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特許7529653標的送信デバイスの範囲内にある端末の位置情報を取得するための方法及びシステム
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  • 特許-標的送信デバイスの範囲内にある端末の位置情報を取得するための方法及びシステム 図1
  • 特許-標的送信デバイスの範囲内にある端末の位置情報を取得するための方法及びシステム 図2
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  • 特許-標的送信デバイスの範囲内にある端末の位置情報を取得するための方法及びシステム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】標的送信デバイスの範囲内にある端末の位置情報を取得するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 64/00 20090101AFI20240730BHJP
   H04W 4/021 20180101ALI20240730BHJP
   H04W 4/70 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
H04W64/00 160
H04W4/021
H04W4/70
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021503790
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019069514
(87)【国際公開番号】W WO2020020776
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】1856863
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】523231071
【氏名又は名称】ウナビズ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ユベール,ロイク
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァリエ,ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ガルニエ,フィリップ
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528099(JP,A)
【文献】特開2016-134918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0324154(US,A1)
【文献】国際公開第2016/103498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システム(10)の端末(20)の位置情報を取得するための方法(60)であって、
前記端末(20)は、第1の無線通信プロトコルに従って、前記無線通信システムのアクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するよう適合されており、
前記方法は:
‐標的送信デバイス(40)が第2の無線通信プロトコルに従って送信したメッセージを、前記端末(20)によって受信するステップ(61);
‐前記標的送信デバイスから、前記端末(20)によって、あいまい識別情報を取得するステップ(62);
‐前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報を含むメッセージを、前記端末(20)によって、前記アクセスネットワーク(30)に送信するステップ(63);
‐前記端末(20)の概略地理的位置を前記アクセスネットワーク(30)によって推定するステップ(65);
‐前記アクセスネットワーク(30)によって、複数の送信デバイスの別子と、前記複数の送信デバイスそれぞれの理的位置とのリストを記憶したテーブル中において、前記標的送信デバイスを、前記あいまい識別情報に対応する前記識別子を有し、かつ前記端末(20)の前記概略地理的位置に対応する前記地理的位置を有する、前記テーブル中の前記送信デバイスとして識別する、ステップ(66);
‐前記標的送信デバイスの前記地理的位置に基づいて、前記端末の精密地理的位置を前記アクセスネットワーク(30)によって推定するステップ(67)
を含み、
前記あいまい識別情報は、前記テーブル中に記憶されている前記地理的位置を有する複数の前記送信デバイスに対応する可能性があるという点で、あいまいなものである、
ことを特徴とする、方法(60)。
【請求項2】
前記標的送信デバイスから受信される前記メッセージは、前記標的送信デバイスのあいまいな識別子を含み、
前記あいまい識別情報は前記あいまいな識別子に対応する、請求項1に記載の方法(60)。
【請求項3】
前記標的送信デバイスから受信される前記メッセージは、前記標的送信デバイスの識別子を含み、
前記あいまい識別情報を取得する前記ステップ(62)は、前記標的送信デバイスから受信される前記メッセージに含まれる前記識別子の非可逆圧縮を含む、請求項1に記載の方法(60)。
【請求項4】
複数の前記標的送信デバイスが用いられ、前記端末の精密地理的位置は、前記標的送信デバイスそれぞれの地理的位置に基づいて推定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項5】
少なくとも2つの前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報は、前記第1の無線通信プロトコルに従って、1つのメッセージで前記アクセスネットワーク(30)に送信される、請求項4に記載の方法(60)。
【請求項6】
前記第2の無線通信プロトコルの範囲は、前記第1の無線通信プロトコルの範囲より小さい、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項7】
前記端末の前記概略地理的位置は、前記アクセスネットワークの少なくとも1つの基地局が受信した少なくとも1つのメッセージに基づいて推定され、前記基地局は所定の地理的位置にある、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項8】
前記端末(20)の前記概略地理的位置を推定する前記ステップ(65)は、前記推定するステップに寄与するいかなる明確な情報も、前記端末が前記アクセスネットワークにメッセージで送信することなく、前記アクセスネットワーク(30)によって実施される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(60)。
【請求項9】
無線通信システム(10)の端末(20)であって、
