(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】付加製造プロセスにおける使用のための架橋性芳香族ポリマー組成物、およびこれを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240730BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20240730BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20240730BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240730BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20240730BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240730BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240730BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240730BHJP
B29C 64/00 20170101ALI20240730BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L71/00
C08K5/053
C08K5/098
C08K7/02
C08K3/013
C08K3/22
B33Y70/00
B29C64/00
(21)【出願番号】P 2021513398
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 US2019050686
(87)【国際公開番号】W WO2020056052
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-09
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514179458
【氏名又は名称】グリーン, ツイード テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ソン, リー
(72)【発明者】
【氏名】バタチャリア, ミスーン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, ティム
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク, ケリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ホムシ, エミール
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ, エリック
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09650537(US,B2)
【文献】特表2016-512853(JP,A)
【文献】特表2015-504463(JP,A)
【文献】特表2015-532355(JP,A)
【文献】特表2017-535459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造法における使用のための架橋性ポリマー組成物であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと、
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物と
を含
み、ここで、前記少なくとも1種の架橋性化合物が、前記架橋性ポリマー組成物中に、前記架橋性ポリマー組成物の非充填重量の1重量%~50重量%の量で存在する、架橋性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、およびこれらのブレンドから選択される、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、その主鎖に沿って、式(I):
【化22】
[式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4は、同一のまたは異なるアリール基であり、m=0~1であり、n=1-mである]
による構造を有するポリマー繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)である、請求項2に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、その主鎖に沿って、式(II):
【化23】
の構造を有する繰り返し単位を有する、請求項3に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、ポリアリーレンエーテルまたはポリアリールエーテルケトンである、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記ポリアリールエーテルケトンが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの群から選択される、請求項5に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、次の式:
【化24】
[式中、Aは結合、
10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分であり;R
1、R
2、およびR
3は同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH
2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~
6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択され;mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しく;Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~
6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択され;xは
1~
6である]
のうちの1つによる構造を有する、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(IV)による構造を有し、
【化25】
【化26】
からなる群から選択される、請求項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(V)による構造を有し、
【化27】
からなる群から選択される、請求項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(VI)による構造を有し、
【化28】
からなる群から選択される、請求項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項11】
Aが、
1,000g/mol~
9,000g/molの分子量を有する、請求項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項12】
Aが、
2,000g/mol~
7,000g/molの分子量を有する、請求項11に記載の架橋性ポリマー組成物。
請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記芳香族ポリマー対前記架橋性化合物の重量比が、
1:1~
100:1である、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記芳香族ポリマー対前記架橋性化合物の重量比が、
3:1~
10:1である、請求項1
3に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項15】
硬化抑制剤および硬化促進剤から選択される架橋反応添加剤をさらに含む、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項16】
前記架橋性化合物の0.01重量%~5重量%の量で前記架橋反応添加剤を含む、請求項1
5に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項17】
前記架橋反応添加剤が硬化抑制剤であり、酢酸リチウムである、請求項1
5に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項18】
前記架橋反応添加剤が硬化促進剤であり、塩化マグネシウムである、請求項1
5に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項19】
連続もしくは不連続の、長繊維もしくは短繊維である、炭素繊維、ガラス繊維、織物状ガラス繊維、織物状炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維から選択される強化繊維;ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、ホウ砂(ナトリウムホウ砂)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、マイカ、炭化ケイ素のウィスカもしくは小板、ナノ充填材、二硫化モリブデン、フルオロポリマー充填材、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1つもしくは複数の充填材から選択される1つまたは複数の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項20】
前記ポリマー組成物が、
0.5重量%~
65重量%の、前記1つもしくは複数の添加剤および/または1つもしくは複数の充填材を含む、請求項
19に記載の架橋性ポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物を使用して、付加製造プロセスによってプリントされる、物品。
【請求項22】
前記物品が、同じ主鎖構造を有する架橋されていない芳香族ポリマーによって形成される物品と比較して改善された層間接着を有
し、ここで、ASTM D-5528におけるような、ダブルカンチレバービーム試験を使用して層間接着が測定される、請求項2
1に記載の物品。
【請求項23】
前記物品が、同じ主鎖構造を有する架橋されていない芳香族ポリマーによって形成される物品と比較して機械的特性における改善された等方性を有
し、ここで、機械的特性が、ASTM D-638において測定されるような引張強度および弾性率である、請求項2
1に記載の物品。
【請求項24】
前記物品が、選択的レーザー焼結によって形成される、請求項2
1に記載の物品。
【請求項25】
前記物品が、溶融フィラメント製造によって形成される、請求項2
1に記載の物品。
【請求項26】
請求項1に記載の組成物から形成される架橋組成物であって、同じ芳香族ポリマーから形成されるが架橋されていない組成物と比較して、低い粘度および低減した結晶化速度を有する、架橋組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の組成物から形成される架橋組成物であって、前記架橋組成物を物品に後硬化させることが、プリントフィラメントから形成される、または射出成形によって形成される層の間に、同じ芳香族ポリマーから形成される非架橋組成物と比較して改善された接着結合をもたら
し、ここで、層間接着結合が、ASTM D-3163におけるように評価される、架橋組成物。
【請求項28】
付加製造プロセスにおける使用のための付加製造用組成物であって、前記組成物が、少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を含む、付加製造用組成物。
【請求項29】
付加製造法における使用のための架橋性ポリマー組成物を調製するための方法であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを準備すること、および
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の架橋性化合物とを合わせ
