(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】風邪症候群陽性者のスクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20240730BHJP
G01K 13/20 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B5/01 100
G01K13/20 341Z
(21)【出願番号】P 2022091803
(22)【出願日】2022-06-06
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】523190491
【氏名又は名称】中村 浩士
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩士
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/047041(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0245873(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111182470(CN,A)
【文献】特表2010-531154(JP,A)
【文献】特開2021-074464(JP,A)
【文献】中村浩士, 他2名,経穴センサ・計測システムを用いた心拍ならびに呼吸ゆらぎの研究,日本呼吸器学会誌,2022年04月10日,Vol.11増刊号,p.205,第62回日本呼吸器学会学術講演会プログラム・抄録集
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風邪症候群陽性者の右翳風及び左翳風の表面温度をそれぞれ計測する右検温部及び左検温部と、
前記風邪症候群陽性者が自覚する右咽頭部の違和感に関する右違和感情報及び左咽頭部の違和感に関する左違和感情報を入力する左右違和感入力部と、
前記右検温部で計測された右翳風の表面温度と前記左検温部で計測された左翳風の表面温度との差分値を求める翳風温度差演算部と、
前記左右違和感入力部で入力された右違和感情報と左違和感情報との一致度を求める左右違和感演算部と、
前記翳風温度差演算部で求められた差分値及び前記左右違和感演算部で求められた一致度に基づいて、前記風邪症候群陽性者の重症度情報を出力する評価部と、
前記評価部から出力された重症度情報に基づいて、前記風邪症候群陽性者の重症度を報知する報知部を備えており、
前記評価部は、前記差分値が第1所定値以上、かつ、前記一致度が低い場合に、前記重症度情報として重症度が高いことを示す高重症度情報を出力し、
前記第1所定値は0.8~1.2℃の範囲から選択される値である
ことを特徴とする風邪症候群陽性者のスクリーニング装置。
【請求項2】
前記右検温部で計測された右翳風の表面温度と前記左検温部で計測された左翳風の表面温度の平均値を求める翳風平均温度演算部を備え、
前記評価部は、前記差分値が第2所定値以上、前記一致度が高い、かつ、前記平均値が第4所定値以上である場合又は前記差分値が第3所定値以上前記第1所定値未満、前記一致度が低い、かつ、前記平均値が前記第4所定値以上である場合に、前記重症度情報として重症度が中程度であることを示す中重症度情報を出力し、
前記第2所定値は0.4~0.6℃の範囲から選択される値、前記第3所定値は0.2~0.3℃の範囲から選択される値、前記第4所定値は34~36℃の範囲から選択される値である
ことを特徴とする請求項1に記載の風邪症候群陽性者のスクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PCR検査によってコロナウイルス等の風邪症候群を引き起こすウイルスに感染したとされる者(以下「風邪症候群陽性者」という。)が真の陽性者か否かを評価し、投薬開始又は投薬量の指標となる重症度情報の報知を行うスクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風邪症候群陽性者に対する投薬の要否や投薬量を決定する際は、通常腋下温を計測し腋下温がある閾値(例えば37.5度)を超えている場合は投薬が必要と判断し、さらに高い場合(例えば38.0度超)は投薬量を増やすといった判断がなされていた。
