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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】プリント配線板及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/03 20060101AFI20240730BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20240730BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H04L25/03 B
H04L25/02 F
H05K1/02 C
H05K1/02 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121464
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017299
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】濱本 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕
(72)【発明者】
【氏名】大島 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 伊織
(72)【発明者】
【氏名】岡部 駿吾
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07269212(US,B1)
【文献】特開平01-312885(JP,A)
【文献】特開2017-017470(JP,A)
【文献】特開2002-342154(JP,A)
【文献】米国特許第06496889(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0290377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0347092(US,A1)
【文献】特表2019-525472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321845(US,A1)
【文献】特開平06-176872(JP,A)
【文献】特開2006-253168(JP,A)
【文献】特開2001-284129(JP,A)
【文献】特開2010-104038(JP,A)
【文献】特開2016-082297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0278906(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0233821(US,A1)
【文献】特表2006-513637(JP,A)
【文献】特開2017-022682(JP,A)
【文献】特開2009-239681(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093190(WO,A1)
【文献】小宮 一毅ほか,高速デジタル伝送におけるチップビーズの効果の検証,東京都立産業技術研究センター研究報告,2011年,第6号,pp.78~79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/00 - 25/66
H05K 1/02
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層で形成されるプリント基板と、
前記プリント基板に形成される送信回路と、
前記プリント基板に形成される複数の受信回路と、
前記送信回路及び複数の前記受信回路が接続される信号伝送用のマルチドロップ配線と、
前記マルチドロップ配線に形成され、前記送信回路から前記受信回路に伝送される信号に重畳されるノイズをろ過するフィルタ部と、を備え、
一端が前記送信回路に接続される前記マルチドロップ配線に形成された複数の分岐点から分岐した配線がそれぞれ複数の前記受信回路に接続され、
前記フィルタ部は、前記複数の層のうち、前記マルチドロップ配線が形成された層の前記マルチドロップ配線に対して形成される、異なる層の配線、又は前記受信回路とは接続されないフィルタリングVIAであり、クロストークノイズが発生する前記送信回路と、前記クロストークノイズの影響を受ける前記受信回路との間であって、前記複数の受信回路のうち、前記送信回路との距離が最も近い前記受信回路と、前記送信回路とが接続される前記マルチドロップ配線の間に形成され、
前記送信回路との距離が最も近い前記受信回路と、前記送信回路とが接続される前記マルチドロップ配線の間には、前記送信回路から順に、前記送信回路と前記マルチドロップ配線とを接続するVIA、前記フィルタリングVIAが形成される
プリント配線板。
【請求項2】
前記フィルタリングVIAは、前記複数の層を貫通して形成される貫通VIA、又は前記複数の層のうち、一部の層を貫通して形成される非貫通VIAのいずれかである
請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記送信回路はメモリコントローラであり、前記受信回路はメモリ素子であり、
前記マルチドロップ配線は、前記メモリコントローラから前記メモリ素子にアドレスとコマンドとコントロール信号とを送信する配線である
請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項4】
