(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】LED照明装置、栽培棚、および栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A01G7/00 601A
(21)【出願番号】P 2021511859
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013282
(87)【国際公開番号】W WO2020203539
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2019067413
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(73)【特許権者】
【識別番号】596163770
【氏名又は名称】株式会社RYODEN
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】新田 貴正
(72)【発明者】
【氏名】丸山 高志
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153472(JP,A)
【文献】特開2019-046789(JP,A)
【文献】特開2010-251267(JP,A)
【文献】特開2007-073825(JP,A)
【文献】特開2016-073232(JP,A)
【文献】特開2008-053068(JP,A)
【文献】特開平10-242523(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107719(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0020371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00 - 7/06
H01L 33/58 - 33/60
F21V 17/00 - 17/20
F21V 7/00 - 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びた所定幅の配置領域において、前記長手方向に間隔を有して配置された複数のLEDパッケージからなるLED列と、
前記LED列の少なくとも一方の端部からの少なくとも所定範囲において、前記間隔のうちの少なくともいくつかの間隔内に配置され、前記LEDパッケージから
前記LED列の中央部側に向かう光の照射方向を
前記LED列の端部側には変更せず、前記LEDパッケージから前記LED列の端部側に向かう光の照射方向を前記LED列の中央部側に変更する光照射方向変更部材と、を備え、
前記光照射方向変更部材は、前記LEDパッケージの周囲のうちの一部に配置された反射板を有することを特徴とするLED照明装置。
【請求項2】
前記反射板は、それぞれの前記LEDパッケージから見て、前記LEDパッケージが配置された前記所定範囲の起点となる前記LED列の端部側に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のLED照明装置。
【請求項3】
それぞれの前記反射板は、それぞれの前記LEDパッケージの中心部から、前記間隔内であって、前記長手方向における前記LEDパッケージの幅の1~2倍の位置に配置され、配置面からの高さが、前記LEDパッケージの幅の2~3倍である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のLED照明装置。
【請求項4】
前記反射板のうち、前記LED列の端部に近い位置に設けられた所定数の反射板は、残りの反射板に比べて、反射面と配置面のなす角度が小さい、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項5】
前記反射板の反射率は50%以上である、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項6】
前記光照射方向変更部材は、それぞれの前記LEDパッケージを覆うように設けられた屈折レンズである、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項7】
前記光照射方向変更部材は、前記LED列の端部から数えて、少なくとも6個以上の前記LEDパッケージに対して配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のLED照明装置。
【請求項8】
長方形形状の上部フレームと、前記上部フレームと同一形状の下部フレームと、前記上部フレームの四隅と前記下部フレームの四隅とを連結する複数の支柱とを有する直方体形状のフレームユニットと、
前記下部フレームに設置された栽培エリア部と、
前記上部フレームの長辺間の複数箇所に、前記長辺とほぼ垂直に架設された請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のLED照明装置と、を備える、
ことを特徴とする栽培棚。
【請求項9】
それぞれの前記LED照明装置は、互いにほぼ平行に架設されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の栽培棚。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の栽培棚を用いた栽培方法であって、
前記栽培エリア部に植えられた被栽培物に対して、前記LED照明装置により、光を照射して前記被栽培物を栽培する、
