IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドイッチェス・クレープスフォルシュングスツェントルムの特許一覧

特許7529639診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質
<>
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図1
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図2
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図3
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図4
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図5
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図6
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図7
  • 特許-診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】診断アッセイに使用するためのタンパク質抗原としてのREPタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07K16/18
G01N33/53 D ZNA
G01N33/53 N
G01N33/531 A
C12N15/13
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021190179
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2019519006の分割
【原出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2022036996
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】16193119.1
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512151403
【氏名又は名称】ドイッチェス・クレープスフォルシュングスツェントルム
【氏名又は名称原語表記】DEUTSCHES KREBSFORSCHUNGSZENTRUM
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツーア ハオゼン、ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴィリエール、エテル - ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ブント、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】エイレブレヒト、セバスチャン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02966176(EP,A1)
【文献】エピトープ,薬学用語解説 - 日本薬学会,2007年08月31日,p.1,https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?エピトープ [検索日:2023年4月6日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
G01N 33/53
G01N 33/531
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むDNA複製関連(Rep)タンパク質に結合するモノクロナール抗体またはその抗原結合断片であって、
配列番号2または9のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合し、前記DNA複製関連(Rep)タンパク質のスペックルに結合する、モノクロナール抗体またはその抗原結合断片
【請求項2】
Repタンパク質について患者又は健康な個体からのプローブをスクリーニングするための、請求項1に記載のモノクロナール抗体またはその抗原結合断片の使用。
【請求項3】
スクリーニングされる対象の試料中に存在するRepタンパク質の量を、健康な個体からの試料中のRepタンパク質の量と比較する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記プローブを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫検定法(EIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、ルミネセンスイムノアッセイ(LIA)、及びストリップアッセイからなる群から選択されるアッセイでスクリーニングする請求項2または3に記載の使用。
【請求項5】
Repタンパク質を、請求項1に記載するモノクロナール抗体またはその抗原結合断片により検出する工程を含む、Repタンパク質を検出する方法。
【請求項6】
前記モノクロナール抗体またはその抗原結合断片が、配列番号2のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合する前記モノクロナール抗体またはその抗原結合断片と、配列番号9のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合する前記モノクロナール抗体またはその抗原結合断片とを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Repタンパク質を、血清試料、血漿試料、又は組織試料からなる群から選択される試料から検出する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記Repタンパク質は、免疫組織化学的方法又は免疫蛍光顕微鏡法によって組織試料中に検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)配列番号2または9のアミノ酸配列に含まれるエピトープに結合し、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むDNA複製関連(Rep)タンパク質のスペックルに結合する、モノクロナール抗体またはその抗原結合断片と、
(b)シグナル生成化合物と
を含む、Repタンパク質を検出するためのキット。
【請求項10】
前記シグナル生成化合物は、前記モノクロナール抗体またはその抗原結合断片に直接結合している、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば多発性硬化症(MS)などの神経変性疾患の診断に使用するためのDNA複製関連(Rep)タンパク質又は抗Rep抗体の検出及び定量化に関する。特に、本発明は、MSBI1ゲノムコード化Repタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症(MS)の病因は、解決されていない。したがって、MSの診断及び/若しくはMSの監視又はMSの治療及び/若しくはMSの素因の評価に使用することができるMSのバイオマーカーが求められている。
【0003】
多発性硬化症(MS)は、脳及び脊髄の神経細胞を損傷するMS病変の脱髄によって特徴付けられる。MSの症状は、突然悪化する症状(再発、悪化、発作、発病)として、又は経時的に徐々に悪化する症状(進行型)としてのいずれかで生じる。脱髄は、炎症過程を開始し、それがT細胞並びにサイトカイン及び抗体の放出を誘発する。MSの診断のために、とりわけ、神経画像、脳脊髄液の分析、及び誘発電位が使用される。
【0004】
17個の、異なるが、部分的に関連したDNA分子のスペクトルが、異なる試験材料(多発性硬化症(MS)脳組織、ウシ血清、乳)から分離された(Funk,Gunst et al.2014,Gunst,Zur Hausen et al.2014,Lamberto,Gunst et al.2014,Whitley,Gunst et al.2014)。
【0005】