て、架橋性ポリマー組成物を形成すること
を含
み、ここで、前記少なくとも1種の架橋性化合物が、前記架橋性ポリマー組成物中に、前記架橋性ポリマー組成物の非充填重量の1重量%~50重量%の量で存在する、方法。
【請求項30】
前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを合わせて、その結果、前記架橋性ポリマー組成物が実質的に均一になることをさらに含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを、機械的ブレンディングによって合わせることをさらに含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項32】
前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを共通の溶媒中に溶解させること、および
蒸発によってまたは非溶媒を加えることによって前記共通の溶媒を除去して、前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを前記共通の溶媒から析出させること
をさらに含む、請求項
29に記載の方法。
【請求項33】
物品を形成するための付加製造プロセスにおける使用のための架橋芳香族ポリマーであって、少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物との反応生成物である、架橋芳香族ポリマー。
【請求項34】
前記芳香族ポリマーが、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、およびこれらのブレンドの群から選択される、請求項3
3に記載の架橋芳香族ポリマー。
【請求項35】
前記架橋性化合物が、次の式:
【化29】
[式中、Aは結合、
10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分であり;R
1、R
2、およびR
3は同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH
2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~
6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択され;mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しく;Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~
6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択され;xは
1~
6である]
のうちの1つによる構造を有する、請求項3
3に記載の架橋ポリマー。
【請求項36】
付加製造プロセスによって物品を調製する方法であって、
請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物を準備すること、および
付加製造プロセスにおいて前記架橋性ポリマー組成物を利用して、プリント物品を調製すること
を含む、方法。
【請求項37】
前記付加製造プロセスが、粉末床溶融法である、請求項3
6に記載の方法。
【請求項38】
前記付加製造プロセスが、材料押出法である、請求項3
6に記載の方法。
【請求項39】
付加製造プロセスによって調製される物品における、層間の接着を改善する方法であって、
ここで、ASTM D-5528におけるような、ダブルカンチレバービーム試験を使用して層間接着が測定され、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、
前記架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること、ならびに
前記付加製造プロセス中および/または前記付加製造プロセス後に、前記架橋性芳香族ポリマー組成物に熱をかけて、前記架橋性化合物による前記芳香族ポリマーの架橋を誘導すること
を含む、方法。
【請求項40】
付加製造プロセスによって調製される物品の機械的特性における等方性を改善する方法であって、
ここで、機械的特性が、ASTM D-638において測定されるような引張強度および弾性率であり、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、
前記架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること、ならびに
前記付加製造プロセス中および/または前記付加製造プロセス後に、前記架橋性芳香族ポリマー組成物に熱をかけて、前記架橋性化合物による前記芳香族ポリマーの架橋を誘導すること
を含む方法。
【請求項41】
付加製造プロセスにおける芳香族ポリマーの加工性を改善する方法であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、および
前記架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること
を含み、
25mm平行プレートの外形を使用するレオメータでレオロジースキャンを使用して測定されるように、前記組成物が、同じ芳香族ポリマーを有するが前記少なくとも1種の架橋性化合物を欠いている芳香族ポリマー組成物の使用と比較して低減した粘度を呈
し、そしてここで、示差走査熱量測定を使用して測定されるように、前記組成物が、前記少なくとも1種の架橋性化合物を欠いているが同じ芳香族ポリマーよりも低いガラス転移温度および低減した結晶化温度を有する、方法。
【請求項42】
付加製造法における使用のための架橋ポリマー組成物であって、
熱的に誘導された架橋、グラフト架橋、および化学架橋のうちの少なくとも1つによって架橋された、少なくとも1種の芳香族ポリマー
を含む、架橋ポリマー組成物。
【請求項43】
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが化学的に架橋され、前記組成物が、前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含む、請求項4
2に記載の付加製造法における使用のための架橋ポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
この米国非仮特許出願は、米国特許法(35 U.S.C)第119条(e)のもと、2018年9月11日に出願された「Crosslinkable Aromatic Polymer Compositions for Use in Additive Manufacturing Processes and Methods for Forming the Same」と題する米国特許仮出願第62/729,999号への利益を主張し、さらに、米国特許法巻第119条(e)のもと、2018年9月12日に出願された「Cross-Linking Compositions for Forming Cross-Linked Organic Polymers, Organic Polymer Compositions, Methods of Forming the Same, and Molded Articles Produced Therefrom」と題する、米国特許仮出願第62/730,000号への利益を主張し、これらの開示内容全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、付加製造に有用なポリマー組成物に関する。詳細には、本発明は、芳香族ポリマーと、芳香族ポリマーを架橋することができる架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物であって、付加製造法において使用する場合に、現在付加製造に使用されている従来の材料によってプリントされるまたは別の方法で形成される物品と比較して改善された層間の接着および改善された等方性を有する物品を1層毎に物品を生成する、架橋性芳香族ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
通例三次元(「3D」)プリンティングとも呼ばれる付加製造は、ラピッドプロトタイピングおよび物品の商用生成のために、評判が高まっている。光造形(「SLA」)などの液槽光重合法、マテリアルジェッティング法またはバインダージェッティング法、選択的レーザー焼結(「SLS」)などの粉末床溶融法、ならびにとりわけ、熱溶解積層(「FDM」)、溶融フィラメント製造(「FFF」)、および直接ペレット押出などの材料押出法を含む、様々なタイプの付加製造プロセスが公知である。
【0005】
液槽光重合法では、液体フォトポリマー樹脂が液槽に保管され、この中に、構築プラットフォームが配置される。物品が一連の層または断面として表される、物品のコンピュータモデルに基づいて、物品を形成することができる。コンピュータモデルに基づいて、液体フォトポリマー樹脂を選択的に硬化させるためのUV光を使用して、物品の第1の層が形成される。第1の層が形成されると、第1の層の上に物品の後続の層を形成するため、構築プラットフォームが下がり、UV光を使用して液体フォトポリマー樹脂を硬化させる。プリント物品が形成されるまで、このプロセスが繰り返される。
【0006】
マテリアルジェッティング法では、物品のコンピュータモデルに基づいて、物品の第1の層を形成するために、熱硬化性フォトポリマーなどの液体材料の小滴を堆積させることによって、物品が1層毎に調製される。堆積した液体材料の層は、例えば、UV光の適用によって、硬化または固化される。プリント物品を生成するために、後続の層を同様に堆積させる。バインダージェッティングでは、構築プラットフォーム上に粉末化材料の層を堆積させ、選択的に液体バインダーを堆積させて粉末をつなぎ合わせることによって、物品が形成される。後続の粉末の層およびバインダーを同様に堆積させ、バインダーが粉末の層間の接着剤として作用する。
【0007】
粉末床溶融法および特にSLSでは、物品が一連の層または断面として表された、プリントする物品のコンピュータモデルを発生させることによって、物品が形成される。物品を調製するために、構築プラットフォーム上に粉末の層を堆積させ、レーザーの使用によって粉末を焼結させて、コンピュータモデルに基づく物品の層を形成する。層が焼結されると、さらなる粉末の層が堆積され、焼結される。必要な場合、このプロセスを繰り返して、所望の構成を有する物品を形成する。
【0008】
FDMまたはFFFなどの材料押出法では、物品が一連の層として表された、物品のコンピュータモデルを発生させる。フィラメントを加熱する押出ヘッドに材料のフィラメントを供給し、加熱されたフィラメントを基材上に堆積させて、物品の層を形成することによって、物品が生成される。層が形成されると、物品のコンピュータモデルに基づいて、押出ヘッドが前進して物品の次の層が堆積される。プリント物品が完全に形成されるまで、このプロセスが1層毎に繰り返される。同様に、直接ペレット押出しでは、供給材料としてフィラメントの代わりにペレットが使用され、ペレットが押出ヘッドに供給され、加熱され、基材上に堆積される。
【0009】
付加製造法における使用のための、多様なポリマー系材料が公知である。付加製造に使用される一般的なポリマー系材料としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、およびポリ乳酸(PLA)が挙げられる。より最近では、一般的なポリマー材料と比較して改善された機械的および化学的特性を有するプリント物品を生成するために、高性能エンジニアリング熱可塑性樹脂が使用されている。このような高性能熱可塑性樹脂としては、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニルスルホン、ポリカーボネート、およびポリエーテルイミドが挙げられる。
【0010】
付加製造法を使用して、様々な形状および構成の任意のものを有する物品を迅速に形成することができるが、付加製造プロセスによって形成される物品は一般に、プリント物品のz方向における層間の接着が弱くなる。例えば、既にSLSプロセスに使用された再生利用PAEKの使用に関する米国特許出願公開第2013/0217838号は、物品のz方向における物品の機械的性能の乏しさに起因して、得られる物品の異方性の機械的特性をもたらす、SLSを使用してポリアリールエーテルケトンから物品を製造することの欠点を記載している。
