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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】半導体装置及びパワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240730BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20240730BHJP
   H02M 7/5387 20070101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652M
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/78 652T
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/78 652K
H01L29/78 652Q
H01L29/91 D
H01L29/91 F
H01L29/06 301M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H02M7/5387 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022185920
(22)【出願日】2022-11-21
(62)【分割の表示】P 2020502079の分割
【原出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2023022141
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2018031148
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 浩隆
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/007670(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103335(WO,A1)
【文献】特開2015-198228(JP,A)
【文献】国際公開第2010/004802(WO,A1)
【文献】特表2014-531752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/872
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 29/861
H02M 7/5387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において前記第1端子がカソードに接続されるように設けられたワイドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードと、
前記第2端子にアノードが接続され、前記第1端子にカソードが接続されているダイオードと、
を備え、
前記ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記ダイオードの順方向しきい値電圧よりも低
かつ、前記ショットキーバリアダイオードの許容可能なDC定格電流が前記スイッチング素子の許容可能なDC定格電流未満である、半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオードは、前記スイッチング素子のボディダイオードであり、
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、同一チップに形成され
前記ショットキーバリアダイオードの許容可能なDC定格電流が前記スイッチング素子のボディダイオードが許容可能なDC定格電流未満である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ショットキーバリアダイオードは、複数設けられており、
前記複数のショットキーバリアダイオードは、平面視で所定間隔ごとに配置されている
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、複数設けられており、
前記複数のショットキーバリアダイオードの配列方向において、前記ショットキーバリアダイオードと前記スイッチング素子とは交互に配置されている
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ショットキーバリアダイオードと前記スイッチング素子との配列方向において、前記ショットキーバリアダイオードの大きさは、前記スイッチング素子の大きさよりも大きい
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ダイオードは、前記スイッチング素子のボディダイオードであり、
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、別体として設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子は、プレーナゲート型MOSFETである
請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体である
請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記スイッチング素子は、
前記第1端子としての第1上側端子、前記第2端子としての第2上側端子、及び前記制御端子としての上側制御端子を有する上側スイッチング素子と、
前記第1端子としての第1下側端子、前記第2端子としての第2下側端子、及び前記制御端子としての下側制御端子を有する下側スイッチング素子と、
を含み、
前記ショットキーバリアダイオードは、
前記第1上側端子と前記第2上側端子との間において前記第1上側端子がカソードに接続されるように設けられた上側ショットキーバリアダイオードと、
前記第1下側端子と前記第2下側端子との間において前記第1下側端子がカソードに接続されるように設けられた下側ショットキーバリアダイオードと、
を含み、
前記ダイオードは、
前記第2上側端子にアノードが接続され、前記第1上側端子にカソードが接続されている上側ボディダイオードと、
前記第2下側端子にアノードが接続され、前記第1下側端子にカソードが接続されている下側ボディダイオードと、
を含み、
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記下側ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記上側ボディダイオード及び前記下側ボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記上側スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体であり、
前記下側ショットキーバリアダイオード及び前記下側スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体である
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において前記第1端子がカソードに接続されるように設けられたワイドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードと、
前記第2端子にアノードが接続され、前記第1端子にカソードが接続されているダイオードと、
前記スイッチング素子及び前記ショットキーバリアダイオードが実装されている基板と、
前記基板の少なくとも一部と前記スイッチング素子と前記ショットキーバリアダイオードと前記ダイオードとを封止する封止樹脂と、
を備え、
前記ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記ダイオードの順方向しきい値電圧よりも低
かつ、前記ショットキーバリアダイオードの許容可能なDC定格電流が前記スイッチング素子の許容可能なDC定格電流未満である
パワーモジュール。
【請求項12】
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、それぞれ複数設けられ、かつ前記基板上に一列に並ぶように配置され、
前記複数のショットキーバリアダイオードは並列に接続されており、
前記複数のスイッチング素子は並列に接続されている
請求項11に記載のパワーモジュール。
【請求項13】
前記ダイオードは、前記スイッチング素子のボディダイオードであり、
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、交互に配列されている
請求項11又は12に記載のパワーモジュール。
【請求項14】
ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有するとともに、前記第2上側端子にアノードが接続され、前記第1上側端子にカソードが接続されている上側ボディダイオードを有し、互いに並列に接続された複数の上側スイッチング素子と、
ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有するとともに、前記第2下側端子にアノードが接続され、前記第1下側端子にカソードが接続されている下側ボディダイオードを有し、互いに並列に接続された複数の下側スイッチング素子と、
ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2上側端子に接続され、カソードが前記第1上側端子に接続され、互いに並列に接続された複数の上側ショットキーバリアダイオードと、
ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2下側端子に接続され、カソードが前記第1下側端子に接続され、互いに並列に接続された複数の下側ショットキーバリアダイオードと、
前記上側スイッチング素子、前記下側スイッチング素子、前記上側ショットキーバリアダイオード、及び前記下側ショットキーバリアダイオードがそれぞれ実装される表面側金属層が形成された基板と、
前記基板の少なくとも一部と前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子と前記上側ショットキーバリアダイオードと前記下側ショットキーバリアダイオードと端子部材の一部とを封止する封止樹脂と、
を備え、
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記下側ショットキーバリアダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧は、前記上側ボディダイオード及び前記下側ボディダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧よりも低
前記基板は、前記上側スイッチング素子及び前記上側ショットキーバリアダイオードが表面に実装される第1表面側金属層と、前記下側スイッチング素子及び前記下側ショットキーバリアダイオードが表面に実装される第2表面側金属層とを有し、
前記第1表面側金属層と前記第2表面側金属層とが並べられた方向を第1方向とすると
前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の上側ショットキーバリアダイオードは、前記第1表面側金属層と前記第2表面側金属層が並べられた平面上において前記第1方向と直交する第2方向において互いに離間して前記第1表面側金属層に実装されており、
前記複数の下側スイッチング素子及び前記複数の下側ショットキーバリアダイオードは、前記第2方向において互いに離間して前記第2表面側金属層に実装されており、
前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の下側スイッチング素子は前記第2方向において交互に配置されており、
前記複数の上側ショットキーバリアダイオード及び前記複数の下側ショットキーバリアダイオードは前記第2方向において1つずつ交互に配置されており、
前記端子部材は、その厚さ方向において前記第1表面側金属層と間隔を空けて対向する入力端子部材を有し、
前記入力端子部材は、複数の接続部を有し、
前記複数の接続部は、前記複数の上側スイッチング素子の前記第2方向の間に配置され、前記第1方向において前記複数の下側スイッチング素子と対向しており、
前記複数の接続部は、前記複数の上側ショットキーバリアダイオードの前記第2方向の間に配置され、前記第1方向において前記複数の下側ショットキーバリアダイオードと対向しており、
前記複数の上側ショットキーバリアダイオードのアノードはそれぞれ、上側ダイオード用接続部材により前記第2表面側金属層に電気的に接続されており、
前記複数の下側ショットキーバリアダイオードのアノードはそれぞれ、下側ダイオード用接続部材により前記接続部に電気的に接続されている
パワーモジュール。
【請求項15】
前記基板は、前記第1表面側金属層が形成された第1基板と、前記第2表面側金属層が形成された第2基板とを有し、
前記パワーモジュールの平面視における前記第1方向において前記第1基板と前記第2基板とが並べられ、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記パワーモジュールの平面視において前記第1方向と直交する前記第2方向が長手方向となる長方形状に形成され
記複数の上側スイッチング素子の前記第2上側端子はそれぞれ、上側電力用接続部材により前記第2表面側金属層に電気的に接続されており、
前記複数の下側スイッチング素子の前記第2下側端子はそれぞれ、下側電力用接続部材により前記接続部に電気的に接続されている
請求項14に記載のパワーモジュール。
【請求項16】
前記第1基板は、上側制御配線部を有し、
前記第2基板は、下側制御配線部を有し、
前記上側スイッチング素子は、上側制御部材により前記上側制御端子と前記上側制御配線部とが接続されるものであり、
前記下側スイッチング素子は、下側制御部材により前記下側制御端子と前記下側制御配線部とが接続されるものであり、
前記上側スイッチング素子、前記上側ショットキーバリアダイオード、前記下側スイッチング素子、及び前記下側ショットキーバリアダイオードのそれぞれは、前記上側制御配線部と前記下側制御配線部との前記第1方向の間に配置されており、
前記上側制御配線部及び前記下側制御配線部は、前記第2方向に延びている
請求項15に記載のパワーモジュール。
【請求項17】
前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれは、グラファイト基板を有する
請求項15又は16に記載のパワーモジュール。
【請求項18】
前記第1基板は、前記第2方向における前記第1基板の熱伝導性が前記第1方向における前記第1基板の熱伝導性よりも低くなるように構成されており、
前記第2基板は、前記第2方向における前記第2基板の熱伝導性が前記第1方向における前記第2基板の熱伝導性よりも低くなるように構成されている
請求項17に記載のパワーモジュール。
【請求項19】
ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有するとともに、前記第2上側端子にアノードが接続され、前記第1上側端子にカソードが接続されている上側ボディダイオードを有し、互いに並列に接続された複数の上側スイッチング素子と、
ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有するとともに、前記第2下側端子にアノードが接続され、前記第1下側端子にカソードが接続されている下側ボディダイオードを有し、互いに並列に接続された複数の下側スイッチング素子と、
ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2上側端子に接続され、カソードが前記第1上側端子に接続され、互いに並列に接続された複数の上側ショットキーバリアダイオードと、
ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2下側端子に接続され、カソードが前記第1下側端子に接続され、互いに並列に接続された複数の下側ショットキーバリアダイオードと、
前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子がそれぞれ実装される表面側金属層が形成された基板と、
前記基板の少なくとも一部と前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子と端子部材の一部とを封止する封止樹脂と、
を備え、
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記下側ショットキーバリアダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧は、前記上側ボディダイオード及び前記下側ボディダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧よりも低く、
前記上側ショットキーバリアダイオードは前記上側スイッチング素子に内蔵されており、
前記下側ショットキーバリアダイオードは前記下側スイッチング素子に内蔵されており、
前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子はそれぞれ、複数個設けられ、
前記基板は、前記複数の上側スイッチング素子が表面に実装される第1表面側金属層と、前記複数の下側スイッチング素子が表面に実装される第2表面側金属層とを有し、
前記第1表面側金属層と前記第2表面側金属層とが並べられた方向を第1方向とすると、
前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の下側スイッチング素子は、前記第1表面側金属層と前記第2表面側金属層が並べられた平面上において前記第1方向と直交する第2方向において交互に配置されており、
記端子部材は、その厚さ方向において前記第1表面側金属層と間隔を空けて対向する入力端子部材を有し、
前記入力端子部材は、複数の接続部を有し、
前記複数の接続部は、前記複数の上側スイッチング素子の前記第2方向の間に配置され、前記第1方向において前記複数の下側スイッチング素子と対向しており、
前記複数の上側スイッチング素子の前記第2上側端子はそれぞれ、上側電力用接続部材により前記第2表面側金属層に電気的に接続されており、
前記複数の下側スイッチング素子の前記第2下側端子はそれぞれ、下側電力用接続部材により前記接続部に電気的に接続されている
パワーモジュール。
【請求項20】
前記基板は、前記第1表面側金属層が形成された第1基板と、前記第2表面側金属層が形成された第2基板と、から構成されるグラファイト基板を有し、
前記第1基板において前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の上側ショットキーバリアダイオードが配置される表面には前記第1表面側金属層が設けられており、
前記第1基板において前記第1基板の表面とは反対側の裏面には第1裏面側金属層が設けられており、
前記第2基板において前記複数の下側スイッチング素子及び前記複数の下側ショットキーバリアダイオードが配置される表面には前記第2表面側金属層が設けられており、
前記第2基板において前記第2基板の表面とは反対側の裏面には第2裏面側金属層が設けられている
請求項19に記載のパワーモジュール。
【請求項21】
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記上側スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体であり、
前記下側ショットキーバリアダイオード及び前記下側スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体である
請求項14~20のいずれか一項に記載のパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びパワーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子からなるハーフブリッジ回路において、デッドタイム状態から例えば下側スイッチング素子がオンするとき、下側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧Vdsに起因する上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧Vdsに伴い上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧Vgsが変動してゲート誤オンが生じる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-99133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シリコン(Si)を用いた半導体よりも高耐圧、低オン抵抗、高速スイッチング、及び高温動作に対応したシリコンカーバイド(SiC:Silicon Carbide)等を用いたワイドギャップ半導体の研究、及び製造販売が進められている。このようなワイドギャップ半導体は、低電流領域におけるプラトー電圧(ミラー効果領域におけるゲート・ソース間電圧)が低く、ゲート・ドレイン間容量Cgdに対するゲート・ソース間容量Cgsの比Cgs/Cgdが小さいため、ドレイン・ソース間電圧Vdsの時間変化dVds/dtが、ゲート・ドレイン間容量Cgdを介してゲート・ソース間電圧Vgsに及ぼす影響が大きい。このため、ゲート・ソース間電圧Vgsの変動が大きくなるので、その電圧サージが正方向に掛かれば、スイッチング素子がオフ状態にもかかわらずオンしてしまう、所謂セルフターンオンし易くなり、ハーフブリッジの上下に貫通電流が流れる。またその電圧サージが負方向に掛かれば、負側のゲート電圧定格を超過するおそれがある。SiC MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)では、ゲートしきい値シフトの関係から負側のゲート電圧定格が小さく設定されていることが多く、この現象は特に問題になり易い。
【0005】
