(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】誘導システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20240730BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20240730BHJP
G05D 1/46 20240101ALI20240730BHJP
G05D 1/611 20240101ALI20240730BHJP
G05D 1/69 20240101ALI20240730BHJP
【FI】
G01C21/26 A
B66F9/24 Z
G05D1/46
G05D1/611
G05D1/69
(21)【出願番号】P 2022102845
(22)【出願日】2022-06-27
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】卯路 彰
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-52629(JP,A)
【文献】特開2019-104554(JP,A)
【文献】特開2018-181285(JP,A)
【文献】特開2003-341599(JP,A)
【文献】特開2018-17997(JP,A)
【文献】特開2023-152406(JP,A)
【文献】特開2023-163885(JP,A)
【文献】特開2023-163886(JP,A)
【文献】特開2023-167901(JP,A)
【文献】特開2023-167902(JP,A)
【文献】特開2023-177532(JP,A)
【文献】特開2024-339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G05D 1/00 - 1/87
B66F 9/00 - 11/04
G08G 1/00 - 99/00
B65G 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホバリング可能な複数の無人飛行体と、
有人搬送車と、
管理装置と、を備える誘導システムであって、
前記無人飛行体は、発光する発光部を有し、
前記管理装置は、
施設マップおよび荷役位置を記憶する記憶部と、
前記有人搬送車の位置と、前記荷役位置と、前記施設マップとに基づいて、前記有人搬送車が前記荷役位置へと向かうルートを決定するルート決定部と、
決定された前記ルート上方に前記複数の無人飛行体を整列させるための配置位置を決定する配置決定部と、を有し、
前記複数の無人飛行体は、前記配置位置でホバリングしながら発光して前記有人搬送車を誘導する、誘導システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記発光部を制御する発光制御部をさらに有し、
前記発光制御部は、荷の載置位置の高さに応じて、前記発光部の発光色を変更する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項3】
前記載置位置を有する棚をさらに備え、
前記棚は、色の異なる複数の段を有し、
前記発光制御部は、前記載置位置の前記段の色に対応する色で前記発光部を発光させる、請求項2に記載の誘導システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記発光部を制御する発光制御部をさらに有し、
前記発光部は、前記有人搬送車を停止させるための停止発光色を有し、
前記有人搬送車は、複数であって、
前記配置決定部は、前記複数の有人搬送車のルートが重なるとき、一方の前記有人搬送車を停止させることを決定し、
前記発光制御部は、停止させる方の前記有人搬送車を誘導していた前記複数の無人飛行体のうち、少なくとも1つの前記無人飛行体の前記発光部を前記停止発光色で発光させる、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項5】
前記配置決定部は、前記複数の有人搬送車のルートが重なるとき、
前記荷役位置に係る荷の載置位置から遠い方の前記有人搬送車を停止させることを決定する、請求項4に記載の誘導システム。
【請求項6】
スピーカと、前記スピーカを前記無人飛行体の方角に向ける角度変更部とを有するノイズキャンセル部をさらに備え、