前記端末は、第1の無線通信プロトコルに従って、前記無線通信システムのアクセスネットワーク(30)とメッセージを交換するよう適合された第1の通信モジュール(21)と、第2の無線通信プロトコルに従ってメッセージを受信するよう適合された第2の通信モジュール(22)とを含み、
前記端末(20)は:
‐標的送信デバイスが送信したメッセージを、前記第2の通信モジュールによって受信すること;
‐前記標的送信デバイスのあいまい識別情報を、前記端末の処理回路(23)によって取得すること;
‐前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報を含むメッセージを、前記第1の通信モジュールによって送信すること
のために構成され、
前記あいまい識別情報は、前記アクセスネットワーク(30)によってアクセス可能なテーブル中に記憶されている地理的位置を有する複数の送信デバイスに対応する可能性があるという点で、あいまいなものであり、前記テーブルは、前記複数の送信デバイスの識別子と、前記複数の送信デバイスそれぞれの地理的位置とのリストを記憶する
ことを特徴とする、端末(20)。
【請求項10】
前記処理回路(23)は、前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報を、前記標的送信デバイスから受信した前記メッセージに含まれる前記標的送信デバイスの識別子から取得するよう構成される、請求項9に記載の端末(20)。
【請求項11】
前記処理回路(23)は、前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報を、前記標的送信デバイスの前記識別子の非可逆圧縮によって取得するよう構成される、請求項10に記載の端末(20)。
【請求項12】
無線通信システム(10)のアクセスネットワーク(30)であって、
前記アクセスネットワークは、端末とメッセージを交換するよう適合されており、
前記アクセスネットワーク(30)は:
‐前記端末が送信したメッセージを受信することであって、前記メッセージは、前記端末の近傍にある標的送信デバイスのあいまい識別情報を含む、受信すること;
‐前記端末(20)の概略地理的位置を推定すること;
‐複数の送信デバイスの別子と、前記複数の送信デバイスそれぞれの理的位置とのリストを記憶したテーブル中において、前記標的送信デバイスを、前記あいまい識別情報に対応する前記識別子を有し、かつ前記端末(20)の前記概略地理的位置に対応する地理的位置を有する、前記テーブル中の前記送信デバイスとして識別すること;
‐前記標的送信デバイスの前記地理的位置に基づいて、前記端末の精密地理的位置を推定すること
のために構成され
前記あいまい識別情報は、前記テーブル中に記憶されている地理的位置を有する複数の送信デバイスに対応する可能性があるという点で、あいまいなものである、
ことを特徴とする、アクセスネットワーク(30)。
【請求項13】
前記テーブルは、前記アクセスネットワークの外部の位置情報取得サーバに記憶されており、
前記アクセスネットワークは:
‐前記標的送信デバイスの前記地理的位置に関するリクエスト(R1)を、前記位置情報取得サーバに送信することであって、前記地理的位置に関する前記リクエストは、前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報、及び前記端末(20)の前記概略地理的位置を含む、リクエスト(R1)を送信すること;
‐前記位置情報取得サーバから、前記標的送信デバイスの前記地理的位置を含む応答(R2)を受信すること
のために構成された、問い合わせサーバを含む、請求項12に記載のアクセスネットワーク(30)。
【請求項14】
前記テーブルは、前記アクセスネットワークの外部の位置情報取得サーバに記憶されており、
前記アクセスネットワークは:
‐前記標的送信デバイスの前記地理的位置に関するリクエスト(R1)を、前記位置情報取得サーバに送信することであって、前記地理的位置に関する前記リクエストは、前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報を含む、リクエスト(R1)を送信すること;
‐前記位置情報取得サーバから、前記あいまい識別情報に対応する識別子を有する前記送信デバイスの前記地理的位置を含む応答(R2)を受信すること
のために構成された、問い合わせサーバを含み、
前記アクセスネットワークは、前記標的送信デバイスの前記地理的位置を、前記端末(20)の前記概略地理的位置に対応する受信した前記地理的位置として識別するよう構成される、請求項12に記載のアクセスネットワーク(30)。
【請求項15】
請求項9~11のいずれか1項に記載の端末(20)、及び請求項12~14のいずれか1項に記載のアクセスネットワーク(30)を備える、無線通信システム(10)。
【請求項16】
記憶手段を含む位置情報取得サーバ(50)であって、
前記記憶手段には、複数の送信デバイスの別子と、前記複数の送信デバイスそれぞれの理的位置とのリストを含むテーブルが記憶され、
前記位置情報取得サーバ(50)は:
‐標的送信デバイスの前記地理的位置に関するリクエスト(R1)を受信することであって、前記地理的位置に関する前記リクエストは、前記標的送信デバイスの前記あいまい識別情報及び概略地理的位置を含む、リクエスト(R1)を受信すること;
‐受信した前記あいまい識別情報に対応する、記憶されている識別子を有し、かつ受信した前記概略地理的位置に対応する地理的位置を有する、テーブル中の送信デバイスを識別すること;
‐前記テーブル中で識別された前記送信デバイスの前記地理的位置を含む応答(R2)を送信すること
のために構成された手段を含み、
前記あいまい識別情報は、前記テーブル中に記憶されている地理的位置を有する複数の送信デバイスに対応する可能性があるという点で、あいまいなものである、
ことを特徴とする、位置情報取得サーバ(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムの端末の位置情報を取得する(geolocating)ための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、制限するものでは全くないが、M2M(「マシンツーマシン(machine to machine)」の頭字語)タイプ、又は「モノのインターネット(Internet of things)」(即ちIoT)タイプの用途に特に有利であることが分かっている。
【0003】
現在、無線通信システムのアクセスネットワーク内の端末の地理的位置を取得するための多数の解決策が存在する。
【0004】
例えば、GPS(「全地球測位システム(Global Positioning System)」)レシーバを端末に搭載でき、これにより上記端末は、上記端末の地理的位置を決定できる。端末はその後、この地理的位置を指示するメッセージを、無線通信システムのアクセスネットワークに送信できる。
【0005】
しかしながら、地理的位置を推定できることが望ましいにもかかわらず、このようなGPSレシーバを備えない端末も多数存在する。
【0006】
アクセスネットワークにおいて、端末が送信し、上記アクセスネットワークの1つ以上の基地局が受信するメッセージに基づいて、上記端末の地理的位置を推定することも公知である。