本発明の目的は、ゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる半導体装置及びパワーモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する半導体装置は、ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、前記第1端子と前記第2端子との間において前記第1端子がカソードに接続されるように設けられたワイドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードと、前記第2端子にアノードが接続され、前記第1端子にカソードが接続されているダイオードと、を備え、前記ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記ダイオードの順方向しきい値電圧よりも低い。
【0007】
また、上記課題を解決するパワーモジュールは、ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、前記第1端子と前記第2端子との間において前記第1端子がカソードに接続されるように設けられたワイドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードと、前記第2端子にアノードが接続され、前記第1端子にカソードが接続されているダイオードと、前記スイッチング素子及び前記ショットキーバリアダイオードが実装されている基板と、前記基板の少なくとも一部と前記スイッチング素子と前記ショットキーバリアダイオードと前記ダイオードとを封止する封止樹脂と、を備え、前記ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記ダイオードの順方向しきい値電圧よりも低い。
【0008】
また、上記課題を解決するパワーモジュールは、ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有するとともに、前記第2上側端子にアノードが接続され、前記第1上側端子にカソードが接続されている上側ボディダイオードを有し、互いに並列接続された複数の上側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有するとともに、前記第2下側端子にアノードが接続され、前記第1下側端子にカソードが接続されている下側ボディダイオードを有し、互いに並列接続された複数の下側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2上側端子に接続され、カソードが前記第1上側端子に接続され、互いに並列接続された複数の上側ショットキーバリアダイオードと、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2下側端子に接続され、カソードが前記第1下側端子に接続され、互いに並列接続された複数の下側ショットキーバリアダイオードと、前記上側スイッチング素子、前記下側スイッチング素子、前記上側ショットキーバリアダイオード、及び前記下側ショットキーバリアダイオードが実装された基板と、前記基板の少なくとも一部と前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子と前記上側ショットキーバリアダイオードと前記下側ショットキーバリアダイオードとを封止する封止樹脂と、を備え、前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記下側ショットキーバリアダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧は、前記上側ボディダイオード及び前記下側ボディダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧よりも低い。
【発明の効果】
【0009】
上記半導体装置及びパワーモジュールによれば、ゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の半導体装置を有するパワーモジュール及びその駆動回路を示す模式回路図。
図2】パワーモジュールの斜視図。
図3】パワーモジュールの内部構成を示す平面図。
図4】パワーモジュールの底面図。
図5】(a)はスイッチング素子の平面図、(b)は(a)の一部の内部拡大図。
図6】スイッチング素子の断面図。
図7】比較例のパワーモジュールの応用を示す模式回路図。
図8】上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子の寄生容量及び寄生抵抗を示す模式図。
図9】下側スイッチング素子をオフ状態からオン状態に変化させたときの下側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の変化と、上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧、ドレイン・ゲート間電圧、及びゲート・ソース間電圧の変化とを示す模式回路図。
図10】下側スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させたときの下側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の変化と、上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧、ドレイン・ゲート間電圧、及びゲート・ソース間電圧の変化とを示す模式回路図。
図11】下側スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させたときの下側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧、上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧、及びゲート・ソース間電圧の推移示すグラフ。
図12】上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のゲート・ソース間容量及びゲート・ドレイン間容量について、ドレイン・ソース間電圧と容量との関係を示すグラフ。
図13】上側コンデンサ及び下側コンデンサにおけるコンデンサの端子間電圧と容量との関係を示すグラフ。
図14】パワーモジュールにおいて、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のゲート・ソース間容量及びゲート・ドレイン間容量と、上側コンデンサ及び下側コンデンサとを含めたコンデンサ容量を示すグラフ。
図15】第1実施形態のパワーモジュールのシミュレーションを行うための回路図。
図16図7の比較例のパワーモジュールと、図15のパワーモジュールとのシミュレーション結果であって、負側のサージ電圧とスイッチング損失との関係を示すグラフ。
図17】第2実施形態のパワーモジュールの模式回路図。
図18】パワーモジュールの斜視図。
図19】パワーモジュールの内部構成を示す分解斜視図。
図20】パワーモジュールの内部構成を示す平面図。
図21】パワーモジュールの底面図。
図22図20のパワーモジュールの第2基板の一部を第2方向及び第3方向に沿う平面で切った断面図。
図23図20のパワーモジュールの第1基板の一部を第1方向及び第3方向に沿う平面で切った断面図。
図24図20のパワーモジュールの一部を第1方向及び第3方向に沿う平面で切った断面図。
図25】ダイオードの平面図。
図26】ダイオードの一部の断面図。
図27】比較例のパワーモジュールにおいて、下側スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させたときの上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のそれぞれのドレイン・ソース間電圧の推移を示すグラフ。
図28】第2実施形態のパワーモジュールにおいて、下側スイッチング素子をオン状態からオフ状態に変化させたときの上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子のそれぞれのドレイン・ソース間電圧の推移を示すグラフ。
図29】第2実施形態のパワーモジュールのシミュレーションを行うための回路図。
図30図7の比較例のパワーモジュールと、図29のパワーモジュールとのシミュレーション結果であって、負側のサージ電圧とスイッチング損失との関係を示すグラフ。
図31】第3実施形態のパワーモジュールについて、(a)はMISトランジスタの平面図、(b)は(a)の一部の内部拡大図。
図32図31のA-A断面、B-B断面、及びC-C断面の各断面図。
図33】パワーモジュールの内部構成を示す平面図。
図34】第3実施形態のパワーモジュールのシミュレーションを行うための回路図。
図35図7の比較例のパワーモジュールと、図34のパワーモジュールとのシミュレーション結果であって、負側のサージ電圧とスイッチング損失との関係を示すグラフ。
図36】第4実施形態のパワーモジュールの模式回路図。
図37】パワーモジュールの内部構成を示す平面図。
図38】第4実施形態のパワーモジュールのシミュレーションを行うための回路図。
図39図7の比較例のパワーモジュールと、図38のパワーモジュールとのシミュレーション結果であって、負側のサージ電圧とスイッチング損失との関係を示すグラフ。
図40】変形例のパワーモジュールの下側アイランド部及びその周辺の平面図。
図41】変形例のパワーモジュールの下側アイランド部及びその周辺の平面図。
図42】変形例のパワーモジュールの内部構成を示す平面図。
図43】(a)(b)は変形例のスイッチング素子の断面図。
図44】パワーモジュールを適用するフルブリッジ型インバータの模式回路図。
図45】パワーモジュールを適用する3相交流インバータの模式回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、半導体装置及びパワーモジュールの各実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態は、技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに限定するものではない。以下の各実施形態は、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本明細書において、「部材Aが部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bとが物理的に直接的に接続される場合、並びに、部材A及び部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合を含む。
【0013】
同様に、「部材Cが部材Aと部材Bとの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cとが直接的に接続される場合、並びに、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cとが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合を含む。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、パワーモジュール1とその駆動回路において、パワーモジュール1は、複数の端子を有する。パワーモジュール1は、複数の端子として図1に示されるとおり、正側となる第1入力端子P、負側となる第2入力端子N、出力端子O、第1上側制御端子GU1、第2上側制御端子GU2、第1下側制御端子GL1、及び第2下側制御端子GL2を有する。第1入力端子Pは、電源電圧VDDを生成する電源(図示略)と電気的に接続可能である。第2入力端子Nは、グランドに電気的に接続可能である。
【0015】
半導体装置10は、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12が直列に接続されたハーフブリッジ回路を備える。上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12は、4H-SiC(絶縁破壊電界が約2.8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約3.26eVのワイドバンドギャップ半導体)が用いられている。なお、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12に用いられるワイドバンドギャップ半導体は、シリコンカーバイド(SiC)に限られず、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンド等であってもよい。窒化ガリウム(GaN)は、その絶縁破壊電界が約3MV/cmであり、バンドギャップの幅が約3.42eVである。酸化ガリウム(Ga)は、その絶縁破壊電界が約8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約4.8eVである。ダイヤモンドは、その絶縁破壊電界が約8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約5.47eVである。上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12の一例は、SiC MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。
【0016】
上側スイッチング素子11は、第1上側端子の一例であるドレイン端子11d、第2上側端子の一例であるソース端子11s、及び上側制御端子の一例であるゲート端子11gを有する。下側スイッチング素子12は、第1下側端子の一例であるドレイン端子12d、第2下側端子の一例であるソース端子12s、及び下側制御端子の一例であるゲート端子12gを有する。
【0017】
上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12のそれぞれの個数は任意に変更可能である。例えば、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12のそれぞれの個数は、予め設定されたオン抵抗となるように設定される。上側スイッチング素子11が複数個設けられる場合、複数の上側スイッチング素子11は互いに並列に接続される。すなわち、複数の上側スイッチング素子11のドレイン端子11dが互いに接続され、複数の上側スイッチング素子11のソース端子11sが互いに接続され、複数の上側スイッチング素子11のゲート端子11gが互いに接続される。また下側スイッチング素子12が複数個設けられる場合、複数の下側スイッチング素子12は互いに並列に接続される。すなわち、複数の下側スイッチング素子12のドレイン端子12dが互いに接続され、複数の下側スイッチング素子12のソース端子12sが互いに接続され、複数の下側スイッチング素子12のゲート端子12gが互いに接続される。本実施形態では、上側スイッチング素子11は2個設けられ、下側スイッチング素子12は2個設けられている。
【0018】
上側スイッチング素子11のドレイン端子11dは、第1配線15を介して第1入力端子Pに電気的に接続されている。これにより、上側スイッチング素子11のドレイン端子11dには、電源電圧VDDが供給される。上側スイッチング素子11のソース端子11sは、第4配線18を介して下側スイッチング素子12のドレイン端子12dに接続されている。第4配線18において上側スイッチング素子11のソース端子11sと下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとの間のノードNは、出力配線18Aを介して出力端子Oと電気的に接続されている。上側スイッチング素子11のゲート端子11gは、第2配線16を介して第1上側制御端子GU1と電気的に接続されている。第1上側制御端子GU1は、第1上側配線4を介して上側ゲート駆動回路2に電気的に接続されている。上側ゲート駆動回路2は、図示しない制御回路からの指令に応じて上側スイッチング素子11を動作させるためのゲート駆動信号をゲート端子11gに出力する。上側スイッチング素子11のソースは、上側センス配線16Aを介して第2上側制御端子GU2と電気的に接続されている。第2上側制御端子GU2は、第2上側配線5により上側ゲート駆動回路2に接続されている。
【0019】
下側スイッチング素子12のソース端子12sは、第5配線19を介して第2入力端子Nに電気的に接続されている。これにより、下側スイッチング素子12のソース端子12sは、グランドに電気的に接続される。下側スイッチング素子12のゲート端子12gは、第3配線17を介して第1下側制御端子GL1に電気的に接続されている。第1下側制御端子GL1は、第1下側配線6を介して下側ゲート駆動回路3に電気的に接続されている。下側ゲート駆動回路3は、図示しない制御回路からの指令に応じて下側スイッチング素子12を動作させるためのゲート駆動信号をゲート端子12gに出力する。上側ゲート駆動回路2及び下側ゲート駆動回路3は、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12を相補的にオンオフ動作するように上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12を制御する。下側スイッチング素子12のソースは、下側センス配線17Aを介して第2下側制御端子GL2と電気的に接続されている。第2下側制御端子GL2は、第2下側配線7により下側ゲート駆動回路3に接続されている。
【0020】
図1に示すとおり、上側ゲート駆動回路2、下側ゲート駆動回路3、第1上側配線4、第2上側配線5、第1下側配線6、及び第2下側配線7は、パワーモジュール1の外部に設けられている。なお、上側ゲート駆動回路2及び下側ゲート駆動回路3の少なくとも一方は、パワーモジュール1の内部に設けられてもよい。また、パワーモジュール1は上下2つのパワーモジュールを組み合せて構成されてもよい。
【0021】
半導体装置10は、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14を有する。図1及び図3に示すとおり、上側コンデンサ13は、上側スイッチング素子11とは別体として設けられている。下側コンデンサ14は、下側スイッチング素子12とは別体として設けられている。上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の一例は、セラミックコンデンサ、フィルムコンデンサ、反強誘電性のコンデンサ等であるが、パワーモジュール1内の浮遊容量によって作り込まれていてもよい。上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量はそれぞれ、数十pF程度である。上側コンデンサ13は、上側スイッチング素子11のドレイン端子11dとソース端子11sとの間の電圧であるドレイン・ソース間電圧Vdsuが正の値になる場合、その容量が増加するように構成されることが好ましい。下側コンデンサ14は、下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとソース端子12sとの間の電圧であるドレイン・ソース間電圧Vdslが正の値になる場合、その容量が増加するように構成されることが好ましい。この観点から、本実施形態の上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14は、反強誘電性のコンデンサが用いられている。反強誘電性のコンデンサは、正の電圧が印加されると容量が増加する特性を有する。
【0022】
上側コンデンサ13は、上側スイッチング素子11のドレイン端子11dとゲート端子11gとの間に設けられている。詳述すると、上側コンデンサ13の第1端子は、ドレイン端子11dと第1入力端子Pとを繋ぐ第1配線15に接続されている。上側コンデンサ13の第2端子は、ゲート端子11gと第1上側制御端子GU1とを繋ぐ第2配線16に接続されている。
【0023】
下側コンデンサ14は、下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとゲート端子12gとの間に設けられている。詳述すると、下側コンデンサ14の第1端子は、ドレイン端子12dと上側スイッチング素子11のソース端子11sとの間に接続されている。より詳細には、下側コンデンサ14の第1端子は、第4配線18においてノードNと下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとの間の部分に接続されている。下側コンデンサ14の第2端子は、ゲート端子12gと第1下側制御端子GL1とを繋ぐ第3配線17に接続されている。
【0024】
図2図4は、パワーモジュール1の構成の一例を示している。パワーモジュール1の構成は、図2図4に示す構成に限られず、種々の変更が可能である。
図2図4に示すように、パワーモジュール1は、上側スイッチング素子11、下側スイッチング素子12、上側コンデンサ13、及び下側コンデンサ14が実装された基板20と、上側スイッチング素子11、下側スイッチング素子12、上側コンデンサ13、下側コンデンサ14、及び基板20の一部を封止する封止樹脂40と、を有する。またパワーモジュール1は、端子部材の一例として、第1入力端子Pを構成する第1入力端子部材30、第2入力端子Nを構成する第2入力端子部材31、出力端子Oを構成する出力端子部材32、第1上側制御端子GU1を構成する第1上側制御端子部材33、第2上側制御端子GU2を構成する第2上側制御端子部材34、第1下側制御端子GL1を構成する第1下側制御端子部材35、及び第2下側制御端子GL2を構成する第2下側制御端子部材36を有する。
【0025】
基板20は、支持基板の一例である平板状のセラミック基板21を有する。セラミック基板21の表面側には、出力配線部22、正側となる第1入力配線部23、負側となる第2入力配線部24、第1上側制御配線部25、第2上側制御配線部26、第1下側制御配線部27、及び第2下側制御配線部28が設けられている。各配線部22~28はそれぞれ、銅(Cu)からなる。以降の説明において、基板20の縦方向を「第1方向X」と規定し、基板20の横方向を「第2方向Y」と規定する。第2方向Yは、パワーモジュール1の平面視において第1方向Xと直交する方向となる。
【0026】
出力配線部22は、第2方向Yにおけるセラミック基板21の中央に設けられている。出力配線部22は、平面視において略L字状に形成されている。出力配線部22は、第1方向Xに延びる第1部分22aと、第2方向Yに延びる第2部分22bとを有する。第2部分22bは、第1部分22aの第1方向Xの端部に設けられている。第1部分22aの幅寸法(第2方向Yにおける第1部分22aの長さ)は、第2部分22bの幅寸法(第1方向Xにおける第2部分22bの長さ)よりも大きい。第1部分22aは、セラミック基板21における第2方向Yの中央に位置している。第2部分22bは、セラミック基板21における第1方向Xの端部に位置し、第1部分22aから各上側制御端子部材33,34が位置する側に向けて第2方向Yに沿って延びている。第2部分22bには、出力端子部材32が接続されている。出力端子部材32は、セラミック基板21の第2方向Yの中央に位置している。