しかし、その病態は病原体そのものの特性や集団における人と人との接触の様式、病原体に対する免疫や抵抗力の身体的個人差、行動変容、正常性バイアス、外的環境など、様々な要因によって変化する。
例えば、PCR検査による陽性者50人の腋下温を計測した結果は最低値36.0度、最高値38.7度、平均値36.7度であったが、平均値を下回っていても真の陽性者である可能性が高く、すぐに投薬を開始した方が良いと診断されるケースや、逆に平均値を超えていても擬陽性者である可能性があり、経過観察した方が良いと診断されるケースが認められた。
【0003】
ところで、特許文献1(特許第6951526号公報)には、ユーザの耳の後ろの皮膚の位置に対応する肌結合部(112)に2つの検温素子(122)を設け、両耳の後ろの皮膚に接触させて体温データを収集する点(段落0047及び
図4,5を参照)や、ユーザの体温履歴データを取得することによって入退室管理を行う入退室制御システム(段落0112を参照)が記載されており、特許文献2(特許第5656978号公報)には、左右の耳の下の後頭部の体温を表示し、体温のバランスによって身体の歪みの状態を検査できる体温分布測定装置が記載されている(段落0024及び
図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6951526号公報(特開2021-171623号公報)
【文献】特許第5656978号公報(国際公開2011/125349号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の入退室制御システムは両耳の後ろの体温データを収集してはいるものの、それらのデータをどのように処理するのか不明であり、特許文献2記載の体温分布測定装置は体温のバランスによって身体の歪みの状態を検査できるとされてはいるものの、体温のバランスと身体の歪みの状態との関係が不明である。
そして、これらは風邪症候群陽性者が真の陽性者か否かを評価してスクリーニングを行うものではなく、まして被検査者の左右の体温バランスと所定の自覚症状とを組み合わせて、被検査者の状態を評価し報知することについては記載も示唆もされていない。
本発明は、風邪症候群陽性者について計測した左右翳風部の表面温度(客観評価項目)及び聴取した左右咽頭部の違和感に関する自覚症状(主観評価項目)に基づいて、各風邪症候群陽性者が真の陽性者か否かを的確に評価し、その評価結果を報知することによって、各風邪症候群陽性者に対する指示や投薬量を決定する際の参考情報を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の風邪症候群陽性者のスクリーニング装置は、
風邪症候群陽性者の右翳風及び左翳風の表面温度をそれぞれ計測する右検温部及び左検温部と、
前記風邪症候群陽性者が自覚する右咽頭部の違和感に関する右違和感情報及び左咽頭部の違和感に関する左違和感情報を入力する左右違和感入力部と、
前記右検温部で計測された右翳風の表面温度と前記左検温部で計測された左翳風の表面温度との差分値を求める翳風温度差演算部と、
前記左右違和感入力部で入力された右違和感情報と左違和感情報との一致度を求める左右違和感演算部と、
前記翳風温度差演算部で求められた差分値及び前記左右違和感演算部で求められた一致度に基づいて、前記風邪症候群陽性者の重症度情報を出力する評価部と、
前記評価部から出力された重症度情報に基づいて、前記風邪症候群陽性者の重症度を報知する報知部を備えており、
前記評価部は、前記差分値が第1所定値以上、かつ、前記一致度が低い場合に、前記重症度情報として重症度が高いことを示す高重症度情報を出力し、
前記第1所定値は0.8~1.2℃の範囲から選択される値であることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の風邪症候群陽性者のスクリーニング装置において、