これらの分離株のうち、伝染性海綿状脳症(TSE)関連分離株Sphinx 1.76(1,758bp;受託番号HQ444404、(Manuelidis L.2011))と密接に関連する2つのDNA分子がMS患者からの脳組織から分離された。これらの分離株は、それぞれ「MSBI1ゲノム」及び「MSBI2ゲノム」と命名されたMSBI1.176(MSBI、多発性硬化症脳分離株)(1,766bp)及びMSBI2.176(1,766bp)であった。MSBI1,176は、Sphinx 1.76の配列と98%のヌクレオチド類似性を共有する。分離株の大きなオープンリーディングフレーム(ORF)は、それらの間で高い類似性を共有する推定DNA複製タンパク質をコードする。別の共通の特徴は、iteron様タンデムリピートの存在である。この反復領域のアラインメントは、単一ヌクレオチドのコアにおける変動を示す。このiteron様反復は、Repタンパク質の結合部位を構成し得る。分離株の配列は、受託番号LK931491(MSBI1.176)及びLK931492(MSBI2.176)(Whitley C.et al.2014)としてEMBL Databankに寄託されており、国際公開第2016/005064号に整列され、記載されている。
【0006】
さらなる分離株が牛乳から得られた。これらの牛乳分離株(CMI)は、CMI1.252、CMI2.214、及びCMI3.168であり、それぞれ「CMI1ゲノム」、「CMI2ゲノム」、及び「CMI3ゲノム」と命名された。分離株の配列は、受託番号LK931487(CMI1.252)、LK931488(CMI2.214)、及びLK931489(CMI3.168)としてEMBL Databankに寄託されており、国際公開第2016/005064号に整列され、記載されている。
【0007】
本発明者らは、MSBI1ゲノムが転写RNAの有意な産生を示し、MSBI1ゲノムコード化Repタンパク質がヒト細胞において発現されることを見出した。本発明者らは、MSBI1及びMSBI2ゲノムコード化Repタンパク質(MSBI1 Rep及びMSBI2 Rep)が、病原性スクリーニングアッセイのためのバイオマーカーを表すことを見出した。DNA複製関連タンパク質(RepB)として、Repタンパク質は、DNA結合活性を有し、エピソーム又はウイルスDNA分子の複製開始に必須であり得る。本発明によるMSBI1ゲノムコード化Repと構造的に類似するRepタンパク質は、インビボ及びインビトロの原核生物系内に記載された自己オリゴマー化及び凝集の著しい可能性を示す(Giraldo,Moreno-Diaz de la Espina et al.2011,Torreira,Moreno-Del Alamo et al.2015)。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、抗原としてのRepタンパク質の使用に基づく病原体特異的診断スクリーニングアッセイのためのプラットフォームを提供する。
【0009】
特定の実施形態では、分離されたDNA(例えばMSBI1)剤の病原活性とRepタンパク質発現との関連のために、抗Rep抗体が病原マーカーとして使用される。抗Rep抗体の増加量を含有する患者血清は、Rep特異的免疫応答を開始するのに十分に長い期間中に、対応する患者がRep関連タンパク質に確実に曝露されたか又は自分でRepを発現したことを示す。ヒト抗体の標的として、Repタンパク質が抗原として使用される。抗Rep抗体の量の定量化に基づいて、急性MS及びMSの素因を診断又は監視することができる。試料中の誘導された抗Rep抗体又は発現されたRepタンパク質の増加量が、MSの発症及び/又は状態を示すことが認識されているので、抗Rep抗体及びRepタンパク質の増加量は、それぞれMSの診断のための病原性バイオマーカーとして使用することができる。
【0010】
有利には、MSについての病原性バイオマーカーは、血清又は血漿試料などの血液試料中で検出することができ、脳脊髄液から試料を得る必要はない。
【0011】
したがって、本発明は、神経変性疾患、例えば多発性硬化症(MS)の診断に使用するためのDNA複製関連(Rep)タンパク質を提供する。特定の実施形態では、Repタンパク質は、MSBI1ゲノムによってコードされており、(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる配列番号1の断片;又は
(iii)(i)若しくは(ii)のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつ配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0012】
他の実施形態では、Repタンパク質は、MSBI2ゲノムによってコードされており、(i)配列番号8に示されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる配列番号8の断片;又は
(iii)(i)若しくは(ii)のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつ配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0013】
他の実施形態では、Repタンパク質は、CMI1ゲノムによってコードされており、(i)配列番号10に示されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる配列番号10の断片;又は
(iii)(i)若しくは(ii)のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつ配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0014】
他の実施形態では、Repタンパク質は、CMI2ゲノムによってコードされており、(i)配列番号11に示されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる配列番号11の断片;又は
(iii)(i)若しくは(ii)のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつ配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0015】
他の実施形態では、Repタンパク質は、CMI3ゲノムによってコードされており、(i)配列番号12に示されるアミノ酸配列;
(ii)配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる配列番号12の断片;又は
(iii)(i)若しくは(ii)のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有し、かつ配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができるアミノ酸配列を含む。
【0016】
特定の実施形態では、対照試料中のRepタンパク質量と比較して、対象からの試料中のRepタンパク質の増加量は、神経変性疾患、例えば、MSの診断と相関する、すなわちMSを示す。本発明によれば、神経変性疾患、例えばMSの診断又は神経変性疾患、例えばMSの素因は、対照試料と比較して、少なくとも2倍のRepタンパク質の増加量によって示される。
【0017】
他の実施形態では、対照試料中の抗Rep抗体量と比較して、対象からの試料中の抗Rep抗体の増加量は、神経変性疾患、例えば、MSの診断と相関する、すなわちMSを示す。本発明によれば、神経変性疾患、例えばMSの診断又は神経変性疾患、例えばMSの素因は、対照試料と比較して、少なくとも2倍の抗Rep抗体の増加量によって示される。
【0018】
本発明のRepタンパク質は、抗体又は細胞性免疫応答を検出するために既知の抗原を用いる実質的に任意のアッセイフォーマットにおいて用いられ得る。したがって、本発明はまた、細胞媒介、例えばRepタンパク質に対するT細胞免疫応答の検出を包含する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、
(a)対象からの試料をRepタンパク質とインキュベートする工程;
(b)Repタンパク質と免疫学的複合体を形成する対象からの試料中の抗体の量を検出する工程;及び
(c)対照試料中の量と比較して、Repタンパク質に結合した抗体の量を神経変性疾患の診断と相関させる工程を含む、対象における神経変性疾患を診断する方法を提供する。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、
(a)対象からの試料をRepタンパク質とインキュベートする工程;
(b)Repタンパク質と免疫学的複合体を形成する対象からの試料中の抗体の量を検出する工程;及び
(c)対照試料中の量と比較して、Repタンパク質に結合した抗体の量をMSの診断と相関させる工程を含む、対象におけるMSを診断する方法を提供する。
【0021】
特定の実施形態では、Repタンパク質は、固定化され、例えば支持体又は担体に付着させた後、固定化Repタンパク質を対象からの試料とインキュベートする。
【0022】
他の実施形態では、Repタンパク質を細胞内で発現させた後、その細胞を対象からの試料とインキュベートする。