【0007】
例えば、地理的位置が先験的に知られている複数の基地局が同一のメッセージを受信した場合、各基地局におけるメッセージの受信の強度レベル(「受信信号強度インジケータ(Received Signal Strength Indicator、即ちRSSI)を比較することにより、上記端末の地理的位置を推定できる。しかしながら、多数のパラメータ(障害物、複数の経路等)が、基地局によるメッセージの受信の強度レベルに影響する可能性があるため、このようにして推定された端末の地理的位置は、極めて正確なものとなるとは限らない。
【0008】
特に各基地局におけるメッセージの到着時点(Times of Arrival(又はTOA))を比較することにより、端末の地理的位置を推定することもできる。しかしながらこの場合、これらの基地局を互いに時間的に同期させる必要があり、地理的位置の推定の精度は、基地局を互いに時間的に同期させる精度に左右される。IoT及び/又はM2Mタイプの用途に関して、基地局同士の精密な時間的同期を実装することは一般に望ましくない。というのは、これによりアクセスネットワークの複雑性及び製造コストが増大するためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、無線通信システムの端末の地理的位置を正確に決定できるようにする解決策を提案することにより、特に従来技術の上述の欠点の全て又は一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
更に本発明は、いくつかの実装形態において、端末と無線通信システムのアクセスネットワークとの間で交換されるデータの量を制限できるようにする解決策を提供することも目的とする。
【0011】
この目的のために、第1の態様によると、本発明は、無線通信システムの端末の位置情報を取得するための方法に関し、上記端末は、第1の無線通信プロトコルに従って、上記無線通信システムのアクセスネットワークとメッセージを交換するよう適合されており、上記方法は:
‐標的送信デバイスが第2の無線通信プロトコルに従って送信したメッセージを、上記端末によって受信するステップ;
‐上記標的送信デバイスからあいまい識別情報を取得するステップ;
‐上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報を含むメッセージを、上記端末によって、上記アクセスネットワークに送信するステップ;
‐上記端末の概略地理的位置を上記アクセスネットワークによって推定するステップ;
‐複数の送信デバイスの送信デバイス識別子と、上記複数の送信デバイスそれぞれの上記地理的位置とのリストを記憶したテーブル中において、上記標的送信デバイスを、上記あいまい識別情報に対応する識別子を有し、かつ上記端末の上記概略地理的位置に対応する地理的位置を有する、上記テーブル中の上記送信デバイスとして識別する、ステップ;
‐上記標的送信デバイスの上記地理的位置に基づいて、上記端末の精密地理的位置を推定するステップ
を含む。
【0012】
従って、上記アクセスネットワークは、「概略地理的位置(approximate geographical position)」と呼ばれる上記端末の上記地理的位置の第1の推定と、「精密地理的位置(precise geographical position)」と呼ばれる上記地理的位置の第2の推定とを、連続的に決定する。「精密(precise)」及び「概略(approximate)」は単に、上記精密地理的位置の精度が原理的に上記概略地理的位置の精度よりも良好であることを意味する。
【0013】
上記端末の上記精密地理的位置を推定するために、上記アクセスネットワークは、上記端末が、送信デバイス及び上記送信デバイスそれぞれの地理的位置のリストを含むテーブルに記憶されている所定の地理的位置を有する少なくとも1つの標的送信デバイスから、メッセージを受信することもできるという事実を利用する。
【0014】
上記標的送信デバイスが送信したメッセージを受信した上記端末は、上記標的送信デバイスの識別情報を含むメッセージを、上記アクセスネットワークに送信する。
【0015】
しかしながらこの識別情報は、この識別情報が、上記テーブルに記憶されている地理的位置を有する複数の送信デバイスに対応する可能性が高いという点で、あいまいなものである。これは例えば、上記標的送信デバイスがローカル識別子、即ち異なる場所に配置された異なる複数の送信デバイスが使用できる識別子を用いる場合に当てはまる。しかしながらこれは特に、上記標的送信デバイスはグローバル識別子(即ち上記標的送信デバイスを一意に識別するあいまいでない識別子)を用いるものの、あいまい識別情報が、例えば上記アクセスネットワークに送信されることになるデータの量を低減するために、上記標的送信デバイスの上記グローバル識別子を部分的にしか含まないという場合にも当てはまり得る。
【0016】
上記標的送信デバイスの識別のあいまい性を排除するために、上記アクセスネットワークは、例えば端末から受信したメッセージに対するRSSI測定、TOA測定等に基づいて、この端末の概略地理的位置を推定する。上記標的送信デバイスは上記端末の近傍に配置されるため、上記端末の上記概略地理的位置は、上記標的送信デバイスの上記概略地理的位置を示すものであると考えることができ、従ってこれを用いて、上記標的送信デバイスの識別のあいまい性を排除できる。実際には、たとえテーブルの2つ(以上)の送信デバイスが同一のあいまい識別情報に対応し得る場合でも、上記送信デバイスの記憶されている地理的位置は一般に全く異なり、これにより、上記標的送信デバイスを、あいまい識別情報に対応する上記テーブルの複数の上記送信デバイスの中から、記憶されている地理的位置が上記端末/標的送信デバイスの上記概略地理的位置に対応する送信デバイスとして識別できる。
【0017】
上記標的送信デバイスの上記地理的位置が上記端末の近傍にあるという知識を用いて、上記端末の上記地理的位置の推定の精度を、上記概略地理的位置に比べて高くすることができる。上記第2の無線通信プロトコルの範囲が上記第1の無線通信プロトコルの範囲より小さい場合、上記端末の精密地理的位置は、上記標的送信デバイスの上記地理的位置に、例えば完全に対応する。
【0018】
特定の実装形態では、上記位置情報取得方法は更に、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で又はいずれの技術的に可能な組み合わせで、含んでよい。
【0019】
特定の実施形態では、上記標的送信デバイスから受信される上記メッセージは、上記標的送信デバイスのあいまいな識別子を含み、上記あいまい識別情報は上記識別子に対応する。
【0020】
特定の実装形態では、上記標的送信デバイスから受信される上記メッセージは、上記標的送信デバイスの識別子を含み、上記あいまい識別情報を取得する上記ステップは、上記標的送信デバイスから受信される上記メッセージに含まれる上記識別子の非可逆圧縮を含む。
【0021】
