(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】頭蓋内EEGの一時的記録のためにベッドサイドで設置される単位化されたデバイスのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/37 20210101AFI20240730BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20240730BHJP
A61B 5/293 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B5/37
A61B5/374
A61B5/293
(21)【出願番号】P 2021557947
(86)(22)【出願日】2020-03-29
(86)【国際出願番号】 US2020025593
(87)【国際公開番号】W WO2020205677
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520016376
【氏名又は名称】アイシーイー ニューロシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ワジリ, アレン
(72)【発明者】
【氏名】エマーソン, ロナルド
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/018291(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0289311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋内脳波記録(EEG)デバイスであって、
接地電極と、
参照電極と、
少なくとも1つの記録要素を備える皮質記録アレイと
を備え、
前記接地電極、参照電極、および皮質記録アレイはそれぞれ、
同一の支持構造に固定され、
前記
頭蓋内EEGデバイスが対象の脳内に適切に埋め込まれると、前記接地電極および前記参照電極は、非灰白質解剖学的空間内に位置付けられ、前記皮質記録アレイは、大脳皮質内に位置する対象の灰白質脳空間内の脳活動を測定するように位置付けられる、
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項2】
前記皮質記録アレイは、1~10個の記録要素を備える、請求項1に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項3】
前記非灰白質解剖学的空間は、
帽状腱膜下腔、
皮質下白質空間、
頭蓋骨固定デバイス内の空間、または
脳室空間
から選択される、請求項1または2のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項4】
前記参照電極および前記接地電極は、異なる非灰白質解剖学的空間内に位置付けられる、請求項
3に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項5】
(a)前記参照電極は、
前記帽状腱膜下腔内にあり、前記接地電極は、
前記皮質下白質空間内にある、または
(b)前記接地電極は、
前記帽状腱膜下腔内にあり、前記参照電極は、
前記皮質下白質空間内にある、または
(c)前記参照電極は、
前記帽状腱膜下腔内にあり、前記接地電極は、
前記脳室空間内にある、または
(d)前記接地電極は、
前記帽状腱膜下腔内にあり、前記参照電極は、
前記脳室空間内にある、または
(e)前記参照電極は、
前記頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記接地電極は、
前記皮質下白質空間内にある、または
(f)前記接地電極は、
前記頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記参照電極は、
前記皮質下白質空間内にある、または
(g)前記参照電極は、
前記頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記接地電極は、
前記脳室空間内にある、または
(h)前記接地電極は、
前記頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記参照電極は、
前記脳室空間内にある、請求項4に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項6】
前記接地電極が、
前記帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項7】
前記接地電極が、
前記帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に3.5cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項8】
前記参照電極が、
前記帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項9】
前記参照電極が、
前記帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に約3cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項10】
前記接地電極が、
前記皮質下白質
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項11】
前記接地電極が、
前記皮質下白質
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約2cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項12】
前記参照電極が、
前記皮質下白質
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項13】
前記参照電極が、
前記皮質下白質
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約1.5cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項14】
前記接地電極が、
前記頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項15】
前記接地電極が、
前記頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に約2cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項16】
前記参照電極が、前記頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、請求項3
または5に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項17】
前記参照電極が、前記頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に約1.5cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、請求項3
または5に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項18】
前記参照電極および/または前記接地電極は、前記頭蓋骨固定デバイスの内側管腔上の伝導性要素と接触し、前記伝導性要素は、
頭蓋骨と接触する、そうでなければ電気的に絶縁される伝導性要素と電気的に持続する、請求項
3または5に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項19】
前記接地電極が、
前記脳室
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項20】
前記接地電極が、
前記脳室
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約5.5cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項21】
前記参照電極が、
前記脳室
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項22】
前記参照電極が、
前記脳室
空間内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約4cmの距離において、前記
同一の支持構造に固定される、請求項3~5のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項23】
前記
頭蓋内EEGデバイスは、
脳室脳脊髄液排出機能をさらに備える、請求項1~22のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項24】
前記皮質記録アレイは、
前記対象の前記大脳皮質の前記灰白質脳空間内または前記大脳皮質の前記灰白質脳空間に隣接して位置付けられる、請求項1~23のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項25】
前記
頭蓋内EEGデバイスは、頭蓋内圧、酸素濃度、グルコースレベル、血流または組織灌流、組織温度、電解質濃度、組織オスモル濃度、脳機能および/または健康に関連するパラメータ、あるいはそれらの任意の組み合わせを測定することが可能な生理学的センサをさらに備える、請求項1~24のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項26】
