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特許7529720唾液試料を使用するCYP450表現型解析のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】唾液試料を使用するCYP450表現型解析のための組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/26 20060101AFI20240730BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12Q1/26
A61K31/522
A61K31/192
A61P43/00
G01N33/50 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022086475
(22)【出願日】2022-05-27
(62)【分割の表示】P 2018547867の分割
【原出願日】2016-11-30
(65)【公開番号】P2022130377
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】62/386,389
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316015822
【氏名又は名称】コンコーディア ユニバーシティー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】マグロウ ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト アーミン ヘンリー
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-225791(JP,A)
【文献】Drug Metabolism and Disposition,2003年,Vol.31, No.11,p.1448-1455
【文献】J. Nutr.,2001年,Vol.131, No.5,p.1621S-1625S
【文献】Crit Rev Oral Biol Med,2002年,Vol.13, No.2,p.197-212
【文献】DONZELLI M. et.al.,Clin Pharmacokinetics,vol.53 (2014),pp.271-282, Supplementary Material
【文献】VIDEAU O. et.al.,RAPID COMMUNICATIONS IN MASS SPECTROMETRY,vol.24 (2010),pp.2407-2419
【文献】STREETMAN D.S. et.al.,Clinical Pharmacology & Therapeutics,vol.68, no.4 (2000),pp.375-383
【文献】Steroids,2009年,Vol.74, No.10-11,p.853-858
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象由来の唾液試料において、6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンを定量化する段階を含む方法に使用するための、エプレレノンを含む、組成物。
【請求項2】
前記方法が、未変換エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンについての代謝比を決定する段階をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記方法がある用量の薬物を投与する段階をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記対象が、肝不全を経験しているかまたは肝不全を発症するリスクを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記方法が薬物試験に前記対象が参加する前に該薬物試験に対する該対象の適合性を評価するために行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記対象が、CYP3A4活性の評価を必要とする対象である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記方法が、未変換エプレレノンに対する定量化された6β-ヒドロキシエプレレノンおよび21-ヒドロキシエプレレノンに基づいて対象におけるCYP3A4活性を評価する段階をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、N-アセチルトランスフェラーゼ (NAT)、メチルトランスフェラーゼ、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT)、スルホトランスフェラーゼ、および酸化酵素、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される酵素に対する基質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9、およびUGT2B7からなる群から選択されるUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT) に対する基質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記方法が、対象にケトプロフェンを投与する段階をさらに含み、かつ、該方法が、β-エストラジオール(estradio)-3-グルクロニド、トリフルオペラジン-N-グルクロニド、5-ヒドロキシトリプトフォール-O-グルクロニド、プロポフォール-O-グルクロニド、ジドブジン-5'-グルクロニド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される代謝産物を対象由来の生体試料において定量化する段階をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記方法が、未変換エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび21-ヒドロキシエプレレノンについての代謝比を決定する段階をさらに含み、該代謝比を決定した後に、前記方法が、CYP3A4により代謝される特定用量の薬物を投与する段階をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記対象が、肝不全を経験している、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119(e)の下で、2015年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/386,389号の恩典を主張するものであり、その内容は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明の分野は医療診断に関する。より詳細には、本発明の分野は薬理遺伝学的医療診断に関する。より詳細には、本発明の分野は、唾液試料を使用する複数の同時代謝酵素表現型解析のための方法において用いられ得る組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
シトクロムP450 (CYP450) 酵素は、薬物応答および毒性感受性における変動性の多くに関与している。薬理遺伝学および後の薬理ゲノミクスの分野は、異なる人種/民族群の個体が、ある特定の薬物に対する応答および毒性を異なる割合で経験するという知見から始まった。科学者は、個体レベルおよび集団レベルで、このような「高度に可変的な」薬物の代謝クリアランスが顕著に異なることを見出した。科学者はまた、異なる人種/民族群の間で、代謝クリアランスが非常に低い個体の頻度が不均衡であることを見出した。さらなる調査により、遺伝子変種が、CYP450酵素活性の変化およびひいては薬物の代謝クリアランスの違いをもたらすことが明らかになった。長年にわたる調査を経て、CYP450酵素活性は、依然として多くの薬物に関する代謝クリアランスの主要な決定要因である。CYP450酵素ファミリーは、薬理遺伝学の分野で最も研究がなされた酵素ファミリーである。
【0004】
ある薬物が特定のCYP450酵素(すなわち、薬物クリアランスの80%またはそれ以上を担う)を介して主に代謝される場合、その薬物は「プローブ薬物」として知られている。これらの特定の薬物に関して、CYP450酵素活性の変化は薬物クリアランスの顕著な違いをもたらす。代謝酵素活性の違いは、代謝比、すなわち公知の酵素基質を一次代謝産物で除した濃度比または面積比を測定することによって定量化される。プローブ基質の代謝比は代謝表現型とも称されるが、代謝表現型は低代謝群などのカテゴリー値として表される場合が多い。現在、代謝クリアランスの変化をもたらす遺伝子変種の有無に基づいて代謝表現型を予測する遺伝子アッセイ法が存在する。遺伝子的に予測された代謝表現型はカテゴリー的であり、迅速代謝群に分類される平均個体と比較して分類される。他の名称はCYP450酵素および特定の研究によって異なるが、一般的な名称には、高代謝群 (EM)(すなわち、平均野生型個体)、低代謝群 (PM)(すなわち、平均野生型と比較して非常に低い代謝クリアランスを有する個体)、中間代謝群 (IM)(すなわち、平均野生型と低代謝群表現型との間の代謝クリアランスを有する個体)、迅速代謝群 (RM)(すなわち、平均野生型個体と比較してより高い代謝クリアランスを有する個体)、および超迅速代謝群 (UM)(すなわち、迅速代謝群よりも顕著に高い代謝クリアランスを有する個体)が含まれる。
【0005】
ひとたび代謝表現型が決定されると、低代謝群において薬物投薬量を低減させるというような介入を行うことができる。遺伝子的に予測された表現型に誘導される薬物投薬の利点を示す証拠が存在する。しかしながら、遺伝子的に予測された表現型を使用することにはいくらかの欠点が存在する。CYP450酵素をコードする遺伝子は生涯を通じて変化しないが、それらの発現、翻訳、および活性のレベルは変化し、したがって結果として生じる表現型も変化する。アルコール摂取、加齢、食事、酵素の誘導または阻害を生じる薬物/薬学的使用(薬物間相互作用)、肝疾患、腎疾患等などの多数の生理的要因および環境要因が、代謝表現型に影響を及ぼす。インビトロ研究により、転写調節、翻訳調節、転写後修飾、およびタンパク質間相互作用を含む、CYP450活性の複雑な調節が示されている。
【0006】
代謝表現型の遺伝子的予測に関連した落とし穴を回避するために、本発明者らは、非侵襲的な唾液ベースの検査アッセイ法と共に極めて安全な表現型解析プローブの混合物を使用する、主要CYP450酵素に関する代謝表現型の直接検査のための組成物、方法、およびキットを開発した。この組成物、方法、およびキットにより代謝表現型の直接測定が可能となり、この代謝表現型を従来のカテゴリー表現型に変換することができ、または連続的可変代謝表現型として報告することができる。
