(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】副鼻腔ステント並びに患者の副鼻腔内でステントを展開させるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/92 20130101AFI20240730BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20240730BHJP
A61F 2/18 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61F2/92
A61F2/966
A61F2/18
(21)【出願番号】P 2021561865
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 IB2020053514
(87)【国際公開番号】W WO2020212848
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-24
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519273267
【氏名又は名称】ストライカー・ユーロピアン・オペレーションズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,ヨハネス・ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】カッシェン,パトリック
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0106255(US,A1)
【文献】特表2005-506873(JP,A)
【文献】特開平8-33719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0272042(US,A1)
【文献】特表2018-528808(JP,A)
【文献】特表2018-520761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0184116(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0217097(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0207186(US,A1)
【文献】特表2002-508196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/92
A61F 2/966
A61F 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前頭洞腔内に配置可能なステントであって、
80%を超える多孔率を有し、非晶性セグメントと水素結合を介して形成された結晶性セグメントとを含むポリウレタンを含む柔軟な発泡層と、
前記柔軟な発泡層内の活性薬剤と、
積み重ね構成で配置されると共に結合界面において前記柔軟な発泡層の前記結晶性セグメントと水素結合するように構造化されたポリマーを含む柔軟なフィルム層と、
を含み、
前記柔軟な発泡層及び前記柔軟性フィルム層は、前記前頭洞腔内に挿入される前に巻かれることで、前記柔軟な発泡層が前記ステントの外側環状面を少なくとも部分的に画定すると共に前記柔軟性フィルム層が前記ステントの内側環状面を少なくとも部分的に画定するように構成されており、
前記柔軟なフィルム層は、前記前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたときに前記ステントを広げると共に前記柔軟な発泡層の前記外側環状面を前記前頭洞腔の粘膜に直接接触させるよう付勢するのに十分な復元力を有している、
ステント。
【請求項2】
前記柔軟な発泡層から前記柔軟なフィルム層が除去されると、前記結合界面で前記発泡層の凝集破壊が生じる、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記結合界面には接着剤が存在せず、前記柔軟なフィルム層と前記柔軟な発泡層とが水素結合を介して互いに直接結合されている、請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
前記柔軟なフィルム層と前記柔軟な発泡層との間には共有結合が存在しない、
請求項1~3のいずれか
一つに記載のステント。
【請求項5】
前記ステントの相対する辺部の間に部分的に延在する接合部にて互いに連結された第1の本体部分及び第2の本体部分をさらに含み、前記第1及び第2の本体部分は、前記接合部を除いて、独立して巻かれるように及び/又は広げられるように構成されており、前記第1及び第2の本体部分のそれぞれが、前記柔軟な発泡層及び前記柔軟なフィルム層を含む、
請求項1~4のいずれか
一つに記載のステント。
【請求項6】
前記第1及び第2の本体部分は、前記相対する辺部の間に画定され且つ前記接合部を含む境界によって互いに区切られており、前記ステントは、前記相対する辺部から内側に延びる切欠きをさらに含み、前記切欠きは、前記第1の本体部分に関連付けられた第1の面と、前記第2の本体部分に関連付けられた第2の面とを含み、前記切欠きの前記第1及び第2の面のそれぞれが前記境界に対して傾斜している、請求項
5に記載のステント。
【請求項7】
前記境界に対する前記切欠きの前記第1の面の角度が概ね25°から75°の範囲内にある、請求項
6に記載のステント。
【請求項8】
前記境界に対する前記切欠きの前記第2の面の角度が概ね25°から75°の範囲内にある、請求項
6又は
7に記載のステント。
【請求項9】
前記第1及び第2の面は、互いに連続して放物線状の切欠きを形成している、請求項
6~
8のいずれか一つに記載のステント。
【請求項10】
前記柔軟な発泡層は、第1の外面と前記結合界面との間に画定される第1の厚みを有し、前記柔軟なフィルム層は、前記第1の外面の反対側の第2の外面と前記結合界面との間に画定される第2の厚みを有し、前記第1の厚みが前記第2の厚みよりも大きい、請求項
6~
9のいずれか一つに記載のステント。
【請求項11】
前記相対する辺部は、第1の相対する辺部であり、前記ステントは、前記第1の相対する辺部の間に延在する第2の相対する辺部をさらに含み、前記第2の相対する辺部は、円弧状であり、丸められた角において前記第1の相対する辺部と交差している、請求項
6~
10のいずれか一つに記載のステント。
【請求項12】
前記柔軟なフィルム層は、シラノール基及び/又はウレタン基を含む生体吸収性ポリマーで構成されている、
請求項1~11のいずれか
一つに記載のステント。
【請求項13】
前記活性薬剤は、窒素原子、酸素原子、又はフッ素原子に結合された少なくとも1つの水素原子を含む分子を含む、
請求項1~12のいずれか
一つに記載のステント。
【請求項14】
前記活性薬剤は、コルチコステロイド、止血剤、及びそれらの組合せから選択される、
請求項1~13のいずれか
一つに記載のステント。
【請求項15】
巻かれたステントをアプリケータ装置によって前頭洞腔内で展開させるための使い捨てカートリッジアセンブリであって、
ステントであって、
80%を超える多孔率を有し、非晶性セグメントと水素結合を介して形成された結晶性セグメントとを含むポリウレタンを含む柔軟な発泡層と、
前記柔軟な発泡層内の活性薬剤と、
積み重ね構成で配置されると共に結合界面において前記柔軟な発泡層の前記結晶性セグメントと水素結合するように構造化されたポリマーを含む柔軟なフィルム層と、
を含み、
前記柔軟な発泡層及び前記柔軟性フィルム層は、前記前頭洞腔内に挿入される前に巻かれることで、前記柔軟な発泡層が前記ステントの外側環状面を少なくとも部分的に画定すると共に前記柔軟性フィルム層が前記ステントの内側環状面を少なくとも部分的に画定するように構成されている、ステントと、
近位端と、前記近位端の反対側の遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間に延在する管腔とを画定する少なくとも1つの側壁を有し、前記近位端と前記遠位端との間に前記巻かれたステントの全体を受容する大きさのシース容積を画定する管状シースと、
前記管状シースの前記近位端に連結されたキャップ部であって、
前記管状シースの前記管腔に連通する開口を画定するキャップ本体であって、前記開口が前記アプリケータ装置のプランジャー要素を受容するサイズを有する、キャップ本体と、
前記キャップ本体から外側に拡がるリップであって、前記使い捨てカートリッジが前記アプリケータ装置に連結されたときに前記アプリケータ装置の遠位端に当接するように構成された表面を画定する、リップと、
前記キャップ本体に配置された連結機構部であって、前記アプリケータ装置の相補的な連結機構部に取外し可能に係合するように構成されている、連結機構部と、
含む、キャップ部と、
を含む、使い捨てカートリッジアセンブリ。
【請求項16】
前頭洞腔にステントを留置するためのシステムであって、
ボアを画定すると共にユーザーが片手で把持するように適合されたハウジングと、アクチュエータと、前記アクチュエータに連結され、前記ハウジング及び前記アクチュエータの一方又は両方が前記ユーザーからの入力を受けたことに応答して前記ボア内を移動するように構成された駆動部材とを含むアプリケータ装置と、
前記ハウジングに取外し可能に連結され、管腔を画定する管状シースと、前記管状シースに連結されて前記アプリケータ装置の前記ハウジングに取外し可能に連結されたキャップ部分とを含む使い捨てカートリッジと、
ステントであって、
80%を超える多孔率を有し、非晶性セグメントと水素結合を介して形成された結晶性セグメントとを含むポリウレタンで構成された柔軟な発泡層と、
積み重ね構成で配置されると共に結合界面にて前記柔軟な発泡層の前記結晶性セグメントと水素結合するように構造化されたポリマーを含む柔軟性フィルム層と、
前記柔軟な発泡層内の活性薬剤と、
を含むステントと、
を含み、
前記ステントは、巻かれて前記管状シース内に挿入されるように構成され、前記柔軟なフィルム層が前記前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたときに前記ステントを展開させるのに十分な復元力を有する、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本願は、2019年4月16日に出願された米国仮特許出願第62/834,628号の優先権及び全ての利得を主張するものであり、その開示内容は、参照することによってその全体がここに含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
慢性副鼻腔炎(CRS)は、米国内の最も一般的な健康管理の問題の1つである。副鼻腔炎が発症すると、粘液繊毛クリアランス機構の働きが低下し、粘液の適切な流れが妨げられる。副鼻腔の粘膜が鬱血し、副鼻腔口が閉じられる。その結果、換気不良や粘液の蓄積によって、細菌感染が起こりやすくなる。
【0003】
現在、CRSの医学的管理として、経口抗生物質やコルチコステロイド、生理食塩水洗浄、免疫調節薬などを含む幅広い治療法が用いられている。しかし、これらの方法は、概して非効率的である。例えば、鼻内噴霧によって標的の副鼻腔組織に到達する活性薬剤の量は非常に少なく、活性薬剤の多くが消化管から排出されてしまうことが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)は、現在、副鼻腔疾患の患者のための十分に確立された低侵襲性の治療選択肢である。また、FESS後の数ヶ月間にわたる長期のステント留置が、再狭窄の割合を大幅に低減させることが知られている。しかし、前頭洞の開存性及び粘膜回復を促進する適切な市販品が不足している。それ故、FESS後に、前頭洞からの排液を促進すると共に前頭洞腔と鼻腔との間の開存性を維持するような方法によって活性薬剤を粘膜壁に直接投与することができる改良されたステント及び投与システムが、当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様は、前頭洞腔内に配置可能なステントを対象としている。ステントは、80%を超える多孔率を有する柔軟な発泡層(フォーム層)を含む。柔軟な発泡層は、非晶性セグメントと、水素結合を介して形成された結晶性セグメントとを含むポリウレタンで構成されている。柔軟な発泡層内には活性薬剤が含まれる。ステントは、積み重ね構成で配置された柔軟なフィルム層をさらに含み、柔軟なフィルム層は、結合界面において柔軟な発泡層の結晶性セグメントと水素結合するように構造化されたポリマーで構成される。柔軟な発泡層及び柔軟なフィルム層は、前頭洞腔内に挿入される前に、実質的に円筒状に巻かれるように構成されており、柔軟な発泡層がステントの外側環状(円筒)面を少なくとも部分的に画定すると共に、柔軟なフィルム層がステントの内側環状(円筒)面を少なくとも部分的に画定する。柔軟なフィルム層は、前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたときにステントを広げて柔軟な発泡層の外側環状面を前頭洞腔の粘膜に直接接触させるよう付勢するのに十分な復元力を有している。