前記接地電極、前記参照電極、および/または前記記録要素は、金属、有機化合物、または他の導電性材料から作製される、請求項1~25のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項27】
前記
同一の支持構造は、プラスチックまたは生体適合性材料から作製される、請求項1~26のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項28】
前記
同一の支持構造は、可撓性または剛性である、請求項1~27のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項29】
前記
少なくとも1つの記録要素、前記参照電極、および前記接地電極は、前記
同一の支持構造の周囲に円周方向に配列される、請求項1~28のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項30】
前記
同一の支持構造は、円筒形である、請求項1~29のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項31】
前記
少なくとも1つの記録要素、前記参照電極、および/または前記接地電極は、0.5mm~4.0mmの幅である、請求項1~30のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項32】
前記
頭蓋内EEGデバイスは、脳活動を処理することが可能なプロセッサに接続されるインターフェースをさらに備える、請求項1~31のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項33】
脳活動は、
(a)平均電圧レベル、
(b)二乗平均平方根(rms)電圧レベルおよび/またはピーク電圧レベル、
(c)スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含み、また、平均電力レベル、rms電力レベル、および/またはピーク電力レベル等の計算された電力の変動を含む、記録された脳活動の高速フーリエ変換(FFT)を伴う導関数、
(d)電力スペクトル分析、バイスペクトル分析、密度、コヒーレンス、信号相関および畳み込み等のスペクトル分析から導出される測定値、
(e)線形予測モデル化または自己回帰モデル化等の信号モデル化から導出される測定値、
(f)積分された振幅、
(g)ピークエンベロープまたは振幅ピークエンベロープ、
(h)周期的進化、
(i)抑制比、
(j)コヒーレンスおよび位相遅延、
(k)測定された脳活動のスペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含む、記録された電気信号のウェーブレット変換、
(l)ウェーブレット原子、
(m)バイスペクトル、自己相関、クロスバイスペクトル、または相互相関分析、
(n)ニューラルネットワーク、再帰ニューラルネットワーク、または深層学習技法から導出されるデータ、または
(o)(a~n)から導出されるパラメータの局所的最小値または最大値を検出する前記
少なくとも1つの記録要素の識別
から選択される少なくとも1つのパラメータによって測定される、請求項32に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項34】
前記脳活動は、ボルト(V)、ヘルツ(Hz)、
ならびに/または
、その導関数
および/もしくは比率から選択される値の分類別測定によって測定される、請求項33に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項35】
前記プロセッサは、前記皮質記録アレイによって検出される脳活動を処理、フィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、比較、記憶、圧縮、表示、および/または別様に伝送することが可能である、請求項32~34のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項36】
前記プロセッサは、脳電気活動を分析、操作、表示、相関、記憶、および/または別様に伝送するハードウェアおよび/またはソフトウェアを備える、請求項32~35のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項37】
前記プロセッサは、自動化された方式において、選択された電極構成のために前記接地電極、前記参照電極、および前記皮質記録アレイを識別する、請求項32~36のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項38】
前記プロセッサは、自動化された方式において、選択された前記接地電極を使用して、選択された電極構成によって記録されるEEG信号の同相信号除去を実施する、請求項37に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項39】
前記プロセッサは、自動化された方式において、選択された前記参照電極を使用して、前記皮質記録アレイによって検出される脳電気信号に基づいて、参照EEG記録を発生させる、請求項37~38のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項40】
前記プロセッサは、前記皮質記録アレイの個々の記録要素からの参照EEG記録の数学的導出をさらに実施し、合成EEGデータチャネルを発生させ得る、請求項37~39のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項41】
前記
頭蓋内EEGデバイス、前記インターフェース、および前記プロセッサは、相互に統合される、
前記プロセッサおよび前記インターフェースは、相互に統合される、または
前記
頭蓋内EEGデバイスおよび前記インターフェースは、相互に統合される、請求項32~40のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項42】
前記インターフェースは、物理的インターフェースである、請求項32~41のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項43】
前記インターフェースは、無線インターフェースである、請求項32~41のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項44】
前記インターフェースは、
患者内に埋め込まれる、請求項32~43のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【請求項45】
前記インターフェースは、前記皮質記録アレイによって検出される脳活動をフィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、圧縮、および/または伝送することが可能である、請求項32~44のいずれか1項に記載の
頭蓋内EEGデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波記録の技術分野において訓練されていない臨床医が、ベッドサイドにおいて、具体的設計によって、接地および参照電極を電気的に「静穏」な場所に位置付け、永続的かつ高忠実性の皮質内EEGを記録する、単位化された頭蓋内電極アレイを挿入し、機能させることを可能にする、システムおよび方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
脳波記録(EEG)は、対の記録電極を横断した電圧変化を測定することによって、脳の内因性電気活動を検出する、技法である。そのような脳活動は、主として、大脳皮質の灰白質内に位置するニューロンによって発生される。
【0003】
EEGは、内因性脳電気活動の異常をもたらす、種々の条件を患う患者における脳の健康を監視するために著しく有用である。発作活動を検出する際の中心的役割に加え、EEGは、脳の健康が、減少された血流、減少された酸素、または増加された頭蓋内圧等の潜在的に可逆的原因からのリスクがあり得る、他の設定におけるリアルタイム生理学的モニタとして有意な有用性を与えることが示されている。そのような条件は、一般に、集中処置設定において管理される、急性脳傷害を患う患者において認められる。したがって、緊急または集中処置設定において、信頼性があって、かつ再現可能な方式において、EEGを実施する能力は、急性脳傷害を患う患者の臨床管理において大きな価値がある。しかしながら、従来のEEGは、一連の技術的および実践的課題の結果として、多くの臨床設定において実施することが困難である。
【0004】
第1に、従来のEEGは、患者の頭皮への金属電極の一時的固定に依拠する。そのような金属頭皮ベースの電極は、概して、金属-皮膚電気界面の天然限界、大脳皮質からの距離に起因する頭皮から記録される電気電位の低信号振幅、介在組織(例えば、頭蓋骨、皮膚等)の存在、および皮質導出電気信号の有意な平均効果に起因して、不良な信号/雑音特性を与え、これはともに、後続データ解釈を限定する。
【0005】
