(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G01N35/10 C
(21)【出願番号】P 2021527630
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024562
(87)【国際公開番号】W WO2020262361
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019116087
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】石岡 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】南 康雄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 智英
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 恭一
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169291(JP,A)
【文献】特開平10-123149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体処理空間内で検体を処理して測定することにより所定の分析項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、
検体が分注された複数の反応容器を回転テーブル上に保持する反応部と、
試薬を供給する複数の試薬容器を回転テーブル上に保持する試薬供給部と、
前記反応部と前記試薬供給部との間で試薬吸引ノズルを移送させる試薬移送部と、
前記試薬吸引ノズルの先端に接続される試薬吸引チップを供給するチップ供給部と、
前記試薬吸引チップを廃棄するためのチップ廃棄部と、
を備え、
前記試薬移送部は、前記チップ供給部、前記試薬供給部、前記チップ廃棄部、及び、前記反応部が一直線に沿って一列に並ぶ前記検体処理空間の領域で、試薬移送のためにこの一直線に沿って前記試薬吸引ノズルを一軸方向にのみ移動させる一軸移送ラインを形成することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記試薬吸引ノズルを洗浄するためのノズル洗浄部を更に備え、このノズル洗浄部も前記一軸移送ラインに含まれることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記チップ供給部は、前記試薬供給部に対して前記反応部及び前記ノズル洗浄部の反対側の検体処理空間外側に位置されることを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記試薬吸引チップは、導電性を有するとともに、静電容量式による試薬液面検知のために使用されることを特徴とする請求項1または3のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試薬吸引チップが前記試薬吸引ノズルの基部に接続されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記ノズル洗浄部と前記チップ廃棄部とが前記試薬供給部及び前記反応部の間で、前記ノズル洗浄部は前記試薬供給部よりで、前記チップ廃棄部は前記反応部よりに設けられていることを特徴とする
請求項2に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などのサンプル(検体)を種々の試薬で処理して測定することにより様々な分析項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固分析装置や、免疫測定法を用いた分析測定装置など、血液や尿などの生体サンプルを種々の試薬で処理して測定することにより様々な分析項目に関して測定情報を得ることができる自動分析装置は、従来から様々な形態のものが知られており、例えば、生体サンプルとしての検体を検体容器から反応容器に分注し、その分注した検体に測定項目に応じた試薬を混合させて各種の測定及び分析を行なう。