前記右検温部で計測された右翳風の表面温度と前記左検温部で計測された左翳風の表面温度の平均値を求める翳風平均温度演算部を備え、
前記評価部は、前記差分値が第2所定値以上、前記一致度が高い、かつ、前記平均値が第4所定値以上である場合又は前記差分値が第3所定値以上前記第1所定値未満、前記一致度が低い、かつ、前記平均値が前記第4所定値以上である場合に、前記重症度情報として重症度が中程度であることを示す中重症度情報を出力し、
前記第2所定値は0.4~0.6℃の範囲から選択される値、前記第3所定値は0.2~0.3℃の範囲から選択される値、前記第4所定値は34~36℃の範囲から選択される値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明の風邪症候群陽性者のスクリーニング装置によれば、客観評価項目である左右翳風部の表面温度の差分値及び主観評価項目である右違和感情報と左違和感情報との一致度に基づいて、各風邪症候群陽性者が真の陽性者か否かを的確に評価し、その評価結果を報知するので、各風邪症候群陽性者に対する指示や投薬量を決定する際の参考情報を提供することができる。
【0009】
請求項2に係る発明の風邪症候群陽性者のスクリーニング装置によれば、請求項1に係る発明の効果に加え、客観評価項目である左右翳風部の表面温度の平均値を加味して、より詳細な評価結果を報知するので、各風邪症候群陽性者に対する指示や投薬量を決定する際のより詳細な参考情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る風邪症候群陽性者のスクリーニング装置のブロック図。
【
図2】実施例1の翳風温度及び咽頭部違和感の左右差による判定範囲を示す図。
【
図3】実施例1の処理手段におけるアルゴリズムを示すフロー図。
【
図4】実施例2に係る風邪症候群陽性者のスクリーニング装置のブロック図。
【
図5】実施例2の翳風温度及び咽頭部違和感の左右差による判定範囲を示す図。
【
図6】実施例2の処理手段におけるアルゴリズムを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は実施例1に係る風邪症候群陽性者のスクリーニング装置のブロック図である。
図1に示すように、実施例1に係る風邪症候群陽性者のスクリーニング装置は、右検温部2及び左検温部3を有する翳風温計測手段1、右検温部2で計測された右側にある翳風の表面温度(以下「右翳風温」という。)と左検温部3で計測された左側にある翳風の表面温度(以下「左翳風温」という。)との差分値を求める翳風温度差演算部4、風邪症候群陽性者Pが自覚する右咽頭部の違和感に関する右違和感情報及び左咽頭部の違和感に関する左違和感情報を入力する左右違和感入力部5、左右違和感入力部5で入力された右違和感情報と左違和感情報との一致度を求める左右違和感演算部6、翳風温度差演算部4で求められた差分値及び左右違和感演算部6で求められた一致度に基づいて、風邪症候群陽性者Pの重症度情報を出力する評価部7並びに評価部7から出力された重症度情報に基づいて、風邪症候群陽性者Pの重症度を報知する報知部8を備えている。
なお、翳風温度差演算部4、左右違和感演算部6及び評価部7は、右検温部2から出力される右翳風温の計測値、左検温部3から出力される左翳風温の計測値及び左右違和感入力部5から出力される右違和感情報と左違和感情報を受けて、症候群陽性者Pの重症度情報を出力する処理手段9を構成している。
【0013】
翳風温計測手段1は、翳風(えいふう)と呼ばれる耳のつけ根の後ろにあるツボ(口を大きく開けるとくぼむ部分)の表面温度を計測する手段であって、
図1に示すようにU字型の弾性体の両側に右検温部2及び左検温部3を有している。
風邪症候群陽性者Pの重症度を知りたい場合は、風邪症候群陽性者Pの右耳のつけ根の後ろにある翳風(以下「右翳風」という。)に右検温部2を当て、同じく左耳のつけ根の後ろにある翳風(以下「左翳風」という。)に左検温部3を当てて、右翳風温及び左翳風温を計測する。そうすると、計測された右翳風温及び左翳風温の計測値は翳風温度差演算部4に送られ、右翳風温と左翳風温との差分値が演算される。
