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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】白色ポリエステルフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240730BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20240730BHJP
   C08J 11/06 20060101ALI20240730BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B29B17/04 ZAB
C08J11/06
C08J11/10
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022004905
(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公開番号】P2022117450
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】110103363
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】楊 春成
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲イェン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 誌鋒
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-038462(JP,A)
【文献】特開2014-239126(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0115760(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2001-0085666(KR,A)
【文献】特開2016-193993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0362429(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107406603(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0118796(KR,A)
【文献】特開2012-166354(JP,A)
【文献】特開2018-168381(JP,A)
【文献】特開2010-189593(JP,A)
【文献】特開平04-183745(JP,A)
【文献】特開2016-166355(JP,A)
【文献】特開昭63-137927(JP,A)
【文献】特開2011-256328(JP,A)
【文献】特開2013-142100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/01-101/14
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルポリエステル材料を用意する工程と、
前記リサイクルポリエステル材料の一部分を物理的に再生して、第1の固有粘度を有する物理的再生ポリエステルチップを形成する工程と、
前記リサイクルポリエステル材料の別の部分を化学的に再生して、前記第1の固有粘度よりも低い第2の固有粘度を有する化学的再生ポリエステルチップを形成する工程と、
白色再生ポリエステルチップ、前記物理的再生ポリエステルチップ、及び前記化学的再生ポリエステルチップを、0.36dL/g以上0.65dL/g以下の固有粘度に従って混合して、ポリエステルマスターバッチ材料を形成する工程と、
前記ポリエステルマスターバッチ材料を溶融して押出すことにより、0.36dL/g以上0.65dL/g以下の固有粘度を有する白色ポリエステルフィルムを得る工程と、
を備
前記白色ポリエステルフィルムの酸価が10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、
前記白色ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)が1nm以上500nm以下であり、
前記白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数が0.2以上0.4以下である
ことを特徴とする白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記白色ポリエステルフィルムの総量100mol%を基準にして、前記白色ポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量が0.1mol%以上6mol%以下であり、
前記白色ポリエステルフィルムの150℃、10Hzにおける貯蔵弾性率が3.5×10dyne/cm以上6.0×10dyne/cm以下である、
請求項に記載の白色ポリエステルフィルムの製造方法
【請求項3】
前記白色ポリエステルフィルムのヘイズが80%以上であり、前記白色ポリエステルフィルムの光透過率が10%以下であり、
前記白色ポリエステルフィルムの反射率が80%以上98%以下であり、
前記白色ポリエステルフィルムの遮光値が1.2以上である、
請求項に記載の白色ポリエステルフィルムの製造方法
【請求項4】
前記白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準として、白色ポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量が5wt%以下である、
