(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】釣糸ガイド及び釣竿
(51)【国際特許分類】
A01K 87/04 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A01K87/04 Z
A01K87/04 D
(21)【出願番号】P 2021188478
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】河合 一輝
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119887(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107564(JP,U)
【文献】実開昭58-117859(JP,U)
【文献】特開2001-157532(JP,A)
【文献】特開2012-075332(JP,A)
【文献】特開平10-080239(JP,A)
【文献】特開2011-006272(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0015606(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00 - 87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿杆に対して固定部位となるガイド脚と、釣糸が挿通される釣糸挿通部と、前記ガイド脚から立ち上がって前記釣糸挿通部に連結する連結部とを備え、セラミック材によって一体成形された板状の釣糸ガイドにおいて、
前記ガイド脚の固定部位の近傍に、竿先側に突出する肉厚部が形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記肉厚部は、連結部に形成されるリブであることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記リブは、前記ガイド脚の裏面の中央部分から前記連結部の中央部分に亘って形成されていることを特徴とする請求項2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記リブは、竿杆に固定した際、竿杆表面に当接するように形成されており、
竿杆表面に固定される部分に、竿杆の軸方向に沿って延出する溝が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記リブは、前記釣糸挿通部の竿先側の面から竿先側に突出しない高さに形成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記リブの幅は、竿杆に対する固定側が広く、釣糸挿通部側に向けて狭くなることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記リブの高さは、竿杆に対する固定側が高く、釣糸挿通部側に向けて低くなることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
前記リブの固定部位側には、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の前記ガイド脚を竿杆に糸巻し、その表面に樹脂材を塗布することで釣糸ガイドを取着したことを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸ガイド及び釣糸ガイドを装着した釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピニングリールや両軸受けリール等、各種の魚釣用リールを装着できる釣竿が知られており、このような釣竿には、魚釣用リールから繰り出される釣糸を案内する釣糸ガイドが釣竿の長手方向に所定間隔をおいて取り付けられている。通常、釣糸ガイドは、釣糸が挿通する釣糸挿通部(ガイドリングが取着されるガイドリング保持部)、釣竿の竿杆に固定されるガイド脚、釣糸挿通部とガイド脚を連結する連結部を備えた構成となっている。また、このような釣糸ガイドは、金属、合成樹脂、繊維強化樹脂で板状に形成されており(特許文献1の