【0027】
第1入力配線部23は、出力配線部22と隣り合うように設けられている。第1入力配線部23は、平面視において略L字状に形成されている。第1入力配線部23は、第1方向Xに延びる第1部分23aと、第2方向Yに延びる第2部分23bとを有する。第1部分23aは、出力配線部22の第1部分22aに対して各上側制御端子部材33,34が位置する側に、第2方向Yにおいて第1部分22aと隙間を介して隣り合うように配置されている。第1部分23aにおける出力端子部材32側の端部は、第1方向Xにおいて出力配線部22の第2部分22bと隙間を空けて隣り合うように位置している。第2部分23bは、第1部分23aの第1方向Xの端部に設けられている。第2部分23bは、出力配線部22の第1部分22aにおける出力端子部材32が配置される側とは反対側の端部の一部を第1方向Xから覆っている。第2部分23bには、第1入力端子部材30が接続されている。第1部分23aの幅寸法(第2方向Yにおける第1部分23aの長さ)は、第2部分23bの幅寸法(第1方向Xにおける第2部分23bの長さ)よりも大きい。第1部分23aの幅寸法は、出力配線部22の第1部分22aの幅寸法よりも小さい。
【0028】
第2入力配線部24は、出力配線部22と隣り合うように設けられている。第2入力配線部24は、平面視において略T字状に形成されている。第2入力配線部24は、第1方向Xに伸びる第1部分24aと、第2方向Yに延びる第2部分24bとを有する。第1部分24aは、出力配線部22の第1部分22aに対して各下側制御端子部材35,36が位置する側に、第2方向Yにおいて第1部分22aと隙間を介して隣り合うように配置されている。図3に示すとおり、第2方向Yにおいて、出力配線部22の第1部分22aは、第1入力配線部23の第1部分23aと第2入力配線部24の第1部分24aとに挟まれるように配置されている。第2部分24bは、第1部分24aの第1方向Xの端部に設けられている。第2部分24bは、第2方向Yにおいて第1部分24aの両側から突出している。第1部分24aの幅寸法(第2方向Yにおける第1部分24aの長さ)は、第2部分24bの幅寸法(第1方向Xにおける第2部分24bの長さ)よりも大きい。第1部分24aの幅寸法は、出力配線部22の第1部分22aの幅寸法及び第1入力配線部23の第1部分23aの幅寸法よりも小さい。第1部分24aの第1方向Xの長さは、出力配線部22の第1部分22aの第1方向Xの長さ及び第1入力配線部23の第1部分23aの第1方向Xの長さよりも長い。第2部分24bの第1方向Xの位置は、第1入力配線部23の第2部分23bの第1方向Xの位置と等しい。第2部分24bにおいて第1部分24aよりも第1入力配線部23側に突出する部分は、出力配線部22の第1部分22aにおける出力端子部材32が配置される側とは反対側の端部の一部を第1方向Xから覆っている。
【0029】
第1上側制御配線部25は、セラミック基板21における各上側制御端子部材33,34が配置される側の端部に設けられている。第1上側制御配線部25は、第1入力配線部23の第1部分23aに対して各上側制御端子部材33,34が配置される側に、第1部分23aと第2方向Yにおいて隣り合うように設けられている。第1上側制御配線部25は、第1方向Xに延びる第1部分25a、第2方向Yに延びる第2部分25b、及び第1部分25aと第2部分25bとを接続する屈曲部25cを有する。第1部分25aにおける屈曲部25c側の端部には、第2方向Yにおいて第1入力配線部23側に凹む凹部25dが形成されている。すなわち第1部分25aにおいて凹部25dが形成される部分の幅寸法(第2方向Yにおける第1部分25aの長さ)は、第1部分25aの他の部分の幅寸法(第2方向Yにおける第1部分25aの長さ)よりも小さい。第1部分25aの第1方向Xの長さは、第1入力配線部23の第1部分23aの第1方向Xの長さよりも短い。第2部分25bの先端部には、第1上側制御端子部材33が接続されている。第1上側制御端子部材33は、第2方向Yに延びている。
【0030】
第2上側制御配線部26は、セラミック基板21における各上側制御端子部材33,34が配置される側の端部に設けられている。第2上側制御配線部26は、第1上側制御配線部25に対して各上側制御端子部材33,34が配置される側に、第1上側制御配線部25と第2方向Yにおいて隣り合うように設けられている。第2上側制御配線部26において第1上側制御配線部25の凹部25dと第2方向Yに対向する部分には、凹部25dに向けて延びる接続部26aが設けられている。接続部26aは、第1方向Xにおいて第1上側制御配線部25の第2部分25bに覆われている。接続部26aには、第2上側制御端子部材34が接続されている。第2上側制御端子部材34は、第2方向Yに延びている。
【0031】
第1下側制御配線部27は、セラミック基板21における各下側制御端子部材35,36が配置される側の端部に設けられている。第1下側制御配線部27は、第2入力配線部24の第1部分24aに対して各下側制御端子部材35,36が配置される側に、第1部分24aと第2方向Yにおいて隣り合うように設けられている。第1下側制御配線部27は、第1方向Xに延びる第1部分27a、第2方向Yに延びる第2部分27b、及び第1部分27aと第2部分27bとを接続する屈曲部27cを有する。第1部分27aにおける屈曲部27c側の端部には、第2方向Yにおいて第2入力配線部24側に凹む凹部27dが形成されている。すなわち第1部分27aにおいて凹部27dが形成される部分の幅寸法(第2方向Yにおける第1部分27aの長さ)は、第1部分27aの他の部分の幅寸法(第2方向Yにおける第1部分27aの長さ)よりも小さい。第1部分27aの第1方向Xの長さは、第2入力配線部24の第1部分24aの第1方向Xの長さ及び出力配線部22の第1部分22aの第1方向Xの長さよりも短い。第2部分27bの先端部には、第1下側制御端子部材35が接続されている。第1下側制御端子部材35は、第2方向Yに延びている。
【0032】
第2下側制御配線部28は、セラミック基板21における各下側制御端子部材35,36が配置される側の端部に設けられている。第2下側制御配線部28は、第1下側制御配線部27に対して各下側制御端子部材35,36が配置される側に、第1下側制御配線部27と第2方向Yにおいて隣り合うように設けられている。第2下側制御配線部28において第1下側制御配線部27の凹部27dと第2方向Yに対向する部分には、凹部27dに向けて延びる接続部28aが設けられている。接続部28aは、第1方向Xにおいて第1下側制御配線部27の第2部分27bに覆われている。接続部28aには、第2下側制御端子部材36が接続されている。第2下側制御端子部材36は、第2方向Yに延びている。
【0033】
セラミック基板21の表面側には、上側アイランド部37及び下側アイランド部38が設けられている。上側アイランド部37及び下側アイランド部38のそれぞれの形状は、第1方向Xが長手方向となる長方形である。上側アイランド部37及び下側アイランド部38は、例えば銅(Cu)からなる。
【0034】
上側アイランド部37は、セラミック基板21における各上側制御端子部材33,34が配置される側の端部に設けられている。上側アイランド部37は、第1方向Xにおいて各上側制御配線部25,26よりも第1入力端子部材30側に設けられている。詳述すると、上側アイランド部37は、第1方向Xにおいて第1上側制御配線部25の第2部分25b及び屈曲部25cと隙間を空けて隣り合い、第2方向Yにおいて第1入力配線部23の第1部分23aと隙間を空けて隣り合うように設けられている。上側アイランド部37と第1入力配線部23とは、1本又は複数本の上側接続用ワイヤ39Uにより電気的に接続されている。本実施形態では、2本の上側接続用ワイヤ39Uにより、上側アイランド部37と第1入力配線部23とが電気的に接続されている。上側接続用ワイヤ39Uは、例えばアルミニウム(Al)からなる。上側接続用ワイヤ39Uの線径は、上側制御用ワイヤ45(下側制御用ワイヤ47)の線径よりも大きいことが好ましく、例えば上側電力用ワイヤ(下側電力用ワイヤ46)の線径と等しい。
【0035】
下側アイランド部38は、セラミック基板21における各下側制御端子部材35,36が配置される側の端部に設けられている。下側アイランド部38は、第1方向Xにおいて各下側制御配線部27,28よりも出力端子部材32側に設けられている。詳述すると、下側アイランド部38は、第1方向Xにおいて第1下側制御配線部27の第2部分27b及び屈曲部27cと隙間を空けて隣り合い、第2方向Yにおいて第2入力配線部24の第1部分24aと隙間を空けて隣り合うように設けられている。下側アイランド部38と出力配線部22とは、1本又は複数本の下側接続用ワイヤ39Lにより電気的に接続されている。本実施形態では、2本の下側接続用ワイヤ39Lにより、下側アイランド部38と出力配線部22とが電気的に接続されている。下側接続用ワイヤ39Lは、第2入力配線部24の第1部分24aを第2方向Yに跨ぐように設けられている。下側接続用ワイヤ39Lは、例えばアルミニウム(Al)からなる。下側接続用ワイヤ39Lの線径は、上側制御用ワイヤ45(下側制御用ワイヤ47)の線径よりも大きいことが好ましく、例えば上側電力用ワイヤ44(下側電力用ワイヤ46)の線径と等しい。
【0036】
2個の上側スイッチング素子11はそれぞれ、チップ状に形成され、第1入力配線部23の第1部分23aに実装されている。2個の上側スイッチング素子11は、第1方向Xに沿って互いに隙間を空けて位置している。すなわち、2個の上側スイッチング素子11は、第1方向Xにおいて互いに離間して第1入力配線部23に実装されている。各上側スイッチング素子11は、第1入力配線部23の第1部分23aの第2方向Yの中央に位置している。また各上側スイッチング素子11は、第1方向Xにおいて各上側制御端子部材33,34よりも出力端子部材32側に位置している。より詳細には、各上側スイッチング素子11は、第1方向Xにおいて第1上側制御配線部25の凹部25dよりも出力端子部材32側に位置している。
【0037】
各上側スイッチング素子11は、第1上側端子(ドレイン端子)を構成するドレイン電極(図示略)、第2上側端子(ソース端子)を構成するソース電極41、及び上側制御端子(ゲート端子)を構成するゲート電極42を有する(ともに図5(a)参照)。ドレイン電極は、上側スイッチング素子11における第1入力配線部23に実装される裏面に設けられている。ソース電極41及びゲート電極42は、上側スイッチング素子11における裏面とは反対側の表面に設けられている。図5(a)に示すとおり、上側スイッチング素子11の表面の外周部には、ガードリング43が設けられている。ソース電極41及びゲート電極42は、ガードリング43の内部に設けられている。ソース電極41は、ガードリング43内の面積の殆どを占めている。ソース電極41は、2つの電極に分離されている。ソース電極41は、ガードリング43から離間するように凹む凹部41aを有する。凹部41aとガードリング43とにより囲まれた領域には、ゲート電極42が設けられている。
【0038】
図3に示すとおり、各上側スイッチング素子11のソース電極41(図5(a)参照)は、上側電力用接続部材の一例として複数本の上側電力用ワイヤ44により出力配線部22の第1部分22aと電気的に接続されている。本実施形態では、4本の上側電力用ワイヤ44により、上側スイッチング素子11のソース電極41と出力配線部22とが電気的に接続されている。上側電力用ワイヤ44は、例えばアルミニウム(Al)からなる。また各上側スイッチング素子11のソース電極41は、上側制御用接続部材の一例として1本又は複数本の上側制御用ワイヤ45により第2上側制御配線部26と電気的に接続されている。上側制御用ワイヤ45は、第1上側制御配線部25の第1部分25aを第2方向Yに跨ぐように設けられている。上側制御用ワイヤ45は、例えばアルミニウム(Al)からなる。上側電力用ワイヤ44の線径は、上側制御用ワイヤ45の線径よりも大きい。上側電力用ワイヤ44の線径の一例はφ400μmであり、上側制御用ワイヤ45の線径の一例はφ150μmである。各上側スイッチング素子11のゲート電極42は、1本又は複数本の上側制御用ワイヤ45により第1上側制御配線部25の第1部分25aと電気的に接続されている。このように、2個の上側スイッチング素子11のドレインが共通の第1入力配線部23に電気的に接続され、2個の上側スイッチング素子11のソース電極41が共通の出力配線部22に電気的に接続されているため、2個の上側スイッチング素子11は互いに並列に接続されることになる。なお、上側電力用接続部材は、例えばCIC(Cu/Inver/Cu)のリードフレームなどであってもよい。
【0039】
2個の下側スイッチング素子12はそれぞれ、チップ状に形成され、出力配線部22の第1部分22aに実装されている。2個の下側スイッチング素子12は、第1方向Xに沿って互いに隙間を空けて位置している。すなわち2個の下側スイッチング素子12は、第1方向Xにおいて互いに離間して出力配線部22に実装されている。2個の下側スイッチング素子12はそれぞれ、第1方向Xにおいて2個の上側スイッチング素子11と同じ位置となるように実装されている。各下側スイッチング素子12は、第2方向Yにおいて出力配線部22の第1部分22aのうちの第2入力配線部24側に位置している。これにより、出力配線部22の第1部分22aにおいて、複数本の上側電力用ワイヤ44が接続される領域を確保することができる。
【0040】
2個の下側スイッチング素子12は、上側スイッチング素子11と同様の構造である。すなわち各下側スイッチング素子12は、ドレイン電極(図示略)、ソース電極41、ゲート電極42、及びガードリング43を有する。
【0041】
図3に示すとおり、各下側スイッチング素子12のソース電極41は、下側電力用接続部材の一例として複数本の下側電力用ワイヤ46により第2入力配線部24の第1部分24aと電気的に接続されている。本実施形態では、4本の下側電力用ワイヤ46により、下側スイッチング素子12のソース電極41と第2入力配線部24とが電気的に接続されている。下側電力用ワイヤ46は、例えばアルミニウム(Al)からなる。下側電力用ワイヤ46の線径は、上側電力用ワイヤ44の線径と等しい。また各下側スイッチング素子12のソース電極41は、下側制御用接続部材の一例として1本又は複数本の下側制御用ワイヤ47により第2下側制御配線部28と電気的に接続されている。下側制御用ワイヤ47は、例えばアルミニウム(Al)からなる。下側制御用ワイヤ47の線径は、上側制御用ワイヤ45の線径と等しい。各下側スイッチング素子12のソース電極41に接続された下側制御用ワイヤ47は、第2入力配線部24の第1部分24a及び第1下側制御配線部27の第1部分27aを第2方向Yに跨ぐように設けられている。各下側スイッチング素子12のゲート電極42は、1本又は複数本の下側制御用ワイヤ47により第1下側制御配線部27の第1部分27aと電気的に接続されている。ゲート電極42に接続された下側制御用ワイヤ47は、第2入力配線部24の第1部分24aを跨ぐように設けられている。このように、2個の下側スイッチング素子12のドレインが共通の出力配線部22に電気的に接続され、2個の下側スイッチング素子12のソース電極41が共通の第2入力配線部24に電気的に接続されているため、2個の下側スイッチング素子12は互いに並列に接続されることになる。なお、下側電力用接続部材は、例えばCIC(Cu/Inver/Cu)のリードフレームなどであってもよい。
【0042】
上側コンデンサ13は、第1上側制御配線部25の屈曲部25cと上側アイランド部37とに実装されている。詳述すると、上側コンデンサ13の第1端子は第1上側制御配線部25の屈曲部25cに実装され、上側コンデンサ13の第2端子は上側アイランド部37に実装されている。図3に示すとおり、上側コンデンサ13の第2端子は、上側アイランド部37における第1入力配線部23の第1部分23a側の端部に位置している。このように、上側コンデンサ13は、複数の上側スイッチング素子11の共通のドレイン端子11d(ドレイン)と、複数の上側スイッチング素子11の共通のゲート端子11g(ゲート)とを電気的に接続している。
【0043】
下側コンデンサ14は、第1下側制御配線部27の屈曲部27cと下側アイランド部38とに実装されている。詳述すると、下側コンデンサ14の第1端子は第1下側制御配線部27の屈曲部27cに実装され、下側コンデンサ14の第2端子は下側アイランド部38に実装されている。図3に示すとおり、下側コンデンサ14の第2端子は、下側アイランド部38における第2入力配線部24の第1部分24a側の端部に位置している。このように、下側コンデンサ14は、複数の下側スイッチング素子12の共通のドレイン端子12d(ドレイン)と、複数の下側スイッチング素子12の共通のゲート端子12g(ゲート)とを電気的に接続している。
【0044】
図4に示すように、セラミック基板21の裏面側には、封止樹脂40から露出する放熱板29が設けられている。放熱板29は、銅(Cu)からなる。放熱板29の板厚は、セラミック基板21の板厚よりも厚い。放熱板29は、セラミック基板21の形状と相似形状となるように形成されている。放熱板29の外周縁は、セラミック基板21の外周縁よりも内側に位置している。これにより、封止樹脂40がセラミック基板21の裏面側に回り込むため、セラミック基板21と封止樹脂40との密着性が向上する。なお、放熱板29は、冷却器等に接続されることを想定して、表面がニッケル(Ni)又は銀(Ag)でメッキされていてもよい。
【0045】
(上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子の構造)
次に、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12の構造について説明する。図5及び図6は、上側スイッチング素子11の構造の一例を示している。なお、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12は同一構造である。このため、図5及び図6は、下側スイッチング素子12の構造の一例を示しているとも言える。また以降では、上側スイッチング素子11の構造を説明し、下側スイッチング素子12の構造の説明を省略する。なお、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12の構造は、図5及び図6に示す構造に限られず、種々の変更が可能である。
【0046】
上側スイッチング素子11は、シリコンカーバイド(SiC)を用いたプレーナゲート型VDMOSFET(Vertical Double implanted MOSFET)であり、図5(a)に示すとおりの平面視で正方形のチップ状である。
【0047】
図6に示すように、n型のSiC基板50を有する。本実施形態では、SiC基板50は、上側スイッチング素子11のドレインとして機能し、その表面50A(上面)がシリコン面(Si面)であり、その裏面50B(下面)がカーボン面(C面)である。
【0048】
SiC基板50上には、SiC基板50よりも低濃度のn型のSiCからなるエピタキシャル層51が積層されている。半導体層としてのエピタキシャル層51は、Si面を成長主面として成長させられる。したがって、エピタキシャル成長により形成されるエピタキシャル層51の表面51Aは、SiC基板50の表面50Aと同様にSi面である。
【0049】
図5(a)に示すように、上側スイッチング素子11には、平面視においてエピタキシャル層51(図6参照)上の中央部に配置され、電界効果トランジスタとして機能する活性領域52が形成されている。エピタキシャル層51には、活性領域52を取り囲むように、活性領域52から間隔を空けてガードリング43(図5(b)においてクロスハッチングを付して示す)が複数本形成されている。本実施形態では、ガードリング43は、2本形成されている。
【0050】
図6に示すように、活性領域52とガードリング43との間隔は、全周に亘ってほぼ一定である。ガードリング43は、エピタキシャル層51にp型不純物をインプランテーションすることにより形成されたp型の低濃度領域である。
【0051】
活性領域52において、エピタキシャル層51の表面51A側(Si面側)には、p型のボディ領域53が、行方向及び列方向に一定のピッチで行列状(マトリクス状)に配列されて多数形成されている。各ボディ領域53の形状は、例えば、平面視で正方形である。p型不純物は、例えばアルミニウム(Al)であってもよい。一方、エピタキシャル層51におけるボディ領域53よりもSiC基板50側(C面側)の領域は、エピタキシャル成長後のままの状態が維持された、n型のドリフト領域54となっている。
【0052】
各ボディ領域53の表層部には、その中央部にp型のボディコンタクト領域55が形成されており、このボディコンタクト領域55を取り囲むようにn型のソース領域56が形成されている。ボディコンタクト領域55の形状は、例えば、平面視で正方形である。ソース領域56の形状は、例えば、平面視で正方形環状である。n型不純物濃度の一例は、燐(P)である。
【0053】
また活性領域52において、一定のピッチで行列状に配列されたボディ領域53の各間の領域(隣り合うボディ領域53の側面により挟まれるボディ間領域57)は、一定幅を有する格子状である。
【0054】
ボディ間領域57上には、このボディ間領域57に沿って、格子状のゲート絶縁膜58(図5(b)では図示略)が形成されている。ゲート絶縁膜58は、隣り合うボディ領域53の間に跨っており、ボディ領域53におけるソース領域56を取り囲む部分(ボディ領域53の周縁部)及びソース領域56の外周縁を覆っている。本実施形態では、ゲート絶縁膜58は、窒素(N)を含有する酸化膜、例えば、窒素及び酸素を含有するガスを用いた熱酸化により形成される窒化酸化シリコン膜からなる。
【0055】
ゲート絶縁膜58は、ボディ領域53の外部のエピタキシャル層51に接する第1部分58a、ボディ領域53に接する第2部分58b、及びソース領域56に接する第3部分58cを含む。図6に示されるように、第3部分58cの膜厚T3は、第1部分58aの膜厚T1及び第2部分58bの膜厚T2よりも大きい。詳述すると、第3部分58cの下側界面(ソース領域56との界面)は、第1部分58aの下側界面(エピタキシャル層51との界面)及び第2部分58bの下側界面(ボディ領域53との界面)よりも下側、すなわちSiC基板50側であり、エピタキシャル層51の表面51Aからより深い位置に位置している。また第3部分58cの上側界面(ゲート電極42との界面)は、第1部分58aの上側界面(ゲート電極42との界面)及び第2部分58bの上側界面(ゲート電極42との界面)よりも上側、すなわちゲート電極42側であり、エピタキシャル層51の表面51Aからより遠い位置に位置している。
【0056】