このような構成は、非可逆圧縮により、あいまい識別情報を送信するために必要なデータの量を減らすことができるという点で有利である。これは、メッセージに含むことができるデータの量を制限できるため、特にIoT又はM2Mタイプの用途に特に有利である。更に、同一のメッセージに、複数の標的送信デバイスに関する複数のあいまい識別情報を含めること、及び/又は上記メッセージに、例えば標的送信デバイスから受信したメッセージの受信強度レベルを示す情報等といった他の情報を含めることも可能とすることができる。
【0022】
非可逆圧縮により、識別子は、(最初はあいまいでない場合には)あいまいとなる場合があり、又は(最初からあいまいである場合には)より一層あいまいとなる場合がある。しかしながら、上述のように、端末の概略地理的位置を考慮することにより、原理的には標的送信デバイスの識別のあいまい性を排除できる。
【0023】
特定の実装形態では、複数の標的送信デバイスが用いられ、上記端末の精密地理的位置は、上記標的送信デバイスそれぞれの地理的位置に基づいて推定される。
【0024】
特定の実装形態では、少なくとも2つの標的送信デバイスの上記あいまい識別情報は、上記第1の無線通信プロトコルに従って、1つのメッセージで上記アクセスネットワークに送信される。
【0025】
特定の実装形態では、上記第2の無線通信プロトコルは、上記第1の無線通信プロトコルの範囲より小さい範囲を有する。
【0026】
特定の実装形態では、上記端末の上記概略地理的位置は、上記アクセスネットワークの少なくとも1つの基地局が受信した少なくとも1つのメッセージに基づいて推定され、上記基地局は所定の地理的位置にある。
【0027】
特定の実装形態では、上記端末の上記概略地理的位置の推定は、この推定に寄与するいかなる明確な情報も、上記端末が上記アクセスネットワークにメッセージで送信することなく、上記アクセスネットワークによって実施される。これは、上記端末が上記アクセスネットワークに、上記端末の地理的位置を推定可能とする情報を含むバイナリデータを有するメッセージを送信しないことを意味することが理解される。
【0028】
このような構成により、上記端末の位置情報を取得するために、端末とアクセスネットワークとの間で交換されるデータの量を制限することもできる。例えば、上記アクセスネットワークは、上記端末からの、上記端末の地理的位置に関する情報を内包しない1つ以上のメッセージに関連するメタデータから、上記端末の概略地理的位置を推定できる。上記メタデータは例えば、上記アクセスネットワークの基地局が受信したメッセージの強度レベル、上記端末からメッセージを受信した基地局の識別子、異なる複数の基地局における同一のメッセージの到着時点の差の測定等に対応してよい。次に、例えばRSSIレベルに基づいた又は到着時点の差に基づいたマルチラテレーションといった様々な方法を用いて、上記端末の概略地理的位置を推定できる。メタデータを利用する機械学習アルゴリズムを実装する方法も実装できる。
【0029】
特定の実装形態では、上記第1の無線通信プロトコルは、無線広域ネットワーク通信プロトコルである。
【0030】
特定の実装形態では、上記第2の無線通信プロトコルは、無線ローカルエリアネットワーク又は無線パーソナルエリアネットワーク通信プロトコルである。
【0031】
第2の態様によると、本発明は、無線通信システムの端末に関し、上記端末は、第1の無線通信プロトコルに従って、上記無線通信システムのアクセスネットワークとメッセージを交換するよう適合された第1の通信モジュールと、第2の無線通信プロトコルに従ってメッセージを受信するよう適合された第2の通信モジュールとを含む。上記端末は:
‐標的送信デバイスが送信したメッセージを、上記第2の通信モジュールによって受信すること;
‐上記標的送信デバイスのあいまい識別情報を、上記端末の処理回路によって取得すること;
‐上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報を含むメッセージを、上記第1の通信モジュールによって送信すること
のために構成される。
【0032】
特定の実施形態では、上記端末は更に、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で又はいずれの技術的に可能な組み合わせで、含んでよい。
【0033】
特定の実施形態では、上記処理回路は、上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報を、上記標的送信デバイスから受信した上記メッセージに含まれる上記標的送信デバイスの識別子から取得するよう構成される。
【0034】
特定の実施形態では、上記処理回路は、上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報を、上記標的送信デバイスの上記識別子の非可逆圧縮によって取得するよう構成される。
【0035】
第3の態様によると、本発明は、無線通信システムのアクセスネットワークに関し、上記アクセスネットワークは、端末とメッセージを交換するよう適合されており、上記アクセスネットワークは:
‐上記端末が送信したメッセージを受信することであって、上記メッセージは、上記端末の近傍にある標的送信デバイスのあいまい識別情報を含む、受信すること;
‐上記端末の概略地理的位置を推定すること;
‐複数の送信デバイスの送信デバイス識別子と、上記複数の送信デバイスそれぞれの上記地理的位置とのリストを記憶したテーブル中において、上記標的送信デバイスを、上記あいまい識別情報に対応する識別子を有し、かつ上記端末の上記概略地理的位置に対応する地理的位置を有する、上記テーブル中の上記送信デバイスとして識別すること;
‐上記標的送信デバイスの上記地理的位置に基づいて、上記端末の精密地理的位置を推定すること
のために構成される。
【0036】
特定の実施形態では、上記アクセスネットワークは更に、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で又はいずれの技術的に可能な組み合わせで、含んでよい。
【0037】
特定の実施形態では、上記テーブルは、上記アクセスネットワークの外部の位置情報取得サーバに記憶されており、上記アクセスネットワークは:
‐上記標的送信デバイスの上記地理的位置に関するリクエストを、上記位置情報取得サーバに送信することであって、上記地理的位置に関する上記リクエストは、上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報、及び上記端末の上記概略地理的位置を含む、リクエストを送信すること;
‐上記位置情報取得サーバから、上記標的送信デバイスの上記地理的位置を含む応答を受信すること
のために構成された問い合わせサーバを含む。
【0038】
特定の実施形態では、上記テーブルは、上記アクセスネットワークの外部の位置情報取得サーバに記憶されており、上記アクセスネットワークは:
‐上記標的送信デバイスの上記地理的位置に関するリクエストを、上記位置情報取得サーバに送信することであって、上記地理的位置に関する上記リクエストは、上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報を含む、リクエストを送信すること;