【0023】
特定の実施形態では、Repタンパク質と免疫学的複合体を形成する抗体の量は、免疫学的複合体の抗Rep抗体に結合することができるシグナル生成化合物、例えば検出可能に標識された二次抗体、好ましくは抗ヒト抗体に結合した追加の結合剤によって定量される。
【0024】
他の実施形態では、対象からの試料中の抗体を固定化した後、規定量のRepタンパク質とインキュベートする。
【0025】
好ましくは、対象からの試料及び対照試料は、血清又は血漿試料などの血液試料である。
【0026】
他の実施形態では、本発明は、
(a)抗Rep抗体によって対象からの試料中のRepタンパク質の量を検出する工程、及び
(b)対照試料中の量と比較して、工程(a)で対象からの試料中に検出されたRepタンパク質の量を神経変性疾患の診断と相関させる工程を含む、患者における神経変性疾患を診断する方法を提供する。
【0027】
他の実施形態では、本発明は、
(a)抗Rep抗体によって対象からの試料中のRepタンパク質の量を検出する工程、及び
(b)対照試料中の量と比較して、工程(a)で対象からの試料中に検出されたRepタンパク質の量をMSの診断と相関させる工程を含む、患者におけるMSを診断する方法を提供する。
【0028】
そのような実施形態では、対象からの試料及び対照試料は、血清試料、血漿試料、又は組織試料からなる群から選択される。
【0029】
特定の実施形態では、抗Rep抗体は、配列番号1の1~136、137~229、及び230~324のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸配列内のエピトープに結合する。例えば、抗体は、配列番号2又は配列番号3に含まれるエピトープに結合する。
【0030】
さらなる実施形態では、本発明は、(a)Repタンパク質、特にMSBI1、MSBI2、CMI1、CMI2、又はCMI3Repタンパク質、(b)シグナル生成化合物に結合した追加の結合剤、例えば、検出可能な標識に結合し、本発明による抗Rep抗体に結合することができる抗ヒト抗体、及び(c)(a)によるRepタンパク質又は抗Rep抗体を固定化するのに好適な固体マトリックスを含み、補助抗体が、試料、特に血清又は血漿試料中に存在すると推測される、MSの診断に使用するためのキットを提供する。
【0031】
特定の実施形態では、キットは、例えば酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫検定法(EIA)、蛍光免疫検定法(FIA)、ルミネセンスイムノアッセイ(LIA)、及びストリップアッセイからなる群から選択される免疫検定法における使用のためにまとめられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】1Dサイズ分解Repタンパク質膜ストライプの血清インキュベーションによる2×8試料の例示的な血清スクリーニングを示す図である。Repタンパク質を含有するニトロセルロースストライプを、それぞれMS血清試料プール又は健康なドナー血漿プールの2つの異なる血清/血漿希釈(1:500及び1:2000)とインキュベートした。Rep結合ヒトIgGを抗ヒトIgG HRP結合二次抗体で検出した。全長Repタンパク質標的のサイズの抗体シグナル(右側のクマシータンパク質染色及び抗Rep WB対照参照)をデンシトメトリーにより定量した。
図2】ELISAスクリーニングに基づくRep特異的血清反応の定量化を示す図である。96ウェルあたり50、100、200、400、又は800ngのRepタンパク質(標的抗原)をスポットした。ブロッキング及び洗浄後、Repタンパク質抗原を、プールしたMS血清試料又はプールした対照血漿試料のいずれかと1:500の希釈で6時間室温(RT)でインキュベートした。洗浄及びHRP結合抗ヒトIgG HRP二次抗体とのインキュベーション及び最後の洗浄工程後、Rep結合ヒトIgGの存在をTMB基質反応及び450nmでの吸光度測定によって定量した。定量化は、シグナル強度とRepタンパク質(抗原)の量との良好な相関関係を明らかにする。平均して、MSプールのシグナル強度レベルは、対照プールの強度を少なくとも1.9倍上回る。一般に、ELISAに基づく血清スクリーニングは、少なくとも1:1000の血清希釈について検出可能な血清抗体を明らかにし(データは示さず)、そのためこの実験の力価は、1:2000~1:4000の領域で1:1000以上、又はプラットフォームの最適化後はさらに高くなる可能性がある。
図3】ELISAスクリーニングに基づくRep特異的血清反応の定量化を示す図である。96ウェルあたり200ngのRepタンパク質(標的抗原)をスポットした。ブロッキング及び洗浄後、Repタンパク質抗原を7つの個々のMS血清又は7つの個々の対照血清のいずれかと1:500の希釈、室温(RT)で6時間、2連でインキュベートした。洗浄及びHRP結合抗ヒトIgG HRP二次抗体とのインキュベーション及び最後の洗浄工程後、Rep結合ヒトIgGの存在をTMB基質反応及び450nmでの吸収測定によって定量した。MS試料の平均強度は、対照血清の平均強度を少なくとも8倍超えており、いくつかのMS試料は、平均対照強度に対して10~16倍を示している。
図4】y座標上に示される抗Rep抗体A、B、C、D1、及びD2の使用によって得られた免疫蛍光画像データを示す図である。
図5】y座標上に示される抗Rep抗体A、B、C、D1、及びD2の使用によって得られた免疫蛍光画像データを示す図である。
図6】y座標上に示される抗Rep抗体A、B、C、D1、及びD2の使用によって得られた免疫蛍光画像データを示す図である。
図7】A、B、C、及びD1が、用いられた抗Rep抗体の群を示す、ウエスタンブロット分析を示す図である。
図8】「最適化」(=配列番号13)対「原初」(=野生型;配列番号15)MSBI1配列の配列アラインメントを示す図である。最適化されたコドンは、マークされている。
【0033】
本発明は、病原性マーカーとしての抗Rep抗体の存在についての診断スクリーニングアッセイを提供する。抗Rep抗体の増加量を含有する試料は、Repタンパク質特異的免疫応答を誘導するのに十分に長い期間中に対応する対象がRep関連タンパク質に明確に曝露されたか又は自らRepタンパク質を発現したことを示す。そのようなスクリーニングアッセイを用いて、抗Rep抗体の定量化に基づくMSの診断、予後、及び監視を実施することができる。代替の実施形態では、Repタンパク質は、抗Rep抗体によって試料中で直接検出及び定量され得る。
【0034】
本明細書で使用される「Repタンパク質」は、DNA複製関連タンパク質(RepB)を指す。Repタンパク質は、DNA結合活性を含み、エピソーム/ウイルスDNA分子の複製開始に必須であり得る。一般に、Repタンパク質は、スモールスフィンクスゲノムの群からのRepタンパク質を指す(Whitley et al.,2014)。特に、Repタンパク質は、MSBI1ゲノムコード化Repタンパク質(MSBI1 Rep)、MSBI2ゲノムコード化Repタンパク質(MSBI2 Rep)、CMI1ゲノムコード化Repタンパク質(CMI1 Rep)、CMI2ゲノムコード化Repタンパク質(CMI2 Rep)、又はCMI3ゲノムコード化Repタンパク質(CMI3 Rep)である。好ましくは、MSBI1 Repタンパク質は、受託番号LK931491の下でEMBLデータバンクに寄託されたMSBI1.176によってコードされ、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するか、又はRepタンパク質は、受託番号LK931492の下でEMBLデータバンクに寄託されたMSBI2.176によってコードされるMSBI2であり、配列番号8に記載のアミノ酸配列を有する(Whitley,Gunst et al.2014)。別の好ましい実施形態では、CMI1 Repタンパク質は、受託番号LK931487の下でEMBLデータバンクに寄託されているCMI1.252によってコードされ、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態では、CMI2 Repタンパク質は、受託番号LK931488の下でEMBLデータバンクに寄託されているCMI2.214によってコードされ、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態では、CMI3 Repタンパク質は、受託番号LK931489の下でEMBLデータバンクに寄託されているCMI3.168によってコードされ、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する。特に好ましい実施形態では、Repタンパク質は、配列番号1の1~229のアミノ酸から本質的になるスモールスフィンクスゲノム間で保存されたN末端領域、及び配列番号1の230~324のアミノ酸から本質的になるMSBI1.176に特異的なC末端可変領域を含む。N末端保存領域は、配列番号1の1~136のアミノ酸から本質的になる推定の第1のDNA結合ドメイン及び配列番号1の137~229のアミノ酸から本質的になる第2の推定DNA結合ドメインを含む。
