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特許7529718導電性、透過性、透光性、および/または反射性材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】導電性、透過性、透光性、および/または反射性材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
C08J9/00 CEW
C08J9/00 CFD
C08J9/00 CFG
B32B9/00 A
B32B5/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022077050
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2020070207の分割
【原出願日】2015-04-15
(65)【公開番号】P2022105187
(43)【公開日】2022-07-12
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】61/979,564
(32)【優先日】2014-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ストークス,クリストファー,ケー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューミストン,カール,エフ
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520423(JP,A)
【文献】特開2020-158770(JP,A)
【文献】特許第3491713(JP,B2)
【文献】特開2001-126539(JP,A)
【文献】特開2008-105402(JP,A)
【文献】特開2005-038687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的透明性を有する膜であって、当該膜は、
連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスであって、前記微孔性ポリマーマトリックスは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)、若しくはそれらの組合せまたは混合物の共重合体から構成される、微孔性ポリマーマトリックスと、
前記微孔性ポリマーマトリックスの前記連通気孔構造中に充填される充填材料であって、前記充填材料が、前記微孔性ポリマーマトリックスの前記屈折率に対し±0.1の範囲に入る屈折率を有する、充填材料と
を備え、
前記膜は5μm~20μmの厚さを有し、前記膜の両表面が金属化されている、膜。
【請求項2】
前記充填材料が固体である、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記微孔性ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびそれらの組み合わせ、それらの共重合体、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される1つ以上のポリオレフィンから作製される、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記微孔性ポリマーマトリックスが、ポリマー材料の単一層から作製されるか、または、ポリマー材料の多層を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
前記微孔性ポリマー材料の個々の層が、ポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはそれらの組合せまたは混合物の共重合体である、請求項4に記載の膜。
【請求項6】
前記充填材料は接着剤を備える、請求項1に記載の膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2014年4月15日に出願された米国特許仮出願第61/979,564号の利益と優先権を主張するものであり、この仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
少なくとも選択実施形態では、本発明は、導電性、透過性、透光性、および/または反射性ポリマー膜または材料、このような膜または材料用の基材、このような基材、膜または材料の製造方法、および/またはこのような基材、膜または材料の使用方法に関する。少なくとも選択実施形態では、本発明は、導電性膜または材料、好ましくは、導電性の透過性膜または材料、このような膜用の新規または改善された多孔性または微多孔性基材、このような導電性膜または材料の製造方法、および/またはこのような膜、材料または基材の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
微孔性膜は種々の分離および/または拡散用途を目的として広範囲に研究され、開発されてきた。例えば、微孔性膜は空気および水分離用途、ならびに電池構造中の分離膜に広く使用されている。種々の単一または複数層のCelgard(登録商標)微孔性ポリマー膜が、Celgard,LLC(Charlotte,North Carolina)により製造、販売されている。
【0004】
通常、多くの微孔性膜の絶縁特性および有機物質構成は、これらの膜を、導電性の用途および高温、酸化的およびその他の腐食性環境を伴う用途には適さないものにする場合が多い。
【発明の概要】
【0005】
