(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】改善された特性を有するメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-B]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート活性化合物生成物、その製造及び製剤化
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240730BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240730BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240730BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07D471/04 106C
A61K31/506
A61P9/00
A61K9/14
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/20
(21)【出願番号】P 2021534766
(86)(22)【出願日】2019-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019085255
(87)【国際公開番号】W WO2020126983
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515174593
【氏名又は名称】アドヴェリオ・ファーマ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャル・ゾヴァ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ブロッコプ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ロンゲリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】グイド・ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ・ノイマン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/076168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
A61K 31/506
A61P 9/00
A61K 9/14
A61K 9/20
A61K 47/38
A61K 47/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変態Iの結晶形態の式(I)
【化1】
のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートの活性化合物生成物を製造する方法であって、変態Iの前記式(I)の化合物のx線ディフラクトグラムが、5.9、6.9、22.7に2θ角のピーク最大値を示し、
a)固体形態の前記式(I)の化合物を、30~100℃の温度にて、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に溶解させ、
b)前記溶解させた式(I)の化合物を、続いて、貧溶媒としての水の、若しくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加によって、溶液から結晶化させ、ステップa)若しくはb)で添加した前記少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比が、1:0~20:1w/wであり、水の若しくは少なくとも1つの湿潤剤と水の組合せの添加を、30~100℃の温度にて0.1分~1200分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた前記式(I)の化合物を添加し、前記少なくとも1つの湿潤剤、ステップa)及び/若しくはb)で添加した前記少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比、前記溶解させた化合物の前記添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りであり、
c)形成された懸濁液を、続いて、1~60K/hの冷却速度で5~50℃の温度に冷却して、
d)凝集液の添加によって、ステップb)で形成した結晶が続いて凝集して、活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、前記式(I)の化合物の質量とステップa)及び/又はb)で添加した前記少なくとも1つの湿潤剤の質量との合計に対する前記凝集液の質量の比が、0.3~2.0である、
方法。
【請求項2】
ステップa)における前記少なくとも1つの極性及び/又は非プロトン性溶媒が、DMSO、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びジメチルホルムアミド(DMF)、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤とのその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)が、湿潤剤としてのエタノールと組み合わせて溶媒としてDMSOを使用し、DMSOとエタノールとの比が、1:0~5:1w/wである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)の後に濾過が続く、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)において、前記溶解させた式(I)の化合物を、貧溶媒としての水若しくはメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加によって前記溶液から結晶化させ、ステップa)若しくはb)で添加した前記少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比が、1:0~12:1w/wであり、水の、若しくは少なくとも1つの湿潤剤と水の前記組合せの前記添加を、50~90℃の温度にて0.1分~360分の期間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた前記式(I)の化合物を添加して、前記少なくとも1つの湿潤剤、ステップa)及び/若しくはb)で添加した前記少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比、前記溶解させた化合物の前記添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)において、形成された前記懸濁液が、5~45K/hの冷却速度で10~30℃の温度に冷却される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップd)で用いる前記凝集液が、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸n-プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸n-ブチル、プロパン酸イソブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸n-プロピル、ブタン酸イソプロピル、ブタン酸n-ブチル及びブタン酸イソブチルから選択されるエステル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、エチルn-プロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル及びテトラヒドロフランから選択されるエーテル、メチルエチルケトン及び2-ペンタノンから選択されるケトン、CCl
4、CHCl
3、CH
2Cl
2、CH
3Cl及びC
2H
4Cl
2から選択される有機塩化物、並びにトルエンからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップd)で形成した前記活性化合物生成物をステップe)で単離及び乾燥させて、単離の後、前記活性化合物生成物を、最初にC
1-C
4アルコールで、続いて酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル及び酢酸イソブチルから選択されるアセテートで洗浄し、続いて減圧下、窒素流を用いて、15~75℃の温度で乾燥させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単離及び乾燥の後、前記活性化合物生成物をステップf)で粉砕する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造される、変態Iの結晶形態の式(I)の化合物のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートの活性化合物生成物であって、前記化合物のx線ディフラクトグラムが、5.9、6.9、22.7に2θ角のピーク最大値を示すことを特徴とし、前記活性化合物生成物が、
以下の特性:前記活性化合物生成物の改善された単離性、単離及び乾燥後の前記活性化合物生成物の改善された排出性、並びに改善された搬送性、ふるい分け性及び微粉化性のうち1つ以上を有する、活性化合物生成物。
【請求項11】
ステップe)における前記単離及び乾燥の後に、前記活性化合物生成物がDMSOを含有しない、請求項8に記載の方法によって製造される、請求項10に記載の活性化合物生成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造される、請求項10に記載の式(I)の化合物の活性化合物生成物を含有し、微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3cP及び/又は5cP、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベート20、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、酸化鉄、並びに二酸化チタンをさらに含有する、固体剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート活性化合物生成物であって、例えば活性化合物生成物の単離性(isolability)、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに活性化合物生成物の搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関して改善された特性を有する、カルバメート活性化合物生成物並びにその剤形を製造及び製剤化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬剤形を製造するための活性化合物生成物の適合性に影響を及ぼす多くの要因がある。特に工業規模での医薬剤形の製造には、例えば活性化合物生成物の良好な単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の良好な排出性、並びに活性化合物生成物の搬送性、ふるい分け性及び微粉化性が不可欠である。これらは、例えば形状及びサイズなどの活性化合物生成物の固体特性によって影響を受け得る。容易に加工できる医薬活性化合物生成物を製造するための既知の技術は、ジェットミル又は湿式粉砕を使用する微粉化などの粒径縮小方法、又は例えば凝集方法などの粒径増大方法である。