‐上記位置情報取得サーバから、上記あいまい識別情報に対応する識別子を有する上記送信デバイスの上記地理的位置を含む応答を受信すること
のために構成された問い合わせサーバを含み、
上記アクセスネットワークは、上記標的送信デバイスの上記地理的位置を、上記端末の上記概略地理的位置に対応する受信した上記地理的位置として識別するよう構成される。
【0039】
第4の態様によると、本発明は、本発明の実施形態のうちのいずれか1つによる端末、及び本発明の実施形態のうちのいずれか1つによるアクセスネットワークを備える、無線通信システムに関する。
【0040】
第5の態様によると、本発明は、記憶手段を含む位置情報取得サーバに関し、上記記憶手段には、複数の送信デバイスの送信デバイス識別子と、上記複数の送信デバイスそれぞれの上記地理的位置とのリストを含むテーブルが記憶され、上記位置情報取得サーバは更に:
‐標的送信デバイスの上記地理的位置に関するリクエストを受信することであって、上記地理的位置に関する上記リクエストは、上記標的送信デバイスの上記あいまい識別情報及び概略地理的位置を含む、リクエストを受信すること;
‐受信した上記あいまい識別情報に対応する、記憶されている識別子を有し、かつ受信した上記概略地理的位置に対応する地理的位置を有する、テーブル中の送信デバイスを識別すること;
‐上記テーブル中で識別された上記送信デバイスの上記地理的位置を含む応答を送信すること
のために構成された手段を含む。
【0041】
本発明は、非限定的な例として図面を参照して行われる以下の説明を読むことにより、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、無線通信システムの例示的な実施形態の概略図である。
図2図2は、端末の例示的な実施形態の概略図である。
図3図3は、位置情報取得方法の主なステップを示す図である。
図4図4は、リモート位置情報取得サーバに問い合わせるアクセスネットワークを含む、通信システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
これらの図では、複数の図において同一である参照符号は、同一又は同様の要素を指す。明瞭性のために、図示されている要素は、特段の記載がない限り、正確な縮尺ではない。
【0044】
図1は、少なくとも1つの端末20と、複数の基地局31を含むアクセスネットワーク30とを含む、無線通信システム10の概略図である。
【0045】
端末20は、メッセージをアクセスネットワーク30にアップリンクで送信するよう適合される。各基地局31は、上記端末がその範囲内にある場合に、端末20からメッセージを受信するよう適合される。このようにして受信された各メッセージは例えば、場合によってはこれを受信した基地局31の識別子、上記受信されたメッセージの受信強度レベル、上記メッセージの到着時点等といった他の情報と共に、アクセスネットワーク30のサーバ32に送信される。例えばサーバ32は、異なる複数の基地局31から受信した全てのメッセージを処理する。
【0046】
無線通信システム10は一方向性とすることができ、即ちこれは、アップリンクでの端末20からアクセスネットワーク30へのメッセージ交換のみを可能とする。しかしながら、他の例に応じて、双方向性の交換を可能とすることを除外するものではない。適切な場合、アクセスネットワーク30はまた、メッセージを、該メッセージを受信するよう適合された端末20に、基地局31を介してダウンリンクで送信するよう適合される。
【0047】
アップリンクでのメッセージの交換は、第1の無線通信プロトコルを用いる。
【0048】
特定の実施形態では、上記第1の無線通信プロトコルは、無線広域ネットワーク(Wireless Wide Area Network)(又はWWAN)通信プロトコルである。例えば、上記第1の無線通信プロトコルは、UMTS(「ユニバーサル移動体通信システム(Universal Mobile Telecommunications System)」)、LTE(「ロングタームエボリューション(Long Term Evolution)」)、LTE‐Advanced Pro、5Gタイプ等の標準化された通信プロトコルである。あるいは、上記第1の無線通信プロトコルは例えば、超狭帯域専用通信プロトコルである。「超狭帯域(Ultra Narrow Band、即ちUNB)」は、端末が送信するラジオ信号の瞬時周波数スペクトルの周波数幅が2キロヘルツ未満、又は1キロヘルツ未満でさえあることを意味する。
【0049】
図1に示すように、端末20はまた、上記端末20の近傍に配置された少なくとも1つの標的送信デバイス40が送信するメッセージを受信するよう適合される。標的送信デバイス40が送信するメッセージは、第1の無線通信プロトコルとは異なる第2の無線通信プロトコルを用いる。標的送信デバイス40は、無線通信システム10から完全に独立していてよく、第1の無線通信プロトコルをサポートする必要がないことに留意されたい。
【0050】
標的送信デバイス40の地理的位置は、予め決定されており、異なる複数の送信デバイスの識別子と、上記複数の送信デバイスそれぞれの地理的位置とのリストを含む、テーブルに記憶される。
【0051】
好ましい実施形態では、上記第2の無線通信プロトコルは、上記第1の無線通信プロトコルの範囲より小さい範囲を有する。このような場合、標的送信デバイス40であって、その範囲内に端末20が配置される、標的送信デバイス40の地理的位置は、例えば端末20が送信するメッセージを受信する基地局31の地理的位置よりも精密な、端末20の地理的位置に関する情報を提供する。第1の無線通信プロトコルが無線広域ネットワーク通信プロトコルである場合、第2の無線通信プロトコルは例えば、例えばWi‐Fiタイプ(IEEE802.11規格)等の無線ローカルエリアネットワーク(即ちWLAN)通信プロトコル、又は例えばBluetoothタイプ等の無線パーソナルエリアネットワーク(即ちWPAN)通信プロトコルである。
【0052】
しかしながら、他の例によると、範囲が第1の無線通信プロトコルに劣らない第2の無線通信プロトコルを有することもできることに留意されたい。適切な場合、標的送信デバイス40を、その範囲内に端末20が配置される追加の機器であるとみなすことができ、これは、アクセスネットワーク30の基地局31の地理的位置に加えて標的送信デバイス40の位置を考慮することで、端末20の地理的位置の推定の精度の改善を可能とすることができる。
【0053】
図2は、端末20のある実施形態の概略図である。
【0054】
図2に示すように、端末20は、第1の無線通信プロトコルに従って基地局31とメッセージを交換するよう適合された、第1の通信モジュール21を含む。第1の通信モジュール21は例えば、機器(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサ、アナログフィルタ等)を含む無線回路の形態である。
【0055】