図8参照)、前記ガイド脚を竿杆上に載置し、ガイド脚を糸止めして樹脂を塗布することで竿杆に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような板状の釣糸ガイドは、セラミック材を、例えば、射出成形(インジェクション成形)することで一体成形することが可能である。このようにセラミック材で一体形成した釣糸ガイドは、十分な硬度が得られると共に、軽量化を図ることが可能である。特に、セラミック材は、釣糸の摺動性が良いため、釣糸挿通部にガイドリングを取着する必要がなく、効果的に軽量化を図ることが可能となる。
【0005】
しかし、セラミック材は、衝撃強度が弱く、実釣時や取り扱い時に他物から衝撃を受けると破損等する可能性がある。このため、一般的な金属製の釣糸ガイドと同等なサイズで形成した際、衝撃強度が低いことから、結果として、形状を厚肉化する必要が生じてしまう。このように、釣糸ガイドを厚肉化すると、空気抵抗を受け易くなって釣竿の操作性を低下させると共に、見た目も重そうに見えてしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、セラミック材を使用して、金属ガイドと同等サイズの釣糸ガイドを成形しても、必要な衝撃強度を備えると共に、空気抵抗を受け難く、見た目にも軽そうな釣糸ガイド、及び、そのような釣糸ガイドを装着した釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣糸ガイドは、竿杆に対して固定部位となるガイド脚と、釣糸が挿通される釣糸挿通部と、前記ガイド脚から立ち上がって前記釣糸挿通部に連結する連結部とを備え、セラミック材によって一体成形された板状に構成されており、前記ガイド脚の固定部位の近傍に、竿先側に突出する肉厚部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記した構成の釣糸ガイドは、セラミック材によって一体成形されているので、軽量化が図れると共に、釣糸挿通部にガイドリングを取着する必要もない。また、ガイド脚の固定部位は、釣糸ガイドが他物から衝撃を受けた際、大きな負荷が作用して破損など生じ易い部位であるところ、この部分の近傍に、竿先側に突出する肉厚部を形成したことで、金属ガイドと同等サイズの釣糸ガイドであっても、同様な耐衝撃強度を効率的に確保することができる。また、釣糸ガイドの本体部分を必要以上に厚肉化しないため、空気抵抗を受け難く、見た目にも重そうな印象を与えることもない。
【0009】
また、本発明は、上記した釣糸ガイドを装着した釣竿を提供する。
このような釣竿は、上記したような重量化することなく効率的に衝撃強度を高めた釣糸ガイドを複数設置したことで、釣竿全体として重量化することがない。このため、操作性が低下したり、見た目で重そうな印象を与えることはない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セラミック材を使用して、金属ガイドと同等サイズの釣糸ガイドを成形しても、必要な衝撃強度を備えると共に、空気抵抗を受け難く、見た目にも軽そうな釣糸ガイド、及び、そのような釣糸ガイドを装着した釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示す釣糸ガイドを基端側の上方から見た斜視図。
【
図3】(a)は
図1に示す釣糸ガイドの側面図、(b)はリブの貫通孔の変形例を示す釣糸ガイドの側面図。
【
図5】
図1に示す釣糸ガイドを竿先側の下方から見た斜視図。
【
図7】
図1に示す釣糸ガイドを竿杆表面に固定した状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図。
【
図8】釣糸ガイドの第1の変形例を示す図であり、(a)はガイド脚部分の平面図、(b)は側面図、(c)は凹凸構造の変形例を示す図。
【
図9】釣糸ガイドの第2の変形例を示す図であり、ガイド脚部分の平面図。
【
図10】釣糸ガイドの第3の変形例を示す図であり、ガイド脚部分を示す断面図。
【
図11】釣糸ガイドの第4の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は連結部の変形例を示す図。
【
図12】釣糸ガイドの第5の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示す図である。