ことを栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LED照明装置、栽培棚、および栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場などでは、人工光照明を栽培棚に設置し、棚の中で植物栽培を行っている。棚内上部に照明を取り付け、棚内下部に水耕栽培設備を設置するといった構成が利用されている。
【0003】
棚の照明は主に棚を照らすが、棚外にも光が漏れてしまう。そのため、例えば、特許文献1のように、棚の側面に反射板を設置して、外に漏れる光を内部に反射させて有効利用するといったことが行われている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法は、棚により空気の出入りが妨げられ、棚内の湿度が上がって、植物の生長が抑制されるという課題があった。また、反射板があるために、棚内部の栽培物を観察したり、手入れしたりすることが、困難になった。さらに、多くの反射板は、定期的に交換および洗浄が必要で保守も手間がかかっていた。
【0005】
一方で、例えば、特許文献2のように、LED照明に反射板を設置して、照射エリアを限定しようという取り組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-61442号公報
【文献】特開2018-10748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の主目的は、熱応力による反射板のひずみが原因となる配光特性の変化を抑制することにあり、特許文献2の方法では、LED照明の近傍照射エリアにくまなく光を照射し、その外には漏れないようにするといった取り組みはなされていなかった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、棚の側面に反射板を設置しなくても、LED照明装置の外に光を漏れないようにすることができるLED照明装置、栽培棚、および栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明におけるLED照明装置の一態様は、長手方向に延びた所定幅の配置領域において、長手方向に間隔を有して配置された複数のLEDパッケージからなるLED列と、LED列の少なくとも一方の端部からの少なくとも所定範囲において、上述の間隔のうちの少なくともいくつかの間隔内に配置され、LEDパッケージからの光の照射方向をLED列の端部側からLED列の中央部側に変更する光照射方向変更部材と、を備え、光照射方向変更部材は、LEDパッケージの周囲のうちの一部に配置された反射板を有する。
上記のLED照明装置によれば、栽培棚の側面に反射板を設置しなくても、LED照明装置の外に光を漏れないようにすることができる。
【0010】
本発明における栽培棚の一態様は、長方形形状の上部フレームと、上部フレームと同一形状の下部フレームと、上部フレームの四隅と下部フレームの四隅とを連結する複数の支柱とを有する直方体形状のフレームユニットと、下部フレームに設置された栽培エリア部と、上部フレームの長辺間の複数箇所に、長辺とほぼ垂直に架設された上記態様のLED照明装置と、を備える。
上記の栽培棚によれば、栽培棚の側面に反射板を設置しなくても、LED照明装置の外に光を漏れないようにすることができる。
【0011】
本発明における栽培方法の一態様は、上記態様の栽培棚を用いた栽培方法であって、栽培エリア部に植えられた被栽培物に対して、LED照明装置により、光を照射して被栽培物を栽培する。
上記の栽培方法によれば、栽培棚の側面に反射板を設置しなくても、LED照明装置の外に光を漏れないようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、栽培棚の側面に反射板を設置しなくても、LED照明の外に光を漏れないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態の栽培棚の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態の栽培ラックフレームの概略構成を示す図である。
【
図3A】栽培棚を、栽培ラックフレームにおける上部フレームの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
【
図3B】栽培棚を、栽培ラックフレームにおける上部フレームの長辺側から短辺方向に沿って見た図である。
【
図4A】LED列を、栽培ラックフレームにおける上部フレームの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
【
図4B】LED列を、栽培ベッド側から見た図である。
【
図4C】LED列および反射板ユニットを、栽培ラックフレームにおける上部フレームの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
【
図4D】LED列と反射板ユニットとを組み合わせたLED照明装置を、栽培ラックフレームにおける上部フレームの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
【
図4E】LED列と反射板ユニットとを組み合わせたLED照明装置を、栽培ベッド側から見た図である。
【
図5B】反射板ユニットを、栽培ラックフレームにおける上部フレームの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
【
図6A】別の態様の反射板ユニットの斜視図である。
【
図6B】別の態様の反射板ユニットを、栽培ラックフレームにおける上部フレームの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
【
図7A】反射板がLEDパッケージの近くに配置され、反射板の大きさが小さい例を示す図である。