【0006】
いくつかの実施例では、柔軟な発泡層から柔軟なフィルム層が除去されると、結合界面において発泡層の凝集破壊が生じる。結合界面には接着剤が存在せず、柔軟なフィルム層と柔軟な発泡層とが水素結合を介して互いに直接結合されてもよい。柔軟なフィルム層と柔軟な発泡層とは、それらの間に共有結合が実質的に存在しなくてもよい。
【0007】
いくつかの実施例において、柔軟な発泡層の結晶性セグメントは、1,4ブランジオールと1,4-ジイソシアナートブタンとの反応生成物で構成されている。ポリウレタン発泡層内の分子は、結晶性セグメントと非晶性セグメントが交互に積み重ねられるように配置され、積み重ねられた結晶性セグメント間の水素結合を介して強化された三次元多孔質構造をもたらす。
【0008】
いくつかの実施例において、ステントは、ステントの相対する辺部の間に部分的に延在する接合部において互いに連結された第1の本体部分及び第2の本体部分を含み、第1及び第2の本体部分は、接合部を除いて、独立して巻かれるように及び/又は広げられるように構成されている。第1及び第2の本体部分のそれぞれが、柔軟な発泡層と柔軟なフィルム層とを含むとよい。第1及び第2の本体部分は、相対する辺部の間に画定され且つ接合部を含む境界によって区切られていてもよい。ステントは、相対する辺部から内側に延びる切欠きをさらに含んでもよく、切欠きは、第1の本体部分に関連した第1の面と、第2の本体部分に関連した第2の面とを含む。切欠きの第1及び第2の面のそれぞれは、境界に対して傾斜しているとよい。境界に対する切欠きの第1の面の角度は、概ね25°から75°の範囲内であり得る。境界に対する切欠きの第2の面の角度は、概ね25°から75°の範囲内であり得る。第1及び第2の面は、互いに連続して実質的に放物線状の切欠きを形成してもよい。柔軟な発泡層は、第1の外面と界面との間に画定される第1の厚みを有し、柔軟なフィルム層は、第1の外面とは反対側の第2の外面と結合界面との間に画定される第2の厚みを有する。第1の厚みは、第2の厚みより大きくてもよい。相対する辺部は、第1の相対する辺部であってもよく、ステントは、第1の相対する辺部の間に延在する第2の相対する辺部をさらに含んでもよい。第2の相対する辺部は、円弧状であってもよいし、丸められた角において第1の相対する辺部と交差していてもよい。
【0009】
いくつかの実施例では、柔軟なフィルム層は、ポリシロキサンで構成され得る。柔軟なフィルム層は、ポリウレタンで構成されてもよい。柔軟なフィルム層は、シラノール基及び/又はウレタン基を含む生体吸収性ポリマーで構成されてもよい。柔軟な発泡層は、生体吸収性であってもよい。
【0010】
いくつかの実施例において、活性薬剤は、窒素原子、酸素原子、又はフッ素原子に結合された少なくとも1つの水素原子を含む分子を含む。活性薬剤は、コルチコステロイド、止血剤、及びそれらの組合せから選択されていてもよい。
【0011】
本開示の第2の態様は、本開示の第1の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のステントを展開させる方法を対象としている。
【0012】
本開示の第3の態様は、本開示の第1の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のステントを展開させるための使い捨てカートリッジアセンブリを対象としている。
【0013】
いくつかの実施例において、カートリッジアセンブリは、近位端と、近位端の反対側の遠位端と、近位端と遠位端との間に延在する管腔(ルーメン)とを画定する少なくとも一つの側壁を含む管状シースであって、巻かれたステントの全体を近位端と遠位端との間に実質的に受容するサイズのシース容積を画定する管状シースを含む。キャップ部が、管状シースの近位端に連結されていてもよい。キャップ部は、キャップ本体と、リップと、連結機構部とを含み得る。キャップ本体は、管状シースの管腔に連通すると共にアプリケータ装置のプランジャー要素を受容するサイズの開口を画定していてもよい。リップは、キャップ本体から外方に延在し、使い捨てカートリッジがアプリケータ装置に連結されたときにアプリケータ装置の遠位端に接触するように構成された表面を画定してもよい。連結機構部は、キャップ本体に配置されていてもよく、アプリケータ装置の相補的な連結機構部に取り外し可能に係合するように構成され得る。管状シースは、柔軟であり、且つ前頭洞腔内に挿入されるサイズに形成され得る。リップは、円筒状の輪郭を有するキャップ本体の周りに環状に配置され得る。キャップ本体の開口は、管状シースの管腔と同軸であるとよい。管状シースの管腔及びキャップ本体の開口のそれぞれの直径は、実質的に等しいとよい。連結機構部は、キャップ本体の周りに周方向に離隔した屈曲可能な複数のフィンガーを含んでもよい。
【0014】
本開示の第4の態様は、本開示の第1の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のステントを展開するために、本開示の第3の態様によるカートリッジアセンブリを操作する方法を対象としている。
【0015】
本開示の第5の態様は、前頭洞腔にステントを留置するためのシステムを対象としている。アプリケータ装置は、ハウジング、アクチュエータ、及びアクチュエータに連結された駆動部材を含む。ハウジングは、ボア(bore)を画定し、ユーザによって片手で把持されるように適合されている。駆動部材は、ハウジング及びアクチュエータの一方又は両方がユーザからの入力を受けたことに応答してボア内で移動するように構成されている。使い捨てカートリッジは、ハウジングに取り外し可能に連結され、管腔を画定する管状シースと、管状シースに連結されてアプリケータ装置のハウジングに取り外し可能に連結されるキャップ部とを含む。システムは、本開示の第1の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のステントを含む。ステントは、巻かれて管状シース内に挿入されるように構成されている。柔軟なフィルム層は、前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたときにステントを展開させるのに十分な復元力を有している。
【0016】
いくつかの実施例において、システムは、本開示の第3の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のカートリッジアセンブリを含む。
【0017】
いくつかの実施例において、巻かれたステントの内側環状面は、内部通路を画定する。駆動部材は、アクチュエータに連結された近位端の反対側の遠位端を含む。ステントが柔軟なシース内に配置されたときに、マンドレルが遠位端からステントの内部通路内に延在するようになっていてもよい。キャップ部は、管状シースの管腔と連通する開口を画定してもよい。駆動部材のマンドレルは、キャップ部がハウジングに連結されたときにキャップ部の開口部を通って延びるとよい。駆動部材は、プランジャー要素をさらに含んでもよく、マンドレルは、プランジャー要素から延びていてもよい。キャップ部の開口部は、キャップ部がハウジングに連結されたときにアプリケータ装置のプランジャー要素を受容するサイズであるとよい。開口部は、アプリケータ装置の駆動部材を移動可能に受容するサイズであるとよく、駆動部材は、ステントが使い捨てカートリッジから配置されるときに開口部及び管状シースの管腔を通って延びる。ハウジング及びキャップ部は、使い捨てカートリッジをアプリケータ装置に取り外し可能に連結するように構成された相補的な連結機構部をさらに含んでもよい。ハウジングの少なくとも一部は、柔軟性を有してもよく、駆動部材の少なくとも一部は、形状順応(追従)性を有してもよい。これらは、ユーザからの別の入力を受けて使い捨てカートリッジに所望の湾曲を与えると共に、別の入力が解除されたときにハウジングに対する使い捨てカートリッジの所望の湾曲を維持するように構成されてもよい。アクチュエータは、ハウジングのボア内に移動可能に配置されたプッシュロッドを含んでもよい。
【0018】
本開示の第6の態様は、本開示の第5の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のシステムを操作する方法を対象としている。
【0019】
第7の態様は、前頭洞腔内に配置可能なステントを対象としている。ステントは、柔軟な発泡層と、積み重ね構成で配置された柔軟なフィルム層とを含む。柔軟な発泡層及び柔軟なフィルム層は、前頭洞腔内に挿入される前に巻かれるように構成されている。柔軟なフィルム層は、前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたとき、ステントを展開させて柔軟な発泡層を前頭洞腔の粘膜に直接接触させるのに充分な復元力を有している。
【0020】
いくつかの実施例において、第7の態様のステントは、本開示の第1の態様に記載のステントの対応する実施例のいずれかを含んでもよい。ステントは、本開示の第3の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載の使い捨てカートリッジアセンブリによって配置されてもよいし、本開示の第5の態様及び任意選択的にその対応する実施例のいずれかに記載のシステムで操作されてもよい。
【0021】
本開示の利点は、添付の図面と関連付けて以下の詳細な説明を参照することでよりよく理解され、容易に了解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ステントを副鼻腔内に配置するためのシステムの斜視図である。
【
図3】断面線3-3に沿って切断された
図1のシステムの断面図である。
【
図4A】非拘束状態にあるステントの立面図である。
【
図4B】非拘束状態にある他のステントの立面図である。
【
図4C】非拘束状態にある他のステントの立面図である。
【
図4D】非拘束状態にある他のステントの立面図である。
【
図5】非拘束状態にあるステントであって、積み重ね構成で配置された柔軟なフィルム層と、柔軟な発泡層とを含むステントの平面図である。
【
図6】広げられた第1の本体部分及び巻かれた第2の本体部分を備えたステントの平面図である。
【
図7】広げられた第1の本体部分及び巻かれた第2の本体部分を備えたステントの立面図である。
【
図8】広げられた第1の本体部分及び巻かれた第2の本体部分を備える他のステントの立面図である。
【
図9】使い捨てカートリッジへの挿入前の広げられた形態にあるステントの斜視図である。
【
図10】使い捨てカートリッジへの挿入前の巻かれた形態にあるステントの斜視図である。
【
図11】使い捨てカートリッジ内に配置されたステントの斜視図である。
【
図12】アプリケータ装置のマンドレルをステントによって画定された内部通路内に導く前に使い捨てカートリッジ内に配置されたステントの斜視図である。
【
図13】使い捨てカートリッジをアプリケータ装置に連結する前に使い捨てカートリッジ内に配置されたステントの斜視図である。
【
図14】アプリケータ装置に連結された使い捨てカートリッジ内に配置されたステントの斜視図である。
【
図15】アプリケータ装置のプランジャーに対してハウジングを移動させる前のシステムの斜視図である。
【
図16】使い捨てカートリッジを超えてステントを配置するためにハウジングをプランジャーに対して移動させた後のシステムの斜視図である。
【
図17】前頭洞のいくつかの構造及び領域を明らかにするためにヒトの頭の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1-
図3は、ステント32を患者の前頭洞(FS)内で展開させるためのシステム30を示している(