【発明の概要】
【0007】
概要
シトクロムP450 (CYP450) 酵素表現型解析において使用され得る方法および組成物を開示する。本方法および本組成物は典型的に、患者に経口投与され得る、異なるCYP450酵素に対する1種類または複数種類の基質を含む組成物を用いる。その後、患者の表現型CYP450酵素プロファイルを作成するために、患者の唾液中において1種類または複数種類の基質の代謝産物および任意の非代謝基質を検出して、任意の所与のCYP450酵素について代謝比を算出することができる。患者の表現型CYP450酵素プロファイルは、患者に対して薬物を投薬するために、および/または患者において、例えば肝不全を経験しているかもしくは肝不全を発症するリスクを有する患者において、肝機能を評価するために用いることができる。
[本発明1001]
(a) それを必要とする対象に、
(i) 代謝産物 (MET CYP1A2 ) へのSUB CYP1A2 の変換を触媒するCYP1A2に対する基質 (SUB CYP1A2 )、
(ii) 代謝産物 (MET CYP2C19 ) へのSUB CYP2C19 の変換を触媒するCYP2C19に対する基質 (SUB CYP2C19 )、および
(iii) 代謝産物 (MET CYP2D6 ) へのSUB CYP2D6 の変換を触媒するCYP2D6に対する基質 (SUB CYP2D6 )
を含む組成物を投与する段階;ならびに
(b) 該対象由来の唾液試料において、
(i) MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2
(ii) MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 、ならびに
(iii) MET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6
を定量化する段階
を含む、方法。
[本発明1002]
前記組成物が、SUB CYP1A2 、SUB CYP2C19 、およびSUB CYP2D6 の各々の錠剤型製剤を含み、該錠剤型製剤がコーティングを任意で含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記錠剤型製剤が、SUB CYP1A2 、SUB CYP2C19 、およびSUB CYP2D6 の各々の即時放出錠剤型製剤であり、該即時放出錠剤型製剤がコーティングを任意で含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
超高圧液体クロマトグラフィー (UHPLC)、質量分析 (MS)、高圧液体クロマトグラフィー (HPLC)、紫外分光法 (UV)、ガスクロマトグラフィー (GC)、電子捕獲検出 (ECD)、水素炎イオン化検出 (FID)、ラマン赤外 (RI) 分光法、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化 (MALDI)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数の手法を用いて、MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2 、MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 、ならびにMET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6 のうちの1つまたは複数が定量化される、本発明1001の方法。
[本発明1005]
MET CYP1A2 、MET CYP2C19 、およびMET CYP2D6 のうちの1つまたは複数を定量化するための試薬を含む1種類または複数種類の試薬組成物と前記唾液試料を反応させることにより、MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2 、MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 、ならびにMET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6 のうちの1つまたは複数が定量化される、本発明1001の方法。
[本発明1006]
SUB CYP1A がまた、CYP2A6、NAT2、XO、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される酵素に対する基質である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
SUB CYP1A2 がまた、CYP2A6、NAT2、およびXOのそれぞれに対する基質である、本発明1006の方法。
[本発明1008]
SUB CYP1A2 がカフェインまたはテオフィリンである、本発明1001の方法。
[本発明1009]
SUB CYP1A2 がカフェインであり、かつMET CYP1A2 がパラキサンチンである、本発明1001の方法。
[本発明1010]
SUB CYP2C19 がまたCYP3A4に対する基質 (SUB CYP3A4 ) であり、CYP3A4が代謝産物 (ME CYP3A4 ) へのSUB CYP3A4 の変換を触媒する、本発明1001の方法。
[本発明1011]
SUB CYP2C19 が、オメプラゾール、エソメプラゾール、メフェニトイン、クロピドグレル、およびフェニトインからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1012]
SUB CYP2C19 がオメプラゾールであり、かつMETCYP 2C19 が5OH-オメプラゾールであり、かつ前記方法において投与される前記組成物が塩基性緩衝剤を任意で含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
SUB CYP2D6 が、デキストロメトルファン、デシプラミン、およびメトプロロールからなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1014]
SUB CYP2D6 がデキストロメトルファンであり、かつMET CYP2D6 がデキストロルファンである、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記組成物が、CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4、およびCYP3A5より選択される酵素に対する基質をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
前記組成物がCYP3A4に対する基質 (SUB CYP3A4 ) をさらに含み、CYP3A4が代謝産物 (MET CYP3A4 ) へのSUB CYP3A4 の変換を触媒する、本発明1001の方法。
[本発明1017]
SUB CYP3A4 がエプレレノンであり、かつMET CYP3A4 が6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンである、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記組成物が、N-アセチルトランスフェラーゼ (NAT)、メチルトランスフェラーゼ、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT)、スルホトランスフェラーゼ、および酸化酵素、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される酵素に対する基質をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記組成物が、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9、およびUGT2B7からなる群より選択されるUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT) に対する基質をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記対象にケトプロフェンを投与する段階をさらに含み、かつ該対象由来の生体試料において、β-エストラジオール(estradio)-3-グルクロニド、トリフルオペラジン-N-グルクロニド、5-ヒドロキシトリプトフォール-O-グルクロニド、プロポフォール-O-グルクロニド、ジドブジン-5'-グルクロニド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される代謝産物を定量化する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1021]
(i) MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2 ;(ii) MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 ;ならびに (iii) MET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6 のうちの1つまたは複数についての代謝比を決定する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1022]
任意で (i) MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2 ;(ii) MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 ;ならびに (iii) MET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6 のうちの1つまたは複数についての代謝比を決定することにより、ある用量の薬物を投与する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1023]
前記対象が、肝不全を経験しているかまたは肝不全を発症するリスクを有し、かつ任意で前記方法が、任意で (i) MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2 ;(ii) MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 ;ならびに (iii) MET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6 のうちの1つまたは複数についての代謝比を決定することにより、患者において肝機能を評価する段階を含む、本発明1001の方法。