請求項に記載の白色ポリエステルフィルムの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白色ポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、特に、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂から製造される白色ポリエステルフィルム並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、廃PETボトルのリサイクル方法としては、物理的リサイクル方法(又は機械的リサイクル方法)が主流である。物理的リサイクル方法では、主に廃PETボトル材料を物理的な機械的手段で粉砕した後、粉砕したPETボトル材料を高温環境下で溶融し、溶融したPETボトル材料をペレット化して物理的再生ポリエステルチップを形成する。物理的再生ポリエステルチップは、その後の処理作業に使用することができる。
【0003】
物理的リサイクル方法で製造された物理的再生ポリエステルチップは、通常、固有粘度(IV)が高い。物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を調整するには、主に固体重合法が採用される。ただし、固体重合法は、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を向上させるためにのみ使用することができ、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を低下させるために使用することはできない。また、一般的なフィルム製造工程では、通常、ポリエステルチップの固有粘度は一定の範囲に制限される。物理的リサイクル方法で製造された物理的再生ポリエステルチップは、一般的にボトルブローやスピニング加工にのみ適用可能であり、フィルム押出加工には適していない。
【0004】
物理的再生ポリエステルチップをフィルム製造工程に適するようにするためには、主に物理的再生ポリエステルチップに未使用ポリエステルチップを混合して、ポリエステル材料全体の固有粘度を低下させることが必要である。しかし、この方法では、白色ポリエステルフィルム中のリサイクルポリエステル材料の割合を効果的に増やすことができず、最終的な白色ポリエステルフィルム製品が環境保護の要求を満たさない可能性がある。言い換えれば、既存の白色ポリエステルフィルムでは、再生ポリエステルの割合がある程度制限されており、この問題に対処する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の白色ポリエステルフィルムにおいて、再生ポリエステルの割合は、克服すべき一定の限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示が解決しようとする技術的課題は、従来技術の欠点を克服するための白色ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本開示で採用した技術的解決策の1つは、白色ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
本発明の白色ポリエステルフィルムの製造方法は、
リサイクルポリエステル材料を提供する工程と、
リサイクルポリエステル材料の一部分を物理的に再生して第1の固有粘度を有する物理的再生ポリエステルチップを形成する工程と、
リサイクルポリエステル材料の他の一部分を化学的に再生して第1の固有粘度よりも低い第2の固有粘度を有する化学的再生ポリエステルチップを形成する工程と、
白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを混合して所定の固有粘度に応じたポリエステルマスターバッチ材料を形成する工程と、
ポリエステルマスターバッチ材料を溶融して押出し、所定の固有粘度を有する白色ポリエステルフィルムを得る工程と、を含む。
本発明における白色ポリエステルフィルムの所定の固有粘度が0.36dL/g以上0.65dL/g以下であり、白色ポリエステルフィルムの酸価が10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、白色ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)が1nm以上500nm以下であり、白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数が0.2以上0.4以下である。
【0008】
上記技術課題を解決するために、本開示で採用した技術的解決策の1つは、白色ポリエステルフィルムを提供することである。
本開示の白色ポリエステルフィルムは、物理的再生ポリエステル樹脂と化学的再生ポリエステル樹脂とを所定の固有粘度に応じて混合、溶融、押出して形成され、白色ポリエステルフィルムは所定の固有粘度を有している。白色ポリエステルフィルムの所定の固有粘度が0.36dL/g以上0.65dL/g以下であり、白色ポリエステルフィルムの酸価が10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、白色ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)が1nm以上500nm以下であり、白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数が0.2以上0.4以下である。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、白色ポリエステルフィルムの総量100mol%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量が0.1mol%以上6mol%以下であり;白色ポリエステルフィルムの150℃及び10Hzにおける貯蔵弾性率が3.5×10 dyne/cm以上6.0×10 dyne/cm以下である。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、白色ポリエステルフィルムのヘイズが80%以上であり、白色ポリエステルフィルムの光透過率が10%以下であり、白色ポリエステルフィルムの反射率が80%以上98%以下であり、白色ポリエステルフィルムの遮光性の値が1.2以上である。
【0011】