【0003】
このような反応容器に対する検体及び試薬の分注は、一般に、X-Y方向に移動できる移送機構によってノズルを検体吸引位置及び試薬吸引位置と反応容器との間で移動させることによって行なわれる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズルを2方向以上にわたって移動させることにより検体及び試薬を移送すると、移送工程が複雑化し、また、二次元的な移送空間を確保しなければならないことから装置全体が大型化するとともに、装置設計の自由度が制限され、全体の分析処理時間も長くなる。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、試薬分注のための試薬移送を効率良く迅速に行なうことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明は、検体処理空間内で検体を処理して測定することにより所定の分析項目に関して測定情報を得る自動分析装置であって、検体が分注された反応容器を保持する反応部と、試薬を供給する試薬供給部と、前記反応部と前記試薬供給部との間で試薬吸引ノズルを移送させる試薬移送部と、前記試薬吸引ノズルの先端に接続される試薬吸引チップを供給するチップ供給部と、前記試薬吸引チップを廃棄するためのチップ廃棄部とを備え、前記試薬移送部は、前記チップ供給部、前記試薬供給部、前記チップ廃棄部、及び、前記反応部が一直線に沿って一列に並ぶ前記検体処理空間の領域で、試薬移送のためにこの一直線に沿って試薬吸引ノズルを一軸方向にのみ移動させる一軸移送ラインを形成することを特徴とする。
【0008】
上記構成の自動分析装置において、反応部と試薬供給部との間で試薬吸引ノズルを移送させる試薬移送部は、チップ供給部、試薬供給部、チップ廃棄部、及び、反応部が一直線に沿って一列に並ぶ検体処理空間の領域で、試薬移送のためにこの一直線に沿って試薬吸引ノズルを一軸方向にのみ移動させる一軸移送ラインを形成するため、試薬分注のための試薬移送を効率良く迅速に行なうことができる。すなわち、一次元的な移送空間を確保すれば済むため、省スペース化を図ることができ、また、試薬吸引ノズルを2方向以上にわたって移動させる試薬移送機構と比べて、移送工程を簡略化でき、装置設計の自由度を高めることができるとともに、全体の分析処理時間を短縮化することもできる。また、省スペース化を図れる分、複数の一軸移送ラインを設けて、複数の試薬の同時移送による作業効率の迅速化を図ることもできる。
【0009】
また、上記構成では、試薬吸引ノズルを洗浄するためのノズル洗浄部が更に設けられる場合には、このノズル洗浄部も一軸移送ラインに含まれることが好ましい。この場合、チッブ供給部は、試薬供給部に対して反応部及びノズル洗浄部の反対側の検体処理空間外側に位置されることが好ましい。このように内側の移送ラインに含まれないようにチッブ供給部を設ければ、チップ供給部のチップに対する異物(汚染物)や試薬の付着を防止でき、有益である。
【0010】
また、上記構成において、試薬吸引チップは、導電性を有し、それにより静電容量式による試薬液面検知のために使用できることが好ましい。一般に、試薬吸引ノズルのみでの試薬吸引では、通常、試薬吸引ノズルが金属製であるため、試薬吸引ノズルによる試薬供給部での試薬吸引時(試薬吸引に際して試薬吸引ノズルを試薬へ向けて下降させる際)に静電容量式にて試薬液面を検知できるが、通常の分析項目との共用化が難しい分析項目を実行する場合など必要に応じて試薬吸引ノズルの先端にチップを接続する場合には、一般にそのチップが樹脂製であるため静電容量式による試薬液面検知が不可能となるが、このチップにカーボン等を含浸させて導電性チップとすることにより静電容量式による試薬液面検知を可能にし得る。
【0011】
また、上記構成では、試薬吸引チップが試薬吸引ノズルの基部に接続されることが好ましい。このように試薬吸引ノズルの基部に試薬吸引チップを接続すると、試薬吸引ノズルの先端に試薬吸引チップを接続する場合と比べてノズル先端の汚染を防止できる。
