(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】燃料電池システムの加熱方法および燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0612 20160101AFI20240730BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240730BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240730BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240730BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240730BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240730BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240730BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20240730BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240730BHJP
【FI】
H01M8/0612
H01M8/04302
H01M8/04225
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/04701
C01B3/38
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2021518608
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 AT2019060391
(87)【国際公開番号】W WO2020102837
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521104458
【氏名又は名称】エイヴィエル リスト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AVL List GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans-List-Platz 1, 8020 Graz, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソウクップ, ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】ハウス, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ザイドル, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイセンシュタイナー, ステファン
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-22234(JP,A)
【文献】特開2009-59668(JP,A)
【文献】特開2019-169256(JP,A)
【文献】特開2011-81972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード部(3)およびカソード部(4)を備える少なくとも1つの燃料電池スタック(2)と、燃料を用いて水蒸気改質を行う前記アノード部(3)上流の改質器(5)と、を有する燃料電池システム(1a;1b;1c;1d)の加熱方法であって、前記改質器(5)は、ニッケル系触媒を含み、
-加熱装置(6)を用いて前記燃料電池システム(1a;1b;1c;1d)を加熱する加熱工程を開始するステップと、
-前記加熱工程において、前記改質器(5)のニッケル系触媒に炭素含有流体を送り、かつ水蒸気を送るステップと、
を有
し、
加熱工程中の炭素含有流体として、前記燃料電池システム(1a;1b;1c;1d)の通常動作における水蒸気改質時に使用される燃料量の5%から20%の間の燃料量の燃料が使用されることを特徴とする方法。
【請求項2】
水蒸気は、前記燃料電池システム(1a;1b;1c;1d)の所定の閾値温度以上で前記ニッケル系触媒に送られることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
炭素含有流体として
、メタン、天然ガスまたはLPG