送信回路及び複数の受信回路が、信号伝送用のマルチドロップ配線で接続された、複数の層で形成されるプリント基板を有するプリント配線板を備えた情報処理装置であって、
前記マルチドロップ配線には、前記送信回路から前記受信回路に伝送される信号に重畳されるノイズをろ過するフィルタ部が形成され、
一端が前記送信回路に接続される前記マルチドロップ配線に形成された複数の分岐点から分岐した配線がそれぞれ複数の前記受信回路に接続され、
前記フィルタ部は、前記複数の層のうち、前記マルチドロップ配線が形成された層の前記マルチドロップ配線に対して形成される、異なる層の配線、又は前記受信回路とは接続されないフィルタリングVIAであり、クロストークノイズが発生する前記送信回路と、前記クロストークノイズの影響を受ける前記受信回路との間であって、前記複数の受信回路のうち、前記送信回路との距離が最も近い前記受信回路と、前記送信回路とが接続される前記マルチドロップ配線の間に形成され、
前記送信回路との距離が最も近い前記受信回路と、前記送信回路とが接続される前記マルチドロップ配線の間には、前記送信回路から順に、前記送信回路と前記マルチドロップ配線とを接続するVIA、前記フィルタリングVIAが形成される
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理装置に装着されるメモリ装置は、例えば複数のSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)と、そのSDRAMの書き込み及び読み出しを制御するメモリコントローラ(例えば、コントローラLSI:Large Scale Integration)とを備える。SDRAMは、以下の説明で「メモリ素子」とも呼ぶ。SDRAMは、DDR SDRAM(Double-Data-Rate SDRAM)を使用するのが一般的である。
【0003】
プリント配線板は、プリント基板に取り付けられた複数のメモリ素子とメモリコントローラを備える。メモリコントローラから各メモリ素子へは、マルチドロップ配線と称されるプリント基板に形成された配線パターンで、アドレス(Add)、コマンド(Cmd)、及びコントロール(Ctrl)信号が送信される。このマルチドロップ配線では、メモリコントローラが信号の送信端となり、複数のメモリ素子が信号の受信端になる。
【0004】
メモリコントローラと複数のメモリ素子とをマルチドロップ配線で接続する際には、配線ピッチと配線長を適切に選定する必要がある。配線長が適切でないと、メモリ素子が持つ容量成分(キャパシタンス)やVIA間のクロストークによって、送信信号にマイナス方向の反射が発生する。クロストークとは、ある配線の信号の変化が、他の配線の信号に影響を与える現象である。VIA間のクロストークとは、同じデバイスに対して複数の配線ごとに形成される複数のVIAの近傍で発生するクロストークのことである。
【0005】
ここで、VIAは、プリント基板における各種デバイスの実装面積を抑制するため、デバイスが実装された面とは異なる配線層へ信号を導通可能とする。VIAは、プリント基板の全層、又は一部の層を貫通し、めっき処理される部材であり、異なる層の配線を接続するために設けられる。あるデバイス(例えば、後述する図1に示すメモリ素子111)には、多数の配線が形成され、これら多数の配線ごとにVIAが形成されることがある。配線が近ければ、クロストークが発生しやすくなる。
【0006】
メモリコントローラから送出される送信信号に発生したマイナス方向の反射成分がメモリ素子の受信波形に重畳されてリングバックになると、デジタル信号のスレッシュホールドを適切に保つことが困難になる。その結果、電圧マージンの低下を招いて、メモリ素子が正しく信号を送信できなくなる。そして、メモリ素子は、電源電圧変動や温度などによって安定した動作を行うことが困難となってしまう。したがって、当該技術では、容量反射や近傍信号からのクロストークノイズを低減させることを可能とする為の方法が必要とされる。
【0007】
特許文献1には、「様々な実施形態は、メモリモジュール間に置かれる電子バンドギャップ(EBG)構造の使用を通じて電磁反射を低減させる。EBG構造は、電磁反射を減衰させ、少なくともコンピュータプロセッサにより近いメモリモジュールにおいてパフォーマンスを改善するために使用され得る。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2019-525472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
メモリ素子を搭載したプリント配線板を備える情報処理装置(コンピュータ)は、発電所や変電所、鉄工所を始めとした、各種設備を制御するので、情報処理装置の安定動作が強く求められる。また、これらの情報処理装置が近年のIoT(Internet of Things)化に対応する為には、メモリ素子の高速化、及び大容量化による情報処理装置の性能向上が必須となっている。
【0010】
とりわけ、メモリ素子で利用される信号の中でも、アドレス、コマンド、コントロール信号についてはマルチドロップ配線構造としたメモリ素子が用いられる。この配線構造は、複数の分岐や負荷を伴うため、不要反射による波形歪みを伴いやすい。加えて、データ線の配線長がデータ配線の配線長と比較して長いため、近傍の信号から重畳するクロストークノイズ(FEXT:Far-End Crosstalk)が顕在化する。ここで、データ線とは、例えば、後述する図3に示すメモリコントローラ110から終端抵抗104までのマルチドロップ配線102のことである。また、データ配線とは、例えば、後述する図3に示すメモリ素子111,112の間の配線TL1、メモリ素子112,113の間の配線TL2のようにデバイス間を1対1で接続される配線のことである。