少なくとも選択実施形態では、本発明は、導電性用途および/または高温、酸化、および/またはその他の腐食性環境を伴う用途に好適な上記の微孔性膜のニーズに応えることができ、および/または導電性、透過性、透光性、部分的反射性および/または反射性ポリマー膜または材料、このような膜または材料用の基材、このような基材、膜および/または材料の製造方法、および/またはこのような基材、膜および/または材料の使用方法に関する。少なくとも選択実施形態では、本発明は、導電性膜または材料、好ましくは、導電性の透過性または半透過性膜または材料、このような膜用の新規または改善された多孔性または微多孔性基材、このような導電性膜または材料の製造方法、および/またはこのような膜、材料または基材の使用方法に関する。
【0006】
一態様では、膜または微孔性膜が本明細書で記載され、これらは、電子工学用途および/または光学用途に適する複合材料構造および特性を示す。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の複合膜は、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスまたは基材ならびに微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上に堆積させた導電性コーティングを含むまたはこれらから構成される。複合膜は、ポリマーマトリックスまたは基材の細孔構造中に充填材料をさらに含むまたはこれらから構成され、充填材料は好ましくは、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する。さらに、本明細書で記載の構造を有する複合膜は、透過性または実質的に透過性とすることができる。
【0007】
別の態様では、本明細書で記載の複合膜を組み込んだ光電子デバイスが提供される。いくつかの実施形態では、光電子デバイスは、ディスプレイおよびディスプレイ上に配置された複合膜を含むタッチスクリーンデバイスであり、複合膜は、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスもしくは基材を含むまたはこれらから構成されるのが好ましい。導電性コーティングは微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上に堆積される。ディスプレイ上に位置付けされる場合は、複合膜は透過性または実質的に透過性であり得るかまたはそのように作ることができる。
【0008】
さらなる態様では、複合膜の作製方法が本明細書で記載される。いくつかの実施形態では、複合膜の作製方法は、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスまたは基材を用意すること、および微多孔性マトリックスの1つまたは複数の表面上に導電性コーティングまたは材料を堆積することを含む。さらに、充填材料は、ポリマーマトリックスの細孔構造中に堆積させることができ、充填材料は、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する。このような充填材料は、導電性または反射コーティングもしくは材料の堆積の前、その間、またはその後に加えることができる。
【0009】
これらおよび他の態様、目的または実施形態は、以下の詳細説明においてさらに詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本明細書で記載の一実施形態による微孔性ポリマーマトリックスまたは基材の表面走査電子顕微鏡(SEM)像である。
図2図2は、本明細書で記載の別の実施形態による微孔性ポリマーマトリックスの表面SEM像である。
図3図3は、本明細書で記載のさらに別の実施形態による微孔性ポリマーマトリックスの表面SEM像である。
図4図4は、本明細書で記載のひとつの多層の実施形態による組成および形態の勾配を示す多層構造を含む微孔性ポリマーマトリックスの断面SEM像である。
図5図5は、本発明の特定の実施形態による微孔性ポリマーマトリックスを有する同じ金属化したまたはコーティングした膜または材料の、左側に、白色の非コート(非金属化)表面または膜側、および右側に、反対側の金属的で光沢のあるまたは反射性の側を、横に並べて比較した写真画像である。
図6図6は、透過性または透光性の金属化膜または材料の充填部分(左側の部分で、これを通してデバイススクリーンが見える)およびデバイススクリーンが材料を通して見えず、不透明で反射性である非充填部分(右側の部分で、まだ、デバイススクリーンを覆っている)を有する民生用電子デバイス、特にブラックベリーデバイスのディスプレイスクリーン上に配置された図5の金属化膜または材料の写真画像である。
図7図7は、図5の金属化膜または材料の金属化表面の1,000倍に拡大した表面SEM像である。
図8図8は、図5の金属化膜または材料の金属化表面の5,000倍に拡大した表面SEM像である。
図9図9は、図5の金属化膜または材料の金属化表面の20,000倍に拡大した表面SEM像である。
図10図10は、本明細書で記載の実施形態によるコーティング前のむき出しの膜の(A)平面図および(B)断面図である。膜は、その気孔率と電気絶縁性に起因して、不透明で白(または青)の外観である。
図11図11は、1つの表面が導電性コーティング(図11では、このようなコーティングは赤で示されている)でコートされた後の、図10の膜の(A)平面図および(B)断面図である。膜は、膜の気孔率と導電性コーティングの組み合わせのために、不透明で光沢(反射性)があるように見え、この時点で、金属化表面上で導電性である。
図12図12は、気孔が充填(このような充填剤は図12では緑で示されている)された後の、図11の膜の(A)平面図および(B)断面図である。膜は、気孔が充填されているために、透過性および/または透光性があるように見え、導電性コーティング(図12の赤色部分)に起因してまだ導電性である。