【0003】
さらなる不可欠な固体特性は、活性化合物の定義された変態が存在することある。変態Iの結晶形態の式(I)の化合物が存在することが好ましい。
【0004】
本発明の文脈において、「変態Iの結晶形態の式(I)の化合物」は、例えば5.9、6.9及び22.7又は5.9、6.9、16.2、16.5、24.1、22.7及び24.7に2θ角の定義されたピーク最大値を有するX線ディフラクトグラムを参照することによって、又は1707、1633及び1475cm-1若しくは1707、1633、1566、1475、1255及び1223cm-1に定義されたバンド最大値を有するIRスペクトルを介して、又は257℃の融点を活用して、国際公開第2013/076168号パンフレットで変態Iの結晶形態として定義されている式(I)の化合物の変態を意味すると理解されるべきである。
【0005】
医薬活性化合物の固体特性は、剤形の開発及びインビボでの活性化合物の活性に決定的な影響を有する。
式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート
【化1】
は心血管疾患の治療及び/又は予防に使用される医薬活性化合物である。式(I)の化合物の合成は、国際公開第2011/147809号パンフレット及び国際公開第2013/076168号パンフレットに記載されている。国際公開第2013/076168号パンフレットは、とりわけ、変態I~V(多形)の結晶形態の式(I)の化合物及び様々な溶媒和物の製造について記載している。
【0006】
国際公開第2013/076168号パンフレットは、実施例13、方法E又はFにおいて、式(I)の化合物のジジメチルスルホキシド溶媒和物から結晶形態の式(I)の化合物を製造する方法について記載している。
【化2】
【0007】
国際公開第2013/076168号パンフレット、実施例13、方法E:(国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Aに従って製造した)ジジメチルスルホキシド溶媒和物2.0gを、酢酸エチル40ml及びエタノール11.1ml中、還流温度にて17時間撹拌し、室温に冷却して、さらに1時間撹拌した。固体を減圧下で濾別し、それぞれ酢酸エチル1.4mlで4回洗浄し、真空乾燥キャビネット内で軽窒素流下、50℃で乾燥させた。これにより、変態Iの結晶形態で存在する標記化合物(式(I)の化合物)1.4gを得た。
【0008】
国際公開第2013/076168号パンフレット、実施例13、方法F:(国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Aに従って製造した)ジジメチルスルホキシド溶媒和物0.5gを、溶媒12.5ml中、還流温度にて17時間撹拌し、室温に冷却して、さらに1時間撹拌した。固体を減圧下で濾別し、溶媒2mlで洗浄して、減圧下で30分間乾燥させた。これにより、変態Iの結晶形態で存在する標記化合物0.3gを得た。
【0009】
以下の溶媒を使用した:1)酢酸エチル9ml/エタノール3.5ml/水0.3ml、2)イソプロパノール12.5ml、3)イソプロパノール12.5ml/水0.3ml、4)メタノール12.5ml、5)メタノール12.5ml/水0.3ml、6)アセトニトリル12.5ml、7)アセトン12.5ml、8)テトラヒドロフラン12.5ml、9)メチルtert-ブチルエーテル12.5ml。
【0010】
国際公開第2013/076168号パンフレットに記載されているように、変態Iの結晶形態の式(I)の化合物を製造すると、非常に細い毛状の晶癖が生じ、この晶癖により、差圧濾過又はさもなければフィルタ遠心分離機による単離時に、結晶の全方向の層状化により非常に高い引裂強さを有する、非常に高密度のフェルト状濾過ケーキが生成される。この効果は、濾過ケーキのより緻密な構成のために、差圧濾過よりも遠心場でより顕著になると予想できる。これにより、単離時間が長くなり、工業用単離アセンブリからの排出中に、濾過ケーキが破砕又は破断せず、排出経路が閉塞される問題が発生する可能性がある。これらのフェルト状濾過ケーキ構造は、真空接触乾燥機での乾燥、ふるい分け又は微粉化などの全ての後続の方法ステップにおいて問題のあるバルク材料挙動をもたらすことが予想できる。ふるいが頻繁に閉塞されるために、工業用ふるい分け機でのふるい分けは、非常に低い処理量でしか行うことができないので問題がある。後続の微粉化の上流での固体搬送は、高い静電荷及び関連するプラント部品(例えば搬送チャネル)への付着のために困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2013/076168号パンフレット
【文献】国際公開第2011/147809号パンフレット
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、国際公開第2013/076168号パンフレットに記載の方法(経路1)で製造した活性化合物生成物と比較して、活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関して特に良好な特性を示し、したがって固体剤形の医薬活性化合物の工業規模の製造に好適である、式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造することを目的とする。本発明のさらなる目的は、定義された変態、特に変態Iの結晶形態で式(I)の活性化合物を製造することである。本発明のさらなる目的は、本発明による製造方法中に式(I)の活性化合物生成物の水和物又は二水和物の形成を防止することである。さらに、国際公開第2013/076168号パンフレットに記載されている方法(経路1)で製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を、変態Iの結晶形態で含有する固体剤形と比較して、それから製造された固体剤形中の本発明による方法によって製造した活性化合物生成物は、少なくとも同等に良好な医薬特性を示すものとする。
【0013】
本発明の文脈において、「式(I)の化合物の活性化合物生成物」という用語は、「活性化合物生成物(I)」という用語と同義に使用され、同様に「活性化合物生成物」という用語と同義に使用される。
【0014】
本発明の文脈において、「経路1によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物」又は同義的に「経路1によって製造した活性化合物生成物(I)/活性化合物生成物」は、国際公開第2013/076168号パンフレットに記載される方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物として定義される。
【0015】
本発明の文脈において、「経路2によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物」又は同義的に「経路2によって製造した活性化合物生成物(I)/活性化合物生成物」又は同義的に「本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物」又は同義的に「式(I)の化合物の本発明の活性化合物生成物」は、本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物として定義される。
【0016】
「経路1によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物」及び「経路2によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物」の両方は、好ましくは変態Iの結晶形態の式(I)の化合物を含む。
【0017】
本発明の文脈において、例えば活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関する「改善された特性」は、経路1の方法によって製造した活性化合物生成物の特性と比較して、経路2の本発明の方法によって製造した活性化合物生成物の列挙された特性における改善として定義される。これらの「改善された特性」は、本発明において一例として記載されている。
【0018】
先行技術は、球状凝集体を製造する様々な方法について記載している。米国特許第5994538号明細書は、10-フェノチアジニルプロパン酸の球状凝集体及びその製造に関する。10-フェノチアジニルプロパン酸の球状凝集体を製造する方法は、脂肪族又は脂環式酸、脂肪族又は脂環式アルコール及び脂肪族又は脂環式ケトンのエステルから選択される水不混和性凝集液(架橋液)の存在下で、10-フェノチアジニルプロパン酸の懸濁液を水中で撹拌することを含むことを特徴とする。
【0019】
米国特許出願公開第2016083416号明細書は、高収率をもたらすと言われ、工業用途にとってより有利であると言われる条件下で製造可能な球状凝集を使用して、マイクロサイズのアビラテロンアセテートを製造する方法に関する。記載されているのは、マイクロサイズのアビラテロンアセテートを製造する方法であって、活性化合物が最初に薄い結晶の形態で溶液から析出し、次にこれらの結晶が凝集して反応バッチからこれらが単離され、最終的に結晶凝集物を慎重に粉砕することによって脱凝集して、所望の粒径分布を有する粒子を得る方法である。活性化合物が最初に好適な溶媒に溶解され、次いで凝集液の存在下で貧溶媒を使用して結晶化及び凝集する、3つの溶媒の系が決定的なステップとして説明されている。
【0020】
本発明の目的は、例えば活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関して、式(I)の化合物の本発明の活性化合物生成物の製造のための本発明による方法、式(I)の化合物の本発明の活性化合物生成物及びその改善された特性によって達成される。この目的は、式(I)の化合物の活性化合物生成物の定義された変態が形成される場合にさらに達成される。変態Iの結晶形態が形成される場合が好ましい。この目的は、本発明による方法が式(I)の化合物の活性化合物生成物の水和物又は二水和物の形成をもたらさない場合にさらに達成される。
【0021】
本発明により、例えば活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関して改善された特性を有する、式(I)の化合物の本発明の活性化合物生成物は、以下のステップを含む方法で製造される:
a)固体形態の式(I)の化合物を、好適な(極性及び/若しくは非プロトン性)溶媒又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた好適な(極性及び/若しくは非プロトン性)溶媒に高温で溶解させる。
i.場合により、この後に清澄濾過が続いてもよい。
