(以下、「基準位置」という。)にあるときには、バスケット部30は、シース10の空間12内に収容され、シース10の内周面によって押圧されて縮径した状態となる。以下、このようなバスケット部30または内視鏡用処置具100の状態を、縮径状態という。また、図1に示すように、手技者による操作部60の操作に伴い操作ワイヤ20が基準位置から先端側に移動すると、バスケット部30がシース10の先端から突出し、上記自己付勢力によって拡径し、籠状になる。以下、このようなバスケット部30または内視鏡用処置具100の状態を、拡径状態という。このように、内視鏡用処置具100は、操作ワイヤ20の進退に伴い、バスケット部30が縮径した状態でシース10内の空間12に収容された縮径状態と、バスケット部30がシース10の先端から突出して拡径した拡径状態と、の間を切り替え可能に構成されている。
【0030】
先端チップ70は、図1に示すように、内視鏡用処置具100におけるバスケット部30に装着される部材である。先端チップ70は、上記斜め挿入型の先端チップであり、貫通孔74が先端チップの中心軸Pに対して傾斜する方向(図1の点線Lに平行な方向 以下、「チップ軸方向P」ということがある)に沿って形成されている。先端チップ70の詳細構成について次述する。
【0031】
A-2.先端チップ70の詳細構成:
図2は、本実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ70の詳細構成を示す説明図である。図2には、先端チップ70の縦断面構成(YZ断面)が示されている。先端チップ70の縦断面は、特許請求の範囲における特定断面の一例である。
【0032】
図2に示すように、先端チップ70は、シース10の軸方向(図1および図2の例では、Z軸方向)に沿って伸びる略円柱状のチップ本体72を有している。チップ本体72は、樹脂(エラストマー、フッ素系樹脂、スーパーエンプラ―(高分子材料)など)により形成されているが、樹脂以外の材料(例えば金属)により形成されていてもよい。
【0033】
チップ本体72には、ガイドワイヤG(図1および図4参照)が挿入される貫通孔74が形成されている。貫通孔74は、チップ軸方向Pに対して傾斜する方向(図2の例では、貫通孔74の中心軸Lに沿った方向 以下、「傾斜方向L」ということがある)に沿って連続的につながって伸びるように形成されている。なお、チップ軸方向Pに対する貫通孔74の中心軸Lの傾斜角度は、例えば1度以上であり、70度以下である。該傾斜角度は、好ましくは、15度以上であり、45度以下である。また、貫通孔74は、中実体であるチップ本体72の外側面76(外周面)から、チップ本体72の先端面78まで貫通するように形成されている。チップ本体72の外表面のうち、貫通孔74の基端の開口75が形成された部位が、特許請求の範囲における第1の部位の一例であり、貫通孔74の先端の開口73が形成された部位が、特許請求の範囲における第2の部位の一例である。
【0034】
チップ本体72のうち、貫通孔74を構成する内壁は、先端側部分74Aと、基端側部分74Bと、中間部分74Cと、を有している。
【0035】
先端側部分74Aは、上記傾斜方向Lにおいて貫通孔74の中央側(図2のL1の位置)から先端(図2のL2の位置)に向かって貫通孔74の径が漸増するように形成されている。より具体的には、図2に示すように、先端側部分74Aのうち、先端チップ70の中心軸P側に位置する部分74Aaは、先端側部分74Aの基端から先端に向かうにつれて、貫通孔74の中心軸Lとの距離が連続的に長くなっており、かつ、中心軸Lに対して貫通孔74の径方向外側(チップ本体72の径方向内側)に湾曲している。また、先端側部分74Aのうち、チップ本体72の外側面76側に位置する部分74Abは、先端側部分74Aの基端から先端に向かって、貫通孔74の中心軸Lとの距離が略同一になっており、先端側部分74Aの先端のみがテーパ状になっている。なお、先端側部分74Aの基端の径D1に対する、先端の径D2の割合(D2/D1)は、例えば、1以上であり、6以下である。
【0036】
基端側部分74Bは、上記傾斜方向Lにおいて貫通孔74の中央側(図2のL1の位置)から基端(図2のL3の位置)に向かって貫通孔74の径が漸増するように形成されている。より具体的には、図2に示すように、基端側部分74Bのうち、先端チップ70の中心軸P側に位置する部分74Baは、基端側部分74Bの先端から基端に向かうにつれて、貫通孔74の中心軸Lとの距離が連続的に長くなっており、かつ、中心軸Lに対して貫通孔74の径方向外側(チップ本体72の径方向内側)に湾曲している。また、基端側部分74Bのうち、チップ本体72の外側面76側に位置する部分74Bbは、基端側部分74Bの先端から基端に向かうにつれて、貫通孔74の中心軸Lとの距離が長くなっており、かつ、中心軸Lに対して貫通孔74の径方向外側(チップ本体72の径方向外側)に湾曲している。なお、基端側部分74Bの先端の径D1に対する、基端の径D3の割合(D3/D1)は、例えば、1以上であり、6以下である。