また、上記構成では、前記ノズル洗浄部と前記チップ廃棄部とが前記試薬供給部及び前記反応部の間で、前記ノズル洗浄部は前記試薬供給部よりで、前記チップ廃棄部は前記反応部よりに設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動分析装置によれば、反応部と試薬供給部との間で試薬吸引ノズルを移送させる試薬移送部が、チップ供給部、試薬供給部、チップ廃棄部、及び、反応部が一直線に沿って一列に並ぶ検体処理空間の領域で、試薬移送のためにこの一直線に沿って試薬吸引ノズルを一軸方向にのみ移動させる一軸移送ラインを形成するため、試薬分注のための試薬移送を効率良く迅速に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動分析装置の概略的な全体外観図である。
【
図2】
図1の自動分析装置の内部構成を示す概略的な平面図である。
【
図3】(a)は一軸試薬移送ラインの平面図、(b)は一軸試薬移送ラインの側面図である。
【
図4】試薬吸引チップが試薬吸引ノズルの基部に接続された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態の自動分析装置の概略的な全体外観図、
図2は
図1の自動分析装置の内部構成を示す概略的な平面図である。これらの図に示されるように、本実施形態の自動分析装置1は、ラックを搬送する搬送部10と、生体サンプル等の所定の検体を供給するための検体供給部20と、所定の分析項目に対応する試薬を供給するための試薬供給部30と、検体と試薬とを反応させるための反応部40と、反応済みの検体を処理して測定するための処理・測定部(本実施形態では例えば後述するB/F分離・測定部)50とを有している。これらの処理部10,20,30,40,50は筐体100(
図1参照)内に配設される。搬送部10は、該自動分析装置1で使用されるディスポーザプルな所定数の器具が装填されたラック、例えば本実施形態では、検体吸引のためのノズルチップTと検体が分注される反応容器(例えばキュベット)Cとがそれぞれ60個ずつ2次元的に配列されて保持されたラックRを後述する所定の器具取り出し位置IIへと搬送する。
【0015】
また、自動分析装置1は、これらの処理部10,20,30,40,50の動作を制御するための図示しない制御部と、処理部10,20,30,40,50の上方でX-Y方向に移動する各種の移送部を備える移送機構(図示せず)とを更に備える。移送機構には、例えば、器具移送部、検体移送部、試薬移送部、測定対象移送部などがある。移送機構は、ノズルチップTや反応容器C等の移送や、ノズルによる検体及び試薬の吸引等を行なうために、把持アーム等を用いてノズルチップTや反応容器C等の器具を把持してX-Y方向に移動できる。前記制御部は、制御装置本体(図示せず)と、例えばタッチパネルから成る表示入力部60とを有する。前記移送機構の各移送部は、例えばX方向、Y方向に延在されたレールに沿って筐体100内をX-Y方向に移動できるとともに、所定位置で更に上下方向(Z方向)に移動(昇降)することもできる。
【0016】
搬送部10は、装置1内において、未使用のノズルチップT及び反応容器Cがそれぞれ装填された前述の複数のラックRを以下のように搬送する。まず複数のラックRを上下方向に積み重ねた状態で昇降機構によって上昇させることにより筐体100内の上部で検体等に対して各種処理を行う空間(以下、単に処理空間という)S内のラック待機位置(供給側位置)Iへ向けて搬送する。その後、ラックRをラック待機位置IからノズルチップT及び反応容器Cが分析測定処理のために取り出される取り出し位置(回収側位置)IIへ移動させて、器具移送部よりチップ・反応容器待機位置IIIに移送されるのを待つ。また、ノズルチップT及び反応容器Cが全て取り出されて空になったラックRは、昇降機構によって順次に下降させて回収される。
【0017】
具体的には、
図2に矢印で示されるように、操作者は、搬送部10をY方向に沿って装置1の外部へ引き出す(引き出された搬送部が
図2中に参照符号10’で示される)ことによって、空のラックRを搬送部10から回収できるとともに、ノズルチップT及び反応容器Cがそれぞれ装填された未使用のラックRを搬送部10内に補充することができる。
【0018】