上記技術課題を解決するために、本開示で採用した別の技術的解決策は、白色ポリエステルフィルムを提供することである。この白色ポリエステルフィルムは所定の固有粘度が0.36dL/g以上0.65dL/g以下であり、白色ポリエステルフィルムの酸価が10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であり、白色ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)が1nm以上500nm以下であり、白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数が0.2以上0.4以下である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、白色ポリエステルフィルムの総量100mol%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は0.1mol%以上6mol%以下であり;白色ポリエステルフィルムの150℃及び10Hzにおける貯蔵弾性率は3.5×10 dyne/cm以上6.0×10 dyne/cm以下である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、白色ポリエステルフィルムのヘイズが80%以上であり、白色ポリエステルフィルムの光透過率が10%以下であり、白色ポリエステルフィルムの反射率が80%以上98%以下であり、白色ポリエステルフィルムの遮光性の値が1.2以上である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準として、白色ポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量が5wt%以下である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の有益な効果の1つは、本開示が提供する白色ポリエステルフィルム及びその製造方法において、「白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを所定の固有粘度に応じて混合してポリエステルマスターバッチ材料を形成する」という技術的解決策を介して、ポリエステルマスターバッチ材料を、フィルム押出工程に適した所定の固有粘度を有するように調整することができ、再生ポリエステルマスターバッチ材料の割合を高くすることができることである。
【0016】
本開示の特徴及び技術的内容をさらに理解するために、以下の本開示の詳細な説明及び図を参照されたい。ただし、提供される図は、参照及び説明のためにのみ使用され、本開示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するためのものであり、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成している。図面は、本開示の実施形態を示しており、説明と合わせて、本開示の原理を説明する。
【0018】
図1図1は、本開示の白色ポリエステルフィルムの製造方法の概略フローチャートである。
【0019】
図2図2は、本開示のポリエステルマスターバッチ材料の分子量分布を示す模式図である。
【0020】
図3図3は、本開示の一実施形態における白色ポリエステルフィルムの貯蔵弾性率の試験結果である。
【0021】
図4図4は、本開示の別の実施形態における白色ポリエステルフィルムの貯蔵弾性率の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本開示に開示された「白色ポリエステルフィルム及びその製造方法」の実施形態を説明するための具体的な実施形態を示す。当業者であれば、本明細書に開示されている内容から、本開示の利点や効果を理解することができる。本開示は、他の異なる具体的な実施形態を介して実施又は適用することができ、また、本明細書の様々な詳細も、本開示の概念を逸脱することなく、異なる視点や用途に基づいて修正及び変更することができる。また、事前に宣言しておくと、本開示の図は単なる模式図であり、実際のサイズに従って描かれているわけではない。また、以下の実施形態では、本開示の関連する技術内容をさらに詳しく説明しているが、開示された内容は本開示の範囲を限定するものではない。また、本明細書で使用される用語「又は」は、実際の状況に応じて、関連する複数の記載事項のいずれか1つ又は組み合わせを含む場合がある。
【0023】
[白色ポリエステルフィルムの製造方法]
【0024】
本開示の目的の1つは、白色ポリエステルフィルムに使用されるリサイクルポリエステル材料の割合を増加させ、白色ポリエステルフィルム製品が環境保護の要求を満たすようにすることである。
【0025】
上記目的を達成するために、図1に示すように、本開示の一実施形態によれば、白色ポリエステルフィルム中のリサイクルポリエステル材料の割合を効果的に増加させ、得られる白色ポリエステルフィルムを良好な加工性で提供することができる白色ポリエステルフィルムの製造方法が提供される。この白色ポリエステルフィルムの製造方法は、ステップS110~ステップS150を含む。なお、本実施形態で説明した工程の順序や実際の操作方法は、要求に応じて調整可能であり、本実施形態で説明したものに限定されない。
【0026】
ステップS110は、リサイクルポリエステル材料を提供することを含む。
【0027】
再利用可能なリサイクルポリエステル材料を得るために、ポリエステル材料のリサイクル方法は、様々な種類の廃ポリエステル材料を収集することと、その種類、色、用途に応じてポリエステル廃棄物を分類することを含む。次に、ポリエステル廃棄物を圧縮して梱包する。次に、梱包されたポリエステル廃棄物は、廃棄物処理場に輸送される。本実施形態では、ポリエステル廃棄物は、再生PETボトル(r-PET)であるが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0028】
ポリエステル材料のリサイクル方法は、さらに、ポリエステル廃棄物の他の物体(例えば、ボトルキャップ、ラベル、接着剤)を除去することを含む。次に、ポリエステル廃棄物を物理的及び機械的に粉砕する。次に、異なる材質のボトルキャップ、ライナー、及びボトル本体を浮遊させて分離する。次に、粉砕されたポリエステル廃棄物を乾燥させ、再生PETボトルフレーク等のリサイクルポリエステル材料の加工品を形成し、その後のフィルム製造工程を容易にする。