【0037】
中間部分74Cは、傾斜方向Lにおいて、先端側部分74Aと基端側部分74Bとの間(図2のL1の位置)に位置している。中間部分74Cの傾斜方向Lの長さは、先端側部分74Aの傾斜方向Lの長さと基端側部分74Bの傾斜方向Lの長さとのいずれよりも短い。本実施形態では、中間部分74Cの傾斜方向Lの長さは、2mm以下であり、中間部分74Cは、ガイドワイヤGに対して、面接触せずに、線接触(図2の縦断面では点接触)する。また、中間部分74Cの傾斜方向Lの位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における先端寄りの位置である。図2の例では、互いに対向する内壁の一方は、上記部分74Aa,74Bbであり、他方は、上記部分74Abと、部分74Baのうちの部分74Bbに対向する部分とであり、互いに対向する内壁が存在する領域は、それらの対向する内壁に挟まれる領域である。
【0038】
図3は、傾斜方向Lから見た貫通孔74の基端側を示す模式図である。図3に示すように、傾斜方向Lから見た貫通孔74の形状は、円形である。本実施形態では、図2の縦断面に限らず、先端側部分74Aは、全周にわたって、貫通孔74の中央側から先端に向かって貫通孔74の径が漸増するように形成されている。また、基端側部分74Bも、全周にわたって、貫通孔74の中央側から基端に向かって貫通孔74の径が漸増するように形成されている。要するに、貫通孔74の径は、中間部分74Cにおいて最小(径D1)であり、中間部分74Cから貫通孔74の先端に向かうにつれて増大し(径D2)、また、中間部分74Cから貫通孔74の基端に向かうにつれて増大している(径D3)。
【0039】
チップ本体72の基端面80には、上記40が挿入される凹部90が形成されている。凹部90の先端部は、チップ軸方向Pに直交する方向(チップ本体72の径方向 図2の例ではY軸方向)から見たときに、貫通孔74の基端側と重なっている。これにより、凹部90の先端部が、チップ軸方向Pに直交する方向から見たときに、貫通孔74の基端側と重なっていない構成に比べて、チップ本体72のチップ軸方向Pの短縮化を図ることができる。
【0040】
また、内視鏡用処置具100の先端保持部40は、凹部90の奥(先端)まで挿入されている。チップ本体72は、貫通孔74が形成されていることにより強度が低い。特に、本実施形態では、チップ本体72は樹脂により形成されているため、特に強度が低い。しかし、本実施形態では、金属製の先端保持部40が、チップ軸方向Pにおいて、貫通孔74と重なる位置までのチップ本体72の先端側に伸びている。このため、チップ本体72が先端保持部40によって効果的に補強される。また、先端保持部40を放射線不透過材料により形成することにより、バスケット部30が生体内に挿入されている状態において、生体の外部から放射線を照射することにより、先端チップ70の先端により近い位置まで明確に視認することができる。しかも、凹部90は、チップ軸方向Pから見たときに、貫通孔74と重なっている。このため、チップ本体72の外径の増大を抑制しつつ、チップ本体72の補強や放射線による視認性の向上を図ることができる。
【0041】
また、チップ本体72のうち、凹部90を構成する内壁は、チップ軸方向Pから見たときに、チップ本体72の中心軸Pに対して非対称な開口形状を構成する部分を有している。図2の例では、チップ軸方向Pから見たときに、凹部90を構成する内壁のうち、中心軸P寄りの部分92は直線状(平面状)であり、外側面76寄りの部分94は円弧状(曲面状)である。一方、内視鏡用処置具100の先端保持部40の先端部は、凹部90を構成する内壁に対応した非対称の外形の部分を有している。そして、凹部90の非対称の開口と先端保持部40の非対称の外形との嵌合により、チップ本体72が、先端保持部40に対して中心軸Pの周方向の回転を抑制することができる。なお、チップ本体72と先端保持部40との接合は、公知の接合方法(例えば接着、圧着)を採用することができる。
【0042】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ70は、斜め挿入型であり、貫通孔74が傾斜方向Lに沿って形成されている。また、チップ本体72の貫通孔74を構成する内壁は、貫通孔74の中央側から先端に向かって貫通孔74の径が増大する先端側部分74Aと、貫通孔74の中央側から基端に向かって貫通孔74の径が増大する基端側部分74Bとを有している(図2参照)。このため、本実施形態では、例えば貫通孔が全長にわたって同一径であり、かつ、その径が相対的に大きい構成に比べて、貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGは、チップ本体72の貫通孔74を構成する内壁のうち、径が相対的に小さい中央側部分で安定的に支持される。また、本実施形態では、先端側部分74Aおよび基端側部分74Bの存在により、例えば貫通孔が全長にわたって同一径であり、かつ、その径が相対的に小さい構成に比べて、ガイドワイヤGのうち、貫通孔74より先端側および基端側の首振りの自由度が確保される。すなわち、本実施形態によれば、先端チップ70の貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGの安定性とガイドワイヤGの自由度確保との両立を図ることができる。