端末20は、第2の無線通信プロトコルに従って、標的送信デバイス40が送信するメッセージを受信するよう適合された、第2の通信モジュール22も含む。第2の通信モジュール22は例えば、機器(アンテナ、増幅器、局部発振器、ミキサ、アナログフィルタ等)を含む電気無線回路の形態である。
【0056】
更に、端末20は、第1の通信モジュール21及び第2の通信モジュール22に接続された処理回路23も含む。処理回路23は例えば、1つ以上のプロセッサ及び記憶手段(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスク等)を含み、上記記憶手段には、コンピュータプログラム製品が、後述する位置情報取得方法60のいくつかのステップを実装するために実行されるプログラムコード命令のセットの形態で記憶される。あるいは又は更に、処理回路23は、1つ以上のプログラマブル論理回路(FPGA、PLD等)、及び/又は1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC等)、及び/又はディスクリート電子部品のセット等を含む。
【0057】
換言すると、処理回路23は、第1の通信モジュール21及び第2の通信モジュール22と協働して、後述する位置情報取得方法60のいくつかのステップを実装するための、ソフトウェア(特定のコンピュータプログラム製品)及び/又はハードウェア(FPGA、PLD、ASIC、ディスクリート電子部品等)構成の手段のセットを含む。
【0058】
図3は、端末20の位置情報を取得するための方法60の主なステップの概略図であり、これらは:
‐標的送信デバイス40が第2の無線通信プロトコルに従って送信したメッセージを、端末20によって受信するステップ61;
‐上記標的送信デバイスからあいまい識別情報を取得するステップ62;
‐標的送信デバイス40の上記あいまい識別情報を含むメッセージを、端末20によって、アクセスネットワーク30に送信するステップ63;
‐上記あいまい識別情報を含む上記メッセージを、アクセスネットワーク30によって受信するステップ64;
‐端末20の概略地理的位置をアクセスネットワーク30によって推定するステップ65;
‐上記概略地理的位置及び上記あいまい識別情報に基づいて、複数の送信デバイスの送信デバイス識別子と、上記複数の送信デバイスそれぞれの上記地理的位置とのリストを記憶したテーブル中において、標的送信デバイス40を識別するステップ66;
‐記テーブル中で標的送信デバイス40として上識別された上記送信デバイスの上記地理的位置に基づいて、上記端末20の精密地理的位置を推定するステップ67
である。
【0059】
図3に示したステップの構成は主に例示的なものであり、上記ステップの実行の時間的順序を示すものであるとは限らないことに留意されたい。特に、端末20の概略地理的位置を推定するステップ65は、標的送信デバイス40が送信したメッセージを受信するステップ61、あいまい識別情報を取得するステップ62、及び端末20によって実行される送信ステップ63とは独立して実行できる。
【0060】
端末20が送信したメッセージを受信するステップ64、端末20の概略地理的位置を推定するステップ65、標的送信デバイス40を識別するステップ66、及び上記端末20の精密地理的位置を推定するステップ67は、アクセスネットワーク30、即ち1つ以上の基地局31及び/又はサーバ32によって実行される。これらのステップのうちのいくつかの間、アクセスネットワーク30は、上記アクセスネットワーク30の外部にある機器を任意に利用してよく、特に、上記アクセスネットワーク30の外部の、テーブルが記憶されたリモート位置情報取得サーバ50に、問い合わせを行うことができる。
【0061】
本記載の残りの部分では、非限定的なものとして、アクセスネットワーク30によって実行される受信ステップ64を除く全てのステップが、端末20から受信したメッセージを基地局31から受信するサーバ32によって実装される場合を考える。
【0062】
この目的のために、基地局31及びサーバ32は、当業者には公知であると考えられるネットワーク通信手段をそれぞれ含み、これにより、基地局31は受信した各メッセージをサーバ32に送信できる。
【0063】
サーバ32は例えば、1つ以上のプロセッサ及び記憶手段(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスク等)を含み、上記記憶手段には、コンピュータプログラム製品が、位置情報取得方法60の上記ステップを実装するために実行されるプログラムコード命令のセットの形態で記憶される。あるいは又は更に、サーバ32は、位置情報取得方法60の上記ステップのうちの全て又は一部を実装するよう適合された、1つ以上のプログラマブル論理回路(FPGA、PLD等)、及び/又は1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はディスクリート電子部品のセット等を含む。
【0064】
換言すると、サーバ32は、位置情報取得方法60の上記ステップを実装するための、ソフトウェア(特定のコンピュータプログラム製品)及び/又はハードウェア(FPGA、PLD、ASIC、ディスクリート電子部品等)構成の手段のセットを含む。
【0065】
これより、図3に示す様々なステップの実装の非限定的な例を説明する。
【0066】
受信ステップ61の間、端末20の第2の通信モジュール22は、標的送信デバイス40が送信したメッセージを受信する。標的送信デバイス40は例えば、その範囲内に上記端末20が配置された、Wi‐Fiアクセスポイント又はBluetoothアクセスポイント等である。
【0067】
ステップ62の間、端末20の処理回路23は、好ましくは標的送信デバイス40から受信したメッセージから、上記標的送信デバイス40のあいまい識別情報を取得する。「あいまい識別情報(ambiguous item of identification information)」は、これが、テーブルに記録された地理的位置を有する複数の送信デバイスに対応する可能性が高いことを意味する。換言すると、このあいまい識別情報を1つだけ使用しても、テーブル中のどの送信デバイスが標的送信デバイス40に対応するかを確実に知ることはできない。
【0068】
一般に、標的送信デバイス40が送信するメッセージは、上記標的送信デバイスの識別子を含む。この識別子は、ローカル識別子(即ち異なる場所に配置された異なる複数の送信デバイスが使用できる識別子)、又はグローバル識別子(即ち1対1で上記標的送信デバイスを識別する、あいまいでない識別子)とすることができる。
【0069】
例えば、標的送信デバイス40がWi‐Fiアクセスポイントである場合、この標的送信デバイス40だけでなく、他のいずれの送信デバイスも使用するグローバル識別子に対応する、MAC(「Medium Access Control(媒体アクセス制御)」)アドレスを有する。標的送信デバイス40は、SSID(「Service Set Identifier(サービスセット識別子))も有し、これは一般に、異なる場所にある別の送信デバイスによって再利用できるローカル識別子である。
【0070】