【0029】
本開示の他の実施形態の変更例では、リサイクルポリエステル材料は、例えば、直接購入によって得られたリサイクルポリエステル材料の加工品であってよい。
【0030】
本明細書における「ポリエステル」及び「ポリエステル材料」とは、任意の種類のポリエステル、特に芳香族ポリエステルを指し、本明細書において、具体的には、テレフタル酸及びエチレングリコールの共重合から得られるポリエステル、即ち、ポリエチレンテレフタレート(PET)を指す。
【0031】
さらに、ポリエステルは、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)でもよい。本実施形態では、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートであることが好ましい。さらに、共重合体も使用することができ、特に、2つ以上のジカルボン酸及び/又は2つ以上のジオール成分を用いて得られる共重合体が好ましい。
【0032】
本開示の一実施形態では、リサイクルPETボトルフレークは、二酸単位としてイソフタル酸(IPA)を含む。従って、最終的な白色ポリエステルフィルムも、イソフタル酸を含む。特に、白色ポリエステルフィルムの総量100mol%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は0.1mol%から6mol%の間であり、好ましくは、0.5mol%以上5mol%以下である。
【0033】
本開示の一実施形態では、再生PETボトルフレークは、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールを含む。従って、最終的に形成される白色ポリエステルフィルムは、バイオマス由来のエチレングリコールを含む。特に、白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量は5wt%以下である。さらに、白色ポリエステルフィルム中の全炭素を基準として、放射性元素(C14)で測定したバイオマス由来の炭素の含有量は5%以下である。
【0034】
本開示の一実施形態では、再生PETボトルフレークは金属触媒を含み、最終的に形成される白色ポリエステルフィルムも金属触媒を含む。金属触媒は、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、及びチタン(Ti)からなる群から選択される少なくとも1つである。白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中の金属触媒の含有量は0.0003wt%以上0.04wt%以下である。
【0035】
ステップS120は、リサイクルポリエステル材料の一部分を物理的に再生して、物理的再生ポリエステルチップを得ることを含む。物理的再生ポリエステルチップは、第1の固有粘度を有する。本実施形態では、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度は、概ね0.60dL/g以上であり、好ましくは、第1の固有粘度は、0.65dL/g以上0.90dL/g以下であり、より好ましくは、第1の固有粘度は0.65dL/g以上0.80dL/g以下である。
【0036】
具体的には、物理的再生ポリエステルチップの製造工程は、以下を含む。リサイクルポリエステル材料(例えば、r-PETボトルフレーク)の一部分を物理的及び機械的に粉砕し、リサイクルポリエステル材料の溶融に必要な時間及びエネルギーを削減する。次に、粉砕されたリサイクルポリエステル材料を、単軸押出機又は2軸押出機によって溶融し、リサイクルポリエステル材料を溶融状態にする。次に、第1のフィルターを用いて、溶融状態のリサイクルポリエステル材料を濾過し、リサイクルポリエステル材料中の固体不純物を除去する。最後に、造粒して、物理的再生ポリエステルチップを形成する。
【0037】
即ち、切断、溶融、濾過、押出を順に行うことで、リサイクルポリエステル材料を再形成する。このようにして、元のリサイクルポリエステル材料のポリエステル分子が再配列され、複数の物理的再生ポリエステルチップが製造される。
【0038】
なお、物理的再生操作では、リサイクルポリエステル材料のポリエステル分子は再配置されるだけであり、再編成されるわけではないことである。そのため、元のリサイクルポリエステル材料に含まれていた成分(例えば、金属触媒、滑剤、共重合モノマー等)は、物理的再生ポリエステル材料にも依然として含まれており、従って、最終的に形成された白色ポリエステルフィルムにも上記の成分が含まれる。さらに、物理的再生ポリエステルチップには、リサイクルポリエステル材料自体の特性も保持されている。
【0039】
リサイクルポリエステル材料は、物理的再生操作には分子量があまり変化しないため、溶融状態のリサイクルポリエステル材料は、粘度が比較的高く、流動性が比較的悪い。そのため、小さすぎるメッシュサイズのフィルターを使用すると、濾過効率が低下しやすくなる。
【0040】
濾過性能を向上させるために、本実施形態では、第1のフィルターは、好ましくは、50μm以上100μm以下のメッシュサイズであることが好ましい。第1のフィルターは、上記メッシュサイズよりも大きな粒径を有する固体不純物を濾過することができる。ただし、本開示はこれに限定されない。
【0041】
製膜工程が異なれば、適用できる固有粘度の範囲も異なることは言うまでもない。一般的には、物理再製造によって得られた物理的再生ポリエステルチップ(物理的再生ポリエステル樹脂)は、より大きい固有粘度(0.60dL/g以上)を有する。物理的再生ポリエステルチップ(物理的再生ポリエステル樹脂)のみを使用した場合、ポリエステルマスターバッチ材料は、ボトルブロー工程及びスピニング工程にのみ適用され、フィルム押出工程には適用されない可能性がある。
【0042】
