(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】バッテリーアシスト付きパワーオーバーイーサネット・パワード装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20240730BHJP
G06F 1/26 20060101ALI20240730BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02J7/34 A
G06F1/26 306
H02J7/00 Y
H02J7/34 D
(21)【出願番号】P 2021575238
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 US2020037857
(87)【国際公開番号】W WO2020257146
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-17
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520268997
【氏名又は名称】サバント システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Savant Systems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】クリスティー,ケアリー,エル
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-307431(JP,A)
【文献】特開平11-259183(JP,A)
【文献】特開2009-089258(JP,A)
【文献】特開2012-178138(JP,A)
【文献】特開2012-231440(JP,A)
【文献】特開2017-181206(JP,A)
【文献】特表2008-539631(JP,A)
【文献】特表2008-541625(JP,A)
【文献】特表2011-505746(JP,A)
【文献】特表2016-504814(JP,A)
【文献】特表2017-507642(JP,A)
【文献】特表2018-518761(JP,A)
【文献】特表2019-527438(JP,A)
【文献】特表2020-507890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0168283(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0083634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0218879(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270235(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0177800(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0349829(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0054083(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220237(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0233862(US,A1)
【文献】米国特許第8214680(US,B1)
【文献】米国特許第9377794(US,B1)
【文献】国際公開第2013/069145(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/015570(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/135937(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/062995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーアシスト付きパワーオーバーイーサネット(PoE)パワード装置であって、
PoEが提供されるイーサネットケーブルを受け入れるように構成されたポートと、
1つ又は複数のセルを含む局所的バッテリーパックと、
電力を消費して前記
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置の機能を提供するように構成された装置負荷であって、消費される電力が時として、PoEを介して利用可能な電力量を超える、装置負荷と、
前記装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を消費する時の時間期間中に前記局所的バッテリーパックを充電するように構成され、前記装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より多い電力を要求する時の時間期間中に、前記局所的バッテリーパックを放電させて、PoEと前記局所的バッテリーパックからのバッテリー電力との組み合わせで前記装置負荷を駆動するように構成された充電器/経路コントローラと、を含
み、
前記充電器/経路コントローラは、前記局所的バッテリーパックのバッテリー充電レベルを監視して、前記バッテリー充電レベルを充電閾値と比較し、バッテリー充電レベルが前記充電閾値に達したことに応じて、前記装置負荷が低減されたレベルの機能を提供するように前記装置負荷の電力消費量を絞る、又は前記局所的バッテリーパックが再充電されることを可能にするために前記装置負荷を非活性化するように更に構成されている、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項2】
