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特許7529665傷つきやすい基材を保護するためのマスキングフィルム
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  • 特許-傷つきやすい基材を保護するためのマスキングフィルム 図1
  • 特許-傷つきやすい基材を保護するためのマスキングフィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】傷つきやすい基材を保護するためのマスキングフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240730BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20240730BHJP
   C09J 123/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
C09J123/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021533283
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 US2019066165
(87)【国際公開番号】W WO2020131609
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】62/781,253
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】320007631
【氏名又は名称】トレデガー サーフェイス プロテクション エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ グレゴリー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】デサイ バンキム ブーペンドラ
(72)【発明者】
【氏名】レイ カール ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】パク ソク
(72)【発明者】
【氏名】ブラッディ ケヴィン エイ
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500426(JP,A)
【文献】特開2010-006927(JP,A)
【文献】特開2010-221708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
C09J 123/06
C09J 153/00
C09J 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化スチレンブロックコポリマーと低密度ポリエチレンとのブレンドを含む接着層であって、基材に接触するように構成され、ANSI/ASME試験方法B46.1-1985に従って表面形状測定装置で測定した100nmと350nmの間の平均表面粗さRaと、20μmと150μmの間の平均凸部間距離Smとを有する外側接着面を有する接着層;および
接着層の外側接着面と反対の側の剥離層
を含
前記接着層のブレンドが、40wt%~70wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、5wt%~30wt%の低密度ポリエチレンと、10wt%~40wt%の高密度ポリエチレンとを含む、
マスキングフィルム。
【請求項2】
外側接着面が、ANSI/ASME試験方法B46.1-1985に従って表面形状測定装置で測定した125nmと325nmの間の平均表面粗さRaと、20μmと100μmの間の平均凸部間距離Smとを有する、請求項1に記載のマスキングフィルム。
【請求項3】
剥離層が低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載のマスキングフィルム。
【請求項4】
剥離層が低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドを含む、請求項に記載のマスキングフィルム。
【請求項5】
接着層と剥離層の間にコア層を更に含む、請求項1に記載のマスキングフィルム。
【請求項6】
コア層が高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドを含む、請求項に記載のマスキングフィルム。
【請求項7】
コア層のブレンドが、30wt%~50wt%の低密度ポリエチレンと50wt%~70wt%の高密度ポリエチレンとを含む、請求項に記載のマスキングフィルム。
【請求項8】
コア層がポリプロピレンを含む、請求項に記載のマスキングフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月18日出願の米国仮特許出願第62/781,253号からの優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般に、傷つきやすい基材を保護するためのマスキングフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