【
図7B】反射板がLEDパッケージから離れて配置され、反射板の大きさが大きい例を示す図である。
【
図8A】反射板を設けない状態におけるLEDパッケージの配光分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【
図8B】反射板と配置面としての基材との角度について説明する図である。
【
図9A】反射板の角度θが90度の場合のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9B】反射板の角度θが110度の場合のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10A】変角角度が70度の場合の相対強度を示す図である。
【
図10B】変角角度が90度の場合の相対強度を示す図である。
【
図10C】変角角度が90度の場合の相対強度を示す図である。
【
図11】光照射方向変更部材の一例としての屈折レンズを設けたLED照明装置を示す図である。
【
図12A】LEDパッケージの配置の第1変形例を示す図である。
【
図12B】LEDパッケージの配置の第2変形例を示す図である。
【
図12C】LEDパッケージの配置の第3変形例を示す図である。
【
図12D】LEDパッケージの配置の第4変形例を示す図である。
【
図12E】LEDパッケージの配置の第5変形例を示す図である。
【
図13A】反射板の配置の第1変形例を示す図である。
【
図13B】反射板の配置の第2変形例を示す図である。
【
図13C】反射板の配置の第3変形例を示す図である。
【
図13D】反射板の配置の第4変形例を示す図である。
【
図14】変形例における反射板形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る栽培棚100の概略構成を示す図である。
図1に示すように、栽培棚100は、フレームユニットとしての栽培ラックフレーム10と、栽培エリア部としての栽培ベッド20と、LED照明装置30とを備えている。
【0015】
図2は、本実施形態に係る栽培ラックフレーム10の概略構成を示す図である。
図2に示すように、栽培ラックフレーム10は、長方形形状の上部フレーム10aと、上部フレーム10aと同一形状の下部フレーム10bと、上部フレーム10aの四隅と下部フレーム10bの四隅とを連結する複数の支柱10cとを有する直方体形状のフレームユニットである。
図1に示す栽培棚100は、以上のような栽培ラックフレーム10を四段重ねた例を示している。
【0016】
上部フレーム10a、下部フレーム10b、および支柱10cの材質としては、例えば、鉄、アルミ、およびプラスチック等が挙げられる。上部フレーム10aおよび下部フレーム10bの長辺は、例えば8m程度の長さを有しており、上部フレーム10aおよび下部フレーム10bの短辺は、例えば1.5m程度の長さを有している。上部フレーム10aおよび下部フレーム10bのそれぞれの長辺および短辺の長さは適宜変更することができる。また、支柱10cは、例えば0.3m程度の長さを有している。支柱10cの長さは適宜変更することができる。金属をフレームに使う場合、栽培水などによる腐食を防止するために、めっきすることが好ましい。
【0017】
また、栽培ラックフレーム10を重ねて使用する場合には、下段の栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aを、上段の栽培ラックフレーム10における下部フレーム10bとして兼用することが可能である。
【0018】
図3Aは、栽培棚100を栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aおよび下部フレーム10bの短辺側から長辺方向に沿って見た図であり、
図3Bは、栽培棚100を栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aおよび下部フレーム10bの長辺側から短辺方向に沿って見た図である。
【0019】
図3Aおよび3Bに示すように、栽培ベッド20は、栽培ラックフレーム10の下部フレーム10b上に載置されている。また、
図3Aおよび3Bに示すように、栽培ラックフレーム10の上部フレーム10aには、LED照明装置30の取付金具40が取り付けられている。取付金具40は、
図3Aに示すように、栽培ラックフレーム10の上部フレーム10aにおける短辺方向には、例えば、4箇所に取り付けられ、
図3Bに示すように、栽培ラックフレーム10の上部フレーム10aにおける長辺方向には、例えば、2箇所に取り付けられる。
【0020】
また、
図3Aに示すように、LED照明装置30が取り付けられる取付金具40から、栽培ベッド20までの距離で規定される栽培有効寸法Lは、例えば、295mmに設定されている。
【0021】
また、最下段の栽培ラックフレーム10の支柱10cには、栽培棚100の高さを調節可能なアジャスター50が設けられている。なお、
図3Aおよび3Bに示す例では、最下段の栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aおよび下部フレーム10bは省略されている。
【0022】
LED照明装置30は、
図1に示すように、栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの長辺間の複数箇所に、長辺とほぼ垂直に(すなわち、長辺に対する角度が約85度~95度となるように)架設されている。また、それぞれのLED照明装置30は、互いにほぼ平行(LED照明装置30同士が平行な状態から約-15度~15度の範囲、好ましくは約-10度~10度の範囲、より好ましくは約-5度~5度の範囲でずれる場合を含む。)に架設されている。