前記充電器/経路コントローラは、前記装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を消費する時の時間期間中に、PoEからの電力だけで前記装置負荷を駆動するように更に構成される、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項3】
規格に従ってPoE電力の供給を決定するために、前記ポート及びイーサネットケーブルを介して給電装置(PSE)と通信するように構成されたPoEパワード装置コントローラを更に含む、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項4】
前記規格が、電気電子技術者協会(IEEE)802.3btである、請求項3に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項5】
PoEを介して利用可能な電力量が、71ワット(W)の保証された連続電力である、請求項4に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項6】
前記充電器/経路コントローラは、
前記局所的バッテリーパックの健全状態(SOH)を求め、前記SOHが新たな局所的バッテリーパックと比べて電力を蓄える及び供給するための局所的バッテリーパックの能力の尺度を表し、前記SOHをSOH閾値と比較し、
前記SOHが前記SOH閾値に達したことに応じて、ユーザに信号を提供するように更に構成される、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項7】
前記局所的バッテリーパックは、ユーザが自分で交換可能である、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項8】
前記
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置が、オーディオ装置、ビデオ装置、又はホームオートメーション装置である、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項9】
前記
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置が、パワードスピーカであり、前記装置負荷が1つ又は複数の内蔵増幅器を含む、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項10】
前記パワードスピーカが、インウォール又はインシーリング・パワードスピーカであり、前記局所的バッテリーパックが構造体の壁または天井の穴内に配置される、請求項
9に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項11】
前記装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より多い電力を要求する時の時間期間は、前記パワードスピーカにより再生される音声信号のオーディオ波形の高音と一致するピーク電力の時間期間である、請求項
9に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項12】
前記
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置がモータ駆動式装置であり、前記装置負荷がモータを含む、請求項1に記載のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置。
【請求項13】
バッテリーアシスト付きパワーオーバーイーサネット(PoE)
パワード装置の動作の方法であって、
前記
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置の装置負荷の現在の電力要件を、PoEを介して利用可能な電力量と比較し、
前記装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を要求することに応じて、
前記装置負荷をPoEからの電力だけで駆動し、
余剰電力を用いて局所的バッテリーパックを充電し、
前記装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より多い電力を要求することに応じて、
前記局所的バッテリーパックを放電させ、
PoEとバッテリー電力の組み合わせで前記装置負荷を駆動
し、
前記局所的バッテリーパックのバッテリー充電レベルを監視して、バッテリー充電レベルを充電閾値と比較し、
前記バッテリー充電レベルが前記充電閾値に達したことに応じて、前記装置負荷が低減されたレベルの機能を提供するように前記装置負荷の電力消費量を絞る、又は前記局所的バッテリーパックが再充電されることを可能にするために前記装置負荷を非活性化する、ことを含む、方法。
【請求項14】
PoEを介して利用可能な電力量が、71ワット(W)の保証された連続電力である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記局所的バッテリーパックの健全状態(SOH)を求め、前記SOHが新たな局所的バッテリーパックと比べて電力を蓄える及び供給するための局所的バッテリーパックの能力の尺度を表し、前記SOHをSOH閾値と比較し、