図17参照)。システム30は、前頭洞手術にしばしば伴う困難な視覚化及び複雑な解剖学的構造の課題に対処する。システム30は、機能的内視鏡下副鼻腔手術(FESS)、すなわち、副鼻腔蜂巣(sinus air cells)や副鼻腔口(sinus ostia)を直接視覚化の下で切開する低侵襲手術技術に特に適するものであり得る。一例では、ステント32は、FESSに続いて前頭洞内で展開され、これによって、慢性副鼻腔炎(CRS)に関連付けられる長期転帰の主要な術後指標の1つである前頭洞口(FSO)(すなわち、前頭洞孔)の再狭窄を低減し、最小化し、及び/又は排除する。また、システム30は、他の疾患、とりわけ、炎症、粘膜浮腫、ポリポーシス、及び癒着を治療するために利用されてもよく、これによって、再発症状及び/又はさらなる外科的介入の必要性を減少させることができる。加えて、以下でさらに説明されるような方法により、システム30は、治療薬(例えば、抗生物質、コルチコステロイド、免疫調節剤など)を粘膜壁に局所的に投与するのための改良された送達を促進することができ、治療において治療薬に含まれる活性剤の大部分を標的組織に到達させる。
【0024】
システム30は、ステント32、アプリケータ装置34、及びカートリッジ36を含んでいる。以下、それぞれについて順に説明する。アプリケータ装置34は、最も広い意味において、ユーザからの入力を受けてステント32をカートリッジ36から展開させるように構成されている。
【0025】
図4A-
図8をさらに参照すると、ステント32は、柔軟な発泡層38と、柔軟な発泡層38に連結された柔軟なフィルム層40とを含む。柔軟なフィルム層40は、例えば、結合界面42において柔軟な発泡層38に結合されている。柔軟な発泡層38及び柔軟なフィルム層40は、共通の輪郭、形状、及び/又は寸法を有しており、積み重ね(積層)構成で配置されている。例えば、
図4Aは、上辺46、下辺48、及び両側辺50によって画定されるステント32の外周44を有する平面視矩形状のステントの一変形例32aを示している。柔軟の発泡層38及び柔軟のフィルム層40のそれぞれは、上辺46、下辺48、及び両側辺50の一部を共有又は画定している。換言すれば、上辺46、下辺48、及び両側辺50は、柔軟なフィルム層38及び柔軟な発泡層40のそれぞれの厚みによって少なくとも部分的に画定されている(例えば、
図5参照)。
【0026】
柔軟な発泡層38及び柔軟なフィルム層40のそれぞれの厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。一例では、柔軟な発泡層38は、第1の外面52と結合界面42との間に画定される第1の厚みを有し、柔軟なフィルム層40は、結合界面42と第1の外面52の反対側の第2の外面54との間に画定される第2の厚みを有する。
図5は、柔軟な発泡層38の厚みが柔軟なフィルム層40の厚みよりも大きいことを示している。追加的な層がステント32に含まれることも考えられる。
【0027】
ステント32は、鼻腔(NP)及び前頭洞口を通って前頭洞腔(FSC)内に挿入されるために、実質的に円筒状の外形(輪郭)を有するように巻かれるように構成される(
図10,17参照)。柔軟なフィルム層40は、前頭洞腔内に配置されて拘束が解除されると、ステント32を展開させる(広げる)のに十分な復元力を有する。換言すれば、ステント32は、巻かれると共に前頭洞腔内に挿入された後に元に戻る(広がる)ことを可能にするために十分薄くなっているとよい。部分的に又は全体的に巻かれたときに、ステント32の外側環状面56は、例えば、鼻腔、副鼻腔口、前頭洞腔などを通して挿入されるのに十分小さい寸法を有する。広がること又は元に戻ることによって、前頭洞腔の開存性が促進され、排液の改善が促される。また、これは、別の補強要素などを必要とする公知の装置とは対照的に、柔軟なフィルム層40を形成する一つ又は複数の材料の復元力によって達成される。なお、そのような公知の装置は、前頭洞腔の敏感な解剖学的構造に対して局所的圧力をもたらす領域、及び/又は装置によって画定される内部通路の開存性を変動させる領域を生じさせることになる。以下に説明する利点の中で、とりわけ、本開示のステント32は、患者の快適さを改良するためのより均一な広がりと、前頭洞内における巻かれた又は部分的に広げられたステント32によって画定される内部通路57(
図6を参照)の概ね均一な開存性とを達成する。外側環状面56と反対側の内側環状面58は、巻かれたときのステント32の実質的に円筒形状の内部通路57を画定することになる。
【0028】
図4A-
図4Dを再び参照すると、ステント32は、第1の本体部分60及び第2の本体部分62を含む。第1及び第2の本体部分60,62のそれぞれは、柔軟な発泡層38及び柔軟なフィルム層40のそれぞれを含む。第1及び第2の本体部分60,62は、接合部64において互いに連結され、これによって、ステント32は、一体構造を有する。
図4Aのステント32aは、ステント32の相対する辺部50から内側に延びるスリット66の間に略画定された接合部64を示している。スリット66の一方の側の第1の本体部分60は、スリット66の他方の側の第2の本体部分62の長さよりも大きい長さを有している。第1および第2の本体部分60,62は、接合部64を除いて、互いに独立して巻かれるように及び広げられるように構成されている。第1及び第2の本体部分60,62が互いに独立して巻かれるように及び広げられるように構成されているため、第1の本体部分60は、前頭洞腔内でのステント32の保持を促進することができる。以下でさらに説明される態様において、ステント32は、第1の本体部分60が前頭洞腔内に位置すると共に第2の本体部分62が前頭洞口の反対側の前頭洞腔と連通する鼻腔(NP)内に位置するように、前頭洞口を通して配置することが可能である。前頭洞腔及び鼻腔の相対的な大きさに基づいて、第1の本体部分60は、第2の本体部分62よりも大きく広げられ、より具体的には、前頭洞口を画定する解剖学的構造との干渉を生じさせる程度まで広げられ、ステント32を前頭洞(FS)内に保持する。第2の本体部分62は、第1の本体部分60ほどには広げられず、前頭洞口の粘膜壁(MW)に据え付け又は押し付けられ、これによって、副鼻腔の開存性を維持すると共に、柔軟な発泡層内の活性薬剤を粘膜壁に送達させる(
図17参照)。
【0029】
図4Bに示されるステントの他の変形例32bでは、ステント32の相対する辺部50から内側に延びる切欠き68が接合部64を画定している。切欠き68は、第1の本体部分60に関連する上側面70と第2の本体部分62に関連する下側面72との間に画定されている。スリット66又は切欠き68は、予め形成されていてもよいし、配置時に又はその直前に医者によって形成されてもよい。一例では、スリット66又は切欠き68は、通常のハサミを用いて形成(カット)されてもよい。
【0030】
ステント32が前頭洞内で展開されると、ステント32は、第1の本体部分60が前頭洞口を画定する解剖学的構造との干渉を生じた状態で最終的に前頭洞から取り外される必要がある。ステント32を取り外すためには、解剖学的構造に対する第1の本体部分60の干渉を克服する必要がある。これには、例えば外科用器具を用いてステント32に引っ張る力を加えて、ステント32が前頭洞口及び鼻腔を通って取り出されるときに第1の本体部分60が潰される(例えば、部分的に巻かれる)ことが含まれる。
図4A,4Bの第1の本体部分60では、例えば、上側面70がステント32の取り出し方向に対して略直交する方向に配向されているため、不必要な引っ張り力が必要になり、及び/又は前頭洞の敏感な解剖学的構造を刺激する可能性がある。ここで、
図4C,4Dを参照すると、ステントの変形例32c,32dが示されており、これらは、ステント32の取り外しを容易にする形状の切欠き68を有している。具体的には、上側面70及び/又は下側面72は、接合部64を画定する境界74に対して傾斜している。
図4C,4Dは、ステント32の両側辺50間に延在する境界74を示している。上側面70は、境界74に対して角度αで上向きに配向されている。角度αは、概ね25°から75°の間の範囲内に、より具体的には、概ね40°から60°の間の範囲内にあるとよい。下側面72は、境界74に対して角度βで下向きに配向されている。角度αは、概ね25°から75°の間の範囲内に、より具体的には、概ね40°から60°の間の範囲内にあるとよい。さらに、上側面70と下側面72との交点は鋭利なエッジをなくすために曲線状に形成されるとよい。例えば、上側面70及び下側面72は、
図4C,4Dに示されるように、実質的に放物線状の切欠き68を形成するように互いに連続すると見なされるものであるとよい。同様に、
図4Dは、上辺部46及び下辺部48が、相対する辺部50の間において円弧状になっており、丸められた角部で相対する辺部50と交差していることを示している。上側面70の角度付けによって、柔軟な発泡層38及び柔軟なフィルム層40から形成された第1の本体部分60は、より容易に折り畳まれることになる。さらに、上側面70が取り出し方向から離れるように角度付けされているので、敏感な鼻の解剖学的構造に接触する上側面70からの力がかなり低減される。さらに、上側面70及び下側面72は、カートリッジ36内へのステント32の装填を容易にする。
【0031】
ここで、
図7、
図8を参照すると、前頭洞内において広げられた(展開)状態又は非拘束状態の位置にある、変形例に係るステント32a,32cが示されている。第1の本体部分60の柔軟なフィルム層40は、ステント32を解剖学的構造に対して広げる(展開させる)。
図8のステント32cは、上側面70に基づいて先細りになっている第1の本体部分60を示している。さらに、第2の本体部分62の柔軟なフィルム層40は、柔軟な発泡層38の外側環状面56を前頭洞腔の粘膜壁に直接接触させるように付勢する。第2の本体部分62の柔軟なフィルム層38の内側環状面58は、排液や呼吸などのための内部通路57を画定する。
【0032】
柔軟なフィルム層40に積み重ね構成で結合された柔軟な発泡層38を含むステント32では、層38、40のそれぞれに関連する有利な材料特性が十分に達成されることになる。結合は、以下に詳しく説明するように、非晶性セグメント及び結晶性セグメントを含むポリウレタンを含む柔軟な発泡層38を用いることによって促進されてもよい。多くの例において、柔軟な発泡層38の特性は、前頭洞内の水分に晒された場合に膨らむ(又は膨らまない)ように構成される。そのためには、柔軟な発泡層38が、相分離ポリマーを含むとよい。また、血液又は粘液のような液体を吸収したり、当該液体によって飽和したりしても、柔軟な発泡層38の相分離ポリマーは、その構造(特にその圧縮強度)を維持する良好な圧縮性を実現することが可能である。発泡相分離ポリマーの機械的、構造的、及び化学的特性は、主に、用いられるポリマーの組成(構造)によって決定される。そのため、相分離ポリマーを形成するために用いられる反応剤を選択することで、相分離ポリマーの機械的、構造的、及び化学的特性を制御及び調整する。
【0033】
本明細書で用いられている「相分離ポリマー(phase-separated polymer)」という用語は、ソフト(非晶性)セグメント及びハード(結晶性)セグメントを含むポリマーを指している。ハードセグメントは、少なくとも哺乳類の体温(ヒトの場合、略37℃)の相転移温度を有し、このようなポリマーから調製された発泡体がヒト又は動物の体内に十分な期間にわたって置かれると、相分離形態が顕在化する。加えて、ヒト又は動物の体温に近い温度条件下に置かれたポリマーは、相分離した形態を示す。相分離ポリマーは、通常の環境条件における互いに異なる形態を有する少なくとも2つの不混和相又は部分的混和相の存在によって特徴付けられる。1つの材料中に(非晶相のガラス転移温度よりも高く結晶相の溶融温度よりも低い温度において)ゴム相及び結晶層が存在してもよいし、(非晶相のガラス転移温度よりも低い温度において)ガラス相及び結晶層が存在してもよい。また、少なくとも2つの非晶相、例えば、1つのガラス相及び1つのゴム相が2つの相転移の間の温度で存在してもよい。溶融温度又はガラス転移温度のいずれかである最高相転移を超える温度においては、液相及びゴム相又は2つのゴム相が、それぞれ相混合状態を形成することもあり、又は依然として不混和であることもある。不混和の液相及び/又はゴム相は、相分離した形態のポリマーとなり、通常の環境条件においては初期の望ましい機械的特性を有しないことが多い。
【0034】
いくつかの例において、相分離ポリマーは、50%、60%、70%、又は80%を超える多孔率を有する。あるいは、相分離ポリマーは、50から99%、50から96%、60から96%、70から96%、80から93%、80から90%、80から87%、80から84%、83から99%、85から99%、89から99%、92から99%、95から99%、83から96%、86から93%、92から98%、95から98%、又は90%の多孔率を有する。
【0035】