【0011】
情報処理装置において、電源電圧変動、温度変化、LSIの製造バラツキといった変動要素が加わると、メモリ素子がデジタル信号を正常に受信できなくなる。そのため、前述した各種の変動要素に対する耐性を有した情報処理装置の安定動作が課題となっており、信号伝送においては波形品質の向上が求められている。
【0012】
上述したように、メモリコントローラやメモリ素子といったデバイスは、隣接する各配線及びVIAを伝送される信号が相互に影響を及ぼすことで発生するクロストークによる波形品質の劣化が知られている。また、これらのデバイスは、LSIの小型化、高密度化に伴い、各信号ピン同士の間隔が狭くなり、かつ、VIA内を伝送される信号が影響し合って、信号にクロストークノイズが重畳される。このクロストークノイズが、受信端のメモリ素子まで伝播されると、信号波形の品質が劣化していた。しかし、デバイスの構造によりVIAの配置位置が制約を受けるため、クロストークノイズを完全になくすことは難しかった。
【0013】
特許文献1には、DIMM(Dual Inline Memory Module)を用いたマルチドロップ配線の一例についての記載があるが、メモリ素子間の配線に関する解決方法については言及されていない。このため、特許文献1に記載された技術を用いても、メモリコントローラと同一のプリント基板上にメモリ素子が実装されるメモリダウン構造とした場合、又はメモリコントローラからの信号を受信して各メモリ素子に分配するDIMMの配線構造とした場合に発生する信号波形の品質低下を抑制することができなかった。
【0014】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、受信回路が受信する信号の品質低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るプリント配線板は、複数の層で形成されるプリント基板と、プリント基板に形成される送信回路と、プリント基板に形成される複数の受信回路と、送信回路と、複数の受信回路とが接続される信号伝送用のマルチドロップ配線と、マルチドロップ配線に形成され、送信回路から受信回路に伝送される信号に重畳されるノイズをろ過するフィルタ部と、を備え、一端が送信回路に接続されるマルチドロップ配線に形成された複数の分岐点から分岐した配線がそれぞれ複数の受信回路に接続され、フィルタ部は、複数の層のうち、マルチドロップ配線が形成された層のマルチドロップ配線に対して形成される、異なる層の配線、又は受信回路とは接続されないフィルタリングVIAであり、クロストークノイズが発生する送信回路と、クロストークノイズの影響を受ける受信回路との間であって、複数の受信回路のうち、送信回路との距離が最も近い受信回路と、送信回路とが接続されるマルチドロップ配線の間に形成され、送信回路との距離が最も近い受信回路と、送信回路とが接続されるマルチドロップ配線の間には、送信回路から順に、送信回路とマルチドロップ配線とを接続するVIA、フィルタリングVIAが形成される
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受信回路が受信する信号に重畳されるノイズが除去され、信号の品質低下を抑制することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態例に係るマルチドロップ配線を適用した情報処理装置の構成図である。
図2】本発明の一実施の形態例に係るマルチドロップ配線を適用した情報処理装置の別の構成図である。
図3】プリント配線板に形成された従来のマルチドロップ配線の構成例を示す図である。
図4】プリント配線板に形成された従来のマルチドロップ配線の別の構成例を示す図である。
図5】プリント配線板に形成された本例のマルチドロップ配線の構成例を示す図である。
図6】プリント配線板に形成された本例のマルチドロップ配線の別の構成例を示す図である。
図7】本発明の一実施の形態例に係るプリント配線板の断面図である。
図8】一のメモリ素子から他のメモリ素子のインサーションロスを表す散乱パラメータ(Sパラメータ)の例を示す。
図9】一のメモリ素子から他のメモリ素子のクロストークを表す散乱パラメータの例を示す。
図10】従来のマルチドロップ配線の構成例とした情報処理装置のメモリ素子で観測されるアイパターン波形の例を示す図である。
図11】本例のマルチドロップ配線の構成例とした情報処理装置のメモリ素子で観測されるアイパターン波形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0019】
[情報処理装置の構成]
図1及び図2は、本例のマルチドロップ配線を適用した情報処理装置の概要を示す。
図1は、本例のマルチドロップ配線を適用した情報処理装置の構成図である。
図1に示す情報処理装置100は、プリント配線板10を備える。
プリント配線板10は、プリント基板101、1個のメモリコントローラ110、及び複数のメモリ素子111~115を備える。そして、プリント基板101の表面には、1個のメモリコントローラ110と、複数のメモリ素子111~115とが直接実装されている。
【0020】
プリント基板101は、マルチドロップ配線102を備える。マルチドロップ配線102は、メモリコントローラ110と各メモリ素子111~115との間を接続する。