前記スピーカは、前記無人飛行体が発する騒音と逆位相の音声信号を前記無人飛行体に向けて発する、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項7】
前記ノイズキャンセル部は、マイクをさらに有し、
前記管理装置は、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体の数と、前記無人飛行体の位置と、前記マイクと前記無人飛行体との距離と、前記スピーカと前記無人飛行体との距離と、を入力データとし、前記無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体の数と、前記無人飛行体の位置と、前記マイクと前記無人飛行体との距離と、前記スピーカと前記無人飛行体との距離と、を入力されると、前記無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに備え、
前記スピーカは、前記ニューラルネットによって生成された音声信号を前記無人飛行体に向けて発する、請求項6に記載の誘導システム。
【請求項8】
前記ノイズキャンセル部は、指向性を有するマイクをさらに有し、
前記角度変更部は、さらに、前記マイクを前記無人飛行体の方角に向けるよう構成されており、
前記管理装置は、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体と前記マイクとの距離と、前記無人飛行体と前記スピーカとの距離と、を入力データとし、前記無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、前記マイクが集音した前記無人飛行体の騒音と、前記無人飛行体と前記マイクとの距離と、前記無人飛行体と前記スピーカとの距離と、を入力されると、前記マイクが向けられた前記無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに有し、
前記スピーカは、前記ニューラルネットによって生成された音声信号を前記無人飛行体に向けて発する、請求項6に記載の誘導システム。
【請求項9】
前記無人飛行体は、さらに、スピーカを有し、
前記管理装置は、さらに、音声制御部を有し、
前記音声制御部は、屈曲位置および前記荷役位置のいずれかまたは両方を前記スピーカに報知させる、請求項1に記載の誘導システム。
【請求項10】
前記管理装置は、前記発光部を制御する発光制御部をさらに有し、
前記発光制御部は、前記有人搬送車と所定の距離内の前記無人飛行体の前記発光部に発光させず、
前記音声制御部は、発光しない前記発光部を有する前記無人飛行体の前記スピーカによって報知する、請求項9に記載の誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体と有人搬送車とを備えた誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫内で使用される有人搬送車は、オペレータが操作することで動作するように構成されている。有人搬送車は、例えば、フォークリフトからなる。フォークリフトは、フォークを使って荷役するように構成されている。
【0003】
ところで、ホバリング可能な1つの無人飛行体と、有人搬送車と、無人飛行体を制御する管理装置と、を備えた誘導システムが知られている(特許文献1等参照)。
【0004】
無人飛行体は、路面に対して誘導画像を投影するプロジェクタを備えている。誘導画像は、例えば、特定した方向を指し示す矢印であって、有人搬送車の前方の路面に投影される。これにより、有人搬送車を操作中のオペレータは、誘導画像を確認することで、荷役位置に誘導されるように構成されている。
【0005】
ところで、従来の誘導システムでは、1つの無人飛行体が有人搬送車を誘導するので、有人搬送車を操作するオペレータが荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識することが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、無人飛行体を使用して有人搬送車を誘導するとともに、オペレータに荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識させることができる誘導システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る誘導システムは、
ホバリング可能な複数の無人飛行体と、
有人搬送車と、