を含む燃料が使用されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱装置(6)は、前記改質器(5)の熱交換器と、少なくとも1つの燃料電池スタック(2)からのカソード排気ガスおよび/またはアノード排気ガスを燃焼させるアフターバーナ(7)と、を有し、加熱工程中に前記改質器(5)を加熱するために、前記アフターバーナ(7)下流の前記熱交換器の高温側に、アフターバーナ排気ガスが供給されることを特徴とする、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水蒸気と燃料の形態の炭素含有流体とが、前記改質器(5)の上流のアノードガス供給管(8)を介して、燃料/水蒸気混合物として前記改質器(5)に送られることを特徴とする、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記改質器(5)の上流で、前記アノードガス供給管(8)に、燃料を前記改質器(5)に搬送するための流体搬送装置(9)が構成され、前記アノードガス供給管(8)に隣接して、前記アノードガス供給管(8)に水蒸気を供給するための水蒸気供給管(10)が構成され、水蒸気は、加熱工程中に前記水蒸気供給管(10)に送られ、前記流体搬送装置(9)の下流で前記アノードガス供給管(8)に導入され、燃料と混合されることを特徴とする、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記アノードガス供給管(8)における前記改質器(5)の上流に、前記改質器(5)に燃料を搬送するための流体搬送装置(9)が構成され、前記アノードガス供給管(8)に隣接して、前記アノードガス供給管(8)に水蒸気を供給するための水蒸気供給管(10)が構成され、水蒸気は、加熱工程中に前記水蒸気供給管(10)に送られ、前記流体搬送装置(9)の
上流で前記アノードガス供給管(8)に導入され、燃料と混合されることを特徴とする、
請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記アノードガス供給管(8)における前記改質器(5)の上流に、前記改質器(5)に燃料を搬送するための流体搬送装置(9)が構成され、前記アノードガス供給管(8)に隣接して、前記アノードガス供給管(8)に水蒸気を供給するための水蒸気供給管(10)が構成され、前記水蒸気供給管(10)に排気ガス熱交換器(11)の高温側が
接続され、水蒸気は、加熱工程中に前記水蒸気供給管(10)および前記排気ガス熱交換器(11)の高温側に送られ、前記流体搬送装置(9)の下流または上流で、前記アノードガス供給管(8)に導入され、燃料と混合されることを特徴とする、
請求項
5から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された燃料電池システム(1a;1b;1c;1d)であって、アノード部(3)およびカソード部(4)を有する少なくとも1つの燃料電池スタック(2)と、前記アノード部(3)の上流に設けられ、燃料を水蒸気改質する改質器(5)と、を有し、前記改質器(5)はニッケル系触媒を含む、燃料電池システム(1a;1b;1c;1d)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム、特に固体酸化物燃料電池システムの加熱方法、および関連する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物燃料電池システムがフルパワーで作動できるようになる前に、作動温度に到達させる必要がある。これは、固体酸化物燃料電池システムの加熱動作または開始動作で行われる。公知の固体酸化物燃料電池システムは、アノード部およびカソード部を備える少なくとも1つの燃料電池スタックと、少なくとも1つの燃料電池スタックの上流にある改質器と、を有する。また、水蒸気改質用の改質器がニッケル系触媒を搭載していること、または、改質器がニッケル改質器の形態で構成されていることが公知である。加熱動作中にニッケルが酸化するのを防ぐために、公知のシステムのニッケル系触媒には、例えば炭素含有ガスの形態でパージガスまたは保護ガスが還流する。すなわち、ニッケル系触媒には加熱動作中適度に還元性環境が形成される。炭素析出を回避するために、炭素含有ガスに追加で酸素含有ガスを供給することができる。これによって、炭素含有ガスの炭素が酸化され、二酸化炭素の形態で改質器から移送される。すなわち、加熱動作中に酸素を含むガスを供給することによって、炭素含有ガスの炭素を結合することができる。これによって、炭素析出を防ぐことができる。
【0003】