第2に、長期頭皮アレイの適用は、EEGの技術分野において熟練し、経験がある、訓練された技術者の可用性を要求する。本訓練された個人は、特に、未加工脳導出電気信号の処理と関連付けられる技術的要件をEEG信号に考慮するときに重要である。本処理は、接地電極を使用した電気アーチファクトの初期ハードウェアベースの同相信号除去と、共通参照電極と対合される記録電極からの比較信号入手を伴う後続ステップとを含む。共通参照および接地電極を位置付け、その安定性を記録することは、効果的EEG記録のために最もかつ絶対的に非常に重要である、すなわち、不良な信号(接地または参照電極から関連付けられる増幅器ハードウェアへのワイヤの不正確な電気接続、頭皮の具体的点における接地および参照電極上の正しくない位置付け等に起因する)または断続データ(金属電極と皮膚との間の高インピーダンス条件、皮膚との電極接触の完全な損失等に起因する)のいずれかが、提供される場合、EEG記録の全体が、誤ったまたは解釈不能なものになり得る。したがって、従来の頭皮ベースのEEGは、高度に訓練された技術者が、永続的かつ高忠実性の接地および参照電極を設置および維持することを要求する。
【0006】
第3に、従来の頭皮電極の設置に続いて、各電極と関連付けられるワイヤは、個々に、EEG記録システムと関連付けられるハードウェア増幅器要素上の具体的入力に接続される。電極ワイヤのいずれか(特に、共通接地または参照電極からのもの)が、ハードウェア上の入力に正しくなく接続される場合、EEG記録は、誤ったものになる、解釈不能なものになる、または不可能になるであろう。
【0007】
最後に、従来のEEGソフトウェアは、ユーザが、特定の患者のための使用時の電極の「モンタージュ」(すなわち、頭部を横断して離間された電極の具体的解剖学的「パターン」)を具体的に輪郭付けることを要求し、記録されるEEGの正確な表示のために、接地、参照、および記録電極間の接続の詳細な知識を余儀なくさせる。配線接続のいずれかが、誤って標識される場合、EEG記録の全体が、正しくないまたは不適切な方式において解釈され、これは、有意な臨床リスクをもたらし得る。
【0008】
全ての前述の理由から、致命的神経学的傷害を患う患者における脳監視のための従来のEEGの性能は、初期頭皮電極設置、電極ワイヤと関連付けられるデバイスハードウェアの接続、デバイスハードウェアおよびソフトウェアにおける所与の電極モンタージュのための適切なチャネルの割当および接続、ならびに頭皮電極の後続保守のために、高度に訓練された技術者の持続的可用性を必須とする。
【0009】
しかしながら、重要なこととして、神経学的傷害を患う患者が治療される、臨床設定の大部分では、訓練された技術者が持続的ベースで利用可能であることは、実践的または費用効果的ではなく、これは、脳傷害における持続監視ツールとしてのEEGの著しく限定された使用をもたらす。したがって、当技術分野において訓練されていない臨床医によって、高忠実性EEGデータの単純、再現可能、かつ信頼性がある収集を可能にする、デバイスは、したがって、大きな価値がある。
【0010】
深刻な脳傷害を患う患者は、多くの場合、頭蓋骨および脳の中への監視または療法用デバイスの挿入を受ける。いくつかのそのようなデバイスは、圧力、組織酸素レベル、血流率等の生理学的パラメータを検出することができる。他のデバイスは、脳脊髄液(CSF)を排出し、頭蓋内圧を緩和することによって、療法用機能を果たすことができる。より最近では、直接EEGを脳から記録するように設計される、デバイスが、ある範囲の脳傷害を患う患者において使用されている。直接脳記録を可能にする、そのようなデバイスは、EEG信号の「発生器」(例えば、大脳皮質の灰白質内に存在するニューロン)との直接接触に起因して、ロバストな、永続的、かつ高振幅のEEGデータを提供することが示されている。着目すべきこととして、頭蓋内電極を使用する、そのようなアプローチは、以前は、EEG記録における参照および接地のための別個に独立して接続された頭皮電極を使用していた。しかしながら、脳の中へのそのようなデバイスの挿入は、多くの場合、正式な手術室外の緊急設定(集中治療室または救急処置室等)において生じ、EEGの技術分野において熟練していない臨床医によって実施され、広範な臨床ベースで本アプローチを一般化する能力は、著しく限定されている。
【0011】
したがって、EEGの技術分野において訓練されていない臨床医が、頭蓋内脳電気活動の一時的記録のために、ベッドサイドで電極デバイスを位置付け、機能させることを可能にする、システムおよび方法は、脳傷害患者の処置において有意な価値がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の側面によると、接地電極と、参照電極と、少なくとも1つの記録要素を備える、皮質記録アレイとを備える、頭蓋内脳波記録(EEG)デバイスが、提供され、接地電極、参照電極、および皮質記録アレイはそれぞれ、支持構造に固定され、本デバイスが対象の脳内に適切に埋め込まれると、接地電極および参照電極は、非灰白質解剖学的空間内に位置付けられ、皮質記録アレイは、大脳皮質内に位置する対象の灰白質脳空間内の脳活動を測定するように位置付けられる。
【0013】
1つの形態では、皮質記録アレイは、1~10個の記録要素を備える。
【0014】
1つの形態では、非灰白質解剖学的空間は、帽状腱膜下腔、皮質下白質空間、頭蓋骨固定デバイス内の空間、または脳室空間から選択される。
【0015】
1つの形態では、参照電極および接地電極は、異なる非灰白質解剖学的空間内に位置付けられる。
【0016】
1つの形態では、参照電極は、帽状腱膜下腔内にあって、接地電極は、皮質下白質空間内にある、または接地電極は、帽状腱膜下腔内にあって、参照電極は、皮質下白質空間内にある、または参照電極は、帽状腱膜下腔内にあって、接地電極は、心室空間内にある、または接地電極は、帽状腱膜下腔内にあって、参照電極は、心室空間内にある、または参照電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、接地電極は、皮質下白質空間内にある、または接地電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、参照電極は、皮質下白質空間内にある、または参照電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、接地電極は、心室空間内にある、または接地電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、参照電極は、心室空間内にある。
【0017】
1つの形態では、接地電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cmの距離において、支持構造に固定される。
【0018】
1つの形態では、接地電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に3.5cmの距離において、支持構造に固定される。
【0019】
1つの形態では、参照電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cmの距離において、支持構造に固定される。
【0020】
1つの形態では、参照電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に3.0cmの距離において、支持構造に固定される。
【0021】
1つの形態では、接地電極が、皮質下白質内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.0cm~3.0cmの距離において、支持構造に固定される。
【0022】
1つの形態では、接地電極が、皮質下白質内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に2.0cmの距離において、支持構造に固定される。
【0023】
1つの形態では、参照電極が、皮質下白質内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.0cm~3.0cmの距離において、支持構造に固定される。
【0024】
1つの形態では、参照電極が、皮質下白質内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.5cmの距離において、支持構造に固定される。
【0025】
1つの形態では、接地電極が、頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.0cm~3.0cmの距離において、支持構造に固定され、頭蓋骨固定デバイス内に定置される。
【0026】
1つの形態では、接地電極が、頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に2.0cmの距離において、支持構造に固定され、頭蓋骨固定デバイス内に定置される。
【0027】
1つの形態では、参照電極が、頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.0cm~3.0cmの距離において、支持構造に固定され、頭蓋骨固定デバイス内に定置される。
【0028】
1つの形態では、参照電極が、頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cmの距離において、支持構造に固定され、頭蓋骨固定デバイス内に定置される。
【0029】
1つの形態では、参照電極および/または接地電極は、頭蓋骨と接触する、そうでなければ電気的に絶縁される伝導性要素と電気的に持続する、頭蓋骨固定デバイスの内側管腔上の伝導性要素と接触する。
【0030】
1つの形態では、接地電極が、脳室内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cmの距離において、支持構造に固定される。
【0031】