b)ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物は、貧溶媒若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた貧溶媒の添加によって溶液から結晶化させ、
又は
貧溶媒又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた貧溶媒を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物を添加する。
c)形成された懸濁液を、より低い温度まで冷却する。
d)脱凝集液を添加して、活性化合物生成物を形成する。
e)ステップd)で形成した活性化合物生成物を単離し、洗浄し、乾燥させる。
f)ステップe)で単離及び乾燥された活性化合物生成物を、場合により粉砕する。
【0022】
スキーム1は、改善された特性を有する式(I)の化合物の本発明の活性化合物生成物を製造するための、個々の反応ステップを例として示す。
スキーム1:
【化3】
【0023】
本発明の文脈において、改善された活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに式(I)の化合物の活性化合物生成物の搬送性、ふるい分け性及び微粉化性は、例えば、以下を意味するとして理解されるべきである。
【0024】
改善された単離性は、例えば反転フィルタ遠心分離機(実施例15)における、より高い領域特異的処理量(area-specific throughput)によって、工業規模で測定可能である。
【0025】
単離装置からの改善された排出性は、例えば反転フィルタ遠心分離機からの排出経路が閉塞されない最大濾過ケーキ厚さによって測定可能である。
【0026】
改善された乾燥は、例えば真空接触乾燥機における問題のない乾燥、及び乾燥機からの排出時のドロップシャフトの閉塞の回避によって測定可能である。
【0027】
改善されたふるい分け性は、例えば活性化合物生成物の流動性が改善された結果として、工業用ふるい分け機への供給が改善されることによって、及びふるいの閉塞がより少ないことによって、例えば単位時間当たりの活性化合物生成物の処理量によって(実施例16)測定可能である。
【0028】
改善された微粉化は、例えばジェットミルへの活性化合物生成物のより容易な供給によって測定可能である。
【0029】
本発明の文脈において、「工業規模」は、10kgを超える活性化合物のバッチサイズとして定義される。
【0030】
本発明の文脈において、活性化合物生成物の単離は、例えばフィルタ遠心分離機、例えば反転フィルタ遠心分離機を使用して行う。
【0031】
本発明の文脈において、活性化合物生成物の乾燥は、例えば真空接触乾燥機、例えば球状乾燥機を使用して行う。
【0032】
本発明の文脈において、活性化合物生成物のふるい分けは、例えばFrewitt Coniwitt TC200ふるい分け機(ふるい開口径3mm)又はFrewitt Oscillowitt MG-800ふるい分け機(ふるい開口径2.5~4.0mm)を使用して行う。
【0033】
本発明の文脈において、微粉化は、例えばジェットミルでの粉砕によって行う。
【0034】
国際公開第2013/076168号パンフレットは、最も近い先行技術であると考えられる。国際公開第2013/076168号パンフレットは、上記のように、後処理中に問題を引き起こす活性化合物生成物をもたらす式(I)の化合物(経路1)を製造する方法を記載している。後処理中のこれらの問題は、工業規模での式(I)の医薬活性化合物の製造を妨げる。
【0035】
驚くべきことに、国際公開第2013/076168号パンフレットによる方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物(経路1)と比較して、本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物(経路2)は、活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性並びに搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関して特に改善された特性を示した。
【0036】
本発明の目的、即ち、改善された活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性、並びに式(I)の化合物の本発明の活性化合物生成物の搬送性、ふるい分け性及び微粉化性は、以下のように解決される。
【0037】
図1は、国際公開第2013/076168号パンフレットによる方法(経路1)によって製造した、活性化合物生成物(I)の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図2は、本発明による方法(経路2)によって製造した、活性化合物生成物(I)の走査型電子顕微鏡画像を示す。これらの画像は、活性化合物生成物の単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の排出性、並びに本発明による方法によって製造した活性化合物生成物の搬送性、ふるい分け性及び微粉化性に関して、特に改善された特性を指摘する、活性化合物生成物の構造の顕著な相違を示している。
【0038】
経路2を介して製造した材料の単離性は、経路1を介して製造した材料と比較して改善されている。これは例えば、反転フィルタ遠心分離機における、より高い領域特異的処理量に現れる。工業規模での経路1からの材料の単離は、1.6kg/m2hの平均領域特異的処理量に達した。経路2からの材料の平均領域特異的処理量は3.0kg/m2hであり、したがって上記のほぼ倍であった(実施例15)。
【0039】
単離装置からの改善された排出性:経路2による方法は、高い引裂強さを有するフェルト状濾過ケーキの形成を防止する。圧力フィルタでの単離後及びフィルタ遠心分離での単離後の両方で、濾過ケーキは柔らかく成形可能である。これにより、排出経路の閉塞が防止される。例えば、工業規模では、経路1から材料を単離した後の反転フィルタ遠心分離機からの排出経路の閉塞は、濾過ケーキの厚さを8~9mmに縮小させることによってのみ回避することができた。対照的に、経路2からの材料の単離では、排出経路の閉塞が認められずに、25mmの平均濾過ケーキ高さが実現された。
【0040】
改善された乾燥:経路2の方法からの濾過ケーキの柔軟な軟度及び良好な変形性のために、真空接触乾燥機(例えば、球状乾燥機)での乾燥は問題ない。乾燥した材料は、容易に流動可能なバルク材料を形成し、乾燥機からの排出時にドロップシャフトの閉塞も生じることがない。
【0041】
改善されたふるい分け性:経路2の方法からの材料は、その良好な流動性のためにふるい分け機への供給が容易である。ふるい分けによって生じるふるいの閉塞は、経路1による方法からの材料によるよりも著しく少ない。例えば、工業規模では、経路2からの材料65kgは、Frewitt Coniwitt TC200ふるい分け機(ふるい開口径3mm)にて5分未満でふるい分け可能であった。これは13kg/min超に相当する。比較のために、Frewitt Oscillowitt MG-800ふるい分け機(ふるい開口径2.5から4.0mm)を介した経路1からの材料のふるい分けは、10kg/h未満の処理量しか達成しなかった。これは0.17kg/分未満に相当する(実施例16)。ここで認められるのは、経路2の活性化合物生成物と比較した、経路1の活性化合物生成物のふるい処理量における、ほぼ100倍の非常に大きな差である。ふるい処理量のこの非常に大きな差は、主に活性化合物生成物の材料特性に起因し、機械の種類が異なることによって説明できない。
【0042】
固体の取り扱い及び固体の搬送特性が著しく改善される。
【0043】
改善された微粉化:経路2の方法からの材料は、その良好な流動性のために、ジェットミルへの供給が容易である。
【0044】
実施例10及び表2に示すように、本発明による方法のさらなる利点は、打錠のための造粒液の製造中に明らかである。本発明による方法によって製造した活性化合物生成物の混和は、わずかにより多くの水を必要とするため、造粒中の噴霧時間がわずかに延長される。一方、造粒懸濁液の均質化前に、活性化合物を造粒懸濁液に導入するのに必要な混和時間は大幅に短縮される。全体として、このことにより、国際公開第2013/076168号パンフレットで説明した手順(beschriebenen Verfahren)に記載されている方法(経路1)と比較して、迅速で管理しやすい方法が得られる。
【0045】
本発明による方法のさらなる利点は、国際公開第2013/076168号パンフレットに記載されている方法(経路1)と比較して、より広い適用性を各種の造粒方法に提供することである。実施例11に記載されているように、国際公開第2013/076168号パンフレットに記載されている方法(経路1)は、流動床造粒の方法及び湿式分散の方法を用いることができるが、高速ミキサ造粒の方法は限定された範囲でのみ用いることができ、乾式圧縮の方法は用いることができない。対照的に、上記の造粒方法の全てが、本発明による方法(経路2)によって製造した活性化合物生成物に使用可能である。
【0046】
本発明による方法のさらなる利点は、国際公開第2013/076168号パンフレットに記載されている方法(経路1)によって製造した活性化合物生成物と比較して、本発明による方法によって製造した活性化合物生成物により、放出動態(実施例14による放出方法)を用いて仕様外の粒径と仕様に適合する粒径が容易に区別できることである。これは、
図6及び
図7の表8のバッチについて示されている。
【0047】
先行技術に基づいて、本発明による方法が、先行技術の方法からの生成物と比較して、固体剤形における式(I)の医薬活性化合物の工業規模の製造において、そのような著しく改善された特性を示す活性化合物生成物をもたらすことは、予想できなかった。先行技術に基づいて、本発明による方法が、好ましくは変態Iの結晶形態の式(I)の活性化合物の定義された変態をもたらすことも予想できなかった。式(I)の活性化合物の水和物又は二水和物が、本発明による活性化合物生成物の製造中に形成されなかったことも同様に驚くべきことであった。ある条件下で、活性化合物は水と接触すると水和物を形成する。これは驚くべきことに、本発明による方法において防止される。
【0048】
また、先行技術には、ステップe)による単離及び乾燥の過程で洗浄中に(最初にエタノールを用い、次いで酢酸イソプロピルを用いる)一連の洗浄ステップの順守が重要であるということは、示唆されていない。窒素流による乾燥によって、DMSOを含まない生成物が得られることも、先行技術からは認識できない。
【0049】