物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を調整する方法として、関連技術で主に用いられているのが固体重合法である。ただし、固体重合法は、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を高めるためにのみ使用することができ、物理的再生ポリエステルチップの固有粘度を低下させるために使用することはできない。
【0043】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態では、本開示のステップS130の化学的再生工程で得られた化学的再生ポリエステルチップ(化学的再生ポリエステル樹脂)は、比較的低い固有粘度(0.65dL/g以下)を有する。そのため、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップの両方を使用し、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップの割合を調整することで、ポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度を調整し、フィルム押出工程に適したポリエステルマスターバッチ材料とすることができる。
【0044】
ステップS130は、リサイクルポリエステル材料の別の部分を化学的に再生して、化学的再生ポリエステルチップを得ることを含む。化学的再生ポリエステルチップは、第2の固有粘度を有し、化学的再生されたポリエステルチップの第2の固有粘度は、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度よりも低い。本実施形態では、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は、通常、0.65dL/g以下であり、好ましくは、0.40dL/g以上0.65dL/g以下であり、より好ましくは、0.50dL/g以上0.65dL/g以下である。
【0045】
具体的には、化学的再生ポリエステルチップの製造工程は、以下を含む。
リサイクルポリエステル材料の別の部分(例えば、r-PETフレークなど)を切断又は粉砕して、それにより、リサイクルポリエステル材料の解重合に必要な時間とエネルギー消費を削減する。次に、切断又は粉砕したリサイクルポリエステル材料を化学的な解重合溶液に投入して、リサイクルポリエステル材料を解重合し、マスターバッチ材料混合物を形成する。次に、第2のフィルターを用いてマスターバッチ材料混合物を濾過し、リサイクルポリエステル材料中の固体不純物を除去することにより、マスターバッチ材料混合物中の非ポリエステル不純物の濃度を低減する。
【0046】
次に、第2のフィルターで濾過されたマスターバッチ材料混合物をエステル化反応させ、エステル化反応中に無機物添加剤又は共重合体モノマーを添加する。最後に、特定の反応条件で、マスターバッチ材料混合物中のモノマー及び/又はオリゴマーを再重合し、造粒することで、化学的再生ポリエステルチップを得る。化学解重合溶液の液温は、例えば、160℃以上250℃以下であってもよいが、本開示はこれに限定されるものではない。さらに、第2のフィルターのメッシュサイズは、第1のフィルターのメッシュサイズよりも小さい。
【0047】
なお、化学的な解重合液により、リサイクルポリエステル材料中のポリエステル分子に鎖切断が起り、解重合の効果が得られる場合がある。また、比較的短い分子鎖を有し、1つの二酸単位及び2つのジオール単位からなるエステルモノマー(例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET))を有するポリエステル組成物を得ることができる。即ち、マスターバッチ材料混合物の分子量は、リサイクルポリエステル材料の分子量よりも小さい。
【0048】
本実施形態において、化学解重合液は、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はこれらの組み合わせの溶液であってもよいが、本開示はこれに限定されない。例えば、加水分解には水が用いられ、アルコール分解にはメタノール、エタノール、エチレングリコール、又はジエチレングリコールが用いられる。
【0049】
さらに、物理的リサイクル操作とは異なり、化学的リサイクル操作では、ポリエステル分子が比較的小さな分子量の分子に解重合された後、新たなポリエステル樹脂に再重合される「リサイクルポリエステル材料中のポリエステル分子の解重合及び再重合」が行われることが特筆される。
【0050】
本開示の他の実施形態では、化学的再生ポリエステルチップは、上記実施形態に限定されず、加水分解又は超臨界流体法によって調製されてよい。加水分解法は、リサイクルポリエステル材料をアルカリ溶液中で、一定の温度と圧力を調整し、マイクロ波を照射することにより、ポリエステル分子を完全に分解してモノマーにする方法である。超臨界流体法とは、超臨界流体メタノール中でリサイクルポリエステル材料を少量のモノマーやオリゴマーに分解するものである。モノマー及びオリゴマーの収率は、反応温度及び反応時間に影響される。
【0051】
具体的には、化学的リサイクル方法は、リサイクルポリエステル材料を分子量の小さいモノマーに解重合することができるので、リサイクルポリエステル材料(例えば、r-PETボトルフレーク)に元々含まれていた不純物(例えば、コロイド状の不純物やその他の非ポリエステル不純物)は、物理的リサイクル方法よりも容易に濾過され得る。
【0052】
さらに、化学的再生操作は、リサイクルポリエステル材料の分子量を低下させることができるので(例えば、比較的短い分子鎖及び化合物モノマーを有するポリエステル組成物を形成することにより)、リサイクルポリエステル材料は、解重合された後の粘度が比較的低く、流動特性が改善されている。従って、化学的再生操作では、比較的小さな粒径を有する不純物をポリエステル材料から除去するために、比較的小さなメッシュサイズを有するフィルターを使用してもよい。
【0053】
濾過性能を向上させるために、本実施形態では、第2のフィルターのメッシュサイズは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。つまり、第2のフィルターは、メッシュサイズよりも大きい粒径の固体不純物を選別してもよいが、本開示はこれに限定されない。
【0054】