ゲート絶縁膜58上には、ゲート電極42が形成されている。ゲート電極42は、格子状のゲート絶縁膜58に沿って格子状に形成されており、ゲート絶縁膜58を挟んで各ボディ領域53の周縁部に対向している。詳述すると、ゲート電極42は、ゲート絶縁膜58を挟んで、ボディ領域53の外部のエピタキシャル層51、ボディ領域53、及びソース領域56に跨る領域に対向している。したがって、ゲート電極42は、平面視においてソース領域56とオーバーラップしている。例えば、ゲート電極42は、平面視において、ボディ領域53とソース領域56との境界線からソース領域56に向けて僅かにはみ出している。これにより、ソース領域56とエピタキシャル層51との間のボディ領域53に対してゲート電極42を確実に対向させることができるため、ボディ領域53におけるチャネルの形成を確実に制御できる。ゲート電極42は、例えばポリシリコンからなる。ゲート電極42は、例えばp型不純物が高濃度に導入されて低抵抗化されている。
【0057】
上側スイッチング素子11では、ボディ間領域57の幅方向中央に単位セル間の境界が設定されている。各単位セルでは、ゲート電極42に印加する電圧を制御することにより(例えば6V以上の電圧を印加することにより)、各単位セルのボディ領域53の周縁部に環状のチャネルが形成される。この環状のチャネルを介して、ドリフト領域54において各ボディ領域53の4つの側面に沿ってエピタキシャル層51の表面51A側へ流れるドレイン電流を、ソース領域56に流すことができる。チャネル長Lは、ゲート電極42の直下のボディ領域53の幅によって規定される。
【0058】
エピタキシャル層51上には、ゲート電極42を被覆するように、例えば酸化シリコン(SiO)からなる層間絶縁膜59が積層されている。層間絶縁膜59は、コンタクトホール60が形成されている。コンタクトホール60内には、ソース領域56の中央部及びボディコンタクト領域55の全体が露出している。
【0059】
エピタキシャル層51上には、ソース電極41が形成されている。ソース電極41は、各コンタクトホール60を介して一括して接触している。つまり、ソース電極41は、全ての単位セルに対して共通の配線になっている。ソース電極41上には層間絶縁膜(図示略)が形成されている。ソース電極41は、層間絶縁膜を除く領域を形成することにより、すなわちソース電極41が露出する領域が形成され、ソース電極パッドを構成する。
【0060】
ソース電極41は、エピタキシャル層51との接触側から順にTi/TiN層61と、Al層62とが積層された構造を有する。Ti/TiN層61は、密着層としてのTi層をエピタキシャル層51側に有し、このTi層にバリア層としてのTiN層を積層した積層膜である。バリア層は、Al層62の構成原子(Al原子)がエピタキシャル層51側へと拡散することを抑制する。
【0061】
SiC基板50の裏面50Bには、その全域を覆うようにドレイン電極48が形成されている。ドレイン電極48は、全ての単位セルに対して共通の電極になっている。ドレイン電極48としては、例えばSiC基板50側から順にチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)、及び銀(Ag)が積層された積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)を適用することができる。
【0062】
(比較例)
図7は、比較例のパワーモジュールの回路構成を示す。比較例のパワーモジュールの回路では、上側スイッチング素子11をオフし、下側スイッチング素子12をオンオフする場合を示す。
【0063】
比較例のパワーモジュールは、図1に示す本実施形態のパワーモジュール1の回路構成から上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14を省略し、ボディダイオード11a,12aの記載を省略したものである。また比較例のパワーモジュールにおいて、電源ESの正側端子は上側スイッチング素子11のドレイン端子11dに接続され、電源ESの負側端子は下側スイッチング素子12のソース端子12sに接続されている。また、上側スイッチング素子11のドレイン端子11dとソース端子11sとを繋ぐ配線9を有する。配線9は、インダクタ負荷9aを有する。比較例のパワーモジュールの回路構成では、上側スイッチング素子11のゲート端子11gとソース端子11sとが第1上側制御配線部25に基づく寄生インダクタンスLgpを有する第1接続配線CP1と、第2上側制御配線部26に基づく寄生インダクタンスLgsを有する第2接続配線CP2とを短絡している。下側スイッチング素子12のゲート端子12gが下側ゲート駆動回路3に接続されている。ゲート端子12gと下側ゲート駆動回路3との間には、ゲート抵抗8が設けられている。
【0064】
このような構成の上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12はそれぞれ、SiC MOSFETが用いられることにより絶縁破壊電界が高い。このため、各スイッチング素子11,12のドリフト領域54の薄型化及び高濃度化を図ることにより、低いオン抵抗を実現することができる。一方、各スイッチング素子11,12のドリフト領域54を高濃度化した分、空乏層の拡張幅が制限されるため、ゲート・ドレイン間容量Cgdが低下し難い。これにより、図8に示すように、ゲート・ソース間容量をCgsとした場合、Cgs/Cgdの値が小さくなりやすい。
【0065】
図9及び図10は、図7及び図8に基づく回路図であり、下側スイッチング素子12を状態変化させたときの下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化と、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsu、ドレイン・ゲート間電圧Vdgu、及びゲート・ソース間電圧Vgsuの変化とを示す模式回路図を示す。
【0066】
比較例のパワーモジュールにおいて、下側スイッチング素子12をオフ状態からオン状態に変更した場合、図9に示すように、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが低下するとともに上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsu及びドレイン・ゲート間電圧Vdguが増加する。このような過渡応答において、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間は各接続配線CP1,CP2で短絡されているため、本来ならゲート・ソース間電圧Vgsuが変化することはない。しかし、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間には上記インダクタンス成分(Lgp+Lgs)及び寄生ゲート抵抗Rgpが存在するため、瞬間的にゲート・ソース間容量Cgsに分圧が発生する。すなわち瞬間的にゲート・ソース間に正側のサージ電圧が発生する。その結果、ドレイン・ソース間電圧Vdsの変化dVds/dtに起因してゲート・ソース間電圧Vgsuが急激に増加して、しきい値電圧を越えることにより、セルフターンオンが生じるおそれがある。
【0067】
このようなセルフターンオンの発生を抑制するため、上側スイッチング素子11のゲートに負バイアスを印加する対策が知られている。すなわち、ゲート・ソース間電圧Vgsuを予め負側に維持することによりゲート・ソース間電圧Vgsuとゲートしきい値電圧との差を大きくする。これにより、正側のサージ電圧がゲートに印加されたとしても、ゲートしきい値電圧を越えにくくなる。
【0068】
ところで、各スイッチング素子11,12は、SiC MOSFETの特性上、ゲート・ソース間電圧Vgsの負側絶対最大定格値がゲート・ソース間電圧Vgsの正側絶対最大定格値よりも小さい。一例では、各スイッチング素子11,12のゲート・ソース間電圧Vgsの負側絶対最大定格値は-10Vであり、ゲート・ソース間電圧Vgsの正側絶対最大定格値は26Vである。このため、ゲート負バイアスを印加すると、ゲート・ソース間電圧Vgsの負側絶対最大定格値との差が小さくなり、許容可能なゲート・ソース間電圧Vgsの負側の範囲が狭くなる。
【0069】
ここで、下側スイッチング素子12をオン状態からオフ状態に変更した場合、図10に示すように、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが増加するとともに上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsu及びドレイン・ゲート間電圧Vdguが低下する。このような過渡応答においても同様に、上記インダクタンス成分(Lgp+Lgs)及び寄生ゲート抵抗Rgpに起因して、瞬間的にゲート・ソース間容量Cgsに分圧が発生する。すなわち瞬間的にゲート・ソース間に負側のサージ電圧が発生する。その結果、ドレイン・ソース間電圧Vdsの変化dVds/dtに起因してゲート・ソース間電圧Vgsuが急激に低下することにより、負側絶対最大定格値を下回るおそれがある。特に、上側スイッチング素子11のゲートに負バイアスを印加する場合、ゲート・ソース間電圧Vgsuと負側絶対最大定格値との差が小さくなるため、負側のサージ電圧に起因して、ゲート・ソース間電圧Vgsuが負側絶対最大定格値を下回り易くなる。
【0070】
図11は、比較例のパワーモジュールにおける下側スイッチング素子12をオン状態からオフ状態に変更した場合の上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsu、ゲート・ソース間電圧Vgsu、及びドレイン電流Iduの推移と、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの推移を示している。
【0071】
図11から分かるとおり、ゲート・ソース間容量Cgsの分圧であるゲート・ソース間電圧Vgsuは、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが最も低下する時刻t1において、負側に最も大きくなる。言い換えれば、ゲート・ソース間電圧Vgsuは、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが最も高くなったときに負側に最も大きくなる。このように、下側スイッチング素子12が駆動し、上側スイッチング素子11が駆動しない場合には、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslによって上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが決められる。
【0072】
またゲート・ソース間容量Cgsの分圧は、Cgs/Cgdの逆比によって決められる。すなわちゲート・ソース間容量Cgsの分圧は、Cgs/Cgdが小さくなるにつれて大きくなる。言い換えれば、ゲート・ソース間容量Cgsの分圧は、Cgs/Cgdが大きくなるにつれて小さくなる。ところで、各スイッチング素子11,12では、SiC MOSFETの特性上、ゲート・ソース間容量Cgs及びゲート・ドレイン間容量Cgdとドレイン・ソース間電圧Vdsuとの関係は、図12に示すグラフのようになる。詳述すると、ゲート・ソース間容量Cgsは、ドレイン・ソース間電圧Vdsuが変化しても略変化しない。一方、ゲート・ドレイン間容量Cgdは、ドレイン・ソース間電圧Vdsuが増加するにつれて小さくなる傾向を有する。このため、ドレイン・ソース間電圧Vdsuが比較的低い領域ではCgs/Cgdが小さくなり、ドレイン・ソース間電圧Vdsuが比較的高い領域ではCgs/Cgdが大きくなる。Cgs/Cgdは、ドレイン・ソース間電圧Vdsuが高くなるにつれて大きくなる。
【0073】
上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuは、瞬間的には上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化に伴い変化するため、ドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化速度を低減する必要がある。また、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslに伴い変化するため、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuのサージ電圧を低減するためには、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度を低減すればよい。下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度は、ゲート・ドレイン間容量Cgdによって概ね決められる。詳述すると、ドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度は、ゲート・ドレイン間容量Cgdが大きくなるにつれて遅くなる。
【0074】
そこで、本実施形態のパワーモジュール1は、上側スイッチング素子11のゲート端子11g及びドレイン端子11dに電気的に接続された上側コンデンサ13と、下側スイッチング素子12のゲート端子12g及びドレイン端子12dに電気的に接続された下側コンデンサ14とを有する。
【0075】
この構成によれば、例えば下側スイッチング素子12がオフ状態からオン状態に変更する場合、ゲート電流が下側コンデンサ14を充電することによりドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度が遅くなる。これに伴い、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化速度が遅くなる。したがって、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuの変化が抑制されるため、セルフターンオンの発生を抑制することができる。また、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変更する場合、ゲート端子12gに下側コンデンサ14が放電することにより下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度が遅くなる。これに伴い、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化速度が遅くなることにより、ゲート・ソース間電圧Vgsuの変化が抑制される。したがって、ゲート・ソース間電圧Vgsuが負側絶対最大定格値を下回ることが抑制される。なお、上側スイッチング素子11がオン状態とオフ状態とを切り替える場合を想定して、上側スイッチング素子11にも上側コンデンサ13が接続されているが、上側コンデンサ13は、上側スイッチング素子11の寄生ゲート抵抗Rgpよりも外側に接続されているため、下側スイッチング素子12のスイッチング時の瞬間的な挙動に対してCgs/Cgdを小さくさせる効果は薄く、ゲート・ソース間容量Cgsへの分圧増加が抑制されるため、効果的に上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuのサージ電圧を抑制することができる。
【0076】
また、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14は、図13に示すような端子間電圧と容量との関係を有することが好ましい。詳述すると、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の端子間電圧がそれぞれ大きくなるにつれて上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量がそれぞれ増加する。本実施形態では、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の端子間電圧が高い領域における容量は、ドレイン・ソース間電圧Vdsuが高い領域におけるゲート・ドレイン間容量Cgdと同等レベルである。
【0077】
この構成によれば、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変更する場合、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが高くなることにより、下側コンデンサ14の端子間電圧が高くなる。この場合、下側コンデンサ14の容量が増加することにより、下側コンデンサ14の電圧変化に必要な電荷量が増加するため、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度がより遅くなる。これに伴い、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化速度がより遅くなることにより、ゲート・ソース間電圧Vgsuの変化が一層抑制される。
【0078】
また、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変更する場合、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが低くなることにより、上側コンデンサ13の端子間電圧が低くなり、上側コンデンサ13の容量が小さくなる。ここで、上述のとおり、上側コンデンサ13は上側スイッチング素子11の寄生ゲート抵抗Rgpの外側に接続されているため、下側スイッチング素子12のスイッチング時の瞬間的な挙動に対してCgs/Cgdを小さくさせる効果は薄いが、寄生ゲート抵抗Rgpが極端に小さい場合などは影響が全く無いわけではないため、上側コンデンサ13の低電圧印加時の容量が大きいと、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuに対する上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuの分圧が大きくなり、ゲート・ソース間電圧Vgsuの変化が大きくなってしまう。しかし、図14に示すように、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが低い場合は上側コンデンサ13の容量が小さいため、Cgs/Cgdを小さくする影響を抑制することができる。
【0079】
(シミュレーション結果)
比較例及び本実施形態のパワーモジュール1において、上側スイッチング素子11をオフし、下側スイッチング素子12をオンオフする場合における負側のサージ電圧の発生とスイッチング損失との関係について、図7及び図15に示す模式的な回路構成に基づいてシミュレーションを行った。図7は比較例のパワーモジュールの模式的な回路構成を示し、図15は本実施形態のパワーモジュール1において図7と同様の外部接続を行った場合の模式的な回路構成を示す。
【0080】
図15の回路構成では、上側スイッチング素子11のソースとゲートとが短絡され、下側スイッチング素子12のゲートに下側ゲート駆動回路3が電気的に接続されている。ゲートと下側ゲート駆動回路3との間には、ゲート抵抗8が設けられている。ゲート抵抗8の第1端子は下側スイッチング素子12のゲートに接続され、ゲート抵抗8の第2端子は下側ゲート駆動回路3に接続されている。下側コンデンサ14の第1端子は下側スイッチング素子12のドレインに接続され、下側コンデンサ14の第2端子はゲート抵抗8の第2端子に接続されている。上側スイッチング素子11のドレインには電源ESの正側端子が電気的に接続され、下側スイッチング素子12のソースには電源ESの負側端子が電気的に接続されている。図15の回路構成は、電源ESの正側端子と上側スイッチング素子11のドレインとの間と、上側スイッチング素子11のソースと下側スイッチング素子12のドレインとの間とを繋ぐ配線9を有する。配線9は、インダクタ負荷9aを有する。
【0081】
比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を2Ω、3Ω、4Ω、及び5Ωと変化させた場合のシミュレーションを行った。ここで、比較例及び本実施形態のパワーモジュールの回路構成であってゲート抵抗8が2Ωの場合を基準条件と規定する。
【0082】
図16に示すように、比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を大きくすることにより、下側スイッチング素子12のスイッチング速度(ドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度)が遅くなることにより負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる一方、ゲート抵抗8を大きくすることにより、スイッチング損失が急激に大きくなる。
【0083】
本実施形態のパワーモジュール1では、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量を50pF、100pF、及び150pFと変化させた場合のシミュレーションを行った。
【0084】
図16に示すように、本実施形態のパワーモジュール1では、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14により、基準条件よりも負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。そして上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量が大きくなるにつれて負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。一方、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量が大きくなるにつれてスイッチング損失が大きくなるが、比較例のパワーモジュールのようにゲート抵抗8を大きくする場合に比べ、スイッチング損失が小さくなる。