第1の例によると、端末20は、標的送信デバイス40から受信したメッセージからローカル識別子、例えばSSIDを抽出する。このようなローカル識別子は構成によって既にあいまいであり、あいまい識別情報等として使用できる。続いて取得ステップ62は、受信したメッセージからローカル識別子を抽出することからなることができ、あいまい識別情報はこのローカル識別子に正に等しい。しかしながら、他の例によると、所定の関数を用いて上記ローカル識別子を修正することによりあいまい識別情報を取得することもでき、これにより、例えば送信されることになるデータの量を削減できる。
【0071】
別の例によると、端末20は、標的送信デバイス40から受信したメッセージからグローバル識別子、例えばMACアドレスを抽出する。このようなグローバル識別子はあいまいでないものの、特にIoT又はM2Mタイプの用途に関して、大きすぎてアクセスネットワーク30に送信できない可能性があるデータの量を示す。この場合に、グローバル識別子をあいまい識別情報に変換する主な目的は、送信されるデータの量を削減することであり、あいまい性はこのデータの量の削減の結果である。続いて取得ステップ62は、受信したメッセージから上記グローバル識別子を抽出し、上記グローバル識別子のデータの量を削減することを目的とする所定の関数を用いて、上記グローバル識別子を修正することを含む。この修正は例えば非可逆圧縮に相当し、即ち取得したあいまい識別情報だけからはグローバル識別子を見出すことができない。一般に、いずれの公知の非可逆圧縮方法を実装でき、特定の方法の選択は単に本発明の変形実装形態を構成する。例えば、グローバル識別子が連続したビットの形態である場合、非可逆圧縮は、上記グローバル識別子のいくつかのビットの削除に対応する。48又は64ビットからなるMACアドレスの場合、非可逆圧縮は、いくつかの上位ビット、例えば上位16ビット、又は上位24ビットを除去することからなってよい。別の例によると、いくつかのビットの削除の代わりに、又はこれに加えて、暗号ハッシュ関数(例えばMD5又はSHA‐1関数)を用いて非可逆圧縮を実施できる。
【0072】
従って、場合に応じて、あいまい識別情報は、標的送信デバイス40から受信したメッセージから抽出した識別子に(この識別子があいまいである場合は)そのまま対応し得るか、又は所定の関数を上記抽出した識別子に適用することにより取得でき、この所定の関数は好ましくは、あいまい識別情報を送信するのに必要なデータの量を削減することを目的としている。
【0073】
送信ステップ63の間、端末20の第1の通信モジュール21は、あいまい識別情報を含むメッセージをアクセスネットワーク30に送信する。このメッセージは、ステップ64の間に、アクセスネットワーク30の1つ以上の基地局31によって受信される。
【0074】
あいまい識別情報の使用に関連する別の利点は、あいまい識別情報が、送信されるデータに機密性を付与することであることに留意されたい。実際には、あいまい識別情報単独では、どの送信デバイスが端末20の近傍に配置されているかを確実に知ることはできず、従ってこれ単独では上記端末20の位置を決定できない。従って、メッセージが悪意のあるエンティティによって傍受された場合、この悪意のあるエンティティは、傍受したメッセージの内容のみから端末20の位置を決定することはできない。これは特に、あいまい識別情報が、標的送信デバイス40のグローバル識別子の非可逆圧縮によって得られる場合に当てはまる。
【0075】
ステップ65の間、アクセスネットワーク30は、上記端末20の「概略地理的位置」と呼ばれる地理的位置を推定する。「概略(approximate)」は単に、推定した概略地理的位置の精度が原理的に、ステップ67の間に推定される「精密地理的位置」と呼ばれる地理的位置の精度より低いことを意味することに留意されたい。
【0076】
考慮される例では、アクセスネットワーク30は、上記端末20から受信したメッセージに基づいて、端末20の概略地理的位置を推定するよう構成される。好ましい実装形態では、概略地理的位置は、あいまい識別情報を含む受信したメッセージから推定される。しかしながら、他の例によると、上記端末20が送信する、あいまい識別情報を含む上記メッセージ以外のメッセージから、上記端末20の概略地理的位置を推定することを除外するものではない。
【0077】
一般に、概略地理的位置を推定するためのいずれの方法を実装でき、特定の方法の選択は単に本発明の代替実装形態を構成する。例えば、アクセスネットワーク30は、端末20の概略地理的位置を、端末20が送信するメッセージを受信した基地局31の地理的位置として推定できる。端末20が送信するメッセージを複数の基地局31が受信できる場合、端末20が送信するメッセージを受信した全ての基地局31の地理的位置に基づいて(例えばこれらの地理的位置の重心を定義することによって)、端末20の概略地理的位置を推定できる。
【0078】
別の例によると、アクセスネットワーク30は、端末20が基地局31に送信するメッセージの伝播の時間を、異なる基地局31におけるこのメッセージのTOA測定又は到着時点差(Time Differences of Arrival、即ちTDOA)の測定から計算することにより、1つ以上の基地局31から端末20を隔てる距離を推定できる。その後、基地局31の地理的位置が分かっている場合は、マルチラテレーションによって、端末20の位置を推定できる。
【0079】
別の例によると、マルチラテレーションによって、端末20がアクセスネットワーク30に送信するメッセージに関する各基地局31のRSSI測定から、複数の基地局31から端末20を隔てる距離を決定することにより、端末20の位置を推定できる。
【0080】
更に別の例によると、アクセスネットワーク30によって端末20の概略地理的位置を推定するための方法は、考慮される地理的領域の地理的位置におけるフィンガープリントを組み合わせる機械学習技法に基づいたものとすることができる。このような方法は、所与の地理的位置に配置された端末20が送信するメッセージに関する、基地局31による受信の強度レベルが、経時的に安定しているという仮定に基づく。具体的には、これは、較正の第1段階の間に、複数の基地局31のセットに対して考慮対象となる地理的位置にある端末20について取得されたRSSI測定のセットに対応する、既知の地理的位置の「電波シグネチャ(radio signature)」に関連するデータベースを構築することに関する。続いて、検索段階の間に、その概略地理的位置の推定が求められる端末20に関して観察された電波シグネチャを、データベースの全ての電波シグネチャと比較することで、この端末20の電波シグネチャに最も類似する1つ以上の電波シグネチャに対応する1つ以上の地理的位置から、この端末20の概略地理的位置を推定する。
【0081】
好ましい実施形態では、上記端末の上記概略地理的位置の推定は、この推定に寄与するいかなる明確な情報も、上記端末が上記アクセスネットワークにメッセージで送信することなく、上記アクセスネットワークによって実施される(換言すると、上記端末は、上記アクセスネットワークに、上記端末の地理的位置を推定可能とする情報を含むバイナリデータを有するメッセージを送信しない)。このような構成により、端末とアクセスネットワークとの間で交換されるデータの量を制限して、本発明による位置情報取得方法を実装できる。