【0043】
本実施形態では、中間部分74Cの傾斜方向Lの長さは、先端側部分74Aの傾斜方向Lの長さと基端側部分74Bの傾斜方向Lの長さとのいずれよりも短い。本実施形態によれば、中間部分74Cの傾斜方向Lの長さが、先端側部分74Aの傾斜方向Lの長さや基端側部分74Bの傾斜方向Lの長さと同等以上である構成に比べて、ガイドワイヤGと貫通孔74を構成する内壁との接触抵抗に起因して先端チップ70に対するガイドワイヤGの移動の円滑性が低下することを抑制できる。また、ガイドワイヤGの全体が中間部分74Cを起点として傾動しやすくなるため、ガイドワイヤGのうち、貫通孔74より先端側および基端側の首振りの自由度をより効果的に向上させることができる。
【0044】
本実施形態では、中間部分74Cの傾斜方向Lの位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における先端寄りの位置である。これにより、先端チップ70の貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGのうち、貫通孔74より基端側が、相対的に長い基端側部分74Bによって保護されるため、例えば、ガイドワイヤGの基端側の屈曲の発生を抑制することができる。
【0045】
本実施形態では、貫通孔74は、中実体であるチップ本体72の外側面76(外周面)から、チップ本体72の先端面78まで貫通するように形成されている。これにより、例えば、貫通孔74がチップ本体72の外側面の一の部位から外側面の他の部位まで貫通するように形成された構成に比べて、貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGをチップ軸方向Pに沿わせるように配置できるため、先端チップ70に対するガイドワイヤGの移動の円滑性が低下することを、より効果的に抑制できる。
【0046】
本実施形態では、先端側部分74Aの先端部のうち、互いに対向する一対の部分74Aa,74Abについて、貫通孔74の中心軸Lからの距離が互いに異なっている。これにより、貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGの先端側について、チップ本体72の径方向外側の首振り可能範囲と、チップ本体の径方向内側の首振り可能範囲とを異ならせることができる。図4は、貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGの先端側の首振り可能範囲を模式的に示す説明図である。図4に示すように、先端側部分74Aの先端部における一方の部分74Aaと貫通孔74の中心軸Lとの距離は、他方の部分74Abと貫通孔74の中心軸Lとの距離よりも長い。このため、貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGの先端側について、チップ本体72の径方向内側の首振り可能範囲を、チップ本体の径方向外側の首振り可能範囲よりも広くすることができる。
【0047】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
上記実施形態における内視鏡用処置具100および先端チップ70の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0049】
上記実施形態において、チップ本体72は、略円柱状であったが、長尺状であれば、例えば断面形状が楕円や多角形の柱状体でもよいし、中実体に限らず、例えば筒状体でもよい。また、チップ本体が筒状体である場合、貫通孔は、筒状体の外周面から内周面まで貫通する孔でもよい。また、チップ本体が中実体である場合、貫通孔は、中実体の外側面(外周面)の一の部位から外側面(外周面)の他の部位まで貫通する孔でもよい。また、上記実施形態では、貫通孔74の中心軸Lは、直線状であったが、曲線状であってもよい。
【0050】
上記実施形態において、貫通孔74を構成する内壁は、先端側部分74Aと基端側部分74Bとのいずれか一方を有しない構成でもよい。例えば、上記実施形態において、貫通孔74を構成する内壁のうち、先端側部分74Aに対応する部分が、全長にわたって径が同一である構成でもよい。また、先端側部分74Aは、貫通孔74の中央側から先端に向かって貫通孔74の径が漸増するように形成されていたが、これに限らず、例えば、先端側部分74Aは、貫通孔74の中央側から先端に向かって貫通孔74の径が段階的に増大するように形成されていてもよい。基端側部分74Bについても同様である。