各メモリ素子111~115は、例えば、DDR SDRAMである。各メモリ素子111~115でのデータの書き込みや読み出しは、メモリコントローラ110により制御される。この制御を行うために、メモリコントローラ110からマルチドロップ配線102を介して、アドレス、コマンド、及びコントロール信号が各メモリ素子111~115に伝送される。
【0021】
図2は、本例のマルチドロップ配線を適用した情報処理装置の別の構成図である。
図2に示す情報処理装置100Aは、プリント配線板10Aを備える。
プリント配線板10Aのプリント基板101には、コネクタ103が取り付けられている。コネクタ103には、サブ基板106上に実装された複数のメモリ素子111~115が接続されている。このように複数のメモリ素子111~115が実装されたサブ基板106は、DIMMカード等と称される。
メモリコントローラ110は、プリント基板101に直接実装されている。
【0022】
図2に示す情報処理装置100Aも、図1に示す情報処理装置100と同様に、複数のメモリ素子111~115が、プリント基板101の表面に実装されている。また、図2に示すプリント基板101にも、メモリコントローラ110から、マルチドロップ配線102を経由して、各メモリ素子111~115にアドレス、コマンド、及びコントロール信号が伝送される。
【0023】
[従来の構成]
次に、従来のマルチドロップ配線の構成例について、図3図4を参照して説明する。
【0024】
<従来のマルチドロップ配線の構成例>
図3は、プリント基板101に形成された従来のマルチドロップ配線102の構成例を示す図である。なお、本例のマルチドロップ配線102は、図1に示すように、メモリ素子111~115がプリント基板101に直接実装された場合と、図2に示すように、メモリ素子111~115がプリント基板101にコネクタ103を介して実装された場合のいずれに適用してもよい。
【0025】
アドレス、コマンド、及びコントロール信号の送信回路であるメモリコントローラ110には、マルチドロップ配線102の始端(一端)102xが接続されている。このマルチドロップ配線102には、複数箇所に分岐点102a,102b,102c,102d,102eが設けられ、終端(他端)には終端抵抗104が接続されている。図中のメモリコントローラ110には、信号の送信端を表す「Tx」という符号が付されている。また、メモリコントローラ110は、別名として「IC1」が割り当てられる。メモリコントローラ110に割り当てられる符号及び別名は、以降の図においても同様である。
【0026】
各分岐点102a~102eで分岐した配線は、各メモリ素子111~115の接続箇所111a~115aに接続されている。なお、既に説明したように、各メモリ素子111~115は、プリント基板101の表面に配置されている。したがって、各分岐点102a,102b,102c,102d,102eでは、メモリ素子111,112,113,114,115への分岐が形成されている。図中の各メモリ素子111~115には、信号の受信端を表す「Rx1」~「Rx5」という符号が付されている。また、各メモリ素子111~115には、別名として「IC2」~「IC6」が割り当てられる。各メモリ素子111~115に割り当てられる符号及び別名は、以降の図においても同様である。
【0027】
また、プリント基板101には、マルチドロップ配線102に合わせて、VIA120~VIA126が形成される。VIA120は、始端102xと分岐点102aの間に形成される。図中では、VIA120~VIA126の別名として「VIA0」~「VIA6」が割り当てられる。各VIA120~VIA126に割り当てられる符号及び別名は、以降の図においても同様である。
【0028】
マルチドロップ配線102の始端102xからVIA120までの配線を配線TL0と呼び、VIA120(VIA0)から分岐点102aまでの配線に符号「TL1」を割り当てる。このように配線TL0は、メモリコントローラ110からプリント基板101の内層配線又は裏面配線に接続するためのVIA0までの信号線を表す。
【0029】
そして、分岐点102aと分岐点102bの配線に符号「TL2」を割り当てる。同様に、分岐点102b,102cの間、分岐点102c,102dの間、分岐点102d,102eの間の配線に符号「TL3」、「TL4」、「TL5」を割り当てる。
【0030】
そして、分岐点102aには、VIA121が形成される。同様に、分岐点102b、102c,102d,102eには、それぞれVIA122,123,124,125が形成される。配線TL1から配線TL5は、メモリコントローラ110と各メモリ素子111~115間、及び終端とを接続する配線である。そして、配線TL1から配線TL5は、それぞれVIA1~VIA5を介して、各分岐点102A~102eに接続される。
【0031】
なお、図3では、メモリコントローラ110とメモリ素子111の間に、配線TL0,TL1が設けられる構成が示された。このメモリコントローラ110は、プリント基板101に実装される際、プリント基板101のパッドに、メモリコントローラ110のピンが接続されるPad on VIA構造が用いられる。このため、メモリコントローラ110のパッドに直接VIA0を形成した構成であれば、配線TL0が存在しない場合もある。
【0032】
<従来のマルチドロップ配線の別の構成例>
図4は、プリント基板101に形成された従来のマルチドロップ配線102の別の構成例を示す図である。