マスキングフィルムは、表面保護フィルムとしても公知であり、典型的には、マスキングフィルムを接着させる基材の損傷、汚染、ひっかき傷、こすり傷、および/または他の損害を防止するための物理的なバリアを提供するために使用される。マスキングフィルムは、電子ディスプレイの構成要素として使用される繊細で傷つきやすい基材に貼付され、基材の輸送および/または使用前の保存中だけでなく、製造中の1つまたは複数の後続の処理工程を通じて、基材を保護してもよい。
【0004】
一般に使用されるマスキングフィルムは、ファンデルワールス力によって基材への接着を達成するが、それには、マスキングフィルムが基材に密に接触できるように、マスキングフィルムと基材がそれぞれ少なくとも1つの非常に平坦で均一な表面を有していることが必要である。接着の程度は、マスキングフィルム表面の組成物を軟化または硬化させることにより増減させることができる。接着力が強すぎると、プロセスの最後にマスキングフィルムを基材から除去することが困難となる。接着力が弱すぎると、マスキングフィルムの基材からの分離が時期尚早となる可能性があり、そうすると基材はもはや保護されなくなる。
【0005】
加えて、マスキングフィルムは、使用中に、またはマスキングフィルムがもはや必要なくなってマスキングフィルムを除去する際に、基材の表面に損傷を与えることがないように基材に接着しなければならない。一部のマスキングフィルムは、マスキングフィルムが損傷から保護するはずの基材の画像の鮮明度を変更する性状を創出することが公知である。このような性状の表面を有する基材は、光を不均一に反射することが公知であり、基材が例えば電子ディスプレイの構成要素として使用される場合、典型的には許容されない。
【0006】
接着剤でコーティングされた配向ポリエステルフィルムは、そのような用途向けの許容できるマスキング特性を提供し得るが、比較的高価でもある。より安価なポリエチレンフィルムを用いた画像の鮮明度を変更する性状を最小限に抑えるためのこれまでの取り組みは、巻き取ったロールにおけるブロッキング(即ち、粘着)を生じさせないように、フィルムの両面をできるだけ滑らかにするというものであった。ポリエチレンフィルムの表面の表面粗さを低下させても、結果として得られる基材の性状は、わずかに改善されるに過ぎなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基材上に性状を残すことなく基材の所望の表面保護を実現し、接着剤でコーティングされた配向ポリエステルフィルムよりも経済的なマスキングフィルムを得ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
予期せぬことに、より柔軟なポリマー配合物を使用し、適切にエンボス化された微細性状を有する少なくとも1つの表面を創出することにより、基材への適切な接着力を維持したまま繊細な基材の損傷を最低限に抑え、回避さえできることが発見されている。柔軟さと微細性状との組み合わせにより、基材の画像の鮮明度に影響を与えない特定の種類の表面構造が創出される。表面粗さもロールブロッキングの原因とはならず、表面が滑らかな公知のフィルムよりもウェブの取り扱い性を向上させる。
【0009】
本発明の一態様によると、水素化スチレンブロックコポリマーと低密度ポリエチレンとのブレンドを含む接着層を含むマスキングフィルムが提供される。接着層は、基材に接触するように構成された外側接着面を有する。外側接着面は、100nmと350nmの間の平均表面粗さRaと、20μmと150μmの間の平均凸部間距離Smを有する。マスキングフィルムは、接着層の外側接着面とは反対の側に剥離層も含む。
【0010】
一実施形態において、接着層は、高密度ポリエチレンも含む。
【0011】
一実施形態において、接着層のブレンドは、15wt%~80wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、5wt%~50wt%の低密度ポリエチレンと、10wt%~40wt%の高密度ポリエチレンとを含む。
【0012】
一実施形態において、接着層のブレンドは、40wt%~70wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、5wt%~30wt%の低密度ポリエチレンと、10wt%~40wt%の高密度ポリエチレンとを含む。
【0013】
一実施形態において、外側接着面は、125nmと325nmの間の平均表面粗さRaと、20μmと100μmの間の平均凸部間距離Smとを有する。
【0014】
一実施形態において、剥離層は、低密度ポリエチレンを含む。一実施形態において、剥離層は、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのブレンドを含む。
【0015】
一実施形態において、マスキングフィルムは、接着層と剥離層の間にコア層も含む。一実施形態において、コア層は、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとのブレンドを含む。一実施形態において、コア層のブレンドは、30wt%~50wt%の低密度ポリエチレンと、50wt%~70wt%の高密度ポリエチレンとを含む。一実施形態において、コア層は、ポリプロピレンを含む。
【0016】