[本発明1024]
任意で (i) MET CYP1A2 および未変換SUB CYP1A2 ;(ii) MET CYP2C19 および未変換SUB CYP2C19 ;ならびに (iii) MET CYP2D6 および未変換SUB CYP2D6 のうちの1つまたは複数についての代謝比を決定することにより、薬物試験に前記対象が参加する前に該薬物試験に対する該対象の適合性を評価するために、前記方法が行われる、本発明1001の方法。
[本発明1025]
(i) 代謝産物 (MET CYP1A2 ) へのSUB CYP1A2 の変換を触媒するCYP1A2に対する基質 (SUB CYP1A2 );
(ii) 代謝産物 (MET CYP2C19 ) へのSUB CYP2C19 の変換を触媒するCYP2C19に対する基質 (SUB CYP2C19 );および
(iii) 代謝産物 (MET CYP2D6 ) へのSUB CYP2D6 の変換を触媒するCYP2D6に対する基質 (SUB CYP2D6 )
を含む、組成物。
[本発明1026]
SUB CYP1A2 、SUB CYP2C19 、およびSUB CYP2D6 の各々の錠剤型製剤を含み、該錠剤型製剤がコーティングを任意で含む、本発明1025の組成物。
[本発明1027]
前記錠剤型製剤が、SUB CYP1A2 、SUB CYP2C19 、およびSUB CYP2D6 の各々の即時放出錠剤型製剤であり、該即時放出錠剤型製剤がコーティングを任意で含む、本発明1026の組成物。
[本発明1028]
SUB CYP1A2 がまた、CYP2A6、NAT2、XO、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される酵素に対する基質である、本発明1024の組成物。
[本発明1029]
SUB CYP1A2 がまた、CYP2A6、NAT2、およびXOのそれぞれに対する基質である、本発明1025の組成物。
[本発明1030]
SUB CYP1A2 がカフェインまたはテオフィリンである、本発明1025の組成物。
[本発明1031]
SUB CYP1A2 がカフェインである、本発明1025の組成物。
[本発明1032]
SUB CYP2C19 がまたCYP3A4に対する基質 (SUB CYP3A4 ) であり、かつCYP3A4が代謝産物 (MET CYP3A4 ) へのSUB CYP3A4 の変換を触媒する、本発明1025の組成物。
[本発明1033]
SUB CYP2C19 が、オメプラゾール、エソメプラゾール、メフェニトイン、クロピドグレル、およびフェニトインからなる群より選択される、本発明1025の組成物。
[本発明1034]
SUB CYP2C19 がオメプラゾールであり、かつ前記組成物が塩基性緩衝剤を任意で含む、本発明1025の組成物。
[本発明1035]
SUB CYP2D6 が、デキストロメトルファン、デシプラミン、およびメトプロロールからなる群より選択される、本発明1025の組成物。
[本発明1036]
CYP2C9、CYP2E1、CYP3A4、およびCYP3A5より選択される酵素に対する基質をさらに含む、本発明1025の組成物。
[本発明1037]
CYP3A4に対する基質 (SUB CYP3A4 ) をさらに含む、本発明1025の組成物。
[本発明1038]
SUB CYP3A4 がエプレレノンである、本発明1037の組成物。
[本発明1039]
N-アセチルトランスフェラーゼ (NAT)、メチルトランスフェラーゼ、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT)、スルホトランスフェラーゼ、および酸化酵素、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される酵素に対する基質をさらに含む、本発明1025の組成物。
[本発明1040]
UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9、およびUGT2B7からなる群より選択されるUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT) に対する基質をさらに含む、本発明1025の組成物。
[本発明1041]
ケトプロフェンをさらに含む、本発明1025の組成物。
[本発明1042]
患者における代謝活性を試験するため/または患者の表現型を決定するためのキットであって、本発明1025~1041のいずれかの組成物のいずれかを含む、キット。
[本発明1043]
(i) 唾液試料を採取して輸送するための容器(例えば、サリベット);(ii) UPLC-MS/MSアッセイ法を行うための構成要素および/もしくは試薬;ならびに/または (iii) UPLC-MS/MSアッセイ法の結果の報告書を作成するための構成要素
からなる群より選択される1つまたは複数の構成要素をさらに含む、本発明1042のキット。
[本発明1044]
(a) それを必要とする対象に、エプレレノンを含む組成物を投与する段階;ならびに
(b) 該対象由来の唾液試料において、6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンを定量化する段階
を含む、方法。
[本発明1045]
未変換エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンについての代謝比を決定する段階をさらに含む、本発明1044の方法。
[本発明1046]
任意で未変換エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンについての代謝比を決定することにより、ある用量の薬物を投与する段階をさらに含む、本発明1044の方法。
[本発明1047]
前記対象が、肝不全を経験しているかまたは肝不全を発症するリスクを有し、かつ任意で方法が、任意で未変換エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンについての代謝比を決定することにより、患者において肝機能を評価する段階を含む、本発明1044の方法。
[本発明1048]
任意で未変換エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンについての代謝比を決定することにより、薬物試験に前記対象が参加する前に該薬物試験に対する該対象の適合性を評価するために、前記方法が行われる、本発明1044の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】健常成人におけるCYP1A2代謝表現型のヒストグラムを示す。
図2】健常成人におけるCYP2C19代謝表現型のヒストグラムを示す。
図3】健常成人におけるCYP2D6代謝表現型のヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下におよび本出願を通して記述されているように、本発明をいくつかの定義を用いて本明細書において説明する。
【0010】
別に規定されない限り、または文脈によって示されない限り、「1つの (a)」、「1つの (an)」、および「その」という用語は「1つまたは複数」を意味する。例えば、「1つの基質」および「1つの代謝産物」は、それぞれ「1つまたは複数の基質」および「1つまたは複数の代謝産物」を意味すると解釈されるべきである。
【0011】
本明細書で用いられる場合、「約」、「およそ」、「実質的に」、および「有意に」は当業者によって理解され、それらが用いられる文脈によってある程度変わる。これらの用語が用いられる文脈を所与として、当業者に明確ではない用語の使用がある場合、「約」および「およそ」は、その特定の用語のプラスまたはマイナス10%以下を意味し、「実質的に」および「有意に」は、その特定の用語のプラスまたはマイナス10%超意味する。
【0012】
本明細書で用いられる場合、「含む (comprise)」および「含む (comprising)」という用語が、特許請求の範囲をこれらの移行語の後に続いて列挙される要素のみに限定しない「オープン」移行語であるという点で、「含む (include)」および「含む (including) 」という用語は、「含む (comprise)」および「含む (comprising)」という用語と同じ意味を有する。「~からなる」という用語は、「含む (comprising)」という用語に包含される一方、特許請求の範囲をこの移行語の後に続いてに列挙される要素のみに限定する「限定的 (closed)」移行語として解釈されるべきである。「本質的に~からなる」という用語は、「含む (comprising)」という用語に包含される一方、この移行語の後に続く追加要素を許容するが、そのような追加要素が特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に著しく影響を及ぼさない場合に限る「一部限定的」移行語と解釈されるべきである。
【0013】
本明細書で用いられる場合、「それを必要とする患者」は、シトクロムP450 (CYP450) 酵素の表現型解析を必要とする患者を含み得る。「患者」という用語は、「対象」および「個体」という用語と互換的に使用され得る。「患者」は、ヒトおよび非ヒト動物(例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマなど)を含むことが意図される。
【0014】
本明細書で用いられる場合、「それを必要とする患者」は、薬物の投薬を必要とする患者を含み得る。したがって、開示される方法は、1種類または複数種類のシトクロムP450 (CYP450) 酵素に関する患者の表現型に基づいて、患者に対する薬物の適切な用量を決定する方法を含んでよく、その表現型は本明細書に開示されるように決定することができる。
【0015】
本明細書で用いられる場合、「それを必要とする患者」は、肝不全を経験しているかもしくは肝不全を発症するリスクを有する患者を含み得る。したがって、開示される方法は、1種類または複数種類のシトクロムP450 (CYP450) 酵素に関する患者の表現型に基づいて、肝不全を経験しているかもしくは肝不全を発症するリスクを有する患者において肝機能を評価する方法を含んでよく、その表現型は本明細書に開示されるように決定することができる。
【0016】
本明細書で用いられる場合、「それを必要とする患者」は、薬物試験に登録される患者を含み得る。したがって、開示される方法は、1種類または複数種類のシトクロムP450 (CYP450) 酵素に関する患者の表現型に基づいて、薬物試験に参加する前の患者において肝機能を評価する方法を含んでよく、その表現型は本明細書に開示されるように決定することができる。
【0017】