【0082】
標的送信デバイス40は端末20の近傍に配置されるため、端末20の概略地理的位置は、(第2の無線通信プロトコルの範囲内の)標的送信デバイス40の概略地理的位置にも対応する。
【0083】
識別ステップ66の間、端末20の概略地理的位置と、標的送信デバイス40のあいまい識別情報とを用いて、地理的位置がテーブルに記憶されている送信デバイスの中から、上記標的送信デバイス40を検索する。
【0084】
一般に、標的送信デバイス40は、受信したあいまい識別情報に対応する識別子を有し、かつ受信した概略地理的位置に対応する地理的位置を有する、テーブル中の送信デバイスである。従って、識別ステップ66は、あいまい識別情報をテーブルに記憶された識別子と比較するステップ、及び概略地理的位置を上記テーブルに記憶された地理的位置と比較するステップを含む。
【0085】
テーブルに記憶された識別子は、送信デバイスが、それ自体が送信したメッセージに組み込んだものであってよく、又はあいまい識別情報が所定の関数(ビットの削除、暗号ハッシュ関数等)の適用によって取得される場合には、この所定の関数の結果であってよいことに留意されたい。例えば、MACアドレスの場合、テーブルに記憶された識別子は例えば、完全なMACアドレス、又は上記MACアドレスに適用された所定の関数の結果である。完全なMACアドレスが記憶されている場合、あいまい識別情報との比較には、事前に記憶されたMACアドレスに所定の関数を適用することが必要となる。テーブルに記憶された識別子が、完全なMACアドレスに適用される所定の関数の結果に対応する場合、上記識別子を、あいまい識別情報と直接比較できる。
【0086】
例えば限定するものではないが、まず、標的送信デバイス40のあいまい識別情報に対応する記憶された識別子を有し、テーブルの全ての送信デバイスを識別できる。次に、あいまい識別情報に対応する記憶された識別子を有する送信デバイスの地理的位置を、端末20/標的送信デバイス40の概略地理的位置と比較する。標的送信デバイス40は、あいまい識別情報に対応する識別子を有し、かつ概略地理的位置に最も近い記憶された地理的位置を有するものの中から、記憶された送信デバイスであるとみなされる。
【0087】
テーブルは例えば、アクセスネットワーク30の機器、例えばサーバ32に記憶される。このような場合、識別ステップ66は、外部機器を伴うことなく、アクセスネットワーク30によって完全に実行できる。
【0088】
あるいは、テーブルは、アクセスネットワーク30の外部の位置情報取得サーバ50に記憶できる。このような場合、アクセスネットワーク30は、位置情報取得サーバ50に遠隔で問い合わせるよう構成された問い合わせサーバを含むことができ、これはサーバ32であってよく、又は別個の機器であってよい。
【0089】
図4は、例示的な実施形態の概略図であり、ここでテーブルは、問い合わせサーバによって遠隔で問い合わせを受ける、上記アクセスネットワーク30の外部の位置情報取得サーバ50に記憶される。図4に示す非限定的な例では、問い合わせサーバは図1のサーバ32に対応する。
【0090】
図4に示すように、サーバ32は、標的送信デバイス40の地理的位置に関するリクエストR1を、上記位置情報取得サーバ50に送信する。
【0091】
地理的位置に関するリクエストR1は、少なくとも標的送信デバイス40のあいまい識別情報と、好ましくは端末20の概略地理的位置とを含む。この場合、位置情報取得サーバ50は、テーブル中の、標的送信デバイスに対応する送信デバイスを直接識別し、標的送信デバイス40として識別された上記送信デバイスの地理的位置を含む応答R2をサーバに送信する。
【0092】
別の例では、地理的位置に関するリクエストR1は、端末20の概略地理的位置を含まない。このような場合、位置情報取得サーバ50は、あいまい識別情報に対応する識別子を有する、テーブルの全ての送信デバイスを識別し、標的送信デバイス40に対応する可能性が高い全ての送信デバイスの地理的位置を応答R2で送信する。続いてアクセスネットワーク30、例えばサーバ32が、応答R2において受信した地理的位置を概略地理的位置と比較する。概略地理的位置に最も近い、受信した地理的位置が、標的送信デバイス40の地理的位置であるとみなされる。
【0093】
位置情報取得サーバ50は例えば、1つ以上のプロセッサ及び記憶手段(磁気ハードディスク、電子メモリ、光ディスク等)を含み、上記記憶手段には、上記テーブル及びコンピュータプログラム製品が、地理的位置に関するリクエストR1を処理するために実行されるプログラムコード命令のセットの形態で記憶される。あるいは又は更に、位置情報取得サーバ50は、1つ以上のプログラマブル論理回路(FPGA、PLD等)、及び/又は1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC等)、及び/又はディスクリート電子部品のセット等を含む。
【0094】
換言すると、位置情報取得サーバ50は、標的送信デバイス40の地理的位置に関するリクエストR1を処理するための、ソフトウェア(特定のコンピュータプログラム製品)及び/又はハードウェア(FPGA、PLD、ASIC、ディスクリート電子部品等)構成の手段のセットを含む。
【0095】
ステップ67では、アクセスネットワーク30は、テーブルから取得した標的送信デバイスの地理的位置から、端末20の精密地理的位置を推定する。
【0096】
例えば、端末20の精密地理的位置は、標的送信デバイス40に関して受信した地理的位置と等しくなるよう選択される。しかしながら、他の例によると、他の推定方法を実装することもできる。
【0097】
特に、同一のタイプ(例えばWi‐Fiアクセスポイントのみ)のものであっても異なるタイプ(例えばWi‐Fiアクセスポイント及びBluetoothアクセスポイント)のものであってもよい、複数の標的送信デバイスを考慮できる。このような場合、端末20は、これらの標的送信デバイス40それぞれからメッセージを受信し、これらの標的送信デバイス40それぞれに関するあいまい識別情報を取得する。あいまい識別情報はアクセスネットワーク30に送信され、好ましくはこの目的のために、メッセージの数が最小限に抑えられる。特に、非可逆圧縮を適用することによるデータの量の削減の利点は、1つのメッセージで複数のあいまい識別情報を送信できることにより、特に端末20の電力消費の削減が可能となるという点にもある。続いて、標的送信デバイス40の地理的位置がテーブル中で識別され、例えば端末20の概略地理的位置を推定するステップ65に関連して説明した方法を実装することにより、端末20の精密地理的位置を標的送信デバイス40の地理的位置から推定できる。特に、端末20は、標的送信デバイス40から受信したメッセージに対してRSSI測定を実施でき、これらのRSSI測定を表す情報をアクセスネットワーク30に送信でき、その後アクセスネットワーク30がこれらを用いて端末20の地理的位置を推定できる。
図1
図2
図3
図4