1つの形態では、接地電極が、脳室内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に5.5cmの距離において、支持構造に固定される。
【0032】
1つの形態では、参照電極が、脳室内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cmの距離において、支持構造に固定される。
【0033】
1つの形態では、参照電極が、脳室内に位置付けられると、皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に4.0cmの距離において、支持構造に固定される。
【0034】
1つの形態では、本デバイスはさらに、心室脳脊髄液排出機能を備える。
【0035】
1つの形態では、皮質記録アレイは、大脳皮質の灰白質脳空間内またはそれに隣接して位置付けられる。
【0036】
1つの形態では、本デバイスはさらに、頭蓋内圧、酸素濃度、グルコースレベル、血流または組織灌流、組織温度、電解質濃度、組織オスモル濃度、脳機能および/または健康に関連するパラメータ、もしくはそれらの任意の組み合わせを測定することが可能な生理学的センサを備える。
【0037】
1つの形態では、接地電極、参照電極、および/または記録要素は、金属、有機化合物、もしくは他の導電性材料から作製される。
【0038】
1つの形態では、支持構造は、プラスチックまたは生体適合性材料から作製される。
【0039】
1つの形態では、支持構造は、可撓性または剛性である。
【0040】
1つの形態では、記録要素、参照電極、および接地電極は、支持構造の周囲に円周方向に配列される。
【0041】
1つの形態では、支持構造は、円筒形である。
【0042】
1つの形態では、記録要素、参照電極、および/または接地電極は、0.5mm~4.0mmの幅である。
【0043】
1つの形態では、本デバイスはさらに、脳活動を処理することが可能なプロセッサに接続される、インターフェースを備える。
【0044】
1つの形態では、脳活動は、
(a)平均電圧レベル、
(b)二乗平均平方根(rms)電圧レベルおよび/またはピーク電圧レベル、
(c)スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含み、また、平均電力レベル、rms電力レベル、および/またはピーク電力レベル等の計算された電力の変動を含む、記録された脳活動の高速フーリエ変換(FFT)を伴う導関数、
(d)電力スペクトル分析、バイスペクトル分析、密度、コヒーレンス、信号相関および畳み込み等のスペクトル分析から導出される測定値、
(e)線形予測モデル化または自己回帰モデル化等の信号モデル化から導出される測定値、
(f)積分された振幅、
(g)ピークエンベロープまたは振幅ピークエンベロープ、
(h)周期的進化、
(i)抑制比、
(j)コヒーレンスおよび位相遅延、
(k)測定された脳活動のスペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含む、記録された電気信号のウェーブレット変換、
(l)ウェーブレット原子、
(m)バイスペクトル、自己相関、クロスバイスペクトル、または相互相関分析、
(n)ニューラルネットワーク、再帰ニューラルネットワーク、または深層学習技法から導出されるデータ、または
(o)(a-n)から導出されるパラメータの局所的最小値または最大値を検出する、記録要素の識別、
から選択される、少なくとも1つのパラメータによって測定される。
【0045】
1つの形態では、脳活動は、ボルト(V)、ヘルツ(Hz)、および/または導関数ならびに/もしくはその比率から選択される、値の分類別測定によって測定される。
【0046】
1つの形態では、プロセッサは、皮質記録アレイによって検出される脳活動を処理、フィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、比較、記憶、圧縮、表示、および/または別様に伝送することが可能である。
【0047】
1つの形態では、プロセッサは、脳電気活動を分析、操作、表示、相関、記憶、および/または別様に伝送する、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを備える。
【0048】
1つの形態では、プロセッサは、自動化された方式において、選択された電極構成のために接地電極、参照電極、および皮質記録アレイを識別する。
【0049】
1つの形態では、プロセッサは、自動化された方式において、選択された接地電極を使用して、選択された電極構成によって記録されるEEG信号の同相信号除去を実施する。
【0050】
1つの形態では、プロセッサは、自動化された方式において、選択された参照電極を使用して、皮質記録アレイによって検出される脳電気信号に基づいて、参照EEG記録を発生させる。
【0051】
1つの形態では、プロセッサはさらに、皮質記録アレイの個々の記録要素からの参照EEG記録の数学的導出を実施し、合成EEGデータチャネルを発生させる。
【0052】
1つの形態では、デバイス、インターフェース、およびプロセッサは、相互に統合される、プロセッサおよびインターフェースは、相互に統合される、またはデバイスおよびインターフェースは、相互に統合される。
【0053】
1つの形態では、インターフェースは、物理的インターフェースである。
【0054】
1つの形態では、インターフェースは、無線インターフェースである。
【0055】
1つの形態では、インターフェースは、患者内に埋め込まれる。
【0056】
1つの形態では、インターフェースは、皮質記録アレイによって検出される脳活動をフィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、圧縮、および/または伝送することが可能である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
頭蓋内脳波記録(EEG)デバイスであって、
接地電極と、
参照電極と、
少なくとも1つの記録要素を備える皮質記録アレイと
を備え、
前記接地電極、参照電極、および皮質記録アレイはそれぞれ、支持構造に固定され、
前記デバイスが対象の脳内に適切に埋め込まれると、前記接地電極および前記参照電極は、非灰白質解剖学的空間内に位置付けられ、前記皮質記録アレイは、大脳皮質内に位置する対象の灰白質脳空間内の脳活動を測定するように位置付けられる、デバイス。
(項目2)
前記皮質記録アレイは、1~10個の記録要素を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記非灰白質解剖学的空間は、
帽状腱膜下腔、
皮質下白質空間、
頭蓋骨固定デバイス内の空間、または
脳室空間
から選択される、項目1または2のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目4)
前記参照電極および前記接地電極は、異なる非灰白質解剖学的空間内に位置付けられる、項目1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目5)
(a)前記参照電極は、帽状腱膜下腔内にあり、前記接地電極は、皮質下白質空間内にある、または
(b)前記接地電極は、帽状腱膜下腔内にあり、前記参照電極は、皮質下白質空間内にある、または
(c)前記参照電極は、帽状腱膜下腔内にあり、前記接地電極は、脳室空間内にある、または
(d)前記接地電極は、帽状腱膜下腔内にあり、前記参照電極は、脳室空間内にある、または
(e)前記参照電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記接地電極は、皮質下白質空間内にある、または
(f)前記接地電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記参照電極は、皮質下白質空間内にある、または
(g)前記参照電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記接地電極は、脳室空間内にある、または
(h)前記接地電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあり、前記参照電極は、脳室空間内にある、項目4に記載のデバイス。
(項目6)
前記接地電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目7)
前記接地電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に3.5cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目8)
前記参照電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目9)
前記参照電極が、帽状腱膜下腔内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に約3cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目10)
前記接地電極が、皮質下白質内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目11)
前記接地電極が、皮質下白質内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約2cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目12)