固体不純物を濾過するという観点から、物理的再生操作では、ポリエステル材料中の粒子径の大きい固体不純物のみを濾過して再利用し、化学的再生工程では、ポリエステル材料中の粒子径の小さい固体不純物を濾過して再利用してもよい。従って、白色ポリエステルフィルムの製造品質を効果的に向上させることができる。
【0055】
さらに、化学的再生工程によって製造された化学的再生ポリエステルチップは、一般的に低い固有粘度を有する。さらに、化学的再生ポリエステルチップの固有粘度は、制御が容易であり、化学的再生ポリエステルチップの固有粘度は、物理的及び化学的再生ポリエステルチップの固有粘度よりも小さくなるように調整されてもよい。
【0056】
ステップS140は、ポリエステルマスターバッチ材料を形成するように、所定の固有粘度に従って、白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを混合することを含む。
【0057】
本発明のポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度は、フィルム製造加工に適している。具体的には、ポリエステルマスターバッチ材料の固有粘度は、0.48dL/g以上0.8dL/g以下であり、好ましくは、0.50dL/g以上0.60dL/g以下である。また、所定の固有粘度は、0.36dL/g以上0.65dL/g以下であり、好ましくは、0.40dL/g以上0.60dL/g以下である。
【0058】
より具体的には、白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップは、所定の固有粘度に応じた所定の重量比で互いに混合される。従って、混合された白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップは、所定の固有粘度を有し、白色ポリエステルフィルムの製造に適している。
【0059】
白色再生ポリエステルチップは、白色添加剤を含有しており、白色添加剤は、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、及び酸化チタン粒子からなる群から選択される。白色添加剤の粒径は、0.1μm以上20μm以下である。
【0060】
本実施形態において、白色再生ポリエステルチップに各種の白色添加剤を添加するか否かは、白色ポリエステルフィルムの目的に応じて決定すればよい。好ましい実施形態では、白色再生ポリエステルチップに含まれる白色添加剤の種類は1種類である。
【0061】
例えば、白色添加剤として炭酸カルシウム粒子や硫酸バリウム粒子を用いた場合、白色ポリエステルフィルムは、良好な反射効果(反射率80%以上98%以下)と低比重を有し、通常、ポスターやエクスプレスラベルなどに使用されることがある。しかし、白色ポリエステルフィルムの表面には微細な穴があるため、白色ポリエステルフィルムは長期の屋外暴露には適していない。
【0062】
例えば、白色添加剤として酸化チタン粒子を用いた場合、白色ポリエステルフィルムは、色差値(△E)が小さく、物性が強くなるため、屋外での使用に適したものとなり得る。さらに、酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタンであってもよいし、ルチル型酸化チタンであってもよい。白色ポリエステルフィルムが長時間屋外に晒される必要がない場合には、アナターゼ型酸化チタン又はルチル型酸化チタンを用いてもよく、白色ポリエステルフィルムが長時間屋外に晒される可能性がある場合には、ルチル型酸化チタンを用いてもよい。
【0063】
本発明の白色再生ポリエステルチップは、物理的再生操作で調製してもよいし、化学的再生工程で調製してもよい。即ち、白色再生ポリエステルチップは、白色物理的再生ポリエステルチップ及び白色化学的再生ポリエステルチップの少なくとも一方を含む。また、白色再生ポリエステルチップの固有粘度は、0.35dL/g以上0.70dL/g以下であり、好ましくは、0.4dL/g以上0.65dL/g以下である。
【0064】
具体的には、白色物理的再生ポリエステルチップを製造する方法は、以下を含む。リサイクルポリエステル材料の一部分を溶融して第1の溶融混合物を形成し、第1の溶融混合物に白色添加剤を加えて、第2の溶融混合物を形成し、第2の溶融混合物を再成形して白色物理的再生ポリエステルチップを得る。白色物理的再生ポリエステルチップの100wt%の総量を基準にして、白色物理的再生ポリエステルチップは、5wt%以上60wt%以下の白色添加剤を含む。
【0065】
例えば、白色添加剤が炭酸カルシウム粒子又は硫酸バリウム粒子である場合、白色物理的再生ポリエステルチップの総量100wt%を基準にして、白色物理的再生ポリエステルチップは、白色添加剤を20wt%以上35wt%以下を含む。白色添加剤が酸化チタン粒子である場合、白色物理的再生ポリエステルチップの総量100wt%を基準にして、白色物理的再生ポリエステルチップは、5wt%以上15wt%以下の白色添加剤を含む。
【0066】
具体的には、白色化学的再生ポリエステルチップを製造する方法は、リサイクルポリエステル材料の別の部分を解重合して、第1オリゴマー混合物を得ることを含む。第1オリゴマー混合物に白色添加剤を加えて第2オリゴマー混合物を形成する。第2オリゴマー混合物を再重合して、白色化学的再生ポリエステルチップを得る。白色化学的再生ポリエステルチップの100wt%の総量を基準にして、白色化学的再生ポリエステルチップは、20wt%以上40wt%以下の白色添加剤を含む。
【0067】
例えば、白色添加剤が炭酸カルシウム粒子又は硫酸バリウム粒子である場合、白色化学的再生ポリエステルチップの総量100wt%を基準にして、白色化学的再生ポリエステルチップは、白色添加剤を20wt%以上35wt%以下を含む。
【0068】
リサイクルポリエステル材料の割合を増加させるために、様々な再生ポリエステルチップはすべて、適切な使用範囲を有する。
【0069】
