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特許7529614圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021081411
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175194
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-06-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売の申出1 2020年5月14日 クボタアグリサービス株式会社宛、電子メール及び添付ファイルを介して気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 集会1 2021年3月15日 農研機構主催の「令和2年度ICT水管理機器の実証実験に関する情報交換会」において、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物1 2020年7月3日 カタログ「ほ場管理システム WATARAS新機能のご紹介・特長(こだわり)」にて、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物2 2020年10月1日 リーフレット「ほ場管理システム WATARAS」を用いて気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物3 2020年10月1日 公益社団法人農業農村工学会会誌「水土の知」第88巻第10号 広告欄(裏表紙)に、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物4 2020年10月12日 「広報誌PAL」Vol.183、2020年秋号、20頁に、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物5 2020年12月10日 カタログ「ほ場管理システム WATARAS」にて、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 刊行物6 2021年4月26日 全国農業改良普及職員協議会機関誌「技術と普及」、2021年5月号vol.58、5頁、18頁、56-57頁に、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイト公開1 2020年6月2日 ウェブサイト https://wataras.kubota.com/loginFormにおいて、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 ウェブサイト公開2 2021年4月12日 ウェブサイト https://www.kubota-chemix.co.jp/において、気象情報を活用する新機能を追加した「圃場水管理システム」を公開 ウェブサイト公開3 2021年4月13日 ウェブサイト https://agriculture.kubota.co.jp/product/kanren/wataras/screen_function.html において、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開 ウェブサイト公開4 2021年4月19日 ウェブサイト https://wataras.kubota.com/loginFormにおいて、気象情報を活用する「圃場水管理システム」を公開
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】平尾 和弘
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(72)【発明者】
【氏名】小元 伸弥
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148821(JP,A)
【文献】特開2020-162597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システムであって、
前記圃場水管理装置は、
各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給水装置及び排水装置を含む給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理するとともに、前記給排水機器を遠隔制御する圃場管理部と、
気象情報提供装置から各圃場が位置する地域の気象情報を取得する気象情報取得部と、
前記気象情報取得部が取得した気象情報を各圃場に関連付けて前記端末装置に提供する気象情報提供部と、
を備えて構成され、
前記端末装置は、
前記圃場特定情報で特定される所定の圃場に対する給排水処理を含む管理を要求する要求処理部と、