図4に示すように、メモリコントローラ110及びメモリ素子111~115がマルチドロップ配線102を介して接続される。メモリコントローラ110には、マルチドロップ配線102の始端(一端)102xが接続されている。そして、マルチドロップ配線102の終端(他端)には終端抵抗104が接続されている。
【0033】
また、プリント基板101には、マルチドロップ配線102に合わせて、VIA120~VIA126が形成される。VIA120は、始端102xと分岐点102aの間に形成される。
【0034】
ここで、メモリ素子111~115は、マルチドロップ配線102に直接接続されている。このため、マルチドロップ配線102の別の構成では、マルチドロップ配線102とメモリ素子111~115とを接続するための分岐点は存在しない。ただし、メモリ素子111~115とマルチドロップ配線102とが接続される箇所には、それぞれVIA121~125が形成される。なお、配線TL0~TL5の呼び方は、図3に示した従来のマルチドロップ配線102の構成例と同様である。
【0035】
[本例の構成]
次に、本発明の一実施の形態に係るマルチドロップ配線102の構成例について、図5図6を参照して説明する。
【0036】
<本例のマルチドロップ配線の構成例>
図5は、プリント基板101に形成された本例のマルチドロップ配線102の構成例を示す。
図5に示すマルチドロップ配線102の構成例は、図3に示した従来のマルチドロップ配線102の構成例と同様であるが、VIA0とVIA1の配線TL1の途中にフィルタリングVIA131を設けた点が異なる。このマルチドロップ配線102は、メモリコントローラ110からメモリ素子111~115にアドレスとコマンドとコントロール信号とを送信する配線である。マルチドロップ配線102は、図1に示したようにコネクタ103を介さずにメモリ素子111~115に直接接続される構成としてもよいし、図2に示したようにコネクタ103を介してメモリ素子111~115に接続される構成としてもよい。
【0037】
プリント配線板10は、プリント基板101と、プリント基板101に形成されるメモリコントローラ110(送信回路の一例)と、プリント基板101に形成されるメモリ素子111~115(複数の受信回路の一例)と、メモリコントローラ110及びメモリ素子111~115が接続される高速信号伝送用のマルチドロップ配線102と、マルチドロップ配線102に形成され、メモリコントローラ110からメモリ素子に伝送される信号に重畳されるノイズをろ過するフィルタ部と、を備える。そして、一端がメモリコントローラ110に接続されるマルチドロップ配線102に形成された複数の分岐点から分岐した配線がそれぞれメモリ素子111~115に接続される構成としている。ここで、フィルタ部は、プリント基板101に形成される複数の層のうち、マルチドロップ配線102が形成された層のマルチドロップ配線102に対して形成される、異なる層の配線、又はメモリ素子とは接続されないフィルタリングVIA131である。
【0038】
フィルタリングVIA131は、信号の受信端(Rx)である各メモリ素子111~115が受信する信号の波形として観測されるクロストークノイズを減衰することを目的として設けられる。フィルタリングVIA131は、少なくとも1つ以上あればよい。このため、複数のフィルタリングVIA131がマルチドロップ配線102に形成されてもよい。
【0039】
フィルタリングVIA131は、メモリコントローラ110からメモリ素子111への配線(図5では、配線TL1)に形成される
【0040】
ただし、複数のフィルタリングVIA131を設けると、フィルタリングVIA131を避けるように、他のデバイスに接続される配線を設計しなければならず、プリント基板101における各種デバイスの実装面積が増加する。このため、フィルタリングVIA131は、配線TL1~TL5の全ての配線に合わせて配置される必要はなく、クロストークによる波形品質劣化の顕著な信号線路に選択的に用いる。また、フィルタリングVIA131は、問題となるクロストークノイズの発生箇所に応じて、配線TL2から配線TL5のいずれに配置してもよい。そこで、情報処理装置の設計者は、シミュレーションを行い、クロストークノイズが発生しやすい配線だけにフィルタリングVIA131を設けるよう設計するとよい。
【0041】
例えば、メモリ素子112が受信する信号に発生したクロストークノイズは、配線TL1、TL2を通じて、メモリ素子111及び113が受信する信号に重畳される。このため、信号伝送のシミュレーション時には、メモリ素子111及び113が受信する信号の波形が観察される。メモリ素子111及び113が受信する信号の波形に問題がなければ、フィルタリングVIA131を設ける必要はない。
【0042】
しかし、メモリ素子111又は113のいずれかが受信する信号の波形に問題があれば、VIA2からメモリ素子111又は113のいずれかの配線内にフィルタリングVIA131を設ける。例えば、特定の周波数の波形を除きたい場合には、フィルタリングVIA131の有無による波形の変化等を参考にして、フィルタリングVIA131の設置可否、設置位置が判断される。このため、メモリ素子111が受信する信号に重畳されたクロストークノイズの影響が大きければ、メモリ素子112からメモリ素子111の間の配線TL2にフィルタリングVIA131が設けられる。このようにフィルタリングVIA131は、クロストークノイズが発生する送信端と、クロストークノイズの影響を受ける受信端との間に設けられる。
【0043】
<本例のマルチドロップ配線の別の構成例>
図6は、プリント基板101に形成された本例のマルチドロップ配線102の別の構成例を示す。