米国特許第5994538号明細書及び米国特許出願公開第2016083416号明細書は、凝集方法について記載している。これらは、多数の点で本発明による方法とは異なる。いずれの文献も、湿潤剤の使用について記載していない。本発明とは対照的に、米国特許出願公開第2016083416号明細書では、製造した凝集体を粉砕して、従来の方法では製造できない微粒子を製造する。凝集体の濾過性、流動性及び製剤性に関する改善については記載されていない。米国特許出願公開第2016083416号明細書と比較したさらなる違いは、例えば米国特許出願公開第2016083416号明細書により、凝集体の乾燥が少なくとも部分的な解凝集を生じることである。これは、本発明による凝集体では認められなかった。米国特許出願公開第2016083416号明細書は、凝集液として専らエーテルを用いるが、本発明による方法は、好ましくはアセテートを用いる。本発明とは対照的に、米国特許第5994538号明細書は中間体に関し、医薬活性化合物に関するものではない。定義された多形体の製造、乾燥後の溶媒残渣の除去又はさもなければ製剤化などの、本発明にとって重要な態様は、米国特許第5994538号明細書には記載されていない。10-フェノチアジニルプロパン酸の球状凝集体を製造する、米国特許第5994538号明細書に記載された方法は、10-フェノチアジニルプロパン酸の水懸濁液を水不混和性凝集液の存在下で直接撹拌することを特徴とする。本発明のステップa)、b)及びc)は実施されない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】国際公開第2013/076168号パンフレットによる方法(経路1)によって製造した、式(I)の化合物の活性化合物生成物、実施例2-1、走査型電子顕微鏡法による分析。
【
図2】実施例4(経路2)に従って製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物、実施例2-2、走査型電子顕微鏡法による分析。
【
図3】実施例2(経路2)に従って製造した、式(I)の化合物の活性化合物生成物、偏光顕微鏡法による分析。
【
図4】実施例3(経路2)に従って製造した、式(I)の化合物の活性化合物生成物、偏光顕微鏡法による分析。
【
図5】実施例4(経路2)に従って製造した、式(I)の化合物の活性化合物生成物、偏光顕微鏡法による分析。
【
図6】国際公開第2013/076168号パンフレットによる方法(経路1)によって製造した、異なる粒径の活性化合物生成物の放出動態。
【
図7】実施例4(経路2)に従って製造した、異なる粒径の活性化合物生成物の放出動態。
【
図8】国際公開第2013/076168号パンフレットの方法E、実施例13に従って製造し、微粉化した、変態Iの結晶形態の式(I)の化合物のATR IR図。
【
図9】実施例4による本発明による方法によって製造し、微粉化した、変態Iの結晶形態の式(I)の化合物のATR IR図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の一実施形態は、式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造する方法であって、
【化4】
a)固体形態の式(I)の化合物を、30~100℃の温度にて、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に溶解させる、
b)溶解させた式(I)の化合物を続いて、貧溶媒としての水の、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加により、溶液から結晶化させ、ステップa)若しくはb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比は1:0~20:1w/wであり、水の、又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加を、30~100℃の温度にて0.1分~1200分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物を添加し、少なくとも1つの湿潤剤、ステップa)及び/若しくはb)で添加し湿潤剤に対する水の比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りである、
c)形成された懸濁液を、続いて1~60K/hの冷却速度で5~50℃の温度に冷却する、
d)ステップb)で結晶化させた活性化合物が、続いて凝集して、凝集液の添加によって活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量と、ステップa)及び/又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤の質量との合計に対する比が、0.3~2.0である、
方法を含む。
【0052】
本発明のさらなる実施形態は、変態Iの結晶形態における式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造する方法であって、
【化5】
a)固体形態の式(I)の化合物を、30~100℃の温度にて、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に溶解させる、
b)溶解させた式(I)の化合物を続いて、貧溶媒としての水の、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加により、溶液から結晶化させ、ステップa)若しくはb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比は1:0~20:1w/wであり、水の、又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加を、30~100℃の温度にて0.1分~1200分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物を添加し、少なくとも1つの湿潤剤、ステップa)及び/若しくはb)で添加し湿潤剤に対する水の比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りである、
c)形成された懸濁液を、続いて1~60K/hの冷却速度で5~50℃の温度に冷却する、
d)ステップb)で結晶化させた活性化合物が、続いて凝集して、凝集液の添加によって活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量と、ステップa)及び/又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤の質量との合計に対する比が、0.3~2.0である、
方法を含む。
【0053】
本発明のさらなる実施形態は、式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造する方法であって、
a)固体形態の式(I)の化合物を、50~90℃の温度にて、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に溶解させる、
b)溶解させた式(I)の化合物を、続いて、貧溶媒としての水、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加により、溶液から結晶化させ、ステップa)若しくはb)で添加した湿潤剤に対する水の比は、1:0~12:1w/wであり、水の、若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加を、50~90℃の温度にて0.1分~360分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物を添加し、少なくとも1つの湿潤剤、水の、少なくとも1つの湿潤剤に対する比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りである、
c)形成された懸濁液を、続いて5~45K/hの冷却速度で10~30℃の温度に冷却する、
d)ステップb)で結晶化させた活性化合物が、続いて凝集して、凝集液の添加によって活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量と、ステップa)又はb)で添加した湿潤剤の質量との合計に対する比が、0.5~1.5w/wである、
方法を含む。
【0054】
本発明のさらなる実施形態は、変態Iの結晶形態における式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造する方法であって、
a)固体形態の式(I)の化合物を、50~90℃の温度にて、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に溶解させる、
b)溶解させた式(I)の化合物を、続いて、貧溶媒としての水、又はメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加により、溶液から結晶化させ、ステップa)若しくはb)で添加した湿潤剤に対する水の比は、1:0~12:1w/wであり、水の、若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加を、50~90℃の温度にて0.1分~360分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物を添加し、少なくとも1つの湿潤剤、水の、少なくとも1つの湿潤剤に対する比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りである、
c)形成された懸濁液を、続いて5~45K/hの冷却速度で10~30℃の温度に冷却する、
d)ステップb)で結晶化させた活性化合物が、続いて凝集して、凝集液の添加によって活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量と、ステップa)又はb)で添加した湿潤剤の質量との合計に対する比が、0.5~1.5w/wである、
方法を含む。
【0055】
本発明のさらなる実施形態は、式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造する方法であって、
a)固体形態の式(I)の化合物を、湿潤剤としてエタノールを用いて、溶媒としてのDMSOに65~80℃の温度にて溶解させる、
b)溶解させた式(I)の化合物を、続いて、貧溶媒としての水の添加により、溶液から結晶化させ、ステップa)で添加したエタノールに対する水の比が、1:0w/w~3:1w/wであり、貧溶媒の添加を、65~80℃の温度にて0.1~60分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水を最初に投入し、ステップa)に従ってDMSO及びエタノールに溶解させた式(I)の化合物を添加し、エタノール、水の、エタノールに対する比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び添加時間が、上で規定した通りである、
c)形成された懸濁液を、続いて5~35K/hの冷却速度で15~25℃の温度に冷却する、
d)ステップb)で結晶化させた活性化合物が、続いて凝集して、凝集液の添加によって活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、湿潤剤の質量の、式(I)の化合物の質量と、ステップa)又はb)で添加した湿潤剤の質量との合計に対する比が、0.85~1.3w/wである、
方法を含む。
【0056】
本発明のさらなる実施形態は、変態Iの結晶形態における式(I)の化合物の活性化合物生成物を製造する方法であって、
a)固体形態の式(I)の化合物を、湿潤剤としてエタノールを用いて、溶媒としてのDMSOに65~80℃の温度にて溶解させる、