所定の重量比の観点から、ポリエステルマスターバッチ材料100重量部の量(即ち、全てのポリエステルチップ)を基準として、物理的再生ポリエステルチップの量は、好ましくは50重量部以上95重量部、より好ましくは60重量部以上80重量部である。また、化学的再生ポリエステルチップの量は、5重量部以上50重量部以下、好ましくは20重量部以上40重量部以下であるが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0070】
好適な実施形態では、物理的再生ポリエステルチップの量は、化学的再生ポリエステルチップの量よりも多いが、本開示はこれに限定されない。
【0071】
ステップS150は:ポリエステルマスターバッチ材料を溶融して押出し、白色ポリエステルフィルムを形成することを含む。特に、白色ポリエステルフィルムは、所定の固有粘度を有する。
【0072】
白色ポリエステルフィルムにおいて、物理的再生ポリエステルチップ(白色物理的再生ポリエステルチップを含む)を物理的再生ポリエステル樹脂に成形する。化学的再生ポリエステルチップ(白色化学的再生ポリエステルチップを含む)は、化学的再生ポリエステル樹脂に成形され、白色再生ポリエステルチップに含まれる白色添加剤は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂に均一に分散されている。
【0073】
ステップS140の混合比によれば、白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準にして、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは50wt%以上95wt%以下、より好ましくは60wt%以上80wt%以下である。化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは5wt%以上50wt%以下、より好ましくは20wt%以上40wt%以下である。また、白色添加剤の含有量は、0.1wt%以上40wt%以下である。
【0074】
さらに、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の合計含有量は、55wt%以上100wt%以下であり、より好ましくは70wt%以上100wt%以下である。
【0075】
上記の構成によれば、本実施形態の白色ポリエステルフィルムの製造方法は、未使用ポリエステル樹脂を添加せずにリサイクルポリエステル材料を高い割合で使用するか、あるいは少量の未使用ポリエステル樹脂を添加するだけでよい。例えば、本開示の一実施形態において、未使用ポリエステル樹脂の量は、通常50重量部以下であり、好ましくは、30重量部以下であり、より好ましくは、10重量部以下である。
【0076】
本開示の一実施形態では、物理的再生ポリエステルチップは第1酸価を有し、化学的再生ポリエステルチップは第2酸価を有し、第2酸価は第1酸価よりも大きい。特に、第1酸価は、10mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であり、第2酸価は、20mgKOH/g以上70mgKOH/g以下である。
【0077】
より具体的には、図2を参照すると、物理的再生ポリエステルチップは、第1の分子量分布1を有し、化学的再生ポリエステルチップは、第2の分子量分布2を有し、第2の分子量分布2の分布範囲は、第1の分子量分布1の分布範囲よりも広い。
【0078】
さらに、物理的再生ポリエステルチップと化学的再生ポリエステルチップとを混合することにより、ポリエステルマスターバッチ材料(白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップ)は、第3の分子量分布3を有し、第3の分子量分布3の分布範囲は、第1の分子量分布1と第2の分子量分布2との間にある。
【0079】
より具体的には、分子量分布の観点から、化学的再生ポリエステルチップの方が分子量分布が広く、フィルム製造工程の生産性向上に寄与するが、化学的再生ポリエステルチップのみで製造した白色ポリエステルフィルムの物性(例えば、機械的特性)が比較的劣る場合がある。また、化学的再生ポリエステルチップの製造コストが比較的高くなる。
【0080】
物理的再生ポリエステルチップの分子量分布は比較的狭く、製膜工程の生産性を低下させる可能性があるが、機械的特性の強い、より優れた白色ポリエステルフィルムを製造することができる。即ち、物理的再生ポリエステルチップや化学的再生ポリエステルチップのみを使用することは理想的ではない。
【0081】
本開示の一実施形態の白色ポリエステルフィルムの製造方法の特徴は、物理的再生ポリエステルチップと化学的再生ポリエステルチップとを同時に使用することで、製膜工程の生産性を向上させ、白色ポリエステルフィルムの物性を向上させ、白色ポリエステルフィルムの製造コストを低減させることができる点にある。
【0082】
さらに、本発明の白色ポリエステルフィルムの製造方法は、物理的再生操作又は化学的再生工程において、リサイクルポリエステル材料に無機物粒子を添加することをさらに含み、最終的に得られる白色ポリエステルフィルムが無機物粒子を含むようにする。
【0083】
本実施形態では、無機物粒子は滑剤であるが、本開示はこれに限定されない。特に、滑剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、及びアクリル粒子からなる材料群から選択される少なくとも1つである。さらに、白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準にして、滑剤の含有量は0.1wt%以上10wt%以下であることが好ましい。
【0084】
[白色ポリエステルフィルム]
【0085】
以上が、本開示の実施形態の白色ポリエステルフィルムの製造方法について説明した。以下、本開示の実施形態の白色ポリエステルフィルムについて説明する。本実施形態では、上記の製造方法により白色ポリエステルフィルムを形成しているが、本開示はこれに限定されない。
【0086】
白色ポリエステルフィルムの材料は、物理的再生ポリエステル樹脂と、化学的再生ポリエステル樹脂と、白色添加剤とを含む。物理的再生ポリエステル樹脂は、物理的再生ポリエステルチップから形成されており、物理的再生ポリエステルチップは、第1の固有粘度を有する。化学的再生ポリエステル樹脂は、化学的再生ポリエステルチップから形成され、第2の固有粘度を有する。第2の固有粘度は、第1の固有粘度よりも低い。白色添加剤は、化学的再生ポリエステル樹脂と物理的再生ポリエステル樹脂の間に分散されている。