【0035】
「Repタンパク質」はまた、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列を有するRepタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる、配列番号1又は配列番号8を有するタンパク質の断片及び変異体も包含する。好ましくは、そのような断片は、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列を有するタンパク質の免疫原性断片であり、これは、配列番号1又は配列番号8のRepタンパク質に対する抗Repタンパク質抗体に対する少なくとも1つのエピトープを包含し、好ましくは少なくとも7、8、9、10、15、20、25、又は50個の連続アミノ酸を含む。特定の実施形態では、断片は、Repタンパク質のドメイン、例えばN末端保存領域、C末端可変領域、第1若しくは第2のDNA結合ドメインを含むか、又はそれらから本質的になる。配列番号1又は配列番号8を有するタンパク質の変異体は、配列番号1と比較して1つ以上のアミノ酸の欠失、置換、又は付加を含み、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の相同性を有し、変異体は、配列番号1又は配列番号8のアミノ酸配列を有するRepタンパク質に特異的な抗Rep抗体に結合することができる。変異体の定義内に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸、ペプチド核酸(PNA)などを含む)、置換結合を有するポリペプチド、並びに当技術分野で既知の他の修飾、天然に存在するもの及び天然に存在しないものの両方である。Repタンパク質という用語は、異種アミノ酸配列、リーダー配列、又はTag配列などとの融合タンパク質を含む。本発明の特定の実施形態では、タンパク質タグは、上記のRepタンパク質、例えばMSBI1、MSBI2、CMI1、CMI2、又はCMI3からなる群から選択されるRepタンパク質に遺伝的に移植される。特に、少なくとも1つのタンパク質タグが、配列番号1~3、8~12、14のうちのいずれか1つに示されるようなアミノ酸配列からなるポリペプチドに付着している。そのようなタンパク質タグは、化学薬品又は酵素的手段によって除去可能であり得る。タンパク質タグの例は、精製のためのアフィニティータグ又はクロマトグラフィータグである。例えば、Repタンパク質は、例えばHis-タグ(配列番号4)、T7-タグ(配列番号5)、FLAG-タグ(配列番号6)、及びStrep-II-タグ(配列番号7)、His-タグ(配列番号4)、T7-タグ(配列番号5)、FLAG-タグ(配列番号6)、又はStrepII-タグ(配列番号7)からなる群から選択されるタグ配列に融合されてもよい。さらに、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はその変異体などの蛍光タグを本発明によるRepタンパク質に付着させてもよい。
【0036】
特に好ましい実施形態では、MSBI1ゲノムコード化Repタンパク質(MSBI1 Rep)は、ヒト細胞株(例えば、HEK-293、HEK293TT、HEK293T、HEK293FT、HaCaT、HeLa、SiHa、CaSki、HDMEC、L1236、L428、BJAB、MCF7、Colo678、任意の初代細胞株)、及びウシ(例えば、MAC-T)又はマウス細胞株(例えば、GT1-7)における産生についてコドン最適化されている。コドン最適化に関して、抗原をコードするヌクレオチド配列は、抗原が産生される対象の遺伝子において使用されるコドンを用いるように設計され得る。好ましい実施形態では、使用されるコドンは、「ヒト化」コドンである。そのようなコドン使用は、ヒト細胞における抗原の効率的な発現を提供する。コドン最適化の任意の好適な方法が使用され得る。そのような方法及びそのような方法の選択は、当業者に周知である。本発明によれば、MSBI1ゲノムコード化Repタンパク質(MSBI1 Rep)のそのようなコドン最適化変異体は、配列番号13に示されるような配列を含むか又は有し、配列番号14に示されるようなアミノ酸配列を含むか又は有する。合計で、Repタンパク質をコードする927ヌクレオチドのMSBI1 Rep遺伝子の686ヌクレオチド(開始コドンから終止コドンまで)がコドン使用を改善するために置換された。例えばヒトのコドン使用に対する最適適応を伴う完全なコドン使用は、1のコドン適応指数(CAI)によって記載され、これは全てのコドンがヒト発現に最適化されていることを示す。原初のMSBI1コード化Rep遺伝子について、ヒト系について0.67のCAIが計算され、これは0.8のCAIをはるかに下回っており、これは良好なコドン適応のためのより低い閾値と考えられる。MSBI1 rep遺伝子のコドン最適化後、0.94のCAIが最適化されたDNAについて計算され、これはヒト系にとってほぼ最適なコドン適応を示す。特に、めったに使用されない18個のコドンが変更され、それらのほとんどは、ヒト系において非常に低い使用頻度(10%未満)でロイシンをコードするコドンを表す。配列番号13のコドン最適化MSBI1配列対配列番号15の野生型MSBI1配列の配列アラインメントを図8に示す。
【0037】
上記のRep断片及びRep変異体を含む本発明のRepタンパク質は、古典的な化学合成によって調製することができる。合成は、均一溶液中又は固相中で行うことができる。本発明によるポリペプチドはまた、組換えDNA技術によっても調製することができる。本発明によるRepタンパク質の産生及び精製の例は、例1に示されている。
【0038】
本明細書で使用される「対象」は、マウス、畜牛、例えばウシ、サル、及びヒトを含む哺乳動物の個体又は患者を指す。好ましくは、対象はヒト患者である。
【0039】
本明細書で使用される「試料」は、液体試料及び固体試料を包含する生物学的試料を指す。液体試料は、例えば血清、血漿、及び脳脊髄液(CSF)などの血液液体を包含する。固体試料は、組織培養物又は生検標本などの組織試料を包含する。
【0040】
本明細書で使用される「と相関する」は、例えばMSの疾患状態と有意な相関関係を有する、それぞれ抗Rep抗体及びRepタンパク質の量、すなわちレベル又は力価を指す。相関関係は、試験される対象及び対照試料からの試料中に存在する量の差の程度を検出することによって決定される。「対照試料」とは、単一の試料又は様々な、すなわち2つより多い対照試料の平均を意味する。対照は、MSと診断されていない健康な個人から得られる。あるいは、相関関係は、所定のカットオフ値を用いて試験される対象について試料中に存在する量の差の程度を検出することによって理論的に決定され得る。カットオフ値は、異なる疾患状態間、例えば健康状態と病気の状態との間の統計的に有意な分離を伴う基準値である。カットオフ値は、当技術分野で既知の統計的試験による、病歴を有する患者からの試験試料及び健康な試験群からの試料の十分に大きなパネルの統計分析によって決定することができる。
【0041】
特定の実施形態では、例えばMSの診断は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍のタンパク質の増加量、すなわち対照試料と比較して、対象からの試料中のRepタンパク質及び抗Rep抗体それぞれによって示される。
【0042】
本明細書で使用される「抗Rep抗体」は、本発明の方法において検出可能なレベルでRepタンパク質に結合する抗体を指し、その親和性は、非Repタンパク質に対するよりも本発明のRepタンパク質に対してより強い。好ましくは、Repタンパク質に対する抗原親和性は、バックグラウンド結合よりも少なくとも2倍大きい。特に、抗Rep抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有するMSBI1 Rep又はMSBI2 Repに特異的である。特定の実施形態では、抗体は、MSBI1 Rep、MSBI2 Rep、CMI1 Rep、CMI2 Rep、及び/又はCMI3 Repに交差特異的である。特定の実施形態では、抗Rep抗体は、MSBI1 Rep、MSBI2 Rep、CMI1 Rep、CMI2 Rep、及び/又はCMI3 Repの少なくとも2つ、好ましくは全てに対して交差特異的であり、配列番号1の1~136のアミノ酸内のエピトープに結合する。
【0043】