管理装置と、を備える誘導システムであって、
無人飛行体は、発光する発光部を有し、
管理装置は、
施設マップおよび荷役位置を記憶する記憶部と、
有人搬送車の位置と、荷役位置と、施設マップとに基づいて、有人搬送車が荷役位置へと向かうルートを決定するルート決定部と、
決定されたルート上方に複数の無人飛行体を整列させるための配置位置を決定する配置決定部と、を有し、
複数の無人飛行体は、配置位置でホバリングしながら発光して有人搬送車を誘導することを特徴とする。
【0009】
上記誘導システムは、好ましくは、
管理装置が、発光部を制御する発光制御部をさらに有し、
発光制御部は、荷の載置位置の高さに応じて、発光部の発光色を変更する。
【0010】
上記誘導システムは、好ましくは、
載置位置を有する棚をさらに備え、
棚は、色の異なる複数の段を有し、
発光制御部は、載置位置の段の色に対応する色で発光部を発光させる。
【0011】
上記誘導システムは、好ましくは、
管理装置は、発光部を制御する発光制御部をさらに有し、
発光部が、有人搬送車を停止させるための停止発光色を有し、
有人搬送車は、複数であって、
配置決定部は、複数の有人搬送車のルートが重なるとき、一方の有人搬送車を停止させることを決定し、
発光制御部は、停止させる方の有人搬送車を誘導していた複数の無人飛行体のうち、少なくとも1つの無人飛行体の発光部を停止発光色で発光させる。
【0012】
上記誘導システムは、好ましくは、
配置決定部は、複数の有人搬送車のルートが重なるとき、載置位置から遠い方の有人搬送車を停止させることを決定する。
【0013】
上記誘導システムは、好ましくは、
スピーカと、スピーカを無人飛行体の方角に向ける角度変更部とを有するノイズキャンセル部をさらに備え、
スピーカは、無人飛行体が発する騒音と逆位相の音声信号を無人飛行体に向けて発する。
【0014】
上記誘導システムは、好ましくは、
ノイズキャンセル部が、マイクをさらに有し、
管理装置は、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体の数と、無人飛行体の位置と、マイクと無人飛行体との距離と、スピーカと無人飛行体との距離と、を入力データとし、無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体の数と、無人飛行体の位置と、マイクと無人飛行体との距離と、スピーカと無人飛行体との距離と、を入力されると、無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに備え、
スピーカは、ニューラルネットによって生成された音声信号を無人飛行体に向けて発する。
【0015】
上記誘導システムは、好ましくは、
ノイズキャンセル部が、指向性を有するマイクをさらに有し、
角度変更部は、さらに、マイクを無人飛行体の方角に向けるよう構成されており、
管理装置は、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体とマイクとの距離と、無人飛行体とスピーカとの距離と、を入力データとし、無人飛行体の騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、マイクが集音した無人飛行体の騒音と、無人飛行体とマイクとの距離と、無人飛行体とスピーカとの距離と、を入力されると、マイクが向けられた無人飛行体の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されたニューラルネットをさらに有し、
スピーカは、ニューラルネットによって生成された音声信号を無人飛行体に向けて発する。
【0016】
上記誘導システムは、好ましくは、
無人飛行体が、さらに、スピーカを有し、
管理装置が、さらに、音声制御部を有し、
音声制御部は、屈曲位置および荷役位置のいずれかまたは両方をスピーカに報知させる。
【0017】
上記誘導システムは、好ましくは、
管理装置が、発光部を制御する発光制御部をさらに有し、
発光制御部が、有人搬送車と所定の距離内の無人飛行体の発光部に発光させず、
音声制御部は、発光しない発光部を有する無人飛行体のスピーカによって報知する。
【発明の効果】
【0018】
上記誘導システムは、オペレータに荷役位置までの距離および方向等を直感的に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る誘導システムを示し、Aは側面図であり、Bは平面図である。
【
図2】