本発明のこれらの態様および他の態様、特徴、ならびに特性、更に、構造の関連する要素の操作方法および機能、ならびに部品の組み合わせおよび製造の経済性は、添付の図面を参照して下記の説明および添付の特許請求の範囲を検討することによって、更に明らかとなり、その全てが本明細書の一部を構成する。しかし、明確に理解すべきことであるが、図面は、例示および説明のみを目的とし、本発明の限界の定義として意図されたものではない。明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0017】
下記の図の構成要素は、本開示の一般原理を強調するために示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。一貫性と明確性のため、対応する構成要素を指定する参照文字は、図全体を通じて必要に応じて繰り返されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるマスキングフィルムを概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるマスキングフィルムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において使用する場合、「フィルム」という用語は、流延押出または吹き込みプロセスにより製造された薄いシートまたはウェブを意味する。本開示のフィルムは、ポリマー製である。ポリマーをローラ間で更に処理し、冷却してウェブを形成してもよい。共押出プロセスにおいて異なる層を同時に押し出すことにより、または、各フィルム層を別々に形成し、次いで個々のフィルムを一緒にして接合または積層することにより、多層フィルムを製造してもよい。一実施形態において、マスキングフィルムの複数の層が、当技術分野で公知の共押出プロセスを使用して共押し出しされる。共押出を使用すると、それぞれが特定の機能を果たす別個の層で構成される多層マスキングフィルムを、比較的単純かつ容易に製造することが可能である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるマスキングフィルム100を概略的に示す。図示するように、マスキングフィルム100は、外側接着面112を有する接着層110、および接着層110の外側接着面112とは反対側の剥離層120を含む多層フィルムである。剥離層120は、外側剥離面122を含む。接着層110の外側接着面112は、マスキングフィルム100で保護すべき基材の表面に接触するように構成されている。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態によるマスキングフィルム200を概略的に示す。図示するように、マスキングフィルム200は、外側接着面212を有する接着層210、接着層210の外側接着面212とは反対側の剥離層220、および接着層210と剥離層220の間のコア層230を含む多層フィルムである。剥離層220は、外側剥離面222を含む。接着層210の外側接着面212は、マスキングフィルム200で保護すべき基材の表面に接触するように構成されている。
【0022】
接着層
本明細書において言及される場合、「接着」は、極性結合、イオン結合、ならびに、場合によっては、水素結合、および/またはファンデルワールス二次結合によって非常に滑らかな表面と別の滑らかな表面の間に存在する自然なブロッキング接着を介した密接な接触による、保護すべき基材の表面への付着を意味する。本明細書で意図する接着剤なしの接着は、剥離可能な接着であり、貼付されるフィルムと基材のどちらも変質または損傷しないように、接着は可逆的である。「接着」には、感圧接着剤として公知の材料、熱接合または接着剤の架橋機能は含まれず、それは、感圧接着剤、熱接合または接着剤の架橋機能を用いた場合、基材表面とフィルムとの間の接着力が高くなり、そのようなフィルムを除去するのに必要な剥離強度がそのようなフィルム自体の引張強度を超えて、フィルムが基材から剥離する前にそのようなフィルムの断裂または破損を招くほどになるためである。
【0023】
マスキングフィルム110、200の実施形態による接着層110、210は、水素化スチレンブロックコポリマーと低密度ポリエチレン(LDPE)とのブレンドを含んでもよい。一実施形態において、接着層110、210は、高密度ポリエチレン(HDPE)も含む。
【0024】
水素化ブロックコポリマーは、水素化以前は、ポリスチレンブロック-ポリジエンブロックポリマー構造を有する。水素化ブロックコポリマーは、水素化の前には、直鎖状または放射状とすることができる。適切なポリジエンとしては、ポリブタジエン(1,3-ブタジエン)、ポリイソプレン、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリスチレンブロック-ポリジエンブロック構造の水素化により、別名「SEBS」とも呼ばれるスチレンエチレン-(ブチレン/イソプレン)-スチレンポリマー構造が生じる。更なる説明については、米国特許第7,439,301号、米国特許第7,348,376号、米国特許出願公開第2013/0225020号、国際特許出願公開番号WO2014/087814、および国際特許出願公開番号WO2014/087815を参照されたく、これらは全て参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
水素化スチレンブロックコポリマーのスチレン含有量は、望ましくはコポリマーの40重量%(wt%)未満、例えば約30と約40wt%の間、例えば34wt%である。ポリスチレンブロック-ポリジエンブロックポリマーの水素化に続いて、ポリスチレンブロック中のスチレン二重結合の0~10パーセントが水素化されている。