図13図13は、気孔が図12で示すものと同じ充填剤で過充填(このような充填剤は図13では緑で示されている)された後の、図12の膜の(A)平面図および(B)断面図である。膜は、気孔中の充填剤のために、透過性および/または透光性があるように見える。領域1および2は、導電性コーティングのために導電性のまま残る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で記載の実施形態は、次の詳細説明ならびに実施例およびそれらの前述のおよび以降の説明を参照することにより、より容易に理解することができる。しかし、本明細書で記載の要素、装置および方法は、詳細説明および実施例で提示される特定の実施形態に限定されるものではない。これら実施形態は、本発明の原理を単に例示しているものと理解されるべきである。本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、多くの変更および修正が当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0012】
本明細書で記載の複合膜は、電子デバイスおよび光学用途を含む様々な用途におけるそれらの使用を可能とする構造を実証することができる。本明細書で記載の複合膜は、好ましくは、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックス、基材または膜ならびに微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上に堆積させた導電性コーティングを含む。複合膜は、ポリマーマトリックスの細孔構造中に充填材料をさらに含むことができ、充填材料は、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する。
【0013】
次に具体的な要素に目を向けると、好ましい複合膜は、連通気孔構造を有する微孔性ポリマーマトリックスまたは基材を含む。微多孔性マトリックスは種々のポリマー材料から作製することができる。例えば、微多孔性マトリックスは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)またはこれらのコポリマーを含む、1種または複数種のポリオレフィン(PO)から形成することができる。あるいは、微多孔性マトリックスは、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(PES)などのポリスルホン、セルロースまたはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)および/またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフルオロポリマーから形成することができる。
【0014】
ポリマー組成に加えて、微多孔性マトリックスは、種々の物理的構造および形態を示すことができる。いくつかの実施形態では、微多孔性マトリックスはポリマー材料の単層から形成され、単層構成が得られる。あるいは、微多孔性マトリックスはポリマー材料の多層を含むことができる。本発明の目的と矛盾しない任意の数のポリマー層を使って微多孔性マトリックスを得ることができる。例えば、微多孔性マトリックスは、二層、三層または多層構成を示すことができる。表Iは、本明細書で記載の複合膜の微孔性ポリマーマトリックス用の種々の非制限的構成を提供する。
【表1】
【0015】
本明細書で記載の微多孔性マトリックスのポリマー層はまた、種々の形態を示すことができる。いくつかの実施形態では、ポリマー層の形態は、層が形成されるプロセスにより誘導される。例えば、ポリマー層は、乾式延伸プロセスにより形成することができ、この場合、気孔形成は、機械方向(MD)に無孔の半結晶性押出し成形ポリマー組成物を延伸することにより行われる。図1は、乾式延伸プロセスに供したポリプロピレンの単層から形成された微孔性ポリマーマトリックスのSEM像である。図1に示されているように、この特定のポリプロピレンマトリックスは、細長いまたはスリット状形状の連通気孔構造を示す。連通気孔構造は、連続的につながったマトリックスの太めの繊維状のポリプロピレン構造である。
【0016】
ポリマー層はまた、湿式プロセスまたは相転換法からも形成することができ、この場合、ポリマー組成物は可塑剤と混合され、押出し成形される。ポリマー材料中の気孔形成は、可塑剤の除去により誘導される。ポリマー材料はまた、MD方向および/または機械横方向(TD)に延伸することができる。図2は、湿式処理に供したポリエチレンの単層から形成された微孔性ポリマーマトリックスのSEM像である。ポリエチレンマトリックスは同様に、連続的につながった繊維状ポリエチレン構造の連通気孔構造を示す。図1に示す画像とは対照的に、図2に示す気孔はより丸い形状を有している。しかし、今日では、同様により丸い形状を有する乾式延伸プロセス(例えば、無孔の前駆物質の2軸延伸を含むプロセス)から形成されたポリマーマトリックス材料が存在する。図2では、レース状外観を形成する図1と比較して、ポリエチレン繊維構造の増加した重複部分が存在する。
【0017】
さらに、ポリマー層は、粒子延伸プロセスにより形成することができ、この場合、ポリマー組成物は粒子と混合されて、押出し成形される。延伸中に、ポリマー組成物と粒子との間の境界が破壊する際に、ポリマー組成物中で気孔が形成される。粒子延伸プロセスによる多孔性ポリマー層(単一または複数)の形成は、米国特許第6,057,061号および同6,080,507号でさらに詳述されている。これらの特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。図3は、粒子延伸プロセスに供したポリプロピレンの単層から形成された微孔性ポリマーマトリックスのSEM像である。図3に示すように、マトリックスは、MD延伸から生じた連通楕円形細孔構造をとる。
【0018】