図1に示された誘導システムの斜視図である。
【
図3】
図1に示された誘導システムの機能ブロック図である。
【
図5】無人飛行体のホバリング高さの例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る誘導システムの一実施形態について説明する。図中におけるX方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する方向である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る誘導システムSを示し、Aは側面図であり、Bは平面図である。
図2は、
図1に示された誘導システムSの斜視図であり、
図3は、誘導システムSの機能ブロック図である。
図1および
図2に示すように、誘導システムSは、有人搬送車1と、無人飛行体2(2a、2b、2c、2d)と、管理装置3と、ノイズキャンセル部4とを備えている。
図1において無人飛行体2は、9つ示されているが、本発明における無人飛行体2の数はこれに限定されない。
【0022】
<棚>
図4は、
図1に示された棚R1の正面図である。棚R1には、有人搬送車1の荷役対象である荷Wが載置されている。荷Wが載置されている位置、または、これから荷Wが載置される位置が、本発明の「載置位置」に相当する。棚Rは、複数の段(本実施形態では4つ)を有する。複数の段の底板R1aの正面は、段数に応じた色でそれぞれ着色されている。本実施形態では、棚Rは、段数に応じた色が段の底板R1aごとにつけられているが単なる一例であって、例えば、段の天板ごとに着色されていてもよい。底板R1aは、例えば、色テープによって着色されてもよく、着色方法を特に限定されない。本実施形態では、底板R1aは、1段目を黄色、2段目を桃色、3段目を青色、4段目を緑色でそれぞれ着色されている。
【0023】
<有人搬送車>
有人搬送車1は、オペレータOによって操作されるフォークリフトであるが、単なる一例であって本発明に係る有人搬送車1はこのフォークリフトに限定されない。例えば、自律して動作する無人モードと、オペレータOの操作によって動作する有人モードとを有する有人無人兼用のフォークリフトであってもよい。有人搬送車1は、管理装置3と通信可能に構成されている。
【0024】
図1および
図2に示すように、有人搬送車1は、車体10と、車体10の前方に配置されたフォーク11と、を備えている。オペレータOは、荷Wをフォーク11によってすくい上げて搬送する。
【0025】
図3に示すように、有人搬送車1は、さらに、位置検出部12を備えている。位置検出部12は、有人搬送車1の位置を検出するとともに、検出した有人搬送車1の位置を管理装置3に送信する。
【0026】
<無人飛行体>
図1および
図2に示すように、無人飛行体2は、いわゆるドローンと称される飛行体であって、本体と、本体の四方に配置された4つのプロペラと、プロペラを回転させる動力部(図示略)と、を備えている。
【0027】
図3に示すように、無人飛行体2は、さらに、発光部20と、飛行制御部22と、記憶部23と、スピーカ25と、を備えている。無人飛行体2は、管理装置3と通信可能に構成されている。
【0028】
発光部20は、LEDといった発光部材(図示略)を有し、本体の周囲に設けられている。発光部20は、発光色を複数有する。また、発光部20は、有人搬送車1を停止させるための停止発光色を有する。この停止発光色は、本実施形態では赤色で構成されているが単なる一例であって、特に限定されない。なお、発光部20が設けられる位置は単なる一例であって、発光部20は、例えば、プロペラに設けられていてもよい。
【0029】
飛行制御部22は、無人飛行体2の位置を公知技術によって検出するとともに、プロペラの回転を制御し、無人飛行体2を管理装置3から受信した配置位置まで飛行させたり、配置位置でホバリングさせたりする。
【0030】
記憶部23は、有人搬送車1を誘導するための音声Vを記憶している。音声Vは、「○m」、「先を左折です」、「先、目的地です」、「この先、障害物があります」、「ご注意ください」、「停止してください」等を含む。
【0031】
スピーカ25は、本体に配置されており、オペレータOに向かって音声Vを出力する。
【0032】
<管理装置>
管理装置3は、例えば、サーバコンピュータであって、不図示の記憶手段および演算手段を有する。記憶手段には、サーバコンピュータを本実施形態に係る管理装置3として機能させるためのプログラムが記憶されている。