高性能熱可塑性材料を付加製造に利用するため、およびプリント物品の層間の接着を改善するための試みがなされているが、物品のz方向において改善された層間接着および強度を示す付加製造材料が、依然として必要とされている。さらに、様々な付加製造プロセスのいずれかに使用することができ、付加製造に使用される従来のポリマー材料と比較して改善された化学的および機械的特性を提供する材料が所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2013/0217838号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、付加製造法における使用のための架橋性ポリマー組成物であって、少なくとも1種の芳香族ポリマーと、少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む、架橋性ポリマー組成物を含む。
【0013】
少なくとも1種の芳香族ポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、およびこれらのブレンドから選択されうる。少なくとも1種の芳香族ポリマーはさらに、その主鎖に沿って、式(I):
【化1】
[式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4は、同一のまたは異なるアリール基であり、m=0~1であり、n=1-mである]
による構造を有するポリマー繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。
加えて、少なくとも1種の芳香族ポリマーは、その主鎖に沿って、式(II):
【化2】
の構造を有する繰り返し単位を有することができる。
少なくとも1種の芳香族ポリマーは、好ましくは、ポリアリーレンエーテルまたはポリアリールエーテルケトンでありうる。例えば、芳香族ポリマーは、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの群から選択されるポリアリールエーテルケトンでありうる。
【0014】
少なくとも1種の架橋性化合物は、次の式:
【化3】
[式中、Aは結合、約10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分であり;R
1、R
2、およびR
3は同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH
2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択され;mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しく;Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択され;xは約1~約6である]
のうちの1つによる構造を有してもよい。
【0015】
一実施形態では、少なくとも1種の架橋性化合物は、式(IV)による構造を有し、
【化4】
【化5】
からなる群から選択される。
【0016】
少なくとも1種の架橋性化合物は、式(V)による構造を有してもよく、
【化6】
からなる群から選択される。
【0017】
少なくとも1種の架橋性化合物は、式(VI)による構造を有し、
【化7】
からなる群から選択される。
【0018】
好ましい実施形態では、Aは、約1,000g/mol~約9,000g/molの分子量を有し、好ましくは、Aは、約2,000g/mol~約7,000g/molの分子量を有する。
【0019】
好ましくは、少なくとも1種の架橋性化合物は、架橋性ポリマー組成物中に、架橋性ポリマー組成物の非充填重量の約1重量%~約50重量%の量で存在する。芳香族ポリマー対架橋性化合物の重量比は、好ましくは約1:1~約100:1であり、より好ましくは、芳香族ポリマー対架橋性化合物の重量比は、約3:1~約10:1である。
【0020】
組成物は、硬化抑制剤および硬化促進剤から選択される架橋反応添加剤をさらに含んでもよい。架橋反応添加剤は、架橋性化合物の0.01重量%~5重量%の量で存在しうる。架橋反応添加剤は、酢酸リチウムなどの硬化抑制剤であってもよい。架橋反応添加剤はまた、塩化マグネシウムなどの硬化促進剤であってもよい。
【0021】
1つまたは複数の添加剤、例えば、連続もしくは不連続の、長繊維もしくは短繊維である、炭素繊維、ガラス繊維、織物状ガラス繊維、織物状炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維から選択される強化繊維;ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、ホウ砂(ナトリウムホウ砂)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、マイカ、炭化ケイ素のウィスカもしくは小板、ナノ充填材、二硫化モリブデン、フルオロポリマー充填材、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1つもしくは複数の充填材から選択される添加剤が、組成物に加えられてもよい。このような実施形態におけるポリマー組成物は、約0.5重量%~約65重量%の、1つもしくは複数の添加剤および/または1つもしくは複数の充填材を含んでもよい。
【0022】
上に述べた組成物は、物品に形成される場合、非架橋の場合の同じ芳香族ポリマーと比較して低い粘度および低減した結晶化速度をもたらし、三次元プリンティングなどの付加製造プロセスに使用する場合、材料に改善された加工性を提供する。さらに、後硬化させると、本明細書における組成物によって形成される物品は、プリントフィラメントによって、または射出成形によって形成される場合、層間の接着結合が改善する。
【0023】
本発明は、上および本明細書の他のところに記載した架橋性ポリマー組成物を使用して、付加製造プロセスによってプリントされる物品をさらに含む。このような物品は、好ましくは、同じ主鎖構造を有する架橋されていない芳香族ポリマーによって形成される物品と比較して改善された層間接着を有する。物品はまた、好ましくは、同じ主鎖構造を有する架橋されていない芳香族ポリマーによって形成される物品と比較して改善された機械的特性における等方性を有する。一実施形態では、物品は、選択的レーザー焼結によって形成される。さらなる実施形態では、物品は、溶融フィラメント製造によって形成される。
【0024】
本発明は、付加製造プロセスにおける使用のための付加製造用組成物をさらに組み込んでおり、この組成物は、少なくとも1種の芳香族ポリマーと、少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む、架橋性芳香族ポリマー組成物を含む。
【0025】
付加製造法における使用のための架橋性ポリマー組成物を調製するための方法であって、少なくとも1種の芳香族ポリマーと、少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを準備すること、および少なくとも1種の芳香族ポリマーと少なくとも1種の架橋性化合物とを合わせることを含む、方法も、本明細書に含まれる。方法は、芳香族ポリマーと架橋性化合物とを合わせて、架橋性ポリマー組成物を実質的に均一にすることをさらに含んでもよい。別の実施形態では、方法は、芳香族ポリマーと架橋性化合物とを、機械的ブレンディングによって合わせることをさらに含んでもよい。またさらなる実施形態では、方法は、芳香族ポリマーと架橋性化合物とを共通の溶媒中に溶解させること、および蒸発によってまたは非溶媒を加えることによって共通の溶媒を除去して、芳香族ポリマーと架橋性化合物とを共通の溶媒から析出させることを含んでもよい。
【0026】
本発明はまた、少なくとも1種の芳香族ポリマーと、芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物との反応生成物である、物品を形成するための付加製造プロセスにおける使用のための架橋芳香族ポリマーを含む。
一実施形態では、少なくとも1種の芳香族ポリマーは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、およびこれらのブレンドの群から選択される。架橋性化合物は、次の式:
【化8】
[式中、Aは結合、約10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分であり;R
1、R
2、およびR
3は同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH
2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択され;mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しく;Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択され;xは約1~約6である]
のうちの1つによる構造を有する。
【0027】
本発明はまた、付加製造プロセスによって物品を調製する方法であって、請求項1に記載の架橋性ポリマー組成物を準備すること、および架橋性ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製することを含む、方法を含む。付加製造プロセスは、粉末床溶融法であってもよい。付加製造プロセスは、材料押出法であってもよい。
【0028】
付加製造プロセスによって調製される物品における、層間の接着を改善する方法であって、少なくとも1種の芳香族ポリマーと、少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む、架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること、ならびに付加製造プロセス中および/または付加製造プロセス後に、架橋性芳香族ポリマー組成物に熱をかけて、架橋性化合物による芳香族ポリマーの架橋を誘導することを含む方法も、本明細書に含まれる。
【0029】
本発明はさらに、付加製造プロセスによって調製される物品の機械的特性における等方性を改善する方法であって、少なくとも1種の芳香族ポリマーと、少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む、架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること、ならびに付加製造プロセス中および/または付加製造プロセス後に、架橋性芳香族ポリマー組成物に熱をかけて、架橋性化合物による芳香族ポリマーの架橋を誘導することを含む、方法を含む。
【0030】
前述の発明の概要、および以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な記載は、添付の図面とともに読むことで、より良好に理解される。本発明を説明する目的のため、現在好ましい実施形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、示されている厳密な処理および手段に限定されないことを理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、(a)非晶質ポリマー、(b)PAEKなどの半結晶質芳香族ポリマー、および(c)本発明による架橋芳香族ポリマーについて、付加製造において層をプリントするときのポリマーの挙動の代表的な説明図である。
【0032】
【
図2】
図2は、実施例1に記載する、非架橋PEEKに対して正規化した、結合圧力に対する架橋ポリアリーレン(Arlon 3000XT
TM)の接着強度のグラフによる表現である。
【0033】
【
図3】
図3は、実施例2によって形成された架橋ポリアリーレンフィラメントの写真画像である。
【0034】
【
図4】
図4は、実施例4のダブルカンチレバービーム(DCB)試験後の供試体の写真画像であり、上の供試体は標準FFF PEEKから形成され、下の試験供試体はArlon 3000XT
TMを使用して、実施例4の架橋性配合物から形成される。
【0035】
【
図5】
図5は、実施例4の三次元プリントしたPEEKおよびArlon 3000XT
TMバーの、後硬化サイクルの前後の二次元CTスキャン画像を示し、左の写真は後硬化前のPEEK(A)および架橋可能なArlon 3000(B)を示し、右の写真は後硬化後のPEEK(A)およびArlon 3000XT