本明細書において開示される組成物は典型的に、シトクロムP450 (CYP450) 酵素の1種類または複数種類1種類または複数種類のアイソフォームに対する1種類または複数種類の基質を含む。開示される組成物は、基質の混合物を含み得る。本明細書で用いられる場合、「混合物」という用語は混和物を意味し、「混合物」および「混和物」という用語は本明細書において互換的に使用され得る。混合物は、1種類または複数種類の酵素に対する基質の混和物を含み得る。詳細には、混合物は、シトクロムP450 (CYP450) 酵素の1種類または複数種類のアイソフォームに対する基質の混和物を含み得る。混和物の基質は、実質的に同時に投与され得る複数の製剤中に個々に製剤化してもよく、かつ/または混和物の基質は、単一製剤中に共に製剤化してもよい。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「基質」とは酵素によって認識される化合物を指し、これに関して、酵素は「代謝産物」と称され得る異なる化合物への基質の変換を触媒する。例えば、肝臓は、様々な薬物物質(すなわち、基質)を代謝産物に変換する酵素を含有し、代謝産物は体内から尿または糞便中に排出される。この酵素変換過程は薬物の作用持続時間または強度を決定する場合が多く、そのような理由で、薬物によっては、疾患を処置しかつ所望の薬理学的効果をもたらすために毎日数回服用され得る。
【0019】
肝臓酵素は、シトクロムP450 (CYP450)、N-アセチルトランスフェラーゼ、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ、オキシダーゼ、スルホトランスフェラーゼ、および他の酵素のアイソフォームを含み得る。これらの酵素系はそれぞれ多くのアイソフォームからなり得、各アイソフォームは異なる基質を代謝することができる。例えば、ヒト肝臓におけるCYP450系は、少なくとも10種類の個々のアイソフォームを含む。CYP450アイソフォームは薬物の排出速度を決定するのに重要である場合が多く、CYPアイソフォームによる代謝は薬剤の排出における律速段階を表す場合が多い。遺伝子解析、遺伝子マーカー、および/または遺伝子欠損のみに基づいた代謝表現型の予測は、環境要因、合併症、CYP450アイソフォームの発現、翻訳、および活性のレベル、ならびに他の要因を含めることができないために、不正確な結果をもたらし得る。
【0020】
したがって、薬剤を代謝する患者の能力は、薬剤の適切な用量または用量計画を決定する際の重要な要因である。代謝活性は、CYP450アイソフォームにおける、遺伝子欠損を含む遺伝子マーカーに基づき得る。したがって、代謝活性は、遺伝子解析を行うことによって評価することができる。
【0021】
しかしながら、薬剤の適切な用量または用量計画を決定するためには、患者の実際の代謝活性を理解することが最も重要である。本明細書において開示される方法は、患者の代謝表現型を決定する段階、および/または患者の代謝活性を特徴決定する段階を含み得る。患者の代謝活性は、本明細書において「代謝表現型」と称され得る。代謝表現型に基づいて、患者を低代謝群 (PM)、および中間代謝群 (IM)、高代謝群 (EM)、または超迅速代謝群 (UM) として特徴決定することができる。例えば、代謝表現型は、患者に酵素に対する基質を投与することによって作成することができる。その後、患者から試料を採取し、代謝産物および任意の未変換基質の存在について解析して、代謝比を算出することができ、これを用いて患者の代謝活性を特徴決定することができる。
【0022】
唾液試料を使用する同時CYP450表現型解析のためのプローブ混合物
したがって、ヒトシトクロムP450 (CYP450) 酵素表現型解析において使用され得る方法および混和物を含む組成物を、本明細書において開示する。本方法および本組成物は、患者に経口投与され得る、1種類または複数種類の異なるCYP450酵素に対する1種類または複数種類の基質(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2E1、CYP2D6、CYP3A4、およびCYP3A5のうちの1つまたは複数に対する1種類または複数種類の基質)を含み得るまたは用い得る。開示される組成物の基質は、患者に経口投与することができる。その後、例えば0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、24.0時間後またはそれ以降に、患者由来の唾液試料を、代謝産物を生成するように1種類または複数種類のCYP450アイソフォームによって代謝される組成物の1種類または複数種類の基質の代謝産物について試験することができる。患者由来の唾液試料はまた、任意の非代謝基質についても試験することができる。したがって、患者由来の唾液中の代謝産物/非代謝基質の濃度比を算出して、1種類または複数種類のCYP450アイソフォームについて患者の代謝表現型を作成することができる。
【0023】
いくつかの態様において、開示される方法は、それを必要とする対象に、(i) 代謝産物 (METCYP1A2) へのSUBCYP1A2の変換を触媒するCYP1A2に対する基質 (SUBCYP1A2);(ii) 代謝産物 (METCYP2C19) へのSUBCYP2C19の変換を触媒するCYP2C19に対する基質 (SUBCYP2C19);(iii) CYP2D6が代謝産物 (METCYP2D6) へのSUBCYP2D6の変換を触媒する、CYP2D6に対する基質 (SUBCYP2D6);および (iv) 代謝産物 (METCYP3A4) へのSUBCYP3A4の変換を触媒するCYP3A4に対する基質 (SUBCYP3A4)のうちの1つまたは複数を含む組成物を典型的には経口投与する段階を含む。その後、本方法は、(b) 対象由来の唾液試料において、(i) METCYP1A2および未変換SUBCYP1A2;(ii) METCYP2C19および未変換SUBCYP2C19;(iii)METCYP2D6および未変換SUBCYP2D6;ならびに (iv) METCYP3A4および未変換SUBCYP3A4のうちの1つまたは複数を検出する段階を含み得る。
【0024】
開示される方法において、患者に投与される組成物は、SUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4より選択される1種類または複数種類の基質の1種類または複数種類の錠剤型製剤を含み得る。いくつかの態様において、組成物は、例えば錠剤1個がそれぞれSUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4のものである、複数の錠剤を含む。他の態様において、患者に投与される組成物は単一の錠剤型製剤を含んでよく、単一の錠剤型製剤は、SUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4を含む基質の各々を含む。適切な錠剤型製剤には、即時放出錠剤型製剤、例えばSUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4の各々の即時錠剤放出製剤が含まれ得る。いくつかの態様において、錠剤型製剤は非基質コーティング(例えば、腸溶コーティングまたは他の種類のコーティング)を含み得る。
【0025】
いくつかの態様において、開示される方法において投与される組成物は緩衝組成物である。例えば、開示される方法において投与される組成物は塩基性緩衝剤を含んでよく、これには炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸カルシウムが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0026】
いくつかの態様において、開示される方法において投与される組成物は、組成物を水に溶解した場合に塩基性pHを有する。例えば、開示される方法において投与される組成物は、水に溶解した場合に、約7.5、8.0、8.5、または9.0よりも高いpHを有し得る。
【0027】
開示される方法において、代謝産物および/または未変換基質は、任意の適切な手法を用いて唾液中において検出することができる。適切な手法には、超高圧液体クロマトグラフィー (UHPLC)、質量分析 (MS)、高圧液体クロマトグラフィー (HPLC)、紫外分光法 (UV)、ガスクロマトグラフィー (GC)、電子捕獲検出 (ECD)、水素炎イオン化検出 (FID)、ラマン赤外 (RI) 分光法、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化 (MALDI)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される手法が含まれ得るが、これらに限定されない。加えて、開示される方法において、代謝産物および/または未変換基質は、代謝産物および/または未変換基質を検出するための1種類または複数種類の試薬を含む試薬組成物を用いて唾液中において、唾液を試薬組成物と反応させることにより検出することができる。
【0028】
開示される方法において、患者に投与される組成物は典型的に、CYPの1種類または複数種類のアイソフォームに対する基質を含む。いくつかの態様において、組成物の基質は、CYPの2種類以上のアイソフォームに対する基質である(例えば、CYP1A2の基質はさらに、CYP2C9、CYP2C19、CYP2E1、CYP2D6、CYP3A4、およびCYP3A5のうちのいずれかのようなCYPの別のアイソフォームに対する基質であってよい)。他の態様において、組成物の基質は、CYPの1種類のアイソフォームの基質であり、CYPの別のまたは他のいかなるアイソフォームに対する基質ではない(例えば、CYP3A4に対する基質は、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2E1、CYP2D6、およびCYP3A5のうちの別のまたは他のいかなるものに対する基質でなくてよい)。
【0029】
開示される方法において投与される組成物の基質には、当技術分野で公知の「薬物」が含まれ得る。好ましくは、開示される方法において投与される組成物の基質(すなわち、薬物)および基質の代謝産物は、経口バイオアベイラビリティ(例えば、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ未満よりも高い)、および血漿タンパク質結合がほとんどないこと(例えば、約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、もしくは20%、またはそれ未満よりも低い)などの、適切な薬学的特徴を有する。好ましくは、基質および基質の代謝産物は適切な半減期を有し、これはいくつかの態様において、約0.5、1.0、または2.0時間よりも長くかつ約8.0、7.0、6.0、5.0、または4.0時間よりも短い半減期(例えば、2.0~4.0の半減期)であってよい。
【0030】