いくつかの例では、相分離ポリマーは、0.01から1.0g/cm3の発泡密度を有する。あるいは、発泡密度は、0.01から0.5g/cm3、0.01から0.3g/cm3、0.01から0.1g/cm3、0.01から0.09g/cm3、0.01から0.08g/cm3、0.01から0.07g/cm3、0.01から0.06g/cm3、0.01から0.05g/cm3、0.01から0.04g/cm3、0.01から0.03g/cm3、0.02から0.08g/cm3、0.04から0.08g/cm3、0.05から0.08g/cm3、0.06から0.08g/cm3、0.02から0.08g/cm3、又は0.03から0.07g/cm3であってもよい。特定の例において、相分離ポリマーは、85~99%の多孔率、及び0.03~0.07g/cm3の発泡密度を有する。本開示の全体を通して用いられている「発泡密度(foam density)」という用語は、特定の発泡部分の単位体積当たりの相分離ポリマー質量として計算される発泡体の密度を指すことを理解されたい。したがって、特定の発泡部分が活性薬剤を含む場合、特定の発泡部分内に存在する活性薬剤の質量は、発泡密度を計算する際に無視されることになる。
【0036】
相分離ポリマーは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリヒドロキシ酸、ポリラクトン、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、ポリジオキサン、ポリ無水物、ポリウレタン、ポリエステル(エーテル)ウレタン、ポリウラタン尿素、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリオルソエステル、ポリアミノ酸、ポリホスホネート、ポリホスファゼン、及びそれらの組み合せから選択されるとよい。このようなポリマーは、国際出願公開第99/64491号に記載されている。この文献の内容は、参照することによってその全体がここに含まれるものとする。
【0037】
上述のように、相分離ポリマーは、ソフト(非晶性)セグメントとハード(結晶性)セグメントを含む。本明細書で用いられている「非晶性(amorphous)」という用語は、相分離ポリマー内に存在するセグメントであって、発泡体が装填されるヒト又は動物の体の空腔の温度よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度を有するセグメントを指し、ヒト又は動物の体内に装填されたときに完全に非晶性である非晶性セグメントと結晶性セグメントとの組み合せを指することもある。例えば、プレポリマーのPEGは、純粋な形態では結晶性であるが、式(I)のポリウレタンのRセグメントに含まれると非晶性になる場合がある。また、より長いPEGセグメントは、式(I)のポリウレタンのRセグメントに含まれる場合には部分的に結晶性であるが、水と接触して配置されると、非晶性になる(すなわち、溶解する)。したがって、このようなより長いPEGセグメントは、式(I)の相分離ポリマーのソフトセグメントの一部であり、その一方、ハードセグメントは、湿潤した充填状態において特定の発泡部分を一定の期間にわたって十分に支持するため、本質的に結晶性を維持する必要がある。
【0038】
本明細書で用いられている「結晶性(crystalline)」という用語は、相分離ポリマー内に存在するセグメントであって、ヒト又は動物の体内に装填されたときに、すなわち、閉塞装置が挿入されるヒト又は動物の体の温度を超える融解温度において結晶性である、セグメントを指している。
【0039】
本明細書で用いられている「親水性セグメント(hydrophilic segment)」という用語は、例えば、C-O-C結合、すなわち、エーテル結合によって提供されるような少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、さらに好ましくは少なくとも3つの親水基を含むセグメントを指している。したがって、ポリエーテルセグメントは、親水性セグメントを提供することができる。また、親水性セグメントは、ポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、又はポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)によって提供されてもよい。親水性セグメントは、好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリブチレングリコールのようなポリアルキレングリコールから誘導されるとよい。好ましい親水性セグメントは、ポリエチレングリコール(PEG)セグメントである。
【0040】
本明細書で用いられている「セグメント(segment)」という用語は、任意の長さのポリマー構造を指している。ポリマー技術の分野では、長いポリマー構造は、ブロックと呼ばれることが多く、短いポリマー構造は、セグメントと呼ばれることが多い。これらの従来の意味は、いずれも、本明細書に用いられる「セグメント」という用語に含まれることを理解されたい。
【0041】
本出願の1つの特定の例において、相分離ポリマーは、以下の式によって表される。
-[R-Q1[-R'-Z1-[R”-Z2-R'-Z3]p-R”-Z4]q-R’-Q2]n- (I)
【0042】
式(I)において、Rは、1つ又は複数の脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、及び/又はポリカーボネートから選択され、任意選択的に少なくとも1つのRは、親水性セグメントを含んでいる。R’,R’’は、独立して、任意選択的にC1-C10アルキル基又は(ハライド又は保護されたS、N、P、又はO部分によって置換された)C1-C10アルキル基によって置換されたC2-C8アルキレン及び/又はアルキレン鎖にS、N、P、又はOを含むC2-C8アルキレンである。Z1-Z4は,独立してアミド、尿素、又はウレタンである。Q1、Q2は、独立して尿素、ウレタン、アミド、カ-ボネート、エステル、又は無水物である。nは、5-500の整数である。p及びqは、独立して0又は1である。但し、qが0の場合、Rは、任意選択的に少なくとも1つの結晶性のポリエーテル、ポリエステル、ポリエーテルエステル、又はポリ無水物セグメントを含む少なくとも1つの非晶性の脂肪族ポリエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、及び/又はポリカーボネートセグメントである。式(I)によって表される相分離ポリマーの最も単純な形態は、q=0としたときの式:-R-Q1-R’-Q2-である。
【0043】
非晶性セグメントは、式(I)のポリマーの-R-部分に含まれる。q=1の場合、式(I)のポリマーのQ1[-R’-Z1-[R’’-Z2-R’-Z3]p-R’’-Z4]q-R’-Q2部分は、結晶性セグメントを表している。この特定の例では、非晶性セグメントと結晶性セグメントとが交互に配置されているので、均一なブロック長さを有するハードセグメントが提供される。
【0044】
上述のように、Rは、2つ以上の異なる型の脂肪族ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエーテル、ポリ無水物、及び/又はポリカーボネートの混合物を表してもよく、これらの混合物は、非晶性タイプ及び結晶性タイプの両方を含むので、これらの両方が特定の発泡部分に含まれることになる。Rセグメントの非晶性タイプ及び結晶性タイプの混合物が式(I)のポリマーに含まれる場合、任意選択的に、少なくとも1つの親水性セグメントが、少なくとも1つの非晶性Rセグメント内に含まれる。Rは、特に、環状モノマーであるラクチド(L、D、又はLD)、グリコリド、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,5-ジオキセパン-2-オン、パラージオキサノン、及びそれらの組み合せ、並びに任意選択的にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及びそれらの組み合せから誘導されるとよい。いくつかの例では、Rは、ラクチド及びε-カプロラクトンのみから誘導される分子量が1000-4000の非晶性ポリエステルである。一例において、Rは、約25重量%のラクチド、約25重量%のε-カプロラクトン、及び約50重量%のポリエチレングリコールである。
【0045】
式(I)による相分離ポリマーにおいて、Q1、Q2は、アミド、尿素、ウレタンエステル、カーボネート、又は無水物基から選択されてもよく、Z1-Z4は、少なくとも4つの水素結合形成基が結晶性セグメントと一列に並ぶように、アミド基、尿素基、又はウレタン基から選択されるとよい。-Z2-R’-Z3-のR’基は、-Q1-R’-Z1-又はZ4-R’-Q2-のR’と異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0046】
上述のように、Rは、任意選択的に親水性セグメントを含む。このような親水性セグメントとしては、エーテルセグメント、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリブチレングリコールのようなポリエーテル化合物から誘導可能なポリエーテルセグメントが好適である。また、Rに含まれる親水性セグメントは、ポリペプチド、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、又はポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)から誘導されるとよい。親水性セグメントは、好ましくは、ポリエーテル、例えば、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、又はポリ(ブチレン)グリコールのようなポリ(アルキルケングリコール)である。
【0047】
いくつかの例において、非晶性セグメントは、親水性セグメントを含む。親水性セグメントは、親水性セグメントの総重量を基準に、1-80重量%、より好ましくは5-60重量%、さらに好ましくは20-50重量%、最も好ましくは50重量%のポリエチレングリコールを含んでいるとよい。いくつかの例では、相分離ポリマーは、式(I)のポリマーであり、R’が(CH2)4であるか、又は、R’及びR’’の両方が(CH2)4である。例えば、Z1-Z4は、ウレタンであるとよい。
【0048】
本明細書に記載されている発泡体は、複数のポリマー鎖から構成されており、ポリマー鎖のそれぞれは、相分離ポリマー、例えば、ポリウレタンで構成されていることを理解されたい。多くの例において、発泡体は、発泡体に含まれるポリマー鎖間に共有結合による架橋を実質的に含まない。本開示の文脈において、「共有結合による架橋を実質的に含まない」という表現は、1つのポリマー鎖が発泡体に含まれる他のポリマー鎖に対して20個未満、10個未満、6個未満、4個未満、又は2個未満の共有結合しか有していないことを意味している。いくつかの例において、発泡体は、発泡体に含まれるポリマー鎖間に共有結合による架橋を含んでいない。換言すれば、各ポリマー鎖は、発泡体に含まれる他のポリマーに対して共有結合によって架橋されていない。
【0049】
本明細書で用いられている「水素結合(hydrogen bonding)」という用語は、窒素(N)、酸素(O)、又はフッ素(F)のような電気陰性度の高い原子又は基に結合された水素(H)原子、すなわち、水素結合ドナーと、孤立電子対を有する他の隣接原子、すなわち、水素結合アクセプターとの間の部分的な静電吸引力を意味している。ポリウレタンでは、カルボニル基とN-H基との間の水素結合が相分離の主な駆動力の1つである。水素結合は、(個別の分子の間で生じる)分子間結合であってもよいし、(同一分子の部分の間で生じる)分子内結合であってもよい。
【0050】
このような例において、本明細書に記載されている発泡体は、ハード/結晶性セグメント及びソフト/非晶性セグメントを含む。ハードセグメントは、各ポリマー鎖のウレタンセグメント間の水素結合を介して形成されている。特定の理論に縛られることを望むものではないが、各ポリマー鎖のウレタンセグメントは、隣接するポリマー鎖の他のウレタンセグメントとの水素結合を特に受けやすいと考えられる。したがって、発泡体の形成中、各ポリマー鎖のウレタンセグメントは、発泡体内に含まれる他のポリマー鎖のウレタンセグメントと水素結合し、これによって、他のポリマー鎖のウレタンセグメントと整列することになる。各ポリマー鎖のウレタンセグメントが他のポリマー鎖のウレタンセグメントと整列するので、各ポリマー鎖のポリエステルセグメントは、発泡体内に含まれる他のポリマー鎖のポリエーテルエステルセグメントと必然的に整列する。これらのポリエーテルエステルセグメントの整列によって、発泡体のソフトセグメントが形成される。このように、各ポリマー鎖のウレタンセグメント間の水素結合によって、発泡体は、ハードセグメントとソフトセグメントとの高度に組織化された三次元網目構造を呈することになる。