b)溶解させた式(I)の化合物を、続いて、貧溶媒としての水の添加により、溶液から結晶化させ、ステップa)で添加したエタノールに対する水の比が、1:0w/w~3:1w/wであり、貧溶媒の添加を、65~80℃の温度にて0.1~60分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水を最初に投入し、ステップa)に従ってDMSO及びエタノールに溶解させた式(I)の化合物を添加し、エタノール、水の、エタノールに対する比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び添加時間が、上で規定した通りである、
c)形成された懸濁液を、続いて5~35K/hの冷却速度で15~25℃の温度に冷却する、
d)ステップb)で結晶化させた活性化合物が、続いて凝集して、凝集液の添加によって活性化合物生成物が得られ、ステップa)及び/又はb)において湿潤剤を添加した場合、湿潤剤の質量の、式(I)の化合物の質量と、ステップa)又はb)で添加した湿潤剤の質量との合計に対する比が、0.85~1.3w/wである、
方法を含む。
【0057】
a)好適な溶媒への溶解
固体形態の式(I)の化合物を、1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた1つ以上の極性及び/若しくは非プロトン性溶媒に溶解させる。
【0058】
固体形態の式(I)の化合物の例は、任意の所望の溶媒又は非溶媒和物、例えば国際公開第2013/076168号パンフレットに記載の変態I~V、非晶質形態、ジメチルホルムアミド-水溶媒和物、ジジメチルスルホキシド溶媒和物、三酢酸溶媒和物、一水和物及び二水和物である。本発明の一実施形態において、固体形態の用いられる式(I)の化合物は、ジジメチルスルホキシド溶媒和物である。
【0059】
本発明の一実施形態において、ステップa)における少なくとも1つの極性及び/又は非プロトン性溶媒は、DMSO、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びジメチルホルムアミド(DMF)又はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン及びメチル-THFからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤とのその組合せからなる群から選択される。
【0060】
本発明のさらなる実施形態において、ステップa)はDMSOを溶媒として用い、湿潤剤は添加されない。
【0061】
本発明のさらなる実施形態において、ステップa)が、湿潤剤としてのエタノールと組み合わせて溶媒としてDMSOを用い、DMSOとエタノールとの比は1:0~5:1w/wである。本発明のさらなる実施形態において、ステップa)が、湿潤剤としてのエタノールと組み合わせて溶媒としてDMSOを用い、DMSOとエタノールとの比は1:0~4:1w/wである。本発明のさらなる実施形態において、ステップa)が、湿潤剤としてのエタノールと組み合わせて溶媒としてDMSOを用い、DMSOとエタノールとの比は1:0~3.9:1w/wである。
【0062】
溶解は30~100℃の温度で行う。本発明のさらなる実施形態において、溶解は50~90℃の温度で行う。本発明のさらなる実施形態において、溶解は65~80℃の温度で行う。
【0063】
式(I)の化合物は、溶媒又は溶媒と少なくとも1つの湿潤剤との組合せ中に3~50%の濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、式(I)の化合物は、溶媒又は溶媒と少なくとも1つの湿潤剤との組合せ中に3~30%の濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、式(I)の化合物は、溶媒又は溶媒と少なくとも1つの湿潤剤との組合せ中に3~15%の濃度で存在する。
【0064】
a)i.濾過
ステップa)に従って得た溶液は、任意に清澄濾過に供される。
【0065】
b)貧溶媒による結晶化
本発明のさらなる実施形態は、本発明による方法であって、ステップb)において、溶解させた式(I)の化合物を、続いて貧溶媒としての水又はメタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加によって溶液から結晶化させ、ステップa)又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比が1:0~20:1w/wであり、水の、若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水の添加を、30~100℃の温度にて0.1分~1200分の持続時間にわたって行う、
又は
貧溶媒としての水若しくは少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた水を最初に投入し、ステップa)に従って溶解させた式(I)の化合物を添加して、少なくとも1つの湿潤剤、ステップa)及び/若しくはb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比、溶解させた化合物の添加を行う温度及び持続時間は、上で規定した通りに行われる、方法である。
【0066】
本発明のさらなる実施形態において、ステップa)又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比は、1:0~12:1w/wである。本発明のさらなる実施形態において、ステップa)又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤に対する水の比は、1:0~3:1w/wである。
【0067】
本発明のさらなる実施形態において、ステップb)は、50~90℃の温度にて貧溶媒又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた貧溶媒の添加を行うことを含む。本発明のさらなる実施形態において、少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた貧溶媒又は貧溶媒の添加は、65~80℃の温度で行う。
【0068】
本発明のさらなる実施形態において、ステップb)は、貧溶媒又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた貧溶媒の添加を0.1分~360分の持続時間にわたって行うことを含む。本発明のさらなる実施形態において、貧溶媒又は少なくとも1つの湿潤剤と組み合わせた貧溶媒の添加を0.1分~60分の持続時間にわたって行う。
【0069】
本発明の一実施形態において、ステップb)は、湿潤剤としてのエタノールと組み合わせて、貧溶媒として水を用いる。
【0070】
本発明による方法の一実施形態において、ステップa)で少なくとも1つの湿潤剤を添加し、ステップb)では湿潤剤を添加しない。
【0071】
本発明による方法のさらなる実施形態において、ステップa)で湿潤剤を添加せず、ステップb)では少なくとも1つの湿潤剤を添加する。
【0072】
本発明による方法のさらなる実施形態において、ステップa)及びステップb)で少なくとも1つの湿潤剤を添加する。
【0073】
本発明による方法のさらなる実施形態において、ステップa)でもステップb)でも湿潤剤を添加しない。
【0074】
本方法は、変態Iの結晶形態の式(I)の化合物の添加によって種晶添加の有無にかかわらず行われ得る。式(I)の化合物の種晶の製造は、一例として、国際公開第2013/076168号パンフレット、実施例13、方法E及びFと同様に行う。
【0075】
c)冷却
本発明の一実施形態において、形成された懸濁液は、1~60K/h又は5~45K/h又は5~35K/hの冷却速度で5~50℃の温度に冷却する。本発明のさらなる実施形態において、形成された懸濁液は、1~60K/h又は5~45K/h又は5~35K/hの冷却速度で10~30℃の温度に冷却する。本発明のさらなる実施形態において、形成された懸濁液は、1~60K/h又は5~45K/h又は5~35K/hの冷却速度で15~25℃の温度に冷却する。
【0076】
本発明の一実施形態において、形成された懸濁液は、1~60K/hの冷却速度で5~50℃又は10~30℃又は15~25℃の温度に冷却する。本発明のさらなる実施形態において、形成された懸濁液は、5~45K/hの冷却速度で5~50℃又は10~30℃又は15~25℃の温度に冷却する。本発明のさらなる実施形態において、形成された懸濁液は、5~35K/hの冷却速度で5~50℃又は10~30℃又は15~25℃の温度に冷却する。
【0077】
d)凝集液による凝集
凝集液として用いられるのは、水とごく微量だけ混和するエステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸n-プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸n-ブチル、プロパン酸イソブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸n-プロピル、ブタン酸イソプロピル、ブタン酸n-ブチル若しくはブタン酸イソブチル、水とごく微量だけ混和するエーテル、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、エチルn-プロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン、水とごく微量だけ混和するケトン、例えばメチルエチルケトン若しくは2-ペンタノン、又は水とごく微量だけ混和する有機塩化物、例えばCCl4、CHCl3、CH2Cl2、CH3Cl若しくはC2H4Cl2、又はトルエンである。
【0078】
本発明の一実施形態において、凝集液は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロパン酸メチル、プロパン酸エチル、プロパン酸n-プロピル、プロパン酸イソプロピル、プロパン酸n-ブチル、プロパン酸イソブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸n-プロピル、ブタン酸イソプロピル、ブタン酸n-ブチル及びブタン酸イソブチルから選択されるエステル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、エチルn-プロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル及びテトラヒドロフランから選択されるエーテル、メチルエチルケトン及び2-ペンタノンから選択されるケトン、CCl4、CHCl3、CH2Cl2、CH3Cl若しくはC2H4Cl2から選択される有機塩化物並びにトルエンからなる群から選択される。本発明のさらなる実施形態において、用いられる凝集液はエステルである。本発明のさらなる実施形態において、用いられる凝集液はアセテートである。本発明のさらなる実施形態において、用いられる凝集液は酢酸イソプロピルである。
【0079】
凝集体の形成のための前提条件は、溶媒系が2つの液相からなることである。凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量とステップa)又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤の質量との和に対する比は、0.3~2.0w/wである。比は、以下の式によって計算され得る。