しかし、ニッケル系触媒を使用する場合、加熱動作中にニッケルの還元を維持して酸化させないようにするために、追加措置が必要であることがわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、前述の問題を少なくとも部分的に考慮することである。特に、本発明の課題は、改質器にニッケル系触媒を有する燃料電池システムの加熱方法であって、燃料電池システムの加熱動作中に、システム内において容易な方法でニッケルを還元されたままにし、酸化させない方法を提供することである。また、本発明の課題は、このような方法を実行するために相応に構成された燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の課題は、特許請求の範囲によって解決される。特に、前述の課題は、請求項1にかかる方法および請求項10にかかる燃料電池システムによって解決される。本発明のさらなる利点は、従属請求項、明細書、および図面からわかる。ここで、方法に関連して記載された特徴および詳細は、当然ながら、本発明にかかる燃料電池システムに関連しても該当し、それぞれその逆もまた同様であるため、本発明の個々の態様についての開示に関しては、常に相互に参照することが可能である。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、アノード部およびカソード部を備える少なくとも1つの燃料電池スタックと、燃料を用いて水蒸気改質を行うアノード部上流の改質器と、を有する燃料電池システムの加熱方法であって、改質器は、ニッケル系触媒を含む加熱方法が提供される。この方法は、以下のステップを有する。
-加熱装置を用いて燃料電池システムを加熱する加熱工程を開始するステップ、
-加熱工程において、改質器のニッケル系触媒に炭素含有流体を送り、かつ水蒸気を送るステップ。
【0007】
水蒸気によって、加熱工程中のニッケル系触媒に酸素を供給する。しかし、先行技術で公知な方法とは対照的に、水蒸気中の酸素は化学的に結合して提供される。これによって、酸素が還元されたニッケルとすぐに化合することを防ぐことができる。
【0008】
本発明の範囲では、水蒸気中で結合した酸素は、結合していない酸素と同様に、生成された炭素と結合し、対応する析出を回避するのに適しており、残りの水素は、ニッケルが還元されたままで酸化しないことをもたらすことがわかった。炭素析出を回避するために、水蒸気は定義された水蒸気/炭素の比率で供給されるが、一定の安全性を確保するために、水の比率を平衡状態よりも少し高く選択することができる。
【0009】
本発明は、好ましくは、固体酸化物燃料電池システム、特に据置型固体酸化物燃料電池システムの加熱方法に関する。この方法は、好ましくは、約30~70、好ましくは約50重量パーセントのニッケルを有するニッケル系触媒を用いて行われる。すなわち、ニッケル系触媒とは、相応のニッケル含有量を有する触媒である。
【0010】
加熱工程とは、特に燃料電池システムの開始工程の範囲において、燃料電池システムを加熱する工程であると理解できる。加熱工程は、好ましくは、改質器が所定の動作温度、例えば400℃から600℃の間の範囲、特に500℃から550℃の間の範囲に加熱されるまで実行される。
【0011】
約50℃以上の温度で、改質器において、酸素の存在下でニッケルの酸化が起こる。これは望まれることではない。酸化されたニッケルは、水蒸気改質によって平衡組成をもたらすことができるように、燃料電池システムの作動中に再び還元される必要がある。すなわち、触媒全体を再度還元する必要がある。これは長い時間がかかり、その際に触媒の構造が損傷する場合がある。ニッケルの酸化を最小限の可逆的なレベルに保つために、改質器または改質器のニッケル系触媒は、本発明によれば炭素含有流体を加え、これによって触媒で酸素を排除することができる。
【0012】
燃料とは、特に炭化水素含有燃料であると理解できる。加熱装置は、燃料電池システムの異なる位置に複数の加熱手段を有することができる。
【0013】