さらに、本明細書で記載の複合膜のポリマーマトリックスは、米国特許出願公開第2007/0196638号および米国特許出願第13/044,708号に記載されるもののような二軸延伸多孔性構造を示すことができる。これらの特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。また、キャスト膜、織物または不織層などの非延伸多孔膜を使用してもよい。
【0019】
上述のように、微孔性ポリマーマトリックスは複数のポリマー層から形成することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー層は、それらがそれぞれ同じ乾式延伸プロセス、湿式プロセスまたは粒子延伸プロセスにより形成される場合と類似の形態を示す。あるいは、ポリマー層は混ざった形態を呈する場合もあり、その場合、1つまたは複数の層が異なるプロセスにより形成される。本明細書の実施形態は、乾式延伸、粒子延伸および湿式プロセスにより形成されるポリマー層の任意の組み合わせを意図している。例えば、表Iに提供された構成の個々の層は、乾式延伸、粒子延伸および湿式プロセスにより生成されたものから選択される様々な形態を示すことができる。したがって、本明細書で記載の複合膜のポリマーマトリックスは、組成および形態の勾配を示すことができる。図4は、一実施形態による組成および形態の勾配を示す多層構造を含む微孔性ポリマーマトリックスの断面SEM像である。図4の微多孔性マトリックスは、PP/PE/PP構造を有し、PE層は、挟み込んでいるPP層とは非常に異なる形態を示す。本明細書で記載の微多孔性マトリックスの個々のポリマー層は、積層、共押出またはその他の結合機構などのいくつかの技術により結合することができる。
【0020】
前述の構造に加えて、微孔性ポリマーマトリックスはまた、スパンボンド、スパンメルト、メルトブロウン、スパンレース、などの種々の不織構造を示すことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、微孔性ポリマーマトリックスは、0.010μm~50μm、いくつかの実施形態では、0.1μm~1.0μm、またいくつかの実施形態では、0.1μm~0.6μmの範囲の平均孔径を有する。さらに、微孔性ポリマーマトリックスは、表IIによる厚さを有することができる。
【表2】
【0022】
さらに、微多孔性マトリックスは40パーセントを超える気孔率を有することができる。いくつかの実施形態では、微多孔膜は40~95パーセントの気孔率を有する。
【0023】
本明細書で記載のように、複合膜の微孔性ポリマーマトリックスは、屈折率を有する。いくつかの実施形態では、微孔性ポリマーマトリックスは、約1.40~約1.60、いくつかの実施形態では、約1.48~1.52の範囲の屈折率を有することができる。例えば、ポリプロピレンから形成された微多孔膜は、1.49の屈折率を示すことができ、ポリエチレンから形成された微多孔膜は1.50の屈折率を示すことができる。微多孔性マトリックスが複数のポリマー層から形成される場合、ポリマー層は、同じまたは実質的に類似の屈折率を有することができる。
【0024】
微孔性ポリマーマトリックスに加えて、本明細書で記載の好ましい複合膜は、微多孔性マトリックスの1つまたは複数の表面上に堆積された導電性コーティングを含む。導電性コーティングは、微孔性ポリマーマトリックスの片側または両側をコートすることができる。さらに、導電性コーティングは、いくつかの実施形態では、マトリックスの細孔構造中に侵入し、細孔構造の表面をコートする。気孔表面のコーティングでは、ポリマーマトリックスの細孔構造は維持され、導電性コーティングにより閉塞されない。いくつかの実施形態では、導電性コーティングは、分子スケールであり、オングストロームまたはナノメートルオーダーの厚さを有する。さらに、導電性コーティングは微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上にパターン形成することができる。
【0025】
導電性コーティングは、本発明の目的と矛盾しない任意の導電性材料を含むことができる。導電性コーティングは、金属または合金組成物から形成されてよい。一実施形態では、導電性コーティングは、アルミニウム、銅、ニッケル、金、その他の貴金属およびこれらの合金からなる群から選択される。さらに、導電性コーティングは、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ガリウムインジウムスズ(GITO)、酸化亜鉛インジウムスズ(ZITO)、フッ素ドープ酸化スズまたはドープ酸化亜鉛などの光透過性導電性酸化物から形成することができる。
【0026】
あるいは、導電性コーティングは有機材料として供給することができる。黒鉛、グラフェン、炭素ナノ粒子、および/または導電性ポリマー種などの導電性有機材料を使って導電層を形成することができる。導電性ポリマー種には、本質的に導電性のポリマーを含めることができ、これらをドープしてもよく、また、これらには、限定されないが、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリジアセチレン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアニリンおよびこれらの誘導体を挙げることができる。
【0027】
導電層の組成の独自性は、複合膜の層の所望の導電性および/または所望の光学特性を含むいくつかの考察により選択することができる。いくつかの実施形態では、導電層は、1~500Ω/sq以下のシート抵抗であり、または、いくつかの実施形態では、1~20Ω/sqである。
【0028】
本明細書で記載の複合膜は、微孔性ポリマーマトリックスの細孔構造中に充填材料をさらに含むことができ、充填材料は、好ましくは、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する。いくつかの実施形態では、微孔性ポリマーマトリックスの細孔構造に充填材料を加えて、複合膜に所望の光学的透明性を与える。充填材料の添加は、例えば、複合膜の光学的透明性をさらに高め、膜を透過性または実質的に透過性にすることができる。