【0033】
図3に示すように、管理装置3は、記憶部30と、ルート決定部31と、配置決定部32と、発光制御部33と、音声制御部34と、ニューラルネット35と、を備えている。
【0034】
記憶部30は、施設マップ、荷役位置および載置位置を記憶する。施設マップには、棚Rの位置、棚Rの高さ、各棚Rの各段の色、通行路の位置、障害物の位置が含まれている。また、施設マップには、通行路の幅も記憶されている。本実施形態では、管理装置3は、複数の有人搬送車1を管理しており、記憶部30は、複数の有人搬送車1に係る荷役位置および載置位置を記憶している。
【0035】
ルート決定部31は、有人搬送車1の位置と、荷役位置と、施設マップとに基づいて、有人搬送車1が荷役位置へと向かうルート(以下、単に「ルート」という)を決定する。ルート決定部31は、例えば、有人搬送車1と荷役位置とを結ぶ最短のルートを決定したり、または、オペレータOの過去の走行ルート、通行路の車幅、通行路の状態(段差など)を考慮してルートを決定したりしてもよい。
【0036】
配置決定部32は、決定されたルート上方に複数の無人飛行体2を整列させるための配置位置を決定する。より詳細には、配置決定部32は、ルート上における直行位置、屈曲位置、荷役位置の上方、およびその他の位置の上方にそれぞれ無人飛行体2を配置する。また、配置決定部32は、複数の無人飛行体2間の水平距離およびホバリング高さH(以下、単に「高さH」という)が一定になるよう配置位置を決定する。無人飛行体2の高さHは、オペレータOの前方の視界を遮らないよう、オペレータOの頭部位置よりも高いか、または低い方が好ましい。無人飛行体2間の水平距離は、例えば、1m~10mの間で固定されていてもよい。本実施形態では、当該水平距離Q1は、5mに構成されている。
【0037】
配置決定部32は、複数の有人搬送車1のルートが重なるとき、一方の有人搬送車1が重なっているルート部分を通過するまで他の有人搬送車1を停止させることを決定する。配置決定部32は、好ましくは、載置位置から遠い方の有人搬送車1を停止させるよう決定する。これにより、荷役作業が円滑に進行する。配置決定部32は、停止を決定した有人搬送車1を誘導する無人飛行体2のグループを他の有人搬送車1のルートに配置させないよう配置位置を決定する。配置決定部32は、一方の有人搬送車1が重なっているルート部分を通過すると、他方の有人搬送車1の停止を解除することを決定する。
【0038】
図1に示すように、発光制御部33は、所定の距離Q1をおいて等間隔に配置された無人飛行体2の発光部20に、ルート上における直行位置、屈曲位置および荷役位置に応じた色で発光させる。本実施形態では、直行位置では、無人飛行体2bに水色で発光させ、屈曲位置では、無人飛行体2cに紫色で発光させる。これにより、誘導システムSは、屈曲位置をオペレータOに適切に認識させることができる。そして、発光制御部33は、荷役位置では、無人飛行体2dに載置位置の段の色に応じた色で発光させる。
【0039】
図4に示すように、載置位置は4段目にあり、4段目の底板R1aの正面は、緑色で着色されている。したがって、発光制御部33は、荷役位置上方に配置された無人飛行体2dの発光部20に緑色で発光させる。これにより、誘導システムSは、載置位置の高さをオペレータOに直感的に認識させることができる。また、誘導システムSは、距離Q1を所定の距離で固定しているので、無人飛行体2の数によって、屈曲位置、荷役位置までの距離をオペレータOに直感的に認識させることができる。
【0040】
また、発光制御部33は、各無人飛行体2の発光部20を走行方向に流れるように周期的に点滅させて、その流れ点滅効果によって有人搬送車1を誘導させてもよい。または、発光制御部33は、直行位置上方の無人飛行体2bの発光部20のみ点滅させ、屈曲位置上方および荷役位置上方の無人飛行体2c、2dの発光部20は点灯させておいてもよい。さらに別の発光方法として、発光制御部33は、屈曲位置上方および荷役位置上方の無人飛行体2c、2dの発光部20のみを点滅させてもよい。誘導システムSは、このように、各位置に応じて発光部20を特定のパターンで点灯、点滅することにより、オペレータOに直感的にルートの方向、各位置関係等を認識させることができる。
【0041】