図1に示す釣竿1は、元竿杆3に、中竿杆5及び穂先竿杆7を収容し、これを順次振り出して継合される振出式に構成されている。各竿杆は、管状体として構成されており、例えば、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂製のプリプレグシートを巻回することで作成されている。このような素材による管状体は、公知の製造方法によって作成され、本発明の釣竿を構成する竿杆は、そのような管状体構造以外にも、中実構造であっても良い。また、元竿杆3の内部に収納される竿杆の本数(継合本数)については任意であり、その継合方法についても、振出式以外に、並継式、インロー継式などであっても良い。また、釣竿は、複数の竿杆を継合するのではなく1本竿であっても良い。
【0013】
前記元竿杆3の基端側には、リール脚載置部を具備したリールシート9が配設されている。このリールシート9には、リール脚載置部の軸方向両側に固定フード及び移動フードが設けられており、リール脚載置部に魚釣用リール100のリール脚を載置して移動フードを軸方向に移動させることで、リール脚はリール脚載置部上に締め付け固定される。なお、移動フードは、穂先側、基端側のいずれに配設されていても良く、両側が移動フードとして構成されていても良い。
【0014】
前記元竿杆3、中竿杆5及び穂先竿杆7には、釣糸を案内する釣糸ガイド10,10Aが装着されている(釣糸ガイド10Aはトップガイド)。前記釣糸ガイド10は、各竿杆の表面に、軸方向に沿って所定の間隔となるように複数個配設されている。なお、これらの釣糸ガイド10は、後述するような固定方法によって固定されるタイプのもの(固定ガイド)、及び、竿杆の収納時に竿杆表面に沿って摺動可能なタイプのもの(遊動ガイド)が含まれている。
【0015】
次に、
図2から
図6を参照して、上記した釣竿に装着される釣糸ガイド10の構成について説明する。これらの図では、竿杆の表面に対して固定される固定ガイドが示されており、各竿杆に対する取り付け位置は前端側となる。このため、取り付けられる竿杆の外径に応じて、その大きさ等は、適宜変更される。
【0016】
本実施形態の釣糸ガイド10は、取り付けられる竿杆の軸方向に延出するガイド脚11と、釣糸が挿通される釣糸挿通部13と、前記ガイド脚11の穂先側の端部から立ち上がって釣糸挿通部13に連結する連結部15とを備えており、これらは平板状に形成されている。そして、このような構成要素を備えた平板状の釣糸ガイド10は、例えば、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリカ、ジルコニア等のセラミック材を粉末状にし、これを射出成形することで一体成形されている。
【0017】
また、本実施形態の釣糸ガイド10は、ガイド脚11が基端側の軸方向に延出する単脚構造となっており、ガイド脚11の穂先側の端部で、湾曲しながら上昇する連結部15となり、連結部15の上端側に円形開口13Aを有する釣糸挿通部13を備えた構造となっている。この釣糸挿通部13は、釣糸ガイドが上記したようなセラミック材で形成されることから、釣糸の摺動性を高めるためのガイドリングを取着する必要はない。
【0018】
上記した構成において、ガイド脚11は、竿杆5(
図7参照)に対して固定部位となる領域となっている。前記連結部15は、釣糸ガイドを竿杆表面に固定した状態において、側面視した際、竿杆表面(水平面P)に対して、湾曲状に上昇し始める変曲点P1から上方側の領域として定義する。また、釣糸挿通部13は、前記円形開口13Aの内、最も下端となる位置P2よりも上方側の領域として定義する。このため、連結部15は、側面視した際、下面側(竿先側)の稜線15Aが湾曲しており、上面側(基端側)の稜線15Bも同様に湾曲している(連結部は略均一の肉厚となっている)。
なお、
図3に示す例では、稜線15Aの変曲点P1は、ガイド脚11の最下端(水平面P)から多少、上昇した位置に存在しているが、後述する肉厚部(リブ20)の形状によって、稜線15Aはガイド脚11の最下端まで伸びていても良い。すなわち、連結部15を規定する下側稜線15Aの変曲点P1は、ガイド脚11の最下端(水平面P)に存在していても良い。
【0019】
上記したように、釣糸挿通部13は、連結部15と一体化されており、連結部15は、ガイド脚11から湾曲して立ち上がるように形成されている。この場合、連結部15の竿先側の面15Cのガイド脚11に対する立ち上げ角度αについては特に限定されることはないが、釣糸を円滑に案内することができ、かつ、釣糸がループ状に絡まっても容易に抜けるように、30°≦α≦85°の範囲に形成されていることが好ましい。また、本実施形態における連結部15の面15Cは、釣糸挿通部13の竿先側の面13Cと面一状に形成されており、前記立ち上げ角度αを規定する面Pdとなっている。