また、本実施形態において、取り出し位置IIに位置されるラックR内のノズルチップT及び反応容器Cは、前記移送機構の一つである器具移送部の保持部に保持されて移送されることにより、搬送部10の近傍に位置されるチップ・反応容器待機位置IIIに仮置きされる。しかしながら、他の変形例では、反応容器Cが、器具移送部の保持部によってラックRからチップ・反応容器待機位置IIIを経由することなく直接に反応部40へ移送されてセットされてもよい。
なお、
図2に例示するように、チップ・反応容器待機位置IIIには、ノズルチップのための置き場(待機位置IIIの下側の2つのノズルチップT及び/又は反応容器Cが示されている位置)だけでなく、操作者が手でノズルチップT及び/又は反応容器Cをラック毎入れ替えることのできる置き場(待機位置IIIの上側の一個のラックが示されている位置)を設けることができる。
【0019】
検体供給部20は、
図2中のX方向に沿って移動可能な検体テーブル23上に配置されており、箱型の複数の検体ラック22が例えば検体テーブル23の移動方向に沿って配列されて成る。また、各検体ラック22には複数本の検体容器21が装填されており、これらの検体容器21にはそれぞれ分析測定されるべき検体が収容されている。特に本実施形態では、自動分析装置1の分析シーケンスの所定のタイミングで、例えば
図2中の右側に位置される検体供給部20が
図2中の左側へと移動するような動作態様を成して複数本の検体容器21を備える1つの検体ラック22が反応部40とチップ・反応容器待機位置IIIとの間の検体吸引位置IVへと移送されてこの位置で待機されるようになっている。
【0020】
チップ・反応容器待機位置IIIを設けることにより、処理空間S内に、チップ・反応容器待機位置IIIと検体吸引位置IVと反応部40の少なくとも一部とが一直線に沿って一列に並ぶ第1の一軸移送ライン(検体移送ライン)L1が形成される。そのため、検体吸引ノズルを備える検体移送部(図示せず)が、この第1の一軸移送ラインに沿って一軸方向(X軸方向)に移動するだけで、検体吸引ノズルへのノズルチップTの装着、検体の吸引、検体の反応容器への分注という一連の動作を完結することができる。なお、ここで一軸の方向とは、移送方向であるX-Y平面における移動方向が一軸であるという意味である。X-Y平面の一軸方向に移動して所望の位置に到達した後、ノズルチップの装着や検体等の吸引や分注動作のために、Z方向(高さ方向)への移動を行う。具体的には、まず検体吸引ノズル(図示せず)が、前記検体移送部によってX軸の+方向(
図2において右方向)に移動されて、その先端にチップ・反応容器待機位置IIIに仮置きされたノズルチップTに接続される(接続時は検体吸引ノズルが前記検体移送部によりZ軸方向に昇降される)。その後、ノズルチップTを先端に保持したまま更にX軸の-方向(
図2において左方向)に移動されて検体吸引位置IVで待機する検体容器21からノズルチップTを通じて検体を吸引し、さらに反応部40へ向けてX軸の-方向に移動する。
このとき既に、反応部40には、チップ・反応容器待機位置IIIに仮置きされていた未使用の反応容器Cが、前述の器具移送部によって移送されてセッティングされ、待機している。したがって、検体吸引ノズルは、ノズルチップTを通じて吸引した検体を反応部40上の反応容器C内へ分注(吐出)する。その後、検体吸引ノズルは、前記検体移送部により、第1の一軸移送ラインL1上に位置される(反応部40と検体吸引位置IVとの間に設けられる)チップ廃棄部121へ向けてX軸の+方向に移動され、そのチップ廃棄部121で使用済みのノズルチップTが検体吸引ノズルから離脱されて廃棄される。
【0021】
反応部40は回転駆動される回転テーブル42を備えており、この回転テーブル42の外周部には全周にわたり所定の間隔を隔てて複数の反応容器支持部43が設けられる。これらの反応容器支持部43には、前述したように保持部を備える器具移送部によって未使用の反応容器Cが移送されてセッティングされる。そして、回転テーブル42によって検体受け入れ(分注)位置まで回転された反応容器C内に前述したように検体吸引ノズルから検体が吐出される。
【0022】