【0026】
水素化スチレンブロックコポリマーのメルトフローレート(「MFR」)は、水素化スチレンブロックコポリマーの粘度と逆相関する。高いメルトフローレートは、スチレンブロックコポリマーが低粘度を有することを意味し、その逆も同様である。本明細書において使用する場合、特に明記しない限り、「メルトインデックス」または「MFR」は、ASTM D-1238に従い、230℃、2.16kgの質量下で判定されるメルトフロー値を意味するものとする。一実施形態において、水素化スチレンブロックコポリマーは、12以上のメルトインデックスを有してもよい。一実施形態において、水素化スチレンブロックコポリマーは、20以上のメルトインデックスを有してもよい。一実施形態において、水素化スチレンブロックコポリマーは、40以上のメルトインデックスを有してもよい。一実施形態において、水素化スチレンブロックコポリマーは、約20~約100のメルトインデックスを有してもよい。適切な水素化スチレンブロックコポリマーとしては、Kraton Performance Polymers Inc.製、Kraton MD6951が挙げられ、これは、約34wt%のスチレン含有量と、48のMFRを有する。
【0027】
接着層110、210は、10wt%~90wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、10wt%~90wt%のLPDEを含んでもよい。一実施形態において、接着層110、210は、約60wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、約40wt%のLDPE、または約80wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、20wt%のLPDEを含んでもよい。したがって、接着層110、210は、約100:0~51:49の範囲の重量比の水素化スチレンブロックコポリマーとLDPEとの混合物を含んでもよく、その比としては、例えば約80:20および約60:40が挙げられる。
【0028】
様々な実施形態において、接着層110、210は、重量で10%~90%の水素化スチレンブロックコポリマーを含んでもよい。特定の実施形態において、接着層110、210は、重量で70%~90%の水素化スチレンブロックコポリマーを含んでもよい。そのような実施形態において、接着層110、210はまた、重量で10%~30%のLDPEを含んでもよく、特定の実施形態において、接着層110、210は、水素化スチレンブロックコポリマーのみから本質的になるものとすることができる。
【0029】
一実施形態において、接着層110、210は、15wt%~90wt%のスチレンブロックコポリマー(SEBS)と、10wt%~50wt%のLDPEと、10wt%~35wt%のHDPEを含んでもよい。一実施形態において、接着層110、120は、15wt%~80wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、5wt%~50wt%の低密度ポリエチレンと、10wt%~40wt%の高密度ポリエチレンとを含んでもよい。一実施形態において、接着層110、120は、40wt%~70wt%の水素化スチレンブロックコポリマーと、5wt%~30wt%の低密度ポリエチレンと、10wt%~40wt%の高密度ポリエチレンとを含んでもよい。
【0030】
本明細書において検討するように、平均表面粗さは、表面形状測定装置で測定される、表面の微細凸部と微細凹部の、そのような表面の中心線までの平均高さ(Ra)であると定義される(以下、「平均表面粗さRa」)。このように定義される表面粗さは、典型的には、ミクロンまたはマイクロメートル(μm)の単位、またはナノメートル(nm)の単位で表される。加えて、微細凸部間の平均距離(Sm)を、表面形状測定装置で測定した。表面性状(相対的粗さおよび凸部間の間隔)の試験は全て、ANSI/ASME試験方法B46.1-1985に従って行った。本発明の実施形態によると、接着層110、210の外側接着面112、212は、100nmと350nmの間の平均表面粗さRaと、20μmと150μmの間の平均凸部間距離Smを有する。一実施形態において、接着層110、210の外側接着面112、212は、125nmと325nmの間の平均表面粗さRaと、約20μmと約100μmの間の平均凸部間距離Smを有する。
【0031】
本発明の実施形態によるマスキングフィルム100、200の接着層110、210の厚さは、1μmと20μmの間、例えば3μmと15μmの間、例えば3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、または15μmであってもよい。
【0032】
コア層