開示される方法において投与される組成物のための適切な基質には、以下の例示的薬物の表に列挙される1つまたは複数の薬物が含まれ得る。
【0031】
CYP1A2による代謝を評価するための例示的薬物の表
【0032】
CYP2C9による代謝を評価するための例示的薬物の表
【0033】
CYP2C19による代謝を評価するための例示的薬物の表
【0034】
CYP2D6による代謝を評価するための例示的薬物の表
【0035】
CYP3A4による代謝を評価するための例示的薬物の表
【0036】
開示される方法において、患者に投与される組成物は、CYPアイソフォーム1A2に対する基質 (SUBCYP1A2) を含み得る。いくつかの態様において、CYP1A2に対する基質 (SUBCYP1A2) はまた、アイソフォーム2A6などのさらなるCYPアイソフォーム、またはN-アセチルトランスフェラーゼ (NAT) および/もしくはキサンチンオキシダーゼ (XO) などの他の酵素などの、さらなる酵素に対する基質である。いくつかの態様において、CYPアイソフォーム1A2に対する基質はまた、CYP1A2、CYP2A6、NAT、およびXOのそれぞれに対する基質である。CYP1A2に対する適切な基質には、カフェイン(例えばこの場合、代謝産物 (METCYP1A2) はパラキサンチンである)およびテオフィリンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0037】
開示される方法において、患者に投与される組成物は、CYPアイソフォーム2C19に対する基質 (SUBCYP2C19) を含み得る。いくつかの態様において、CYP2C19に対する基質はまた、アイソフォーム3A4などのさらなるCYPアイソフォームなどのさらなる酵素に対する基質 (SUBCYP3A4) である。CYP2C19に対する適切な基質には、オメプラゾール(例えばこの場合、代謝産物 (METCYP2C19) は5OH-オメプラゾールである)、エソメプラゾール、メフェニトイン、クロピドグレル、およびフェニトインが含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの態様において、患者に投与される組成物はオメプラゾールおよび塩基性緩衝剤を含み、塩基性緩衝剤には炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸カルシウムが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
開示される方法において、患者に投与される組成物は、CYPアイソフォーム2D6に対する基質 (SUBCYP2D6) を含み得る。CYP2D6の適切な基質には、デキストロメトルファン(例えばこの場合、代謝産物 (METCYP2D6) はデキストロルファンである)、デシプラミン、およびメトプロロールが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0039】
開示される方法において、患者に投与される組成物はCYPアイソフォーム3A4に対する基質 (SUBCYP3A4) を含んでよく、例えばこの場合、代謝産物 (METCYP3A4) および任意の非代謝SUBCYP3A4がその後、患者の唾液中において検出される。CYP3A4の適切な基質には、エプレレノン(例えばこの場合、代謝産物 (METCYP33A4) は6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノンである)、ミダゾラム、シンバスタチン、アルフェンタニル、デキストロメトルファン (dextrormethorphan)、オメプラゾール、エリスロマイシン、コルチゾール、ミダゾラム、キニジン (quindine)、およびトリアゾラムが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0040】
開示される方法において、患者に投与される組成物は、SUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4のうちの1つまたは複数を含む基質の混和物を含み得る。開示される方法のいくつかの態様において、患者に投与される組成物は、CYP2C9、CYP2E1、およびCYP3A5のうちの1つまたは複数より選択される酵素に対する基質(すなわち、それぞれSUBCYP2A9、SUBCYP2E1、およびSUBCY3A5)をさらに含む。
【0041】
開示される方法において、患者に投与される組成物はCYPアイソフォーム2C9に対する基質 (SUBCYP2C9)を含んでよく、例えばこの場合、代謝産物 (METCYP2C9) および任意の非代謝SUBCYP2C9がその後、患者の唾液中において検出される。CYP2C9の適切な基質には、ワルファリン、トルブタミド、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、セレコキシブ、ロルノキシカム、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、スプロフェン、フェニトイン、フルバスタチン、グリピジド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリブリド、イルベサルタン、ロサルタン、S-ワルファリン、シルデナフィル、テルビナフィン、アミトリプチリン、フルオキセチン、ナテグリニド、ロシグリタゾン、タモキシフェン、トラセミド、ケタミン、THC、JWH-018、AM-2201、およびリモネンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0042】
開示される方法において、患者に投与される組成物はCYPアイソフォーム2E1に対する基質 (SUBCYP2E1)を含んでよく、例えばこの場合、代謝産物 (METCYP2E1) および任意の非代謝SUBCYP2E1がその後、患者の唾液中において検出される。CYP2E1の適切な基質には、クロルゾキサゾン、デシプラミン、およびメトプロロールが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0043】
開示される方法において、患者に投与される組成物はCYPアイソフォーム3A5に対する基質 (SUBCYP3A5)を含んでよく、例えばこの場合、代謝産物 (METCYP3A5) および任意の非代謝SUBCYP3A5がその後、患者の唾液中において検出される。CYP3A5の適切な基質には、アルプラゾラム(α-水酸化)、コルチゾール、アルフェンタニル、ミダゾラム、タクロリムス、およびトリアゾラム、およびビンクリスチンが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0044】
開示される方法において、患者に投与される組成物は、CYPアイソフォームではないさらなる酵素に対する基質を含み得る。開示される方法のいくつかの態様において、患者に投与される基質の混和物は、N-アセチルトランスフェラーゼ (NAT)、メチルトランスフェラーゼ、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT)、スルホトランスフェラーゼ、および酸化酵素、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される酵素に対する基質を含み得る。開示される方法のいくつかの態様において、患者に投与される基質の混和物は、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT) のアイソフォームに対する基質を含んでよく、これにはUGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9、およびUGT2B7のうちの1つまたは複数に対する基質が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0045】
開示される方法のいくつかの態様において、患者に投与される組成物は、基質としてケトプロフェンを含み得る。本方法は、β-エストラジオール(estradio)-3-グルクロニド、トリフルオペラジン-N-グルクロニド、5-ヒドロキシトリプトフォール-O-グルクロニド、プロポフォール-O-グルクロニド、ジドブジン-5'-グルクロニド、およびそれらの組み合わせより選択される1種類または複数種類の代謝産物を検出する段階を含み得る。
【0046】
開示される方法は、唾液中において検出された1種類または複数種類の未変換基質に対する唾液中において検出された1種類または複数種類の代謝産物に基づく代謝比(例えば、SUBCYPを投与し、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、11.0、12.0、24.0時間またはそれ以上などの期間にわたって待機した後に唾液中において検出されたMETCYP/SUBCYP)を決定する段階を含み得る。開示される方法は、(i) METCYP1A2および未変換SUBCYP1A2(例えば、パラキサンチンに対するカフェイン);(ii) METCYP2C19および未変換SUBCYP2C19(例えば、5OH-オメプラゾールに対するオメプラゾール);(iii) METCYP2D6および未変換SUBCYP2D6(例えば、デキストロルファンに対するデキストロメトルファン);(iv) METCYP3A4および未変換SUBCYP3A4(例えば、エプレレノンに対する6β-ヒドロキシエプレレノンおよび/または21-ヒドロキシエプレレノン);(v) METCYP2C9および未変換SUBCYP2C9;(vi) METCYP2E1および未変換SUBCYP2E1;ならびに (vii) METCYP3A5および未変換SUBCYP3A5のうちの1つまたは複数についての代謝比を決定する段階を含み得る。
【0047】
開示される方法で使用するのに適した組成物もまた、本明細書において開示する。開示される組成物は典型的に、1種類または複数種類のCYPアイソフォームに対する1種類または複数種類の基質(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2E1、CYP2D6、CYP3A4、およびCYP3A5のうちの1つまたは複数に対する1種類または複数種類の基質)を含む。いくつかの態様において、本組成物は、(i) 代謝産物 (METCYP1A2) へのSUB1A2の変換を触媒するCYP1A2に対する基質 (SUBCYP1A2);(ii) 代謝産物 (METCYP2C19) へのSUB2C19の変換を触媒するCYP2C19に対する基質 (SUBCYP2C19);(iii) CYP2D6が代謝産物 (METCYP2D6) へのSUBCYP2D6の変換を触媒する、CYP2D6に対する基質 (SUBCYP2D6);および (iv) CYP3A4が代謝産物 (METCYP3A4) へのSUBCYP3A4の変換を触媒する、CYP3A4に対する基質 (SUBCYP3A4)のうちの1つまたは複数を含み得る。開示される組成物のための基質には、当技術分野で公知であり、かつ上記の「例示的薬物の表」中に提供される1つまたは複数の「薬物」が含まれ得る。