試薬供給部30は、多種類の分析項目に対応する試薬を収容する複数の試薬収容部32を回転テーブル34によって例えばユニット形態で保持しており、反応部40における分析項目に対応する試薬収容部32を、回転テーブル34による回転によって後述する第2の一軸移送ラインL2上に位置されるそれぞれの対応する試薬吸入位置V(
図2中には1つの試薬吸入位置にのみ参照符号Vが付されている)に移動させる。本実施形態の試薬供給部30では、試薬収容ユニットUを複数備えており、試薬収容ユニットUは、所定の数だけ、回転テーブル34の周方向に向かって放射状に配列されている。試薬収容ユニットUは、複数(図では3つ)の試薬収容部32を備える試薬容器が連結または一体形成された細長い容器ユニットを、容器ホルダ内に収容保持している。また、試薬供給部30は、その試薬を冷却するための冷却装置36と、試薬収容ユニットUを構成する各試薬収容部32の開口を閉塞する容器蓋を開閉するための試薬容器蓋開閉機構160とを更に備える。
【0023】
試薬供給部30の外側、すなわち、試薬供給部30に対して反応部40の反対側には、導電性チップ供給部70が設けられる。この導電性チップ供給部70は、複数の導電性チップ72が装填されたラック74を有しており、通常の分析項目との共用化が難しい分析項目を実行する場合など必要に応じて試薬吸引ノズルの先端に導電性チップ72を接続するようになっている。具体的には、導電性チップ供給部70は、位置センサを用いた位置制御下でラック74をY方向に沿って移動させることにより、ラック74上の導電性チップ72を後述する第2の一軸移送ラインL2上に位置させる。なお、試薬供給部30の内側、具体的には、試薬供給部30と反応部40との間には、後述する第2の一軸移送ラインL2上に位置して、試薬吸引ノズルを洗浄するための複数(本実施形態では3つ)のノズル洗浄部29と、チップを廃棄するための複数(本実施形態では3つ)のチップ廃棄部25とが設けられる。
【0024】
導電性チップ供給部70、試薬供給部30、ノズル洗浄部29、チップ廃棄部25、及び、反応部40が一直線に沿って一列に並ぶ処理空間Sの領域では、前記移送機構の一つである試薬移送のための試薬移送部80(
図3参照)がこの一直線に沿って一軸方向(X軸方向)にのみ移動する第2の一軸移送ライン(試薬移送ライン)L2が形成される。特に、本実施形態では、ノズル洗浄部29及びチップ廃棄部25がそれぞれ3つ設けられることから、第2の一軸移送ラインL2も3つ設けられる(無論、第2の一軸移送ラインL2の本数は3つに限定されない。4本以上であってもよく、或いは、2本以下であってもよい)。具体的には、それぞれの第2の一軸移送ラインL2において、試薬吸引ノズル(図示せず)を保持する保持部が試薬移送部80によりX軸方向にのみ移動される。
それぞれの第2の一軸移送ラインL2に対応する各試薬吸引ノズルは、試薬供給部30において、回転テーブル34上の試薬吸入位置Vに位置される試薬収容部32から、その先端のノズル吸引部を通じて直接に分析項目に対応する試薬を吸引し、その後、反応部40へ向けてX軸の+方向に移動される。このとき、反応部40には、前述の検体受け入れ位置で検体を既に受け入れた反応容器Cが、回転テーブル42によって試薬受け入れ位置まで回転されている。したがって、試薬吸引ノズルは、吸引した試薬をこの反応容器Cに対して分注(吐出)することができる。その後、試薬吸引ノズルは、X軸の-方向に移動されて、ノズル洗浄部29において洗浄される。
【0025】
一方、通常の分析項目との共用化が難しい分析項目を実行する場合がある。例えばノズル洗浄だけでは不十分な場合には必要に応じて試薬吸引ノズルの先端に導電性チップ72が接続されてもよい。このような場合には、試薬供給部30で試薬を吸引する前に、第2の一軸移送ラインL2上にある導電性チップ供給部70において試薬吸引ノズルの先端に導電性チップ72に接続することが好ましい(接続時は試薬吸引ノズルが試薬移送部80によりZ軸方向に昇降される)。導電性チップ72が接続されると、試薬吸引ノズルは、導電性チップ72を先端に保持したまま更にX軸の+方向に移動され、試薬供給部30において導電性チップ72を通じて試薬を吸引する。試薬を吸引した試薬吸引ノズルは、更に反応部40へ向けてX軸の+方向に移動され、前述したように試薬受け入れ位置に位置される反応容器Cに対して試薬を分注(吐出)する。その後、試薬吸引ノズルは、試薬移送部80によってチップ廃棄部25のうちの対応するチップ廃棄部25へ向けてX軸の-方向に移動され、そのチップ廃棄部25で使用済みの導電性チップ72が試薬吸引ノズルから離脱されて廃棄される。