TMを示す。
【0036】
【
図6】
図6は、実施例5のバーの写真画像であり、左のバーはFFFプリントPAEKバーを表し、右のバーは、実施例1および2において言及する条件下で調製したフィラメントを使用して形成した、架橋可能なPAEKバーである。
【0037】
【
図7】
図7は、実施例6の架橋可能なPAEKおよび標準PAEKについて、時間に対する複素粘度をプロットしたレオロジー曲線のグラフによる表現である。
【0038】
【
図8】
図8は、実施例6の架橋可能なPAEKおよび標準PAEKについて、DSC冷却曲線のグラフによる表現である。
【0039】
【
図9】
図9は、実施例6の架橋可能なPAEKおよび標準PAEKについて、DSC加熱曲線のグラフによる表現である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明は、付加製造法のために、および付加製造法において有用な、架橋性ポリマー組成物、このような架橋性ポリマー組成物を組み込んでいる付加製造用組成物、ならびにこのような組成物から形成される物品を開示する。このような架橋性ポリマー組成物および架橋ポリマー組成物を形成するための方法も、本明細書に含まれる。本発明の架橋性ポリマー組成物は、特定のタイプの付加製造または他の三次元プリンティングプロセスのみにおける、単一の使用に限定されるものと考えるべきではない。本明細書において使用する場合、一般に、「付加製造」は、本明細書の背景技術のセクションに述べた様々な付加製造プロセス、および任意の他の三次元プリンティングプロセスを広く含むことが意図される」。本発明の架橋性ポリマーおよび関係する組成物は、関連分野において公知の、または開発中の、任意の付加製造法のために、またはこれにおいて、有用であると考えるべきである。本明細書における架橋性ポリマー組成物および関係する発明は、とりわけ熱溶解積層または溶融フィラメント製造などの材料押出法、および選択的レーザー焼結プロセスなどの粉末床溶融法における使用に特に適している。架橋性ポリマー組成物は、ラピッドプロトタイピングのための付加製造法に使用することができ、より好ましくは、商用規模の部品の生成に使用される。
【0041】
架橋性ポリマー組成物は、様々な非限定的な物理的形態における付加製造においても同様に使用されうる。例えば、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物が用いられる特定のタイプの付加製造プロセスにおいて、意図される最終用途の実施態様に応じて選択される、多様な物理的形態のいずれかにおいて提供されうる。例えば、SLSプロセスでは、架橋性ポリマー組成物は粉末形態で提供されうるが、粉末形態は、種々の粒子サイズ、様々な多分散性、および様々な表面積を有しうる。FFF法またはFDM法において使用する場合、架橋性ポリマー組成物は、フィラメント形態で提供されうる。架橋性ポリマー組成物はまた、直接ペレット押出のためには、ペレット形態で提供されうる。
【0042】
本発明の架橋性ポリマー組成物は、付加製造プロセスにおいて使用してプリント物品を形成する場合、プロセスから得られる物品の層間に改善された接着を提供する。改善された層間の接着は、異なる方向に及ぶことができるが、プリント物品のz方向において、目立って主に認識される。結果として、本発明の架橋性ポリマー組成物を使用して生成されたプリント物品は、従来の改質されていないポリマー系材料と比較して改善された機械的特性における等方性、例えば引張強度および弾性率における等方性を有する。
【0043】
さらに、本発明の架橋芳香族ポリマーは、非改質ポリマーと比較して相対的に低い熱膨張率および改善された熱管理を有する。とりわけ高温における低い熱膨張率および熱管理において得られる改善は、FDMまたはFFFなどの材料押出法を使用する付加製造を容易にしうる。
【0044】
理論によって束縛されることを望むものではないが、本明細書において使用する架橋剤および触媒は、隣接する層同士を「結びつける」、すなわち、付加製造層同士を横切るポリマーおよび触媒分子の相互拡散を通じて、分子構造を平面方向内だけではなく、平面外にもしっかりと接合する節点が提供されると考えられる。接着を増強するため、後続のさらなる架橋を使用することができる。したがって、ポリマーの層間拡散、ならびに層間の架橋および化学結合を通じ、付加製造ステップ中およびプロセス後処理の後の両方の組成物の硬化反応を通じて、z方向を含むいろいろな方向において、改善された特性を達成することができる。
【0045】
非晶質ポリマーをプリントする場合、積層内結合は、あるとしてもわずかである。発生しうる唯一の結合は、熱拡散/鎖レプテーションを通じた粒子間接着である(De Gennes, P. G. "Reptation of a Polymer Chain in the Presence of Fixed Obstacles, The Journal of Chemical Physics, vol. 55 (2), pp. 572 (1971)を参照されたい。この粒子間結合は、ポリマーのガラス転移温度(T
g)未満の温度においては、非常に限定的であると予想される。しかしながら、非晶質ポリマーについては、非晶質ポリマーをそのT
g超に加熱すると、溶融し、流動することになる。これは、三次元プリンティングなどの付加製造においては制限となり、問題である。これを
図1に図示しており、概略図(a)をポリマーの2つのプリント層の代表的な図示として提供する。T<T
gである場合には、経時的な相互拡散が限定されることに留意されたい。
【0046】
大多数のポリアリールエーテルケトン(PAEK)および他のポリアリーレンなどの半結晶質材料においては、三次元プリンティングプロセス中、ポリマーの押出しまたは加熱の後に結晶子を形成することができる。結晶子は物理架橋として作用し、したがって、粒子間拡散を抑制して、層同士を横切る接着を強化する。
図1に示すように、概略図(b)を粒子間/層間接着の代表的な図示として提供する。鎖の熱拡散は、結晶化によって限定される(層同士を横切る、および粒子間のポリマー鎖の橋架けが限定される)。従来技術のPAEKプリント物品はまた、低減した積層内特性についての問題点を有することが公知であり、プリントの向きについて有意な異方性を表す場合がある。
【0047】
本発明の範囲内の架橋可能なPAEKなどの架橋性ポリマーを組み込んでいる場合、材料は、結晶化速度が低減し、溶融粘度が低下し、かつ層同士を横切って架橋する能力を有し、有意に改善された層同士を横切る結合が達成されうる。これを
図1に図示し、粒子間/層間接着の代表的な図示である概略図(c)を参照する。概略図(c)は、半結晶質材料を使用して達成されるよりも良好な鎖拡散、熱拡散を図示している。さらに、より良好な化学結合がプリント中に生じ、プリント物品の後硬化において、より多くの熱拡散および化学結合が生じる。これは、プリント物品に、改善された積層内接着および改善された等方性をもたらす。
【0048】
これは、改善された積層内接着および改善された等方性をもたらすことになる。現在のPAEK配合物は、積層内特性が低減し、プリントの向きについて有意な異方性を示す。
【0049】
架橋性ポリマー組成物は、架橋されることができる芳香族ポリマーを含む。芳香族ポリマーの架橋は、グラフト架橋のためにポリマーの改質によって、ポリマーの自己架橋を誘導するのに十分な高温に芳香族ポリマーを曝露することによって、および/または別の架橋性化合物の使用によって、達成することができる。関連部分において、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第6,060,170号にさらに記載されるように、芳香族ポリマーは、例えば、熱的に誘導してポリマーを架橋することができるポリマー主鎖に、官能基をグラフト化することによって架橋してもよい。代替的には、関連部分において、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,658,994号に開示されるように、芳香族ポリマーを、約350℃超またはそれよりも高い温度における熱作用によって架橋してもよい。熱架橋における使用のための好ましい材料の例は、下に示す、1,2,4,5テトラ(フェニルエチニル)ベンゼンである。
【化9】
【0050】
本出願の好ましい実施形態では、本発明の架橋性ポリマー組成物は、芳香族ポリマーと、ポリマーマトリックス内で鎖同士を横切って、またはそれ自体へのいずれかで、芳香族ポリマーを架橋することができる架橋性化合物とを含む。
【0051】
架橋性ポリマー組成物の芳香族ポリマーは、ポリアリーレンエーテル、例えばポリエーテルケトン、ポリエーテルケトン、およびポリエーテルケトンケトン等を含むポリアリーレン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミド;ポリアミド-イミド;ポリ尿素;ポリウレタン;ポリフタルアミド;ポリベンゾイミダゾール;ポリアラミド、またはこのようなポリマーの様々なコポリマーおよび官能化もしくは誘導体化版を含む、当技術分野において公知もしくは開発中の同様の芳香族ポリマーのいずれかであってもよい。芳香族ポリマーは、特定の特性を達成することが所望される場合、または特定の用途に必要な場合、官能化されても、官能化されなくてもよく、意図される最終的な効果および特性に応じて、例えば、ヒドロキシル、メルカプト、アミン、アミド、エーテル、エステル、ハロゲン、スルホニル、アリール、および官能性アリール基などの官能基、または他の官能基を提供することができる。芳香族ポリマーはまた、ポリマーブレンド、アロイ、またはコポリマーであってもよく、このような芳香族ポリマーの2種またはそれよりも多くの、他の複数のモノマー重合であってもよい。好ましくは、芳香族ポリマーがブレンドまたはアロイである場合、芳香族ポリマーは、相溶性の加工温度範囲において加工可能であるように選択される。
【0052】
本明細書における架橋性ポリマー組成物の実施形態では、芳香族ポリマーは、その主鎖に沿って、式(I):
【化10】
[式中、Ar
1、Ar
2、Ar
3、およびAr
4は、同一のまたは異なるアリール基であり、m=0~1であり、n=1-mであり、このようなポリマーは、意図される最終用途に応じて、関連する芳香族ポリマーの分野において公知の多様な分子量および鎖長のものであってよい]
による構造を有するポリマー繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。
【0053】
さらなる実施形態では、芳香族ポリマーは、式(I)におけるポリ(アリーレンエーテル)であってもよく、式中、mは1であり、nは0であり、芳香族ポリマーはその主鎖に沿って、下の式(II):
【化11】
に示す構造を有する繰り返し単位を有する。
このようなポリマーは、例えば、Greene,Tweed(Kulpsville、PA)からUltura
TMとして商業的に入手されうる。
【0054】
好ましい実施形態では、芳香族ポリマーは、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などのポリアリールエーテルケトン(PAEK)である。芳香族ポリマーは、市販の芳香族ポリマーであってもよい。
【0055】
本発明の架橋性ポリマー組成物の架橋性化合物は、芳香族ポリマーを架橋することができる。有機ポリマーを架橋するのに好適な架橋性化合物は、関連部分において、参照によって本明細書に組み込まれる出願人の米国特許第9,006,353号に記載されており、これは、一般構造:
【化12】
[式中、RはOH、NH
2、ハライド、エステル、アミン、エーテル、またはアミドであり、xは1~6であり、Aは、約10,000g/mol未満の分子量を有するアレーン部分である]の架橋性化合物を有する組成物を記載している。ポリアリーレンケトンなどの芳香族ポリマーと反応させる場合、このような架橋性化合物は、熱的に安定な架橋オリゴマーまたは架橋ポリマーを形成する。このような架橋技術によって、架橋するのが困難であると当技術分野において考えられていた芳香族ポリマーを、そのように改質するポリマー、すなわち、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、および他のポリアリーレンケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、アラミド、ならびにポリベンゾイミダゾールに応じて、260℃超の温度まで、さらには400℃超の温度またはそれよりも高い温度まで熱的に安定であるように、架橋可能な形態に形成することができた。