【0029】
微多孔性マトリックスが複数のポリマー層から形成される実施形態では、ポリマー層は屈折率を実質的にインデックスマッチさせることができ、それにより、充填材料の屈折率をポリマー層のそれぞれに一致または実質的に一致させることが可能となる。例えば、多層構成のPPおよびPE層は、インデックスマッチすることができ、各層の充填材料との屈折率の適合を可能とする。
【0030】
必要な屈折率を有する適切な充填材料は固相または半固形であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、充填材料は接着剤であり、いくつかの実施形態では、光学接着性充填材料である。所望の光学特性の付与に加えて、接着性充填材料は、本明細書で記載の複合膜の、タッチスクリーンデバイスを含む種々の光電子デバイスへの組み込みを容易にする。いくつかの技術により、充填材料を微孔性ポリマーマトリックスの連通気孔構造中に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、充填材料は細孔構造中に流し込まれ、続けて、充填剤を硬化するかまたは充填剤の粘度を高めて、実質的に非流動性状態にされる。
【0031】
本明細書で記載の複合膜は、いくつかの実施形態では、450nm~750nm(可視光スペクトルの範囲を含む波長)で、少なくとも約90パーセントまたは少なくとも約95パーセントの光透過性を示す。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で記載の複合膜はフレキシブルである。複合膜の柔軟性により、フレキシブルタッチスクリーンデバイスを含むフレキシブル光電子デバイスにおけるそれらの使用が可能となる。
【0032】
別の態様では、本明細書で記載の複合膜を組み込んだ光電子デバイスが提供される。いくつかの実施形態では、光電子デバイスは、ディスプレイおよびディスプレイ上に配置された複合膜を含むタッチスクリーンデバイスであり、複合膜は、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスを含む。導電性コーティング(または多層コーティング)は微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上に堆積される。複合膜は、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する充填材料をさらに含むことができる。あるいは、充填材料は、実質的にガラスレンズまたはタッチスクリーンデバイスの被覆物と一致する屈折率を有するように選択することができる。したがって、いくつかの実施形態では、光学的に好ましい態様に応じて、充填材料の屈折率を微孔性ポリマーマトリックスにより近い、またはガラスレンズもしくはタッチスクリーンもしくはデバイスの被覆物などを構成する材料の屈折率により近い屈折率になるように選択することができる。タッチスクリーンデバイスの充填材料およびガラス部品の屈折率の一致は、反射防止特性を高めることができる。ディスプレイ上に配置される複合膜は、本明細書で記載の任意の構成および/または特性を有してよい。また、1つまたは複数の複合膜層があってもよい。例えば、静電容量方式および抵抗膜方式タッチスクリーンは両方とも2層の透明導電材料を使用する。
【0033】
タッチスクリーンデバイスは、指またはスタイラスなどを使ってスクリーンのディスプレイ領域に接触することにより操作することができる多くのディスプレイおよび/または制御スクリーンの内のいずれを意味してもよい。例えば、タッチスクリーンには、抵抗膜方式タッチスクリーン、表面型静電容量方式タッチスクリーン、投影型静電容量方式(PCT)タッチスクリーン、表面弾性波(SAW)タッチスクリーン、赤外線方式タッチスクリーン、光学イメージングタッチスクリーン、分散信号技術方式タッチスクリーンまたは音響パルス認識方式タッチスクリーンを含めることができる。静電容量方式タッチスクリーンは相互キャパシタンスタッチスクリーンまたは自己容量タッチスクリーンであってよい。さらに、タッチスクリーンはシングルタッチまたはマルチタッチスクリーンであってもよい。
【0034】
本明細書で記載の複合膜は、タッチスクリーンデバイスに様々な性質を提供することができる。例えば、いくつかの実施態様では、本明細書で記載の複合膜はタッチスクリーンデバイスまたはタッチスクリーンデバイスの部品の保護コーティングとして機能する。その他の実施態様では、複合膜は導電層としてまたは導電性コーティングとして機能する。いくつかの事例では、電気伝導を複合膜の面内で生じさせることができる。さらに、本明細書で記載の複合膜は、タッチスクリーン構造において、酸化インジウムスズ(ITO)でコートしたガラス基板などの透明導電性材料の代替材料として使用することができる。本明細書で記載のいくつかの実施態様では、複合膜は保護コーティングおよび導電層または導電性コーティングの両方として機能する。保護コーティングおよび/または導電層またはコーティングとしての複合膜の使用により、外部湿気、オイル、汚れ、またはダストによるタッチスクリーンへの損傷に対する耐性を与えることができる。さらに、いくつかの実施形態では、複合膜は1つまたは複数の前述の利点を提供することができ、また同時に、光透過性および/または面内電気伝導性を示すことができる。
【0035】
さらなる態様では、複合膜の作製方法が本明細書で記載される。いくつかの実施形態では、複合膜の作製方法は、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスを用意すること、および微多孔性マトリックスの1つまたは複数の表面上に導電性コーティングを堆積することを含む。さらに、充填材料は、ポリマーマトリックスの細孔構造中に堆積させることができ、充填材料は、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する。本明細書で記載の方法により作製された複合膜は、上記で詳述した任意の構成および/または特性を有することができる。