【0014】
また、左右違和感入力部5は、風邪症候群陽性者Pが自覚する右咽頭部の違和感に関する右違和感情報及び左咽頭部の違和感に関する左違和感情報を入力するものであって、入力された右違和感情報及び左違和感情報は、左右違和感演算部6に送られ、右違和感情報と左違和感情報との一致度が演算される。
さらに、翳風温度差演算部4で求められた差分値及び左右違和感演算部6で求められた一致度は、評価部7に送られ、風邪症候群陽性者Pの重症度情報が出力される。
すると、報知部8は、評価部7から出力された重症度情報に基づいて、風邪症候群陽性者Pの重症度が高いか否かを報知し、医療従事者は、報知された重症度情報を参考に風邪症候群陽性者Pに対する指示や投薬量を決定することができる。
【0015】
図2はPCR検査によってCOVID-19の一種であるオミクロン株に感染していると判定されたPCR陽性者50人について、右翳風温、左翳風温、右翳風温度と左翳風温との差分値及び咽頭部違和感の左右差の有無をグラフ化したものである。
そして、
図2にプロットされているPCR陽性者50人に対して、医師がさらに診察したところ、PCR検査で陽性とされた者であっても、右翳風温度と左翳風温との差分値が小さい場合には、咽頭部違和感の左右差が有っても無くても感染による症状は軽く、経過観察した方が良いと診断されるケースがほとんどであった。逆に、右翳風温度と左翳風温との差分値が1℃以上あり、かつ、咽頭部違和感の左右差が有る場合は感染による症状が重く、すぐに投薬等の治療が必要と診断されるケースがほとんどであった。
そのため、実施例1においては、
図2に濃いグレーで示す領域にプロットされ、かつ、咽頭部違和感の左右差が有る場合(
図2では7人)には、重症度が高いことを示す高重症度情報を出力することとした。すなわち、
図2は、実施例1の翳風温度及び咽頭部違和感の左右差による判定範囲を示す図となっている。
【0016】
図3は、上記の知見に基づいて定めた実施例1の処理手段9におけるアルゴリズムを示すフロー図である。
処理手段9は、右検温部2、左検温部3で計測された右翳風温及び左翳風温の計測値が入力され、さらに左右違和感入力部5から右違和感情報及び左違和感情報が入力されると処理を開始し、
図3の(1)~(6)に示す処理フローに従って演算や判定を実行し、低重症度情報又は高重症度情報を出力して処理を終了する。
次に各処理(1)~処理(6)について説明する。
【0017】
処理(1)<差分値の演算>
入力された右翳風温と左翳風温の計測値との差の絶対値である差分値を演算する。
処理(2)<差分値の評価>
演算した差分値が1℃以上か否か判定し、No(1℃未満)の場合は処理(3)に進み、Yes(1℃以上)の場合は処理(4)に進む。
処理(3)<重症度情報の出力1>
感染による症状が軽いことを示す低重症度情報を出力する。
処理(4)<一致度の演算>
入力された右違和感情報と左違和感情報との一致度を演算する(右違和感情報と左違和感情報が異なっていれば一致度が低いことを示すL値、右違和感情報と左違和感情報が同様であれば一致度が高いことを示すH値を出力する)。
処理(5)<一致度の評価>
演算した一致度が低いか否か判定し、No(H値)の場合は処理(3)に進み、Yes(L値)の場合は処理(6)に進む。
処理(6)<重症度情報の出力2>
感染による症状が重いことを示す高重症度情報を出力する。
【実施例2】
【0018】
図4は実施例2に係る風邪症候群陽性者のスクリーニング装置のブロック図である。
図4に示すように、実施例2に係る風邪症候群陽性者のスクリーニング装置は、右翳風温と左翳風温の平均値を求める翳風平均温度演算部10を備え、翳風温度差演算部4、翳風平均温度演算部10、左右違和感演算部6及び評価部11が、処理手段13を構成している点と、報知部12が風邪症候群陽性者Pの重症度が中程度についても報知する点で異なっており、翳風温計測手段1、右検温部2、左検温部3、翳風温度差演算部4、左右違和感入力部5及び左右違和感演算部6は同じなので、同じ番号を用い説明は省略する。