図6に示すマルチドロップ配線102の別の構成例は、図4に示した従来のマルチドロップ配線102の構成例と同様であるが、VIA0とVIA1の途中の配線TL1にフィルタリングVIA131を設けた点が異なる。
【0044】
<フィルタリングVIAの構成例>
ここで、フィルタリングVIA131の構成例について、図7を参照して説明する。
図7は、プリント基板101の断面図である。図7の断面図は、図5に示したマルチドロップ配線102を表したものであるが、図6に示したマルチドロップ配線102の別の構成例においても、図7と同様の断面図で、各VIA及びフィルタリングVIAが表される。
【0045】
プリント基板101は、第1層から第6層まで複数の層が積層して構成される。図7では、実際に積層されている各層の記載は省略する。第1層には、マルチドロップ配線102の始端102x、メモリ素子111~115、及び終端抵抗104が形成される。始端102xは、第1層に形成された配線TL0の一端に接続されており、配線TL0の他端は、VIA0を介して第3層に形成された配線TL1に接続される。配線TL2~TL5も同じ第3層に形成される。上述したようにVIA1~VIA6は、マルチドロップ配線102に形成される。そして、VIA0~VIA6は、第1層に形成されるデバイス(メモリ素子等)の配線を、第1層とは異なる第3層の配線に接続するために用いられている。
【0046】
ここで、配線TL1に形成されたフィルタリングVIA131は、第1層から第6層を貫通した構成とされる。また、フィルタリングVIA131には、メモリ素子111~115等のいずれのデバイスとも接続されていない。たとえフィルタリングVIA131が、配線TL2~TL5のいずれかに設けられた場合であっても、フィルタリングVIA131にはデバイスが接続されない。フィルタリングVIA131は、配線TL1に限らず、各メモリ素子111~115が受信する信号に重畳されるクロストークを抑制したい箇所に任意に追加すればよい。
【0047】
ここで、フィルタリングVIA131は、複数の層を貫通して形成される貫通VIA、又は複数の層のうち、一部の層を貫通して形成される非貫通VIAのいずれかである。非貫通VIAとは、プリント基板101の全層を貫通しないVIAのことである。そして、フィルタリングVIA131の構成は、図7に示す貫通スルーホール構造に限らない。例えば、レーザーVIAを始めとした非貫通VIAの構造、及び、非貫通VIAを重ねたスタック構造のうち、少なくともいずれか一つの構造により、フィルタリングVIA131が構成されてもよい。例えば、第3層と第4層だけを貫通したVIAは非貫通VIAである。また、プリント基板101を構成する複数の層に形成された複数のVIAが重なる構造がスタック構造である。スタック構造は、エニーレイヤ構造とも呼ばれる。
【0048】
このようにフィルタリングVIA131を設けることの効果について説明する。
配線TL1には、メモリコントローラ110とメモリ素子111との層変更を伴わないフィルタリングVIA131を配置する。フィルタリングVIA131は、受信端が受信する信号(Victim信号)に重畳する高周波帯域のクロストークノイズを減衰させる機能を持つ。信号からクロストークノイズが減衰されることで、受信端が信号を良好に受信できるようになる。ここで、メモリコントローラ110が送信する信号により影響を受けた、メモリ素子が受信する信号をVictim信号と呼ぶ。Victim信号の発生有無は、マルチドロップ配線102の設計時に行われる動作シミュレーションで把握することができる。
【0049】
次に、従来のマルチドロップ配線102の構成例と、本例のマルチドロップ配線102の構成例とのインサーションロスの違いについて説明する。以下、図3又は図4に示すトポロジで構成される配線を「従来のマルチドロップ配線102」と呼び、図5又は図6に示すトポロジで構成される配線を「本例のマルチドロップ配線102」と呼ぶ。
【0050】
図8は、メモリ素子111からメモリ素子112に送信される信号のインサーションロスを表す散乱パラメータ(Sパラメータ)の例を示す。図8のグラフは、例えば、メモリコントローラ110がメモリ素子111に送信する信号のエネルギーが、特定の配線でどの程度減衰したかを周波数ごとに表している。
【0051】
図中の破線は、フィルタリングVIA131を備えない構成とした従来のマルチドロップ配線102の散乱パラメータを表す。また、図中の実線は、フィルタリングVIA131を備える構成とした本例のマルチドロップ配線102の散乱パラメータを表す。図8より、3GHz以上の周波数帯域において、インサーションロスが大きくなっていることが分かる。
【0052】
図8より、およそ3GHz以上の周波数帯域において、従来及び本例のマルチドロップ配線102は共にインサーションロスが大きくなること、フィルタリングVIA131を備える構成とした方が、フィルタリングVIA131を備えない構成よりも振幅の落ち幅が大きいことが示される。例えば、3.5GHz、6~7GHz、9~10GHzの周波数では、実線で示すフィルタリングVIA131を備える構成のマルチドロップ配線102のインサーションロスが大きくなっている。
【0053】
このことは、従来よりも受信端にエネルギーが伝わりにくい周波数が存在することを表す。すなわち、信号に重畳したノイズの周波数の振幅の落ち幅が大きければ、受信端で受信する信号のノイズが抑制されたこととなる。
【0054】
次に、従来のマルチドロップ配線102の構成例と、本例のマルチドロップ配線102の構成例とのクロストークの違いについて説明する。
図9は、メモリ素子111からメモリ素子112のクロストークを表す散乱パラメータの例を示す。