前記SOHが前記SOH閾値に達したことに応じて、ユーザに信号を提供することを更に含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置が、パワードスピーカであり、前記装置負荷が1つ又は複数の内蔵増幅器を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
前記パワードスピーカが、インウォール又はインシーリング・パワードスピーカであり、前記局所的バッテリーパックが構造体の壁または天井の穴内に配置される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記装置負荷は、PoEを介して利用可能な電力量より多い電力を、前記パワードスピーカにより再生されるオーディオ波形の高音と一致する時に要求する、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は概して、住居構造内および商業構造内およびそれらの周囲のオーディオ装置、ビデオ装置およびオートメーション(自動化)装置に関し、より具体的にはパワーオーバーイーサネット(PoE)をエネルギー源とする装置(PoEパワード装置と称する)に関する。
【0002】
背景情報
PoEは、住居構造内および商業構造内およびそれらの周囲のオーディオ装置(例えば、スピーカ、アンプ、受信機など)、ビデオ装置(例えば、テレビ受像機、モニタ、ビデオ復号器など)、オートメーション装置(例えば、コントローラ、カメラ、ドアロック、点灯装置、モータ駆動式装置など)、及び他のタイプのパワード装置(電気装置)に電力を供給する一般的な方法にますますなりつつある。PoE技術を用いて、PoEスイッチのような給電装置(PSE)が、ツイストペアのイーサネット(登録商標)ケーブル(例えば、カテゴリ5のケーブル、カテゴリ6のケーブルなど)を介して、電力とデータの双方をパワード(電力供給される)装置に供給する。イーサネットケーブルを介して電力とデータを供給することは、配線の設置を非常に簡単にしてコストを節約することができる。様々なPoE規格が、パワード装置に供給される電力量を規制するために電気電子技術者協会(IEEE)により発表されている。これらの規格は、IEEE802.3af、802.3at及び802.3btを含む。IEEE802.3afは、2003年に紹介された最初のPoE規格であった。それは、ポートあたり12.95~15.4ワット(W)の連続電力を供給し、その時にはパワード装置の能力に十分であった。しかしながら、技術が発達するにつれて、多くの装置はより多くの電力を要求していた。その理由で、IEEE802.3atが2009年に発表され、ポートあたり25~30Wの連続電力が指定された。しかしながら、再び新たな技術がより多くの電力を要求した。2018年において、IEEE802.3btが開発され、異形に応じて、ポートあたりの連続電力が51W~100Wまで更に増加された。タイプ3PoEと呼ばれるIEEE802.3btの1つの異形は、ポートあたり60Wまでの連続電力を伝えることができ、この場合、各ポートで51Wの最小連続電力が確保されている。タイプ4PoEと呼ばれるIEEE802.3btの別の異形は、ポートあたり100Wまでの連続電力を伝えることができ、この場合、各ポートで71wの最小連続電力が確保されている。
【0003】
タイプ4PoEの71Wの確保された連続電力は、過去の規格に優る進歩であるが、発表のその時点でさえも、PoE技術から恩恵を受けることができる幾つかの装置(デバイス)には不十分である。例えば、スピーカのような、幾つかのオーディオ装置は、オーディオ波形の高音で71Wを超えるピーク電力要件を有する場合がある。同様に、モータ駆動式装置のような幾つかのホームオートメーション装置は、付勢された際に71Wを超える突入電流を引き込む場合がある。一般に、オーディオ装置、ビデオ装置、ホームオートメーション装置および他の装置は、それらの動作の少なくとも或る程度の期間中、大きな電力量を必要とする場合がある。技術が進歩するにつれて、恐らく装置はますます、より多くの電力を要求し、それによりタイプ4PoEは、その先代と酷似して、その生存性を失うであろう。
【0004】
71Wを超える確保された連続電力を供給する追加の規格がIEEE802.3btに取って代わるように開発され得るが、永久に増加する規格は長期的な解決策ではない。技術が進歩するにつれて、電力要求は上へ上へと上がっていきやすいが、どれぐらいの連続電力がイーサネットケーブルを介して送られ得るかへの理論的な限界が存在する。ある時点で、新たな規格は、イーサネットケーブルを介して伝導され得る連続電力を更に増加することができないであろう。他のケーブルがより大きい連続電力をサポートすることができるが、従来のケーブルの大きくて重い予め設置された基部(ベース)が存在し、据付者はその取り付け手順を熟知している。従って、新たなケーブル敷設技術に移行することは、望ましい解決策になることができない。
【0005】
従って、PoEパワード装置の電力要件に対処し、異なる方法で当該問題に対処することができる新たな技術が必要である。
「先行技術文献」
「特許文献」
「特許文献1」米国特許出願公開第2018/0054083号
「特許文献2」米国特許出願公開第2016/0006242号
【0006】
概要