【0026】
反応部40において前述したように反応容器Cに分注された検体及び試薬の混合液は、回転テーブル42上で所定時間にわたり所定温度で反応が進められ、その後、反応生成物が形成された反応容器Cは、回転テーブル42の回転によって反応容器取り出し位置VIまで回転される。反応容器取り出し位置VIに位置された反応容器Cは、前記移送機構の一つである測定対象移送部(図示せず)によって移送される保持部(把持アーム等)により把持されて処理・測定部50内へ導入される。
【0027】
処理・測定部50は、導入された反応生成物に対して所定の処理を施して電気的及び光学的に測定を実施する。具体的には、例えば免疫測定法を用いた分析測定では、免疫複合体を形成していない標識抗体を洗浄廃棄するB/F分離が行なわれ、そのための洗浄部及び撹拌部、B/F分離に使用されるマグネットが設けられるとともに、それらによって処理した処理物を吸引して下方で電気化学発光に基づき測定する測定部120も設けられる。その場合には、処理・測定部50がB/F分離・測定部50と称されてもよい。なお、測定が完了した使用済みの反応容器Cは、回転テーブル52の回転により所定の位置まで移動され、前記移送機構の一つである測定対象移送部(図示せず)により移送される保持部により把持されて所定の廃棄部で廃棄される。
【0028】
ところで、本実施形態では、前述したように、反応部40と試薬供給部30との間で試薬吸引ノズルを移送させる試薬移送部80が第2の一軸移送ライン(試薬移送ライン)L2を形成する。そのような第2の一軸移送ラインL2の具体的な一例が
図3に示される。
【0029】
図3に示されるように、反応部40と試薬供給部30との間で試薬吸引ノズル90を移送させる試薬移送部80は、導電性チップ供給部70、試薬供給部30、チップ廃棄部25、及び、反応部40が一直線に沿って一列に並ぶ検体処理空間Sの領域で、試薬移送のためにこの一直線に沿って試薬吸引ノズル90を一軸方向にのみ移動させる第2の一軸移送ラインL2を形成する。特に、本実施形態では、試薬吸引ノズル90を洗浄するためのノズル洗浄部29もこの第2の一軸移送ラインL2に含まれる。
【0030】
図3の(b)からも分かるように、前述のごとく、この第2の一軸移送ラインL2において、試薬吸引ノズル90を保持している試薬移送部80によりX軸方向にのみ移動される。この試薬吸引ノズル90は、試薬供給部30において、回転テーブル34上の試薬吸入位置Vに位置される試薬収容部32から、その先端のノズル吸引部を通じて直接に分析項目に対応する試薬を吸引し、その後、反応部40へ向けてX軸の+方向に移動される。このとき、反応部40には、前述の検体受け入れ位置で検体を既に受け入れた反応容器Cが回転テーブル42によって試薬受け入れ位置まで回転されている。試薬吸引ノズル90は、吸引した試薬をこの反応容器Cに対して分注(吐出)する。その後、試薬吸引ノズル90は、X軸の-方向に移動されて、ノズル洗浄部29において洗浄される。
【0031】
一方、通常の分析項目との共用化が難しい分析項目を実行する場合がある。例えばノズル洗浄だけでは不十分な場合には、必要に応じて試薬吸引ノズル90の先端に導電性チップ72が接続されてもよい。このような場合には、試薬供給部30で試薬を吸引する前に、導電性チップ供給部70において試薬吸引ノズル90の先端に導電性チップ72を接続する。その後、試薬吸引ノズル90は導電性チップ72を先端に保持したまま更にX軸の+方向に移動され、試薬供給部30において試薬吸入位置Vに位置される試薬ボトル32から導電性チップ72を通じて試薬を吸引する。この試薬吸引時、具体的には導電性チップ72が接続された試薬吸引ノズル90を試薬へ向けて下降させる際、導電性チップ72を使用して静電容量式による試薬液面検知(試薬を確実に吸引できるように導電性チップ72が試薬液面に到達したことを検知する)が行なわれる。一般に、前述した試薬吸引ノズル90のみでの試薬吸引では、試薬吸引ノズル90が金属製であるため、試薬吸引ノズル90による試薬供給部30での試薬吸引時に静電容量式にて試薬液面を検知できる。しかし、試薬吸引ノズル90の先端にチップを接続する場合には、一般にそのチップは樹脂製であるため静電容量式による試薬液面検知が不可能となる。このような場合、本実施形態のようにこのチップを導電性チップ72とすることにより静電容量式による試薬液面検知を可能にすることができる。また、本実施形態では、