【0023】
図4Aは、本実施形態のLED照明装置30におけるLED列30aを、栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
図4Bは、LED列30aを栽培ベッド20側から見た図である。
図4Cは、LED照明装置30におけるLED列30aおよび光照射方向変更部材としての反射板ユニット60を、栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
図4Dは、LED列30aと反射板ユニット60とを組み合わせたLED照明装置30を、栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
図4Eは、LED列30aと反射板ユニット60とを組み合わせたLED照明装置30を、栽培ベッド20側から見た図である。
【0024】
図4Aに示すように、LED列30aは、長手方向に延びた基材30bに、複数のLEDパッケージ30cが基材30bの長手方向に間隔を有して配置されている。つまり、複数のLEDパッケージ30cは、長手方向に延びた所定幅の配置領域において、配置領域の長手方向に間隔を有して配置されている。間隔は、例えば、22mmに設定されている。LEDパッケージ30cが配置される間隔の最大値は、100mm以下、好ましくは50mm以下、特に好ましくは20mm以下である。LEDパッケージ30cは、例えば、128個配置されている。但し、LED列30aにおけるLEDパッケージ30cの個数は、適宜変更することができる。
【0025】
LEDパッケージ30cは、LEDの発光色によって、例えば、赤青タイプ、白色タイプ等に分かれている。また、一つのLEDパッケージ30cの栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺方向(基材30bの長手方向)の幅は、例えば、2~3mm程度となっている。但し、LEDパッケージ30cの幅は、適宜変更することができる。
【0026】
本実施形態では、
図4Aに示すように、LED列30aにおける一方の端部30dからの所定範囲と、他方の端部30dからの所定範囲とを、端部側領域と称することとする。また、LED列30aにおける端部側領域以外の領域を中央側領域と称することとする。
【0027】
本実施形態では、LED列30aの端部側領域には、端部側領域に配置されたそれぞれのLEDパッケージ30cに対応して配置され、LEDパッケージ30cからの光の照射方向をLED列30aの端部30d側からLED列30aの中央部側に変更する光照射方向変更部材としての反射板ユニット60が配置される。
【0028】
図4Cに示すように、反射板ユニット60は、基材60aと反射板60bとが一体に形成されている。このような反射板ユニット60を、
図4Dに示すように、LED列30aに取り付ける。その結果、
図4Eに示すように、LEDパッケージ30cが配置された間隔内に、反射板60bが配置されることになる。反射板60bは、LEDパッケージ30cではなく、LEDパッケージ30cの構成要素に該当しない。なお、本実施形態のように、反射板ユニット60をLED列30aとは別部材として形成し、形成後にLED列30aに取り付けることことにより、LED照明装置30の製造が容易となる。
【0029】
反射板60bの材質は、反射率が高いものであれば、何でも構わない。反射板60bの反射率は、正反射率でも全反射率でも良く、光の吸収量が少ないことが好ましい。本実施形態では、一例として、反射板60bの反射率が50%以上となっている。
【0030】
反射板60bの材質としては、一例として、酸化物、プラスチックおよび金属等が挙げられる。具体的には、以下のような材料で、単独で使っても良いし、粉末等にしてコーティングする形で使ってもよい。材料の例としては、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化アルミ、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、鉛白、金、銀、銅、白金、アルミ、ニッケル、すず、タングステン、クローム、紙、パルプ、布、白色ペイント、ガラス、およびタイル等が挙げられ、その中で、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、およびアルミ等が好ましい。
【0031】
反射板60bの材質は、好ましくは、酸化チタン含有材料がよく、この材質を用いると、粒子径および含量によって異なるが、70%以上の反射率が実現できる。また、銀、アルミ、および金といった材料を用いた場合も70%以上の反射率が実現可能である。
【0032】
LED列30aの端部30dに近い位置に設けられた所定数の反射板60bでは、反射板60bの配置面と反射板60bの反射面との角度が、残りの反射板60bに比べて、小さくなっている。
【0033】
図5Aは、反射板ユニット60の斜視図であり、
図5Bは、反射板ユニット60を栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。
図5Aに示すように、反射板ユニット60の基材60aには、隣接する反射板60b間の位置に、開口部60cが設けられている。開口部60cにLED列30aのLEDパッケージ30cを配置することにより、
図4Cに示すように、LED列30aと反射板ユニット60と組み合わせてLED照明装置30が構成される。
【0034】
図6Aは、別の態様の反射板ユニット60の斜視図であり、
図6Bは、同反射板ユニット60を栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺側から長辺方向に沿って見た図である。反射板ユニット60の反射板60bの反射面は、平板に限定される訳ではなく、