【0087】
物理的再生ポリエステルチップと化学的再生ポリエステルチップは、所定の固有粘度に基づいて混合されるので、得られる白色ポリエステルフィルムは所定の固有粘度を有するようになることが重要である。
【0088】
本開示の一実施形態では、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度は0.60dL/g以上であり、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は0.65dL/g以下であり、所定の固有粘度は0.36dL/g以上0.65dL/g以下である。
【0089】
本開示の好ましい実施形態では、物理的再生ポリエステルチップの第1の固有粘度は0.65dL/g以上0.80dL/g以下であり、化学的再生ポリエステルチップの第2の固有粘度は0.50dL/g以上0.65dL/g以下であり、所定の固有粘度は0.60dL/g以上0.65dL/g以下である。
【0090】
さらに、本開示の白色ポリエステルフィルムの酸価は、10mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、より好ましくは、10mgKOH/g以上80mgKOH/g以下、特に好ましくは、40mgKOH/g以上70mgKOH/g以下の範囲である。白色ポリエステルフィルムの酸価は、米国材料試験協会(ASTM)が定めた標準測定法D7409-15に基づいて測定される。白色ポリエステルフィルムの酸価が10mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である場合、白色ポリエステルフィルムは、耐熱性及び耐加水分解性を有する。
【0091】
本開示の白色ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)は、1nm以上以上500nm以下でり、好ましくは、10nm以上以上450nm以下、より好ましくは、20nm以上以上430nm以下である。白色ポリエステルフィルムの表面粗さは、DIN EN ISO4287/4288に基づいて測定される。
【0092】
本開示の白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数は、0.2以上0.4以下である。白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数は、ASTM D1894に準拠して測定される。
【0093】
白色ポリエステルフィルムの表面粗さが1nm以上500nm以下であり、白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数が0.2以上0.4以下である場合、白色ポリエステルフィルムの製膜、フィルム回収、及び後処理工程の手順がより円滑になる。
【0094】
本開示の白色ポリエステルフィルムの150℃、10Hzにおける貯蔵弾性率は、3.5×10 dyne/cm以上6.0×10 dyne/cm以下であり、好ましくは、4.0×10 dyne/cm以上5.0×10 dyne/cm以下である。なお、白色ポリエステルフィルムの貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置で測定した白色ポリエステルフィルムの長手方向及び幅方向の貯蔵弾性率の平均値である。なお、具体的な測定結果については、図3及び図4に示すとおりである。
【0095】
また、複数の物理的再生ポリエステルチップ及び複数の化学的再生ポリエステルチップは、いずれもリサイクル及び再使用によってリサイクルポリエステル材料を造粒して得られたものである。リサイクルポリエステル材料は、再生PETボトルフレークである。
【0096】
本開示の一実施形態において、白色ポリエステルフィルムは、以下の特徴を有する。白色ポリエステルフィルムの総量100mol%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中のイソフタル酸の含有量は、0.1mol%以上6mol%以下である。白色ポリエステルフィルムの総量100wt%を基準にして、白色ポリエステルフィルム中のバイオマス由来のエチレングリコールの含有量が5wt%以下である。白色ポリエステルフィルムの遮光値が1.2以上である。白色ポリエステルフィルムの光透過率は10%以下であり、好ましくは5%以下である。白色ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)は、10nm以上200nm以下である。白色ポリエステルフィルムの反射率は、80%以上98%以下である。白色ポリエステルフィルムの色差値(△E)は、10以下であり、好ましくは、2以下である。また、白色ポリエステルフィルムの動摩擦係数は、0.2以上0.4以下である。
【0097】
[実施形態の利点]
【0098】
本開示が提供する白色ポリエステルフィルム及びその製造方法においては、「白色再生ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを所定の固有粘度に応じて混合してポリエステルマスターバッチ材料を形成する」という技術的解決策を介して、ポリエステルマスターバッチ材料を、フィルム押出工程に適した所定の固有粘度を有するように調整することができ、再生ポリエステルマスターバッチ材料の割合を高くすることができる。
【0099】
以上に開示した内容は、本開示の好適な実施形態及び実現可能な実施形態についてのみのものであり、本開示の請求項の範囲を限定するものではない。従って、本開示の明細書や図の内容を用いて行われた同等の技術的変更は、すべて本開示の特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の白色ポリエステルフィルム及びその製造方法は、白色ポリエステルフィルム分野に適用することができる。
参考文献リスト
【符号の説明】
【0101】
1:第1の分子量分布
2:第2の分子量分布
3:第3の分子量分布
図1
図2
図3
図4