前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に前記所定の圃場の管理状態と、前記気象情報提供部により提供された気象情報を関連付けて表示する表示処理部と、
を備えて構成されている、圃場水管理システム。
【請求項2】
前記表示処理部は、各圃場の圃場水位情報に前記気象情報を関連付けて時系列でグラフ表示する水位表示処理部を備えている請求項1記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記表示処理部は、各圃場の水温情報に前記気象情報を関連付けて時系列でグラフ表示する水温表示処理部を備えている請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記気象情報は少なくとも降水量及び気温を含む請求項1から3の何れかに記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
前記表示処理部は、各圃場の所定期間の積算温度を表示する積算温度表示処理部を備えている請求項4記載の圃場水管理システム。
【請求項6】
前記端末装置は、前記給水装置による給水量と前記気象情報に含まれる降水量に基づいて各圃場の予測水位を表示する請求項4または5記載の圃場水管理システム。
【請求項7】
前記端末装置は、前記給排水機器により取得した水温と前記気象情報に含まれる気温に基づいて各圃場の予測水温を表示する請求項4から6の何れかに記載の圃場水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圃場への給水または圃場からの排水を制御するための変位機構を作動させる圃場用電動アクチュエータを備えた給水栓や排水栓が開示されている。これらの給水栓や排水栓を用いることにより、圃場水管理装置を介して圃場への給水や圃場からの排水を遠隔制御することが可能になる。
【0003】
当該圃場用電動アクチュエータは、給水栓や排水栓を制御する制御装置であり、給水栓または排水栓を作動させる電動モータを備えたアクチュエータと、アクチュエータを制御するとともに圃場水管理装置と通信する電子回路を備えている。
【0004】
特許文献2には、給水栓と、前記給水栓を作動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する給水制御部と圃場水管理サーバと交信する通信部とを有する電子制御回路と、前記電子制御回路及び前記アクチュエータに給電する蓄電池とを備え、前記給水栓から灌漑用水を圃場に給水する給水制御装置と、前記給水制御装置に対する遠隔操作情報を設定入力する遠隔操作端末と、前記遠隔操作端末から前記遠隔操作情報を受信して対応する給水制御装置を遠隔制御する圃場水管理サーバと、を備えている圃場水管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-193914号公報
【文献】特開2020-103285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示された技術を利用することにより、給水栓を備えた給水装置、排水堰を備えた排水装置、及び水位計を含む給排水機器が設置された各圃場に対して、水位計による測定水位に基づいて給水装置または排水装置を遠隔制御する圃場水管理装置と、制御対象となる所定の圃場に対して給水要求または排水要求を圃場水管理装置に送信する端末装置と、を備えた圃場水管理システムを構築することができる。
【0007】
圃場水管理装置により管理される各圃場の水位や水温、給排水機器の作動状態が、情報通信網を介して端末装置に送信されて端末装置の表示部に表示されることで、各圃場の管理者である営農者は端末装置に表示された情報を目視確認して各圃場の状態を把握したうえで必要な作業を行なえるようになる。
【0008】
しかし、端末装置に表示された圃場の水位や水温、給排水機器の作動状態のみでは必要となる作業を適切に判断することができない場合もある。例えば天候は農作業に大きく影響を与える情報であり、適切に作業を行なうためには数日先までの天候の変動を把握することが非常に重要となる。
【0009】
一般的に、営農者は端末装置を介して気象情報提供サービスから気象情報を得ることができるが、無償で提供される気象情報はかなり広域の気象情報となるため、作業対象となる圃場が存在する限られた地域の気象情報を得ることは容易ではなく、望む気象情報を取得するためには圃場の管理者が個別に有料の気象情報提供サービスを利用する必要があった。その場合でも、取得した気象情報を解析して各圃場の状態に応じた適切な作業を選択するのは容易な作業ではなかった。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、端末装置に表示される各圃場の管理状態に気象情報を組み込むことが可能な圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を提供する点にある。