【0051】
実施例におけるポリウレタン発泡体は、水素結合を介して形成された結晶性セグメントを含む。さらに、1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンとの反応生成物を含む結晶性セグメントと、ポリ(エチレングリコール)を含む非晶性セグメントとが、交互に「積み重なる(stack)」構成の結晶性セグメント及び非晶性セグメントを形成して、これによって、積み重ねられた結晶性セグメント間の水素結合を介して強化された三次元多孔質構造をもたらすと考えられる。さらに、実施例におけるポリウレタン発泡体は、1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンとの反応生成物を含む結晶性セグメントと、ポリ(エチレングリコール)とを含む非晶性セグメントを含むので、他のポリマーと容易に相互作用して水素結合する。したがって、柔軟なフィルム層40は、柔軟なフィルム層40と柔軟な発泡層38とが水素結合を介して互いに結合されてそれらの間に共有結合が実質的に存在しないように、ポリウレタン又はシリコーンのようなポリマーから選択されるとよい。この例では、1,4-ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンとの反応生成物を含む結晶性セグメント及びポリ(エチレングリコール)を含む非晶性セグメントを備える相分離ポリマーと、シラノール基及び/又はウレタン基を含む柔軟なフィルム層40との間の水素結合が容易に生じることになる。もちろん、柔軟な発泡層38と柔軟なフィルム層340との間の水素結合によって、それらの間に接着剤を用いる必要がない。したがって、多くの例において、柔軟な発泡層38と柔軟なフィルム層40との間の結合界面24には接着剤が存在しない。
【0052】
一例においては、柔軟な発泡層38から柔軟なフィルム層40が除去されると、その結果として、結合界面24における柔軟な発泡層38の凝集破壊が生じる。柔軟なフィルム層40が柔軟な発泡層38から除去されたときに示される破壊モ-ドは、柔軟な発泡層38と柔軟なフィルム層40との間の結合界面42において破壊が生じる接着破壊と、柔軟な発泡層38内において破壊が生じる凝集破壊とに分類される。凝集破壊は、柔軟なフィルム層40が柔軟な発泡層38から剥離されたときに、柔軟なフィルム層40に結合された柔軟な発泡層38から相分離ポリマー(発泡体)を引き剥がす柔軟性フィルム層40の表面の%面積としてさらに説明することができる。そのため、いくつかの例において、柔軟なフィルム層40と柔軟な発泡層38との間の凝集破壊は、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%よりも大きい。あるいは、凝集破壊は、50-99%、50-96%、60-96%、70-96%、80-93%、80-90%、80-87%、80-84%、83-99%、85-99%、89-99%、92-99%、95-99%、83-96%、86-93%、92-98%、95-98%、又は90%として説明される。柔軟な発泡層38からの柔軟なフィルム層40の除去は、手動によって(柔軟なフィルム層40を柔軟な発泡層38から手で剥がすことによって)、又はASTM D3330やASTM D903など標準化された試験方法に従って行われ得る。
【0053】
活性薬剤は、柔軟な発泡層38内に、より具体的には、相分離ポリマー内に分散されるとよい。典型的には、活性薬剤は、薬物(すなわち、任意の薬学的に活性な化合物)、抗生剤、抗炎症剤、コルチコステロイド、止血剤、抗アレルギー剤、抗コリン作動剤、抗ヒスタミン剤、抗感染性剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗血栓剤、抗瘢痕剤、抗増殖剤、化学療法剤、抗腫瘍剤、治癒促進剤、充血除去剤、ビタミン、高浸透圧剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、又はそれらの組み合せである。
【0054】
活性薬剤は、発泡相分離ポリマーの細胞壁内に配置されるとよい。あるいは、活性薬剤は、発泡相分離ポリマーの空隙内に配置されてもよい。薬物が細孔の細胞壁内に位置する場合、特定の薬物を含む発泡部分の多孔率は、活性薬剤の放出速度に影響を与える。多孔率が高いほど、放出速度が速くなり、逆もまた同様である。理論に縛られることを望むものではないが、多孔率が増加する結果として、相分離ポリマーの分解速度が増大し、それによって放出速度が増大すると考えられる。換言すれば、相分離ポリマーの分解が活性薬剤の放出を制御している。
【0055】
相分離ポリマーからの活性薬剤の放出速度は、一定の時間内に一定の量の薬物を放出するのに必要な時間として表され得る。典型的には、活性薬剤の50%を発泡シェル部分14から放出するのに、8時間から1.5日が必要である。特定の例では、活性薬剤の50%がより長い時間をかけて、例えば、1-5日をかけて放出されることが好ましいこともある。一般的に、活性薬剤の約100%(例えば、95%超)を放出するのに4-14日かかるのが好ましい。
【0056】
一例において、活性薬剤は、窒素原子、酸素原子、またはフッ素原子に結合された少なくとも1つの水素原子を含む分子を含む。この構造は、活性薬剤と相分離ポリマー、例えば、1,4-ブタンジオール及び1,4-ジイソシアナートブタンの反応生成物からなる結晶性セグメントと、ポリ(エチレングリコール)からなる非晶性セグメントとを含むポリウレタン発泡体との間の水素結合を促進する。換言すれば、活性薬剤は、有利には、第1及び/又は第2のポリウレタン発泡体の結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用可能な水素原子を含むポリマーを含み得る。活性薬剤と相分離ポリマーとの間の水素結合は、活性薬剤の放出を制御し且つ遅延させるのに役立つ。
【0057】
一例では、活性薬剤は、ステロイド性抗炎症剤である。相分離ポリマーからの活性薬剤の比較的遅い放出は、コルチコステロイドのようなステロイド性抗炎症剤に特に適していることが分かっている。他の例では、活性薬剤は、止血剤である。もちろん、閉塞装置10は、抗炎症剤、例えば、ステロイドと止血剤との両方を含んでいてもよい。様々な例において、止血剤は、窒素原子に結合された少なくとも1つの水素原子及び/又は酸素原子に結合された少なくとも1つの水素原子を含み、水素原子は、第1及び/又は第2のポリウレタン発泡体の結晶性セグメントと水素結合を形成するために利用される。このような例において、止血剤の分子及び相分離ポリマーの分子は、水素結合を介して互いに結合され、それらの間に共有結合が実質的に存在しない。
【0058】
いくつかの例において、止血剤は、キトサン止血剤である。本明細書に用いられる「キトサン止血剤(chitosan hemostatic agent)」という用語は、キトサン又はキトサンの塩又は誘導体を指している。キトサン又は酢酸キトサンを用いることによって、良好な結果が得られている。キトサンは、D-グルコサミン単位(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン単位(アセチル化単位)を含む多糖類である。キトサンは、キチン(ポリ-N-アセチル-D-グルコサミン)のN-アセチル-D-グルコサミンの少なくとも一部を加水分解によって脱アセチル化することによってキチンから調製されるとよい。キトサン中のD-グルコサミン単位とN-アセチル-D-グルコサミン単位との比率は、典型的には脱アセチル化度として表される。脱アセチル化度は、キトサン中のアセチル化されていないグルコサミン単位の百分率として定義される。したがって、この百分率は、キトサン中に存在する脱アセチル化単位のモル百分率に相当する。
【0059】
理論に縛られるものではないが、脱アセチル化度が高められると、止血特性が改良すると考えられる。キトサンは、1-100モル%、25-100モル%、50-100モル%、75-100モル%、85-100モル%、90-100モル%、5-50モル%、10-35モル%、又は10-25モル%の脱アセチル化度を有することができる。上記の値は、キトサン塩に存在するキトサン、及び(キトサン自体と同じようにアセチル化単位及び脱アセチル化単位を有する)キトサン誘導体にも適用される。さらなる非制限的な例では、上述の範囲の端点内及び端点を含む全ての値及び値の範囲が、本明細書において明示的に考慮されている。理論に縛られるものではないが、脱アセチル化度が高められると、キトサンの止血特性が改良されると考えられる。
【0060】
適切なキトサン塩は、正味の正電荷を有するキトサンイオンを含む塩である。したがって、適切なキトサン塩は、キトサンカチオン及び対アニオンからなる塩であってもよい。例えば、キトサン止血剤は、キトサンと有機酸、特にコハク酸、乳酸、又はグルタミン酸のようなカルボン酸との塩であるとよい。キトサン塩は、例えば、キトサンの硝酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、及び塩酸塩からなる群から選択されてもよい。一般的に、キトサン誘導体は、キトサンに存在するヒドロキシル基、及び/又はアミン基の1つ又は複数が置換されたキトサン分子である。例えば、1つ又は複数のヒドロキシル基の置換によって、エ-テル又はエステルが得られる。また、アミン基の置換によってアミノ基を得てもよいが、これは、一般的に止血活性の低下をもたらす。したがって、キトサンのアミン基は、通常、置換されない。キトサン止血剤は、動物、植物、又は甲殻類に由来するキトサンを含んでいてもよいし、又はこれらから誘導されてもよい。これらの原料は、上記の止血効果に関して同様の良好な結果をもたらす。さらに、合成キトサンが用いられてもよい。好適なキトサン塩のさらなる例として、グルタミン酸、コハク酸、フタル酸、又は乳酸のキトサンエステル、1つ又は複数のカルボキシメチルセルロ-ス基を含むキトサン誘導体、及びカルボキシメチルキトサンが挙げられる。キトサン誘導体の他の好適な例は、(N-トリメチレンクロリド、N-トリメチレンアンモニウムのような)四級基を含むキトサンである。加えて、カルシトニン又は5-メチルピロリジノンのような生物活性賦形剤が用いられてもよい。キトサン止血剤は、約1-1000kDa、1-500kDa、1-250kDa、1-100kDa、10-1000kDa、10-500kDa、10-250kDa、10-100kDa、30-80kDa、50-1000kDa、50-500kDa、50-350kDa、50-250kDa、100-1000kDa、100-750kDa、100-500kDa、100-250kDa、150-500kDa、200-1000kDa、200-750kDa、200-500kDa、225-275kDa、200-300kDa、210-390kDa、90-1000kDa、190-1000kDa、290-1000kDa、又は390-1000kDaの範囲の分子量を有している。さらなる非制限的な例では、上記の範囲の端点内及び端点を含む全ての値及び値の範囲が、本明細書において明示的に考慮されている。
【0061】
いくつかの例では、活性薬剤が止血剤である場合、止血剤を含む発泡部分(すなわち、発泡シェル部分及び/又は発泡コア部分)は、85-99%の多孔率及び0.03-0.07g/cm3の発泡密度を有する。このような多孔率及び密度の値は、止血活性の向上に寄与すると共に、良好な液体(例えば、水または血液)吸収特性を発泡体にもたらすことになる。あるいは、発泡部分は、0.03-0.07g/cm3の発泡密度、及び92-98%又は95-98%の多孔率を有する。止血剤の量は、止血剤を含む発泡部分の総重量の少なくとも0.1重量%、好ましくは、少なくとも2重量%、より好ましくは、少なくとも5重量%であるとよい。注目すべきは、この比較的少量の止血剤であっても、鼻腔内発泡被覆材に望ましい止血特性をもたらすのに十分であるということである。さらに、止血剤の量は、一般的に、発泡部分の総重量の99重量%未満、50重量%未満、又は35重量%未満である。鼻腔内発泡被覆材の止血活性は、殆ど止血剤に依存しないので、一般的に、高濃度である必要もなく、又高濃度であると好ましくもない。止血剤は、好ましくは、粒子、特に、ポリマー粒子の形態で発泡体内に存在するとよい。好適な粒子の例として、非晶性粒子、結晶性粒子、及びゲル状粒子が挙げられる。止血剤は、特に高粘度の場合には液体であってもよい。止血性粒子の場合、粒子は、1-1000μmの寸法を有しているとよい。好ましくは、粒子は、150μmよりも小さいとよい。特に、5-90μmの粒子を用いることによって、良好な結果が得られている。小さい粒子は、多くの利点を有している。第1に、発泡体の構造は、大きい粒子が存在するよりも小さい粒子が存在する方が影響を受けにくい。第2に、小さい止血性粒子は、大きい止血性粒子よりも凝集する傾向が小さい。更に、小さな粒子を用いることによって、良好な分散を得ることができる。最後に、小さい粒子は、発泡体を調製する際に沈降しないので、発泡体内の均一な分布が必要に応じて達成され得る。止血性粒子は、どのような適切な形状であってもよいが、好ましくは、ほぼ球状である。粒子は、好ましくは、中実である。用いられる好適な中実粒子は、一般的に、不溶性かつ親水性である。