前記参照電極が、皮質下白質内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目13)
前記参照電極が、皮質下白質内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約1.5cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目14)
前記接地電極が、頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目15)
前記接地電極が、頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に約2cmの距離において、前記支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目16)
前記参照電極が、前記頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に1.0cm~3.0cmの距離において、前記支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目17)
前記参照電極が、前記頭蓋骨固定デバイス内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最表在記録要素より遠位に約1.5cmの距離において、前記支持構造に固定され、前記頭蓋骨固定デバイス内に定置される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目18)
前記参照電極および/または前記接地電極は、前記頭蓋骨固定デバイスの内側管腔上の伝導性要素と接触し、前記伝導性要素は、前記頭蓋骨と接触する、そうでなければ電気的に絶縁される伝導性要素と電気的に持続する、項目14~17のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目19)
前記接地電極が、脳室内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目20)
前記接地電極が、脳室内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約5.5cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目21)
前記参照電極が、脳室内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目22)
前記参照電極が、脳室内に位置付けられると、前記皮質記録アレイの最深在記録要素より近位に約4cmの距離において、前記支持構造に固定される、項目3~5のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目23)
前記デバイスは、脳室脳脊髄液排出機能をさらに備える、項目1~22のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目24)
前記皮質記録アレイは、前記大脳皮質の前記灰白質脳空間内または前記大脳皮質の前記灰白質脳空間に隣接して位置付けられる、項目1~23のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目25)
前記デバイスは、頭蓋内圧、酸素濃度、グルコースレベル、血流または組織灌流、組織温度、電解質濃度、組織オスモル濃度、脳機能および/または健康に関連するパラメータ、あるいはそれらの任意の組み合わせを測定することが可能な生理学的センサをさらに備える、項目1~24のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目26)
前記接地電極、前記参照電極、および/または前記記録要素は、金属、有機化合物、または他の導電性材料から作製される、項目1~25のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目27)
前記支持構造は、プラスチックまたは生体適合性材料から作製される、項目1~26のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目28)
前記支持構造は、可撓性または剛性である、項目1~27のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目29)
前記記録要素、前記参照電極、および前記接地電極は、前記支持構造の周囲に円周方向に配列される、項目1~28のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目30)
前記支持構造は、円筒形である、項目1~29のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目31)
前記記録要素、前記参照電極、および/または前記接地電極は、0.5mm~4.0mmの幅である、項目1~30のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目32)
前記デバイスは、脳活動を処理することが可能なプロセッサに接続されるインターフェースをさらに備える、項目1~31のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目33)
脳活動は、
(a)平均電圧レベル、
(b)二乗平均平方根(rms)電圧レベルおよび/またはピーク電圧レベル、
(c)スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含み、また、平均電力レベル、rms電力レベル、および/またはピーク電力レベル等の計算された電力の変動を含む、記録された脳活動の高速フーリエ変換(FFT)を伴う導関数、
(d)電力スペクトル分析、バイスペクトル分析、密度、コヒーレンス、信号相関および畳み込み等のスペクトル分析から導出される測定値、
(e)線形予測モデル化または自己回帰モデル化等の信号モデル化から導出される測定値、
(f)積分された振幅、
(g)ピークエンベロープまたは振幅ピークエンベロープ、
(h)周期的進化、
(i)抑制比、
(j)コヒーレンスおよび位相遅延、
(k)測定された脳活動のスペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含む、記録された電気信号のウェーブレット変換、
(l)ウェーブレット原子、
(m)バイスペクトル、自己相関、クロスバイスペクトル、または相互相関分析、
(n)ニューラルネットワーク、再帰ニューラルネットワーク、または深層学習技法から導出されるデータ、または
(o)(a~n)から導出されるパラメータの局所的最小値または最大値を検出する前記記録要素の識別
から選択される少なくとも1つのパラメータによって測定される、項目32に記載のデバイス。
(項目34)
前記脳活動は、ボルト(V)、ヘルツ(Hz)、および/または導関数ならびに/あるいはその比率から選択される値の分類別測定によって測定される、項目33に記載のデバイス。
(項目35)
前記プロセッサは、前記皮質記録アレイによって検出される脳活動を処理、フィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、比較、記憶、圧縮、表示、および/または別様に伝送することが可能である、項目32~34のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目36)
前記プロセッサは、脳電気活動を分析、操作、表示、相関、記憶、および/または別様に伝送するハードウェアおよび/またはソフトウェアを備える、項目32~35のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目37)
前記プロセッサは、自動化された方式において、選択された電極構成のために前記接地電極、前記参照電極、および前記皮質記録アレイを識別する、項目32~36のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目38)
前記プロセッサは、自動化された方式において、選択された前記接地電極を使用して、選択された電極構成によって記録されるEEG信号の同相信号除去を実施する、項目37に記載のデバイス。
(項目39)
前記プロセッサは、自動化された方式において、選択された前記参照電極を使用して、前記皮質記録アレイによって検出される脳電気信号に基づいて、参照EEG記録を発生させる、項目37~38のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目40)
前記プロセッサは、前記皮質記録アレイの個々の記録要素からの参照EEG記録の数学的導出をさらに実施し、合成EEGデータチャネルを発生させ得る、項目37~39のいずれか1項に記載のシステム。
(項目41)
前記デバイス、前記インターフェース、および前記プロセッサは、相互に統合される、
前記プロセッサおよび前記インターフェースは、相互に統合される、または
前記デバイスおよび前記インターフェースは、相互に統合される、項目32~40のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目42)
前記インターフェースは、物理的インターフェースである、項目32~41のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目43)