全てのアッセイの共通の特徴は、Repタンパク質が、試料中に存在する任意のそのような抗体に結合することを可能にする条件下で、抗Repタンパク質抗体を含有すると推測される試料と接触することである。そのような条件は、典型的には、生理的温度、pH、及び過剰のRepタンパク質を使用するイオン強度である。Repタンパク質を試料とインキュベートした後、抗原を含む免疫複合体を検出する。特定の実施形態では、Repタンパク質がシグナル生成化合物、例えば、検出可能な標識と結合するか、又は、シグナル生成化合物に結合した追加の結合剤、例えば二次抗ヒト抗体が、免疫複合体を検出するために使用される。
【0044】
抗Rep抗体は、タンパク質抗原としてのRepタンパク質に基づくアッセイにおいて検出及び定量することができ、それは試料中に推測される哺乳動物、例えばヒトの抗体の標的として役立つ。好ましくは、Repタンパク質は、精製され(例えば例1参照)、試料は、例えば血清又は血漿試料であり得る。本方法は、マトリックス上へのRepタンパク質の固定化、続いて固定化Repタンパク質の試料とのインキュベーションを含む。最後に、Repタンパク質と試料の抗体との間に形成された免疫学的複合体のRep結合抗体は、シグナル生成化合物に結合された検出結合剤、例えば、HRP-基質に基づく定量化を可能にする二次HRP-(セイヨウワサビ-ペルオキシダーゼ)結合検出抗体によって定量される。このシグナル生成化合物又は標識は、それ自体が検出可能であるか、又は追加の化合物と反応して検出可能な生成物を生成し得る。
【0045】
他の実施形態では、抗Rep抗体は、最初に試料の抗体をマトリックス上に固定化し、続いて標識され得るか又はTagタンパク質を含み得る規定量のRepタンパク質とインキュベートすることによって間接的に定量され、マトリックス上に固定化されて存在する抗Rep抗体は、タンパク質-試料液体混合物からRepタンパク質を捕捉し、続いて結合Repタンパク質を定量する。
【0046】
他の実施形態では、Repタンパク質を細胞内で発現させることができ、これらの細胞を試料とインキュベートする。その後、細胞によって発現されたRepタンパク質に結合した試料からの抗Rep抗体を検出し定量する。
【0047】
イムノアッセイの設計は、かなり変動を受け、多くのフォーマットが当技術分野で既知である。プロトコルは、例えば、固体支持体又は免疫沈降を使用し得る。ほとんどのアッセイは、シグナル生成化合物、例えば標識抗体又は標識Repタンパク質に結合した結合剤の使用を伴い、標識は、例えば、酵素分子、蛍光分子、化学発光分子、放射性分子、又は染料分子であり得る。免疫複合体からのシグナルを増幅するアッセイもまた既知であり、その例は、ビオチン及びアビジン又はストレプトアビジンを利用するアッセイ、並びにELISAアッセイなどの酵素標識及び媒介イムノアッセイである。
【0048】
イムノアッセイは、異種又は同種のフォーマットであり得、標準タイプ又は競合タイプであり得る。不均一フォーマットでは、ポリペプチド(Repタンパク質又は抗Rep抗体)は、典型的には、インキュベーション後のポリペプチドからの試料の分離を容易にするために、固体マトリックス又は支持体又は担体に結合される。使用できる固体支持体の例は、ニトロセルロース(例えば、膜又はマイクロタイターウェル形態)、ポリ塩化ビニル(例えば、シート又はマイクロタイターウェル)、ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズ又はマイクロタイタープレート)、ポリフッ化ビニリデン(Immunolonとして既知)、ジアゾ紙、ナイロン膜、活性化ビーズ、プロテインAビーズである。抗原性ポリペプチドを含有する固体支持体は、典型的には、それを試験試料から分離した後、結合した抗Rep抗体を検出する前に洗浄される。標準フォーマット及び競合フォーマットの両方が当技術分野において既知である。
【0049】
均一フォーマットでは、試験試料を溶液中のRepタンパク質とインキュベートする。例えば、それは、形成される任意のRepタンパク質-抗体複合体を沈殿させる条件下にあり得る。これらのアッセイのための標準フォーマット及び競合フォーマットの両方が当技術分野において既知である。
【0050】
標準フォーマットでは、抗体-Repタンパク質複合体中の抗Rep抗体の量は、直接監視される。これは、抗Rep抗体上のエピトープを認識する(標識された)抗異種(例えば抗ヒト)抗体が複合体形成により結合するかどうかを決定することにより達成され得る。競合フォーマットでは、試料中の抗Rep抗体の量は、複合体中の既知量の標識抗体(又は他の競合配位子)の結合に対する競合効果を監視することによって推論される。
【0051】
抗Rep抗体(又は競合アッセイの場合には競合抗体の量)を含んで形成された複合体は、フォーマットに応じて、いくつかの既知の技術のいずれかによって検出される。例えば、複合体中の非標識抗Rep抗体は、標識(例えば、HRPなどの酵素標識)と複合体を形成した抗異種Igの接合体を使用して検出され得る。
【0052】
免疫沈降又は凝集アッセイフォーマットでは、Repタンパク質と抗Rep抗体との間の反応は、溶液又は懸濁液から沈殿するネットワークを形成し、沈殿物の可視層又はフィルムを形成する。試料中に抗Rep抗体が存在しない場合、目に見える沈殿物は、形成されない。
【0053】
選択される固相は、ポリマービーズ又はガラスビーズ、ニトロセルロース、微粒子、反応トレイのマイクロウェル、試験管、及び磁気ビーズを含むことができる。シグナル生成化合物は、酵素、発光化合物、色原体、放射性元素、及び化学発光化合物を含むことができる。酵素の例としては、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、及びβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。エンハンサー化合物の例としては、ビオチン、抗ビオチン、及びアビジンが挙げられる。エンハンサー化合物結合メンバーの例としては、ビオチン、抗ビオチン、及びアビジンが挙げられる。
【0054】
さらなる実施形態では、本発明は、試料中のRepタンパク質の増加量が神経変性疾患、例えばMSの診断又は素因と相関するか、又は疾患、例えばMSを監視するために、又は疾患、例えばMSの治療を監視するために使用される方法を提供する。そのような実施形態では、試料中のRepタンパク質は、抗Rep抗体によって検出される。
【0055】
そのような方法は、
(a)抗Rep抗体によって対象からの試料中のRepタンパク質の量を検出する工程、及び
(b)対照試料中の量と比較して、工程(a)で対象からの試料中に検出されたRepタンパク質の量を神経変性疾患、例えばMSの診断と相関させる工程を含む。
【0056】
血清又は血漿試料中のRepタンパク質の検出のためのそのような方法において使用することができるアッセイの例としては、免疫沈降、免疫蛍光、ドットブロッティング、及びウエスタンブロットが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
例えば、血清試料を試料中のRepタンパク質を捕捉するために抗Repタンパク質抗体とインキュベートし、続いてRepタンパク質を免疫沈降させる工程、その後SDS-PAGE及びウエスタンブロットにより検出する工程が行われ得る。
【0058】
さらなる例では、ドットブロット膜を血清とインキュベートし、続いてSDS-PAGE及びウエスタンブロットの工程が行われ得る。
【0059】
さらなる例では、試料の血清希釈をSDS-Pageに充填し、続いてウエスタンブロットする。
【0060】
さらなる実施形態では、Repタンパク質は、免疫組織化学的方法又は免疫蛍光顕微鏡法によって組織試料中に検出される。
【0061】
特定の実施形態では、抗Rep抗体は、試料中のRepタンパク質の検出又は捕捉のために使用される。
【0062】
「抗体」という用語は、好ましくは、異なるエピトープ特異性を有するプールされたポリクローナル抗体から本質的になる抗体、及び別個のモノクローナル抗体調製物に関する。本明細書で使用される場合、「抗体」(Ab)又は「モノクローナル抗体」(Mab)という用語は、無傷の免疫グロブリン分子並びにRepタンパク質に特異的に結合することができる抗体断片(例えば、Fab及びF(ab’)2断片など)を含むことを意味する。Fab及びF(ab’)2断片は、無傷の抗体のFc断片を欠いており、循環からより迅速に取り除かれ、無傷の抗体よりも非特異的でない組織結合を有し得る。したがって、これらの断片、及びFAB又は他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物が好ましい。さらに、本発明の目的に有用な抗体としては、キメラ、一本鎖、多機能(例えば二重特異性)、及びヒト化抗体、又はヒト抗体が挙げられる。
【0063】