【0048】
開示される組成物は、SUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4より選択される1種類または複数種類の基質の1種類または複数種類の錠剤型製剤を含み得る。いくつかの態様において、組成物は、例えば錠剤1個がそれぞれSUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4のものである、複数の錠剤を含む。他の態様において、患者に投与される組成物は単一の錠剤型製剤を含んでよく、単一の錠剤型製剤は、SUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4のうちの1つまたは複数を含む基質の各々を含む。適切な錠剤型製剤には、即時放出錠剤型製剤、例えばSUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCY3A4のうちの1つまたは複数の即時錠剤放出製剤が含まれ得る。いくつかの態様において、錠剤型製剤は非基質コーティング(例えば、腸溶コーティング)を含み得る。
【0049】
開示される組成物は典型的に、CYPの1種類または複数種類のアイソフォームに対する基質を含む。いくつかの態様において、組成物の基質は、CYPの2種類以上のアイソフォームに対する基質である(例えば、CYP1A2に対する基質はさらに、CYP2C9、CYP2C19、CYP2E1、CYP2D6、CYP3A4、およびCYP3A5のうちのいずれかのようなCYPの別のアイソフォームに対する基質であってよい)。他の態様において、組成物の基質は、CYPの1種類のアイソフォームに対する基質であり、CYPの別のまたは他のいかなるアイソフォームに対する基質ではない(例えば、CYP3A4に対する基質は、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2E1、CYP2D6、およびCYP3A5のうちの別のまたは他のいかなるものに対する基質でなくてよい)。
【0050】
したがって、開示される組成物は、SUBCYP1A2、SUBCYP2C19、SUBCYP2D6、およびSUBCYP3A4のうちの1つまたは複数を含み得る。開示される組成物のいくつかの態様において、SUBCYP1A2はまた、他のCYPアイソフォームに対する基質または他の酵素に対する基質であってよい。例えば、SUBCYP1A2はまた、CYP2A6、NAT2、XO、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される酵素に対する基質であってよい。開示される組成物のいくつかの態様において、SUBCYP2C19はまた、他のCYPアイソフォームに対する基質または他の酵素に対する基質であってよい。例えば、SUBCYP2C19はまたCYP3A4に対する基質であってよい。開示される組成物のための適切な基質には、(i) カフェインおよびテオフィリンより選択されるSUBCYP1A2;(ii) オメプラゾール、エソメプラゾール、メフェニトイン、クロピドグレル、およびフェニトインより選択されるSUBCYP2C19;(iii) デキストロメトルファン、デシプラミン、およびメトプロロールより選択されるSUBCYP2D6;ならびに (iv) エプレレノン、ミダゾラム、シンバスタチン、アルフェンタニル、デキストロメトルファン (dextrormethorphan)、オメプラゾール、エリスロマイシン、コルチゾール、ミダゾラム、キニジン (quindine)、およびトリアゾラムより選択されるSUBCYP3A4のうちの1つまたは複数が含まれ得るが、これらに限定されない。詳細には、開示される組成物のための適切な基質には、カフェイン、オメプラゾール、デキストロメトルファン、およびエプレレノン、ならびに任意で塩基性緩衝剤のうちの1つまたは複数が含まれてよく、塩基性緩衝剤には炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸カルシウムが含まれ得るが、これらに限定されない。任意で、開示される混和物は、CYP2C9、CYP2E1、およびCYP3A5のうちの1つまたは複数に対する基質を含み得る。
【0051】
任意で、開示される組成物は、N-アセチルトランスフェラーゼ (NAT)、メチルトランスフェラーゼ、UDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT)、スルホトランスフェラーゼ、および酸化酵素、またはそれらの組み合わせより選択される非CYP450酵素に対する基質をさらに含み得る。任意で、組成物は、UGT1A1、UGT1A4、UGT1A6、UGT1A9、およびUGT2B7からなる群より選択されるUDPグルクロノシルトランスフェラーゼ (UGT) のアイソフォームに対する基質をさらに含む。任意で、開示される組成物はケトプロフェンをさらに含み得る。
【0052】
本明細書に開示される方法において用いられる基質は、固体剤形中の薬学的組成物として製剤化することができるが、任意の薬学的に許容される剤型を用いることができる。例示的な固体剤形には、錠剤、カプセル剤、小袋 (sachet)、トローチ剤、散剤、丸剤、または顆粒剤が含まれるが、これらに限定されず、固体剤形は例えば即時放出型であってよい。いくつかの態様では、基質を同じ剤形中に製剤化することができる(例えば、すべて錠剤型)。他の態様では、基質を異なる剤形中に製剤化することができる(例えば、一部を錠剤型で他を粉末型)。
【0053】
いくつかの態様において、開示される組成物は緩衝液を含み得る。例えば、組成物は塩基性緩衝剤を含んでよく、これには炭酸水素ナトリウムおよび/または炭酸カルシウムが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの態様において、開示される組成物は、組成物を水に溶解した場合に塩基性pHを有し得る。例えば、組成物は、水に溶解した場合に、約7.5、8.0、8.5、または9.0よりも高いpHを有し得る。
【0055】
本明細書に開示される方法において用いられる基質は、担体を含む薬学的組成物として製剤化することができる。例えば、担体は、タンパク質、炭水化物、糖、タルク、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸カルシウム、およびデンプン-ゼラチンペーストからなる群より選択され得る。
【0056】
本明細書に開示される方法において用いられる基質は、1種類または複数種類の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝液、湿潤剤、崩壊剤、および発泡剤を含む薬学的組成物として製剤化することができる。充填剤には、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、および様々なデンプンが含まれ得;結合剤の例は、様々なセルロースおよび架橋ポリビニルピロリドン、微結晶セルロース、例えばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102、微結晶セルロース、ならびにケイ化微結晶セルロース(ProSolv SMCC(商標))である。圧縮されるべき粉末の流動性に作用する作用物質を含む適切な滑沢剤には、コロイド性二酸化ケイ素、例えばAerosil(登録商標)200、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲルが含まれ得る。甘味剤の例には、任意の天然または人工甘味剤、例えば、ショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、チクロ、アスパルテーム、およびアセサルフェーム (acsulfame) が含まれ得る。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、風船ガム香味料、および果物香味料などである。保存剤の例には、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、エチルアルコールもしくはベンジルアルコールなどのアルコール、フェノールなどのフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの四級化合物が含まれ得る。
【0057】
本明細書に開示される方法において用いられる基質は、任意の適切な経路により送達されるための薬学的組成物として製剤化することができる。例えば、薬学的組成物は、経口経路、舌下経路、または頬側経路により投与することができる。投与するための薬学的組成物の例には、カプセル、シロップ、濃縮物、粉末、および顆粒が含まれる。適切なカプセルには、硬ゼラチンカプセルまたはソフトゲル(別称、軟ゲラチンカプセル)が含まれ得る。
【0058】
本明細書に開示される方法において用いられる基質は、当技術分野で周知の従来の手法に従って有効成分を標準的な薬学的担体または希釈剤と組み合わせることによって調製された従来の剤形で投与することができる。これらの手法は、所望の調製物に適するように、該成分を混合する段階、造粒する段階、および圧縮または溶解する段階を含む。
【0059】
キットもまた本明細書において開示する。開示されるキットは、患者における代謝活性を試験するためおよび/または患者の表現型を決定するために用いることができる。例えば、キットは、1種類もしくは複数種類のCYP450アイソフォームの代謝活性を試験かつ現型を決定するために、用いることができる。開示されるキットは、本明細書において開示される組成物および/または基質のいずれかを構成要素として含み得る。いくつかの態様において、開示されるキットは、(i) 唾液試料を採取して輸送するための容器(例えば、サリベット);(ii) UPLC-MS/MSアッセイ法を行うための構成要素および/もしくは試薬;ならびに/または (iii) UPLC-MS/MSアッセイ法の結果の報告書を作成するための構成要素、からなる群より選択される1つまたは複数のさらなる構成要素を含む。
【実施例
【0060】
以下の実施例は説明であり、特許請求の範囲に記載された対象の範囲を限定することは意図されていない。
【0061】
実施例1. プローブ混合物および唾液試料を使用するCYP450表現型解析
A. 材料および方法
I. コホート特徴
健常成人、主として18~65歳の白人の大学生および大学教員を、2013年2月から2015年4月までの研究に登録した。除外基準には、カフェイン、デキストロメトルファン、またはオメプラゾールに対するアレルギーが含まれた。他の除外基準は、妊娠、妊娠の可能性、または慢性疾患であった。