様々な例示的な実施形態において、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置が提供され、それは、PoEを介して利用可能な連続電力を超えて装置負荷に電力バーストを供給するための局所的バッテリーパックを含む。充電器/経路コントローラは、装置負荷がPoEを介して利用可能なものより少ない電力を消費する(例えば、IEEE802.3bt下で保証された連続電力の71W未満を消費する)時の時間期間中に局所的バッテリーパックを充電する。装置負荷がPoEを介して利用可能なものより多い電力を要求する時(例えば、ピーク電力がオーディオスピーカにより要求される時、突入がモータで生じる時、又は様々なタイプの一時的に止まる装置に関してそれらが付勢される時)の時間期間中、充電器/経路コントローラは、PoEとバッテリー電力の組み合わせで装置負荷を駆動するために、バッテリーパックを放電させる。充電器/経路コントローラは、バッテリー充電レベルを監視することができ、充電閾値に達する際、装置負荷の電力消費を絞り(パワード装置が、低減されたレベルの機能を提供するように)、又は装置負荷を完全に非活性化し(機能が一時的に中断されるように)、局所的バッテリーパックが再充電されることを可能にする。バッテリーパックの大きさを適切にすることにより、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置は、機能性の低減/非活性化が変則的な使用下のみで生じる状態で、大部分の一般的な使用の場合に高い電力レベルを提供することができる。
【0007】
1つの例示的な実施形態において、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置は少なくとも、PoEが提供されるイーサネットケーブルを受け入れるように構成されたポートと、1つ又は複数のセルを含む局所的バッテリーパックと、電力を消費して前記パワード装置の機能を提供するように構成された装置負荷と、充電器/経路コントローラとを含む。消費される電力は時として、PoEを介して利用可能な電力量を超える場合がある。充電器/経路コントローラは、装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を消費する時の時間期間中に局所的バッテリーパックを充電することができ、装置負荷がPoEを介して利用可能な電力量より多い電力を要求する時の時間期間中に、局所的バッテリーパックを放電させて、PoEと局所的バッテリーパックからのバッテリー電力との組み合わせで装置負荷を駆動することができる。
【0008】
理解されるべきは、本概要で説明された以外の様々な追加の特徴および代替の実施形態が実施され得る。本概要は、単に読者に対する簡単な紹介のつもりであり、本明細書で言及された例が本開示の全態様を網羅すること、或いは本開示の不可欠な態様または本質的な態様であることを示さない、又は暗示しない。
【0009】
以下の説明は、例示的な実施形態の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例示的なバッテリーアシスト付きPoEパワード装置のブロック図である。
【
図2】
図1のバッテリーアシスト付きPoEパワード装置の例示的な動作を要約する例示的な一連のステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
図1は、例示的なバッテリーアシスト付きPoEパワード装置100のブロック図である。バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100は、住居構造内および商業構造内およびそれらの周囲のオーディオ装置、ビデオ装置、オートメーション装置または別のタイプのパワード(電力供給される)装置であることができる。1つの例示的な実施形態において、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100は、パワードスピーカ(例えば、インウォール又はインシーリング・パワードスピーカ)であり、この場合、装置の本体は、実質的に壁または天井の穴内に配置される。別の例示的な実施形態において、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100は、モータ駆動式装置である。理解されるべきは、多種多様の他の実施形態が可能である。
【0012】
バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100は、PoEが提供されるイーサネットケーブル(例えば、カテゴリ5のケーブル、カテゴリ6のケーブルなど)を受け入れるように構成されたポート110(例えば、RJ-45ポート)を含む。PoEパワード装置コントローラ120は、当該ポートに結合される。PoEパワード装置コントローラ120は、電力を供給するPSEと通信して、PSEがイーサネットケーブルを介して適正な量の電力を供給するように、規格に従ってシグニチャ及び分類情報をやり取りする役割を果たす。一実施形態において、当該規格はIEEE802.3btであり、電力量は、最高71Wの保証された連続電力である。PoEパワード装置コントローラ120は、集積化直流/直流電圧変換器を含むことができる。
【0013】
PoEパワード装置コントローラ120は、充電器/経路コントローラ130(その詳細は更に後述される)に結合され、そしてまた、充電器/経路コントローラ130は、装置負荷140及び局所的バッテリーパック150に結合される。装置負荷140は、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100の機能を提供するために電力を消費するように構成される。バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100の特性に依存して、装置負荷140及びそれが提供する機能は、多くの形態を取ることができる。例えば、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がパワードスピーカである例示的な実施形態において、装置負荷140は、音声信号の再生の機能を提供するために、スピーカコーンに結合されたドライバ(図示せず)を動作させるのに十分な電力レベルまで、低レベルオーディオ信号またはその一部を増幅する1つ又は複数の内蔵増幅器(アンプ)を含むことができる。当該低レベルオーディオ信号は、イーサネットケーブルを介して供給され得る、又は別な方法でパワードスピーカに供給される。同様に、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がモータ駆動式装置である例示的な実施形態において、装置負荷140はモータを含むことができ、機能は、住居構造内および商業構造内およびそれらの周囲の何らかの物体を作動させることになるかもしれない(例えば、窓用のブライドを開ける、ドアを閉じるなど)。理解されるべきは、多種多様の他のタイプの装置負荷140が可能である。