特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、シグナル生成化合物と結合しており、例えば検出可能な標識を担持している。抗体又はその抗原結合断片は、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、又は酵素で直接若しくは間接的に検出可能に標識することができる。当業者は、抗体に結合するための他の好適な標識が既知であるか、又は日常的な実験を使用してそれを確認することができる。
【0064】
抗Rep抗体は、好ましくは、当業者に周知の方法によって、配列番号1若しくは配列番号8のアミノ酸配列を有するRepタンパク質又はその断片に対して発生される(生成される)。
【0065】
特定の実施形態では、スモールスフィンクスゲノム(抗スモールスフィンクス様Rep抗体又は抗SSLRep抗体)の群からのいくつか又は全ての種類のRepタンパク質に結合することができる抗Rep抗体を本発明の方法において使用する。そのような抗SSLRep抗体は、配列番号1のアミノ酸1~229からのRepタンパク質の保存N末端領域内のエピトープに結合する。特定の実施形態では、配列番号2(配列番号1のアミノ酸32~49)又は配列番号3(配列番号1のアミノ酸197~216)内のエピトープに結合する抗SSLRep型の抗Rep抗体が使用される。配列番号2及び配列番号3のペプチド断片は、スモールスフィンクスゲノムグループからのRepタンパク質の間で高度に保存されており、それらの親水性のために露出されているように見える。抗SSLRep型の抗Rep抗体は、例えばマウス若しくはモルモットを、配列番号2若しくは3に示すようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドによって、又は配列番号1のアミノ酸1~229の保存N末端Repタンパク質領域に由来する、好ましくは少なくとも8~15個のアミノ酸を含む、他の免疫原性断片によって、免疫化することによって産生させ得る。
【0066】
さらなる実施形態では、MSBI1 Repタンパク質に特異的な抗Rep抗体が使用される。そのような抗体は、例えば、マウス又はモルモットなどの哺乳動物を、配列番号1のアミノ酸配列を有する全長Repタンパク質で免疫化することによって産生され得る。
【0067】
好ましくは、本発明の方法は、例えば血液、血清、髄液、又は脳液などの異なる種類の体液中でピコグラムからフェムトグラムまでの範囲のRepタンパク質を検出することができる抗Rep抗体を使用する。
【0068】
本発明の方法では、特定の種類の抗Rep抗体又は2種類以上の異なる種類の抗Rep抗体のプールのいずれかを使用してもよい。異なる種類の抗Rep抗体のプールが使用される場合、抗Rep抗体プールは、Repタンパク質の異なるドメイン、例えば第1のDNA結合ドメイン(例えば、配列番号1のアミノ酸1~136)、第2のDNA結合ドメイン(例えば、配列番号2のアミノ酸137~229)、及び/又は可変ドメイン(例えば、配列番号1のアミノ酸230~324)、特にMSBI1 Repタンパク質(配列番号1)の異なるエピトープに結合する異なる抗Rep抗体を含み得る。
【0069】
さらなる実施形態では、抗Rep抗体は、Repタンパク質について患者及び/又は健康な個体からのプローブのスクリーニングに使用される。例えば神経変性疾患の患者の組織中のRepタンパク質の選択的検出は、試料中で検出されたRepタンパク質の分離されたDNAゲノムと試料が由来する患者の疾患との間の因果関係を示している。
【0070】
抗Rep抗体法によるRepタンパク質の検出のために、例えば、ウエスタンブロット、免疫蛍光顕微鏡法、又は免疫組織化学的方法などが適用され得る。
【0071】
特定の実施形態では、特定の細胞内局在でRepタンパク質を検出することができる抗Rep抗体が使用される。例えば、抗Rep抗体は、細胞質、核膜、及び核中のRepタンパク質を検出し得るか、又は細胞質中のスペックルを検出し得る。そのような抗Rep抗体群の例を表1に示す:
【0072】
【表1】
【0073】
A群の抗Rep抗体は、配列番号3に示されるアミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸198~217)内にエピトープを有し、スモールスフィンクスゲノム群(例えばMSBI2、CMI1、CMI4)のこの保存されたエピトープを含むMSBI1 Repタンパク質及びRepタンパク質を検出することができる。免疫蛍光アッセイにおいて、そのような抗Rep抗体は、特異的Rep局在パターンを検出し、主な局在は、細胞質及び核膜にわたって均一に分布しており、核内には、追加の弱く均一に分布した局在が見られる。そのようなA群抗体の例は、例においてA群抗体として用いられた抗体AB01 523-1-1(DSM ACC3327)である。
【0074】
B群の抗Rep抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列(配列番号1のアミノ酸33~50)内にエピトープを有し、スモールスフィンクスゲノム群(例えばMSBI2、CMI1、CMI4)のこの保存されたエピトープを含むMSBI1 Repタンパク質及びRepタンパク質を検出することができる。免疫蛍光アッセイにおいて、そのような抗Rep抗体は、Repタンパク質のスペックル(細胞質凝集体)(しばしば核膜の周辺にある)を特異的に検出する。そのようなB群抗体の例は、例においてB群抗体として用いられたAB02 304-4-1(DSM ACC3328)と命名された抗体である。
【0075】
C群の抗Rep抗体は、MSBI1(配列番号1)の構造的エピトープを特異的に検出する。免疫蛍光アッセイにおいて、そのような抗Rep抗体は、特異的Rep局在パターンを検出し、主な局在は、細胞質及び核膜にわたって均一に分布しており、核内には、追加の弱く均一に分布した局在が見られる。そのようなC群抗体の例は、例においてC群抗体として用いられた抗体MSBI1 381-6-2(DSM ACC3329)である。
【0076】
D群の抗Rep抗体は、MSBI1(配列番号1)の構造的エピトープを特異的に検出し、「D1」と命名された抗体MSBI1 961-2-2は、MSBI1のC末端ドメインにおいて配列番号9(アミノ酸配列281~287)に示されるエピトープを検出する。「D2」と命名された抗体MSBI1 761-5-1(DSM ACC3328)は、インビボ条件下で排他的にアクセス可能であり、ウエスタンブロットではアクセス不可能であるMSBI1の3D構造エピトープを検出する。免疫蛍光アッセイにおいて、そのような抗Rep抗体は、Repタンパク質のスペックル(細胞質凝集体)(しばしば核膜の周辺にある)を特異的に検出する。
【0077】
特定の実施形態では、A、B、C、若しくはD群の抗Rep抗体;又は少なくとも2つの異なるA、B、C、若しくはD群の抗Rep抗体の組み合わせを使用して、プローブ中のRepタンパク質局在化の種類及びそのようなRepタンパク質局在化が病原体機能と相関するか否かを決定する。例えば、スペックルが存在するか否かなどである。特定の実施形態、すなわち本発明の方法又はキットでは、A及びB群から選択される少なくとも1つの抗Rep抗体は、C及びD群から選択される少なくとも1つの抗Rep抗体と組み合わされる。特定の実施形態、すなわち本発明の方法又はキットでは、A群の抗Rep抗体は、B、C、及びD群から選択される少なくとも1つのさらなる抗Rep抗体と組み合わされる。例えば、A群の抗Rep抗体は、C群及びD群のさらなる抗Rep抗体と組み合わせてもよい。異なる群の抗Rep抗体のそのような組み合わせは、特にMSの診断に関して、診断評価の明確さを増大させる。これらのA、B、C、又はD群抗体は、MSの診断における使用に好ましい。
【0078】
以下の抗体は、2017年9月28日にドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen)(DSMZ)[ドイツ微生物細胞培養コレクション(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)]に寄託された:
DSM ACC3327に基づく抗体AB01 523-1-1;
DSM ACC3328に基づく抗体AB02 304-4-1;
DSM ACC3329に基づく抗体MSBI1 381-6-2;
DSM ACC3330に基づく抗体MSBI1 761-5-1。
抗体MSBI1 961-2-2(DSM ACC3331)は、2017年10月6日にDSMZに寄託された。
【0079】
さらなる実施形態では、MSの診断に使用するためのキットが提供される。キットは、抗Rep抗体及び/又はRepタンパク質を検出するための材料を、MSの診断のためのアッセイにおける材料の使用のための説明書と共に含み得る。キットは、以下の構成要素:本発明によるバイオマーカー、すなわち、Repタンパク質及び抗Rep抗体、例えば、それぞれ表1の抗体;シグナル生成化合物、捕捉剤を付着させるための固体マトリックス、試料用の希釈剤、洗浄緩衝液のうちの1つ以上を含み得る。シグナル生成化合物は、本発明のバイオマーカーに結合することができる追加の結合剤に結合しているか、又は本発明のバイオマーカーと直接結合しているかのいずれかである検出可能な標識を指す。