炭素含有流体および水蒸気は、流体搬送装置によって改質器のニッケル系触媒に送られる。流体搬送装置は、液体および/または気体の流体を搬送または誘導するためのポンプおよび/または送風機を有することができる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態によれば、ある方法において、燃料電池システムの所定の閾値温度以上で水蒸気をニッケル系触媒に送ることが可能である。閾値温度は、好ましくは、燃料電池システムの周辺または周辺温度および/または燃料電池システムの作動状態に応じて定義される。目的は、水蒸気を可能な限り気体のままにして、水の沈殿を回避することである。したがって、周辺気圧、およびその他の目立たない環境条件および/または作動状態において、閾値温度を少なくとも100℃の値に設定することができる。好ましくは、閾値温度は、約100℃から約110℃の間の値に定義される。水蒸気の有利な効果を可能な限り早く、または長く利用できるようにするために、温度はあまり高く選択するべきでない。本発明の範囲における実験では、燃料電池システムを破損することなく加熱工程中に局所的に蒸発させることができるため、わずかな水の沈殿は受け入れられることが示された。
【0015】
さらに、本発明にかかる方法では、燃料、特にメタン、天然ガスまたはLPGを炭素含有流体として使用することが可能である。すなわち、燃料電池システムのその後の通常動作、すなわち燃料電池システムを用いて発電する動作と同じ燃料が使用される。開始動作および通常動作に同じ燃料を使用することで、燃料電池システムを効率的に作動させることができる。別個の、および/または追加の燃料タンクおよび/または燃料源は省略してもよい。蒸発工程を省略するために、好ましくは気体燃料のみが使用される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、加熱工程中の炭素含有流体として、燃料電池システムの通常動作における水蒸気改質時に使用される燃料量の5%から20%の間の燃料量を使用することが可能である。すなわち、燃料使用量は、通常動作時と比較して相対的に低く維持される。これによって、改質器の下流にある少なくとも1つの燃料電池スタックが吸熱改質によって冷却され、それに伴って加熱工程が抑制されることを回避できる。
【0017】
さらに、本発明にかかる方法では、加熱装置は、改質器の熱交換器と、少なくとも1つの燃料電池スタックからのカソード排気ガスおよび/またはアノード排気ガスを燃焼させるアフターバーナと、を有し、加熱工程中に改質器を加熱するために、アフターバーナ下流の熱交換器の高温側にアフターバーナ排気ガスが供給される。アフターバーナの排気ガスを利用して、改質器を特に効率よく加熱することができる。アフターバーナは、少なくとも1つの燃料電池スタックの下流に配置され、アノード部の流体出口およびカソード部の流体出口とそれぞれ流体連通している。
【0018】
本発明にかかる方法では、水蒸気と燃料の形態の炭素含有流体とが、改質器の上流のアノードガス供給管を介して、燃料/水蒸気混合物として改質器に送られることがさらに可能である。すなわち、水蒸気と燃料は、改質器の上流で、特に同様に改質器の上流に配置された流体搬送装置の上流で、燃料/水蒸気混合物として供給され、そこからアノードガス供給管を通って改質器の方向へ送られる。これによって、燃料電池システムにおいて、特に省スペースで軽量化されたプロセス流体導管システムを提供することができる。アノードガス供給管とは、燃料電池システムの通常動作時に、改質されるべき燃料または燃料混合物が改質器に送られる流体管であると理解できる。アノードガス供給管は、任意選択的な流体搬送装置の上流、流体搬送装置の下流、および対応して改質器の上流に構成されている。
【0019】
本発明のさらなる実施形態変形例によれば、方法において、改質器の上流で、アノードガス供給管に、燃料を改質器に搬送するための前述の流体搬送装置が構成され、アノードガス供給管に隣接して、アノードガス供給管に水蒸気を供給するための水蒸気供給管が構成されてもよく、水蒸気は、加熱工程中に水蒸気供給管に送られ、流体搬送装置の下流でアノードガス供給管に導入され、燃料と混合される。水蒸気が、流体搬送装置の下流で個別の水蒸気供給管を介してアノードガス供給管に供給されることによって、流体搬送装置は、好ましくはガス状の燃料を輸送または搬送するために構成されていればよく、これによって、この点で費用を節約することができる。水蒸気を搬送するために、それに適したさらなる流体搬送装置を水蒸気供給管に設けることもできる。さらなる流体搬送装置は、開始動作または加熱工程中にのみ起動すればよく、これによって、燃料電池システムの寿命に関して、さらなる流体搬送装置の比較的長い耐久性を達成することができる。
【0020】
さらに、本発明にかかる方法では、アノードガス供給管における改質器の上流に燃料を改質器に搬送するための流体搬送装置が構成され、アノードガス供給管に隣接して、アノードガス供給管に水蒸気を供給するための水蒸気供給管が構成されており、水蒸気は、加熱工程中に水蒸気供給管に送られ、流体搬送装置の上流のアノードガス供給管に導入され、燃料と混合されることが可能である。水蒸気を流体搬送装置の上流、特に流体搬送装置のすぐ上流のアノードガス供給管に導入することで、燃料電池システムの容易でコンパクトな設計で流体力学的な利点を得ることができる。