【0056】
芳香族ポリマーを架橋するための追加の架橋性化合物としては、次の構造:
【化13】
[式中、Qは結合であり、Aは、Q、約10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分である]のうちのいずれかによる架橋性化合物が挙げられる。R
1、R
2、およびR
3のそれぞれは、同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(-NH
2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択される。式(IIIa)は、式(III)の部分AがQ(結合を表す)によって置き換えられること、および式(IIIa)のR
1が式(III)のRとは異なって定義されることを除いて、上の式(III)と実質的に同じである。
【0057】
式(V)において、mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しい。さらに、式(V)において、Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択される。式(IIIa)、(V)、および(VI)のいずれかにおいても、式(III)と同様に、xは約1~約6である。
【0058】
式(IIIa)、(V)、および(VI)の架橋性化合物の選択について、このような架橋性化合物は、有機ポリマーを架橋することにおいて、式(III)の化合物と少なくとも同じくらい効果的でありながら、式(III)の架橋性化合物を調製するために使用するものよりも刺激が弱い化学物質を使用して調製することができるため、式(III)の架橋性化合物よりも容易に、より低い費用で生成されるという利益を提供する。
【0059】
本発明の架橋性ポリマー組成物は、1つまたは複数の架橋性化合物のブレンドを含んでもよい。別の実施形態では、架橋性ポリマー組成物は、架橋性ポリマー組成物の芳香族ポリマーに基づいて選択することができる、単一の架橋性化合物を含む。
【0060】
さらなる実施形態では、本発明の架橋性ポリマー組成物の架橋性化合物は、次の式:
【化14】
【化15】
のうちの1つによる構造を有する。
【0061】
式(IV)~(VI)のそれぞれにおいて、Aは、結合、約10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分である。約10,000g/mol未満の分子量によって、全体構造が、芳香族ポリマーにより混和性となることができ、ドメインをほとんどまたはまったく含まず、芳香族ポリマーと架橋性化合物とのブレンド内に一様に分散することができる。より好ましくは、Aは、約1,000g/mol~約9,000g/molの分子量を有する。最も好ましくは、Aは、約2,000g/mol~約7,000g/molの分子量を有する。
【0062】
部分Aは多様であってよく、次のもの:
【化16】
を含むがこれらに限定されない、異なる構造を有し得る。
【0063】
さらに、部分Aは所望により、例えば、限定するものではないが、サルフェート、ホスフェート、ヒドロキシル、カルボニル、エステル、ハライド、もしくはメルカプト、または上に述べた他の官能基などの1つまたは複数の官能基を使用して官能化されてもよい。
【0064】
式(IV)および(VI)において、R1は、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から選択される。式(V)において、R1、R2、およびR3は、同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH2)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択される。したがって、R1、R2、およびR3がそれぞれ異なってもよく、R1、R2、およびR3のうちの2つが同じであり、3つ目が異なってもよく、またはR1、R2、およびR3のそれぞれが同じであってもよい。さらに、式(V)において、mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しい。したがって、式(V)において、1つまたは2つのR2基が存在してもよく、1つまたは2つのR3基が存在してもよく、1つのR2基と1つのR3基とが存在してもよく、またはR2とR3とが両方存在しなくてもよい。式(V)において、Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択される。式(IV)~(VI)のいずれかにおいて、xは約1~約6である。
【0065】
式(IV)による架橋性化合物を有する実施形態では、架橋性化合物は、次:
【化17】
【化18】
のうちの1つまたは複数による構造を有してもよい。
【0066】
上に列挙した架橋性化合物は、限定することが意図されるものではなく、単に式(IV)による架橋性化合物の例として提供される。上の式(IV)の化合物において、R1がヒドロキシル基であるものとして示される。部分Aが、様々なアリール基のいずれかであるものとして示され、xが2または4のいずれかであるものとして示される。
【0067】
式(V)の架橋性化合物を有する実施形態では、架橋性化合物は、次:
【化19】
【化20】
のうちの1つまたは複数による構造を有してもよい。
【0068】
上に列挙した架橋性化合物は、限定することが意図されるものではなく、単に式(V)による架橋性化合物の例として提供される。上の式(V)の化合物において、Zが、1個の炭素原子またはOを有するアルキル基であるものとして示される。R1が、ヒドロキシル基であるものとして示される。R2とR3とが、同じであるもの、異なるもの、または存在しないものとして示される。部分Aが、結合またはアリール基であるものとして示される。さらに、xが1または2であるものとして示される。
【0069】
架橋性化合物が式(VI)による構造を有する実施形態では、架橋性化合物は、次の構造:
【化21】
のうちの1つまたは複数を有してもよい。
【0070】
上に列挙した架橋性化合物は、限定することが意図されるものではなく、単に式(VI)による架橋性化合物の例として提供される。上の式(VI)の化合物において、R1がヒドロキシル基として示される。部分Aが、結合またはアリール基であるものとして示される。さらに、xが2であるものとして示される。
【0071】
架橋性ポリマー組成物中の架橋性化合物の量は、(集合的に、)非充填の架橋性ポリマー組成物の総重量を基準として、好ましくは約1重量%~約50重量%、5重量%~約30重量%、または約10%~約35%、または約8重量%~約24重量%である。
【0072】
本発明の架橋性ポリマー組成物は、約1:1~約100:1である、芳香族ポリマー対架橋性化合物の重量比を有してもよい。より好ましくは、芳香族ポリマー対架橋性化合物の重量比は、約3:1~約10:1である。
【0073】
架橋性ポリマー組成物は、必要に応じて、溶融加工および後処理中の硬化反応速度を制御するために、架橋反応添加剤をさらに含んでもよい。特定の芳香族ポリマーと架橋性化合物との硬化反応動力学に応じて、架橋反応添加剤は、酢酸リチウムなどの硬化抑制剤(ルイス塩基剤)である場合もあり、または架橋反応添加剤は、塩化マグネシウムもしくは他の希土類金属ハロゲン化物などの硬化促進剤(ルイス酸剤)であってもよい。架橋性ポリマー組成物が架橋反応添加剤を含む場合、架橋性ポリマー組成物中の架橋反応添加剤の量は、架橋性化合物の重量を基準として、好ましくは約0.01重量%~約5重量%である。
【0074】
架橋性ポリマー組成物はさらに、架橋性ポリマー組成物を使用して形成される物品の弾性率、衝撃強度、寸法安定性、耐熱性、および電気的特性を改善するために、1つまたは複数の添加剤によって充填または強化されてもよい。好ましくは、添加剤は、連続もしくは不連続の、長繊維もしくは短繊維である、炭素繊維、ガラス繊維、織物状ガラス繊維、織物状炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維のうちの1つもしくは複数から選択される強化繊維のうちの1つもしくは複数、ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、ホウ砂(ナトリウムホウ砂)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、マイカ、炭化ケイ素のウィスカもしくは小板、ナノ充填材、二硫化モリブデン、フルオロポリマー充填材、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1つもしくは複数の充填材から選択される。
【0075】
添加剤は、好ましくは、連続または不連続の、長繊維または短繊維である強化繊維を含み、強化繊維は、炭素繊維、PTFE繊維、および/またはガラス繊維である。最も好ましくは、添加剤は、連続した長繊維である強化繊維である。架橋性ポリマー組成物は、組成物中に、約0.5重量%~約65重量%の添加剤を含み、より好ましくは、組成物中に、約5重量%~約40重量%の添加剤を含む。架橋性ポリマー組成物は、安定剤、難燃剤、顔料、着色剤、可塑剤、界面活性剤、または分散剤のうちの1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0076】
添加剤は、加えてまたは代替的に、ナノダイヤモンドおよび他の炭素同素体、多角形オリゴマーシルセスキオキサン(「POSS」)およびその変形体、酸化ケイ素、窒化ホウ素、ならびに酸化アルミニウムを含むがこれらに限定されない、熱管理充填材を含んでもよい。添加剤は、加えてまたは代替的に、イオン性または非イオン性化学物質などの流動性改質剤を含んでもよい。
【0077】
本発明はさらに、付加製造プロセスにおいて、およびそのために有用な架橋性ポリマー組成物を調製するための方法、ならびにこのようなポリマーを含む付加製造用組成物を調製する方法に関する。架橋性ポリマー組成物を調製するための方法は、芳香族ポリマーと、芳香族ポリマーを架橋することができる架橋性化合物とを準備すること、および芳香族ポリマーと架橋性化合物とを合わせることを含む。合わせた芳香族ポリマーと架橋性化合物とを含む組成物は、好ましくは、実質的に均一である。
【0078】
1つまたは複数の架橋性化合物を芳香族ポリマーに合わせることは、様々な方法によって、例えば、溶媒析出、機械的ブレンディング、または溶融ブレンディングによって実行することができる。好ましくは、架橋性ポリマー組成物は、架橋性化合物と芳香族ポリマーとの乾燥粉末ブレンディングによって、例えば二軸スクリュー調合を含む、従来の非架橋ポリマー調合プロセスなどによって形成される。得られる組成物は、押し出してフィラメントにすることができ、または粉末もしくはペレットとして使用することができる。ブレンディングは、二軸スクリュー押出機などの押出機、ボールミル、またはクライオグラインダーによって遂行されうる。芳香族ポリマーと架橋性化合物とのブレンディングは、好ましくは、ブレンディングプロセス中に早期硬化が起こらないように、ブレンディング中に約250℃を超えない温度において実施される。溶融プロセスが要求される場合、熱履歴および温度への曝露が確実に最小化されるように注意しなければならず、すなわち、短い滞留時間および/または実行可能な限りの低温を使用して、材料の流動を達成することが好ましい。代替的には、調合およびペレットまたは繊維形態への変換に起因するいずれの架橋も最小化するために、速度制御添加剤の使用を使用して、硬化を抑制および/または硬化速度を制御してもよい。好適な架橋添加剤は、当技術分野において公知であり、架橋制御添加剤についての関連部分において、本明細書に組み込まれる、本出願人の米国特許第9,109,080号に記載されている。
【0079】
ブレンディングプロセスは発熱性の場合があり、結果として、温度を制御することが必要であり、温度は、必要な場合、および選択された芳香族ポリマーに応じて調整することができる。芳香族ポリマーと架橋性化合物との機械的ブレンディングにおいて、得られる架橋性ポリマー組成物は、好ましくは、一様な架橋を得るために、実質的に均一である。所望される場合、得られるブレンドは、250℃超の温度、例えば約250℃~500℃の温度への曝露によって硬化させることができる。
【0080】
代替的には、組成物は、芳香族ポリマーと架橋性化合物との両方を共通の溶媒中に溶解させ、蒸発によってまたは非溶媒を加えることによって共通の溶媒を除去して、芳香族ポリマーと架橋性化合物との両方を溶媒から析出させることによって、調製することができる。例えば、選択された芳香族ポリマーおよび架橋性化合物に応じて、共通の溶媒はテトラヒドロフランであってもよく、非溶媒は水であってもよい。