【0080】
以下の例により本発明をさらに説明するが、これらに限定されない。
【0081】
例1:
MSBI1 Repタンパク質精製
MSBI1ゲノム内で同定された全長Repオープンリーディングフレーム(ORF)をコードするヌクレオチド酸分子を、大腸菌高収率無細胞インビトロ翻訳系(Expressway(商標)無細胞大腸菌発現システム、Invitrogen)に基づくタンパク質発現を可能にする発現プラスミド(pEXP5-CT、Invitrogen)にクローニングする。インビトロ翻訳反応内で配列番号1のアミノ酸配列を有する合成Repタンパク質を、100mM NaHPO、10mM Tris HCl、pH8.0の5mMイミダゾールを含有する20反応容積の8M尿素試料緩衝液pH8.0を添加することによって変性させる。Repタンパク質は、その後、Repタンパク質に融合したC末端His-タグに基づく変性条件下(洗浄用に20mMイミダゾール及びタンパク質溶出用に300mMイミダゾール)で精製される。精製の質は、クマシータンパク質染色及び抗Repタンパク質抗体を用いたウエスタンブロッティングによって決定される。Repタンパク質純度は、デンシトメトリーで計算され、95%以上である。精製タンパク質を直接ELISAに基づく血清スクリーニングに使用するか、又はSDS-Pageに供し、続いてニトロセルロース膜上に転写ブロッティングして、1Dサイズ分解Repタンパク質膜ストライプの血清インキュベーションを行う。
【0082】
例2:
血清マスタープレートの生成
血清試料を最初に等分して、試料の凍結融解サイクルを低減する。次いで、U字型96ウェルプレート中、0.02%(w/v)アジ化ナトリウム最終濃度で安定化されたPBS pH7.2中に1:1希釈の血清を生成することによってマスタープレートを確立する。このプレートは、4℃で保管し、滅菌条件下で取り扱うと少なくとも2ヶ月間安定であり、個々のスクリーニング実験の前にさらなる血清希釈(1:20の最終希釈)のためのテンプレートとして使用される。
【0083】
例3:
1Dサイズ分解Repタンパク質膜ストライプの血清インキュベーションによる血清スクリーニング
1D分解Repタンパク質膜ストライプと血清とのインキュベーションに基づくスクリーニングアッセイのために、20μg精製Repタンパク質をSigma Tru-PAGE 4~20%プレキャストゲルに充填する。ゲルポケットを分離する壁は、ゲル充填の前に除去され、サイズマーカーのための1つの大きなポケット及び1つのポケットが生じる。1Dサイズ分解SDS-PAGE後、標準的な湿式/タンク転写ブロットプロトコルを使用してタンパク質をニトロセルロース膜上に転写ブロットする。その後、ブロット膜上のタンパク質(約40kDaのランニングハイトにある全長Repタンパク質の本質的に1つのバンド)をPonceauSで可視化して転写品質をチェックし、完全な1Dサイズ分解膜の幅2mm及び高さ2mmの膜ストライプのカットを準備する。次いで、ストライプを各500μlの無血清ブロッキング試薬(Genetex Tridentユニバーサルブロッキング試薬)で1時間ブロッキングする。その後、血清は、2つの異なる血清希釈に基づいて特徴付けられる。血清インキュベーションを4℃で14時間(一晩)線形振盪装置で実行する。その後、膜ストリップを室温で3×5分間、PBS-T pH7.2の0.1%Tween-20で洗浄する。血清内のRep特異的結合ヒトIgGの検出は、HRP結合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体と室温で1時間インキュベートすることによって行われる。室温で3×5分間、PBS-T pH7.2の0.1%Tween-20で3回洗浄した後、各個々の血清インキュベーションのストリップをプラスチックホイル上にテープで固定する。次いで、ホイルをECL基質(Biorad Clarity)とインキュベートして、BioRad WesternBlot検出システムで結合ヒトIgGを可視化する。タンパク質膜上のRepバンドに特異的に結合するIgGの量に対応するシグナルをデンシトメトリーによって定量する。
【0084】
1Dサイズ分解Repタンパク質膜ストライプの結果の例を図1に示し、血清陽性血清/血漿試料の定量化を表2に示す:血清試料のほぼ50%が両方の希釈(1:500及び1:2000)に対して非常に強いシグナルを与え、21個のうち3個だけが完全に陰性であった。血漿対照のうち、7個の試料が1:500希釈で中間シグナルを与え(非常に低いシグナルを有するいくつかの追加のもの)、一方1:2000希釈では3個の試料のみが非常に弱いシグナルを与えたが、他の全ては、血清陰性であった。全ての定量化は、MS-血清強度が対照血漿強度と比較したとき少なくとも30倍過剰のシグナルを示す傾向を維持する。
【0085】
【表2】

表2:血清陽性血清/血漿試料の定量化。
【0086】
Rep特異的ヒトIgGを検出した血清/血漿を、MS血清プール及び健常対照血漿プール(それぞれ合計21個)について、血清/血漿希釈1:500及び1:2000のシグナル強度に従って計数した。血清試料のほぼ50%が両方の希釈(1:500及び1:2000)に対して非常に強いシグナルを与え、21個のうち3個のみが完全に陰性であった。血漿対照のうち、7個の試料が1:500希釈で中間シグナルを与え(非常に低いシグナルを有するいくつかの追加のもの)、一方1:2000希釈では3個の試料のみが非常に弱いシグナルを与えたが、他の全ては、血清陰性であった。全ての定量化は、MS-血清強度が対照血漿強度と比較したとき少なくとも30倍過剰のシグナルを示す傾向を維持する。
【0087】
例4:
ELISAによる血清スクリーニング
適量の精製Repタンパク質(通常、1ウェルあたり50~200ng)を、Maxisorp 96ウェルELISAプレート(Fisher Scientific)に予め分注した8M尿素pH8.0とPBS pH7.2との1:1混合物に添加する。タンパク質を線形振盪装置上で4℃で14時間プレートマトリックスに結合させる。次いで、プレートをPBS-T pH7.2の0.1%Tween-20によって室温で3×5分間洗浄し、続いて4℃で少なくとも14時間、0.02%アジ化ナトリウムを最終的に含有するPBS pH7.2の1%(w/v)BSAでブロッキングする。その後、血清を1:500の希釈で添加し、インキュベーションを室温で6時間実行する。その後、プレートをPBS-T pH7.2の0.1%Tween-20によって室温で3×5分間洗浄する。血清内のRep特異的結合ヒトIgGの検出は、HRP結合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体と室温で1時間インキュベートすることによって行われる。室温でPBS-T pH7.2の0.1%Tween-20で3×5分間3回洗浄した後、100μlのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、HRP感受性)基質溶液をウェルごとに添加して、室温で5分インキュベートする。100μlの8M酢酸/1M硫酸を添加して反応を停止させる。シグナル強度は、450nmで吸光度を測定することにより、Perkin Elmer ELISA適合装置で定量化される。
【0088】
ELISAスクリーニングに基づくRep特異的血清反応の定量化の例の結果を図2に示す:定量化は、シグナル強度とRepタンパク質(抗原)の量との良好な相関関係を明らかにする。平均して、MSプールのシグナル強度レベルは、対照プールの強度を少なくとも1.9倍上回る。一般に、ELISAに基づく血清スクリーニングは、少なくとも1:1000の血清希釈について検出可能な血清抗体を明らかにし(データは示さず)、そのためこの実験の力価は、1:2000~1:4000の領域で1:1000以上、又はプラットフォームの最適化後はさらに高くなる可能性がある。
【0089】
例5:
免疫蛍光分析