【0085】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1-1)パワーモジュール1は、上側スイッチング素子11のドレイン端子11d及びゲート端子11gに電気的に接続される上側コンデンサ13と、下側スイッチング素子12のドレイン端子12d及びゲート端子12gに電気的に接続される下側コンデンサ14とを有する。この構成によれば、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変化するとき、下側コンデンサ14によって下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度が遅くなる。これにより、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化速度が遅くなるため、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuの変化速度が遅くなる。したがって、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuのサージ電圧の増加が抑制されるため、上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuの変動を低減することができる。また例えば上側スイッチング素子11がオン状態からオフ状態に変化するとき、上側コンデンサ13によって上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの変化速度が遅くなる。これにより、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度が遅くなるため、下側スイッチング素子12のゲート・ソース間電圧Vgslの変化速度が遅くなる。これにより、下側スイッチング素子12のゲート・ソース間電圧Vgslのサージ電圧の増加が抑制されるため、下側スイッチング素子12のゲート・ソース間電圧Vgslの変動を低減することができる。
【0086】
(1-2)上側コンデンサ13は、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが正の値の場合に容量が増加するように構成されている。下側コンデンサ14は、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが正の値の場合に容量が増加するように構成されている。この構成によれば、ドレイン・ソース間電圧Vdsが高い領域においてゲート・ドレイン間容量Cgdをより増加させることができ、ゲート・ソース間電圧Vgsの変動を好適に抑制することができる。
【0087】
(1-3)パワーモジュール1は、複数個(2個)の上側スイッチング素子11が互いに並列に接続され、複数個(2個)の下側スイッチング素子12が互いに並列に接続されているため、複数個の上側スイッチング素子11のオン抵抗及び複数個の下側スイッチング素子12のオン抵抗が小さくなる。したがって、パワーモジュール1の導通損失を低減することができる。
【0088】
(1-4)上側スイッチング素子11のドレイン・ゲート間電圧Vdgu及び下側スイッチング素子12のドレイン・ゲート間電圧Vdglはそれぞれ高電圧が印加されるため、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14はそれぞれ高電圧が印加されることになる。このため、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14に対して十分な耐圧及び絶縁距離が必要となる。このような実情に対して、本実施形態のパワーモジュール1は、基板20に実装された上側スイッチング素子11、下側スイッチング素子12、上側コンデンサ13、及び下側コンデンサ14を封止する封止樹脂40を有する。この封止樹脂40によって沿面放電を抑制することができるため、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の耐圧及び絶縁距離を確保することができる。
【0089】
(1-5)第2方向Yにおいて、出力配線部22の一方側に第1入力配線部23が配置され、出力配線部22の他方側に第2入力配線部24が配置されている。上側スイッチング素子11は第1入力配線部23に実装され、下側スイッチング素子12は出力配線部22に実装されている。この構成によれば、上側スイッチング素子11のソース電極41と出力配線部22とを繋ぐ上側電力用ワイヤ44の長さを短くすることができ、下側スイッチング素子12のソース電極41と第2入力配線部24とを繋ぐ下側電力用ワイヤ46の長さを短くすることができる。
【0090】
(1-6)上側コンデンサ13が上側アイランド部37に電気的に接続され、上側アイランド部37が上側接続用ワイヤ39Uにより第1入力配線部23に電気的に接続されている。これにより、上側コンデンサ13が第1上側制御配線部25の屈曲部25cに対して、上側コンデンサ13の第1端子及び第2端子の配列方向が第1方向Xとなる状態で接続することができる。したがって、第1上側制御配線部25において上側スイッチング素子11のゲート電極42に接続された上側制御用ワイヤ45が接続された部分から第1上側制御端子部材33が接続される部分までの範囲において、上側コンデンサ13が第1上側制御配線部25の凹部25d以外の部分で接続することができる。
【0091】
また下側コンデンサ14が下側アイランド部38に電気的に接続され、下側アイランド部38が下側接続用ワイヤ39Lにより出力配線部22に電気的に接続されている。これにより、下側コンデンサ14が第1下側制御配線部27の屈曲部27cに対して、下側コンデンサ14の第1端子及び第2端子の配列方向が第1方向Xとなる状態で接続することができる。したがって、第1下側制御配線部27において下側スイッチング素子12のゲート電極42に接続された下側制御用ワイヤ47が接続された部分から第1下側制御端子部材35が接続される部分までの範囲において、下側コンデンサ14が第1下側制御配線部27の凹部27d以外の部分で接続することができる。加えて、下側アイランド部38が下側接続用ワイヤ39Lによって出力配線部22と電気的に接続されるため、下側アイランド部38と出力配線部22との間に他の部材(例えば第2入力配線部24)が存在しても、その他の部材を跨いで電気的に接続することができる。
【0092】
(1-7)下側スイッチング素子12は、出力配線部22の第1部分22aにおいて第2方向Yの第2入力配線部24寄りに配置されている。このため、出力配線部22の第1部分22aにおいて、上側スイッチング素子11に接続された上側電力用ワイヤ44を出力配線部22に接続するためのスペースを確保することができる。したがって、上側電力用ワイヤ44を出力配線部22に容易に接続することができる。
【0093】
(1-8)出力配線部22の第1方向Xの長さは、下側スイッチング素子12が1~5個配置可能な長さに設定されている。第1入力配線部23の第1方向Xの長さは、上側スイッチング素子11が1~5個配置可能な長さに設定されている。この構成によれば、パワーモジュール1の同一サイズにおいて、オン抵抗が異なるパワーモジュール1のバリエーションを提供することができる。
【0094】
(1-9)上側スイッチング素子11と上側コンデンサ13とが個別のチップとして設けられ、下側スイッチング素子12と下側コンデンサ14とが個別のチップとして設けられている。この構成によれば、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の個数及び容量を任意に設定可能となるため、サージ電圧抑制のために適切な上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14を用いることができる。
【0095】
(第2実施形態)
図17図30を参照して、第2実施形態のパワーモジュール1について説明する。本実施形態のパワーモジュール1は、第1実施形態のパワーモジュール1と比較して、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14を省略した点と、上側ダイオード71及び下側ダイオード72を追加した点とが異なる。以下の説明において、第1実施形態のパワーモジュール1と共通の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。また、図18図24は、本実施形態のパワーモジュール1の構成の一例を示している。なお、本実施形態のパワーモジュール1の構成は図18図24の構成に限られず、種々の変更が可能である。
【0096】
図17及び図19に示すように、上側ダイオード71は上側スイッチング素子11とは別体として設けられ、下側ダイオード72は下側スイッチング素子12とは別体として設けられている。図17に示すとおり、上側ダイオード71のカソードは、上側スイッチング素子11のドレイン端子11dと第1入力端子Pとを繋ぐ第1配線15に電気的に接続されている。上側ダイオード71のアノードは、上側スイッチング素子11のソース端子11sと下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとを繋ぐ第4配線18においてノードNよりも上側スイッチング素子11側の部分に電気的に接続されている。下側ダイオード72のカソードは、第4配線18においてノードNよりも下側スイッチング素子12側の部分に電気的に接続されている。下側ダイオード72のアノードは、下側スイッチング素子12のソース端子12sと第2入力端子Nとを繋ぐ第5配線19に電気的に接続されている。本実施形態では、上側ダイオード71及び下側ダイオード72はそれぞれ、ショットキーバリアダイオードが用いられている。上側ダイオード71及び下側ダイオード72のそれぞれの順方向しきい値電圧は、上側スイッチング素子11のボディダイオード11a及び下側スイッチング素子12のボディダイオード12aのそれぞれの順方向しきい値電圧よりも低い。
【0097】
上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12のそれぞれの個数は任意に変更可能である。例えば、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12のそれぞれの個数は、予め設定されたオン抵抗となるように設定される。上側スイッチング素子11が複数個設けられる場合、複数の上側スイッチング素子11は互いに並列に接続される。すなわち、複数の上側スイッチング素子11のドレイン端子11dが互いに接続され、複数の上側スイッチング素子11のソース端子11sが互いに接続され、複数の上側スイッチング素子11のゲート端子11gが互いに接続される。また下側スイッチング素子12が複数個設けられる場合、複数の下側スイッチング素子12は互いに並列に接続される。すなわち、複数の下側スイッチング素子12のドレイン端子12dが互いに接続され、複数の下側スイッチング素子12のソース端子12sが互いに接続され、複数の下側スイッチング素子12のゲート端子12gが互いに接続される。本実施形態では、上側スイッチング素子11は3個設けられ、下側スイッチング素子12は3個設けられている。
【0098】
また上側ダイオード71及び下側ダイオード72のそれぞれの個数は任意に変更可能である。例えば、上側ダイオード71及び下側ダイオード72のそれぞれの個数は、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12を避けて流す還流電流の大きさに基づいて設定される。上側ダイオード71が複数個設けられる場合、複数の上側ダイオード71は互いに並列に接続される。すなわち、複数の上側ダイオード71のアノードが互いに接続され、複数の上側ダイオード71のカソードが互いに接続される。複数の上側ダイオード71のカソードは第1配線15に接続され、複数の上側ダイオード71のアノードは第4配線18におけるノードNよりも上側スイッチング素子11側の部分に接続される。また下側ダイオード72が複数個設けられる場合、複数の下側ダイオード72は互いに並列に接続される。すなわち、複数の下側ダイオード72のアノードが互いに接続され、複数の下側ダイオード72のカソードが互いに接続される。複数の下側ダイオード72のカソードは第4配線18におけるノードNよりも下側スイッチング素子12側の部分に接続され、複数の下側ダイオード72のアノードは第5配線19に接続される。本実施形態では、上側ダイオード71は2個設けられ、下側ダイオード72は2個設けられている。
【0099】
パワーモジュール1は、上側ダイオード71が許容可能なDC定格電流が、上側スイッチング素子11が許容可能なDC定格電流未満となり、かつ下側ダイオード72が許容可能なDC定格電流が、下側スイッチング素子12が許容可能なDC定格電流未満となるように構成されている。ここで、DC定格電流は、絶対最大定格の直流電流である。上側ダイオード71及び上側スイッチング素子11がそれぞれ複数個設けられる場合、パワーモジュール1は、複数の上側ダイオード71のDC定格電流の合計が、複数の上側スイッチング素子11のDC定格電流の合計未満となるように構成されている。また下側ダイオード72及び下側スイッチング素子12がそれぞれ複数個設けられる場合、パワーモジュール1は、複数の下側ダイオード72のDC定格電流の合計が、複数の下側スイッチング素子12のDC定格電流の合計未満となるように構成されている。
【0100】
一例では、パワーモジュール1は、上側ダイオード71の個数が上側スイッチング素子11の個数よりも少なく、かつ下側ダイオード72の個数が下側スイッチング素子12の個数よりも少なくなるように構成されている。上述したとおり、本実施形態では、図19に示すとおり、パワーモジュール1は、3個の上側スイッチング素子11、3個の下側スイッチング素子12、2個の上側ダイオード71、及び2個の下側ダイオード72を有する。また例えば、1つの上側ダイオード71が許容可能なDC定格電流が、1つの上側スイッチング素子11が許容可能なDC定格電流未満としてもよい。また1つの下側ダイオード72が許容可能なDC定格電流が、1つの下側スイッチング素子12が許容可能なDC定格電流未満としてもよい。この場合、上側スイッチング素子11の個数と上側ダイオード71の個数とが互いに等しくてもよい。また下側スイッチング素子12の個数と下側ダイオード72の個数とが互いに等しくてもよい。
【0101】
図18図20に示すように、パワーモジュール1は、平面視において矩形状の基板80と、各スイッチング素子11,12及び各ダイオード71,72を封止する封止樹脂90とを備える。以降の説明では、基板80の縦方向を「第1方向X」と規定し、基板80の横方向(長手方向)を「第2方向Y」と規定し、基板80の板厚方向を「第3方向Z」と規定する。
【0102】
基板80は、セラミック基板81とグラファイト基板82とが積層された構成を有する。グラファイト基板82は、第1基板82A及び第2基板82Bを有する。第1基板82Aと第2基板82Bは、第1方向Xにおいて隙間を空けて並べて配置されている。第1基板82A及び第2基板82Bはそれぞれ、第2方向Yが長手方向となる矩形状に形成されている。
【0103】
図19図21、及び図22に示すように、セラミック基板81は、セラミック材料からなる本体部81aと、本体部81aの裏面側に設けられた裏面金属層81bと、本体部81aの表面側に設けられた表面金属層81cとを有する。裏面金属層81bは、例えば銅(Cu)からなり、本体部81aの裏面に接着剤等により取り付けられている。表面金属層81cは、例えば銅(Cu)からなり、本体部81aの表面に接着剤等により取り付けられている。図20図22に示すとおり、平面視における本体部81aの面積は、平面視における表面金属層81cの面積及び裏面金属層81bの面積のそれぞれよりも大きい。すなわち、表面金属層81cの外周縁は、本体部81aの外周縁よりも内側に形成され、裏面金属層81bの外周縁は、本体部81aの外周縁よりも内側に形成されている。また例えば、本体部81aの厚さは、裏面金属層81b及び表面金属層81cの厚さのそれぞれよりも薄い。裏面金属層81bの厚さと表面金属層81cの厚さとは互いに等しい。裏面金属層81bの平面視における形状と表面金属層81cの平面視における形状とは互いに等しい。このように、裏面金属層81bの体積と表面金属層81cの体積とは互いに等しい。本実施形態では、本体部81aの厚さが0.32mmであり、裏面金属層81bの厚さが0.4mmであり、表面金属層81cの厚さが0.4mmである。なお、本体部81a、裏面金属層81b、及び表面金属層81cの厚さはそれぞれ、任意に変更可能である。一例では、本体部81aの厚さ、裏面金属層81bの厚さ、及び表面金属層81cの厚さが互いに等しくてもよい。図21に示すように、裏面金属層81bは封止樹脂90から露出する一方、本体部81aは封止樹脂90から露出していない。すなわち、封止樹脂90は、本体部81aの裏面金属層81b側の部分を覆っている。これにより、セラミック基板81が封止樹脂90から剥離することを抑制することができる。
【0104】
図19に示すように、第1基板82A及び第2基板82Bはそれぞれ、セラミック基板81の表面金属層81cに積層されている。第1基板82Aは、グラファイトからなる本体部82aと、本体部82aの裏面側に設けられた裏面金属層82bと、本体部82aの表面側に設けられた表面金属層82cとを有する。裏面金属層82bは、例えば銅(Cu)からなる。裏面金属層82bは、セラミック基板81の表面金属層81cと半田等によって貼り合わせられている。表面金属層82cは、例えば銅(Cu)からなる。図19及び図20に示すとおり、平面視における本体部82aの面積は、平面視における表面金属層82cの面積及び裏面金属層82bの面積のそれぞれと等しい。第1基板82Aの外周縁は、セラミック基板81の表面金属層81cの外周縁よりも内側に形成されている。また例えば、本体部82aの厚さは、裏面金属層82bの厚さ及び表面金属層82cの厚さのそれぞれよりも厚い。一例では、本体部82aは、裏面金属層82bの厚さ及び表面金属層82cの厚さのそれぞれの2倍以上の厚さを有する。また裏面金属層82bの厚さと表面金属層82cの厚さは互いに等しい。すなわち裏面金属層82bの体積と表面金属層82cの体積とは互いに等しい。また裏面金属層82bの厚さ及び表面金属層82cの厚さはそれぞれ、セラミック基板81の裏面金属層81bの厚さ及び表面金属層81cの厚さよりも厚い。一例では、裏面金属層82bの厚さ及び表面金属層82cの厚さはそれぞれ、セラミック基板81の裏面金属層81bの厚さ及び表面金属層81cの厚さの2倍程度である。本実施形態では、本体部82aの厚さが2.0mmであり、裏面金属層82bの厚さが0.8mmであり、表面金属層82cの厚さが0.8mmである。
【0105】
第1基板82Aの本体部82aは、異方性となる熱伝導性を有する。詳述すると、第1基板82Aの本体部82aは、第2方向Yにおける本体部82aの熱伝導性が第1方向Xにおける本体部82aの熱伝導性よりも低くなるように構成されている。言い換えれば、第1基板82Aの本体部82aは、第2方向Yにおける本体部82aの熱伝導率が第1方向Xにおける本体部82aの熱伝導率よりも低くなるように構成されている。第1基板82Aの本体部82aは、第3方向Zの熱伝導性が第1方向Xにおける本体部82aの熱伝導性と等しくなるように構成されている。なお、第1基板82Aの本体部82aは、第1方向Xの熱伝導性と第3方向Zの熱伝導性とが互いに異なってもよい。この場合においても第1基板82Aの本体部82aの第2方向Yの熱伝導性が、第1方向Xの熱伝導性及び第3方向Zの熱伝導性よりも低いことが好ましい。
【0106】
第2基板82Bの構造は、第1基板82Aの構造と同じであり、本体部82a、裏面金属層82b、及び表面金属層82cを有する。第2基板82Bの裏面金属層82bは、セラミック基板81の表面金属層81cに貼り合わせられている。第2基板82Bの外周縁は、セラミック基板81の表面金属層81cの外周縁よりも内側に形成されている。
【0107】
第2基板82Bの本体部82aは、異方性となる熱伝導性を有する。詳述すると、第2基板82Bの本体部82aは、第2方向Yにおける本体部82aの熱伝導性が第1方向Xにおける本体部82aの熱伝導性よりも低くなるように構成されている。言い換えれば、第2基板82Bの本体部82aは、第2方向Yにおける本体部82aの熱伝導率が第1方向Xにおける本体部82aの熱伝導率よりも低くなるように構成されている。第2基板82Bの本体部82aは、第3方向Zの熱伝導性が第1方向Xにおける本体部82aの熱伝導性と等しくなるように構成されている。なお、第2基板82Bの本体部82aは、第1方向Xの熱伝導性と第3方向Zの熱伝導性とが互いに異なってもよい。この場合においても第2基板82Bの本体部82aの第2方向Yの熱伝導性が、第1方向Xの熱伝導性及び第3方向Zの熱伝導性よりも低いことが好ましい。
【0108】
図19及び図20に示すように、パワーモジュール1は、第1入力端子部材83、第2入力端子部材84、出力端子部材85、上側信号基板86、下側信号基板87、第1上側制御端子部材88A、第2上側制御端子部材88B、第1下側制御端子部材89A、及び第2下側制御端子部材89Bを有する。第1入力端子部材83はパワーモジュール1の第1入力端子Pを構成し、第2入力端子部材84はパワーモジュール1の第2入力端子Nを構成し、出力端子部材85はパワーモジュール1の出力端子Oを構成する。また第1上側制御端子部材88Aは第1上側制御端子GU1を構成し、第2上側制御端子部材88Bは第2上側制御端子GU2を構成し、第1下側制御端子部材89Aは第1下側制御端子GL1を構成し、第2下側制御端子部材89Bは第2下側制御端子GL2を構成する。第1入力端子部材83、第2入力端子部材84、出力端子部材85、第1上側制御端子部材88A、第2上側制御端子部材88B、第1下側制御端子部材89A、及び第2下側制御端子部材89Bはそれぞれ、銅(Cu)からなる。
【0109】
第1基板82Aには、第1入力端子部材83、第2入力端子部材84、上側信号基板86、3個の上側スイッチング素子11、及び2個の上側ダイオード71が実装されている。第1基板82Aの表面金属層82cは、上側スイッチング素子11と第1入力端子Pとを繋ぐ第1配線15(ともに図17参照)を構成している。
【0110】
第1入力端子部材83は、第1方向Xにおいて第1基板82Aのうちの第2基板82Bとは反対側の端部、かつ第2方向Yにおいて第1基板82Aのうちの各上側制御端子部材88A,88B側の部分に位置している。
【0111】
第2入力端子部材84は、第3方向Zにおいて第1基板82Aに対して隙間を空けて対向するように設けられている。第2入力端子部材84は、第1接続部84a、第2接続部84b、第3接続部84c、第4接続部84d、第5接続部84e、連結部84f、及び端子部84gを有する。第1接続部84a、第2接続部84b、第3接続部84c、第4接続部84d、第5接続部84e、連結部84f、及び端子部84gは、一体的に形成されている。
【0112】
連結部84fは、第1方向Xにおいて第1基板82Aのうちの第2基板82B側とは反対側の端部に対して第3方向Zに隙間を空けて対向した状態で配置されている。連結部84fは、第2方向Yに延びている。連結部84fの一部は、第1入力端子部材83の一部を第3方向Zから覆っている。各接続部84a~84bは、連結部84fから第2基板82B側に向けて第1方向Xに沿って延びている。各接続部84a~84bは同一形状であり、第1方向Xが長手方向となる長方形状に形成されている。第2方向Yにおいて各上側制御端子部材88A,88B側とは反対側の端部から順に、第1接続部84a、第2接続部84b、第3接続部84c、第4接続部84d、及び第5接続部84eが互いに第2方向Yに間隔を空けて位置している。各接続部84a~84eは、第2方向Yにおいて等間隔に配置されている。各接続部84a~84eの第1方向Xの長さは互いに等しい。各接続部84a~84eの先端部の第1方向Xの位置は互いに等しい。連結部84fは、第2方向Yに延びており、各接続部84a~84eの接続されている。端子部84gは、第1方向Xにおいて連結部84fから各接続部84a~84eとは反対側に延びている。端子部84gは、第2方向Yにおいて第1接続部84a及び第2接続部84bに対応する位置に設けられている。端子部84gの幅寸法(端子部84gの第2方向Yの長さ)は、各接続部84a~84eの幅寸法(各接続部84a~84eの第2方向Yの長さ)よりも大きい。端子部84gの幅寸法は、出力端子部材85の幅寸法(出力端子部材85の第2方向Yの長さ)及び第1入力端子部材83の幅寸法(第1入力端子部材83の第2方向Yの長さ)と等しい。