【0062】
あるいは、柔軟な発泡層38の1つまたは複数の部分は、活性薬剤を含んでいなくてもよい。柔軟な発泡層38の種々の部分/フィルムは、それぞれ活性薬剤又は薬物を含んでいてもよいし、薬物を実質的に含んでいなくてもよいし、又は薬物を含んでいなくてもよい。本明細書に記載される活性薬剤又は薬物のいずれかに関して用いられる「実質的に含んでいない」という表現は、特定部分の全重量又は柔軟な発泡層38の全重量の5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.05重量%、又は0.01重量%未満であることと定義されてもよい。本開示において「実質的に含んでいない」は、「含んでいない」も含むものとする。したがって、部分及び/又は装置10が何かを、例えば、薬物を「実質的に含んでいない」と記述される場合、この記述は、「含んでいない」と狭義に解釈されてもよい。
【0063】
柔軟なフィルム層40のポリマーは、ポリシロキサン又はポリウレタンを含むか、又はシラノール基及び/又はウレタン基を含む生体吸収性ポリマーであってもよい。他の変更例において、柔軟なフィルム層40は、非生分解性であり、例えば、医療用のシリコーンエラストマーフィルムである。本出願に適するこのようなシリコーンエラストマーフィルムの1つは、Wacker Chemie AG(ミュンヘン、ドイツ)からSILPURANの商品名で販売されている。本明細書で用いられている「生分解性(biodegradable)」という用語は、一般的に生細胞、生体、又はこれらの系の一部によって生化学的に作用され、これには加水分解が含まれ、分解及び崩壊して化学的又は生化学的な生成物になるポリマーの能力を指している。また、本明細書で用いられている「生体吸収性(bioresorbable)」という用語は、ヒト又は動物の体によって完全に代謝される能力を指している。
【0064】
特に有利な具体例の1つは、生体吸収性である柔軟な発泡層38と生体適合性及び非生分解性である柔軟なフィルム層40を含む。ステント32は、患者内に配置され、数週間又は数ヶ月間放置され得る。非生分解性である柔軟なフィルム層40は、そのまま原形を保つが、生体吸収性である柔軟な発泡層38は、一定期間後に吸収される。吸収期間前、吸収期間中、及び吸収期間後において、前頭洞の開存性は、柔軟なフィルム層40の復元力によって維持される。一方、柔軟な発泡層38内の一種又は複数種の活性薬剤は、前頭洞に送達され、最適な創傷回復環境を促進する。例えば、コルチコステロイドの局所投与が、前頭洞の開存性を機械的に維持しながら達成される。ステント32を取り外すことが望まれた場合、柔軟なフィルム層40が主に又は完全に残る構成要素であり、鼻腔を通して容易に取り外されるためのより細い構造になっている。
【0065】
上述したように、ステント32は、カートリッジ36から展開される。ここで、
図9-
図14を参照すると、カ-トリッジ36は、少なくとも1つの側壁78を有するシース76を含む。シース76は、管形状を有しており、側壁78が管腔80を画定している。側壁78は、近位端84の反対側の遠位端82を含み、管腔80は、遠位端82と近位端84との間に延在している。管腔80は、巻かれたステント32の全体を実質的に受容するサイズ、より具体的には、遠位端82と近位端84との間に実質的に受容するサイズの容積を画定するとよい。シース76は、前頭洞の解剖学的構造内に挿入される際、この解剖学的構造の輪郭に対応することで損傷のおそれを少なくするように、柔軟であるとよい。
【0066】
カートリッジ36は、シース76に連結されたキャップ部86を含んでいる。
図9-
図14は、シース76の近位端84に連結されたキャップ部86を示している。キャップ部86は、キャップ本体88、リップ90、及び連結機構部92を含む。キャップ本体88は、シース76の管腔80と連通する開口94を画定している。キャップ本体88の開口94は、シース76の管腔80と同軸であるとよく、シース76の管腔80及びキャップ本体88の開口94のそれぞれの直径は、実質的に互いに等しいとよい。リップ90は、キャップ本体88から外側に拡がっている。
図9-
図14のリップ90は、円筒状の輪郭を有するキャップ本体88の周りに環状に配置されている。連結機構部92は、キャップ本体88上に配置されている。
図13に最もよく示されるように、連結機構部92は、円筒状の輪郭を有するキャップ本体88の周りに周方向に離隔して配置された屈曲可能なフィンガーを含むとよい。さらに説明される方法では、開口94、リップ90、及び連結機構部92は、協働してカートリッジ36をアプリケータ装置34に取り外し可能に連結する。連結機構部は、ノッチ、溝、ネジ山などの代替的な方法で実装されてもよい。カートリッジ36は、システム30の使い捨ての構成要素であってもよい。
【0067】
カートリッジ36は、アプリケータ装置34に連結される前又は後にステント32を取り外し可能に受容するように構成されている。一例において、ステント32は、カートリッジ36のシース76内に予め装填される。
図9-
図11は、ステント32(
図4Bに示される変更形態のステント32b)をカートリッジ36内に装填するいくつかのステップを示している。ステント32bは、巻かれていない状態又は拘束されていない状態で示されている。ステント32bは、実質的に円筒状の輪郭となるように手で巻かれてもよい。第1の本体部分60及び第2の本体部分62は、接合部64を除いて、独立して巻かれてもよいし、ユニットとして(一体的に)巻かれてもよい。巻かれると、柔軟な発泡層40は、図示のように、ステント32bの外側環状面56を少なくとも部分的に画定し、柔軟なフィルム層38は、ステント32bの内側環状面58を少なくとも部分的に画定する。巻きかれたステント32bは、カートリッジ36内に挿入され、下端部48がキャップ部86の開口94を通って導かれてキャップ部86の基部と略一致するように、管腔80内に導かれる。
図11は、キャップ部86の基部又はその近傍で内側環状面58を画定する下端部48を最もよく示している。柔軟なフィルム層40の復元性によって、ステント32bは、シース76によってもたらされる拘束を受ける管腔80内において、わずかに広がり得ることを理解されたい。シース76内のわずかな広がりによって、内部通路57がわずかに大きく開くことになる。カートリッジ36内の巻かれたステント32は、カ-トリッジアセンブリと見なされる。様々な種類のステントがカートリッジに利用され得ること、及び本明細書に記載されるシステム及び方法を用いて、前頭洞以外の箇所、例えば、限定されるものではないが、他の副鼻腔、静脈内、関節鏡検査手順、神経修復、関節、及び様々な耳と喉の用途において、ステント及び/又はカ-トリッジを配置するために使用できることを理解されたい。
【0068】
ここで、
図1-
図3及び
図12-
図14を参照すると、アプリケータ装置34は、ボア100を画定するハウジング96を含む。ハウジング96は、近位ハウジング部分104に連結された遠位ハウジング部分102を含み、ボア100は、近位ハウジング部分102及び遠位ハウジング部分のそれぞれの少なくとも一部を通って延びている。ハウジング96は、カ-トリッジ36に取り外し可能に連結されるように構成されている。具体的には、遠位ハウジング部102は、その遠位端の近くにヘッド105を含むとよい。ヘッド105は、ボア100と連通する開口106を画定する。開口106の近くに、ヘッド105は、カートリッジ36のキャップ部86の連結機構部92と相補的な連結機構部108を含む。
図13は、ヘッド105の周りに周方向に配置されたキー溝としての連結機構部108を最もよく示している。この連結機構部108は、連結機構部92を構成するキーの周方向位置と相補的な位置に配置されている。さらに、開口106は、キャップ分86のキャップ本体88を摺動可能に且つぴったりと受容するサイズを有している。
図13、14を特に参照すると、キャップ本体88は、リップ90がアプリケータ装置34の遠位端に当接するまで、開口106内に導かれる。同時に又はその後に、相補的な連結機構部92、108が位置整合かつ係合されるようにカートリッジ36がアプリケータ装置34に対して回転配向され、これによって、カートリッジ36とアプリケータ装置34とが選択的に連結されることになる。
【0069】
巻かれたステント32は、キャップ部86をアプリケータ装置34に取り外し可能に連結する前に、カートリッジ36のシース76内に挿入されるとよい。アプリケータ装置34は、駆動部材110及び駆動部材110に連結されたプランジャー要素112を含む。駆動部材110は、プランジャー要素112の遠位側に延在するマンドレル114を含んでもよい。
図3、
図12及び
図13から分かるように、マンドレル114は、ステント32がカートリッジ36内に配置され、及びカートリッジ36がアプリケータ装置34に連結されたときに、ステント32の内側環状面58によって画定される通路57を通って延びる。具体的には、キャップ部86の開口94及びシース76の管腔80は、アプリケータ装置34のマンドレル114を受容するサイズを有している。さらに、上述のように、内部通路57は、シース76内でのわずかな広がりによって、わすかに大きく開くことになる。こうして、ユーザは、マンドレル114の遠位端116をカートリッジ36内で巻かれている内部通路57に合わせる。ユーザは、上述のように、リップ90がアプリケータ装置34の遠位端に当接し、及び相補的な連結機構部92、108が互いに係合するまで、マンドレル114を内部通路57内で移動させる。マンドレル114は、カートリッジ36からの配置中に前頭洞内のステント32の位置決めを制御することができる。
【0070】
図1-
図3は、例えば、ユーザによって片手で把持されるように構成されたハウジング96を示している。具体的には、ハウジング96は、近位ハウジング部分104から横方向外側に延びるハンドル118を含んでもよく、ハンドル118は、ユーザの片手の指で扱えるような輪郭に形成されている。アプリケータ装置34は、駆動部材110、より具体的には、ボア100を通って延びる駆動部材110の近位端に連結されたアクチュエータ120をさらに含む。
図2、
図3を引き続き参照すると、アクチュエータ120は、近位ハウジング部分104のボア100内にぴったりと且つ摺動可能に配置されたプッシュロッド122と、プッシュロッド122に連結された制御面124とを含み得る。制御面124は、プッシュロッド122をハウジング96に対して移動させるためにユーザから入力を受けるように構成されている。具体的には、制御面124は、ユーザが入力をハンドル118に加えて近位ハウジング部分104をアクチュエ-タ120に対して後退させるときに、その位置に維持されるようなサイズに形成され、及び位置決めされている。追加的又は代替的に、ユーザは、近位ハウジング部分104の位置を維持しながらプッシュロッド122を前進させてもよい。ハウジング96に対するプッシュロッド122の相対的な移動によって、ハウジング96に対する駆動部材110の移動が促される。
【0071】
プッシュロッド122は、上述のように、駆動部材110の近位端に当接している。駆動部材110は、近位部分126と、近位部分126に対して遠位に位置する遠位部分128とを含んでもよい。駆動部材110の近位部分126及び遠位部分128は、互いに連結された個別の構成要素であってもよいし、又は単一構造の構成要素であってもよい。近位部分126は、実質的に剛性であるが、遠位部分128は、近位部分126に対して柔軟であるとよい。例えば、遠位部分128(及び少なくとも対応する長さを有する遠位部分128を覆う遠位ハウジング部分102)は、ユーザがアプリケータ装置34に所望の湾曲を与えるために力を加えることを可能にするため、形状順応性(malleable)を有しているとよい。追加的又は代替的に、駆動部材110の遠位部分128が形状順応性を有し、対応する長さを有する遠位部分128を覆う遠位ハウジング部分102がアプリケータ装置34に所望の湾曲を与えるために柔軟であってもよい。利点の中でも、とりわけ、アプリケータ装置34に所望の湾曲を与えることによって、ユーザは、前頭洞のより遠くの(奥の)解剖学的構造にアクセスすることが可能になる。
【0072】