凝集液w/w/(式(I)の化合物w/w+湿潤剤w/w)=0.3~2.0w/w
【0080】
さらなる実施形態において、凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量とステップa)又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤の質量との和に対する比は、0.5~1.5w/wである。さらなる実施形態において、凝集液の質量の、式(I)の化合物の質量とステップa)又はb)で添加した少なくとも1つの湿潤剤の質量との和に対する比は、0.85~1.3w/wである。
【0081】
凝集液の添加は、0.1~1200分又は0.1~360分又は0.1~60分の持続時間にわたって、5~50℃又は10~30℃又は15~25℃の温度で行う。
【0082】
これに続いて、0.1分~5日間、0.1分~1200分又は0.1分~360分又は0.1分~60分の持続時間にわたって、撹拌することによってエージングを行う。
【0083】
e)単離、洗浄及び乾燥
活性化合物生成物を単離及び洗浄する。一実施形態において、活性化合物生成物を最初にC1-C4アルコール、続いて酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル及び酢酸イソブチルから選択されるアセテートで洗浄する。さらなる実施形態において、活性化合物生成物を最初にエタノールで洗浄し、続いて酢酸イソプロピルで洗浄する。
【0084】
本発明の一実施形態において、乾燥は、減圧下で窒素流を用いて15~75℃の温度にて行う。本発明のさらなる実施形態において、乾燥は25~70℃の温度にて行う。本発明のさらなる実施形態において、乾燥は25~65℃の温度にて行う。
【0085】
収率は理論値の72%~96%である。DMSOを含まない生成物が得られる。
【0086】
f)任意の粉砕
単離及び乾燥後、本発明による活性化合物生成物をふるい分けして、微粉化(例えばジェットミルを使用する粉砕)又は湿式粉砕を使用して場合により粉砕する。
【0087】
本発明の一実施形態は、本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を含み、活性化合物生成物は、以下の特性:活性化合物生成物の改善された単離性、単離及び乾燥後の活性化合物生成物の改善された排出性、並びに改善された搬送性、ふるい分け性及び微粉化性のうち1つ以上を有し、改善された特性は上記で定義した通りである。
【0088】
本発明のさらなる実施形態は、本発明による方法によって製造した活性化合物生成物を含み、活性化合物生成物は、遠心分離機を使用する単離について、上昇した平均領域特異的処理量として測定された、改善された単離性及び上昇したふるい処理量にて測定された、改善されたふるい分け性の特性を少なくとも示す。
【0089】
本発明のさらなる実施形態は、本発明による方法によって製造した活性化合物生成物を含み、ステップe)における単離、洗浄及び乾燥の後、活性化合物生成物はDMSOを含有しない。
【0090】
本発明のさらなる実施形態は、経路2によって製造した活性化合物生成物を含有する固体剤形を含む。
【0091】
固体剤形の製造は、直接混合/乾式圧縮の形態で、又は湿式造粒法(高速ミキサ造粒又は流動床造粒)によって行われ得る。打錠は、好ましくは最初に製造した粒状物(granulate)を用いて行う。これに続いて、固体剤形をコーティングしてもよい。
【0092】
湿式造粒において、活性化合物生成物は、固体として最初にプレミックスに装入してもよく(初期装入物)、又は造粒液に懸濁される。用いる造粒液は、溶媒及び親水性バインダを含有する。親水性バインダは、造粒流体中に分散されるか、又は好ましくはその中に溶解される。造粒液に用いることができる溶媒としては、有機溶媒、例えばエタノール若しくはアセトン又は水又はその混合物が挙げられる。溶媒として水を用いる場合が好ましい。用いる親水性バインダは、薬学的に許容される親水性添加剤、好ましくは造粒流体の溶媒に溶解するものである。ここで好ましく用いられるのは、親水性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルセルロースLF、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体(例えばKollidon(登録商標)VA64、BASF)、ゼラチン、グアーガム、部分加水分解デンプン、アルギネート又はキサンタンである。親水性バインダとして、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用することが特に好ましい。親水性バインダは、(医薬剤形の総質量に対して)1%~12%、好ましくは1%~6%の濃度で存在する。
【0093】
湿式造粒のプレミックス(初期装入物)は、さらなる薬学的に許容される添加剤、例えば充填剤、無水バインダ及び崩壊促進剤(崩壊剤)などを含有する。充填剤及び無水バインダは、例えばセルロース粉末、微結晶性セルロース、ケイ化微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、マンニトール、マルチトール、ソルビトール及びキシリトール、好ましくは微結晶性セルロース若しくはマンニトール又は微結晶性セルロースとマンニトール/ラクトース一水和物との混合物である。崩壊促進剤(崩壊剤)は、例えばカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース(架橋カルボキシメチルセルロース)、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルスターチナトリウム、ジャガイモデンプングリコール酸ナトリウム、部分加水分解デンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン及びジャガイモデンプンである。
【0094】
続いて、得られた粒状物を固体剤形に加工する。添加した薬学的に許容される添加剤は、例えば潤滑剤、流動促進剤、流動調節剤及び崩壊促進剤(崩壊剤)である。潤滑剤、流動促進剤、流動調節剤は、例えばフマル酸、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、高分子量脂肪アルコール、デンプン(コムギ、コメ、トウモロコシ又はジャガイモデンプン)、タルク、高分散性(コロイド状)二酸化ケイ素及びジステアリン酸グリセロールである。崩壊促進剤(崩壊剤)は、例えばカルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース(架橋カルボキシメチルセルロース)、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分加水分解デンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン及びジャガイモデンプンである。
【0095】
固体剤形には、さらなるステップにおいて当業者によく知られている慣例的条件下で、場合によりコーティングを行う。コーティングは、コーティング剤及びフィルム形成剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース5cP又は15cP)、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(例えばKollidon(登録商標)VA64、BASF)、シェラック、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル、粘着防止剤としてのタルク及び/又は着色剤/顔料、例えば二酸化チタン、酸化鉄、インジゴチン又は好適な着色コーティングの添加によって行う。
【0096】
本発明の一実施形態は、本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を含有し、微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3cP及び/又は5cP、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベート20、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、酸化鉄並びに二酸化チタンをさらに含有する固体剤形を含む。
【0097】
本発明のさらなる実施形態は、本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を含有する固体剤形を含み、固体剤形は、固体剤形当たり1.25~20mgの式(I)の化合物の活性化合物生成物を含有する。さらなる実施形態は、固体剤形当たり、本発明による方法によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物1.25mg、2.5mg、5.0mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg又は20mgを含有する固体剤形を含む。
【0098】
本発明を、非限定的な好ましい実施例及び比較例を参照して以下により詳細に説明する。別途明記しない限り、列挙した全ての量は重量パーセントを示す。
【0099】
実施例1~3、5及び6の目的は、本発明による活性化合物生成物を製造する、本発明による方法の開発であった。実施例4は、式(I)の活性化合物の仕様を達成する本発明の方法について記載する。実施例4はまた、仕様の達成に関連し、DMSOを含まない生成物を生じる、洗浄ステップ及び乾燥方法を含む。実施例4に含まれる洗浄ステップ及び乾燥方法は、本発明の方法による実施例5及び6について同様に行う。
【0100】
A.実施例
【0101】
【0102】
実施例1
国際公開第2013/076168号パンフレット、実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート8.85gを、DMSO35.8g中にて75℃に加熱した。得られた透明溶液に、水-エタノール混合物125.7g(4:1w/w、室温)を360分間にわたって添加した。エタノール-水混合物の最初の0.5gを添加したら、国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の結晶性メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート59mgを、溶液に種晶添加した。エタノール-水混合物の残量を添加した後、形成された懸濁液を20℃にゆっくり(10K/hの速度で)冷却した。この懸濁液に酢酸イソプロピル34.0gを20℃にて60分間にわたって添加した。混合物を20℃にてさらに60分間撹拌した後、固体を分離し、洗浄して、減圧下で乾燥させた。これにより、本発明の活性化合物生成物の形態の変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートを得た。
収量:7.66g(86.6%理論値(o.t.))
【0103】
実施例2