【0055】
図中の破線は、フィルタリングVIA131を備えない構成とした従来のマルチドロップ配線102の散乱パラメータを表す。また、図中の実線は、フィルタリングVIA131を備える構成とした本例のマルチドロップ配線102の散乱パラメータを表す。
【0056】
図9より、およそ6GHz以上の周波数帯域において、散乱パラメータのロスが大きくなっていること、フィルタリングVIA131を備える構成とした方が、フィルタリングVIA131を備えない構成よりも振幅の落ち幅が大きいことが示される。例えば、6.1GHz、7GHz、8~9GHz付近の周波数では、実線で示すフィルタリングVIA131を備える構成のマルチドロップ配線102のクロストークが減少している。
【0057】
この点からも、信号に重畳したクロストークノイズの周波数が、振幅の落ち幅が大きい周波数であれば、受信端で受信する信号はクロストークノイズが抑制されたこととなる。
【0058】
<スレッショルドと波形の関係>
次に、メモリ素子のインターフェイスで観測されるスレッショルドと波形の関係について、図10図11を参照して説明する。ここで、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)スタンダードにて規定されるDDRメモリインターフェイスを、「メモリ素子のインターフェイス」と呼ぶ。
【0059】
図10は、従来のマルチドロップ配線102の構成例とした情報処理装置100のメモリ素子111(IC2)で観測されるアイパターン波形の例を示す。
図11は、本例のマルチドロップ配線102の構成例とした情報処理装置100のメモリ素子111(IC2)で観測されるアイパターン波形の例を示す。
【0060】
メモリ素子のインターフェイスでは、ホールドタイムでスレッショルド電圧Vih(dc),Vil(dc)が用いられ、セットアップタイムでスレッショルド電圧Vih(ac),Vil(ac)が用いられる。そして、ホールドタイムで用いるスレッショルド電圧Vih(dc)は、セットアップタイムで用いるスレッショルド電圧Vih(ac)よりも低い。一方、ホールドタイムで用いるスレッショルド電圧Vil(dc)は、セットアップタイムで用いるスレッショルド電圧Vil(ac)よりも高い。
【0061】
信号波形は、例えば、時間が0.3nsの時に立ち上がってスレッショルド電圧Vih(ac)を超えるか、又は立ち下がって、スレッショルド電圧Vil(ac)未満となることで、信号が「1」又は「0」に切り替わる。その後、信号波形が、例えば、時間が0.9nsの時に立ち下がってスレッショルド電圧Vih(dc)未満となるか、又は立ち上がってスレッショルド電圧Vih(dc)を超えることで、信号が「0」又は「1」に切り替わる。
【0062】
アイマスクは、スレッショルド電圧Vih(dc),Vil(dc)を上辺とし、スレッショルド電圧Vih(ac),Vil(ac)を下辺とする台形で表される。ここで、セットアップタイムで用いるスレッショルド電圧Vih(ac),Vil(ac)のいずれかに波形が侵入する箇所がアイマスクの下辺に該当する。図10では、進入箇所130で波形がスレッショルド電圧Vih(ac)に侵入していることが示される。一般的なマルチドロップ配線102から得られたアイパターンはデジタルのスレッショルドにクロストークによるリングバックが侵入するため、信号波形が乱れる。この結果、アイマスクが小さく、波形品質が低くなることが分かる。
【0063】
一方、図11では、スレッショルド電圧Vih(ac),Vil(ac)のいずれかに波形が侵入する箇所がない。このため、受信端は、オン状態の信号をオフ状態と誤認識する恐れがなくなる。
【0064】
そして、図10図11に示す台形のアイマスクと波形との間の距離M1,M2が、電圧マージンになる。距離M1は、スレッショルド電圧Vih(dc)から、信号が「1」になった波形との間、又はスレッショルド電圧Vil(dc)から、信号が「0」になった波形との間の距離であり、電圧マージンと呼ばれる。電圧マージンは図1に示す情報処理装置100の安定動作、信頼性向上に寄与するものである。受信端がデータを適正に受信するためには、このアイマスクの電圧マージンは大きい方が好ましい。逆にアイマスクの電圧マージンが小さいと、受信端がデータを正しく受信できない可能性が高くなる。
【0065】
図10図11に示すアイパターンを比較すると、図11に示す本例のアイマスクに対する距離M2は、図10に示すアイマスクに対する距離M1よりも大きい。このため、本例のマルチドロップ配線102の構成例とした情報処理装置100のメモリ素子は、従来のマルチドロップ配線102の構成例とした情報処理装置100のメモリ素子よりも正しく信号を受信することができる。
【0066】
図11に示したアイパターン波形で表されるアイマスクに対する電圧マージンの拡大は、アイパターンに現れるリングバック成分と容量反射成分の同時重畳が緩和され、かつスレッショルド電圧Vih(ac),Vil(ac)への波形の侵入が回避されることで、実現される。このため、本例のマルチドロップ配線102を有するプリント基板101によると、メモリコントローラ110から各メモリ素子111~115へのアドレス、コマンド、及びコントロール信号の伝送が、エラーなく安定して行うことができる。したがって、メモリコントローラ110やメモリ素子111~115を備えた情報処理装置100,100Aの信頼性が向上する。
【0067】
<情報処理装置の製造方法>