図6Aおよび6Bに示すように、湾曲していてもよい。
【0035】
図7Aは、反射板60bがLEDパッケージ30cの近くに配置され、反射板60bの大きさが小さい例を示す図であり、
図7Bは、反射板60bがLEDパッケージ30cから離れて配置され、反射板60bの大きさが大きい例を示す図である。
【0036】
LEDパッケージ30cの発光面の栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺方向の幅は、2~3mm前後の寸法であるが、発光面から光は、比較的広い照射範囲で照射される。したがって、この配光を制御する場合、
図7Bに示すように、反射板60b’がLEDパッケージ30cから遠い位置に配置すると、単独のLEDパッケージ30cからの光だけでなく、他のLEDパッケージ30cからの光にも影響を与える。したがって、この場合には、
図7Bに示すように、大きな反射板60b’を設けないと効果的に反射制御ができない。
【0037】
しかし、
図7Aに示すように、反射板60bを、反射板60bとLEDパッケージ30cとの間隔がLEDパッケージ30cの幅の1~2倍となるように配置することにより、他のLEDパッケージ30cからの光は影響を受けない。したがって、上記の配置位置に反射板60bを配置する場合には、反射板60bの高さ(基材60aの表面から反射板60bの上端までの距離)をLEDパッケージ30cの幅の2~3倍とすることで、効果的に反射制御を行うことができる。
【0038】
本実施形態においては、一例として、栽培ラックフレーム10における上部フレーム10aの短辺方向の幅が2mm程度のLEDパッケージ30cを用いており、反射板60bの位置は、隣接するLEDパッケージ30cの中心部から2mm程度離れた位置に設定されている。また、反射板60bの配置面からの高さは、5mm程度に設定されている。
【0039】
次に、反射板60bによる効果について説明する。
図8Aは、反射板60bを設けない状態におけるLEDパッケージ30cの配光分布をシミュレーションした結果を示す図である。
図8Bは、反射板60bと配置面としての基材60aとの角度について説明する図である。
【0040】
図8Aに示す例は、基準位置を0mmの位置としてLEDパッケージ30cが0mmの位置から1200mmの位置まで並んでいる場合に、0mmの位置に配置されたLEDパッケージ30cによりLED光の広がりをシミュレーションした結果を示している。
図8Aに示すように、反射板60bが配置されていない状態では、0mmの位置に配置されたLEDパッケージ30cから発せられた光は、1200mmの位置まで広がっていることがわかる。また、
図8Aに示すように、LEDパッケージ30cが並んで配置されていないマイナス側の方向にまで光が広がっていることがわかる。
【0041】
0mmの位置に配置されたLEDパッケージ30cが、LED列30aの端部近くに配置されたLEDパッケージ30cだとすると、マイナス側の方向に広がる光は、栽培棚100の外部から漏れることになり、LED光の効率的な利用を図ることができない。
【0042】
そこで、
図8Bに示すように、LEDパッケージ30cの発光点から2mm離れた位置に、高さ5mm、角度θが90度の反射板60bを設置した場合について考察する。
図9Aは、反射板60bの角度θが90度の場合のシミュレーション結果を示す図であり、
図9Bは、角度θが110度の場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0043】
図9Aおよび9Bにおいては、反射板60bによる反射光を輪環状に描いている。
図9Aに示すように、反射板60bの角度θが90度の場合には、マイナス方向への光の照射はなくなったものの、LEDパッケージ30cの真下の照明領域における配光は減少している。
【0044】
一方、
図9Bに示すように、反射板60bの角度θが110度の場合には、300mm先の照射面までしか広がらず、発光点から約100mmより外側には、光が照射されなくなった。つまり、反射板60bの角度θを110度とすることにより、マイナス方向への光の照射を防ぎつつ、LEDパッケージ30cの真下の照明領域における配光を確保することができる。
【0045】
本実施形態では、上述のシミュレーションの結果を踏まえ、LED列30aの端部領域において、反射板ユニット60を設けることにより、栽培棚100の外部からの光の漏れを防止しつつ、配光分布の均一性、および配光効率(LED照明装置30から照射される全光量のうち有効エリアに照射される光量の割合)の向上を図っている。
【0046】
図10Aは、変角角度(
図8Bに示す角度θ)が70度の場合の相対強度を示す図であり、
図10Bは、変角角度が90度の場合の相対強度を示す図であり、
図10Cは、変角角度が90度の場合の相対強度を示す図である。なお、
図10A~10Cに示す相対強度は、計算により求めたものであり、反射板60bの反射率が正反射率80%と仮定して計算を行ったときの光強度である。
【0047】
図10Aに示すように、変角角度が70度の場合には、LEDパッケージ30cからの光は、全て、0mm~1200mmの有効エリアに照射されることが分かる。この結果、配光効率は、80%から96%に改良された。
【0048】
また、
図10Bに示すように、変角角度が90度の場合には、配光効率は、80%から91%に改良された。配光効率は変角角度が70度の場合よりも劣るが、配光分布の均一性は向上していることが分かる。
【0049】
本実施形態では、反射板60bの角度を個々に調整することで、最高光量とフラットな配光分布を両立させた。