国際公開第2013/076168号パンフレット、実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート8.85gを、DMSO35.9g中にて75℃に加熱した。得られた透明溶液に、水-エタノール混合物125.7g(9:1w/w、室温)を360分間にわたって添加した。水-エタノール混合物の最初の0.5gを添加したら、国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の結晶性メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート59mgを、溶液に種晶添加した。残りの水-エタノール混合物を添加した後、形成された懸濁液を20℃にゆっくり(10K/hの速度で)冷却した。この懸濁液に酢酸イソプロピル21.56gを20℃にて60分間にわたって添加した。混合物を20℃にてさらに60分間撹拌した後、固体を分離し、洗浄して、減圧下で乾燥させた。これにより、本発明の活性化合物生成物の形態の変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートを得た。
収量:6.98g(78.9%理論値)
【0104】
実施例3
国際公開第2013/076168号パンフレット、実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート8.86gを、DMSO35.8g中にて75℃に加熱した。得られた透明溶液に、水125.6g(室温)を360分間にわたって添加した。水の最初の0.5gを添加したら、国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の結晶性メチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート59mgを、溶液に種晶添加した。水125.6gを添加した後、形成された懸濁液を20℃にゆっくり(10K/hの速度で)冷却した。この懸濁液に酢酸イソプロピル8.91gを20℃にて60分間にわたって添加した。混合物を20℃にてさらに60分間撹拌した後、固体を分離し、洗浄して、減圧下で乾燥させた。これにより、本発明の活性化合物生成物の形態の変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートを得た。
収量:6.36g(71.8%理論値)
【0105】
実施例4
ジ-DMSO溶媒和物としての、式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(71.4%w/w式(I)の化合物、28.6%w/w DMSO、国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Aのステップ「hot filtration of the suspension and washing with ethyl acetate(「懸濁液の熱濾過及び酢酸エチルでの洗浄」)まで従って製造)10.0gをDMSO59.4gに懸濁させて、75℃に加熱した。得られた透明溶液にエタノール25.0gを添加し、混合物を75℃にて15分間撹拌した。溶液を濾過し、DMSO35.6gで洗浄した。濾液を75℃に加熱し、水84.9gを5分にわたって滴加した。懸濁液を28K/hの速度で20℃に冷却し、酢酸イソプロピル41.0gを60分にわたって添加した。混合物を20℃にてさらに30分間撹拌し、固体を単離した。次いで、これを最初にエタノール39.7gで洗浄し、続いて酢酸イソプロピル39.6gで洗浄した。湿潤生成物を、窒素流を用いて減圧下、50℃にて一晩乾燥した。これにより、本発明の活性化合物生成物の形態の変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートを得た。
収量:6.85g(95.9%理論値)
MS(ESIpos):m/z=427(M+H)+
1H-NMR(400 MHz,DMSO-d6):δ=3.62(br s,3H),5.79(s,2H),6.22(br s,4H),7.10-7.19(m,2H),7.19-7.26(m,1H),7.32-7.40(m,1H),7.67及び7.99(2 br s,1H),8.66(m,1H),8.89(dd,1H)ppm
【0106】
実施例5
ジ-DMSO溶媒和物としての、式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(71.4%w/w式(I)の化合物、28.6%w/w DMSO、国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Aのステップ「hot filtration of the suspension and washing with ethyl acetate(「懸濁液の熱濾過及び酢酸エチルでの洗浄」)まで従って製造)20.0gをDMSO100gに懸濁させて、72℃に加熱した。得られた透明溶液を、65℃に温度制御されたエタノール64.8g及び水259.3gの溶液に50分にわたって添加した。懸濁液を45K/hの速度で20℃に冷却し、酢酸イソプロピル75.0gを50分にわたって添加した。混合物を20℃にてさらに19時間撹拌し、固体を単離した。次いで、これをエタノール120.0gで洗浄した。湿潤生成物を、窒素流を用いて減圧下、50℃にて一晩乾燥した。これにより、本発明の活性化合物生成物の形態の変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートを得た。
収量:13.6g(93.2%理論値)
【0107】
実施例6
ジ-DMSO溶媒和物としての、式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート(71.4%w/w式(I)の化合物、28.6%w/w DMSO、国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Aのステップ「hot filtration of the suspension and washing with ethyl acetate(「懸濁液の熱濾過及び酢酸エチルでの洗浄」)まで従って製造)70.0gをDMSO250gに懸濁させて、72℃に加熱した。得られた透明溶液を、65℃に温度制御されたエタノール251.8g及び水982.6gの溶液に50分にわたって添加した。懸濁液を45K/hの速度で20℃に冷却し、酢酸イソプロピル262.5gを60分にわたって添加した。混合物を20℃にてさらに19時間撹拌し、固体を単離した。次いで、これをエタノール120.0gで洗浄した。湿潤生成物を、窒素流を用いて減圧下、50℃にて一晩乾燥した。これにより、本発明の活性化合物生成物の形態の変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートを得た。
収量:48.1g(96.2%理論値)
【0108】
実施例7
走査型電子顕微鏡法による分析:走査型電子顕微鏡法による分析のための粉末試料は、ドラフトチャンバ内で調製する。この目的のために、試料を5mL(又はそれ以下の)ロールドエッジバイアルに充填すべきであり、充填量は約50mg(スパチュラ先端部約1杯分)であるべきである。粉末を調製するために、SEM試料プレートに、導電性両面接着炭素パッドを設けて、バイアルのロールドエッジに接着結合させる。粉末を含有しているバイアルを上下反転させ、バイアル内部の粉末を試料ホルダの接着面に散布する。ここで、粉末が導電性付着面に接着結合される。バイアルを再度直立させ、付着していない材料を叩いて出す。この方法は、スパチュラを使用せずに、閉鎖系で効果的に行われる。装填された試料プレートを厚さ15~20nmの金層でスパッタコーティングして、十分な導電率を生じさせる。イメージングは、FEI ESEM Quanta400走査型電子顕微鏡をトポグラフィーコントラストモードで使用し、サンプル表面の原子との相互作用の結果として放出される二次電子を使用して行う。画像は30倍、100倍、500倍、2000倍、5000倍の倍率でキャプチャされる。活性化合物生成物の各製造経路(
図1:経路1、
図2:経路2)について、倍率30倍の例を示す。
【0109】
実施例8
実施例2、3又は4に従って製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を偏光顕微鏡法によって分析した。偏光顕微鏡法分析は、電子画像キャプチャを備えたZeiss Axiolab装置機器(DHS MicroCam2022)を使用して行った。データ処理は、BHS Bilddatenbankソフトウェア(dhs Dietermann&Heuser Solution GmbH)を使用して行った。試料調製のために、分析する最終懸濁液を少量スライドに付着させ、薄いカバースリップで慎重に覆った。
図3、4及び5は、それぞれ実施例2、3及び4に従って製造した活性化合物生成物の偏光顕微鏡法画像を示す。
【0110】
実施例9
粒径分布の決定粒径分布の決定は、湿式分散ユニットを装着したSympatec Helos装置を使用して行う。分散媒体を製造するために、式(I)の化合物の活性化合物生成物(微粉化又は非微粉化)10~25mgを、小容器内で水10ml/Tween20を1滴と共に予備分散させる。分散液を撹拌するが、泡の形成を避けるために振盪しない。続いて、分散した材料を湿式分散ユニット内の脱イオン水(約0.5l)に添加し、超音波で5分間処理して、測定する(10秒)。超音波曝露時間は5分であり、50mmのアパーチャを用い(R2、又は測定範囲を超えた場合、R3)、懸濁液の光学密度は10~25%であり、撹拌/ポンピング速度を50%(40~60%)に設定して、超音波の5分後に評価を行う。
【0111】
測定結果を表1に示す。3つの列X10%、X50%及びX90%は、分析した活性化合物生成物の粒子の10%、50%及び90%がそれぞれそれより下に存在する直径を示す。比較可能な粒径スペクトルは、両方の経路から活性化合物を用いて得ることができる。
【0112】
【0113】
実施例10
微粉化活性化合物を使用する造粒懸濁液の製造造粒懸濁液を使用して、その中に存在するバインダによって、用いられる初期電荷の粒径を増大させ、得られた粒状物中に活性化合物を均一に分布させる。固体剤形の組成は、経路1からの微粉化活性化合物又は経路2からの微粉化活性化合物が用いられるか否かとは無関係である。しかし、造粒懸濁液の製造は異なる。経路2によって製造した活性化合物の混和は、わずかにより多くの水を必要とするため、造粒中の噴霧時間がわずかに延長される。一方、造粒懸濁液の均質化前に、活性化合物を造粒懸濁液に導入するのに必要な混和時間は大幅に短縮される。全体として、このことにより、経路1による方法と比較して、迅速で管理しやすい方法が得られる。
【0114】
【0115】
実施例11
種々の造粒方法を使用する固体剤形の製造
【0116】
実施例11.1:流動床造粒
実施例4-1(a)~4-1(h)
初期装入方法。実施例12、表3による組成物。バインダ及び湿潤剤を水に溶解させる。流動床造粒の過程で、このバインダ溶液を、活性化合物、充填剤及び崩壊促進剤(崩壊剤)の50%からなる初期装入物に造粒液として噴霧する。得られた粒状物を乾燥及びふるい分け(メッシュサイズ0.8mm)した後、崩壊促進剤の残りの50%及び潤滑剤を添加及び混合する。得られたプレス可能な混合物をプレスして、固体剤形を得る。
【0117】
実施例4-1(i)~4-1(q)