また、発光制御部33は、有人搬送車1の前方数メートルの位置において発光なしスペースQ2を設け、その発光なしスペースQ2上方の無人飛行体2aに発光させない。これは、オペレータOの視線が上方または下方に集中し、オペレータOが前方を認識できなくなることを防止するためである。すなわち、発光制御部33は、発光なしスペースQ2を設けることにより、オペレータOの視線を前方に向かせ、運転中の安全性を向上させる。なお、有人搬送車1が移動することにより発光なしスペースQ2もそれに伴って移動するので、発光制御部33は、発光なしスペースQ2上方内に位置することになった無人飛行体2の発光をさらに停止させる。
【0042】
また、発光制御部33は、配置決定部32によって、停止させられることを決定された有人搬送車1を誘導していた複数の無人飛行体2のうち、少なくとも1つの無人飛行体2の発光部20を停止発光色で発光させる。これにより、誘導されている有人搬送車1の走行の停止を促すことができる。
【0043】
音声制御部34は、発光なしスペースQ2の上方に配置された無人飛行体2のスピーカ25を制御して、屈曲位置および荷役位置のいずれかまたは両方ならびにその他の情報を、オペレータOに報知させる。報知させる音声Vは、例えば、「15m先を左折です」、「30m先、目的地です」、「この先、障害物あり。ご注意ください」などでもよい。当該音声Vは、記憶部30に記憶されている「○m」、「先を左折です」、「先、目的地です」、「この先、障害物があります。」、「ご注意ください」を適宜組み合わされ生成されてもよい。誘導システムSは、これら音声Vによる報知によって、オペレータOにさらに直感的に屈曲位置、荷役位置などを認識させることができる。また、音声制御部34は、配置決定部32によって停止させられることを決定された有人搬送車1に対して、音声「停止してください」によってオペレータOに報知してもよい。
【0044】
ニューラルネット35は、後で説明するマイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2の数と、無人飛行体2の位置と、マイク40と無人飛行体2との距離と、後で説明するスピーカ42と無人飛行体2との距離と、を入力データとし、騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによってあらかじめ学習させられている。そして、ニューラルネット35は、マイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2の数と、無人飛行体2の位置と、マイク40と無人飛行体2との距離と、スピーカ42と無人飛行体2との距離と、を入力されると、騒音を消すための逆位相の音声信号を生成する。
【0045】
<ノイズキャンセル部>
図1および
図2に示すように、ノイズキャンセル部4は、棚Rの上面に複数配置されている。
図3に示すように、複数のノイズキャンセル部4は、マイク40と、角度変更部41と、スピーカ42と、をそれぞれ有する。ノイズキャンセル部4は、管理装置3と通信可能に構成されている。
【0046】
マイク40は、無人飛行体2からの騒音を集音するよう構成されている。集音された無人飛行体2の騒音信号は、ニューラルネット35に送信される。
【0047】
ニューラルネット35は、受信した無人飛行体2の騒音信号と、無人飛行体2の数と、無人飛行体2の位置と、マイク40と無人飛行体2との距離と、スピーカ42と無人飛行体2との距離とに基づいて、騒音を消すための逆位相の音声信号を生成し、生成した音声信号をスピーカ42に送信する。
【0048】
角度変更部41は、ジンバル等といった方向を変更させる部材で構成されており、スピーカ42に連結されている。角度変更部41は、スピーカ42を無人飛行体2の方角に向けるよう構成されている。より詳細には、角度変更部41は、スピーカ42との距離が一番短い無人飛行体2の方角にスピーカ42を向ける。角度変更部41は、1つの無人飛行体2に対して、1つのスピーカ42を向けるよう構成されてもよい。
【0049】
スピーカ42は、指向性を有し、この指向性の角度は、例えば、5度~30度、または、5度~20度でもよい。スピーカ42は、ニューラルネット35から入力された音声信号を無人飛行体2に発する。スピーカ42は、角度変更部41によって無人飛行体2の方角に向けられており、しかも、いわゆる超指向性を有することにより、無人飛行体2の騒音を適切に減少させることができる。
【0050】