【0036】
連通気孔構造を有する微孔性ポリマーマトリックスは、上記の乾式延伸、粒子延伸または湿式プロセスにより得ることができる。さらに、このようなプロセスにより作製された複数の多孔性ポリマー層を組み合わせて、多層微孔性ポリマーマトリックスを得ることができる。
【0037】
導電性コーティングの堆積は、いくつかのプロセスにより行うことができる。いくつかの実施形態では、例えば、熱蒸着またはスパッタリングなどの1種または複数種の物理蒸着(PVD)技術により金属/合金導電性コーティングが堆積される。さらに、いくつかの実施形態では、有機導電性コーティングが微孔性ポリマーマトリックス上にスピンキャストされる。本明細書で記載のように、導電性コーティングは、微孔性ポリマーマトリックスの片側または両側をコートすることができる。いくつかの実施形態では、導電性コーティングは微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上にパターン形成される。パターン形成は、1種または複数種のリソグラフ、マスキングおよび/またはスクリーニング技術により行うことができる。
【0038】
さらに、導電性コーティングは、いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスの細孔構造中に侵入し、細孔構造の表面をコートする。気孔表面のコーティングでは、ポリマーマトリックスの細孔構造は維持され、導電性コーティングにより閉塞されない。いくつかの実施形態では、導電性コーティングは、分子スケールであり、オングストロームまたはナノメートルオーダーの厚さを有する。
【0039】
本明細書で記載のように、充填材料は、ポリマーマトリックスの細孔構造中に堆積させることができ、充填材料は、ポリマーマトリックスの屈折率と実質的に一致する屈折率を有する。いくつかの実施形態では、充填材料は、光電子デバイスのガラスレンズまたはその他の光学的部品と一致する屈折率を有することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、充填材料は細孔構造に流し込まれ、部分的にまたは完全に固化される。充填材料は、導電性コーティングの堆積の前または後で、微孔性ポリマーマトリックスの細孔構造中に堆積させることができる。導電性コーティングの堆積の前に細孔構造中に配置する場合は、充填材料を導電性コーティングにより被覆することができる。微孔性ポリマーマトリックスの細孔構造中への充填材料の配置は、導電性コーティングが細孔構造の表面上に堆積するのを防ぐことができる。あるいは、充填材料の導入の前に、導電性コーティングを細孔構造の表面上に堆積することができる。
【0041】
これらおよび他の実施形態は、次の非限定的な実施例によりさらに説明される。
【0042】
実施例1
Celgard2500微多孔性ポリプロピレンマトリックス(25μm厚さ)の片側を、アルミニウム金属を使った蒸着プロセスにより金属化して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。金属化は、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を有する複合膜を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0043】
実施例2
Celgard2500微多孔性ポリプロピレンマトリックス(25μm厚さ)の片側を、ITOを使った蒸着プロセスにより処理して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。スパッタリングは、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0044】
実施例3
Celgard2500微多孔性ポリプロピレンマトリックス(25μm厚さ)の両側を、アルミニウム金属を使った蒸着プロセスにより金属化して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。金属化は、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。両側パターン形成を「一層」静電容量方式タッチスクリーン構成に対し使用することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0045】
実施例4
Celgard2500微多孔性ポリプロピレンマトリックス(25μm厚さ)の両側を、ITOを使った蒸着プロセスにより処理して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。スパッタリングは、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。両側パターン形成を「一層」静電容量方式タッチスクリーン構成に対し使用することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0046】
実施例5
Celgard EZ1590微多孔性ポリプロピレンマトリックス(15μm厚さ)の片側を、アルミニウム金属を使った蒸着プロセスにより金属化して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。金属化は、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。
【0047】
この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0048】
実施例6