【0051】
上記実施形態では、チップ本体72のうち、貫通孔74の中心軸Lに平行であり、かつ、その中心軸Lを含む、全て断面において、貫通孔74を構成する内壁は、先端側部分74Aと基端側部分74Bとを有する構成であったが、これに限らず、貫通孔74の中心軸Lに平行であり、かつ、その中心軸Lを含む、少なくとも1つの特定断面で見たとき、貫通孔74を構成する内壁が、先端側部分74Aと基端側部分74Bとの少なくとも一方を有する構成であればよい。
【0052】
上記実施形態において、中間部分74Cの傾斜方向Lの長さは、先端側部分74Aの傾斜方向Lの長さと基端側部分74Bの傾斜方向Lの長さとの少なくとも一方と同じ、または、該一方よりも長くてもよい。また、上記実施形態において、中間部分74Cの傾斜方向Lの位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における基端寄りの位置でもよい。これにより、先端チップ70の貫通孔74に挿入されたガイドワイヤGのうち、貫通孔74より先端側が、相対的に長い先端側部分74Aによって保護されるため、例えば、ガイドワイヤGの先端側の屈曲の発生を抑制することができる。なお、上記実施形態において、中間部分74Cの傾斜方向Lの位置は、互いに対向する内壁が存在する領域における中央の位置でもよい。
【0053】
上記実施形態において、チップ本体72は、貫通孔74がチップ本体72の外側面の一の部位から外側面の他の部位まで貫通するように形成された構成でもよい。上記実施形態において、先端側部分74Aの先端部における一方の部分74Aaと貫通孔74の中心軸Lとの距離は、他方の部分74Abと貫通孔74の中心軸Lとの距離と同じでもよいし、該距離よりも短くてもよい。また、上記実施形態において、基端側部分74Bの基端部のうち、互いに対向する一対の部分74Bb,74Baについて、貫通孔74の中心軸からの距離が互いに異なる構成でもよい。
【0054】
上記実施形態において、金属製の先端保持部40は、チップ軸方向Pにおいて、貫通孔74と重なる位置まで伸びていない構成でもよいし、凹部90は、チップ軸方向Pから見たときに、貫通孔74と重なっていなくてもよい。
【0055】
図5は、変形例における傾斜方向Lから見た貫通孔74の基端側を示す模式図である。図5に示すように、傾斜方向Lから見て、基端側部分74Bにおける基端側の開口形状(図5における基端側部分74Bの輪郭線参照)は、所定方向(図5の紙面上下方向)に長い形状(本実施形態では、D3>D4 楕円または長孔)である。これにより、ガイドワイヤGのうち、貫通孔74より基端側の自由度を所定方向に限定して確保することができる。なお、傾斜方向Lから見て、基端側部分74Bにおける先端側の開口形状(図5における中間部分74Cの輪郭線参照)の面積は、基端側部分74Bにおける基端側の開口形状の面積よりも小さい。また、基端側部分74Bにおける先端側の開口形状における互いに直交する方向の寸法(径)の差(=|D1-D1|)は、基端側部分74Bにおける基端側の開口形状における互いに直交する方向の寸法(径)の差(=|D3-D4|)よりも小さい。これにより、貫通孔74より基端側の自由度を所定方向に限定して確保しつつ、貫通孔74の中間部分74CにおいてガイドワイヤGを、がたつきを抑制しつつ安定的に支持することができる。また、傾斜方向Lから見て、先端側部分74Aにおける先端側の開口形状は、所定方向に長い形状である。これにより、ガイドワイヤGのうち、貫通孔74より先端側の自由度を所定方向に限定して確保することができる。なお、傾斜方向Lから見て、先端側部分74Aにおける基端側の開口形状の面積は、先端側部分74Aにおける先端側の開口形状の面積よりも小さい。また、先端側部分74Aにおける基端側の開口形状における互いに直交する方向の寸法(径)の差は、先端側部分74Aにおける先端側の開口形状における互いに直交する方向の寸法(径)の差よりも小さい。これにより、貫通孔74より先端側の自由度を所定方向に限定して確保しつつ、貫通孔74の中間部分74CにおいてガイドワイヤGを、がたつきを抑制しつつ安定的に支持することができる。
【0056】
先端チップ70が装着される医療用デバイスは、内視鏡用処置具100に限られない。
【符号の説明】
【0057】
10:シース 12:空間 20:操作ワイヤ 30:バスケット部 32:ワイヤ 40:先端保持部 50:基端保持部 60:操作部 61:本体部 62:操作パイプ 63:把持部 65:中空部 66:送水口 70:先端チップ 72:チップ本体 73,75:開口 74:貫通孔 74A:先端側部分 74B:基端側部分 74C:中間部分 76:外側面 78:先端面 80:基端面 90:凹部 100:内視鏡用処置具 G:ガイドワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5