【0021】
また、本発明にかかる方法では、アノードガス供給管における改質器の上流に、改質器に燃料を搬送するための流体搬送装置を構成し、アノードガス供給管に隣接して、アノードガス供給管に水蒸気を供給するための水蒸気供給管を構成することができ、水蒸気供給管に排気ガス熱交換器の高温側が構成され、水蒸気は、加熱工程中に水蒸気供給管および排気ガス熱交換器の高温側を通り、流体搬送装置の下流または上流でアノードガス供給管に導入され、燃料と混合される。これによって、加熱工程中に効率よく水蒸気を予熱することができる。排気ガス熱交換器、または排気ガス熱交換器の高温側は、改質器熱交換器、または改質器における熱交換器の高温側の下流に設けることができる。また、排気ガス熱交換器は、アフターバーナの下流、特にカソードガス供給管に配置されたカソードガス熱交換器の高温側の下流に設けることができる。すなわち、排気ガス熱交換器は、いずれにしても燃料電池システムで使用される、あるいは必要とされる熱交換器である。
【0022】
また、本発明のさらなる態様によれば、前述した方法を実施するように構成された燃料電池システムが提供される。燃料電池システムは、アノード部およびカソード部を有する少なくとも1つの燃料電池スタックと、アノード部の上流に設けられ、燃料を水蒸気改質する改質器と、を有し、改質器はニッケル系触媒を含む。
【0023】
このように、本発明にかかる燃料電池システムは、本発明にかかる方法を参照して詳述したのと同じ利点をもたらす。既に前述したように、加熱装置は、改質器の熱交換器と、少なくとも1つの燃料電池スタックからのカソード排気ガスおよび/またはアノード排気ガスを燃焼させるアフターバーナと、を有することができる。改質器の上流では、アノードガス供給管に、燃料を改質器に搬送するための流体搬送装置を配置することができる。また、アノードガス供給管に隣接して、アノードガス供給管に水蒸気を供給するための水蒸気供給管を設けることができる。水蒸気供給管には、排気ガス熱交換器の高温側を設けることができ、排気ガス熱交換器は、アフターバーナの下流、特にカソードガス供給管に配置されたカソードガス熱交換器の高温側の下流に設けられている。
【0024】
本発明を改善するさらなる手段は、図に模式的に示されている本発明の様々な実施例の以下の説明からわかる。特許請求の範囲、明細書、または図から明らかとなる、構造上の詳細や空間的な配置構成を含む特徴および/または利点は、個別でも、様々な組み合わせにおいても、本発明に不可欠である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
それぞれ以下のものが模式的に示されている。
【
図1】本発明の第1の実施形態にかかる燃料電池システムを説明するためのブロック図。
【
図2】本発明の第2の実施形態にかかる燃料電池システムを説明するためのブロック図。
【
図3】本発明の第3の実施形態にかかる燃料電池システムを説明するためのブロック図。
【
図4】本発明の第4の実施形態にかかる燃料電池システムを説明するためのブロック図。
【
図5】本発明にかかる燃料電池システムの加熱方法を説明するための曲線図。
【0026】
図1から
図4では、同じ機能と作用方法を有する要素には、それぞれ同じ参照符号が付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、第1の実施形態にかかる燃料電池システム1aを模式的に示す。燃料電池システム1aは、アノード部3およびカソード部4を有する燃料電池スタック2と、アノード部3の上流に設けられ、燃料を水蒸気改質する改質器5と、を有する。改質器5は、ニッケル系触媒を含む。燃料電池システム1aを温度調節するための加熱装置6が設けられている。加熱装置6は、改質器5の熱交換器と、燃料電池スタック2からのカソード排気ガスおよび/またはアノード排気ガスを燃焼させるアフターバーナ7と、カソードガス供給管13におけるカソードガス熱交換器12と、を含む。さらに、加熱装置6には、さらなる発熱体や機能部品が付随している場合があるが、ここではそれらについてはさらに説明しない。
【0028】
カソードガス供給管12は、カソード部4にカソード供給ガスを供給するために設けられている。カソード供給ガスとは、特に空気または他の酸素含有流体であると理解できる。アノード部3の上流には、アノードガス供給管8が構成されている。アノードガス供給管を通じて、アノードガスまたはアノード部のためのプロセス流体を、改質器またはアノード部に向けて送ることができる。すなわち、アノードガス供給管には、ガスだけでなく、アノード部用の別のプロセス流体も送ることができる。