図4に示されるように、導電性チップ72が試薬吸引ノズル90の基部90bに接続されるようになっている。このように試薬吸引ノズル90の基部90bに導電性チップ72を接続すると、試薬吸引ノズル90の先端90aに導電性チップ72を接続する場合と比べてノズル90の先端の汚染を防止することができる。
【0032】
このようにして試薬ボトル32から導電性チップ72を通じて試薬を吸引した後、試薬吸引ノズル90は、更に反応部40へ向けてX軸の+方向に移動され、前述したように試薬受け入れ位置に位置される反応容器Cに対して試薬を分注(吐出)する。その後、試薬吸引ノズル90は、チップ廃棄部25のうちの対応するチップ廃棄部25へ向けてX軸の-方向に移動され、そのチップ廃棄部25で使用済みの導電性チップ72が試薬吸引ノズル90から離脱されて廃棄される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の自動分析装置1では、処理空間Sの領域において、導電性チップ供給部70、試薬供給部30、チップ廃棄部25、及び、反応部40が一直線に沿って一列に並ぶ一軸移送ラインL2を形成する。そのため、反応部40と試薬供給部30との間で試薬吸引ノズル90を移送する試薬移送部80は、一軸移送ラインL2に沿って一軸方向にのみ移動するだけで試薬を移送することができ、試薬分注のための試薬移送を効率良く迅速に行なうことができる。すなわち、一次元的な移送空間を確保すれば済むため、省スペース化を図ることができ、試薬吸引ノズルを2方向以上にわたって移動させる試薬移送機構と比べて、移送工程を簡略化できる。また、装置設計の自由度を高めることができるとともに、全体の分析処理時間を短縮化することもできる。さらに、省スペース化を図れる分、本実施形態のように3つの一軸移送ラインL2を設けて、複数の試薬の同時移送による作業効率の迅速化を図ることもできる。
【0034】
また、本実施形態では、導電性チッブ供給部70が試薬供給部30に対して反応部40及びノズル洗浄部29の反対側の処理空間外側に位置されるため、すなわち、導電性チッブ供給部70が内側の移送ラインに含まれないように設けられるため、導電性チップ供給部70の導電性チップ72に対する異物(汚染物)や試薬の付着を防止できる。
【0035】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、前述した実施形態では、分析処理のためにノズルチップT及び反応容器Cが使用されるが、分析処理で使用される器具はこれらに限らない。このような器具は、分析処理の種類に応じて適宜変更されてもよい。また、分析装置の処理部の構成及び形態も前述したものに限定されず、用途に応じて種々変更され得る。また、前述した実施形態では、一軸移送ラインL1,L2がX方向に延びているがY方向に延びていても構わない。
さらに、本明細書で示した各種実施形態中に記載した個々の構成、例えば、ラックの構造、検体や試薬保持部の構造、ラックを移動回収する搬送部、試薬の蓋開閉機構、検体移送ライン又は試薬移送ラインを一軸移送ラインL1、又はL2に整列させる構成その他の個々の構成を、必要に応じて各実施形態から抜き出して、それらを適宜組み合わせた構成とすることも可能である。
また、実施形態で示す具体的な各位置I~IXは例示であり、本明細書で示されている本発明で求められる条件に適合する位置に、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 自動分析装置
25 チップ廃棄部
29 ノズル洗浄部
30 試薬供給部
40 反応部
70 チップ供給部
72 導電性チップ(試薬吸引チップ)
80 試薬移送部
90 試薬吸引ノズル
C 反応容器(器具)
S 検体処理空間
T ノズルチップ(器具)