【0113】
図19及び図24に示すとおり、各接続部84a~84eの先端部は、絶縁支持部84xを介して第1基板82Aに取り付けられている。絶縁支持部84xは、電気的絶縁性を有する材料により形成されている。絶縁支持部84xによって第2入力端子部材84が支持されることにより、第2入力端子部材84が第1基板82Aに対して第3方向Zに隙間を介して対向することができる。絶縁支持部84xの厚さは、第2入力端子部材84が上側信号基板86に対して第3方向Zに隙間を形成可能となるように設定されている。
【0114】
3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71は、第1基板82Aのうちの第2基板82B側の端部に位置している。3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71は、第1基板82Aにおいて熱伝導率(熱伝導性)が低い第2方向Yにおいて互いに隙間を空けて配置されている。詳述すると、上側スイッチング素子11と上側ダイオード71とが第2方向Yにおいて交互に配置されている。すなわち第2方向Yにおいて上側ダイオード71の両側には、上側スイッチング素子11が位置している。第1方向Xにおける上側スイッチング素子11の位置と上側ダイオード71の位置とは互いに等しい。具体的には、第1方向Xにおいて上側スイッチング素子11における第2基板82B側の端縁の位置と、上側ダイオード71における第2基板82B側の端縁の位置とが互いに等しい。
【0115】
3個の上側スイッチング素子11のうちの1個の上側スイッチング素子11は、第2方向Yにおいて第1接続部84aと第2接続部84bとの間に配置されている。3個の上側スイッチング素子11のうちの別の1個の上側スイッチング素子11は、第2方向Yにおいて第3接続部84cと第4接続部84dとの間に配置されている。3個の上側スイッチング素子11の残りの1個の上側スイッチング素子11は、第2方向Yにおいて第2入力端子部材84とは異なる位置に配置されている。
【0116】
2個の上側ダイオード71のうちの1個の上側ダイオード71は、第2方向Yにおいて第2接続部84bと第3接続部84cとの間に配置されている。2個の上側ダイオード71のうちの残りの1個の上側ダイオード71は、第4接続部84dと第5接続部84eとの間に配置されている。
【0117】
3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71は、第1方向Xにおいて各接続部84a~84eの先端縁よりも第2基板82Bとは反対側に位置している。3個の上側スイッチング素子11は、第1方向Xにおいて、第1基板82Aのうちの第2基板82B側の端縁と、上側信号基板86のうちの第2基板82B側の端縁との間における上側信号基板86寄りに配置されている。一方、2個の上側ダイオード71は、第1方向Xにおいて、第1基板82Aのうちの第2基板82B側の端縁と、上側信号基板86のうちの第2基板82B側の端縁との間における第1基板82Aのうちの第2基板82B側の端縁寄りに配置されている。
【0118】
上側信号基板86は、第1基板82Aにおける第1入力端子部材83が配置される領域と3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71が配置される領域との間の領域に位置している。上側信号基板86は、第2方向Yが長手方向となる長方形状に形成されている。
【0119】
図23に示すように、上側信号基板86は、絶縁基板86a、裏面金属層86b、第1上側制御配線部86c、及び第2上側制御配線部86dを有する。第1上側制御配線部86cは第2配線16の一部を構成し、第2上側制御配線部86dは上側センス配線16Aの一部を構成している。
【0120】
絶縁基板86aは、電気的絶縁性を有する材料により形成されている。裏面金属層86bは、例えば銅(Cu)からなり、絶縁基板86aの裏面に接着剤等により取り付けられている。各上側制御配線部86c,86dは、絶縁基板86aの表面に接着剤等により取り付けられている。なお、裏面金属層86b及び各上側制御配線部86c,86dは、絶縁基板86aに形成された銅箔のパターンとして構成されてもよい。図23に示すとおり、裏面金属層86bの外周縁は、絶縁基板86aの外周縁よりも内側に形成されている。これにより、封止樹脂90が絶縁基板86aの裏面側を覆うため、第1基板82Aから上側信号基板86が剥離することを抑制することができる。
【0121】
第1上側制御配線部86cと第2上側制御配線部86dとは、第1方向Xにおいて間隔を空けて並べて配置されている。各上側制御配線部86c,86dは、第2方向Yに沿って延びている。第1方向Xにおいて第1上側制御配線部86cは、第2上側制御配線部86dよりも3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71側に配置されている。第2方向Yにおいて第1上側制御配線部86cの一方側の端部には、第1上側制御端子部材88Aが取り付けられ、第2上側制御配線部86dの一方側の端部には、第2上側制御端子部材88Bが取り付けられている。各上側制御端子部材88A,88Bは、封止樹脂90から第2方向Yに突出している。
【0122】
第2基板82Bには、出力端子部材85、下側信号基板87、3個の下側スイッチング素子12、及び2個の下側ダイオード72が実装されている。第2基板82Bの表面金属層82cは、上側スイッチング素子11のソース端子11sと下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとを繋ぐ第4配線18の一部を構成している。
【0123】
出力端子部材85は、第2基板82Bの表面金属層82cに取り付けられている。出力端子部材85は、第1方向Xにおいて第2基板82Bのうちの第1基板82A側とは反対側の端部、かつ第2方向Yにおいて第2基板82Bの中央部に位置している。出力端子部材85は、第1方向Xに延び、封止樹脂90から外部に突出している(図17参照)。
【0124】
3個の下側スイッチング素子12及び2個の下側ダイオード72は、第2基板82Bのうちの第1基板82A側の端部に位置している。3個の下側スイッチング素子12及び2個の下側ダイオード72は、第2基板82Bにおいて熱伝導率(熱伝導性)が低い第2方向Yにおいて互いに隙間を空けて配置されている。詳述すると、下側スイッチング素子12と下側ダイオード72とが第2方向Yにおいて交互に配置されている。すなわち第2方向Yにおいて下側ダイオード72の両側には、下側スイッチング素子12が位置している。第1方向Xにおける下側スイッチング素子12の位置と下側ダイオード72の位置とは互いに等しい。具体的には、第1方向Xにおいて下側スイッチング素子12における第1基板82A側の端縁の位置と、下側ダイオード72における第1基板82A側の端縁の位置とが互いに等しい。
【0125】
3個の下側スイッチング素子12は、第1方向Xにおいて、第2基板82Bのうちの第1基板82A側の端縁と、下側信号基板87のうちの第1基板82A側の端縁との間における下側信号基板87寄りに配置されている。一方、2個の下側ダイオード72は、第1方向Xにおいて、第2基板82Bのうちの第1基板82A側の端縁と、下側信号基板87のうちの第1基板82A側の端縁との間における第2基板82Bのうちの第1基板82A側の端縁寄りに配置されている。
【0126】
下側信号基板87は、第2基板82Bにおける出力端子部材85が配置される領域と3個の下側スイッチング素子12及び2個の下側ダイオード72が配置される領域との間の領域に位置している。下側信号基板87は、第2方向Yが長手方向となる長方形状に形成されている。
【0127】
次に、各スイッチング素子11,12及び各ダイオード71,72の電気的な接続構成について説明する。
3個の上側スイッチング素子11はそれぞれ、ゲート電極42(図5(a)参照)が上側信号基板86側となるように配置されている。ゲート電極42は、1本の上側制御用ワイヤ45により第1上側制御配線部86cに電気的に接続されている。ソース電極41(図5(a)参照)は、1本の上側制御用ワイヤ45により第2上側制御配線部86dに電気的に接続されている。またソース電極41は、4本の上側電力用ワイヤ44により第2基板82Bの表面金属層82cに電気的に接続されている。3個の上側スイッチング素子11のドレイン電極48(図6参照)はそれぞれ、半田等により第1基板82Aの表面金属層81cに電気的に接続されている。
【0128】
2個の上側ダイオード71のカソードはそれぞれ、半田等により第1基板82Aの表面金属層81cに電気的に接続されている。2個の上側ダイオード71のアノードはそれぞれ、上側ダイオード用接続部材の一例として4本の上側ダイオード用ワイヤ91により第2基板82Bの表面金属層82cに電気的に接続されている。本実施形態の上側ダイオード用ワイヤ91の線径は、上側電力用ワイヤ44の線径と等しい。4本の上側ダイオード用ワイヤ91は、そのインダクタンスが4本の上側電力用ワイヤ44のインダクタンスよりも小さくなるように構成されることが好ましい。一例では、4本の上側ダイオード用ワイヤ91の長さはそれぞれ、4本の上側電力用ワイヤ44の長さよりも短い。なお、上側ダイオード用ワイヤ91のインダクタンスが上側電力用ワイヤ44のインダクタンスよりも小さくなる構成の一例として、上側ダイオード用ワイヤ91の線径が上側電力用ワイヤ44の線径よりも大きくなるように構成されてもよい。
【0129】
3個の下側スイッチング素子12はそれぞれ、ゲート電極42が下側信号基板87側となるように配置されている。ゲート電極42は、1本の下側制御用ワイヤ47により第1下側制御配線部87cに電気的に接続されている。ソース電極41は、1本の下側制御用ワイヤ47により第2下側制御配線部87dに電気的に接続されている。またソース電極41は、4本の下側電力用ワイヤ46により第1基板82Aの表面金属層81cに電気的に接続されている。3個の下側スイッチング素子12のドレイン電極48はそれぞれ、半田等により第2基板82Bの表面金属層82cに電気的に接続されている。
【0130】
2個の下側ダイオード72のカソードはそれぞれ、半田等により第2基板82Bの表面金属層82cに電気的に接続されている。2個の下側ダイオード72のアノードはそれぞれ、下側ダイオード用接続部材の一例として4本の下側ダイオード用ワイヤ92により第1基板82Aの表面金属層81cに電気的に接続されている。下側ダイオード用ワイヤ92の線径は、下側電力用ワイヤ46の線径と等しい。また下側ダイオード用ワイヤ92の線径は、上側ダイオード用ワイヤ91の線径と等しい。4本の下側ダイオード用ワイヤ92は、そのインダクタンスが4本の下側電力用ワイヤ46のインダクタンスよりも小さくなるように構成されることが好ましい。一例では、4本の下側ダイオード用ワイヤ92の長さはそれぞれ、4本の下側電力用ワイヤ46の長さよりも短い。なお、下側ダイオード用ワイヤ92のインダクタンスが下側電力用ワイヤ46のインダクタンスよりも小さくなる構成の一例として、下側ダイオード用ワイヤ92の線径が下側電力用ワイヤ46の線径よりも大きくなるように構成されてもよい。
【0131】
(上側ダイオード及び下側ダイオードの構成)
図25及び図26を参照して、上側ダイオード71及び下側ダイオード72の構成について説明する。なお、上側ダイオード71及び下側ダイオード72は同じ構成であるため、以下の説明では、上側ダイオード71の構成を説明し、下側ダイオード72の構成の説明を省略する。また、上側ダイオード71及び下側ダイオード72の構成は、図25及び図26に示す構成に限れず、種々の変更が可能である。
【0132】
図25は、上側ダイオード71の構成の一例を示している。上側ダイオード71は、ワイドギャップ半導体からなる。上側ダイオード71は、4H-SiC(絶縁破壊電界が約2.8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約3.26eVのワイドバンドギャップ半導体)が用いられている。なお、上側ダイオード71に用いられるワイドバンドギャップ半導体は、シリコンカーバイド(SiC)に限られず、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンド等であってもよい。窒化ガリウム(GaN)は、その絶縁破壊電界が約3MV/cmであり、バンドギャップの幅が約3.42eVである。酸化ガリウム(Ga)は、その絶縁破壊電界が約8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約4.8eVである。ダイヤモンドは、その絶縁破壊電界が約8MV/cmであり、バンドギャップの幅が約5.47eVである。
【0133】
図26に示すように、上側ダイオード71は、n型のSiC基板100と、n型のSiC基板100の表面100Aに積層されたエピタキシャル層101とを有する。
SiC基板100の裏面100Bには、その全域を覆うようにカソード電極102が配置されている。カソード電極102は、SiC基板100との間にオーミック接合を形成している。カソード電極102は、例えばSiC基板50側から順にチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)、及び銀(Ag)が積層された積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)を適用することができる。
【0134】
SiC基板100は、例えば(0001)面(Si面)を主面とする基板である。したがって、SiC基板100の表面100A(主面)にエピタキシャル成長によって積層されるエピタキシャル層101は、(0001)面を主面として積層される。この場合、SiC基板100の裏面100Bは、(000-1)面(C面)である。なお、SiC基板100は、その表面100Aが(000-1)面で、裏面100Bが(0001)面であってもよい。また、SiC基板100は、0~10度のオフ角を有することが好ましい。
【0135】
エピタキシャル層101には、活性領域103と、活性領域103を取り囲む外周領域104とが設定されている。
活性領域103においてエピタキシャル層101は、トレンチ105が形成された表面101Aを有する。トレンチ105は、互いに間隔を空けて複数個形成されている。これにより、トレンチ105は、活性領域103に複数の単位セル106を区画している。本実施形態では、図25に示すように、ストライプパターンのトレンチ105が、活性領域103に複数の直線状の単位セル106を区画している。したがって、エピタキシャル層101の表面部には、複数の単位セル106の表面106A並びにそれらの間のトレンチ105の底面105A及び側面105Bが断面視で葛折状に連続した表面(エピタキシャル層101の表面101A)が形成されている。なお、トレンチ105のパターンは、ストライプパターンに限られず、例えば格子パターンであってもよい。この場合、格子パターンのトレンチ105の各窓部分にメサ状の単位セル106が複数区画され、全体として単位セル106が行列状(マトリクス状)に配列される。
【0136】
エピタキシャル層101は、SiC基板100側から順に成長させられたn型のバッファ層107と、n型のドリフト層108と、p型層109とを有する。
p型層109は、活性領域103の全域に亘って連続した領域である(図25においてクロスハッチングが付された領域(後述するp型のJTE構造114の領域を除く))。p型層109は、ドリフト層108との界面110がエピタキシャル層101の表面101Aに沿うように、かつこの界面110の反対側の部分が表面101Aから露出するように、エピタキシャル層101の表面101Aに沿って形成されている。これにより、単位セル106では、トレンチ105の底面105Aに対して上方位置及び下方位置のそれぞれに、p型層109とドリフト層108との界面110が設定されている。具体的には、界面110は、単位セル106の表面106Aの直下に位置する相対的に上側に形成された第1界面110Aと、トレンチ105の底面105Aの直下に位置する相対的に下側に形成された第2界面110Bとを有する。したがって、ドリフト層108は、エピタキシャル層101において互いに隣り合うトレンチ105によって挟まれた部分に選択的に入り込んでいる。
【0137】
また、p型層109は、エピタキシャル層101の表面101Aから露出する高濃度領域であるp型領域111と、p型領域111よりも深い部分に形成され、p型領域111に比べて低濃度領域であるp型領域112とを有する。本実施形態では、p型領域111及びp型領域112は、その界面がエピタキシャル層101の表面101Aに層ように形成されており、p型層109は、p型領域111及びp型領域112の積層構造を有する。なお、p型領域111は、活性領域103の全域に亘って形成されている必要は無く、活性領域103の一部に選択的に形成されてもよい。例えば、単位セル106の表面106A、トレンチ105の底面105A、及びトレンチ105の側面105Bの少なくとも一つに選択的に形成されてもよい。
【0138】
また、p型層109は、トレンチ105の底面105Aと側面105Bとの間において互いに異なる厚さを有する。詳述すると、p型層109における底面105A上の部分が側面105B上の部分に比べて厚い。これにより、トレンチ105の底面105Aと側面105Bとの間でp型層109の厚さに差が設けられている。
【0139】
外周領域104においてエピタキシャル層101には、ドリフト層108が露出する深さまでエピタキシャル層101がエッチングされることによって除去領域113が形成されている。本実施形態では、除去領域113は、ストライプパターンのトレンチ105の長手方向の両端部を横切るように、活性領域103を取り囲む環状に形成されている。これにより、除去領域113は、ストライプパターンのトレンチ105に連なっている。つまり、除去領域113は、ストライプパターンの延長部で構成されている。また除去領域113の外周縁は、図25に示すように、エピタキシャル層101の端面101Bに一致してもよいし、エピタキシャル層101の端面101Bから内側に設定されてもよい(図示略)。除去領域113の深さは、トレンチ105の深さと同じであってもよい。
【0140】
除去領域113の形成によって、ドリフト層108は、活性領域103の周囲からSiC基板100の表面100Aに沿う横方向にエピタキシャル層101の端面101Bまで引き出された引き出し部108Aを有する。引き出し部108Aは、単位セル106の表面106Aに対して一段低くなった低段部となっている。
【0141】
また、外周領域104においてドリフト層108には、p型のJTE(Junction Termination Extension)構造114が形成されている。本実施形態では、JTE構造114は、活性領域103を取り囲む環状に形成されている。詳述すると、単位セル106及び引き出し部108Aを跨るように、p型層109と一体的に形成されている。JTE構造114は、エピタキシャル層101の端面101Bに向かって外側に広がる複数のリングによって構成されてもよい。この場合、複数のリング間において、互いに不純物濃度が等しくてもよいし、外側に向かって不純物濃度が減少してもよい。
【0142】
本実施形態では、JTE構造114は、不純物濃度の違いによって周方向に沿って分割されている。すなわちJTE構造114は、相対的に高濃度となる第1部分115(図25においてクロスハッチングが付された領域(p型層109の領域を除く))と、第1部分115に比べて低濃度となる第2部分116(図25においてドットが付された領域)とを有する。
【0143】
第1部分115は、第2部分116に対して活性領域103に近い側に配置されている。第1部分115において、JTE構造114は、第1部分115の他の部分に比べて高濃度となるp型領域117を有する。p型領域117は、JTE構造114とドリフト層108との境界から間隔を空けた内側において、この境界に沿ってp型領域111と一体的に形成されている。
【0144】
第2部分116は、複数のリングによって構成されている。第2部分116の最内周のリングは、図25及び図26に示すように第1部分115に接している。なお、第2部分116の最内周のリングは、第1部分115と接していなくてもよい。
【0145】
エピタキシャル層101上には、フィールド絶縁膜118が形成されている。フィールド絶縁膜118の材料としては、例えば酸化シリコン(SiO)等を用いることができる。フィールド絶縁膜118は、例えば、プラズマCVD(chemical vapor deposition)によって形成することができる。
【0146】
フィールド絶縁膜118には、活性領域103の全域及び外周領域104の一部を選択的に露出させるコンタクトホール119が形成されている。本実施形態では、コンタクトホール119の外周縁119Aは、第1部分115と第2部分116との境界に対して活性領域103に近い側に設定されている。これにより、フィールド絶縁膜118は、第2部分116の全体及び第1部分115の一部(例えば、周端部)を覆っている。またコンタクトホール119は、その幅が開口端に向かって広くなるテーパ形状に形成されていることが好ましい。
【0147】
フィールド絶縁膜118上には、アノード電極120が形成されている。アノード電極120は、コンタクトホール119から露出する活性領域103の全域を覆うように形成されており、トレンチ105に埋め込まされた埋め込み部121と、埋め込み部121を覆うようにエピタキシャル層101の最表面に沿って形成された平面部122とを有する。
【0148】
埋め込み部121は、トレンチ105の底面105A及び側面105Bにおいてp型層109に接しており、p型層109との間にオーミック接合を形成している。埋め込み部121の材料としては、例えば、ポリシリコン、タングステン(W)、チタン(Ti)、又はそれらの合金等を用いることができる。これらのうち、好ましくは、p型のポリシリコンを用いることができる。これらの材料は、良好な埋め込み性を有するため、埋め込み部121のステップカバレッジを向上することができる。このため、トレンチ105のアスペクト比が高い場合でも、アノード電極120の埋め込み時におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0149】