図2を参照して、各無人飛行体2の役割についてあらためて説明する。有人搬送車1の前方2つの無人飛行体2aは、発光せず、音声Vによって有人搬送車1を誘導する。無人飛行体2と屈曲位置との間、および屈曲位置と荷役位置との間に配置された無人飛行体2bは、直行位置用の色で発光し、有人搬送車1を誘導する。そして、屈曲位置に配置された無人飛行体2cは、屈曲位置用の色で発光し、荷役位置に配置された無人飛行体2は、載置位置の段に対応する色で発光し屈曲位置および荷役位置をそれぞれ示して有人搬送車1を誘導する。なお、有人搬送車1が無人飛行体2の下方を通過すると、無人飛行体2は、役割を終え、管理装置3によって新たな誘導位置に配置されたり、充電するために所定場所に向かったりしてもよい。さらに、無人飛行体2は、複数の有人搬送車1のルートが重なり、有人搬送車1を停止させる必要があるときには、停止発光色や音声Vによって有人搬送車1の走行の停止を促す。
【0051】
上記構成を備えていることにより、誘導システムSは、荷役位置までの距離および方向等をオペレータOに直感的に認識させることができる。しかも、誘導システムSは、無人飛行体2を固定距離Q1ごとに配置させるので、オペレータOの視認性を向上させることができる。さらに、誘導システムSは、必要時には、有人搬送車1の停止を促すこともできる。上述のように、誘導システムSは、従来の有人搬送車1の構成を特に変更することなく運用することができる。また、誘導システムSは、無人飛行体2の騒音に対応してノイズキャンセル部4によって無人飛行体2の騒音を減少させることもできる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態に係る誘導システムSについて説明してきたが、本発明に係る誘導システムSは、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態は、以下のように変形してもよく、また、以下変形例と組み合わせて実施してもよい。
【0053】
(1)誘導システムSは、例えば、
図5に示すように、無人飛行体2を載置位置の高さに配置してもよい。この場合、配置決定部32は、無人飛行体2が載置位置の高さに配置されるよう配置位置を決定する。
【0054】
(2)誘導システムSは、有人搬送車1の位置を施設内に設けられたカメラや無人飛行体2に設けたカメラによって認識してもよい。この場合、有人搬送車1は、位置認識部を備えなくてもよい。
【0055】
(3)誘導システムSは、発光制御部33によって、例えば、荷Wの種類ごとまたは載置位置の高さに応じた間隔で発光部20を点滅させてもよい。
【0056】
(4)誘導システムSは、スピーカ25が発する音声Vをブザー、チャイム等によって構成し、その音声Vによって屈曲位置および荷役位置ならびに停止指令をオペレータOに報知してもよい。
【0057】
(5)マイク40は、指向性を有し、角度変更部41は、さらに、マイク40を無人飛行体2の方角に向けるよう構成されていてもよい。そして、ニューラルネット35は、マイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2とマイク40との距離と、無人飛行体2とスピーカ42との距離と、を入力データとし、騒音の逆位相の音声信号を出力データとする教師データによって学習させられ、マイク40が集音した無人飛行体2の騒音と、無人飛行体2とマイク40との距離と、無人飛行体2とスピーカ42との距離と、を入力されると、マイク40が向けられた無人飛行体2の騒音を消すための逆位相の音声信号を生成するよう構成されていてもよい。これにより、スピーカ42は、ニューラルネット35によって生成された音声信号をマイク40が向けられた無人飛行体2に向けて発することにより、無人飛行体2の騒音を減少させる。マイク40の指向性の角度は、例えば、5度~30度、または、5度~20度でもよい。上記実施形態では、ニューラルネット35が複数の無人飛行体2の騒音に対する逆位相の音声信号を生成する構成に対し、この変形例では、ニューラルネット35が各無人飛行体2の騒音に対する逆位相の音声信号を生成する構成であるので、より適切な消音効果が期待できる。
【符号の説明】
【0058】
1 有人搬送車
10 車体
11 フォーク
12 位置検出部
2 無人飛行体
20 発光部
22 飛行制御部
23 記憶部
25 スピーカ
3 管理装置
30 記憶部
31 ルート決定部
32 配置決定部
33 発光制御部
34 音声制御部
35 ニューラルネット
4 ノイズキャンセル部
40 マイク
41 角度変更部
42 スピーカ
H ホバリング高さ
O オペレータ
Q1 無人飛行体間の水平距離
Q2 発光なしスペース
R 棚
S 誘導システム
V 音声
W 荷