【0014】
装置負荷140は、PoEを介して利用可能な電力量を時として超える電力消費量を有する場合がある。例えば、IEEE802.3btの場合、装置負荷は時として、71Wを超えて消費する場合がある。係るより大きな電力消費量は、多数の理由の何れかに起因する場合がある。例えば、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がパワードスピーカである例示的な実施形態において、内蔵増幅器が、オーディオ波形の高音で、PoEを介して利用可能な電力量を超えるピーク電力要件を有する場合がある。経験則で、オーディオは、正確な波高因子が実際のオーディオコンテンツに依存する状態で、平均電力要件の約8倍であるピーク電力要件(「波高因子(波高率、クレストファクタ)」と呼ばれる)を有すると考えられ得る。パワードスピーカの平均電力要件はPoEを介して利用可能な連続電力量未満であることができるが、ピーク電力要件はそれを超える場合がある。
【0015】
同様に、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がモータ駆動式装置である例示的な実施形態において、モータは、PoEを介して利用可能な電力量を超える瞬間的な電力要件を有するように、突入電流を引き込む場合がある。一般的な法則として、突入時の電力要件は、安定した状態の電力要件の数倍大きくなる場合がある。安定した状態の電力要件は、PoEを介して利用可能な連続電力量未満であることができるが、突入時の電力要件はそれを超える場合がある。
【0016】
更に、様々なバッテリーアシスト付きPoEパワード装置100(パワードスピーカ、モータ駆動式装置などを含む)は一般に、断続的にのみ動作することができる。例えば、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がパワードスピーカである例示的な実施形態において、スピーカは、内臓増幅器が一般に制限された時間期間(例えば、5分、1時間など)にわたってのみ動作する用途で使用され得る。残りの時間にわたって、それは遊休(アイドル)であることができる。同様に、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がモータ駆動式装置である例示的な実施形態において、当該装置は、モータが一般に特定のタスクを実施するために短時間(例えば、10秒間、1分間など)だけ動作する用途において使用され得る。やはり、残りの時間にわたって、それは遊休(アイドル)であることができる。動作の期間中、装置負荷140は、PoEを介して利用可能な電力量を超える電力要件を有する場合がある。しかしながら、装置負荷140が電力要件を有さない又は無視できるほどの電力要件を有する長い期間が存在する場合がある。
【0017】
局所的バッテリーパック150は、1つ又は複数のセル(例えば、リチウムイオンセル又は別の電池化学を利用するセル)を含む。セルは、装置負荷140の最大電力消費量(例えば、ピーク電力要件、突入電力要件、動作電力要件など)とPoEを介して利用可能な電力との間の差異を吸収する最大放電率、及び局所的バッテリーパック150からのその平均引出し率を前提として、装置負荷140の所望の最大稼働時間に対応する容量(能力)を有するように選択され得る。実施形態に応じて、局所的バッテリーパック150は、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100の実質的に永久的な部分であるように配線で接続され得る、又はユーザが自分で交換可能であるように、1つ又は複数のソケット又はプラグを介して接続され得る。場合によっては、局所的バッテリーパック150は、壁または天井の穴内に位置することができる。例えば、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がインウォール又はインシーリング・パワードスピーカである例示的な実施形態において、局所的バッテリーパック150は、壁または天井の穴内にあることができるスピーカの内部に配置され得る。
【0018】
充電器/経路コントローラ130は、装置負荷140により必要とされる際に電力バーストを供給するために、局所的バッテリーパック150の充電と放電を制御するように構成される。充電器/経路コントローラ130は、バッテリーの充電および電力管理へのサポートを有するプログラム可能な電圧および電流コントローラであることができる。充電器/経路コントローラ130は、装置負荷140がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を消費する時の時間期間中、局所的バッテリーパック150を充電する。装置負荷140がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を消費する時の時間期間中、充電器/経路コントローラ130は、PoEからの電力だけで装置負荷140を駆動する。装置負荷140がPoEを介して利用可能な電力量より多い電力を要求する時の時間期間中、充電器/経路コントローラ130は、電力要求が変動する際に局所的バッテリーパック150から引き出される電力量のバランスをとりながら、PoEと局所的バッテリーパック150からのバッテリー電力との組み合わせで装置負荷140を駆動する。