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による圃場水管理装置システムの第一の特徴構成は、圃場水管理装置と端末装置とが情報通信網を介して接続された圃場水管理システムであって、前記圃場水管理装置は、各圃場を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場に設置された給水装置及び排水装置を含む給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場の給排水状態を含む圃場管理情報を管理するとともに、前記給排水機器を遠隔制御する圃場管理部と、気象情報提供装置から各圃場が位置する地域の気象情報を取得する気象情報取得部と、前記気象情報取得部が取得した気象情報を各圃場に関連付けて前記端末装置に提供する気象情報提供部と、を備えて構成され、前記端末装置は、前記圃場特定情報で特定される所定の圃場に対する給排水処理を含む管理を要求する要求処理部と、前記圃場水管理装置から前記圃場管理情報を取得して、表示部に前記所定の圃場の管理状態と、前記気象情報提供部により提供された気象情報を関連付けて表示する表示処理部と、を備えて構成されている点にある。
【0012】
圃場水管理装置は、気象情報取得部を介して気象情報提供装置から圃場が位置する地域の気象情報を一括して取得し、気象情報提供部を介して各端末装置に必要な気象情報を提供することができる。端末装置は、圃場水管理装置から取得した所定の圃場の管理状態と気象情報が関連付けて表示されるようになる。営農者は、端末装置の表示画面を目視確認することにより、例えば各圃場の現在の状態と気温や降水量等の気象情報に基づいて必要となる作業を適切に判断することができるようになる。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記表示処理部は、各圃場の圃場水位情報に前記気象情報を関連付けて時系列でグラフ表示する水位表示処理部を備えている点にある。
【0014】
水位表示処理部により表示画面に各圃場の水位と気象情報が関連付けて表示されるので、圃場の水位の変動予測を適切に行なうことができ、例えば、給水の要否を適切に判断できるようになる。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記表示処理部は、各圃場の水温情報に前記気象情報を関連付けて時系列でグラフ表示する水温表示処理部を備えている点にある。
【0016】
水温表示処理部により表示画面に各圃場の水温と気象情報が関連付けて表示されるので、圃場の水温の変動予測を適切に行なうことができ、例えば、かけ流しなどの給水の要否を適切に判断できるようになる。
【0017】
同第四の特徴構成は、上述した第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記気象情報は少なくとも降水量及び気温を含む点にある。
【0018】
降水量に基づいて圃場の水位の変動予測が可能になり、気温に基づいて圃場の水温の変動予測が可能になる。
【0019】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記表示処理部は、各圃場の所定期間の積算温度を表示する積算温度表示処理部を備えている点にある。
【0020】
積算温度とは、ある期間の日々の平均気温などを合計した値をいい、作物の生長に必要な熱量が十分に足りているか否かの指標として用いる値をいう。積算温度表示処理部により、各圃場の所定期間の積算温度が表示されることで、作物の生育状態を把握し、出穂期や刈取り時期などの判断や予測などに用いることができる。
【0021】
同第六の特徴構成は、上述した第四または第五の特徴構成に加えて、前記端末装置は、前記給水装置による給水量と前記気象情報に含まれる降水量に基づいて各圃場の予測水位を表示する点にある。
【0022】
端末装置の表示画面に表示される各圃場の予測水位に基づいて、適切な給水管理を行なうことができる。
【0023】
同第七の特徴構成は、上述した第四から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記端末装置は、前記給排水機器により取得した水温と前記気象情報に含まれる気温に基づいて各圃場の予測水温を表示する点にある。
【0024】
端末装置の表示画面に表示される各圃場の予測水温に基づいて、水温が好ましい値になるように適切な給水管理を行なうことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、端末装置に表示される各圃場の管理状態に気象情報を組み込むことが可能な圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】圃場水管理システムの説明図