平面部122は、単位セル106の表面106Aにおいてp型層109に接しており、p型層109との間にオーミック接合を形成している。平面部122の材料としては、例えばTi/Ni等の積層構造を用いることができる。また平面部122は、コンタクトホール119の外方へフランジ状に張り出している。本実施形態では、アノード電極120の平面部122の外周縁122Aは、JTE構造114の第1部分115と第2部分116との境界に対して活性領域103から遠い側に位置している。つまり、アノード電極120の平面部122は、この境界よりも第2部分116側にはみ出すオーバーラップ部122Bを有する。
【0150】
上側スイッチング素子11の最表面には、表面保護膜123が形成されている。表面保護膜123の材料としては、例えば酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、ポリイミド等を用いることができる。また表面保護膜123は、例えばプラズマCVDによって形成することができる。表面保護膜123の膜厚の一例は、8000Å程度である。表面保護膜123には、アノード電極120の一部をパッドとして選択的に露出させるパッド開口123Aが形成されている。上側ダイオード用ワイヤ91(図20参照)は、パッド開口123Aを介してアノード電極120に接合される。
【0151】
このような上側ダイオード71の構成によれば、エピタキシャル層101にトレンチ105が形成されており、トレンチ105が形成されたエピタキシャル層101の表面101Aに沿うようにp型層109が形成され、p型層109とドリフト層108とのpn接合部を含むpnダイオードが形成されている。トレンチ105の側面105Bにもp型層109が形成されるため、p型層109の表面積は、エピタキシャル層101の主面に垂直な平面視(図24)における見かけ上の表面積よりも大きくなる。それに応じて、p型層109に対するアノード電極120の接触面積が増加するため、p型層109とアノード電極120との接触抵抗を低減することができる。このため、イオン注入によってp型層109を形成した上側ダイオード71でも低抵抗化を図ることができる。これにより、エピタキシャル成長によってp型層109を形成する場合に比べて簡単に製造でき、オン抵抗が低いpnダイオードを備える上側ダイオード71を提供することができる。
【0152】
また、p型層109におけるアノード電極120との接触部分が高濃度なp型領域111であるため、p型領域111においてアノード電極120との間に良好なオーミック接合を形成することができる。一方、p型領域111を覆うように低濃度となるp型領域112が形成されているため、トレンチ105の底部への電界集中を良好に緩和することができる。これにより、順方向電圧及び逆方向リーク電流を低減することができる。
【0153】
また、上側ダイオード71では、外周領域104にJTE構造114が形成されていることにより、JTE構造114とドリフト層108との界面のpn接合部から発生する空乏層によってトレンチ105の底部(特に、最も外側に配置されたトレンチ105)における電界集中を緩和することができる。これにより、トレンチ105の底部における逆方向リーク電流の発生を低減することができる。
【0154】
(作用)
次に、本実施形態の作用について、比較例のパワーモジュールとの比較に基づいて説明する。比較例のパワーモジュールは、本実施形態のパワーモジュール1から上側ダイオード71及び下側ダイオード72を省略した構成である。
【0155】
比較例のパワーモジュールでは、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変更するとき、図27に示すように、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdsuが増加する一方、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが低下する。このドレイン・ソース間電圧Vdsuは、負側まで落ち込み、上側スイッチング素子11のボディダイオードの順方向しきい値電圧に達したときに低下が止まる。このようにドレイン・ソース間電圧Vdslが変動することに伴い上側スイッチング素子11のゲート・ソース間電圧Vgsuも変動する。このため、このゲート・ソース間電圧Vgsuに発生するサージ電圧が増加してしまう。なお、例えば上側スイッチング素子11がオン状態からオフ状態に変更するときも同様に、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが下側スイッチング素子12のボディダイオードの順方向しきい値電圧まで落ち込むため、下側スイッチング素子12のゲート・ソース間電圧Vgslに発生するサージ電圧が増加する。
【0156】
このような比較例のパワーモジュールに対して、本実施形態のパワーモジュール1は、上側スイッチング素子11のボディダイオード11aの順方向しきい値電圧よりも低い順方向しきい値電圧を有する上側ダイオード71と、下側スイッチング素子12のボディダイオード12aの順方向しきい値電圧よりも低い順方向しきい値電圧を有する下側ダイオード72とを有する。このため、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変更するとき、図28に示すように、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが低下して負側に落ち込んだとしても、上側ダイオード71の順方向しきい値電圧に達すると、ドレイン・ソース間電圧Vdsuの低下が止まる。このため、比較例のパワーモジュールに比べて、ゲート・ソース間電圧Vgslが変動する期間が短くなるため、ゲート・ソース間電圧Vgslに発生するサージ電圧が低減される。
【0157】
(シミュレーション結果)
比較例及び本実施形態のパワーモジュール1において、上側スイッチング素子11をオフ状態に維持し、下側スイッチング素子12を駆動した場合における負側のサージ電圧の発生とスイッチング損失との関係について、図7及び図29に示す模式的な回路構成に基づいてシミュレーションを行った。図7は比較例のパワーモジュールの模式的な回路構成を示し、図29は本実施形態のパワーモジュール1の模式的な回路構成を示す。
【0158】
図29の回路構成では、上側スイッチング素子11のドレインに上側ダイオード71のカソードが電気的に接続され、上側スイッチング素子11のソースに上側ダイオード71のアノードが電気的に接続されている。下側スイッチング素子12のドレインに下側ダイオード72のカソードが電気的に接続され、下側スイッチング素子12のソースに下側ダイオード72のアノードが電気的に接続されている。また、上側スイッチング素子11のソースとゲートとが短絡され、下側スイッチング素子12のゲートに下側ゲート駆動回路3が電気的に接続されている。下側スイッチング素子12のゲートと下側ゲート駆動回路3との間には、ゲート抵抗8が設けられている。上側スイッチング素子11のドレインには電源ESの正側端子が電気的に接続され、下側スイッチング素子12のソースには電源ESの負側端子が電気的に接続されている。図29の回路構成は、電源ESの正側端子と上側スイッチング素子11のドレインとの間と、上側スイッチング素子11のソースと下側スイッチング素子12のドレインとの間とを繋ぐ配線9を有する。配線9は、インダクタ負荷9aを有する。
【0159】
比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を2Ω、3Ω、4Ω、及び5Ωと変化させた場合のシミュレーションを行った。ここで、比較例のパワーモジュールの回路構成であってゲート抵抗8が2Ωの場合を基準条件と規定する。
【0160】
図30に示すように、比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を大きくすることにより、下側スイッチング素子12のスイッチング速度(ドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度)が遅くなることにより負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる一方、ゲート抵抗8を大きくすることにより、スイッチング損失が急激に大きくなる。
【0161】
これに対して、本実施形態のパワーモジュール1では、上側ダイオード71により、基準条件よりも負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。一方、本実施形態のパワーモジュール1では、基準条件と比較して、スイッチング損失が大きくなるが、比較例のパワーモジュールのようにゲート抵抗8を大きくする場合に比べ、スイッチング損失が小さくなる。
【0162】
本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2-1)パワーモジュール1は、上側スイッチング素子11のボディダイオード11aの順方向しきい値電圧よりも低い順方向しきい値電圧を有する上側ダイオード71と、下側スイッチング素子12のボディダイオード12aの順方向しきい値電圧よりも低い順方向しきい値電圧を有する下側ダイオード72とを有する。この構成によれば、例えば下側スイッチング素子12がオン状態からオフ状態に変化するとき、上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuが負側に低下しても上側ダイオード71の順方向しきい値電圧で上側スイッチング素子11のドレイン・ソース間電圧Vdsuの低下が止まる。また例えば上側スイッチング素子11がオン状態からオフ状態に変化するとき、下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslが負側に低下しても下側ダイオード72の順方向しきい値電圧で下側スイッチング素子12のドレイン・ソース間電圧Vdslの低下が止まる。このように、ドレイン・ソース間電圧Vdsの変動期間が短くなるため、ゲート・ソース間電圧Vgsの変動期間が短くなる。したがって、ゲート・ソース間電圧Vgsの変動を低減することができる。
【0163】
さらに、上側ダイオード71の許容可能なDC定格電流が上側スイッチング素子11の許容可能なDC定格電流未満であり、下側ダイオード72の許容可能なDC定格電流が下側スイッチング素子12の許容可能なDC定格電流未満である。このため、上側ダイオード71のチップ面積及び下側ダイオード72のチップ面積をそれぞれ小さくすることができる。したがって、パワーモジュール1の小型化を図ることができる。
【0164】
(2-2)上側ダイオード71の個数が上側スイッチング素子11の個数よりも少なく、下側ダイオード72の個数が下側スイッチング素子12の個数よりも少ない。この構成によれば、上側ダイオード71の個数が上側スイッチング素子11の個数以上の場合、及び下側ダイオード72の個数が下側スイッチング素子12の個数以上の場合と比較して、パワーモジュール1の素子数を減らすことができ、パワーモジュール1の小型化を図ることができる。
【0165】
(2-3)パワーモジュール1の基板80は、グラファイト基板82を有する。グラファイト基板82は、複数の上側スイッチング素子11及び複数の上側ダイオード71が第2方向Yに間隔を空けて配置された第1基板82Aと、複数の下側スイッチング素子12及び複数の下側ダイオード72が第2方向Yに間隔を空けて配置された第2基板82Bとを有する。第1基板82Aは、第2方向Yにおける第1基板82Aの熱伝導性が第1方向Xにおける第1基板82Aの熱伝導性よりも低くなるように構成されている。第2基板82Bは、第2方向Yにおける第2基板82Bの熱伝導性が第1方向Xにおける第2基板82Bの熱伝導性よりも低くなるように構成されている。この構成によれば、複数の上側スイッチング素子11の熱が複数の上側ダイオード71に伝わり難くなり、複数の下側スイッチング素子12の熱が複数の下側ダイオード72に伝わり難くなる。このため、上側ダイオード71及び下側ダイオード72の温度変化にともなう順方向しきい値の変化を抑制することができる。
【0166】
(2-4)第1基板82Aの裏面に裏面金属層82bが設けられ、第1基板82Aの表面に表面金属層82cが設けられている。裏面金属層82b及び表面金属層82cは、同一の材料により形成されている。この構成によれば、第1基板82Aの表面の熱伝導率と、第1基板82Aの裏面の熱伝導率とが同じになる。これにより、第1基板82Aが加熱されたときに第1基板82Aの表面の伸び量と第1基板82Aの裏面の伸び量とが概ね同一となる。したがって、第1基板82Aの表面の熱伝導率と第1基板82Aの裏面の熱伝導率との違いに起因して第1基板82Aが反ることを抑制することができる。また、第2基板82Bの裏面に裏面金属層82bが設けられ、第2基板82Bの表面に表面金属層82cが設けられている。この構成によれば、第1基板82Aと同様に、第2基板82Bの表面の熱伝導率と裏面の熱伝導率との違いに起因する第2基板82Bの反りを抑制することができる。
【0167】
(2-5)上側ダイオード71は、上側スイッチング素子11とは別チップとして設けられ、かつ上側スイッチング素子11とは間隔を空けて配置されている。下側ダイオード72は、下側スイッチング素子12とは別チップとして設けられ、かつ下側スイッチング素子12とは間隔を空けて配置されている。この構成によれば、上側ダイオード71が上側スイッチング素子11による熱影響を受けることを抑制することができ、下側ダイオード72が下側スイッチング素子12による熱影響を受けることを抑制することができる。
【0168】
(2-6)上側ダイオード用ワイヤ91のインダクタンスが上側電力用ワイヤ44のインダクタンスよりも小さくなるように構成されている。下側ダイオード用ワイヤ92のインダクタンスが下側電力用ワイヤ46のインダクタンスよりも小さくなるように構成されている。このような構成によれば、上側電力用ワイヤ44よりもインダクタンスが低い上側ダイオード用ワイヤ91に電流が流れ易くなるため、上側スイッチング素子11のボディダイオード11aよりも上側ダイオード71に電流が流れ易くなる。下側電力用ワイヤ46よりもインダクタンスが低い下側ダイオード用ワイヤ92に電流が流れ易くなるため、下側スイッチング素子12のボディダイオード12aよりも下側ダイオード72に電流が流れ易くなる。
【0169】
(2-7)複数の上側スイッチング素子11及び複数の上側ダイオード71は、第2入力端子部材84の各接続部84a~84eと第2方向Yにおいて隣り合うように配置されている。すなわち上側スイッチング素子11の上側電力用ワイヤ44と下側スイッチング素子12の下側電力用ワイヤ46とが第2方向Yにおいて隣り合う。上側ダイオード71の上側ダイオード用ワイヤ91と下側ダイオード72の下側ダイオード用ワイヤ92とが第2方向Yにおいて隣り合う。この構成によれば、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12が相補的にオンオフする場合に上側電力用ワイヤ44に流れる電流の向きと下側電力用ワイヤ46に流れる電流の向きとが逆方向になる。これにより、上側電力用ワイヤ44に発生する磁界と下側電力用ワイヤ46に発生する磁界とが打ち消し合うため、上側電力用ワイヤ44及び下側電力用ワイヤ46のノイズを低減することができる。また上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12が相補的にオンオフする場合に上側ダイオード用ワイヤ91に流れる電流の向きと下側ダイオード用ワイヤ92に流れる電流の向きとが逆方向になる。これにより、上側ダイオード用ワイヤ91に発生する磁界と下側ダイオード用ワイヤ92に発生する磁界とが打ち消し合うため、上側ダイオード用ワイヤ91及び下側ダイオード用ワイヤ92のノイズを低減することができる。
【0170】
特に、上側電力用ワイヤ44と下側電力用ワイヤ46とが互いに平行となるため、上側電力用ワイヤ44に発生する磁界と下側電力用ワイヤ46に発生する磁界とを効果的に打ち消し合うことができる。また上側ダイオード用ワイヤ91と下側ダイオード用ワイヤ92とが互いに平行となるため、上側ダイオード用ワイヤ91に発生する磁界と下側ダイオード用ワイヤ92に発生する磁界とを効果的に打ち消し合うことができる。
【0171】
(2-8)セラミック基板81の本体部81aの裏面に裏面金属層81bが設けられ、本体部81aの表面に表面金属層81cが設けられている。裏面金属層81b及び表面金属層81cは、同一の材料により形成されている。この構成によれば、セラミック基板81の本体部81aの表面の熱伝導率と、本体部81aの裏面の熱伝導率とが同じになる。これにより、セラミック基板81が加熱されたときにセラミック基板81の表面の伸び量とセラミック基板81の裏面の伸び量とが概ね同一となる。したがって、セラミック基板81の表面の熱伝導率とセラミック基板81の裏面の熱伝導率との違いに起因してセラミック基板81が反ることを抑制することができる。
【0172】
(第3実施形態)
図31図35を参照して、第3実施形態のパワーモジュール1について説明する。本実施形態のパワーモジュール1は、第2実施形態のパワーモジュール1と比較して、上側スイッチング素子及び上側ダイオードが同一チップに形成された点、及び下側スイッチング素子及び下側ダイオードが同一チップに形成された点が異なる。
【0173】
パワーモジュール1は、上側スイッチング素子及び上側ダイオードが同一チップに形成された上側MISトランジスタ130、及び下側スイッチング素子及び下側ダイオードが同一チップに形成された下側MISトランジスタ131を有する。各MISトランジスタ130,131は、シリコンカーバイド(SiC)が採用されたトレンチゲート型DMISFET(Double Implanted Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)である。上側MISトランジスタ130と下側MISトランジスタ131は、同一構造である。このため、以降の説明では、上側MISトランジスタ130の構造について説明し、下側MISトランジスタ131の構造の説明を省略する。なお、上側MISトランジスタ130及び下側MISトランジスタ131の構成は、図31及び図32に示す構成に限られず、種々の変更が可能である。
【0174】
上側MISトランジスタ130は、例えば図31(a)に示すような平面視で正方形のチップ状である。上側MISトランジスタ130は、図31(a)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ数mm程度である。
【0175】
上側MISトランジスタ130の表面には、ソースパッド132が形成されている。ソースパッド132は、上側MISトランジスタ130の表面のほぼ全域を覆うように形成されている。このソースパッド132の一辺の中央付近には、除去領域133が形成されている。除去領域133は、ソースパッド132が形成されていない領域である。
【0176】
除去領域133には、ゲートパッド134が配置されている。ゲートパッド134とソースパッド132との間には、間隔が設けられている。ゲートパッド134とソースパッド132とは互いに電気的に絶縁されている。
【0177】
図32に示すように、上側MISトランジスタ130は、n型のSiC基板140を有する。SiC基板140は、上側MISトランジスタ130のドレインとして機能し、その表面140A(上面)がSi面であり、その裏面140B(下面)がC面である。
【0178】
SiC基板140の表面140Aには、SiC基板140よりも低濃度のn型のエピタキシャル層141が積層されている。半導体層としてのエピタキシャル層141は、SiC基板140上に、所謂エピタキシャル成長によって形成されている。Si面である表面140A上に形成されるエピタキシャル層141は、Si面を成長主面として成長させられる。したがって、成長により形成されるエピタキシャル層141の表面141Aは、SiC基板140の表面140Aと同様に、Si面である。
【0179】
図31(a)に示すように、上側MISトランジスタ130には、平面視でエピタキシャル層141の中央部に配置され、上側MISトランジスタ130として機能する活性領域142と、この活性領域142を取り囲む外周領域143とが形成されている。
【0180】
活性領域142において、エピタキシャル層141にはゲートトレンチ144が格子状に形成されている(図31(b)参照)。これらゲートトレンチ144によりエピタキシャル層141はそれぞれ、四角状(正方形状)の複数のセル145に区画されている。
【0181】
複数のセル145は、ショットキーセル146と、ショットキーセル146よりも相対的に平面面積の小さいpnダイオードセル147とを含む。例えば、ショットキーセル146は、pnダイオードセル147の4つ分に相当する面積を有しており、ショットキーセル146の一辺の長さはpnダイオードセル147の一辺の長さの2倍に相当する。
【0182】
そして、1つのショットキーセル146と、そのショットキーセル146を取り囲む複数のpnダイオードセル147(本実施形態では、12個のpnダイオードセル147)とにより1つのセル群が構成されている。そしてこのようなセル群がさらに行列状に配置されている。ここで、互いに隣り合うセル群のpnダイオードセル147が共有されている。つまり、所定のセル群のショットキーセル146を取り囲むpnダイオードセル147は、所定のセル群の隣のセル群のショットキーセル146を取り囲むpnダイオードセル147としても用いられている。
【0183】
図32に示すように、ショットキーセル146及びpnダイオードセル147に共通する要素として、エピタキシャル層141には、その表面141Aから裏面141B側に向かって順に、n型のソース領域148、p型のボディ領域149、及びドリフト領域150を有する。
【0184】
ドリフト領域150は、エピタキシャル成長後のままの状態が維持されたn型の領域であり、全てのセル145の底部で一体的に繋がっており、それらの間で共有されている。つまり、ゲートトレンチ144は、ソース領域148及びボディ領域149を側面144Aに露出させ、その最深部がドリフト領域150の途中部に位置するように各セル145を区画している。ゲートトレンチ144は、隣り合うセル145の各間を、各セル145の4つの側面に沿って行方向及び列方向のそれぞれに直線状に延びる線状部151と、行方向に延びる線状部151と列方向に延びる線状部151とが交差する交差部152とを含む。
【0185】
ゲートトレンチ144の内面には、酸化膜SiO、もしくはHigh-k材料(SiN、Al、AlON等)からなるゲート絶縁膜153が、その全域を覆うように形成されている。ゲート絶縁膜153は、ゲートトレンチ144の底面144B上の部分が、ゲートトレンチ144の側面144A上の部分よりも厚くなっている。そして、ゲートトレンチ144におけるゲート絶縁膜153の内側がポリシリコンで埋め尽くされることにより、ゲートトレンチ144内にゲート電極154が埋設されている。