【0081】
架橋性ポリマー組成物の作製において、架橋性化合物を芳香族ポリマーと合わせて架橋性ポリマー組成物を作製するのに合わせてまたはこれと同時に、任意の必要に応じた添加剤を、組成物に加えることが好ましい。しかしながら、強化繊維または充填材を提供する具体的な方法は、このような材料を組み込むための様々な技法によるものであってよく、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【0082】
上に述べた本発明の架橋性ポリマー組成物も、付加製造用組成物として好適であり、当技術分野において公知であるこのようなプロセスにおいて他の場合には使用される、任意の好適な添加剤を含むことができ、さらなる成分は、本明細書に述べる技法を使用して、他の架橋性組成物の添加剤とともにブレンドされうる。
【0083】
本明細書における架橋性芳香族組成物、およびこのような架橋性芳香族組成物を組み込んでいる付加製造用組成物は、三次元プリンティング、光造形(「SLA」)などの液槽光重合法、マテリアルジェッティング法またはバインダージェッティング法、選択的レーザー焼結(「SLS」)などの粉末床溶融法、ならびにとりわけ、熱溶解積層(「FDM」)、溶融フィラメント製造(「FFF」)、および直接ペレット押出などの材料押出法を含むがこれらに限定されない、様々な付加製造プロセスのいずれかにおいて、使用することができる。好ましくは、付加製造プロセスは、SLSなどの粉末床溶融法、またはFFFもしくは直接ペレット押出などの材料押出法である。
【0084】
SLSにおける使用のためには、本明細書における架橋性ポリマー組成物および付加製造用組成物は、粉末形態で提供されうる。SLSにおいて、生成される物品のコンピュータモデルは、物品を、複数の層または断面として表す。コンピュータモデルに基づく物品は、構築プラットフォーム上に粉末の層を堆積させること、および例えばレーザーにより、粉末の層を選択的に焼結させて、物品の第1の層を形成することによって、生成することができる。焼結によって第1の層が形成された後、構築プラットフォームが増分的に下がり、第1の層の上に後続の粉末の層が堆積される。後続の粉末の層が焼結されて、プリント物品の後続の層が形成される。プリント物品が完全に形成されるまで、このプロセスが繰り返される。次いで、完全に形成された物品を、様々な仕上げプロセスのいずれか、例えば、熱硬化、またはとりわけ、コーティングの塗布などの表面処理に供することができる。
【0085】
FDMまたはFFFプロセスにおいて、本明細書における架橋性ポリマー組成物および付加製造用組成物は、フィラメントの形態で提供することができる。SLSと同様に、物品のコンピュータモデルを提供することができ、コンピュータモデルは物品を、複数の層または断面として表す。フィラメントを加熱する押出ヘッドにフィラメントが供給されるにつれて、物品が1層毎に形成され、構築プラットフォーム上にフィラメントを堆積させて、物品のコンピュータモデルに基づく物品の層を形成することができる。堆積されると、加熱されたフィラメントは、物品の層を形成するように硬化する。フィラメントの第1の層の上に、後続のフィラメントの層が堆積されて、物品のコンピュータモデルに基づいて、物品の後続の層を形成する。物品のすべての層が、プリント物品を形成するように堆積されるまで、このプロセスが繰り返される。物品が完成したら、様々な仕上げプロセス、例えば、物品の熱硬化、または過剰な材料を除去するための研磨などの表面処理を実行してもよい。
【0086】
付加製造プロセスに使用して本明細書に記載するプリント物品を形成する場合、架橋性ポリマー組成物(単独での使用であろうと、または付加製造用組成物中の使用であろうと)は、好ましくは、架橋性化合物による芳香族ポリマーの架橋を誘導する温度にポリマー組成物を加熱することなどによる、熱作用によって架橋される。付加製造プロセスにおける使用のために提供される架橋性ポリマー組成物は、付加製造における使用の前にある程度架橋されてもよいが、好ましくは、付加製造プロセスにおける使用の前は、実質的に非架橋である。架橋性ポリマー組成物が、付加製造における使用の前にいくらかの架橋を有して提供される場合、架橋は、架橋性ポリマー組成物をペレット化する際など、架橋性ポリマー組成物を付加製造に好適な形態に調製する際に達成されうる。
【0087】
架橋性ポリマー組成物中の芳香族ポリマーの少なくとも一部の架橋は、付加製造プロセスにおける個々の層の形成中に起こる。例えば、SLSにおいては、レーザーによる焼結が、ポリマー組成物の架橋を誘導するための熱を提供しえ、FFFまたはFDMにおいては、フィラメントを加熱する押出ヘッドが、架橋を誘導するために必要な熱を提供しうる。付加製造プロセス中のこのような架橋は、物品のz方向における層間接着を改善すると考えられる。
【0088】
加えて、好ましくは、付加製造プロセスによってプリント物品が完全に形成されると、最終的な熱硬化ステップが行われ、プリント物品がさらなる架橋を進めうる。このような熱硬化ステップは、オートクレーブ中で、好ましくは長時間にわたって行われうる。所望される温度および時間は、選択された芳香族ポリマー、ならびに所望される架橋の程度、および触媒または架橋添加剤の有無、ならびに付加製造初期の物品形成ステップにおいて既に行った架橋の程度に応じて異なりうる。したがって、加工温度は、ポリマーおよび所望される最終的な特性によって規定されることになる。好ましくは、架橋性ポリマー組成物の架橋の大部分は、プリント物品の最終的な熱硬化中に起こる。
【0089】
芳香族ポリマーを架橋することは、プリント物品の層間の接着の増加を提供し、これによって、プリント物品に、引張強度および弾性率などの機械的特性において改善された等方性を提供すると考えられる。上に論じた改善された機械的特性に加えて、架橋ポリマー組成物から構成される得られるプリント物品は、非改質、非架橋のベースポリマーの使用と比較して改善された電気的特性、熱的特性、例えば高いガラス転移温度および熱変形温度(「HDT」)、ならびに化学的特性、例えば様々な溶媒への耐性および/または耐放射線性、高温性能を有すると考えられる。例えば、ポリアリールエーテルは一般に、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に溶解することができるが、架橋ポリアリールエーテルは、NMP中に溶解しない。
【0090】
従来の非架橋ポリマーを使用する付加製造プロセスにおいて、プリント物品の層は、主に、ポリマーの拡散により、層同士が互いの中に相互混合または溶融することによってつなぎ合わさる。本発明の架橋性ポリマー組成物は、プリント物品を形成するために使用する場合、ポリマーの拡散によって、加えてプリント物品の層間の結合および/または架橋の形成によって、つなぎ合わせられた層を有する。
【0091】
主として、本出願の架橋性ポリマー組成物によって形成される物品における改善された層間接着は、プリント物品の隣接する層間の架橋反応の形成によって提供される。加えて、プリント物品の第1の層における架橋性化合物と、隣接層における架橋性化合物との自己縮合反応が、層間接着に寄与し、層間接着を促進および/または強化すると考えられる。架橋性化合物がヒドロキシル官能性を含む実施形態、すなわち、R1、R2、またはR3基を有し、これがヒドロキシル基である架橋性化合物を使用する実施形態では、ヒドロキシル官能性は、ヒドロキシル基の極性に起因して、層間接着を増加させるのにさらに寄与しうる。
【0092】
架橋は、各プリント層内、およびプリント物品の隣接する層同士の間で起こりうる。レーザーを使用した粉末化材料の溶融など、付加製造プロセスによって提供される熱は、層内で起こる架橋の量と比較して、より多量の、層同士の界面において起こる架橋をもたらしうる。しかしながら、架橋の範囲および架橋の位置は、層内または隣接する層同士の界面のいずれにおいても、ポリマーのタイプ、温度、および層の厚さを含む様々な要素に依存する。
【0093】
本発明の架橋性ポリマー組成物は、様々なプリント物品のいずれかを調製するために使用されうる。架橋性ポリマー組成物から形成されたプリント物品は、極端な温度環境における部品および製造品として、特に有用でありうる。関連部分において、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第9,006,353B2号は、架橋有機ポリマーの改善された高温性能を記載しており、この架橋ポリマーは、最高約500℃またはそれよりも高い熱安定性を有する。
【0094】
本出願の架橋性ポリマー組成物は、石油およびガスの掘削および採集、半導体加工、航空宇宙センサーの構成要素およびハウジングを含む航空宇宙用途、電気モータ構成要素、電子機器の筐体、環境制御システムのためのダクト材料および管材料、構造ブラケット、エンジン構成要素、自動車用途、医療装置および補綴、建設、ならびにとりわけ、消費者製品を含む、多様な産業における使用および多様な最終用途における使用のためのプロトタイプ、部品、および交換部品を形成するために使用されうる。例えば、ダウンホール用途において、架橋性ポリマー組成物は、包装;複合セル;コネクター;Oリング、Vリング、Uカップ、ガスケット、ベアリング、バルブシート、アダプター、ワイパリング、シェブロンバックアップリングを含むシーリングアセンブリ;および管材料を形成するために使用されうる。
【0095】
物品の層同士を横切るものと層全体にわたるものとの両方で本明細書において提供される架橋能力は、架橋密度の上昇を提供し、耐溶媒性、耐化学物質性、および耐放射線性、物理的特性(例えば、引張強度および弾性率)、電気的特性、熱的特性(Tg/HDT)、ならびに熱-電気特性にも寄与すると考えられる。
【0096】
ここに本発明を、以下の非限定例に関して、さらに記載する。
【実施例】
【0097】
架橋可能なPAEKを使用して、異なるサイズの引張バーおよびダブルカンチレバービーム(DCB)を含む、異なる外形を有する試験供試体を形成した。供試体は、様々なオープンソースFFF三次元プリンタを使用してプリントすることによって、形成した。一般的なプリンティング条件は、0.4mmのノズルサイズの使用、360℃~425℃の押出機温度、100℃~200℃の構築プレート温度、50℃~150℃のチャンバ温度、0.1~0.4mmの層の高さ、および20mm/秒~300mm/秒のプリンティングスピードであった。本発明によるiso引張バーおよびDCBビームの実施例は、Intamsys(C)Funmat HTTM 3Dプリンタを使用して、40mm/秒のプリンティングスピードによって、360℃の押出機温度、70℃のチャンバ温度、160℃のプレート温度、0.2mmの層の高さにおいてプリントした。American Standard Testing Method(ASTM)T1バーの実施例は、HSE HT三次元プリンタを使用して、425℃の押出機温度、50℃のチャンバ温度、105℃のプレート温度、0.2mmの層の高さ、および30mm/秒のプリンティングスピードによってプリントした。細目は、後続の実施例に詳述する。
【0098】
下の様々な実施例における参照材料として調製した射出成形バーは、米国特許第9,109,080号に記載されるように、架橋性化合物および架橋制御添加剤とを含む、架橋ポリアリーレンを使用して調製した。
【0099】
Arlon3000XT
TM試験供試体(ASTM D-638(タイプ1引張バー)およびASTM D-790(屈曲バー))の射出成形は、Arburg 44トン液圧式射出成形プレスおよびホットスプルーハウジングによって、市販のArlon3000XT
TMペレットを使用して実行した。表1に指示する温度プロファイルを使用し、表2に示すプロセス設定を使用して、材料を射出した。
表1
【表1】
表2
【表2】
【0100】
75秒間の平均サイクル時間の間、射出圧力を13,000psiを超えないように保ち、材料クッションは0.1インチ3であった。
(実施例1)
【0101】
架橋性ポリマー組成物を使用して強化された層間結合。
【0102】
射出成形された屈曲バーを、市販の架橋可能なArlon 3000ペレット(架橋化合物配合物を有する5000グレードPAEK)から調製した。結合実験のために接触して置かれる領域をサンドペーパーによって磨き、供試体のスキン層からのいずれの異物混入も除去した。バー同士を重ねて、3×0.5インチ