Celgard EZ1590微多孔性ポリプロピレンマトリックス(15μm厚さ)の片側を、ITOを使った蒸着プロセスにより処理して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。
【0049】
スパッタリングは、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0050】
実施例7
Celgard EZ1590微多孔性ポリプロピレンマトリックス(15μm厚さ)の両側を、アルミニウム金属を使った蒸着プロセスにより金属化して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。金属化は、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。両側パターン形成を「一層」静電容量方式タッチスクリーン構成に対し使用することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0051】
実施例8
Celgard EZ1590微多孔性ポリプロピレンマトリックス(15μm厚さ)の両側を、ITOを使った蒸着プロセスにより処理して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。スパッタリングは、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。両側パターン形成を「一層」静電容量方式タッチスクリーン構成に対し使用することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0052】
実施例9
Celgard K2045微多孔性ポリエチレンマトリックス(20μm厚さ)の片側を、アルミニウム金属を使った蒸着プロセスにより金属化して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。金属化は、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。パターンは、気孔表面を含むポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上にパターン形成することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0053】
実施例10
Celgard K2045ポリエチレン微多孔膜(20μm厚さ)の片側を、ITOを使った蒸着プロセスにより処理して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。スパッタリングは、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0054】
実施例11
Celgard K2045ポリエチレン微多孔膜(20μm厚さ)の両側を、アルミニウム金属を使った蒸着プロセスにより金属化して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。金属化は、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。両側パターン形成を「一層」静電容量方式タッチスクリーン構成に対し使用することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0055】
実施例12
Celgard K2045ポリエチレン微多孔膜(20μm厚さ)の両側を、ITOを使った蒸着プロセスにより処理して、0~500Ω/sqのシート抵抗にする。スパッタリングは、タッチスクリーンアドレッシング技術に付随するパターン形成(マスク、シルクスクリーニングなど)を使って行うことができる。両側パターン形成を「一層」静電容量方式タッチスクリーン構成に対し使用することができる。金属化微多孔性マトリックスは、以降で充填材料とともに使用して、所望の光学的透明性を得ることができる。この場合、ポリプロピレンマトリックス(すなわち、Norland ProductsのNOA148)に一致する屈折率を有する光学接着剤を使って、タッチスクリーンガラス表面、ならびにその下の支持層に対し、同時にマトリックスを充填し、接着性を付与することができる。
【0056】
実施例13
前述のいずれかの多孔性ポリマーマトリックスの片側または両側に、熱金属化、スパッタリング、ケミカルグラフティング、化学メッキ、重合、などのプロセスにより導電性を付与するようにコートすることができる。
【0057】
伝導性付与のために使用することができる材料は、金、銀、アルミニウム、ニッケル、銅、白金、パラジウム、鉄などの金属である。さらに、これらおよびその他の金属の合金を使用することができる。ITOは、その他のITOの変種(種々のドープ酸化亜鉛または酸化スズ)と同様に、特に有用である。導電性ポリマーも同様に類似の方法で表面上にパターン形成することができる。ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリジアセチレン、ポリアセチレン類、ポリパラフェニレンビニレン、などは、表面に化学的にグラフト化して、または蒸着法もしくは溶液印刷法でパターン形成して、必要な伝導性を得ることが可能な導電性ポリマーの種類である。カーボンナノチューブ、炭素フラーレン、およびグラフェンなどのその他の材料は、将来的に使用可能な導電性材料となり得る。
【0058】
実施例14
片面または両面上に導電性表面で金属化またはパターン形成された微孔性ポリマーマトリックスは、タッチスクリーンの連続製造プロセスに組み込むことができる。金属化マトリックスのロールをパターン形成し、タッチスクリーン製造業者に輸送することができる。前記製造業者は予めパターン形成されたロールを受け取り、その膜をガラスレンズに適用することができる。充填/接着の前には、導電性基材は不透明であるために、このことをロールから直接行うことができ、非常に容易に整列させることができる。