【0019】
そして、翳風温度差演算部4で求められた差分値、翳風平均温度演算部10で求められた平均値及び左右違和感演算部6で求められた一致度は、評価部11に送られ、風邪症候群陽性者Pの重症度情報が出力される。
すると、報知部12は、評価部11から出力された重症度情報に基づいて、風邪症候群陽性者Pの重症度が高いか中程度か低いかを報知し、医療従事者は、報知された重症度情報を参考に風邪症候群陽性者Pに対する指示や投薬量を決定することができる。
【0020】
図5は
図2と同様、PCR検査によってCOVID-19の一種であるオミクロン株に感染していると判定されたPCR陽性者50人について、右翳風温、左翳風温、右翳風温度と左翳風温との差分値及び咽頭部違和感の左右差の有無をグラフ化したものである。
そして、
図5にプロットされているPCR陽性者50人に対して、医師が詳しく診察したところ、PCR検査で陽性とされた者であっても、右翳風温度と左翳風温との差分値が非常に小さい場合には、咽頭部違和感の左右差が有っても無くても感染による症状は軽く、経過観察した方が良いと診断されるケースがほとんどであった。逆に、右翳風温度と左翳風温との差分値が1℃以上あり、かつ、咽頭部違和感の左右差が有る場合は感染による症状が重く、すぐに投薬等の治療が必要と診断されるケースがほとんどであった。
さらに、右翳風温度と左翳風温との差分値が0.5℃以上、咽頭部違和感の左右差が無い、かつ、右翳風温度と左翳風温の平均値が35℃以上である場合又は同差分値が0.3℃以上1℃未満、咽頭部違和感の左右差が有る、かつ、同平均値が35℃以上である場合は、感染による症状が中程度で、自宅療養が必要と診断されていることが分かった。
そのため、実施例2においては、
図5に濃いグレーで示す領域にプロットされ、かつ、咽頭部違和感の左右差が有る場合には、重症度が高いことを示す高重症度情報を出力するだけでなく、薄いグレー及び濃いグレーで示す領域にプロットされ、かつ、咽頭部違和感の左右差が無い場合(
図5では8人)又はさらに薄いグレー及び薄いグレーで示す領域にプロットされ、かつ、咽頭部違和感の左右差が有る場合(
図5では3人)には、重症度が中程度であることを示す中重症度情報を出力することとした。すなわち、
図5は、実施例2の翳風温度及び咽頭部違和感の左右差による判定範囲を示す図となっている。
【0021】
図6は、上記の知見に基づいて定めた実施例2の処理手段13におけるアルゴリズムを示すフロー図である。
処理手段13は、右検温部2、左検温部3で計測された右翳風温及び左翳風温の計測値が入力され、さらに、左右違和感入力部5から右違和感情報及び左違和感情報が入力されると処理を開始し、
図6の(1)~(13)に示す処理フローに従って演算や判定を実行し、低重症度情報、中重症度情報又は高重症度情報を出力して処理を終了する。
次に各処理(1)~処理(13)について説明する。
【0022】
処理(1)<差分値の演算>
入力された右翳風温と左翳風温の計測値との差の絶対値である差分値を演算する。
処理(2)<差分値の評価1>
演算した差分値が1℃以上か否か判定し、No(1℃未満)の場合は処理(3)に進み、Yes(1℃以上)の場合は処理(6)に進む。
処理(3)<差分値の評価2>
演算した差分値が0.5℃以上か否か判定し、No(0.5℃未満)の場合は処理(4)に進み、Yes(0.5℃以上)の場合は処理(9)に進む。
処理(4)<差分値の評価3>
演算した差分値が0.3℃以上か否か判定し、No(0.3℃未満)の場合は処理(5)に進み、Yes(0.3℃以上)の場合は処理(12)に進む。
処理(5)<重症度情報の出力1>
感染による症状が軽いことを示す低重症度情報を出力する。
【0023】
処理(6)<一致度の演算>
入力された右違和感情報と左違和感情報との一致度を演算する(右違和感情報と左違和感情報が異なっていれば一致度が低いことを示すL値、右違和感情報と左違和感情報が同様であれば一致度が高いことを示すH値を出力する)。
処理(7)<一致度の評価1>
演算した一致度が低いか否か判定し、No(H値)の場合は処理(3)に進み、Yes(L値)の場合は処理(8)に進む。