2の重なり領域を有する重ねせん断試験クーポンを形成した。ASTM D-3163に従って、15psiの接触圧力を発生させる真空バッグ、および980psiの圧力を発生させる圧縮永久ひずみブロックにおいて、自己接着試験を実行した。試験供試体を、Arlon 3000XT
TM後硬化サイクルに供して架橋剤を活性化させ、サイクルの後、硬化供試体と非硬化供試体との両方において、接着試験を実行した。接触面積によって除算した破断時の力として、接着強度を計算し、結果は、
図2に見ることができる。
【0103】
後硬化の後、層間の架橋によって結合の強度が350%超増加し、このことは、非架橋の射出成形部品と比較して、層間接着が改善されたことを示す。
(実施例2)
【0104】
二軸スクリュー押出機による架橋可能なフィラメントの作製
【0105】
ポスト製造用フィラメントを作製するため、化学架橋剤として17%の米国特許第9,006,353号の実施例2の架橋性化合物、架橋を制御するための0.1%の酢酸リチウムを、二軸スクリュー押出機において調合した高粘度5000P PAEKからなる残りの化合物のバルクとともに含有する、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料の架橋性ブレンドから、架橋能がある三次元プリンティングペレットを調製し、これはArlon 3000XTTMペレットとして市販されている。このような材料に関する詳細については、それぞれ関連部分において、本明細書に組み込まれる、米国特許第9,006,353号および同第9,109,080号を参照されたい。
【0106】
材料をフィラメントに変換するため、46:1のスクリュー長さの直径に対する(L/D)比、D=1インチ(25mm)、および10個の加熱ゾーンを有する、第2の二軸スクリュー押出機にペレットを供給し、この二軸スクリュー押出機は、搬送(運搬)要素、およびベント口の前に位置する混合セクションから主になるスクリュープロファイルによって使用した。材料は、36:1の有効L/Dのため、4つのゾーンだけ下流で、往復動(スクリュー)供給装置によってサイド供給した。
【0107】
各ゾーンにおいて10~20℃の範囲を有する押出機において、次の押出機温度プロファイル、すなわち、熱プロファイル(℃における)を使用した。
表3
【表3】
【0108】
押出しの前に最小で4時間、250°F(120℃)において材料を乾燥させた。
【0109】
75rpmのスクリュースピードを使用して、5~7kg/時間の材料の供給速度に適合させた。出力は、スプールの開始時には5kg/時間であり、スプーリングが開始すると7kg/時間まで増加した。
【0110】
押出物を牽引機(puller)によって引き、一連の空気浴および水浴を通して冷却して、1750±75μmの目標フィラメント直径および0+0.1楕円度の楕円度を達成したが、ここで、楕円度とは、レーザーによって取得した3回の直径測定値の平均と、最長測定値との間の差の絶対値である。
【0111】
三次元プリンティングにおける使用のため、上のプロセスを使用して、およそ5キログラムの重量を有する、およそ5,430ft(1650m)のフィラメントを製造した。サンプルフィラメントを
図3に示す。
(実施例3)
【0112】
一軸スクリュー押出機によるフィラメントの押出し。
【0113】
実施例1のように、市販の架橋可能なPAEKペレットを、一軸スクリューによって溶融押出しして、フィラメントを生成した。この実施例においては、3/4インチ一軸スクリュー押出機を使用した。一般的な加工条件を、下の表4に示す。押出機温度として、実施例2の好ましい押出機条件を使用し、ダイ温度は350℃であった。押出しスピードは約40rpmであった。
表4
【表4-1】
【0114】
得られたフィラメントは、三次元プリンティング産業の仕様についての要求事項を満たしており、三次元プリンティングに適格である。
(実施例4)
【0115】
改善された特性および改善された積層内強度を示す、架橋可能なフィラメントからのFFF三次元プリント物品。
【0116】
三次元プリントした複数の引張バーを同じ後硬化サイクルに供し、ASTM D-638に従って、引張強度および弾性率について試験した。ASTM D-5528に従って、硬化および非硬化供試体に対するダブルカンチレバービーム(DCB)試験も実行して、亀裂の開始および伝播までの積層内耐性を決定した。DCB試験のための供試体を、標準に従った寸法にした。開口を導入するため、プリンティングプロセス中に、厚さ30μmのKaptonテープを中央平面に挿入して、プリンティングプロセスが完了した後に除去した。ASTM D-5528の通りに、剃刀の刃を使用して開口を所望の予亀裂長さに拡張した。測定値は、亀裂成長の単位面積当たりに散逸したエネルギー、GI(接着破壊エネルギー)であった。非硬化供試体に対して正規化した、両方の試験の結果を表5(3DプリントArlon 3000XT
TMのRT引張特性および接着エネルギーを示す)に示し、
図4にDCB試験後の実施例供試体として示す。
図4を参照して、上に示される供試体は標準FFF PEEKから形成され、下の試験供試体は、Arlon 3000XT
TMを使用した架橋性配合物から形成される。上の標準的な従来技術のサンプルは、架橋材料を作製するために使用したものと同じ条件下でプリントした場合、剥離を有していることに留意されたい。
表4
【表4-2】
【0117】
サンプルの後硬化は、引張特性の約25%の増加、三次元プリント層間の亀裂を伝播するのに要求されるエネルギーの70%の増加、層の剥離の有意な減少をもたらした。
【0118】
架橋した場合の特性における改善を実証するため、表5において、三次元プリント供試体を、その射出成形した対応物とも比較した。
表5
【表5】
【0119】
三次元プリント部品を架橋することによって、従来の射出成形によって物品に形成された場合の特性に対して、三次元プリント形態における非架橋PAEKによって呈される、プリンティングプロセスに起因すると考えられる特性の損失(ときとして、「特性ノックダウン」とも呼ばれる)の解消をもたらした。
【0120】
後硬化サイクルの前後の、三次元プリントPEEKおよびArlon 3000XT
TMのバーの二次元CTスキャン画像を、
図5に示す。
図5において、左にある2D CTスキャンは、後硬化前のPEEK(A)および架橋可能なArlon 3000(B)であり、右にあるのは、後硬化後のPEEK(A)およびArlon 3000XT
TMである。これは、後硬化の前後いずれも、架橋プリント物品に検出可能な多孔性がなかったことを実証している。
(実施例5)
【0121】
架橋可能なPAEKのFFFプリントバー
【0122】
YXの向きにおける、PEEKおよびArlon 3000の三次元プリントASTM T1バーを、商業的な高温ポリマーFFFプリンタにおいて作製した。プリンティング条件は、次の通りであった:押出機温度360℃~425℃;構築プレート温度100℃~200℃;チャンバ温度50℃~150℃;層の高さ0.1~0.4mm;プリンティングスピード:20~300mm/秒。形成されたバーを
図6に示す。
図6において、左のバーはFFFプリントPAEKバーを表し、右のバーは、実施例1および2において言及した条件下で調製したフィラメントを使用して形成した、架橋可能なPAEKバーである。
(実施例6)
【0123】
3Dプリンティング用途のための架橋可能なPAEK配合物の改善された加工性。
【0124】
架橋可能なPAEKならびに標準PAEKおよびPEEKペレットのレオロジー挙動を、25mm平行プレートの外形を使用して、ARES G2レオメータ(TA Instrumentsから)においてプリフォームを作製することによって評価した。N2下、380℃における、ペレットの経時的なレオロジー挙動の変化を記録した。振動条件は、0.1%ひずみ/1Hzとして選択した。
【0125】
図7は、架橋可能なPAEKおよび標準PAEKのレオロジースキャンを示す。架橋性配合物は有意に低い粘度を有し、これは、加工時間の規模における、より良好な溶融加工性を示している。15分後に架橋が始まり、24分後、粘度がニートPEEKの粘度を超える点まで、架橋が発展した(
図7)。
【0126】
Arlon 3000XTTMおよびPEEKフィラメントの熱転移挙動を、DSC(Discovery、TA instruments)によって検討した。加熱/冷却/加熱サイクルを選択した。冷却段階における結晶化温度、および第2の加熱におけるガラス転移温度を記録した。第1の加熱温度は20℃/分において380℃までであり、10℃/分における50℃までの冷却、次いで、20℃/分における400℃までの第2の加熱が続いた。
【0127】
図8は、同じ材料についてのDSCにおける冷却曲線を示す。Arlon 3000XT
TMについては、結晶化の開始がより遅く、エンタルピー(ピーク面積)がより低いことに留意されたい。
図8におけるデータは、より低いT
g(Arlon 3000XT
TMにおける148℃対PEEKにおける152℃)、および低減した結晶化温度(より遅い結晶化速度を示す;架橋可能なPAEKにおける287℃対標準PEEKにおける289℃)を示している。これらの特性は、加工性を改善するために非常に役に立つ。例えば、鎖の規則性を低減させ、結晶化を抑制するために、より遅く結晶化するように設計されたPEKK材料(低いエーテル/ケトン比、ならびにテレフタルモノマーおよびイソフタルモノマーによるコポリマー構造を有する、Arkema
TM Kepstan
TM 6002)(Kepstan
TM 6000データシート:https://www.arkema.com/export/shared/.content/media/downloads/products-documentations/incubator/arkema-kepstan-6000-tds.pdfを参照されたい)。
【0128】
図9は、フィラメントのDSCの加熱曲線を提供し、第2の加熱におけるT
gシフトによって架橋能力を示しているが、これは、架橋配合物から三次元プリントした物品のプリンティングおよび後硬化後の熱的特性を示している。
【0129】
その広範な発明概念から逸脱することなく、上に記載した実施形態への変更をなしうることを、当業者は認識する。そのため、この発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲内の修正形態を含むことを意図することが理解される。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
付加製造法における使用のための架橋性ポリマー組成物であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと、
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物と
を含む、架橋性ポリマー組成物。
(項2)
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、およびこれらのブレンドから選択される、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項3)
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、その主鎖に沿って、式(I):
【化22】
[式中、Ar
1
、Ar
2
、Ar
3
、およびAr
4
は、同一のまたは異なるアリール基であり、m=0~1であり、n=1-mである]
による構造を有するポリマー繰り返し単位を含むポリ(アリーレンエーテル)である、上記項2に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項4)
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、その主鎖に沿って、式(II):
【化23】
の構造を有する繰り返し単位を有する、上記項3に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項5)
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが、ポリアリーレンエーテルまたはポリアリールエーテルケトンである、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項6)
前記ポリアリールエーテルケトンが、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトンの群から選択される、上記項5に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項7)