マスキングフィルム200は、図2に示すように、任意のコア層230を含んでもよい。コア層230は、存在する場合、接着層210と剥離層220の間に隣接して位置してもよい。コア層230は、存在する場合、1または複数種のポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ランダムコポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンインパクトコポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマー、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸メチル)、環状オレフィンポリマー、ポリアミド、またはポリ(エチレンco-n-アクリル酸ブチル)を含んでもよい。適切なポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。適切なポリオレフィン混合物の1種は、60:40~40:60範囲の重量比の低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物である。
【0033】
本発明の実施形態によるマスキングフィルム200のコア層230の厚さは、10μmと50μmの間、例えば15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μm、または50μmであってもよい。
【0034】
剥離層
剥離層120、220は、接着層110、210に、または、コア層230が存在する場合は、コア層230に隣接して位置してもよい。剥離層120、220は、1または複数種のポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ポリプロピレン(PP)、ランダムコポリマーポリプロピレン、ポリプロピレンインパクトコポリマー、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、プラストマー、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)、ポリ(エチレン-co-アクリル酸)、ポリ(エチレン-coアクリル酸メチル)、環状オレフィンポリマー、ポリアミド、またはポリ(エチレン-co-n-アクリル酸ブチル)を含んでもよい。適切なポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレンインパクトコポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、剥離層120、220は、60:40~40:60の重量比の低密度ポリエチレン(LDPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)との適切なポリオレフィン混合物を含む。
【0035】
剥離層120、220の厚さは、1μmと20μmの間、例えば1μmと10μmの間、例えば1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmまたは10μmであってもよい。剥離層120、220の比較的粗い表面は一般に、0.3μmと16μmの間、より望ましくは、0.7μmと8μmの間の平均表面粗さRaを有する。
【0036】
基材
本発明のマスキングフィルム100、200は、いかなる基材にも貼付できるが、典型的な基材としては、単なる例示であるが、ポリカルボナート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタラート(PETG)、ポリイミド、ガラス、セラミックおよび金属が挙げられる。
【0037】
マスキングフィルムの基材への貼付
多種多様な従来の方法の何れかを利用して多層マスキングフィルム100、200を基材に貼付し、貼付したマスキングフィルム100、200を基材の滑らかな表面に押圧することができる。概して、マスキングフィルム100、200は、ロールから引き取られ、マスキングフィルム100、200と基材を通過させるニップロールまたは同様のシステムによって基材に直接貼付される。マスキングフィルム100、200がロールから引き出されると、ロール上ではマスキングフィルム100、200がらせん状に配向されているため、マスキングフィルム100、200がロールから離される際に、接着層110、210が剥離層120、220から引き離される。
【実施例
【0038】
比較例1は、アクリル接着材料でコーティングされた配向ポリエチレンテレフタラート(PET)から作られた、先行技術のマスキングフィルムであった。PET層は、約140μmの厚さを有し、アクリル接着層は、約50μmの厚さを有していた。
【0039】
比較例2は、低密度ポリエチレンと抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた、先行技術の単層マスキングフィルムであった。この単層マスキングフィルムの厚さは、約45μmであった。
【0040】
比較例3は、LDPEと抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた、先行技術の単層マスキングフィルムであった。この単層マスキングフィルムの厚さは、約80μmであった。
【0041】
比較例4は、約45wt%の水素化スチレンブロックコポリマー(SEBS)と、約30wt%のHDPEと、約25wt%のLDPEとのブレンドから作られた接着層、約60wt%のHDPEと、約39wt%のLDPEと、約1wt%の抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られたコア層、および約80wt%のLDPEと、約19wt%のHDPEと、約1wt%の抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた剥離層を有する、3層マスキングフィルムであった。接着層は、約10.0μmの厚さを有し、コア層は、約32.5μmの厚さを有し、剥離層は、約7.5μmの厚さを有していた。