【0020】
前記釣糸ガイド10には、衝撃強度を向上するように肉厚部が形成されている。上記したように、釣糸ガイド10は、セラミック材によって形成されるため、衝撃を受けた際に破損等が生じる可能性がある。本実施形態の形状において、最も大きな負荷が作用するのは、ガイド脚11の固定部位であり、特に、ガイド脚11から連結部15に湾曲状に上昇しながら移行する部分(変曲点部分)には大きな負荷(曲げ応力)が作用する。
【0021】
本発明では、ガイド脚11の固定部位の近傍に、竿先側に向けて突出するように肉厚部を形成することで補強効果を高めている。すなわち、従来の板状に形成された釣糸ガイドは、ガイド脚の下面(竿杆と接触する下面)の前端位置において、次第に湾曲しながら上昇して連結部を構成するが、この部分(移行部分)は、衝撃を受けると損傷が生じ易い。このため、ガイド脚11の固定部位の近傍から釣糸挿通部13に向けて、竿先側に突出するように肉厚部を形成している。
【0022】
本実施形態の肉厚部は、連結部15を補強するように、竿先側に突出し、所定の幅、高さを有するリブ20で構成されている。前記リブ20は、
図3に示すように、釣糸ガイドを側面視した際、前記連結部15の稜線15Aから竿先側に突出するように形成されており、その上端位置20aでは、前記連結部15の面15Cと一体化されている。すなわち、本実施形態のリブ20の突出側の端面(竿先側の端面)20Aは、前記連結部15の面15C及び釣糸挿通部13の竿先側の面13Cと面一状となるように形成されている。
【0023】
一般的に、上記したタイプの釣糸ガイド10は、釣糸が引っ掛かった際、ガイド脚11から連結部15にかけての固定部位の近傍(前記変曲点P1から連結部15に移行する湾曲部分)に大きな負荷(
図3の時計回り方向の曲げ応力)が作用するが、この部分にリブ20を形成することで効果的な補強効果が得られる。すなわち、射出成形材料であるセラミック材の衝撃強度を向上することができる。
【0024】
前記リブ20は、釣糸ガイドのガイド脚11から釣糸挿通部13に移行する領域で、前記連結部15の竿先側の面15Cに形成するのが好ましく、更には、
図5に示すように、連結部15の竿先側の面15Cの中央部分に形成することが好ましい。すなわち、リブ20(肉厚部)は、竿先側の面15Cの全面に亘って形成しても良いが、
図5に示すように、中央部分に形成することで、釣糸ガイド全体を重量化することなく、効率的に補強効果を高めることが可能となる。この場合、リブ20の上端位置20aが、釣糸挿通部13の円形開口13Aに位置するように形成しても良いが、円形開口13A付近は、特に大きな負荷が作用しない(大きい衝撃が作用しない)ことから、
図5に示すように、連結部15の略中間位置まで形成しておけば良い。
【0025】
また、リブ20は、
図3に示すように、釣糸挿通部13の竿先側の面13Cから竿先側に突出しない高さ、すなわち、前記面Pdから竿先側に突出しない高さに形成することが好ましい。これは、高く(厚く)形成し過ぎると、剛性分布が大幅に変化してしまい、かえって強度が低下する可能性もあるためである。また、リブ20が高いと、風の抵抗を受け易くなり、釣竿の操作性が低下することから、高さについては、面Pd以下に形成するのが好ましい。
【0026】
また、リブ20の幅Wについては、本実施形態では、
図5、
図6に示すように、均一幅に形成されているが、竿杆に対する固定側を広くし、釣糸挿通部側に向けて狭くなるように形成することが好ましい。このように構成することで、重量を増加させることなく、効率的な補強効果が得られ、更には、応力が一部に集中することなく、より大きな荷重に耐えることが可能となる。
【0027】
さらに、リブ20の高さHについては、竿杆に対する固定側を高くし、釣糸挿通部13側に向けて低くなるように形成することが好ましい。このように構成することで、応力が一部に集中することなく効率的に強度の向上が図れると共に、前記幅Wが変化する構造と相俟って抜きテーパとなるため、成形が容易に行えるようになる。また、リブ20の上端側では、風の抵抗を受け難くなることから、釣竿の操作性が低下することが防止される。