図2】圃場水管理装置、端末装置、気象情報提供装置、給排水機器の機能ブロックの説明図
図3】圃場水管理装置の動作を説明するフローチャート
図4】端末装置の動作を説明するフローチャート
図5】(a),(b)は端末装置のログイン画面を含む表示画面の説明図
図6】(a),(b)は端末装置の圃場一覧画面及び圃場詳細画面を含む表示画面の説明図
図7】((a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の一態様の説明図
図8】(a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の他の態様の説明図
図9】(a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の他の態様の説明図
図10】(a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の他の態様の説明図
図11】(a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の他の態様の説明図
図12】(a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の他の態様の説明図
図13】(a),(b)は端末装置の気象情報表示画面の他の態様の説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明による圃場水管理システム、圃場水管理装置及び端末装置を説明する。
[圃場水管理システムの構成]
図1に示すように、圃場水管理システム100は、圃場水管理装置として機能する圃場管理サーバ40と、各圃場の管理者である営農者が所有する端末装置50と、給排水機器とが情報通信網の一例であるインターネット30を介して接続されたシステムである。なお、情報通信網はインターネット30に限るものではない。
【0028】
稲作が行なわれる各圃場1には、給水管10に流れる用水を、導水路11を介して圃場1に導く給水装置12、放水路21を介して圃場1の水を排水路20に排水する排水装置22、圃場1の水温及び水位を計測する水温水位計2などの給排水機器が設けられている。
【0029】
給水装置12及び排水装置22は、インターネット30を介して圃場水管理サーバ40と通信可能に接続され、或いは必要に応じて圃場1の近傍に配された無線ルータ32を経由してインターネット30により圃場水管理サーバ40と通信可能に接続されている。水温水位計2による測定水温及び水位は給水装置12を介して圃場水管理サーバ40に送信される。なお、水温水位計2が排水装置22を介して圃場水管理サーバ40に送信され、或いは水温水位計2が直接に圃場水管理サーバ40と通信できるように構成されていてもよい。
【0030】
端末装置50として好ましくはスマートフォンやタブレット型コンピュータなどの携帯型の端末装置が使用される。なお、デスクトップ型やラップトップ型のコンピュータが端末装置50として使用されてもよい。
【0031】
稲作を例に説明すると、稲作の各工程、例えば、代掻き、田植え、活着期、分げつ期(前期、後期)、幼穂形成期~出穂開花期、登熟期など、各時期に応じて圃場1の貯水水位を可変に調整する必要がある。そのために圃場水管理システム100が活用される。
【0032】
圃場水管理サーバ40は、CPUボード及びメモリボードを備えたコンピュータシステムであり、メモリボードに搭載されたメモリにインストールされたOSの管理下で所定のアプリケーションプログラムが実行されることにより所期の動作を実行する機能ブロックが構成される。具体的に、圃場管理部42、気象情報取得部44、気象情報提供部46、記憶部48の各機能ブロックが構成される。
【0033】
また、端末装置50に備えたメモリには、端末装置50として所定の機能を実現するためのアプリケーションプログラムがインストールされている。端末装置50に備えたCPUで当該アプリケーションプログラムが実行されることにより実現される要求処理部52、表示処理部54といった機能ブロックを備えている。
【0034】
要求処理部52は、営農者などにより操作入力された情報を圃場水管理サーバ40に送信する機能ブロックであり、表示処理部54は、圃場水管理サーバ40から送信された情報や営農者などにより操作入力された情報を画面に表示する機能ブロックである。要求処理部52及び表示処理部54は、圃場水管理サーバ40から送信された情報を受信して所定の処理を実行し、圃場水管理サーバ40に必要な情報を送信するブラウザとして機能する。
【0035】
圃場管理部42は、各圃場1を固有に識別する圃場IDと、圃場IDにリンクした圃場特定情報、各圃場1に設置された給水装置12及び排水装置22を含む給排水機器を特定する給排水機器特定情報、及び各圃場1の給排水状態を含む圃場管理情報を管理するとともに、給排水機器を遠隔制御する機能ブロックである。
【0036】