HEK293TT細胞(125.000/ウェル)を、DMEM 10%FCS(1×Glutamax(Gibco)及び1×非必須アミノ酸(Gibco)を補充した)中の免疫蛍光8ウェルチャンバー中で24時間培養し、続いて自己蛍光マーカータンパク質ZsGreenを発現する対照プラスミドZsGreen1CI(Clontech)、又はZsGreen-Rep融合タンパク質をコードする3’末端に全長MSBI1 Rep ORFを有する同じプラスミドのいずれかのポリエチレンイミン(PEI)によりDNAトランスフェクションを行った。DNAトランスフェクションの48時間後、細胞をPBSで洗浄し、室温で20分間4%PFA PBSを用いて室温で固定し、振盪装置上で室温にて10分間PBS 0.5%Triton X-100で透過処理した。細胞をPBSで洗浄し、ブロッキングをPBS 1%BSAで室温にて45分間実行した。マウスモノクローナル抗Rep抗体(表1参照)とのインキュベーションを、1:500抗体希釈を含むPBS 1%BSA(一次抗体を欠く対照を含めた)中で37℃にて1時間実行した。細胞をPBSで3回洗浄した後、PBS 1%BSAと室温で15分間インキュベートした。次いで、二次抗体(AlexaFluor546ヤギ抗マウス、1:500;DNAマーカーHoechst 33342、1:5.000)とのインキュベーションを、PBS 1%BSA中、室温で45分間実行した。カバースリップ(Dakoマウント培地)でマウントする前に、細胞をPBS 1%BSAで3回及びPBSで3回洗浄した。免疫蛍光画像をZeiss Cell Observerで撮影した(対物レンズ20倍、試料及び対照デュブレットの固定露光時間)。
【0090】
免疫蛍光画像(図4)は、A群及びC群の抗体による抗体処理が、凝集体の検出なしに細胞質+核膜(+核)局在化標的タンパク質の特異的検出をもたらすことを示す。対照的に、B群及びD群の抗体は、スペックルタンパク質と特異的な共局在を示し、0~弱レベルの細胞質シグナルを示す。ZsGreen融合タンパク質単独での抗体の対照インキュベーションは、有意なシグナル検出をもたらさなかった(抗体シグナルの可視化に使用されたのと同じ曝露時間)。
【0091】
例6:
免疫蛍光分析
HEK293TT細胞(125.000/ウェル)を、DMEM 10%FCS(1×Glutamax(Gibco)及び1×非必須アミノ酸(Gibco)を補充した)中の免疫蛍光8ウェルチャンバー中で24時間培養し、続いて自己蛍光マーカータンパク質ZsGreenを発現する対照プラスミドZsGreen1CI(Clontech)、又はZsGreen-Rep融合タンパク質をコードする3’末端に全長CMI1 Rep ORFを有する同じプラスミドのいずれかのポリエチレンイミン(PEI)によりDNAトランスフェクションを行った。DNAトランスフェクションの48時間後、細胞をPBSで洗浄し、室温で20分間4%PFA PBSを用いて室温で固定し、振盪装置上で室温にて10分間PBS 0.5%Triton X-100で透過処理した。細胞をPBSで洗浄し、ブロッキングをPBS 1%BSAで室温で45分間実行した。マウスモノクローナル抗Rep抗体(表1)とのインキュベーションを、1:500抗体希釈を含むPBS 1%BSA(一次抗体を欠く対照を含めた)中で37℃にて1時間実行した。細胞をPBSで3回洗浄した後、PBS 1%BSAと室温で15分間インキュベートした。次いで、二次抗体(AlexaFluor546ヤギ抗マウス、1:500;DNAマーカーHoechst 33342、1:5.000)とのインキュベーションを、PBS 1%BSA中、室温で45分間実行した。カバースリップ(Dakoマウント培地)でマウントする前に、細胞をPBS 1%BSAで3回及びPBSで3回洗浄した。免疫蛍光画像をZeiss Cell Observerで撮影した(対物レンズ20倍、試料及び対照デュブレットの固定露光時間)。
【0092】
免疫蛍光画像(図5)は、A群抗体が、凝集物を検出することなく細胞質+核膜(+核)局在化標的タンパク質を特異的に検出するが、B群抗体は、細胞質局在化標的タンパク質のバックグラウンドが最小限であるスペックル標的タンパク質を検出することを示す。C群及びD群のMSBI1特異的抗体は、シグナルの特異的検出をもたらさない。抗体D1及びD2は、両方とも「D」群に属するが、わずかに異なるエピトープ認識を有する。
【0093】
例7:
免疫蛍光分析
HEK293TT細胞(125.000/ウェル)を、DMEM 10%FCS(1×Glutamax(Gibco)及び1×非必須アミノ酸(Gibco)を補充した)中の免疫蛍光8ウェルチャンバー中で24時間培養し、続いて対照プラスミドpcDNA3.1(-)(Invitrogen)又は全長MSBI1 Rep ORF(配列番号13)のコドン最適化変異体を発現する同じプラスミドのいずれかのポリエチレンイミン(PEI)によるDNAトランスフェクションを行った。DNAトランスフェクションの48時間後、細胞をPBSで洗浄し、室温で20分間4%PFA PBSを用いて室温で固定し、振盪装置上で室温にて10分間PBS 0.5%Triton X-100で透過処理した。細胞をPBSで洗浄し、ブロッキングをPBS 1%BSAで室温で45分間実行した。マウスモノクローナル抗Rep抗体(表1)とのインキュベーションを、1:500抗体希釈を含むPBS 1%BSA(一次抗体を欠く対照を含めた)中で37℃にて1時間実行した。細胞をPBSで3回洗浄した後、PBS 1%BSAと室温で15分間インキュベートした。次いで、二次抗体(AlexaFluor488ヤギ抗マウス、1:500;DNAマーカーHoechst 33342、1:5.000)とのインキュベーションを、PBS 1%BSA中、室温で45分間実行した。カバースリップ(Dakoマウント培地)でマウントする前に、細胞をPBS 1%BSAで3回及びPBSで3回洗浄した。免疫蛍光画像をZeiss Cell Observerで撮影した(対物レンズ20倍、試料及び対照デュブレットの固定露光時間)。
【0094】
免疫蛍光画像(図6)は、A群及びC群の抗体による抗体処理が、凝集体の検出なしに細胞質+核膜(+核)局在化標的タンパク質の特異的検出をもたらすことを示す。対照的に、B群及びD群の抗体は、スペックルタンパク質と特異的な共局在を示し、0~弱レベルの細胞質シグナルを示す。ZsGreen融合タンパク質単独での抗体の対照インキュベーションは、有意なシグナル検出をもたらさなかった(抗体シグナルの可視化に使用されたのと同じ曝露時間)。
【0095】
例8:
ウエスタンブロット分析
HEK293TT(1,5Mio/6ウェル)を、DMEM 10%FCS(1×Glutamax(Gibco)及び1×非必須アミノ酸(Gibco)を補充したもの)中の6ウェル細胞培養プレート中で24時間培養し、続いてN末端ZsGreenタグとの融合タンパク質として全長MSBI1、CMI1、又はMSBI2 Repタンパク質の過剰発現をコードするZsGreen1CIプラスミドのポリエチレンイミン(PEI)によりDNAトランスフェクションを行った。DNAトランスフェクションの48時間後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理により脱着し、PBSで再度洗浄し、SDS-PAGE Laemmli緩衝液中で溶解した(98℃で5分間煮沸)。試料を1つの大きなポケットを有するプレキャスト12.5%SDS-PAGEゲル上に充填した。転写ブロット後、PBS 5%スキムミルクでブロッキングした後、表1の異なるマウスモノクローナル抗体(PBS 5%スキムミルク中1:1000希釈)とストライプを個々にインキュベートするために、膜の各2つのストライプを切断した。ストライプをPBS 0.1%Tween20で3回洗浄し、HRP結合抗マウス二次抗体とインキュベートして、Biorad ChemiDoc装置上で異なるZsGreen-Rep融合タンパク質を検出する抗体のウエスタンブロット分析を可能にした。ZsGreen抗体(OriGene、1:2000)とのインキュベーションに基づいて陽性対照検出を実行した。
【0096】
図7は、A群及びB群の抗体がMSBI1 Rep融合タンパク質に加えてCMI1及びMSBI2 Rep融合タンパク質を含む3つ全てのRep融合タンパク質を特異的に検出する一方、C群及びD群のMSBI1特異的抗体は、MSBI1のみを検出することを示している。抗体D2は、おそらく、SDS-PAGEにおける変性条件下で優勢ではない3D構造エピトープの検出に起因してWB陰性であり、ここでは試験されなかった。
【0097】
配列概要
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

参考文献:



【配列表フリーテキスト】
【0098】
配列表1 <223>MSBI1 Repタンパク質
配列表2 <223>Repペプチド
配列表3 <223>Repペプチド
配列表4 <223>Hisタグ
配列表5 <223>T7タグ
配列表6 <223>FLAGタグ
配列表7 <223>Trep IIタグ
配列表8 <223>MSBI2.176
配列表9 <223>MSBI1エピトープ
配列表10 <223>CMI1.252
配列表11 <223>CMI2.214
配列表12 <223>CMI3.168
配列表13 <223>コドン最適化MSBI1
配列表14 <223>MSBI1タンパク質
配列表15 <223>MSBI1野生型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007529639000001.app