本例のフィルタリングVIA131の製造方法は、VIA121~126の製造方法と同じとしてよい。また、タブ化配線(Tabbed Routing)により並行配線のクロストークの影響を削減する手法も存在する。ただし、設計したタブの形状を製造工程で実現させようとした場合、一般的、かつ、安価なサブトラクティブ工法によるエッチングではエッチング液の循環を考慮したエッチングマスク形状を補正する必要性がある。ただし、タブ化配線では、エッチング液の循環性が悪化する領域として、導体間隔の狭い箇所が多数存在することになる。このため、製造上の難易度増加につながる。
そこで、アディティブ工法又はセミアディティブ工法により、上述のエッチング補正を回避することができるが、サブトラクティブ工法よりも高コストの工法である。
【0068】
このため、一般的かつ安価なサブトラクティブ工法によるエッチングでマルチドロップ配線102及びフィルタリングVIA131を作成するとよい。そして、サブトラクティブ工法を用いて、通常使用されるVIAの製造工程にフィルタリングVIA131の製造工程を追加することで、フィルタリングVIA131を実現可能である。サブトラクティブエッチング工法を用いても、プリント基板101の製作上における難易度を増加させない。
【0069】
以上説明した実施の形態に係る情報処理装置100,100Aでは、高速かつ、電圧マージンの小さいにメモリ素子111~115に配線する場合に、クロストークを始めとした外部ノイズに対する電圧マージンの確保が求められる。そこで、マルチドロップ配線102にフィルタリングVIA131を設けた構成とすることで、クロストークノイズを抑制することができる。この結果、アイパターンの電圧マージンの確保を図り、受信信号の波形品質を高めることができる。
【0070】
例えば、各種設備を制御する情報処理装置100,100Aの電源電圧変動、周囲の温度変化によるメモリコントローラ110の特性変化、プリント配線板に実装されるメモリ素子のロットごとの製造ばらつき、メモリコントローラ110を構成するLSI等のロットごとの製造バラツキといった変動要素に対する耐性を有する情報処理装置100,100Aの安定動作を実現する。
【0071】
従来、フィルタリングVIA131のようなVIAはマルチドロップ配線102に形成されていなかった。この理由として、例えば、フィルタリングVIA131の効果が知られていなかったこと、また、フィルタリングVIA131を構成することで各種デバイスの実装面積が増加することが挙げられる。なお、従来の低速信号伝送用の配線途中に、いずれのデバイスにも接続されていないVIAが形成されることがあった。このVIAは、プローブを当てて配線から信号を取り出して、信号品質を確認するために設けられるものであった。しかし、本例のように高速信号を伝送するための配線にVIAを形成しても、このVIAにプローブを当てて信号を取り出しても、信号の波形が乱れ、信号波形を正しく観測することはできない。一方、本例のフィルタリングVIA131は、配線を伝送される信号に重畳したノイズを抑制するために用いられる。このため、受信端は、信号を正しく受信することが可能となる。
【0072】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
【0073】
上述した実施の形態では、プリント基板101の表面にメモリ素子111~115が実装された例について説明した。しかし、プリント基板101の表面及び裏面に実装されたメモリ素子にマルチドロップ配線102が分岐して接続される構成としてもよい。この場合もマルチドロップ配線102にフィルタリングVIA131を形成することで、受信端で観測されるアイマスクに対する電圧マージンを拡大することができる。
【0074】
また、上述した実施の形態では、マルチドロップ配線102が1枚のプリント基板101内で構成されることを説明した。しかし、メモリコントローラ110が実装されたプリント基板101とは別の、DIMMカードを始めとするメモリ素子をプリント基板101に実装し、プリント基板101にメモリ素子を連結してマルチドロップ配線102を構成してもよい。
【0075】
上述した実施の形態に係るプリント基板101は、内層(図7に示す第3層)の配線に対してVIA0~6及びフィルタリングVIA131を設けた構成とした。ここで、プリント基板101の外層(図7に示す第3層)に配線が構成される場合、この配線に対してクロストークノイズの周波数成分を抑制可能なコンデンサ及び抵抗を組み合わせたフィルタ部を構成してもよい。このような構成としたフィルタ部であっても、メモリコントローラ110からメモリ素子111~115に伝送される信号に重畳されるノイズをろ過することが可能であるので、クロストークノイズを十分に抑制できる。
【0076】
また、上述した実施の形態では、具体的な例として、工場における生産設備を制御する情報処理装置を実施例として挙げたが、産業用設備の制御用途に限らず、各種民生機器、車載機器を始め、メモリ素子を搭載する各種の情報処理装置においても同様の効果を得ることができる。
【0077】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10,10A…プリント配線板、100,100A…情報処理装置、101…プリント基板、102…マルチドロップ配線、103…コネクタ、104…終端抵抗、106…サブ基板、110…メモリコントローラ、111~115…メモリ素子、131…フィルタリングVIA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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