【0028】
前記リブ20には、貫通孔22を形成しておくことが好ましい。本実施形態の貫通孔22は、
図3(a)に示すように、ガイド脚11に固定用の糸50(
図7参照)を巻回する固定部位側に形成されている。このような位置に貫通孔22を形成しておくことで、釣糸ガイド10を竿杆に対して固定する際、巻回する糸50を挿通させて枕巻きすることが可能となり、固定状態で釣糸ガイドの抜け止めをすることができる。また、貫通孔22を形成することで、軽量化を図ることができるので、複数個形成してもよく、その一部又は全部は、貫通孔にすることはなく凹所として構成されたものであっても良い。なお、貫通孔の大きさ(内径)や形状については、限定されることはなく、例えば、
図3(b)に示す貫通孔22Aのように、糸50が2数本以上通過できるような大きさに形成する等、適宜変形することが可能である。
【0029】
図3に示されるように、リブ20の突出側の端面(竿先側の端面)20Aは、前記連結部15の面15C及び釣糸挿通部13の竿先側の面13Cと面一状に形成されており、その端面20Aは、略90°屈曲して、固定される竿杆の表面と当接する下端面20Bに繋がっている。このように、リブ20の下端面20Bは、釣糸ガイド20を竿杆に固定した際、竿杆表面に当接することから、釣糸ガイドに大きな曲げ応力が作用しても、ぐらついたり変形等し難くなり、安定した固定状態を維持することが可能となる。すなわち、リブ20が形成されていない従来の釣糸ガイドは、竿杆の表面に固定すると、湾曲状の連結部の隙間部分に固定用の樹脂が充填されることから、これが釣糸ガイドの固定状態を不安定にするとともに、見栄えを低下させる等の原因となっていたが、そのような隙間部分にリブ20が存在することで、釣糸ガイドの固定状態が安定し、見栄えが低下するようなことがなくなる。
【0030】
また、前記リブ20の下端面20Bは、そのまま軸方向に延出させてガイド脚11と一体化し、竿杆の表面に当接する固定部位としても良い。この場合、
図5、
図6に示すように、竿杆表面に固定される部分に、竿杆の軸方向に沿って延出する溝24を形成しておくことが好ましい。
【0031】
また、本実施形態の釣糸ガイド10は、上記した構成によって、抜け難く、固定状態の安定化が図れることから、ガイド脚11については、その先端側11Aを薄肉厚化して軽量化を図ることが可能である。さらに、
図2に示すように、連結部15に、多角形状の凹部15aを多数形成することで、軽量化を図ることも可能である。すなわち、上記した構成の釣糸ガイド10を、竿杆に複数個設置した釣竿によれば、軽量化が図れて操作性の向上が図れると共に、見栄えが低下することもない。
【0032】
次に、
図7を参照して、上記した構成の釣糸ガイド10を竿杆(ここでは中竿杆5)の表面に固定する方法について説明する。
釣糸ガイド10を竿杆5の表面に固定する際、ガイド脚11を竿杆5の表面に載置し、周囲に固定用の糸50を巻回する。そして、糸50を巻回した後、その表面から固定用の樹脂を塗布し、その固定状態を安定化させる。
【0033】
糸50の巻回に際しては、リブ20に形成した貫通孔22に糸通しして枕巻きすることができるので、耐衝撃強度の向上を図りながら釣糸ガイドの抜け強度を向上することができる。この固定作業に際しては、従来の釣糸ガイドでは、竿杆表面との間の隙間に樹脂が入り込んで作業性が悪かったが、リブ20を形成したことで樹脂が入り込まなくなり、作業性の向上が図れるようになる。また、貫通孔22に樹脂が入り込んで竿杆表面との間でアンカー効果も得られることから、固定強度が向上し、釣糸ガイドの固定状態も安定する。
【0034】
さらに、
図7(b)に示すように、リブ20の下面(ガイド脚)を竿杆表面に当て付ける際、そのリブ20に溝24を形成したことで、竿杆に対する当接位置20Pが2点接触となり、固定状態を安定化することが可能となる。
【0035】
本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。以下、変形例の構成例について説明する。
なお、以下の各種の変形例を説明するに際し、上記した実施形態と同一の構成要素については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0036】
図8は、釣糸ガイドの第1の変形例を示す図であり、(a)はガイド脚部分の平面図、(b)は側面図、(c)は凹凸構造の変形例を示す図である。