【0042】
実施例1は、本発明の一実施形態による3層マスキングフィルムであった。この3層マスキングフィルムは、約55wt%の水素化スチレンブロックコポリマー(SEBS)と、約30wt%のHDPEと、約15wt%のLDPEとのブレンドから作られた接着層、約55wt%のHDPEと約45wt%のLDPEとのブレンドから作られたコア層、および約99wt%のLDPEと約1wt%の抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた剥離層を有していた。接着層は、約4.2μmの厚さを有し、コア層は、約21.0μmの厚さを有し、剥離層は、約2.8μmの厚さを有していた。
【0043】
実施例2は、本発明の一実施形態による3層マスキングフィルムであった。この3層マスキングフィルムは、約60wt%の水素化スチレンブロックコポリマー(SEBS)と、約25wt%のLDPEと、約15wt%のHDPEとのブレンドから作られた接着層、約60wt%のHDPEと約40wt%のLDPEとのブレンドから作られたコア層、および約60wt%のHDPEと約40wt%のLDPEとのブレンドから作られた剥離層を有していた。接着層は、約7.5μmの厚さを有し、コア層は、約18.0μmの厚さを有し、剥離層は、約4.5μmの厚さを有していた。
【0044】
実施例3は、本発明の一実施形態による3層マスキングフィルムであった。この3層マスキングフィルムは、約55wt%の水素化スチレンブロックコポリマー(SEBS)と、約30wt%のLDPEと、約15wt%のHDPEとのブレンドから作られた接着層、約55wt%のHDPEと約45wt%のLDPEとのブレンドから作られたコア層、および約99wt%のLDPEと約1wt%の抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた剥離層を有していた。接着層は、約10.0μmの厚さを有し、コア層は、約35.0μmの厚さを有し、剥離層は、約5.0μmの厚さを有していた。
【0045】
実施例4は、本発明の一実施形態による3層マスキングフィルムであった。この3層マスキングフィルムは、約65wt%の水素化スチレンブロックコポリマー(SEBS)と、約30wt%のHDPEと、約5wt%のLDPEとのブレンドから作られた接着層、約55wt%のHDPEと約45wt%のLDPEとのブレンドから作られたコア層、および約99wt%のLDPEと約1wt%の抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた剥離層を有していた。接着層は、約10.0μmの厚さを有し、コア層は、約35.0μmの厚さを有し、剥離層は、約5.0μmの厚さを有していた。
【0046】
実施例5は、本発明の一実施形態による3層マスキングフィルムであった。この3層マスキングフィルムは、約48wt%の水素化スチレンブロックコポリマー(SEBS)と、約30wt%のHDPEと、約22wt%のLDPEとのブレンドから作られた接着層、約55wt%のHDPEと約45wt%のLDPEとのブレンドから作られたコア層、および約99wt%のLDPEと約1wt%の抗酸化剤を含有するマスターバッチとのブレンドから作られた剥離層を有していた。接着層は、約13.0μmの厚さを有し、コア層は、約45.5μmの厚さを有し、剥離層は、約6.5μmの厚さを有していた。
【0047】
比較例1~4および実施例1~5のそれぞれの接着層に対し、平均表面粗さRaおよび平均凸部間距離Sm、ならびに硬度について試験を行った。比較例1~4および実施例1~5のそれぞれを、接着層を基材に接触させて基材上に置き、次いで、基材から剥離した。基材への接着性、および基材上に創出された性状の指標は「低」~「高」のスケールで提供され、「低」と「高」の間が「中」である。表面粗さ、硬度、基材への接着性、および基材上に創出された性状の結果を、以下の表Iに列挙する。
【0048】
【表1】
【0049】
基材上に創出される性状は「低」であることが望ましく、実施例1~5のそれぞれは、この基準に適合した。また、基材への接着性は「低」~「中」であることが望ましく、実施例1~5のそれぞれは、この基準に適合した。
【0050】
理論に拘束されるものではないが、より柔軟なポリマー配合物を使用し、適切にエンボス化された微細性状を有する接着面を創出することにより、基材への適切な接着を維持したまま繊細な基材の損傷を最低限に抑え、回避さえできることが想定される。柔軟さと接着面での微細性状との組み合わせにより、望ましくない性状、例えば画像の鮮明度を低下させる性状を創出しない特定の種類の表面構造が、基材上に創出される。上述したように、本発明の実施形態によるマスキングフィルムは、先行技術のマスキングフィルムと比較して、マスキングフィルムを接着させた基材の画像の鮮明度を実質的に高めることがわかった。
【0051】
本明細書に記載の実施形態は、多数の可能な実施および例を提示するものであり、必ずしも本開示を特定の実施形態のいずれかに限定することを意図したものではない。それどころか、当業者には理解されるように、これらの実施形態には様々な修正を加えることができる。そのような修正は何れも、本開示の精神および範囲内に含まれ、下記の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
図1
図2