【0019】
局所的バッテリーパック150のサイズは好適には、一般的な使用事例をサポートするための十分な容量を有するようになっているが、変則的な使用の下では、それは電池切れになる場合がある。充電器/経路コントローラ130は、バッテリーの充電レベルを監視し、当該レベルが1つ又は複数の充電閾値に達したか否かを判断することができる。バッテリー充電レベルが充電閾値に達したことに応答して、局所的バッテリーパック150は、依然として機能を提供するが、低減されたレベルで機能を提供するように装置負荷140の電力消費量を絞ることができる、又は装置負荷140を完全に非活性化することができる。例えば、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がパワードスピーカである例示的な実施形態において、充電器/経路コントローラ130は、第1の「低バッテリー」閾値に達した場合に、内臓増幅器の音量(ボリューム)を調整することができる。更に、充電器/経路コントローラ130は、第2の「電池切れ」閾値に達した場合に、局所的バッテリーパック150のセルへの損傷を防止するために、内臓増幅器を完全に非活性化することができる。バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100がモータ駆動式装置である例示的な実施形態において、充電器/経路コントローラ130は、モータを減速することができない又は実用的でない場合がある(例えば、モータは低減された電力でそのタスクを実施することができない場合がある)ので、単一の充電閾値に達した場合に、モータを単に非活性化することができる。
【0020】
幾つかの具現化形態において、充電器/経路コントローラ130は、局所的バッテリーパック150の健全状態(state of health:SOH)(即ち、新しいバッテリーパックと比べた、電力を蓄える及び供給するためのバッテリーパックの能力の尺度)も求めることができる。SOHがSOH閾値に達したことに応答して、充電器/経路コントローラ130は、局所的バッテリーパック150が交換されるべきである(例えば、ユーザが自分で交換可能なバッテリーパックの場合)という信号、又はバッテリーアシスト付きPoEパワード装置100の全体が交換されるべきである(例えば、配線で接続された局所的バッテリーパックの場合)という信号を提供することができる。当該信号は、装置自体からユーザにより感知される局所的信号(例えば、音色、表示灯、音声メッセージなど)、又はそれ自体のユーザインターフェースにおいてユーザにメッセージを提供する遠隔システムコントローラ又は他の遠隔装置への遠隔信号(例えば、イーサネットケーブルを介して送信されるメッセージ)であることができる。
【0021】
図2は、バッテリーアシスト付きPoEパワード装置100の例示的な動作を要約する例示的な一連のステップを示す流れ図である。ステップ210において、充電器/経路コントローラ130は、装置負荷140の現在の電力要件を、PoEを介して利用可能な量と比較する。ステップ220において、装置負荷140がPoEを介して利用可能な電力量より少ない電力を要求する場合、充電器/経路コントローラ130は、PoEからの電力だけで装置負荷を駆動し且つ余剰電力を用いて局所的バッテリーパック150を充電する。ステップ230において、装置負荷140がPoEを介して利用可能な電力量より多い電力を要求する場合、充電器/経路コントローラ130は、局所的バッテリーパック150を放電させて、PoEとバッテリー(電池)電力との組み合わせで装置負荷140を駆動する。ステップ210~230まで同時に生じることができるステップ240において、充電器/経路コントローラ130は、局所的バッテリーパック150のバッテリー充電レベルを監視して、それを充電閾値(単数または複数)と比較する。ステップ250において、バッテリー充電レベルが充電閾値(又は複数の充電閾値の所与の充電閾値)に達したことに応じて、充電器/経路コントローラ130は、装置負荷140の電力消費量を絞る又は装置負荷140を非活性化する。やはりステップ210~250まで同時に生じることができるステップ260において、充電器/経路コントローラ130は、局所的バッテリーパック150のSOHを求めて、それをSOH閾値と比較する。ステップ270において、SOHがSOH閾値に達したことに応じて、充電器/経路コントローラ130は、ユーザに交換信号を提供する。
【0022】
理解されるべきは、多種多様の改変および変更が上記の技術になされて、多数の代替の実施形態を生じることができる。一般に、プログラム可能な機能は、ソフトウェア、ハードウェア、又はそれらの様々な組み合わせで実現され得る。ソフトウェアの具現化形態は、揮発性メモリ、持続性記憶デバイス、又は他の有形媒体のような、持続性電子デバイス可読媒体に格納された電子デバイス実行可能命令を含むことができる。ハードウェアの具現化形態は、プログラム可能論理回路、特定用途向け集積回路、及び/又は他のタイプのハードウェア構成要素を含むことができる。更に、組み合わせされたソフトウェア/ハードウェアの具現化形態は、持続性電子デバイス可読媒体に格納された電子デバイス実行可能命令を用いて何らかの機能を実行し、ハードウェア構成要素を用いて他の機能を実行することができる。上記の説明は、構成または動作の1つのモードに制限されるべきでない。とりわけ、理解されるべきは、上記の説明は、単なる一例として解釈されることが意図されている。