【0059】
ガラスレンズ上で整列が行われた後で、屈折率が一致する光学接着剤(多孔質マトリックスの屈折率または選択されたガラスレンズとの一致)が膜の裏側に適用される。膜は高度に多孔性であるために、接着剤を片側のみに適用して、浸透させるまたは機械的な誘因により押し込むことができ、多孔質材料を通して同時に両側上に接着力を付与することができる。このようにして、1つの接着ステップをプロセスから除くことができる。
【0060】
少なくとも選択された実施形態、態様または目的では、本発明は、ポリマー膜、導電性膜、導電性の透過性膜、このような膜用の新規もしくは改善された基材、このような膜の製造方法、および/またはこのような膜もしくは基材の使用方法に関する。
【0061】
一態様では、微孔性膜が本明細書で記載され、これらは、電子工学用途および/または光学用途に適する複合材料構造および特性を示す。いくつかの実施形態では、本明細書で記載の複合膜は、連通気孔構造および屈折率を有する微孔性ポリマーマトリックスまたは基材ならびに微孔性ポリマーマトリックスの1つまたは複数の表面上に堆積させた導電性コーティングを含む。他の実施形態では、気孔が充填され、膜が実質的に透過性である。
【0062】
少なくとも特定の実施形態、態様または目的では、本発明は、導電性、透過性、透光性、および/または反射性ポリマー膜または材料、このような膜または材料用の基材、このような基材、膜または材料の製造方法、および/またはこのような基材、膜または材料の使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明は、導電性膜または材料、好ましくは、導電性の透過性膜または材料、このような膜用の新規または改善された多孔性または微多孔性基材、このような導電性膜または材料の製造方法、および/またはこのような膜、材料または基材の使用方法に関する。
【0063】
膜および/または材料は、例えば、堆積させる材料、堆積方式、気孔が開放のまま、または未充填で残されているかどうか、などに応じて、導電性および/または反射性であってもよい。例えば、図5および6では、金属化側は、多孔質膜、マトリックスまたは基材の表面上へのアルミニウム堆積を使って、金属化、コート、処理または堆積され、導電性および反射性の両方がもたらされる(例えば、膜の気孔が充填されていない場合の、図6の右側の艶がない、ミラー様表面を参照されたい)。
【0064】
アルミニウムがパターン(平行線などの)で堆積された場合は、導電性はあるが、おそらく反射性はないであろう。また、特定の非導電性コーティング材料は、反射性を与えるが導電性はないであろう。また、透過性および/または透光性レベルに対する反射性および/または不透明度のレベルは、特定の屈折率を有する一定量の材料を使って気孔を充填することにより、変更または調節することができる。
【0065】
図5は、本発明の特定の実施形態による微孔性ポリマーマトリックスを有する金属化したまたはコーティングした膜または材料(Celgard(登録商標)EZ2090)の、白色の非コート(非金属化)表面または側面、および金属的で光沢のあるまたは反射性の側を、横に並べて比較した写真画像である。図5は片側のみの金属化を示すが、片側または両側を金属化することができ、気孔を充填するまたは非充填とすることができることは理解されよう。図5、7、8および9は、非充填気孔を示す。図6は、充填気孔を有する部分を示す。図6の特定の例では、気孔は約62%のエタノールを有する手指消毒剤混合物で充填された。同様に、オイル、IPA、溶媒、ポリマー、ポリマーと溶媒混合物、などで膜の気孔を充填し、膜を透明または透過性にすることも可能である。好ましい充填剤は、膜の気孔に充填材料を充填した場合に、特定用途で機能し、膜を透明またはほぼ透明にするものである。
【0066】
図6は、透過性または透光性の金属化膜または材料の充填部分および不透明で反射性である非充填部分を有する民生用電子デバイス、特にブラックベリーデバイスのディスプレイスクリーン上に配置された図5の金属化膜または材料(Celgard(登録商標)EZ2090)の写真画像である。
【0067】
図7は、図5の金属化膜または材料(Celgard(登録商標)EZ2090)の金属化表面の1,000倍に拡大した表面SEM像である。
【0068】
図8は、図5の金属化膜または材料の金属化表面の5,000倍に拡大した表面SEM像である。
【0069】
図9は、図5の金属化膜または材料の金属化表面の20,000倍に拡大した表面SEM像である。アルミニウムフレークは小繊維上にかろうじて見える。
【0070】
少なくとも選択実施形態、目的または態様では、本発明は、導電性用途および/または高温、酸化、および/またはその他の腐食性環境を伴う用途に好適な微孔性膜のニーズに応えるまたはこのような微孔性膜を提供することができ、および/または導電性、透過性、透光性、部分反射性および/または反射性ポリマー膜または材料、このような膜または材料用の基材、このような基材、膜および/または材料の製造方法、および/またはこのような基材、膜および/または材料の使用方法に関する。少なくとも選択実施形態では、本発明は、導電性膜または材料、好ましくは、導電性の透過性または半透過性膜または材料、このような膜用の新規または改善された多孔性または微多孔性基材、このような導電性膜または材料の製造方法、および/またはこのような膜、材料または基材の使用方法に関する。
【0071】
本発明の種々の目的を実現するために本発明の様々な実施形態について記載してきた。これら実施形態は、本発明の原理を単に例示しているものと理解されるべきである。本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、多くの変更および修正が当業者には容易に明らかとなるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13