前記インターフェースは、無線インターフェースである、項目32~41のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目44)
前記インターフェースは、前記患者内に埋め込まれる、項目32~43のいずれか1項に記載のデバイス。
(項目45)
前記インターフェースは、前記皮質記録アレイによって検出される脳活動をフィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、圧縮、および/または伝送することが可能である、項目32~44のいずれか1項に記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の実施形態は、付随の図面を参照して議論されるであろう。
【0058】
【
図1】
図1は、第1の側面による、頭蓋内EEGデバイスを描写する。
【0059】
【
図2】
図2は、第2の側面による、頭蓋内EEGデバイスを描写する。
【0060】
【
図3】
図3は、第3の側面による、頭蓋内EEGデバイスを描写する。
【0061】
【
図4】
図4は、第4の側面による、頭蓋内EEGデバイスを描写する。
【0062】
【
図5-7】
図5-7は、既知の接点間間隔を伴う一連の電極アレイを使用して麻酔されたブタモデル内で発生された、代表的EEGデータを提供する。
【
図6】
図5-7は、既知の接点間間隔を伴う一連の電極アレイを使用して麻酔されたブタモデル内で発生された、代表的EEGデータを提供する。
【
図7】
図5-7は、既知の接点間間隔を伴う一連の電極アレイを使用して麻酔されたブタモデル内で発生された、代表的EEGデータを提供する。
【0063】
【
図8】
図8は、第5の側面による、頭蓋内EEGデバイスを描写する。
【0064】
【
図9】
図9は、第6の側面による、頭蓋内EEGデバイスを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本明細書で使用されるように、「参照電極」は、埋込可能アレイ上の1つまたはそれを上回る記録要素によって検出される脳活動の比較を可能にする対照としての可変電極対の共通部材として作用するように設計される、接点(好ましくは、また、金属から作製される)を指す。例えば、参照電極は、複数の記録要素によって検出される脳活動の比較を可能にすることができる。
【0066】
本明細書で使用されるように、「接地電極」は、非生理学的源(局所電気機器等)から導出され、したがって、そのような非生理学的信号の同相信号除去を可能にする、大域的に記録される電気信号についての情報を提供する役割を果たす、記録要素を指す。
【0067】
本明細書で使用されるように、「記録要素」は、脳電気活動を検出することが可能である、接点である。
【0068】
本明細書で使用されるように、「帽状腱膜下腔」は、表皮および帽状腱膜(頭皮の筋膜層)ならびに頭蓋骨の骨膜および骨の下方にある、頭皮の解剖学的区画を指す。帽状腱膜下腔は、有意な傷害、出血、頭蓋内感染症のリスク、または他の主な医療合併症のリスクを伴わずに、容易にアクセスされ、特殊ツールを使用して横断され得る、自然発生無血管領域である。
【0069】
本明細書で使用されるように、「皮質下白質空間」は、大脳皮質の灰白質に深在する脳半球内に位置する、脳の白質を指す。
【0070】
本明細書で使用されるように、「頭蓋骨固定デバイス」は、頭蓋骨内の開口部を通して、別個のハードウェア要素(例えば、電極アレイ)の通過および安定化を可能にする、頭蓋骨内に埋め込まれる、または別様にそれに固着されるように設計される、ハードウェア要素を指す。
【0071】
本明細書で使用されるように、「脳室空間」は、脳内の脳脊髄液含有室のうちの1つ内の解剖学的位置を指す。
【0072】
本明細書で使用されるように、「支持構造」は、(a)参照、接地、および記録要素を格納することが可能であって、(b)脳によって発生された電気信号を関連付けられるプロセッサに伝送することが可能であって、かつ(c)皮膚を通して挿入され、随意に、帽状腱膜下腔を通して、対象の頭蓋骨内の穴ぐり器孔を通して、かつ少なくとも一部が頭蓋内に維持された状態で貫通されることが可能である、構造を指す。支持構造は、帽状腱膜下腔および/または頭蓋骨を通して貫通される、別個の機器片を通した通過のために設計されてもよい、もしくは支持構造自体が、独立通過を可能にするための必要要素を含有してもよい。
【0073】
本明細書で使用されるように、「円周方向配列」は、地理的に具体的電気信号(例えば、アレイの片側でのみ生じるもの)が、アレイの回転位置にかかわらず、電気信号に関連して記録され得るように、支持構造の周囲に完全に巻着するものとして定義される。これは、したがって、最適組織接触を伴って総指向性記録を可能にし、および/または本デバイスの具体的配向の必要性を排除する。
【0074】
本明細書で使用されるように、「近位」および「遠位」は、支持構造に沿った、位置を示すために使用され、本デバイスの最近位側面は、脳内の本デバイスの先端(例えば、挿入の最深在点)に常駐し、本デバイスの最遠位側面は、脳内に挿入される本デバイスの先端から最も遠い点(例えば、脳内に挿入されない本デバイスの端部)に常駐する。
【0075】
本明細書で使用されるように、「深」および「浅」は、脳表面に対するデバイスの位置を説明するために使用される。例えば、「より深い」挿入は、脳の物質の中のより遠くまで挿入される、デバイスの構造に沿った位置を示す一方、「表在」は、脳内に挿入される本デバイスの先端からより遠いデバイスの構造に沿った位置を意味する。
【0076】
図1-4を参照すると、対象の脳内に埋め込むための4つの頭蓋内脳波記録(EEG)デバイス100、200、300、400が、示される。各デバイスは、接地要素と、参照要素と、少なくとも1つの記録要素を備える、皮質記録アレイとを含み、要素はそれぞれ、支持構造に固定される。
【0077】
本デバイスが、対象の脳内に適切に埋め込まれると、接地要素および参照要素は、非灰白質解剖学的空間内に位置付けられ、皮質記録アレイは、大脳皮質内に位置する対象の灰白質脳空間内の脳活動を測定するように位置付けられる。
【0078】
皮質記録アレイは、1~10個の記録要素を備えてもよく、これは、編成され、支持構造の長さに沿った具体的点に位置付けられ、大脳皮質内に設置され、またはそれと接触し、高振幅脳電気活動を検出する。
【0079】
接地および参照要素は、ヒトの脳および頭蓋の解剖学的構造の測定された特性に基づいて、時として、「静穏」領域とも称される、低振幅組織区画である、非灰白質内の接地および参照要素の設置をもたらす、支持構造に沿った記録要素からの具体的距離に設置される。下記にさらに詳細に説明されるであろうように、これらの場所は、帽状腱膜下腔、皮質下白質空間、頭蓋骨固定デバイス内の空間、または脳室空間から選択されてもよい。
【0080】
本デバイスは、ワイヤまたは無線のいずれかを用いて、規定された電極アレイからの既知の入力のために事前に構成される、ハードウェアインターフェース構成要素に接続される。ハードウェアインターフェース構成要素は、プロセッサに接続され、これは、臨床医が、特定の要素構成を選択することを可能にし、それによって、プロセッサは、次いで、自動化された方式において、その特定のデバイス構成のために接地および参照要素を識別する。
【0081】
ここで
図1を参照すると、第1の側面による、頭蓋内EEGデバイス100が、示される。デバイス100は、頭蓋骨120内の穴ぐり器孔110を通した設置のために設計され、挿入部位からある距離において、帽状腱膜下腔130および頭皮140を通して貫通される。皮質記録アレイ150は、大脳皮質160の灰白質内に位置し、接地170および参照180電極は、帽状腱膜下組織区画130(帽状腱膜下腔とも称される)内に常駐するように位置付けられる。接地、参照、および記録電極は、ワイヤ190によって、ハードウェアインターフェース構成要素に接続される。
【0082】
接地電極170は、皮質記録アレイ150の最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cm(および理想的には、3.5cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極180は、皮質記録アレイ150の最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cm(および理想的には、3.0cm)において支持構造に固定されてもよい。
【0083】
帽状腱膜下腔内の接地または参照電極のための位置付けの範囲(皮質記録アレイ内の最表在接点より遠位に1.5~10.0cm)に関して、請求されるデバイスに特有のいくつかの解剖学的測定値および実践的用途が、検討された。本発明者らによって実施される臨床経験および測定値を通して、デバイス挿入の領域内のヒト頭蓋骨厚の変動は、1.0cm~2.0cmに及ぶ。デバイス設計およびデバイス挿入と関連付けられる外科手術手技の検討を通して、本デバイスは、帽状腱膜下腔を通して貫通され、デバイス挿入のために使用される頭蓋骨内の開口部から最小で0.5cm~最大で8.0cmに及ぶ距離における皮膚を通してもたらされる。したがって、参照または接地接点のための最「近位」配向場所(すなわち、1.5cm)の場合、最小1.0cmの頭蓋骨厚と、頭蓋骨内の開口部から帽状腱膜下腔内の接点まで0.5cmの距離とが存在すると仮定された。参照または接地接点のための最「遠位」配向場所(すなわち、10.0cm)の場合、最大2.0cmの頭蓋骨厚と、頭蓋骨内の開口部から帽状腱膜下腔内に位置する接点まで8.0cmの距離とが存在すると仮定された。
【0084】
ここで