圃場特定情報には、圃場1の位置を示す緯度、経度及び圃場1の住所や管理者情報が含まれる。圃場1の給排水状態を示す情報には目標水位、現在水位、排水水位、水温、給水栓の開度などが含まれる。圃場管理情報は、メモリボードに搭載されたメモリの一区画で構成される記憶部48に格納される。
【0037】
気象情報取得部44は、商用の気象情報提供装置である気象情報提供サーバ60が提供するサービスを利用するためのAPI(Application Programming Interface)を備えている。気象情報取得部44は、圃場管理情報に含まれる各圃場の位置を示す緯度、経度に基づいて該当する地域の気象情報を取得して記憶部48に格納する。なお、管理している全ての緯度、経度に対応した気象情報ではなく、所定範囲に区切ってその代表となる緯度、経度に対応した気象情報が取得される。
【0038】
具体的に、4月から10月の農繁期では6回/日(2,6,10,14,18,22時)、11月から3月の農閑期では2回/日(6,18時)、其々前日から7日先までの気象情報を取得する。気象情報には、1時間毎の天気、気温、湿度、風向風速、降水量、降水確率、1日毎の最低気温、最高気温、最低気温前日差、最高気温前日差、6時間降水確率、1日降水確率、風向風速代表値、日照時間などが含まれる。
【0039】
気象情報提供部46は、気象情報取得部44が気象情報提供サーバ60から取得した気象情報から必要となる気象情報を各圃場1に関連付けて端末装置50に提供する。
【0040】
端末装置50に備えた要求処理部52は、圃場特定情報で特定される所定の圃場1に対する給排水処理を含む管理を要求する。例えば、湛水制御する場合には、目標水位を指定して給水要求を送信する。圃場管理部42は、この要求に応答して、対応する圃場の排水装置に22に排水水位となる排水堰の高さを指定して作動させ、給水装置12に対して給水指令を出力する。給水装置12は、水温水位計2の値に基づいて給水栓を開閉制御するとともに、給水栓の動作状態や水温水位計2で測定された圃場の水温や水位を、圃場管理部42に送信する。
【0041】
給水装置12は、給水栓12Aと、給水制御装置12Bを備えている。給水制御装置12Bは、給水栓12Aを作動させるアクチュエータ120と、アクチュエータ120を制御する給水制御部122と、圃場水管理サーバ40と交信する通信部124と、を備えている。また、アクチュエータ120に備えたモータ、給水制御部122、通信部124などに給電する蓄電池126、蓄電池126を充電するソーラーセル228を備えている。
【0042】
排水装置22は、排水堰22Aと、排水制御装置22Bを備えている。排水制御装置22Bは、排水堰22Aを昇降作動させるアクチュエータ220と、アクチュエータ220を制御する排水水位制御部222と、圃場水管理サーバ40と交信する通信部224を備えている。また、アクチュエータ220に備えたモータ、排水水位制御部222、通信部224などに給電する蓄電池226、蓄電池226を充電するソーラーセル228を備えている。なお、ソーラーセル128,228は必須ではない。
【0043】
図3には、圃場水管理サーバ40の一連の処理が示されている。
所定時刻になると(SA1)、気象情報取得部44は、気象情報提供サーバ60にアクセスして所定の気象情報を取得して記憶部48に格納する(SA2)。予め登録されている端末装置50からログイン要求があると(SA3)、当該端末装置50に圃場管理情報及び必要な気象情報を関連付けて送信する(SA4)。
【0044】
端末装置50の操作画面が操作されて何らかの処理要求があると(SA5)、圃場管理部42は、処理要求に対応した処理を実行する。例えば給水要求があれば、該当する圃場1の給水装置12に給水指令を出力し、該当する圃場1の管理情報が更新されると対応する圃場管理情報を更新する(SA6)。
【0045】
さらに、各圃場1に設置した給排水機器から排水水位、測定水位、測定水温などの情報を取得して(SA7)、ステップSA1からの処理を繰り返す。ステップSA5で端末装置50に表示内容を更新する必要がある何らかの操作入力があると、その後、ステップSA4で必要な表示更新のためのデータが送信される。図3には、1台の端末装置50に対する処理が示されているが、実際には、営農者の数に相当する端末装置50のそれぞれに同様の処理が実行される。
【0046】
図4には、端末装置50の処理が示されている。圃場水管理システムのアプリケーションが起動されてログイン画面が表示され、ログイン情報が入力されると(SB1)、圃場管理部42及び気象情報提供部46から、ログイン情報と関連付けられた圃場に対する管理情報及び気象情報が送信される(SB2)。表示処理部54は、取得した情報に対応する画面に更新して表示し(SB3)、営農者が画面を操作すると(SB4)、要求処理部52は、操作に対応した給排水などの要求を圃場水管理サーバ40に送信する(SB6)。
【0047】