【0029】
アフターバーナ7は、燃料電池スタック2の下流であって、カソード熱交換器12の高温側の上流に配置されている。改質器5の上流のアノードガス供給管8には、改質器5に燃料を搬送するための流体搬送装置9が構成されている。また、燃料電池システム1aは、燃料電池の排気ガス、特にアノード部3からのアノード排気ガスが再利用されたり、燃料電池スタック2の下流のアノード部に再度供給されたりする再循環経路14を有する。
【0030】
図2は、第2の実施形態にかかる燃料電池システム1bを示す。
図2に示す燃料電池システム1bは、
図1に示す燃料電池システム1aに略対応しており、アノードガス供給管8に加えて、流体搬送装置9の下流で水蒸気をアノードガス供給管8に供給するための水蒸気供給管10が構成されている。
【0031】
図3は、第3の実施形態にかかる燃料電池システム1cを示す。
図3に示した燃料電池システム1bは、
図1に示した燃料電池システム1aに略対応しており、アノードガス供給管8に加えて、流体搬送装置9の上流で水蒸気をアノードガス供給管8に供給するための水蒸気供給管10が構成されている。
【0032】
図4は、第4の実施形態にかかる燃料電池システム1dを示す。
図4に示す燃料電池システム1bは、
図1に示す燃料電池システム1aに略対応しており、アノードガス供給管8に加えて、アノードガス供給管8に水蒸気を供給するための水蒸気供給管10と、水蒸気供給管10において排気ガス熱交換器11の高温側とが構成されている。これによって、水蒸気は、加熱工程中に、水蒸気供給管10および排気ガス熱交換器11の高温側を通過した後、アノードガス供給管8に導入され、燃料と混合することができる。
【0033】
続いて、
図5を参照して、好ましい実施形態にかかる、
図4に示す燃料電池システム1dの加熱方法について説明する。これについて、まず、加熱装置6によって、燃料電池システム1dを加熱するための加熱工程が開始される。時間Z1に属する約50℃の温度T1から、燃料電池システム1dの通常動作における水蒸気改質時に使用される燃料量の約10%の燃料量のメタンが、アノードガス供給管8を介して改質器5に供給される。時刻Z2に燃料電池システムにおいて100℃を超える閾値温度T2に到達すると、水蒸気供給管10、排気ガス熱交換器11の高温側、さらにアノードガス供給管8を介して、改質器5またはその中にあるニッケル系触媒に水蒸気が供給される。200℃になると、炭素生成とそれに対応した析出が開始するが、水蒸気の供給によってそれが阻止される。燃料電池システム1dが、約520℃の温度に達した動作点Pに到達すると、加熱動作を終了する。
【0034】
燃料電池システム1dで発生させるべき電流がなくなると、燃料電池システム1dは停止される。このために、まず燃料電池システム1dの電気負荷(図示せず)を遮断し、それによって電流がゼロに近づくようにする。その後、燃料電池システム1dは、空気で冷却される。燃料供給量は、例えば、公称出力の約10%に抑えることができる。また、炭素を使わずに、平衡状態に応じて水を導入することができる。そして、アフターバーナ7では、改質ガスの完全な酸化が可能な最低温度に空気を制御する。これによって、燃料電池システム1dは冷却される。改質器の温度が例えば約200℃の目標温度に到達するとすぐに、遮断工程で行われている燃料電池排気ガスの再循環を停止し、再循環経路14を燃料ガスでパージして、水と一酸化炭素を燃料電池システムから出し、それらを酸化させる。さらに、改質器5内でのニッケル酸化物の生成や水蒸気の凝縮を防ぐか、少なくとも最小限に抑えることができる。その後、アフターバーナ7を停止し、燃料電池システム1dを空気で積極的に冷却するか、自然に完全に冷却する。これによって、改質器を損傷から保護し、必要な触媒の還元を燃料電池システム1dの次回開始時に省略または短縮することができる。ここで形成される可能性のある少量の炭素は、燃料電池システム1dの次回開始時に再生されるため、受け入れることができる。
【0035】
本発明は、図示された実施形態に加えて、さらなる設計原理を認める。すなわち、本発明は、図を参照して説明した実施例に限定して考えられるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1a-1d 燃料電池システム
2 燃料電池スタック
3 アノード部
4 カソード部
5 改質器
6 加熱装置
7 アフターバーナ
8 アノードガス供給管
9 流体搬送装置
10 水蒸気供給管
11 排気ガス熱交換器
12 カソードガス熱交換器
13 カソードガス供給管
14 再循環系路