図10Cに示すように、反射板60bの角度を個々に調整することにより、配光効率を96%とし、かつ、配光分布の均一性を向上させることができた。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、端部側領域におけるLEDパッケージ30cの近傍に、それぞれのLEDパッケージ30cに対応させて小さな反射板60bを取り付けた。その結果、栽培棚100の外に漏れる光を、栽培棚100内に戻すことができ、LEDパッケージ30cからの照射光を有効に抑制することができる。また、LEDパッケージ30cの配置位置に応じて、反射板60bの角度を変えることにより、栽培棚100内の照射分布を良化することができる。
【0051】
また、以上のような栽培棚100において、栽培ベッド20に植えた植物等の被栽培物に対して、LED照明装置30により光を照射することにより、効率良く植物等の被栽培物を栽培することができる。植物の成長は光合成に基づく。より多くの光合成を実現することで、植物体はより大きくなり、生産性が高まる。人工光植物栽培において、その光量を増やすことが、光合成の増加につながり、その結果、生産性が高まることとなる。本発明は、植物体に照射されずに棚の外に捨てていた光を、植物体に照射することになり、その結果、生産性が高まる効果を期待することができる。なお、植物以外の被栽培物としては、キノコ、魚、微生物、および細胞などが挙げられる。
【0052】
(変形例)
以上の実施形態は例示であり、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0053】
上述した実施形態では、光照射方向変更部材の一例として、反射板ユニット60を用いた態様について説明したが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、
図11に示すように、端部側領域におけるLEDパッケージ30cに対応させて、光照射方向変更部材としての屈折レンズ70を設けて、LEDパッケージ30cからの照射光を中央部側に集めるようにしてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、反射板60bの角度を個々に調整する態様について説明したが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、反射板60bの角度は、反射板60bの間で均一であってもよい。
【0055】
反射板60b等を配置する範囲は、任意に設定可能であるが、LED列30aの端部30dから数えて、少なくとも6個以上のLEDパッケージ30cに対応して配置することが好ましい。例えば、LEDパッケージ30cの配置間隔が20mmピッチで、LED列30aの長さが1000mmのLED照明装置30の場合、少なくとも6個以上のLEDパッケージ30cに対応して反射板60b等を配置する。この場合には、端部30dから100mmの範囲にあるLEDパッケージ30cの配光を制御することとなる。その結果、一方の端部側で10%、両方の端部側で20%と、分布改良に対し1割以上の光を調整することができ、明らかな効果が期待できる。
【0056】
上述した実施形態では、LEDパッケージ30cを一列に一定の間隔で配置する態様について説明したが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、
図12Aに示すように、数個のLEDパッケージ30cを一つのグループとし、グループ内においてはLEDパッケージ30c間の間隔を一定に設定し、グループ間の間隔をLEDパッケージ30c間の間隔よりも大きくし、かつ一定に設定してもよい。
【0057】
また、
図12Bに示すように、LEDパッケージ30c間の間隔は一定でなくてもよい。さらに、
図12Cに示すように、基材30bの短手方向におけるLEDパッケージ30cの位置は異なっていてもよい。
【0058】
また、
図12Dに示すように、LEDパッケージ30cを基材30b上で複数列となるように配置してもよい。さらに、
図12Eに示すように、基材30bの短手方向におけるLEDパッケージ30cの個数を、複数個にした配置と、1個にした配置とを組み合わせてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、それぞれのLEDパッケージ30cに対応させて反射板60bを配置する態様について説明したが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、
図13Aおよび13Bに示すように、所々、反射板60bを省略してもよい。また、
図13Cに示すように、端部30dから数えて最初の所定の個数のLEDパッケージ30cに対応する位置には反射板60bを配置しない態様でもよい。さらに、
図13Dに示すように、LED列30aの両端部側に反射板60bを配置するのではなく、LED列30aの片方の端部側だけに反射板60bを配置してもよい。
【0060】
上述した実施形態では、一つのLEDパッケージ30cに対して一つの反射板60bが作用するものとして説明してきたが、反射板60bは、
図14に示すように、設置した場所の両側のLEDパッケージ30cに対して作用し得る。その場合には、反射板60bの両側の光に対して、光方向を変える反射板形状とすることが好ましい。
【0061】
本明細書では、本発明の一実施形態に係るLED照明装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 栽培ラックフレーム
10a 上部フレーム
10b 下部フレーム
10c 支柱
20 栽培ベッド
30 LED照明装置
30a LED列
30b 基材
30c LEDパッケージ
30d 端部
40 取付金具
50 アジャスター
60 反射板ユニット
60a 基材
60b 反射板
70 屈折レンズ
100 栽培棚