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、次の式:
【化24】
[式中、Aは結合、約10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分であり;R
1
、R
2
、およびR
3
は同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH
2
)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択され;mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しく;Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択され;xは約1~約6である]
のうちの1つによる構造を有する、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項8)
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(IV)による構造を有し、
【化25】
【化26】
からなる群から選択される、上記項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項9)
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(V)による構造を有し、
【化27】
からなる群から選択される、上記項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項10)
前記少なくとも1種の架橋性化合物が、式(VI)による構造を有し、
【化28】
からなる群から選択される、上記項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項11)
Aが、約1,000g/mol~約9,000g/molの分子量を有する、上記項7に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項12)
Aが、約2,000g/mol~約7,000g/molの分子量を有する、上記項11に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項13)
少なくとも1種の架橋性化合物が、前記架橋性ポリマー組成物中に、前記架橋性ポリマー組成物の非充填重量の約1重量%~約50重量%の量で存在する、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項14)
前記芳香族ポリマー対前記架橋性化合物の重量比が、約1:1~約100:1である、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項15)
前記芳香族ポリマー対前記架橋性化合物の重量比が、約3:1~約10:1である、上記項14に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項16)
硬化抑制剤および硬化促進剤から選択される架橋反応添加剤をさらに含む、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項17)
前記架橋性化合物の0.01重量%~5重量%の量で前記架橋反応添加剤を含む、上記項16に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項18)
前記架橋反応添加剤が硬化抑制剤であり、酢酸リチウムである、上記項16に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項19)
前記架橋反応添加剤が硬化促進剤であり、塩化マグネシウムである、上記項16に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項20)
連続もしくは不連続の、長繊維もしくは短繊維である、炭素繊維、ガラス繊維、織物状ガラス繊維、織物状炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、セラミック繊維、ポリアミド繊維から選択される強化繊維;ならびに/またはカーボンブラック、シリケート、繊維ガラス、硫酸カルシウム、ホウ素、セラミック、ポリアミド、アスベスト、フルオログラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、窒化アルミニウム、ホウ砂(ナトリウムホウ砂)、活性炭、パーライト、テレフタル酸亜鉛、グラファイト、グラフェン、タルク、マイカ、炭化ケイ素のウィスカもしくは小板、ナノ充填材、二硫化モリブデン、フルオロポリマー充填材、カーボンナノチューブおよびフラーレンチューブから選択される1つもしくは複数の充填材から選択される1つまたは複数の添加剤をさらに含む、上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項21)
前記ポリマー組成物が、約0.5重量%~約65重量%の、前記1つもしくは複数の添加剤および/または1つもしくは複数の充填材を含む、上記項20に記載の架橋性ポリマー組成物。
(項22)
上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物を使用して、付加製造プロセスによってプリントされる、物品。
(項23)
前記物品が、同じ主鎖構造を有する架橋されていない芳香族ポリマーによって形成される物品と比較して改善された層間接着を有する、上記項22に記載の物品。
(項24)
前記物品が、同じ主鎖構造を有する架橋されていない芳香族ポリマーによって形成される物品と比較して機械的特性における改善された等方性を有する、上記項22に記載の物
品。
(項25)
前記物品が、選択的レーザー焼結によって形成される、上記項22に記載の物品。
(項26)
前記物品が、溶融フィラメント製造によって形成される、上記項22に記載の物品。
(項27)
上記項1に記載の組成物から形成される架橋組成物であって、同じ芳香族ポリマーから形成されるが架橋されていない組成物と比較して、低い粘度および低減した結晶化速度を有する、架橋組成物。
(項28)
上記項1に記載の組成物から形成される架橋組成物であって、前記架橋組成物を物品に後硬化させることが、プリントフィラメントから形成される、または射出成形によって形成される層の間に、同じ芳香族ポリマーから形成される非架橋組成物と比較して改善された接着結合をもたらす、架橋組成物。
(項29)
付加製造プロセスにおける使用のための付加製造用組成物であって、前記組成物が、少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を含む、付加製造用組成物。
(項30)
付加製造法における使用のための架橋性ポリマー組成物を調製するための方法であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを準備すること、および
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の架橋性化合物とを合わせること
を含む、方法。
(項31)
前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを合わせて、その結果、前記架橋性ポリマー組成物が実質的に均一になることをさらに含む、上記項30に記載の方法。
(項32)
前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを、機械的ブレンディングによって合わせることをさらに含む、上記項30に記載の方法。
(項33)
前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを共通の溶媒中に溶解させること、および
蒸発によってまたは非溶媒を加えることによって前記共通の溶媒を除去して、前記芳香族ポリマーと前記架橋性化合物とを前記共通の溶媒から析出させること
をさらに含む、上記項30に記載の方法。
(項34)
物品を形成するための付加製造プロセスにおける使用のための架橋芳香族ポリマーであって、少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物との反応生成物である、架橋芳香族ポリマー。
(項35)
前記芳香族ポリマーが、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリフタルアミド、ポリアミド-イミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、およびこれらのブレンドの群から選択される、上記項34に記載の架橋芳香族ポリマー。
(項36)
前記架橋性化合物が、次の式:
【化29】
[式中、Aは結合、約10,000g/mol未満の分子量を有するアルキル、アリール、またはアレーン部分であり;R
1
、R
2
、およびR
3
は同じであり、または異なり、水素、ヒドロキシル(-OH)、アミン(NH
2
)、ハライド、エステル、エーテル、アミド、アリール、アレーン、または1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和アルキル基からなる群から独立して選択され;mは0~2であり、nは0~2であり、m+nは0超であるかまたは0に等しく、かつ2未満であるかまたは2に等しく;Zは、酸素、硫黄、窒素、および1~約6個の炭素原子の、分枝鎖状または直鎖の、飽和または不飽和アルキル基の群から選択され;xは約1~約6である]
のうちの1つによる構造を有する、上記項34に記載の架橋ポリマー。
(項37)
付加製造プロセスによって物品を調製する方法であって、
上記項1に記載の架橋性ポリマー組成物を準備すること、および
付加製造プロセスにおいて前記架橋性ポリマー組成物を利用して、プリント物品を調製すること
を含む、方法。
(項38)
前記付加製造プロセスが、粉末床溶融法である、上記項37に記載の方法。
(項39)
前記付加製造プロセスが、材料押出法である、上記項37に記載の方法。
(項40)
付加製造プロセスによって調製される物品における、層間の接着を改善する方法であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、
前記架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること、ならびに
前記付加製造プロセス中および/または前記付加製造プロセス後に、前記架橋性芳香族ポリマー組成物に熱をかけて、前記架橋性化合物による前記芳香族ポリマーの架橋を誘導すること
を含む、方法。
(項41)
付加製造プロセスによって調製される物品の機械的特性における等方性を改善する方法であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、
前記架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること、ならびに
前記付加製造プロセス中および/または前記付加製造プロセス後に、前記架橋性芳香族ポリマー組成物に熱をかけて、前記架橋性化合物による前記芳香族ポリマーの架橋を誘導すること
を含む方法。
(項42)
付加製造プロセスにおける芳香族ポリマーの加工性を改善する方法であって、
少なくとも1種の芳香族ポリマーと前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物とを含む架橋性芳香族ポリマー組成物を準備すること、および
前記架橋性芳香族ポリマー組成物を付加製造プロセスに導入して、プリント物品を調製すること
を含み、前記組成物が、同じ芳香族ポリマーを有するが前記少なくとも1種の架橋性化合物を欠いている芳香族ポリマー組成物の使用と比較して低減した粘度を呈する、方法。
(項43)
付加製造法における使用のための架橋ポリマー組成物であって、
熱的に誘導された架橋、グラフト架橋、および化学架橋のうちの少なくとも1つによって架橋された、少なくとも1種の芳香族ポリマー
を含む、架橋ポリマー組成物。
(項44)
前記少なくとも1種の芳香族ポリマーが化学的に架橋され、前記組成物が、前記少なくとも1種の芳香族ポリマーを架橋することができる少なくとも1種の架橋性化合物をさらに含む、上記項43に記載の付加製造法における使用のための架橋ポリマー組成物。