【0062】
II. 唾液採取プロトコールv1.
患者に以下のように指示する。
1. 9 pm以降、カフェインまたは関連製品(例えば、茶、コーヒー、チョコレート、ガラナ抽出物)を含むものは一切飲食しない。
2. 起床後、1杯の水を飲む。1時間待って、少なくとも0.5 mlの唾液試料を遠心管中に吐き出す(典型的に、気泡を含まない500 μLの液体が必要である)。この唾液試料に「0」というラベルを貼る。遠心管にあなたのイニシャルを記入し、これを冷凍庫に入れる。注意:唾液を無理に出そうとしないで(すなわち、より多く出そうとしないで)、既に口の中にあるものだけを出す。
3. Robitussin(登録商標)錠剤(デキストロメトルファン 30 mg)2個、Prilosec OTC(登録商標)(オメプラゾール 20 mg)1個、およびカフェイン錠剤(カフェイン 200 mg)1個を服用する。その時間を実験ノートに記録する。
4. 2~3時間おきに1杯の水を飲む。
5. 丸剤を服用してから4、6、および8時間後に、少なくとも0.5 mlの唾液試料を遠心管中に吐き出し、遠心管にそれぞれ「4、6、および8」というラベルを貼る。遠心管にイニシャルを記入し、これを冷凍庫に入れる。その時間を記録する。
【0063】
III. 唾液抽出、別称、口腔液抽出
方法A
1. 唾液500 μLを回収して新たな1.5 mL遠心管に入れ、さらに識別子および試料番号0、4、6、または8のラベルを貼る。他の3つの唾液試料を用いてこれを繰り返す。4つの試料すべてに10 μL内部標準液(すなわち、最終的な機器分析における有効な定量化のため)を入れ、490 μLのメタノールを添加し、ボルテックスすることにより混合する。
2. 試料を(HeidelbergまたはBarthの研究所における) -80℃の冷凍庫中で凍結させる。
3 ひとたび凍結した時点で(典型的に約60~90分を要する)試料を冷凍庫から取り出し、融解させる。
4. 試料をEppendorf遠心機で13,100 RPMにて3分間遠心分離する。
5. 対象番号および試料番号0、4、6、または8のラベルを貼った新たな1.5 mL遠心管中に入れ子状態になった3 kDa分子量カットオフ遠心フィルター(Amicon Ultra 0.5 mLまたはVWR 0.5 mL)に、500 μLの上清を移す。
6. 遠心管および篩を13,100 RPMにて30分間遠心分離する。
7. 段階6からの遠心管の底から350 μLの上清(フロースルー)を採取し、試料を識別するために研究番号および0、4、6、または8のラベルを貼ったHPLCバイアル中で、それを150 μLの脱イオンH2Oと混合する。
【0064】
方法B
1. 試料を-80℃の冷凍庫中で凍結させて、唾液タンパク質を変性させる(Francis et al., Arch. Oral. Biol. 45(7):601-606を参照されたい)。
2. ひとたび凍結した時点で(約60~90分を要する)試料を冷凍庫から取り出し、融解させる。
3. 試料をEppendorf遠心機で13,100 RPMにて5分間遠心分離して、粘液性のおよび変性した(凍結による)唾液タンパク質を沈殿させる。
4. 唾液上清を新たな1.5 mL遠心管中にデカントする。唾液250 μLを回収して別の新たな1.5 mL遠心管に入れる。さらに識別子および試料番号0、4、6、または8のラベルを貼る。他の3つの唾液試料を用いてこれを繰り返す。4つの試料すべてに50 μL内部標準液(すなわち、最終的な機器分析における有効な定量化のため)を入れ、200 μLのメタノールを添加し、ボルテックスすることにより混合する。
5. 試料をEppendorf遠心機で13,100 RPMにて5分間遠心分離して、唾液から残存タンパク質および脂質を沈殿させる。
6. 対象番号および試料番号0、4、6、または8のラベルを貼った新たな1.5 mL遠心管中に入れ子状態になった3 kDa分子量カットオフ遠心フィルター(Amicon Ultra 0.5 mLまたはVWR 0.5 mL)に上清を移す。
7. 試料を13,100 RPMにて30分間遠心分離する。
8. 段階7からの遠心管の底から上清(フロースルー)を採取し、300μl HPLCバイアルインサート中に入れる。
【0065】
IV. UHPLC-MS/MS法
初期データ収集のために、2つのUHPLC MS/MS法を開発した(方法1および方法2)。
【0066】
方法1に関するUHPLCパラメータを表1に記載する。方法1に関するMS/MS機器パラメータを表2に記載する。各基質および代謝産物に関する最適な電圧設定は、50%メタノール/水溶液中の各標準物質のシリンジポンプ直接注入により決定した。方法1に関する最適化質量分析計パラメータを表3に列挙する。
【0067】
方法2に関するUHPLCパラメータを表4に記載する。方法2に関するMS/MS機器パラメータを表5に記載する。方法2に関する最適化質量分析計パラメータを表6に列挙する。
【0068】
0.06~1000 ng/mlの外部標準物質について、各データ点において複数回の注入を用いて、検量線を作成した。AB Sciex Multiquantソフトウェアバージョン2.0.2を用いて、生成物の定量化を行った。
【0069】
(表1)方法1 UHPLCパラメータ
ACN‐アセトニトリル、THF‐テトラヒドロフラン、FA‐ギ酸、Sol'n‐溶液、Inj.‐注入。
【0070】
(表2)方法1 MS/MSパラメータ
T‐温度、ESI‐エレクトロスプレーイオン化。
【0071】
(表3)方法1 最適化質量分析計パラメータ
【0072】
(表4)方法2 UHPLCパラメータ
ACN‐アセトニトリル、FA‐ギ酸、Sol'n‐溶液、Inj.‐注入。
【0073】
(表5)方法2 MS/MSパラメータ
T‐温度、ESI‐エレクトロスプレーイオン化。
【0074】
(表6)方法2 最適化MS/MSパラメータ
【0075】
B. 結果
健常成人において、CYP1A2のプローブとしてのカフェイン、CYP2C19のプローブとしてのオメプラゾール、およびCYP2D6のプローブとしてのデキストロメトルファンについて、表現型解析結果を作成した。
【0076】
I. CYP1A2表現型のカフェインプローブ
カフェインは、表現型解析研究におけるプローブとして一般的に使用されており、本発明者らの混合物中で使用される他のプローブと相互作用しない。研究は、カフェインによって決定されるCYP1A2表現型の報告の点で異なる。異なる研究者らは、ヒストグラムを一峰性、二峰性、または三峰性と記載している(Zhou et al., Drug Metab. Rev. 41(2):89-295を参照されたい)。主として白人対象である本発明者らのコホートにおいて、本発明者らは、小さな端モードを形成する外れ値を伴った、主に一峰性の分布を認める。本発明者らの端モードは低代謝群に対応し、本発明者らの対象の7.8%に相当する。これは、5%の低代謝群を報告したオーストラリア系白人の別の研究と一致する(Ilett et al., Clin. Pharmacol. Ther. 54(3):317-322を参照されたい)。
【0077】
II. CYP2C19表現型のオメプラゾールプローブ
オメプラゾールは、尿および血漿でのいくつかの研究において、CYP2C19の表現型解析プローブとして使用されているが、唾液では使用されたことがない。オメプラゾールは、表現型解析研究におけるプローブとして一般的に使用されており、本発明者らの混合物中で使用される他のプローブと相互作用しない。本発明者らの表現型解析結果から、他の基盤 (matrix) における他の研究と一致する複雑な多峰性ヒストグラムが示される。唾液CYP2C19代謝表現型ヒストグラムの異なるモード内の個体の頻度は、公知の遺伝子多型に基づいて報告された表現型の公知の頻度と非常によく一致する。文献は、代謝表現型の範囲をパーセンテージとして報告している:超迅速 (2±4)、迅速 (18±17)、高 (51±15)、中間 (34±17)、低 (7±8) (McGraw 2014)。文献によって報告されたパーセンテージは、本発明者らの知見との密接な一致を示す:超迅速 (2.4)、迅速 (9.6)、高 (49.4)、中間 (31.3)、および低 (7.2)。
【0078】
本発明者らは、オメプラゾールおよび5OH-オメプラゾールの両方の濃度が非常に低いことに起因して、いくつかの唾液試料においてオメプラゾールの定量化に関連する問題を経験した。これらの問題は、オメプラゾールの投薬量を増加しかつ緩衝液を添加した即時放出製剤を作製することによって克服した。
【0079】
III. CYP2D6表現型のデキストロメトルファンプローブ
デキストロメトルファンは、表現型解析研究におけるプローブとして一般的に使用されており、本発明者らの混合物中で使用される他のプローブと相互作用しない。文献によって報告された、遺伝子解析および表現型解析に基づく検証研究によるCYP2D6代謝表現型のパーセンテージは、以下の通りであった:超迅速 (約1~2%)、高 (約77~92%)、中間 (約2~11%)、および低 (約5~10%)(Gaedigk et al., Clin Pharma Ther 83(2): 234-242;Crews et al., Clin Pharma Ther 95(4): 376-382;およびFang et al. Pharmacogenomics J 14(6): 564-572を参照されたい)。文献によって報告されたパーセンテージは、本発明者らの知見との密接な一致を示す:超迅速 (2.3%)、高 (83.9%)、中間 (9.2%)、および低 (4.6%)。
【0080】
考察
カフェイン、デキストロメトルファン、およびオメプラゾールの経口混合物は、唾液を基盤として使用してCYP1A2、CYP2D6、およびCYP2C19を同時に探索する初めてのものである。結果から、主として白人の他のコホートにおける代謝表現型の公知の割合との良好な一致が示される。
【0081】
唾液のカフェイン/パラキサンチン代謝比は、カフェイン代謝表現型の許容される尺度である。遺伝的性質はCYP1A2触媒活性のおよそ42%を明らかにするにすぎず、一般的な多型は酵素活性よりもむしろ酵素誘導をもたらすため (Klein, Winter et al. 2010)、基質プローブを使用する表現型検査が必要である。