図3は、駆動部材110から延在する環状のフランジとしてのプランジャー要素112を示している。マンドレル114は、プランジャー要素112から遠位方向に延在している。カートリッジ36のキャップ部86の開口94は、キャップ部86がアプリケータ装置34のハウジング96に連結されたときにプランジャー要素112を受容するサイズに形成されている。より具体的には、開口94の内径は、プランジャー要素112の外径よりも大きく、アプリケータ装置34の作動によってプランジャー要素112が開口84を通過することができるようになっている。同様に、カートリッジ36のシース76の管腔80は、プランジャー要素112の外径よりも大きく、ステント32がシース76から配置されたとき、アプリケータ装置34の作動によってプランジャー要素112が管腔80を通過することができるようになっている。
図15、
図16を更に参照すると、
図3、
図15は、アプリケータ装置34に連結されたカートリッジ36を示しており、カートリッジ36内には、巻かれたステント32が配置されている。マンドレル114は、巻かれたステント32の内部通路57を通って延びており、マンドレル114の遠位端116は、シース76の遠位端82の近くに位置している。遠位ハウジング部分102及び駆動部材110の遠位部材128は、湾曲した形態にある。ユーザは、例えば、ハンドル118に親指以外の指を掛け、及びアクチュエータ120の制御面124に親指を掛けて片手でアプリケータ装置34を把持する。ステント32を展開させる準備が整ったら、入力(例えば、握り締める動作)をハンドル118及び制御面124の一方又は両方に加え、ハウジング96をアクチュエータ120に対して
図15の矢印130の方向に移動させる。
図16に示されるように、ハウジング96は、制御面124に向かって移動し、より具体的には、遠位ハウジング部分102は、駆動部材110に対して近位方向に後退する。遠位ハウジング部分102の柔軟性及び駆動部材110の遠位部分128の形状順応性により、遠位ハウジング部分102は、後退中、駆動部材110の近位部分126の形状に適合するように、真っすぐになる。
【0073】
カートリッジ36及び遠位ハウジング部分102は、相補的な連結機構部92、108によって互いに連結され、プランジャー要素112は、ステント32の下端部48を支持している。さらに、上述のように、キャップ部86の開口94は、プランジャー要素112の通過を可能にするようなサイズを有している。したがって、遠位ハウジング部分102の後退によって、
図16に示されるように、駆動部材110上のカートリッジ36が後退し、カートリッジ36のシース76の柔軟性によって、カートリッジ36は、駆動部材110に与えられた湾曲に追従する。ステント32は、プランジャー要素112によって対応する方法で移動することが拘束されているので、カートリッジ36から露出し、これによって、ステント32が配置される。ステント32は、未拘束状態にあり、上述した態様で開かれる(展開される)。
【0074】
以下、システム30を用いる例示的な方法を、
図17の解剖学的構造を参照して説明する。前頭洞(FS)は、前頭洞口(FSO)(すなわち、入口)を通って鼻腔(NP)に開口する前頭洞腔(FSC)を含む。鼻腔(NP)は、空気を温め、加湿し、及びろ過するために、上鼻甲介(ST)、中鼻甲介(MT)、及び下鼻甲介(IT)によって少なくとも部分的に画定されている。また、副鼻腔は、とりわけ、上顎洞腔(MSC)及び篩骨洞(ES)も含む。前頭洞腔、鼻腔、上顎洞腔などは、粘膜壁(MW)によって画定されている。特に興味深いのは、粘膜壁が前頭洞口を画定していることである。システム30は、ステント32、アプリケータ装置34、及びカートリッジ36を含んで設けられる。ステント32は、カートリッジ36内に予め装填されている(例えば、フィルムカバーによって密閉されている)。あるいは、ステント32は、例えば、ステント32の切欠き68を所望の形状に切除することによって、所望の輪郭に変更されてもよい。ステント32は、手によって巻かれて、カートリッジ36のシース76に装填される。柔軟なフィルム層40は、ステント32の内側環状面58を少なくとも部分的に画定し、柔軟な発泡層38は、ステント32の外側環状面56を少なくとも部分的に画定する。シース76の遠位端82は、
図17に示されるように、鼻腔内に導かれ、鼻腔内を通っている。シース76の遠位端82が前頭洞口内に導かれ、前頭洞口のわずかに上に配置されてもよい。駆動部材110に対してカートリッジ36を後退させてステント32を展開させるため、入力がアプリケータ装置34に加えられる。ステント32の第1の本体部分60が前頭洞腔内に配置され、第2の本体部分62が前頭洞口及び/又は鼻腔内に配置され得る。第1の本体部分60及び第2の本体部分62が独立して展開され得ることにより、第1の本体部分60は、比較的大きく展開されて、前頭洞口近くの前頭洞腔を画定する解剖学的構造に干渉する。この干渉は、前頭洞内におけるステント32の保持を容易にする。第2の本体部分62は、前頭洞口の開存性をもたらし且つ維持するように展開される。さらに、粘膜壁と直接接触する柔軟な発泡層38は、一種又は複数種の活性薬剤を送達することができる。アプリケータ装置34が前頭洞から取り出され、カートリッジ36は、アプリケータ装置34から取り外されて適切な方法で処分(廃棄)される。ステントがカートリッジ内に予め装填され、このようなステント及びカートリッジの両方が無菌状態で一緒に包装されることも考えられる。
【0075】
システム30は、前頭洞口の開存性を維持するようにステント32を配置するのにとても適していることが容易に理解されるであろう。システム30は、副鼻腔の任意の孔又は通路内、例えば、篩骨洞、蝶形骨洞、及び上顎洞と連通する孔又は通路内、及び上鼻甲介、中鼻甲介、及び/又は下鼻甲介によって画定される通路内にステント32を配置するために用いられてもよいことも企図されている。システム30は、他の通路内に適用されてもよいこと、例えば、ステント32を鼻、耳、喉、脳などの他の孔及び通路内に配置するために用いられてもよいこともさらに企図されている。
【0076】
以下の例示的な条項を参照して、いくつかの実施例について説明する。
【0077】
[条項1]
ハウジング、アクチュエータ、及びアクチュエータに連結された駆動部材を含むアプリケータ装置を含むシステムを用いてステントを患者の前頭洞腔内に配置するための方法であって、前記システムは、管状シース及び管状シースに連結されたキャップ部を含む使い捨てカートリッジをさらに含み、前記ステントは、80%を超える多孔率を有する柔軟な発泡層と、柔軟なフィルム層と含み、前記方法は、使い捨てカートリッジのキャップ部をアプリケータ装置の遠位端に取り外し可能に連結するステップであって、ステントは、管状シース内で巻かれて実質的に円筒状の輪郭を取っており、柔軟な発泡層は、ステントの外側環状面を少なくとも部分的に画定し、柔軟なフィルム層は、弾性的に変形されてステントの内側環状面を少なくとも部分的に画定している、ステップと、管状シースの遠位端を前頭洞腔内又はその近くに配置するステップと、ハウジング及びアクチュエータの一方又は両方に入力を与え、管状シースを駆動部材に対して移動させてステントを管状シースから前頭洞腔内に押出し、これによって、柔軟なフィルム層が柔軟なフィルム層及び柔軟な発泡層の両方を弾性的に展開させ(広げ)、柔軟な発泡層の外側環状面を前頭洞腔の粘膜に直接接触させるように付勢するステップと、を含む。
【0078】
[条項2]
条項1に記載の方法であって、アプリケータ装置及び使い捨てカートリッジのそれぞれは、相補的な連結機構部を含み、前記方法は、相補的な連結機構部を位置合わせして係合させ、巻かれたステントが配置された管状シースをアプリケータ装置の駆動部材に隣接して配置するステップをさらに含む。
【0079】
[条項3]
条項1又は2に記載の方法であって、キャップ部は、環状リップを含み、前記方法は、相補的な連結機構部が係合した状態で、環状リップをアプリケータ装置の遠位端に接触するように配置するステップをさらに含む。
【0080】
[条項4]
条項1-3のいずれか一つに記載の方法であって、ステントは、ステントの相対する辺部の間に部分的に延在する接合部にて互いに連結された第1の本体部分及び第2の本体部分をさらに含み、第1及び第2の本体部分は、接合部を除いて独立して巻かれるように及び/又は広げられるように構成されており、前記方法は、ステントの相対する辺部から内側に延在する切欠きを設けるようにステントを切除するステップであって、切欠きが、第1の本体部分及び第2の本体部分を画定する、ステップをさらに含む。
【0081】
[条項5]
条項4に記載の方法であって、ステントは、第1の本体部分及び第2の本体部分を画定するようにステントの相対する辺部から内側に延在するスリットをさらに含み、前記方法は、前記スリットを変更して切欠きを設けるようにステントを切除するステップをさらに含む。
【0082】
[条項6]
条項1-5のいずれか一つに記載の方法であって、第1の本体部分を前頭洞腔内に配置し、及び前頭洞口を通して第2の本体部分を配置するステップをさらに含む。
【0083】
[条項7]
条項1-6のいずれか一つに記載の方法であって、アプリケータ装置は、ハンドルとハンドルに連結された柔軟なハウジングとを含み、駆動部材の少なくとも一部は、形状順応性を有しており、前記方法は、駆動部材に入力を加えてハウジングに対する使い捨てカートリッジに所望の湾曲を与えるステップをさらに含む。
【0084】
[条項8]
条項1-7のいずれか一つに記載の方法であって、ステントを手で巻くステップと、キャップ部をアプリケータ装置に取り外し可能に連結するステップの前に、巻かれたステントを使い捨てカートリッジの管状シース内に挿入するステップと、をさらに含む。
【0085】
[条項9]
条項1-8のいずれか一つに記載の方法であって、ステントは、使い捨てカートリッジの管状シース内に予め装填されている。
【0086】
[条項10]
巻かれたステントの内側環状面は、巻かれたステントが管状シース内に配置されたときに内部通路を画定し、使い捨てカートリッジのキャップ部をアプリケータ装置の遠位端に連結するステップは、駆動部材の遠位端から延在するマンドレルを巻かれたステントの内部通路内に導くことをさらに含む。
【0087】
[条項11]
条項1-10のいずれか一つに記載の方法であって、キャップ部をアプリケータ装置の遠位端から取り外すステップと、使い捨てカートリッジを廃棄するステップとをさらに含む。
【0088】
[条項12]
条項1-11のいずれか一つに記載の方法であって、アプリケータ装置は、ボアを画定するハウジングと、ハウジングに連結されたハンドルとを含み、アプリケータ装置のアクチュエータを作動させるステップは、ハウジングを駆動部材に対して後退させてステントを管状シースから押し出すように、アクチュエータの位置を維持しながらハンドルに入力を与えることをさらに含む。
【0089】
[条項13]
条項12に記載の方法であって、使い捨てカートリッジのキャップ部は、駆動部材を取外し可能に受容するサイズの開口を画定し、ハンドルに入力を与えて駆動部材に対してハウジングを後退させるステップは、駆動部材をキャップ部の開口及び管状シースを通して導くことをさらに含む。
【0090】
以上、いくつかの例について検討してきた。しかし、本明細書において検討した例は、本発明を任意の特定の形態に包括又は制限することを意図するものではない。用いられた専門用語は、制限するためのものではなくむしろ説明するためのものであることが意図されている。上記の示唆に照らして多くの修正形態及び変形形態が可能であり、本発明は、具体的に記載される以外の方法によって実施されてもよい。なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下のとおりであった。
[請求項1]
前頭洞腔内に配置可能なステントであって、
80%を超える多孔率を有し、非晶性セグメントと水素結合を介して形成された結晶性セグメントとを含むポリウレタンを含む柔軟な発泡層と、
前記柔軟な発泡層内の活性薬剤と、
積み重ね構成で配置されると共に結合界面において前記柔軟な発泡層の前記結晶性セグメントと水素結合するように構造化されたポリマーを含む柔軟なフィルム層と、
を含み、
前記柔軟な発泡層及び前記柔軟性フィルム層は、前記前頭洞腔内に挿入される前に巻かれることで、前記柔軟な発泡層が前記ステントの外側環状面を少なくとも部分的に画定すると共に前記柔軟性フィルム層が前記ステントの内側環状面を少なくとも部分的に画定するように構成されており、
前記柔軟なフィルム層は、前記前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたときに前記ステントを広げると共に前記柔軟な発泡層の前記外側環状面を前記前頭洞腔の粘膜に直接接触させるよう付勢するのに十分な復元力を有している、