図2を参照すると、第2の側面による、頭蓋内EEGデバイス200が、示される。デバイス200は、頭蓋骨220内の穴ぐり器孔210を通した設置のために設計され、挿入部位に対してある距離における帽状腱膜下腔230および頭皮240を通して貫通される。皮質記録アレイ250は、大脳皮質260の灰白質内に位置し、接地270および参照280電極は、皮質下白質区画290内に常駐するように位置付けられる。接地、参照、および記録電極は、ワイヤ295によって、ハードウェアインターフェース構成要素に接続される。
【0085】
本実施例では、接地電極270は、皮質記録アレイ250の最深在記録要素より近位に1cm~3cm(および理想的には、2cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極280は、皮質記録アレイ250の最深在記録要素より近位に1cm~3cm(および理想的には、1.5cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極280対接地電極270の相対的配向は、相互に依存せず、むしろ、最深在記録要素に依存する。
【0086】
皮質下白質区画内の接地または参照電極のための位置付けの範囲(皮質記録アレイ上の最深在接点より近位に1.0~3.0cm)に関して、最適化されたデバイス機能のための、かつ請求されるデバイスに特有のいくつかの解剖学的測定値が、検討された。本発明者らによって実施される臨床経験および測定値を通して、皮質下白質の境界は、確実に、大脳皮質の灰白質の深在境界の約1.0cm下方から開始する。皮質下白質の深在境界は、大脳皮質の灰白質の深在境界から約3.0cmにあって、ある場合には、側脳室は、皮質表面から3.5cm内にあり得るため、CSF含有側脳室によって限定される。したがって、皮質下白質内の参照または接地接点のための最表在白質場所は、大脳皮質の灰白質の深在境界から1.0cmにあり得、参照または接地電極のための最深在白質場所は、大脳皮質の灰白質の深在境界から3.0cmにあり得る。
【0087】
ここで
図3を参照すると、第3の側面による、頭蓋内EEGデバイス300が、示される。デバイス300は、頭蓋骨固定デバイス310を通した設置のために設計され、これは、皮膚320内の開口部を通して通過され、頭蓋骨330の骨内の孔を通して設置され、それと直接接触する。皮質記録アレイ340は、大脳皮質の灰白質空間350内に位置し、接地360および参照370電極は、頭蓋骨固定デバイス310内に位置付けられる。接地360および参照370電極は、頭蓋骨330との外部独立電気接点を成す、電気的に絶縁される独立伝導性要素380と接触する。接地、参照、および記録電極は、ワイヤ390によって、ハードウェアインターフェース構成要素に接続される。
【0088】
本構成では、接地電極360は、皮質記録アレイ340の最表在記録要素より遠位に1cm~3cm(および理想的には、2.0cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極370は、皮質記録アレイ340の最表在記録要素より遠位に1cm~3cm(および理想的には、1.5cm)において支持構造に固定されてもよい。再び、参照電極370および接地電極360の相対的配向は、相互に依存せず、むしろ、最表在記録要素に依存する。
【0089】
頭蓋骨固定デバイス内の接地または参照電極のための位置付けの範囲(皮質記録アレイ上の最表在接点より遠位に1.0~3.0cm)に関して、請求されるデバイスに特有のいくつかの解剖学的測定値および工学側面が、検討された。上記のように、デバイス挿入の領域内のヒト頭蓋骨の厚さは、1.0cm~2.0cmに及ぶ。加えて、頭蓋骨の関連付けられる開口部の外側の頭蓋骨固定デバイスの典型的高さは、1.0~3.0cmに及ぶ。請求されるデバイスの支持構造に沿って参照または接地要素と界面接触するであろう、固定デバイスの内側管腔上に電気接点を作成するであろう、提案されるデバイスに関する要件を前提として、かつ界面接触点の両側上の頭蓋骨固定デバイスの開口部からの必要距離を前提として、参照または接地接点のための皮質記録アレイ上の最表在接点より遠位の最小距離は、1.0cmであって、参照または接地接点のための記録アレイ上の最表在接点より遠位の最大距離は、3.0cmであろう。
【0090】
ここで
図4を参照すると、第4の側面による、頭蓋内EEGデバイス400が、示される。デバイス400は、頭蓋骨420内の穴ぐり器孔410を通した設置のために設計され、挿入部位からある距離において、帽状腱膜下腔430および頭皮440を通して貫通される。皮質記録アレイ450は、大脳皮質460の灰白質内に位置し、接地470および参照480電極は、脳室区画490内に常駐するように位置付けられる。接地、参照、および記録電極は、ワイヤ495によって、ハードウェアインターフェース構成要素に接続される。
【0091】
本実施形態では、接地電極470は、皮質記録アレイ450の最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cm(および理想的には、5.5cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極480は、皮質記録アレイ450の最深在記録要素より近位に3.5cm~5.5cm(および理想的には、4.0cm)において支持構造に固定されてもよい。他の実施形態におけるように、参照および接地電極の相対的位置は、最深在記録要素の位置に依存する。
【0092】
ここで
図8を参照すると、第5の側面による、組み合わせられた脳脊髄液(CSF)排出機能805を伴う、頭蓋内EEGデバイス800が、示される。デバイス800は、頭蓋骨820内の穴ぐり器孔810を通した設置のために設計された中心管腔を伴って中空である、挿入部位からある距離において、帽状腱膜下腔830および頭皮840を通して貫通される。皮質記録アレイ850は、大脳皮質860の灰白質内に位置し、参照870および接地880電極は、帽状腱膜下腔830内に常駐するように位置付けられる。接地、参照、および記録電極は、ワイヤ890によって、外部ハードウェアインターフェースに接続される。
【0093】
本実施形態では、接地電極880は、皮質記録アレイ850の最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cm(および理想的には、3.5cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極870は、皮質記録アレイ150の最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cm(および理想的には、3cm)において支持構造に固定されてもよい。本デバイスの中空管腔を通して外部収集システムに排出するための支持構造内の孔から成る、CSF排出機能805は、脳室895内の支持構造の最深在側面に位置する。
【0094】
CSF含有側脳室内の接地および参照電極のための位置付けの範囲(皮質記録アレイ上の最深在接点より遠位に3.5~5.5cm)に関して、最適化されたデバイス機能および請求されるデバイスに特有の設計要素のためのいくつかの解剖学的測定値が、検討された。本発明者らによって実施される臨床経験および測定値を通して、CSF含有側脳室の境界は、大脳皮質の灰白質の深在境界から、平均3.5cmを伴って、最小の3.0cm~最大の4.0cmに及ぶ。本デバイスの脳室内部分が定置されるであろう、側脳室のサイズは、1.5~2.5cmに及ぶ。したがって、参照または接地接点が支持構造に沿って皮質記録アレイの近位に位置付けられ得る、範囲は、皮質記録アレイより近位に4.0cmにおける参照接点と、皮質記録アレイより近位に5.5cmにおける接地電極とを伴う理想的反復を伴って、3.5~5.5cmとなるであろう。
【0095】
頭蓋内EEGデバイス上の記録要素、接地電極、および参照電極の位置が、50個を上回る個々の電極をヒトの患者内に設置した後、本発明者らによって判定され、ブタモデルにおける相関実験を使用して確認された。頭蓋内EEGデバイス上のセンサの最適位置を判定するときに考慮された考慮点は、脳解剖学的構造、患者間分散における観察される差異、および頭蓋内EEGデバイスから取得されることが所望されるデータのタイプを含む。
【0096】
上記の実施形態のうちの任意の1つはさらに、頭蓋内圧、酸素濃度、グルコースレベル、血流、組織灌流、組織温度、電解質濃度、組織オスモル濃度、または脳機能および/または健康に関連する任意の他のパラメータ等のパラメータを測定することが可能な生理学的センサを備えてもよいことを理解されたい。
【0097】
さらなる側面によると、参照電極および接地電極が、異なる非灰白質解剖学的空間内に位置付けられる、頭蓋内EEGデバイスが存在し得、以下の構成が、可能性として考えられる。
a.参照電極は、帽状腱膜下腔内にあって、接地電極は、皮質下白質空間内にある、または
b.接地電極は、帽状腱膜下腔内にあって、参照電極は、皮質下白質空間内にある、または
c.参照電極は、帽状腱膜下腔内にあって、接地電極は、心室空間内にある、または
d.接地電極は、帽状腱膜下腔内にあって、参照電極は、心室空間内にある、または
e.参照電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、接地電極は、皮質下白質空間内にある、または
f.接地電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、参照電極は、皮質下白質空間内にある、または
g.参照電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、接地電極は、心室空間内にある、または