ステップSB5で要求処理以外の操作、例えば画面の切替処理のための操作が行われると(SB5,N)、その操作内容が圃場水管理サーバ40に送信され、ステップSB2で対応する管理情報及び気象情報が送信されて、画面が更新される(SB3)。ステップSB2からステップSB7の処理がログオフするまで繰り返される。
【0048】
図5から図12には、表示処理部54によって端末装置50の表示部に表示処理される画面が示されている。以下、順に説明図する。なお、以下に説明する画面表示は理解を容易にするための例示であり、具体的な数値などの表示内容は、現実に即したものでない場合もある。
【0049】
図5(a)にはログイン画面が示されている。ユーザー名、パスワードを入力してログインすると、図5(b)に示す初期画面が表示される。初期画面は、当該営農者が管理する圃場を一覧する圃場一覧画面となる。この例では、圃場1、圃場2、圃場3の3つの圃場が管理され、其々の圃場の水位、水温、給水栓の状態、排水高さ(排水堰の目標高さ)が表示される。営農者は、圃場一覧画面により各圃場の状態を把握することができる。
【0050】
図6(a)に示す圃場一覧画面から太線で示す「圃場1」の表示領域がタッチされると、図6(b)に示す圃場詳細画面に切替わり、圃場1の詳細な情報が表示される。この例では、水位水温計の値、給水装置の数とその状態が示されている。太線で示す「圃場一覧」の表示領域がタッチされると、図6(a)に示す圃場一覧画面に切替わる。各画面の表示内容は、圃場管理サーバ40から送信された圃場管理情報に基づく。
【0051】
なお、図6(b)に示されている「圃場制御」表示領域をタッチすると、対応する圃場に対する給水や排水、水位設定を数分から数十分のインタバルで遠隔操作するための操作画面が表示され、画面の操作に従って、圃場水管理装置40により対応する圃場の給排水機器が実質的にリアルタイムで遠隔制御される。また、「スケジュール設定」表示領域をタッチすると、対応する圃場への給水や排水などのスケジュールを圃場水管理サーバ40に設定するための操作画面が表示され、「圃場設定・機器設定」表示領域をタッチすると、対応する圃場に設置される機器の仕様などの情報を圃場水管理サーバ40に設定するための操作画面が表示される。
【0052】
図7(a)に示す圃場一覧画面から太線で示す太陽を模した絵柄の「気象マーク」の表示領域がタッチされると、図7(b)に示す気象情報画面に切替わり、圃場が位置する地域の当日及び翌日の3時間毎の天気、気温、湿度、降水量、降水確率、風向を一覧可能な「今日・明日の天気」が一覧表示される。
【0053】
図8(a)に示す「今日・明日の天気」画面から太線で示す「1時間天気」の表示領域がタッチされると、図8(b)に示すように、1時間毎の天気、気温、湿度、降水量、降水確率、風向がリスト表示される「1時間天気」画面が表示される。画面をスクロールすることにより、当日及び翌日のリストが全て確認できる。
【0054】
図9(a)に示す「1時間天気」画面から太線で示す「週刊天気」の表示領域がタッチされると、図9(b)に示すように、1週間である7日分の天気、最高及び最低気温、風向がリスト表示される。
【0055】
図10(a)に示す圃場詳細画面から太線で示す太陽を模した絵柄の「気象マーク」の表示領域がタッチされると、図10(b)に示す気象情報画面に切替わり、圃場が位置する地域の当日及び翌日の3時間毎の天気、気温、湿度、降水量、降水確率、風向を一覧可能な「今日・明日の天気」が一覧表示される。この表示内容は、図7(b)と実質的に同じである。
【0056】
図11(a)に示す圃場詳細画面の右下に太線で示す「グラフ表示」の表示領域がタッチされると、図11(b)に示す画面に切替わり、圃場詳細画面で選択された圃場の水位、水温、気温、降水量を示すグラフが表示される。画面に上部に表示される「表示範囲」の「1h」、「1d」、「3d」、「1w」、「All」の其々が選択でき、1時間毎、1日毎、3日毎、1週間毎、全期間の水位、水温、気温、降水量を示すグラフが表示される。
【0057】
図11(b)の「水位」表示領域では、水位を縦軸、時間の横軸として圃場の水位が実線で示され、排水堰の高さが一点鎖線で示されている。二本の水平線は、目標水位の上限と下限が示され、上限と下限の範囲に入るように給水栓が制御されている様子が示されている。排水堰の高さが排水水位に設定された後に、水位が低下する様子が確認できる。
【0058】
図11(b)の「水温/気温」表示領域では、水温水位計2で検出された水位(破線で示されている)と、気象情報に含まれる気温が融合されて表示されている。図11(b)の「降水量」表示領域では、給水栓の開度(実線で示されている)と、気象情報に含まれる降水量が融合されて表示されている。
【0059】
図11(b)に示す気象情報画面の上方に表示される水位(水温・気温、給水開度、降水量)に示されているように、「水位」表示領域はメインのグラフとなり、水温・気温、及び、給水開度、降水量のグラフがサブグラフとなる。
【0060】
この画面で、水温・気温領域をタッチすると、図12(a)に示すように、水温・気温が上段にメイングラフとして表示され、その下に給水開度、降水量のサブグラフが表示される。