ステント。
[請求項2]
前記柔軟な発泡層から前記柔軟なフィルム層が除去されると、前記結合界面で前記発泡層の凝集破壊が生じる、請求項1に記載のステント。
[請求項3]
前記結合界面には接着剤が存在せず、前記柔軟なフィルム層と前記柔軟な発泡層とが水素結合を介して互いに直接結合されている、請求項1又は2に記載のステント。
[請求項4]
前記柔軟なフィルム層と前記柔軟な発泡層との間には共有結合が存在しない、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項5]
前記柔軟な発泡層の前記結晶性セグメントは、1,4ブタンジオールと1,4-ジイソシアナートブタンとの反応生成物で構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項6]
前記ポリウレタン発泡層内の分子は、前記結晶性セグメントと前記非晶性セグメントとが交互に積み重ねられるように配置され、積み重ねられた結晶性セグメント間の水素結合を介して強化された三次元多孔質構造をもたらす、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項7]
前記ステントの相対する辺部の間に部分的に延在する接合部にて互いに連結された第1の本体部分及び第2の本体部分をさらに含み、前記第1及び第2の本体部分は、前記接合部を除いて、独立して巻かれるように及び/又は広げられるように構成されており、前記第1及び第2の本体部分のそれぞれが、前記柔軟な発泡層及び前記柔軟なフィルム層を含む、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項8]
前記第1及び第2の本体部分は、前記相対する辺部の間に画定され且つ前記接合部を含む境界によって互いに区切られており、前記ステントは、前記相対する辺部から内側に延びる切欠きをさらに含み、前記切欠きは、前記第1の本体部分に関連付けられた第1の面と、前記第2の本体部分に関連付けられた第2の面とを含み、前記切欠きの前記第1及び第2の面のそれぞれが前記境界に対して傾斜している、請求項7に記載のステント。
[請求項9]
前記境界に対する前記切欠きの前記第1の面の角度が概ね25°から75°の範囲内にある、請求項8に記載のステント。
[請求項10]
前記境界に対する前記切欠きの前記第2の面の角度が概ね25°から75°の範囲内にある、請求項8又は9に記載のステント。
[請求項11]
前記第1及び第2の面は、互いに連続して放物線状の切欠きを形成している、請求項8~10のいずれか一つに記載のステント。
[請求項12]
前記柔軟な発泡層は、第1の外面と前記結合界面との間に画定される第1の厚みを有し、前記柔軟なフィルム層は、前記第1の外面の反対側の第2の外面と前記結合界面との間に画定される第2の厚みを有し、前記第1の厚みが前記第2の厚みよりも大きい、請求項8~11のいずれか一つに記載のステント。
[請求項13]
前記相対する辺部は、第1の相対する辺部であり、前記ステントは、前記第1の相対する辺部の間に延在する第2の相対する辺部をさらに含み、前記第2の相対する辺部は、円弧状であり、丸められた角において前記第1の相対する辺部と交差している、請求項8~12のいずれか一つに記載のステント。
[請求項14]
前記柔軟なフィルム層は、ポリシロキサンで構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項15]
前記柔軟なフィルム層は、ポリウレタンで構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項16]
前記柔軟なフィルム層は、シラノール基及び/又はウレタン基を含む生体吸収性ポリマーで構成されている、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項17]
前記柔軟な発泡層は、生体吸収性を有する、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項18]
前記活性薬剤は、窒素原子、酸素原子、又はフッ素原子に結合された少なくとも1つの水素原子を含む分子を含む、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項19]
前記活性薬剤は、コルチコステロイド、止血剤、及びそれらの組合せから選択される、先行する請求項のいずれかに記載のステント。
[請求項20]
巻かれたステントをアプリケータ装置によって前頭洞腔内で展開させるための使い捨てカートリッジアセンブリであって、
請求項1~19のいずれか一つに記載のステントと、
近位端と、前記近位端の反対側の遠位端と、前記近位端と前記遠位端との間に延在する管腔とを画定する少なくとも1つの側壁を有し、前記近位端と前記遠位端との間に前記巻かれたステントの全体を受容する大きさのシース容積を画定する管状シースと、
前記管状シースの前記近位端に連結されたキャップ部であって、
前記管状シースの前記管腔に連通する開口を画定するキャップ本体であって、前記開口が前記アプリケータ装置のプランジャー要素を受容するサイズを有する、キャップ本体と、
前記キャップ本体から外側に拡がるリップであって、前記使い捨てカートリッジが前記アプリケータ装置に連結されたときに前記アプリケータ装置の遠位端に当接するように構成された表面を画定する、リップと、
前記キャップ本体に配置された連結機構部であって、前記アプリケータ装置の相補的な連結機構部に取外し可能に係合するように構成されている、連結機構部と、
を含むキャップ部と、
を含む、使い捨てカートリッジアセンブリ。
[請求項21]
前記管状シースは、柔軟であり、前記前頭洞腔内に挿入されるサイズを有する、請求項20に記載の使い捨てカートリッジ。
[請求項22]
前記リップは、円筒状の輪郭を有する前記キャップ本体の周りに環状に配置されている、請求項20又は21に記載の使い捨てカートリッジ。
[請求項23]
前記キャップ本体の前記開口は、前記管状シースの前記管腔と同軸である、請求項20~22のいずれか一つに記載の使い捨てカートリッジ。
[請求項24]
前記管状シースの前記管腔及び前記キャップ本体の前記開口のそれぞれの直径が互いに等しい、請求項20~23のいずれか一つに記載の使い捨てカートリッジ。
[請求項25]
前記連結機構部は、前記キャップ本体の周りに周方向に互いに離隔した屈曲可能なフィンガーを含む、請求項22に記載の使い捨てカートリッジ。
[請求項26]
前頭洞腔にステントを留置するためのシステムであって、
ボアを画定すると共にユーザーが片手で把持するように適合されたハウジングと、アクチュエータと、前記アクチュエータに連結され、前記ハウジング及び前記アクチュエータの一方又は両方が前記ユーザーからの入力を受けたことに応答して前記ボア内を移動するように構成された駆動部材とを含むアプリケータ装置と、
前記ハウジングに取外し可能に連結され、管腔を画定する管状シースと、前記管状シースに連結されて前記アプリケータ装置の前記ハウジングに取外し可能に連結されたキャップ部分とを含む使い捨てカートリッジと、
ステントであって、
80%を超える多孔率を有し、非晶性セグメントと水素結合を介して形成された結晶性セグメントとを含むポリウレタンで構成された柔軟な発泡層と、
積み重ね構成で配置されると共に結合界面にて前記柔軟な発泡層の前記結晶性セグメントと水素結合するように構造化されたポリマーを含む柔軟性フィルム層と、
前記柔軟な発泡層内の活性薬剤と、
を含むステントと、
を含み、
前記ステントは、巻かれて前記管状シース内に挿入されるように構成され、前記柔軟なフィルム層が前記前頭洞腔内に非拘束状態で配置されたときに前記ステントを展開させるのに十分な復元力を有する、
システム。
[請求項27]
前記柔軟な発泡層から前記柔軟なフィルム層が除去されると、前記結合界面で前記発泡層の凝集破壊が生じる、請求項26に記載のシステム。
[請求項28]
前記結合界面には接着剤が存在せず、前記柔軟なフィルム層と前記柔軟な発泡層とが水素結合を介して互いに直接結合されている、請求項26又は27に記載のシステム。
[請求項29]
前記ステントは、巻かれたときに円筒状の輪郭を取り、前記柔軟な発泡層は、前記ステントの外側環状面を少なくとも部分的に画定し、前記柔軟フィルム層は、前記ステントの内側環状面を少なくとも部分的に画定する、請求項26~28のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項30]
前記ステントは、前記ステントの相対する辺部の間に部分的に延在する接合部にて互いに連結された第1の部分及び第2の本体部分をさらに含み、前記第1及び第2の本体部分は、前記接合部を除いて、独立して巻かれるように及び/又は広げられるように構成されている、請求項26~29のいずれか1つに記載のシステム。
[請求項31]
前記管状シースは、近位端及び前記近位端の反対側の遠位端を画定する少なくとも1つの側壁を有し、管腔が前記近位端と前記遠位端との間に延在してシース容積を画定し、
前記巻かれたステントは、両端の間で画定される長さが前記管状シースの長さよりも短く、前記ステントを前記シース容積から配置する前に、前記巻かれたステントの全体が前記シース容積内に配置される、請求項26~29のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項32]
前記巻かれたステントの前記内側環状面は、内部通路を画定し、
前記駆動部材は、前記アクチュエータに連結された近位端の反対側の遠位端と、前記ステントが柔軟なシース内に配置されるときに前記遠位端から前記ステントの前記内部通路内を延びるマンドレルとを含む、請求項29~31のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項33]
前記キャップ部は、前記管状シースの前記管腔と連通する開口を画定し、
前記駆動部材の前記マンドレルは、前記キャップ部が前記ハウジングに連結されるときに前記キャップ部の前記開口を通って延びる、請求項32に記載のシステム。
[請求項34]
前記駆動部材は、プランジャー要素をさらに含み、前記マンドレルは、前記プランジャー要素から延在し、前記キャップ部の前記開口は、前記キャップ部が前記ハウジングに連結されるときに前記アプリケータ装置の前記プランジャー要素を受容するサイズに形成されている、請求項33に記載のシステム。
[請求項35]
前記開口は、前記アプリケータ装置の前記駆動部材を移動可能に受容するサイズに形成され、前記駆動部材は、前記ステントが前記使い捨てカートリッジから展開されるときに前記開口及び前記管状シースの前記管腔を通って延びる、請求項33に記載のシステム。
[請求項36]
前記ハウジング及び前記キャップ部は、前記使い捨てカートリッジを前記アプリケータ装置に取外し可能に連結するように構成された相補的な連結機構部をさらに含む、請求項26~35のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項37]
前記ハウジングの少なくとも一部は柔軟性を有し、前記駆動部材の少なくとも一部は形状順応性を有し、これらは、前記ユーザーからの別の入力を受けて前記使い捨てカートリッジに所望の湾曲を与えるように、及び前記別の入力が解除されたときに前記ハウジングに対する前記使い捨てカートリッジの前記所望の湾曲を維持するように構成されている、請求項26~36のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項38]
前記アクチュエータは、前記ハウジングの前記ボア内に移動可能に配置されたプッシュロッドを含む、請求項26~37のいずれ一つに記載のシステム。
[請求項39]
前記柔軟なフィルム層は、ポリシロキサン又はポリウレタンで構成されている、請求項26~38のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項40]
前記柔軟なフィルム層は、シラノール基及び/又はウレタン基を含むポリマーで構成されている、請求項26~39のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項41]
前記柔軟な発泡層は、生体吸収性を有する、請求項26~40のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項42]
前記活性薬剤は、窒素原子、酸素原子、又はフッ素原子に結合された少なくとも1つの水素原子を含む分子を含む、請求項26~41のいずれか一つに記載のシステム。
[請求項43]
前記活性薬剤は、コルチコステロイド、止血剤、及びそれらの組合せから選択される、請求項26~42のいずれか一つに記載のシステム。