【0082】
オメプラゾールは、尿および血漿におけるCYP2C19活性の許容されるプローブである。しかしながら、唾液におけるプローブとしてのオメプラゾールの有用性は、これまで報告されていない。これは、オメプラゾールおよびその代謝産物5-ヒドロキシオメプラゾールの唾液中濃度が低いことによる可能性が高い。しかしながら、本発明者らは、唾液中のカフェイン、デキストロメトルファン、オメプラゾール、およびそれらの主要な代謝産物を同時に測定し得る非常に感度の高いアッセイ法を開発することができた。
【0083】
Houらによる初期の論文では、中国人コホートにおいて唾液はCYP2D6表現型解析の適切な基盤であると判定した(Hou et al., Clin. Pharmacol. Ther. 59(4):411-417を参照されたい)。彼らは、50 mg即時放出(カプセル中の薬物粉末)の3時間後に決定された健常対象における変曲点 (MR=14) を記載したが、これは低代謝群MRの始まりを示すものである。腎疾患患者の別の研究において、彼らは、より低い30 mgの即時放出用量(カプセル中の薬物粉末)を使用し、3時間時点の変曲点はより高かった (MR=33)(Hou et al., Clin Pharmacol Ther 59(4):411-417を参照されたい)。30 mg遅延放出用量の6時間後のデキストロメトルファンに関する本発明者らの変曲点は、MR=27.5である。Yehらは、即時放出製剤(Medicon(登録商標)15mg)か持続放出製剤(Detusiv(登録商標)60mg)かにかかわらず、血漿において安定したMRが得られ、そのMRが何時間にもわたって維持されることを示したため(Yeh et al., J. Biomed. Sci. 10(5):552-564を参照されたい)、研究間でMRが類似していることは驚くことではない。Huらによる研究では、単回15 mg用量のMediconの3時間後および5時間後に採取された唾液試料からのデキストロメトルファンMRの反復測定に関して、顕著な変動性が見出された一方で、4時間試料は境界有意であり、6時間試料は許容可能であった(Hu et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 285(3):955-960)を参照されたい。これらのデータは、本発明者らのデータの外部検証を提供する。
【0084】
今後の研究は、プローブ混合物が使用される研究対象集団を拡大し、プローブセットを拡大することを目的としている。本発明者らの予備研究では、唾液解析用の混合物に添加するためのCYP3A4プローブを調べた。プローブ基質は、安全性の考慮、およびCYP3A4プローブとしての有用性の以前の報告に基づいて選択した。本発明者らが試験した基質には、アトルバスタチン、コルチゾール、エプレレノン、エリスロマイシン、デキストロメトルファン、およびオメプラゾールが含まれた。唾液中濃度は、遊離の薬物濃度および代謝産物濃度を表す。したがって、十分な親薬物および代謝産物が唾液中に存在するためには、血漿タンパク質結合は低く、代謝産物の生成および拡散の能力は高くなくてはならない。本発明者らの予備結果から、エリスロマイシンが唾液CYP3A4プローブの最も有望な候補であることが示される。遺伝的性質はCYP3A4活性のごく一部を明らかにするにすぎないため、CYP3A4活性を探索するための迅速で安価な方法の必要性が緊急に必要とされる。
【0085】
参照文献
【0086】
実施例2. CYP3A4表現型のエプレレノンプローブ
唾液中において同定され得るCYP3A4プローブ基質およびそれらの代謝産物について、広範な探索を行った。単回用量による副作用が最小であるかまたはない、安全なプローブのみを考慮した。候補はまた、それらが唾液腺などの生体膜を通過し、唾液中に存在し得るように、タンパク質結合が低いかまたはない、および親油性が顕著であるなどの、最適PKパラメータに基づいて選択した。本発明者らは大部分のプローブ親薬物を唾液中において同定することができたが、代謝産物は、定量化するには低すぎる場合、および/または唾液中において非常に短寿命である場合が多かった。しかしながら、試験した他のCYP3A4プローブとは異なり、エプレレノンおよびその一次代謝産物である6β-ヒドロキシエプレレノンはいずれも、唾液中に十分に高濃度で見出された。
【0087】
初期データ収集のために、UHPLC MS/MS法を開発した。UHPLCパラメータを表7に記載する。MS/MS機器パラメータを表8に記載する。最適化質量分析計パラメータを表9に列挙する。方法2に関するUHPLCパラメータを表4に記載する。方法2に関するMS/MS機器パラメータを表5に記載する。方法2に関する最適化質量分析計パラメータを表6に列挙する。AB Sciex Multiquantソフトウェアバージョン2.0.2を用いて、生成物の定量化を行った。
【0088】
(表7)方法3 UHPLCパラメータ
ACN‐アセトニトリル、AA‐酢酸、Sol'n‐溶液、Inj.‐注入、MeOH‐メタノール。
【0089】
(表8)方法3 MS/MSパラメータ
T‐温度、ESI‐エレクトロスプレーイオン化、*エプレレノンおよび代謝産物にはAPCIを使用し、他のすべてのものにはESIを使用した。
【0090】
(表9)方法3 最適化MS/MSパラメータ
【0091】
表10は、エプレレノン、およびCYP3A4によって形成されるその代謝産物6β-ヒドロキシエプレレノンについての、唾液log10モル代謝比を示す。
【0092】
(表10)log10エプレレノン/6β-ヒドロキシエプレレノン代謝比
【0093】
表10に示されるように、代謝比は異なる時点にわたってかなり安定している。エプレレノンはおよそ1.5時間というTmaxを示すため、分布相は2時間経ってから終わるであろうという理由で、3時間の時点が最良の選択であり得る。22~44歳の健常ボランティア5名に、市販のジェネリックエプレレノン50 mgを与えた。予測通り、値の範囲はそれほど広範ではない。構成的なCYP3A4変動性は、約5倍と推定される;しかしながら、疾病、阻害、および誘導関連の相互作用が、変動性を増強する場合があり [1,2]、異なる集団では40~50倍の範囲と推定される [3]。
【0094】
参照文献
【0095】
実施例3. 唾液中の代謝産物を検出するための最適化製剤
カフェイン、デキストロメトルファン、およびオメプラゾールの市販 (over the counter) 製剤を用いた本発明者らの最初の研究において、本発明者らはいくつかの問題を特定した。200 mgというカフェイン用量は一部の個体には非常に高く、彼らは心配および不安を訴えた。デキストロメトルファン代謝産物であるデキストロルファンは、市販製剤を服用した個体の唾液中に非常に低濃度で見出される場合があった。加えて、5-ヒドロキシオメプラゾールおよびオメプラゾールもまた、一部の個体の唾液中に低濃度で見出された。これらの問題を克服するため、本発明者らは、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カルシウムと共にカフェイン、デキストロメトルファン、およびオメプラゾールを含有する即時放出錠剤を製剤化することに着手した。炭酸水素塩は、剤形としてのオメプラゾールの安定性および胃内での安定性を強化するために添加した。腸溶コーティングまたは塩基保護がなければ、オメプラゾールは酸性胃液中で急速に分解する。表11は、混合物試作品について試験したいくつかの製剤を列挙する。製剤#4を反復代謝比測定に用いた。
【0096】
(表11)唾液中の親化合物および代謝産物について試験した製剤
【0097】
以下の表12から、代謝比測定値は吸収相中では不安定である可能性があるが、排出相中では安定し得ることが示される。
【0098】
(表12)製剤の反復投与後のlog10オメプラゾール/5-ヒドロキシオメプラゾール代謝比測定値
太字イタリック体の値は、対応のある両側t検定により有意に異なった。
X‐不適切な試料に起因する欠損データ。
【0099】
すべての個体が、0.5時間または1時間の時点で唾液中の最大オメプラゾール濃度を示した。親化合物および代謝産物濃度は4時間後に検出限界に近づくため、4時間後の時点は報告しなかった。データから、3時間(+/- 0.5時間)が、即時放出オメプラゾールの再現性のある代謝比測定に最適な時点であり得ることが示される。
【0100】
唾液におけるオメプラゾール代謝比測定値の変動性の原因は、錠剤が摂取された時の口および唾液の汚染による可能性がある。例えば、汚染は、錠剤型製剤からの残存粉末が口および唾液を汚染することによって起こり得る。したがって、製剤は、迅速な溶解を妨げない一方、口腔の粉末汚染を防ぐために、フィルムコーティングを用いて調製される。
【0101】
前述の説明において、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明に対して種々の置き換えおよび修正を行うことができることは、当業者に容易に明白であろう。本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の不在下で適切に行うことができる。使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として用いられており、そのような用語および表現の使用において、示され説明された特徴の任意の等価物またはその一部を排除する意図はなく、本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明を特定の態様および選択的特徴によって説明してきたが、当業者が、本明細書に開示される概念を修正および/または変形する手段を講じてもよいこと、ならびにそのような修正および変化形が本発明の範囲内であると見なされることが、理解されるべきである。
【0102】
本明細書において、いくつかの特許文献および非特許文献の引用がなされる。引用された参照文献は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における用語の定義と引用された参照文献における用語の定義との間に矛盾がある場合、その用語は本明細書における定義に基づいて解釈されるべきである。
図1
図2
図3