【0061】
図12(a)では、降水量が棒グラフとして表示されているが、気象情報提供サーバ60から入手した1時間毎の降水量に基づいて累積値を示す線グラフで表示してもよい。図12(b)では、画面に上部に表示される「表示範囲」の「1h」を選択した場合に、降水量が破線で示す線グラフで表示された態様が示されている。
【0062】
図13(a)に示す圃場一覧画面を、例えば右方向にスワイプ操作すると、図13(b)に示すように、表示処理部52に設けられた積算温度表示処理部により、各圃場の所定期間、この例では2020年5月1日を基点に昨日(本日を7月2日とする)までの過去2か月間の積算温度を表示する積算温度表示画面に切替わる。積算温度が表示された画面を、例えば左方向にスワイプ操作すると、元の圃場一覧画面に切替わる。なお、圃場一覧画面と積算温度表示画面の切替操作は、スワイプ操作に限るものではなく、圃場一覧画面に切替スイッチとなるアイコンを表示し、当該アイコンをタッチ操作することにより切り替えてもよい。
【0063】
積算温度とは、ある期間の日々の平均気温などを合計した値をいい、作物の生長に必要な熱量が十分に足りているか否かの指標として用いる値をいう。積算温度表示処理部により、各圃場の所定期間の積算温度が表示されることで、作物の生育状態を把握し、出穂期や刈取り時期などの判断や予測などに判断に用いることができる。
【0064】
積算温度の計算に用いる温度は、気象情報として得られた日々の平均気温の他に、一定の基準値を超えた値のみ取り出して合計した値を用いてもよい。
【0065】
なお、積算温度の基点は、適宜設定できるように構成してもよい。例えば、端末装置50の表示画面に積算温度を表示する基点日を入力する画面を表示してもよい。それらの設定値が要求処理部52を介して圃場管理水サーバ40に送信され、圃場水管理サーバ40から該当する情報が端末装置50に送信されるように構成すればよい。基点日の入力により、最初は移植日を基点日に設定して求まる積算温度を出穂期の予測に用い、出穂後は出穂日を基点日に設定して求まる積算温度を刈取り時期の判断に利用することができる。
【0066】
このように、圃場水管理サーバ40は、気象情報取得部44を介して気象情報提供装置60から圃場が位置する地域の気象情報を一括して取得し、気象情報提供部46を介して各端末装置50に必要な気象情報を提供することができる。端末装置50は、圃場水管理装置40から取得した所定の圃場の管理状態と気象情報が関連付けて表示されるようになる。気象情報には少なくとも降水量及び気温が含まれる。
【0067】
営農者は、端末装置50の表示画面を目視確認することにより、例えば各圃場の現在の状態と気温や降水量等の気象情報に基づいて必要となる作業を適切に判断することができるようになる。
【0068】
表示処理部52に設けられた水位表示処理部により、図11(b)に示したような、各圃場の圃場水位情報に気象情報を関連付けた時系列のグラフが表示される。これにより、圃場の水位の変動予測を適切に行なうことができ、例えば、給水の要否を適切に判断できるようになる。
【0069】
表示処理部52に設けられた水温表示処理部により、図12(a),(b)に示したような、各圃場の水温情報に気象情報を関連付けた時系列のグラフが表示される。これにより、圃場の水温の変動予測を適切に行なうことができ、例えば、かけ流しなどの給水の要否を適切に判断できるようになる。
【0070】
降水量に基づいて圃場の水位の変動予測が可能になり、気温に基づいて圃場の水温の変動予測が可能になる。
【0071】
表示処理部52は、給水装置による給水量と気象情報に含まれる降水量に基づいて各圃場の予測水位を表示する機能を備えることが好ましく、端末装置の表示画面に表示される各圃場の予測水位に基づいて、適切な給水管理を行なうことができる。
【0072】
表示処理部52は、給排水機器により取得した水温と気象情報に含まれる気温に基づいて各圃場の予測水温を表示する機能を備えることが好ましく、端末装置の表示画面に表示される各圃場の予測水温に基づいて、水温が好ましい値になるように適切な給水管理を行なうことができる。
【0073】
以上説明した実施形態は本発明の一実施態様に過ぎず、該記載により本発明の技術的範囲が限定されることを意図するものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1:圃場
2:水温水位計
10:給水管
12:給水装置
12A:給水栓
12B:給水制御装置
20:排水路
22:排水装置
22A:排水堰
22B:排水制御装置
40:圃場水管理サーバ(圃場水管理装置)
42:圃場管理部
44:気象情報取得部
46:気象情報提供部
48:記憶部
50:携帯端末(端末装置)
52:要求処理部
54:表示処理部
100:圃場水管理システム
図1
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