懸濁方法:実施例12、表4による組成物。バインダ及び湿潤剤を水に溶解させ、活性化合物をこの溶液に懸濁させる。流動床造粒の過程で、この懸濁液を、充填剤及び崩壊促進剤(崩壊剤)の50%からなる初期装入物に造粒液として噴霧する。得られた粒状物を乾燥及びふるい分け(メッシュサイズ0.8mm)した後、崩壊促進剤の残りの50%及び潤滑剤を添加及び混合する。得られたプレス可能な混合物をプレスして、固体剤形を得る。錠剤の後続のコーティングは、コーティング剤及びフィルム形成剤並びに粘着防止剤からなる水溶液に懸濁された顔料を用いて行う。
【0118】
実施例11.2:高速ミキサ造粒
実施例4-2(a)~4-2(f)
実施例12、表5による組成物。高速ミキサにおいて、活性化合物、充填剤及び崩壊促進剤(崩壊剤)の50%を混合する(粒状物初期装入物)。水、バインダ及び湿潤剤からなる約7.5%のバインダ溶液を製造して、造粒液として粒状物初期装入物に添加する。混合物全体を、高速回転撹拌手段を使用して均一に混合する。混合が完了したら、湿潤粒状物をふるい分けして(メッシュサイズ2mm)、乾燥させる。乾燥させた粒状物(メッシュサイズ0.8mm)をふるい分けした後、次いで、この粒状物を崩壊促進剤の50%及び潤滑剤と混合するが、これを2つの個別の混合ステップで行う。得られたプレス可能な混合物をプレスして、固体剤形を得る。
【0119】
実施例11.3:乾式圧縮
実施例4-3(a)~4-3(f)
実施例12、表6による組成物。活性化合物、充填剤、崩壊剤(崩壊剤)50%及び無水バインダを、自由落下ミキサで混合する。粉末混合物をふるい分けし(メッシュサイズ0.8mm)、26mmの円形ラムを使用して偏心プレスでブリケット化する。その後、ブリケットを手で粉砕し、得られた混合物を再度0.8mmのふるいに通す。ふるい分けした高分散二酸化ケイ素及びさらにふるい分けした崩壊剤の50%(いずれの場合も0.5mmのメッシュサイズ)を添加し、混合によって均一に分布させた。ふるい分けした潤滑剤を最後の混合ステップの前に添加した。次いで、得られたプレス可能な混合物をプレスして、固体剤形を得る。
【0120】
実施例11.4:湿式分散
実施例5-1、5-2、5-3、5-4、5-5、5-6、5-7
実施例12、表7による組成物。HPM-セルロース5cPを撹拌により水中に混和させる。続いて、ドデシル硫酸ナトリウム及び活性化合物を添加し、撹拌によって混和する。2つの異なる分散方法を後続の分散に使用した。
【0121】
a)実施例5-1及び5-6:S25N分散ツールを装着したUltra-Turrax IKA T25の使用:ジャケット冷却容器内で、浸漬させたUltra-Turrax機器を使用して、上記の混合物を最大速度(24 000rpm)で40~45分間分散させた。
【0122】
b)実施例5-2;5-3;5-4;5-5;5-7:MK分散ツールを備えたIKA magicLAB実験室コロイドミルの使用:ジャケット冷却容器において、上記の混合物を再循環モードで25~40分間、最小スロット幅及び14,600~23,000rpmの速度で分散させた。
【0123】
流動床造粒の過程で、このようにして製造された活性化合物懸濁液は、充填剤及び崩壊促進剤(崩壊剤)の50%からなる初期装入物に造粒液として噴霧する。得られた粒状物を乾燥及びふるい分け(メッシュサイズ0.8mm)した後、崩壊促進剤の残りの50%及び潤滑剤を添加及び混合する。得られたプレス可能な混合物をプレスして、固体剤形を得る。
【0124】
結果:
経路1によって製造した活性化合物生成物(I):流動床方法を使用すると、高速ミキサ造粒又は湿式分散により、放出基準(第6の放出方法に従って定義される)を満たす高速放出固体剤形が得られ、一方、乾式圧縮を使用すると、放出基準を満たさない固体剤形が得られる。
【0125】
経路2によって製造した活性化合物生成物(I):用いた造粒方法とは関係なく、放出基準を満たす高速放出固体剤形が得られる。
【0126】
したがって、経路2によって製造した活性化合物生成物(I)は、上記の造粒方法の全てについて、より広い適用性を提供する。
【0127】
実施例12
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
実施例13
圧壊強度。様々な形式の関数としての圧壊強度は、活性化合物の製造方法に関係なく同等である。これは、European Pharmacopoeia第6版、本巻2008に従って測定する。
【0134】
実施例14
放出方法。European Pharmacopoeia第6版、本巻2008によれば、薬物形態の試験は、装置2(パドル)を用いて行う。撹拌機の回転速度は、0.01N塩酸900ml中75rpm(毎分回転数)である。次いで、6個全ての試験片が30分の試験時間後に、活性化合物の少なくとも80%を放出媒体に放出した場合、放出基準が満たされている。12個の試験片を試験した場合、基準は12個全ての試験片に同様に適用される。
【0135】
【0136】
実施例4-1(a)~4-1(h)において、未コーティングの固体剤形からの活性化合物の放出に対する、活性化合物の粒径の影響を調査した。実施例9で規定した活性化合物生成物を、固体剤形に混和した。固体剤形を流動床造粒(実施例11.1)によって製造し、初期装入方法を全ての例で利用した。経路1又は経路2によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を使用した。放出の違いを、経路1については
図6に、経路2については
図7に示す。
【0137】
経路1によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を考慮するとX90%≧30μm~X90%=43μmを有する粒径分布の活性化合物生成物(I)を含有する固体剤形は、放出基準(実施例14の方法)を満たしていない。基準はかろうじて満たされていない。この粒径範囲では、放出プロファイルの識別はかろうじて可能である。対照的に、経路1を介して製造され、X90%<10μm又はX90%=27μmを有する式(I)の化合物の活性化合物生成物のより微細なバッチは、放出基準を満たす。
【0138】
経路2によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物を固体剤形に用いる場合、X90%<14μmを有するバッチは放出基準を満たしている。14μm<Xμm≦24μmのX90%によって表される粒径分布を有する活性化合物生成物(I)も同様に放出基準を満たすが、経路1によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物の結果と同様に、活性化合物をよりゆっくりと放出する。X90%>34μmを有する粒径分布において、経路2によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物の放出挙動には、明確な違いが明らかである。固体剤形は、以前に考慮したバッチと比較しても、互いに規定の粒径分布と比較しても(X90%=34μm対X90%=51μm)、顕著により遅い放出を示す。
【0139】
したがって、経路2によって製造した式(I)の化合物の活性化合物生成物については、仕様外の粒径と仕様に適合する粒径との間の放出動態を介して区別することがより容易である。この仕様は以下の通りである:X10%≧0.3μm、X50%=1-8μm及びX90%≦20μm。
【0140】
実施例4-1(i)~4-1(q)は、懸濁法を利用する流動床造粒を用いて同様に製造されたコーティング固体剤形と考えられる。適用したコーティングは、選択した着色顔料が異なる。実施例4-1(i)~4-1(l)は、経路1によって製造した活性化合物生成物(I)を微粉化形態で使用し、実施例4-1(m)~4-1(q)は、経路2によって製造した活性化合物生成物(I)を微粉化形態で混和した。示されている全ての例は、実施例14に従って定義した放出基準を満たしている。
【0141】
実施例4-2(a)~4-2(f)は、経路1又は経路2によって製造した活性化合物生成物(I)を用いて粒状物/固体剤形を製造するさらなる造粒方法としての、高速ミキサ造粒の適合性を示す。製造後、固体剤形の全ての組成物は放出基準を満たしている。
【0142】
実施例4-3(a)~4-3(f)は、経路1又は経路2によって製造した活性化合物生成物(I)を用いて粒状物/錠剤を製造するさらなる造粒方法としての乾式圧縮の適合性の違いを示す。経路1によって製造した活性化合物生成物(I)を使用すると、放出基準を満たさない固体剤形が生じるが、経路2によって製造した活性化合物生成物(I)を使用すると、放出基準を満たす固体剤形が得られる。
【0143】
実施例5-1~5-7は、経路1又は経路2によって製造した非微粉化活性化合物生成物(I)を使用する場合の湿式分散方法の適合性、したがって、固体剤形からの放出基準を満たしながら、固体剤形への混和前に活性化合物(I)の微粉化によって分配できることを示す。
【0144】
実施例15
反転フィルタ遠心分離機におけるより高い領域特異的処理量。工業規模。
【0145】
【0146】
これらのデータは、経路1からの材料と比較して、経路2からの材料の改善された単離性を示す。
【0147】
実施例16
改善されたふるい処理量。工業規模。
【0148】
【0149】
ここで認められるのは、経路2の活性化合物生成物と比較した、経路1の活性化合物生成物のふるい処理量における、ほぼ100倍の非常に大きな差である。ふるい処理量のこの非常に大きな差は、主に活性化合物生成物の材料特性に起因し、機械の種類が異なることによって説明できない。
【0150】
実施例17
国際公開第2013/076168号パンフレットの実施例13、方法Eに従って製造した、変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート16.1kgを微粉化して、15.2kgを得た。収率は94.4%であった。
【0151】
図8は、上部に変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートの比較バッチのATR IR図を示し、下部に微粉化化合物のATR IRを示す。式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートは、微粉化後でも、変態Iのままであることが明らかであった。ATR IR図は、国際公開第2013/076168号パンフレットの
図1による変態Iにおける式(I)の化合物のIRスペクトルに対応する。
【0152】
実施例18
実施例4の本発明による方法によって製造した、変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメート39.0kgを微粉化して、36.9kgを得た。収率は94.6%であった。
【0153】
図9は、上部に変態Iの結晶形態の式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートの比較バッチのATR IR図を示し、下部に微粉化化合物のATR IRを示す。実施例4の本発明による方法によって製造した式(I)のメチル{4,6-ジアミノ-2-[5-フルオロ-1-(2-フルオロベンジル)-1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン-3-イル]ピリミジン-5-イル}カルバメートは、微粉化後も変態Iのままであることが明らかであった。ATR IR図は、国際公開第2013/076168号パンフレットの
図1による変態Iにおける式(I)の化合物のIRスペクトルに対応する。