処理(8)<重症度情報の出力2>
感染による症状が重いことを示す高重症度情報を出力する。
【0024】
処理(9)<平均値の演算>
入力された右翳風温の計測値と左翳風温の計測値の平均値を演算する。
処理(10)<平均値の評価1>
演算した平均値が35℃以上か否か判定し、No(35℃未満)の場合は処理(5)に進み、Yes(35℃以上)の場合は処理(11)に進む。
処理(11)<重症度情報の出力3>
感染による症状が中程度であることを示す中重症度情報を出力する。
【0025】
処理(12)<平均値の評価2>
演算した平均値が35℃以上か否か判定し、No(35℃未満)の場合は処理(5)に進み、Yes(35℃以上)の場合は処理(13)に進む。
処理(13)<一致度の評価2>
演算した一致度が低いか否か判定し、No(H値)の場合は処理(5)に進み、Yes(L値)の場合は処理(11)に進む。
【0026】
実施例1及び2の風邪症候群陽性者のスクリーニング装置に関する変形例を列記する。
(1)実施例1及び2では、左右違和感入力部5によって右違和感情報及び左違和感情報を入力するが、入力の態様としては、違和感が有る無いの2択、違和感を強く感じる、ある程度感じる、感じないの3択のいずれかで入力すると、左右違和感演算部6による右違和感情報と左違和感情報との一致度の演算を容易に行うことができる。また、3択にすると一致度のレベルを3段階以上に設定でき、より詳細に評価できる可能性がある。
(2)実施例1及び2では、報知部8、12によって風邪症候群陽性者Pの重症度を報知するが、報知の態様としては、ディスプレイへの表示、LEDの点灯、消灯及び点滅等並びにスピーカーやイヤホン等からの音声等から、少なくとも1つを適宜選択できる。
また、ディスプレイに表示する場合には、重症度だけでなく症候群陽性者Pに対する指示や投薬量の目安を併せて表示しても良い。
【0027】
(3)実施例1の処理手段9においては、処理(2)において、演算した差分値が1℃以上か否か判定し、No(1℃未満)の場合は処理(3)に進み、Yes(1℃以上)の場合は処理(4)に進んだが、差分値の閾値は風邪症候群の種類によって異なることが予想されるので、閾値は0.8~1.2℃の範囲から第1所定値を選択できるようにした方が良い。
(4)実施例2の処理手段13においては、処理(2)において、演算した差分値が1℃以上か否か判定し、No(1℃未満)の場合は処理(3)に進み、Yes(1℃以上)の場合は処理(6)に進んだが、上記変形例(3)と同様に、差分値の閾値は0.8~1.2℃の範囲から第1所定値を選択できるようにした方が良い。
また、処理(3)において、演算した差分値が0.5℃以上か否か判定し、No(0.5℃未満)の場合は処理(4)に進み、Yes(0.5℃以上)の場合は処理(9)に進んだが、上記変形例(3)と同じ理由により、処理(3)における差分値の閾値は0.4~0.6℃の範囲から第2所定値を選択できるようにした方が良い。
さらに、処理(4)において、演算した差分値が0.3℃以上か否か判定し、No(0.3℃未満)の場合は処理(5)に進み、Yes(0.3℃以上)の場合は処理(12)に進んだが、上記変形例(3)と同じ理由により、処理(4)における差分値の閾値は0.2~0.3℃の範囲から第3所定値を選択できるようにした方が良い。
加えて、処理(10)において、演算した平均値が35℃以上か否か判定し、No(35℃未満)の場合は処理(5)に進み、Yes(35℃以上)の場合は処理(11)に進み、処理(12)において、演算した平均値が35℃以上か否か判定し、No(35℃未満)の場合は処理(5)に進み、Yes(35℃以上)の場合は処理(13)に進んだが、平均値の閾値も風邪症候群の種類によって異なることが予想されるので、処理(10)及び処理(12)における平均値の閾値は34~36℃の範囲から第4所定値を選択できるようにした方が良い。
【符号の説明】
【0028】
1 翳風温計測手段 2 右検温部 3 左検温部
4 翳風温度差演算部 5 左右違和感入力部 6 左右違和感演算部
7、11 評価部 8、12 報知部 9、13 処理手段
P 風邪症候群陽性者