この変形例で示すように、ガイド脚11の表面の糸50が巻回される部分に軸方向に沿って複数の凹凸部16(抜け止め構造)を形成しても良い。この凹凸部16は、(b)に示すように、凹部16aを連続的に形成したものであっても良いし、(c)に示すように、凸部16bを連続的に形成したものであっても良い。
【0037】
このような凹凸部16を形成することで、糸止めした際、糸が凹部領域に入り込んで釣糸ガイドの抜けを防止することが可能となる。
なお、凹凸部の形成の仕方については、種々変形することが可能であり、抜け止め構造については、表面を粗面化したり、ローレット目等を形成したものであっても良い。
【0038】
図9は、釣糸ガイドの第2の変形例を示す図であり、ガイド脚部分の平面図である。
上記したように、ガイド脚11に形成される抜け止め構造は、ガイド脚11の先端側に幅広部16Aを形成することで構成することも可能である。
【0039】
図10は、釣糸ガイドの第3の変形例を示す図であり、ガイド脚部分の断面図である。
上記したように、前記リブ20は、ガイド脚11と一体的となって竿杆表面に当て付いて糸巻きされる構成であっても良いが、軸方向に延出させることなく、ガイド脚11の裏面をそのまま竿杆表面に当て付けて固定する構成であっても良い。
【0040】
このような構成では、ガイド脚11を竿杆の表面に沿うように湾曲面で構成しておくことが好ましい。このような湾曲面に形成することで、
図7に示したように、竿杆表面に対して2点接触させることができ、固定強度が向上し、釣糸ガイドの固定状態も安定する。
【0041】
図11は、釣糸ガイドの第4の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
上記した実施形態の釣糸ガイド10は、ガイド脚11が釣竿の軸方向基端側に延びる1本脚構造であったが、(a)(b)に示すように、釣糸挿通部13に対して、釣竿の軸方向両側に延びる2本脚構造とし、釣糸挿通部13を垂直に立ち上がる構造としても良い。そして、このような釣糸ガイドの構造では、リブ20は、いずれか一方のガイド脚側のみに形成しても良いが、両方のガイド脚11の対向する領域の夫々に形成しておくことが好ましい。さらに、(c)に示すように、釣糸挿通部13については、傾斜して立ち上がる構造にしても良い。
【0042】
図12は、釣糸ガイドの第5の変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
上記した実施形態及び変形例では、連結部15は板状に形成されていたが、連結部は、釣糸挿通部の13の両サイドからガイド脚11に延びるようなフレーム構造であっても良い。このように、釣糸ガイドを部分的にフレーム構造としても、そのフレーム部分(各フレーム15F)に上記した肉厚部となるリブ20を形成しておくことで、セラミック材を使用しても、衝撃強度を向上することが可能となる。
【0043】
図13は、釣糸ガイドの第2の実施形態を示す図であり、
図1で示す穂先竿杆7に装着される釣糸ガイド(穂先ガイド)を示した拡大図である。
この実施形態の釣糸ガイド10Aのリブ20は、穂先竿杆7の先端部に圧入される筒状部19に一体形成することが可能である。釣糸ガイド10Aは、穂先竿杆7に圧入されて接着固定されるが、リブ20に貫通孔22を形成することでアンカー効果が得られ、接着強度を高めることが可能である。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
上記した実施形態では、竿杆に固定される固定ガイドを示したが、遊動ガイドについても同様なリブ(肉厚部)を連結部に形成することが可能である。また、本発明は、釣糸ガイドの固定部位から立ち上がる連結部、特に、竿先側の面に肉厚部(本実施形態のようなリブ20)を形成することに特徴があり、それ以外の構成については、図に示した形状等に限定されることはない。さらに、肉厚部については、その大きさ、形状について適宜、変形することが可能であり、例えば、湾曲面を有する構造(略半球状、略半楕円状)にしたり、リブ形状において角部に面取りやテーパ等を形成することで、破損等を効果的に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 釣竿
3 元竿杆
5 中竿杆
7 穂先竿杆
10,10A 釣糸ガイド
11 ガイド脚
13 釣糸挿通部
15 連結部
20 肉厚部(リブ)
22 貫通孔