h.接地電極は、頭蓋骨固定デバイスの空間内にあって、参照電極は、心室空間内にある。
【0098】
ここで
図9を参照すると、第6の側面による、頭蓋内EEGデバイス900が、示され、接地および参照電極は、異なる区画内に位置する。デバイス900は、頭蓋骨920内の穴ぐり器孔910を通した設置のために設計され、挿入部位からある距離において、帽状腱膜下腔930および頭皮940を通して貫通される。皮質記録アレイ950は、大脳皮質960の灰白質内に位置し、接地970および参照980電極は、それぞれ、帽状腱膜下組織区画930および白質区画990内に常駐するように位置付けられる。接地、参照、および記録電極は、ワイヤ995によって、ハードウェアインターフェース構成要素に接続される。
【0099】
接地電極970は、皮質記録アレイ950の最表在記録要素より遠位に1.5cm~10cm(および理想的には、3.5cm)において支持構造に固定されてもよい。参照電極980は、皮質記録アレイ950より近位に1.0cm~3.0cm(および理想的には、1.5cm)において支持構造に固定され、白質区画990内にあってもよい。
【0100】
上記の実施形態に示される本デバイスは、大脳皮質の灰白質空間内に位置付けられる、皮質記録アレイを特徴とするが、皮質記録アレイはまた、硬膜下電極アレイを用いて実施され得るように、大脳皮質の灰白質表面と直に接触して位置付けられてもよいことを理解されたい。
【0101】
接地電極、参照電極、および/または各記録要素は、金属、有機化合物または任意の他の好適な導電性材料から作製されてもよいことを理解されたい。
【0102】
支持構造は、プラスチックまたは他の好適な生体適合性材料から作製されてもよい。支持構造は、可撓性または剛性のいずれかであってもよく、略円筒形形態を有してもよい。
【0103】
各記録要素、参照電極、および接地電極は、支持構造の周囲に円周方向に形成されてもよく、0.5mm~4mmの幅であってもよい。
【0104】
上記に説明されるデバイスは全て、ボルト(V)、ヘルツ(Hz)、および/またはその導関数ならびに/もしくは比率から選択される値の分類別測定によって測定され得る、脳活動を処理することが可能なプロセッサへの接続のためのインターフェースを特徴とし、脳活動は、以下から選択される、少なくとも1つのパラメータによって測定される。
a.平均電圧レベル、
b.二乗平均平方根(rms)電圧レベルおよび/またはピーク電圧レベル、
c.スペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含み、また、平均電力レベル、rms電力レベル、および/またはピーク電力レベル等の計算された電力の変動を含む、記録された脳活動の高速フーリエ変換(FFT)を伴う導関数、
d.電力スペクトル分析、バイスペクトル分析、密度、コヒーレンス、信号相関および畳み込み等のスペクトル分析から導出される測定値、
e.線形予測モデル化または自己回帰モデル化等の信号モデル化から導出される測定値、
f.積分された振幅、
g.ピークエンベロープまたは振幅ピークエンベロープ、
h.周期的進化、
i.抑制比、
j.コヒーレンスおよび位相遅延、
k.測定された脳活動のスペクトログラム、スペクトルエッジ、ピーク値、位相スペクトログラム、電力、または電力比を含む、記録された電気信号のウェーブレット変換、
l.ウェーブレット原子、
m.バイスペクトル、自己相関、クロスバイスペクトル、または相互相関分析、
n.ニューラルネットワーク、再帰ニューラルネットワーク、または深層学習技法から導出されるデータ、または
o.(a-n)から導出されるパラメータの局所的最小値または最大値を検出する、記録要素の識別。
【0105】
プロセッサは、皮質記録アレイによって検出される脳活動を処理、フィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、比較、記憶、圧縮、表示、および/または別様に伝送することが可能であってもよい。プロセッサは、脳電気活動を分析、操作、表示、相関、記憶、および/または別様に伝送する、ハードウェアならびに/もしくはソフトウェアを備えてもよい。プロセッサは、自動化された方式において、選択された電極構成のために接地電極、参照電極、および皮質記録アレイを識別してもよい。プロセッサは、自動化された方式において、選択された接地電極を使用して、選択された電極構成によって記録されるEEG信号のための同相信号除去を実施してもよい。プロセッサは、自動化された方式において、選択された参照電極を使用し、皮質記録アレイによって検出される脳電気信号に基づいて、参照EEG記録を発生させてもよい。プロセッサはさらに、皮質記録アレイの個々の記録要素からの参照EEG記録の数学的導出を実施し、合成EEGデータチャネルを発生させてもよい。
【0106】
デバイスの1つの形態では、インターフェースおよびプロセッサは、相互に統合されてもよい。別の形態では、プロセッサおよびインターフェースは、相互に統合されてもよい。別の形態では、デバイスおよびインターフェースは、相互に統合されてもよい。1つの形態では、インターフェースは、物理的インターフェースであってもよく、別の形態では、無線インターフェースであってもよい。1つの形態では、インターフェースは、対象内に埋め込まれてもよい。1つの形態では、インターフェースは、皮質記録アレイによって検出される脳活動をフィルタ処理、増幅、デジタル的に変換、圧縮、および/または伝送することが可能であり得る。
【0107】
ここで
図5-7を参照すると、既知の接点間間隔を伴う一連の電極アレイを使用して麻酔されたブタモデル内で発生された、代表的EEGデータが、提供される。一般的麻酔の誘導に続いて、穴ぐり器孔が、右正面領域内に作成され、記録電極アレイ(1.12mm接点、2.2mm接点間間隔)が、直視下で、最後の接点が皮質表面の直下に来るまで、脳の中に設置された。着目すべきこととして、本領域内のブタおよびヒト頭蓋骨厚における測定された変動性は、1.0cm~2.0cmに及ぶ。皮質表面から頭蓋骨の内面までの距離における測定された変動性は、ブタおよびヒト設定の両方において0.5cm~0.1cmに及ぶ。皮質灰白質の厚さにおける測定された変動性は、ブタおよびヒト系の両方において約2.5mm~5.0mmに及ぶ。
【0108】
図5に関する代表的データを提供する実験では、記録電極アレイの設置に続いて、皮質表面から脳の内面までの距離が、0.5mmにおいて測定され、頭蓋骨厚は、1.5cmであった。記録アレイの挿入に続いて、別個の電極アレイ(5mmの接点間間隔を伴う、参照/接地アレイ)が、穴ぐり器孔から帽状腱膜下腔を通して側方から貫通された。本アプローチは、参照/接地アレイ上の第1の接点(参照電極として割り当てられる)を穴ぐり器孔から1.0cmにもたらし、3.0cmの皮質表面からの総距離をもたらし、第2の接点(接地電極として割り当てられる)を皮質表面から3.5cmにもたらした。x-軸上の時間は、分割別に秒単位で測定された。y-軸上に標識された接点は、脳内で1(最深)~8(最浅)に及ぶ。
【0109】
図6に関する代表的データを提供する実験では、皮質記録アレイの設置に続いて、別個の参照/接地電極アレイ(再び、5mm接点間間隔を伴う)が、別個の皮質アプローチを通して、記録電極アレイに隣接して設置された。代表的データを提供する動物内で観察される皮質厚を使用して、参照/接地アレイ上の最深在接点(参照電極として割り当てられる)は、記録アレイ上の最も近い接点から2.0cmに位置し、参照/接地アレイ上の次の最深在接点(接地電極として割り当てられる)は、記録アレイ上の最も近い接点から1.5cmに位置した。x-軸上の時間は、分割別に秒単位で測定された。y-軸上で標識された接点は、脳内で1(最深)~6(最浅)に及ぶ。
【0110】
図7におけるデータは、
図6において概略された実験における参照EEGデータを記録する隣接する接点から数学的に発生された「合成」バイポーラEEGトレーシングを表す。x-軸上の時間は、分割別に秒単位で測定された。y-軸上で標識されたチャネルは、脳内で1(最深対)~5(最浅対)に及ぶ。
【0111】
明細書および以下の請求項全体を通して、文脈によって別様に要求されない限り、単語「comprises(~を備える)」および「includes(~を含む)」ならびに「comprising(~を備える)」および「including(~を含む)」等の変形例は、述べられた整数または整数群の含有を含意するが、任意の他の整数または整数群の除外を含意するものではないと理解されるであろう。
【0112】
本明細書における任意の先行技術の参照は、そのような先行技術が共通の一般的知識の一部を形成することの任意の形態の提案の肯定応答ではなく、そのように捉えられるべきではない。
【0113】
本発明は、その使用を説明される特定の用途に限定されないことが、当業者によって理解されるであろう。本発明は、本明細書に説明または描写される特定の要素および/または特徴のいずれに関しても、その好ましい実施形態において制限されない。本発明は、開示される実施形態または複数の実施形態に限定されず、以下の請求項によって記載および定義されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の並替、修正、および代用が可能であることを理解されたい。
【0114】
以下の請求項は、暫定的請求項にすぎず、可能性として考えられる請求項の実施例として提供され、本願に基づく任意の将来的特許出願において請求され得るものの範囲を限定することを意図するものではないことに留意されたい。整数が、後日、本発明をさらに定義または再定義するように、例示的請求項に追加される、もしくはそこから省略され得る。