【0186】
このように、各ショットキーセル146及びpnダイオードセル147には、ソース領域148とドリフト領域150とが、エピタキシャル層141の表面141Aに垂直な縦方向にボディ領域149を介して離間して配置された、縦型MISトランジスタ構造が構成されている。
【0187】
ショットキーセル146の中央部には、エピタキシャル層141の表面141Aからソース領域148及びボディ領域149を貫通してドリフト領域150に達する、平面視で正方形状の第1ソーストレンチ155が形成されている。第1ソーストレンチ155の深さは、ゲートトレンチ144の深さと同じである。
【0188】
第1ソーストレンチ155には、p型の第1耐圧保持領域156が形成されている。第1耐圧保持領域156は、第1ソーストレンチ155の底面155Aと側面155Bとが交わって形成され、底面155Aの周囲を取り囲む環状のエッジ部155C及びこのエッジ部155Cから第1ソーストレンチ155の側面155Bに露出するボディ領域149に至る環状に形成されている。これにより、第1耐圧保持領域156に取り囲まれる第1ソーストレンチ155の底面155Aの中央部には、ドリフト領域150の一部からなる平面視で正方形状のショットキー領域157が形成されている。
【0189】
ショットキー領域157は、ショットキー領域157と第1耐圧保持領域156とのpn接合部(ボディダイオード158)から発生する空乏層が繋がらない面積が形成されている。
【0190】
一方、pnダイオードセル147の中央部には、エピタキシャル層141の表面141Aからソース領域148及びボディ領域149を貫通してドリフト領域150に達する第2ソーストレンチ159が形成されている。第2ソーストレンチ159の深さは、ゲートトレンチ144の深さと同じである。第2ソーストレンチ159の面積は、ショットキー領域157の面積よりも小さい。
【0191】
第2ソーストレンチ159には、p型の第2耐圧保持領域160が形成されている。第2耐圧保持領域160は、第2ソーストレンチ159の底面159Aの全面に亘り形成され、かつ、第2ソーストレンチ159の底面159Aと側面159Bとが交わって形成されて底面159Aの周囲を取り囲む環状のエッジ部159C及びこのエッジ部159Cから第2ソーストレンチ159の側面159Bに露出するボディ領域149に至る器状に形成されている。
【0192】
第2ソーストレンチ159には、その底面159Aの中央部における第2耐圧保持領域160の表層部にp型の底部ボディコンタクト領域161が形成されている。底部ボディコンタクト領域161をオーミック接触させることにより、第2耐圧保持領域160を介してpnダイオードセル147のボディ領域149に対してコンタクトすることができる(電気的に接続することができる)。
【0193】
そして第2ソーストレンチ159に第2耐圧保持領域160が形成されていることにより、pnダイオードセル147は、第2耐圧保持領域160とドリフト領域150とのpn接合により構成され、アノード側のコンタクトとして底部ボディコンタクト領域161を有し、カソード側のコンタクトとしてSiC基板140を有するボディダイオード162を内蔵している。
【0194】
また、複数のセル145を区画するゲートトレンチ144の各交差部152には、第3耐圧保持領域163(中継領域)が形成されている。第3耐圧保持領域163は、交差部152におけるゲートトレンチ144の底面144Bの全面に亘り形成され、かつ、底面144Bから交差部152に臨む各セル145の各角部の下部に形成されたゲートトレンチ144のエッジ部144C及びエッジ部144C直上のボディ領域149に至るように形成されている。すなわち、第3耐圧保持領域163は、平面視でゲートトレンチ144の交差部152よりもやや大きい正方形状に形成されており、その各角が、交差部152に臨む各セル145の各角部にそれぞれ入り込んでいる。また第3耐圧保持領域163の不純物濃度は、ボディ領域149の不純物濃度及びドリフト領域150の不純物濃度よりも高い。
【0195】
第3耐圧保持領域163の中継により、底部ボディコンタクト領域161→第2耐圧保持領域160→pnダイオードセル147のボディ領域149→第3耐圧保持領域163→ショットキーセル146のボディ領域149を介して、ショットキーセル146の第1耐圧保持領域156に対してコンタクトすることができる(電気的に接続することができる)。
【0196】
図31(a)に示すように、外周領域143において、エピタキシャル層141の表層部には、活性領域142を取り囲むように、活性領域142から間隔を空けてp型のガードリング164が複数本(本実施形態では、4本)形成されている。これらガードリング164は、p型のボディ領域149を形成する工程と同一のイオン注入工程で形成することができる。各ガードリング164は、平面視において上側MISトランジスタ130の外周に沿う四角環状に形成されている。
【0197】
図32に示すように、エピタキシャル層141上には、ゲート電極154を被覆するように、酸化膜SiO、もしくはHigh-k材料(SiN、Al、AlON等)からなる層間絶縁膜165が積層されている。層間絶縁膜165及びゲート絶縁膜153には、第1ソーストレンチ155及び第2ソーストレンチ159よりも大径のコンタクトホール166,167が形成されている。
【0198】
層間絶縁膜165上には、ソース電極168が形成されている。ソース電極168は、各コンタクトホール166,167を介して、全ての第1ソーストレンチ155及び第2ソーストレンチ159に一括して入り込んでいる。
【0199】
ソース電極168は、ショットキーセル146において、第1ソーストレンチ155の底側から順にショットキー領域157、第1耐圧保持領域156、及びソース領域148に接触している。またソース電極168は、pnダイオードセル147において、第2ソーストレンチ159の底側から順に底部ボディコンタクト領域161、第2耐圧保持領域160、及びソース領域148に接触している。すなわち、ソース電極168は、全てのセル145に対して共通の配線となっている。
【0200】
ソース電極168上には、層間絶縁膜165が形成されており、この層間絶縁膜165を介してソース電極168がソースパッド132に電気的に接続されている。一方、ゲートパッド134は、層間絶縁膜165上に引き回されたゲート配線(図示略)を介してゲート電極154に電気的に接続されている。
【0201】
ソース電極168は、エピタキシャル層141の接触側から順に、ポリシリコン層169、中間層170、及びメタル層171を有する。
ポリシリコン層169は、不純物がドーピングされたドープドポリシリコンが用いられる。ポリシリコン層169の不純物としては、窒素(N)、燐(P)、砒素(As)等のn型の不純物、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)等のp型の不純物を用いることができる。
【0202】
ポリシリコン層169は、コンタクトホール166,167内に露出するセル145の表面全域を覆うように形成されている。ポリシリコン層169は、第1ソーストレンチ155内でショットキー領域157、第1耐圧保持領域156、及びソース領域148の全て、第2ソーストレンチ159内で底部ボディコンタクト領域161、第2耐圧保持領域160、及びソース領域148の全てに接触している。
【0203】
ポリシリコン層169は、ショットキーセル146においてソース領域148との間にショットキー接合を形成している。これにより、ポリシリコン層169は、ショットキー領域157との間に、ショットキーセル146及びpnダイオードセル147にそれぞれ内蔵されたボディダイオード172(ボディ領域149とドリフト領域150とのpn接合により形成されるダイオード)の拡散電位(例えば、2.8~3.2eV)よりも接合障壁の小さいヘテロ接合(例えば、接合障壁の高さが1~1.5eV)を形成している。これにより、ショットキーセル146においては、ソース電極168とショットキー領域157との間にヘテロ接合ダイオード172が形成されている。また、ポリシリコン層169は、pnダイオードセル147において底部ボディコンタクト領域161及びソース領域148との間にオーミック接触を形成している。
【0204】
中間層170は、ポリシリコン層169上に積層されたメタル層である。メタル層171は、ソース電極168の最表層をなしている。
このようなポリシリコン層169、中間層170、及びメタル層171の組合せとしては、ポリシリコン(ポリシリコン層169)、チタン(中間層170)、及びアルミニウム(メタル層171)が順に積層される積層構造(ポリシリコン/Ti/Al)である。また、これらに加えて、メタル層171がモリブデン層(Mo層)を有することが好ましい。モリブデンは融点が高いため、メタル層171にモリブデン層を含まれることにより、ソース電極168に大電流が流れたときに生じる熱によるメタル層171の溶損を抑制することができる。
【0205】
SiC基板140の裏面140Bには、その全域を覆うようにドレイン電極174が形成されている。ドレイン電極174は、全てのセル145に対して共通の電極となる。ドレイン電極174としては、例えばSiC基板140側から順に、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金(Au)、及び銀(Ag)が積層された積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)を用いることができる。
【0206】
図33に示すように、パワーモジュール1では、複数個の上側MISトランジスタ130(本実施形態では、3個の上側MISトランジスタ130)が第1基板82Aに実装され、複数個の下側MISトランジスタ131(本実施形態では、3個の下側MISトランジスタ131)が第2基板82Bに実装されている。
【0207】
なお、本実施形態のパワーモジュール1は、第2実施形態のパワーモジュール1と比較して、上側信号基板86の第1基板82Aにおける位置及び下側信号基板87の第2基板82Bにおける位置、並びに各入力端子部材83,84の第1基板82Aにおける位置及び出力端子部材85の第1基板82Aにおける位置が同一である。一方、本実施形態のパワーモジュール1は、第2入力端子部材84の形状が第2実施形態のパワーモジュール1の第2入力端子部材84とは異なる。
【0208】
本実施形態の第2入力端子部材84は、3つの接続部である第1接続部84a、第2接続部84b、及び第3接続部84cを有する。すなわち本実施形態の第2入力端子部材84は、第4接続部84d及び第5接続部84eを有していない。これに伴い、本実施形態の第2入力端子部材84の連結部84fの第2方向Yの長さは、第2実施形態の第2入力端子部材84の連結部84fの第2方向Yの長さよりも短い。本実施形態では、第1接続部84aと第2接続部84bとの第2方向Yの間の距離、及び第2接続部84bと第3接続部84cとの第2方向Yの間の距離はそれぞれ、上側MISトランジスタ130の第2方向Yのチップサイズよりも大きい。
【0209】
3個の上側MISトランジスタ130は、第1基板82Aにおいて、第2方向Yにおいて間隔を空けて配置されている。各上側MISトランジスタ130は、第1基板82Aにおいて上側信号基板86よりも第2基板82B側の部分に配置されている。言い換えれば、各上側MISトランジスタ130は、第1基板82Aにおける第2基板82B側の端部に配置されている。3個の上側MISトランジスタ130のうちの1個は第2入力端子部材84の第1接続部84aと第2接続部84bとの第2方向Yの間に位置している。この上側MISトランジスタ130は、第2方向Yにおいて第2接続部84bよりも第1接続部84a寄りに配置されている。3個の上側MISトランジスタ130のうちの別の1個は第2入力端子部材84の第2接続部84bと第3接続部84cとの第2方向Yの間に位置している。この上側MISトランジスタ130は、第2方向Yにおいて第3接続部84cよりも第2接続部84b寄りに配置されている。3個の上側MISトランジスタ130のうちの残りの1個は第3接続部84cに対して第2接続部84bとは第2方向Yの反対側に第3接続部84cと隣り合うように位置している。
【0210】
3個の下側MISトランジスタ131は、第2基板82Bにおいて、第2方向Yにおいて間隔を空けて配置されている。各下側MISトランジスタ131は、第2基板82Bにおいて下側信号基板87よりも第1基板82A側の部分に配置されている。言い換えれば、各下側MISトランジスタ131は、第2基板82Bにおける第1基板82A側の端部に配置されている。3個の下側MISトランジスタ131のうちの1個は、第2入力端子部材84の第1接続部84aに第1方向Xに対向するように配置されている。3個の下側MISトランジスタ131のうちの別の1個は、第2入力端子部材84の第2接続部84bに第1方向Xに対向するように配置されている。3個の下側MISトランジスタ131の残りの1個は、第2入力端子部材84の第3接続部84cに第1方向Xに対向するように配置されている。
【0211】
3個の上側MISトランジスタ130は、互いに並列に接続されている。3個の下側MISトランジスタ131は、互いに並列に接続されている。これらトランジスタ130,131の電力用ワイヤ44,46及び制御用ワイヤ45,47による接続態様は、第2実施形態の上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12の電力用ワイヤ44,46及び制御用ワイヤ45,47による接続態様と同様である。
【0212】
(シミュレーション結果)
比較例及び本実施形態のパワーモジュール1において、上側スイッチング素子11(上側MISトランジスタ130)をオフ状態に維持し、下側スイッチング素子12(下側MISトランジスタ131)を駆動した場合における負側のサージ電圧の発生とスイッチング損失との関係について、図7及び図34に示す模式的な回路構成に基づいてシミュレーションを行った。図7は比較例のパワーモジュールの模式的な回路構成を示し、図34は本実施形態のパワーモジュール1の模式的な回路構成を示す。
【0213】
図34の回路構成では、上側MISトランジスタ130のソースとゲートとが短絡され、下側MISトランジスタ131のゲートに下側ゲート駆動回路3が電気的に接続されている。下側MISトランジスタ131のゲートと下側ゲート駆動回路3との間には、ゲート抵抗8が設けられている。上側MISトランジスタ130のドレインには電源ESの正側端子が電気的に接続され、下側MISトランジスタ131のソースには電源ESの負側端子が電気的に接続されている。図34の回路構成は、電源ESの正側端子と上側MISトランジスタ130のドレインとの間と、上側MISトランジスタ130のソースと下側MISトランジスタ131のドレインとの間とを繋ぐ配線9を有する。配線9は、インダクタ負荷9aを有する。
【0214】
比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を2Ω、3Ω、4Ω、及び5Ωと変化させた場合のシミュレーションを行った。ここで、比較例のパワーモジュールの回路構成であってゲート抵抗8が2Ωの場合を基準条件と規定する。
【0215】
図35に示すように、比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を大きくすることにより、下側スイッチング素子12のスイッチング速度(ドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度)が遅くなることにより負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる一方、ゲート抵抗8を大きくすることにより、スイッチング損失が急激に大きくなる。
【0216】
図35に示すように、本実施形態のパワーモジュール1では、基準条件よりも負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。また本実施形態のパワーモジュール1では、第3実施形態のパワーモジュール1と比較して、負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。これは、上側スイッチング素子11及び上側ダイオード71を同一チップで形成した上側MISトランジスタ130を用いることにより、上側ダイオード71に接続される上側ダイオード用ワイヤ91を省略することができ、この上側ダイオード用ワイヤ91のインダクタンスに起因するサージ電圧がなくなったことが原因と考えられる。一方、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量が大きくなるにつれてスイッチング損失が大きくなるが、比較例のパワーモジュールのようにゲート抵抗8を大きくする場合に比べ、スイッチング損失が小さくなる。
【0217】
本実施形態によれば、第2実施形態の(2-1)及び(2-4)の効果に加え、以下の効果が得られる。
(3-1)パワーモジュール1は、上側スイッチング素子11及び上側ダイオード71が同一チップで形成された上側MISトランジスタ130と、下側スイッチング素子12及び下側ダイオード72が同一チップで形成された下側MISトランジスタ131とを有する。この構成によれば、上側ダイオード用ワイヤ91及び下側ダイオード用ワイヤ92を省略することができるため、上側ダイオード用ワイヤ91のインダクタンス及び下側ダイオード用ワイヤ92のインダクタンスの影響を上側MISトランジスタ130及び下側MISトランジスタ131が受けることを回避できる。したがって、上側MISトランジスタ130のゲート・ソース間電圧Vgsu及び下側MISトランジスタ131のゲート・ソース間電圧Vgslのサージ電圧に起因する変動を効果的に抑制することができる。
【0218】
加えて、上側スイッチング素子11及び上側ダイオード71が個別のチップとして設けられ、下側スイッチング素子12及び下側ダイオード72が個別のチップとして設けられる構成と比較して、パワーモジュール1の素子数を減らすことができ、パワーモジュール1の小型化を図ることができる。
【0219】
(3-2)複数の上側MISトランジスタ130が第1基板82Aの第2方向Yに間隔を空けて配置され、複数の下側MISトランジスタ131が第2基板82Bの第2方向Yに間隔を空けて配置されている。第1基板82Aは、第2方向Yにおける第1基板82Aの熱伝導性が第1方向Xにおける第1基板82Aの熱伝導性よりも低くなるように構成されている。第2基板82Bは、第2方向Yにおける第2基板82Bの熱伝導性が第1方向Xにおける第2基板82Bの熱伝導性よりも低くなるように構成されている。この構成によれば、上側MISトランジスタ130の熱がこの上側MISトランジスタ130に隣り合う上側MISトランジスタ130に伝わり難くなり、下側MISトランジスタ131の熱がこの下側MISトランジスタ131に隣り合う下側MISトランジスタ131に伝わり難くなる。このため、上側MISトランジスタ130及び下側MISトランジスタ131の温度が過度に高くなることを抑制することができる。
【0220】
(3-3)複数の上側MISトランジスタ130は、第2入力端子部材84の各接続部84a~84cと第2方向Yにおいて隣り合うように配置されている。すなわち上側MISトランジスタ130の上側電力用ワイヤ44と下側MISトランジスタ131の下側電力用ワイヤ46とが第2方向Yにおいて隣り合う。この構成によれば、上側MISトランジスタ130及び下側MISトランジスタ131が相補的にオンオフする場合に上側電力用ワイヤ44に流れる電流の向きと下側電力用ワイヤ46に流れる電流の向きとが逆方向になる。これにより、上側電力用ワイヤ44に発生する磁界と下側電力用ワイヤ46に発生する磁界とが打ち消し合うため、上側電力用ワイヤ44及び下側電力用ワイヤ46のノイズを低減することができる。特に、上側電力用ワイヤ44と下側電力用ワイヤ46とが互いに平行となるため、上側電力用ワイヤ44に発生する磁界と下側電力用ワイヤ46に発生する磁界とを効果的に打ち消し合うことができる。
【0221】
(第4実施形態)
図36図39を参照して、第4実施形態のパワーモジュール1について説明する。本実施形態のパワーモジュール1は、第1実施形態のパワーモジュール1と比較して、第2実施形態のパワーモジュール1の上側ダイオード71及び下側ダイオード72が追加された点が異なる。以下の説明において、第1実施形態のパワーモジュール1と共通の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0222】
図36及び図37に示すように、上側ダイオード71は上側スイッチング素子11とは別体として設けられ、下側ダイオード72は下側スイッチング素子12とは別体として設けられている。図36に示すとおり、上側ダイオード71のカソードは、上側スイッチング素子11のドレイン端子11dと第1入力端子Pとを繋ぐ第1配線15に電気的に接続されている。より詳細には、上側ダイオード71のカソードは、第1配線15において上側スイッチング素子11のドレイン端子11dと上側コンデンサ13の第1端子との間の部分に電気的に接続されている。上側ダイオード71のアノードは、上側スイッチング素子11のソース端子11sと下側スイッチング素子12のドレイン端子12dとを繋ぐ第4配線18においてノードNよりも上側スイッチング素子11側の部分に電気的に接続されている。下側ダイオード72のカソードは、第4配線18においてノードNよりも下側スイッチング素子12側の部分に電気的に接続されている。より詳細には、下側ダイオード72のカソードは、第4配線18において下側スイッチング素子12のドレイン端子12dと下側コンデンサ14の第1端子との間の部分に電気的に接続されている。下側ダイオード72のアノードは、下側スイッチング素子12のソース端子12sと第2入力端子Nとを繋ぐ第5配線19に電気的に接続されている。本実施形態では、上側ダイオード71及び下側ダイオード72はそれぞれ、ショットキーバリアダイオードが用いられている。上側ダイオード71及び下側ダイオード72のそれぞれの順方向しきい値電圧は、上側スイッチング素子11のボディダイオード11a及び下側スイッチング素子12のボディダイオード12aのそれぞれの順方向しきい値電圧よりも低い。
【0223】
上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12のそれぞれの個数は任意に変更可能である。例えば、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12のそれぞれの個数は、予め設定されたオン抵抗となるように設定される。上側スイッチング素子11が複数個設けられる場合、複数の上側スイッチング素子11は互いに並列に接続される。すなわち、複数の上側スイッチング素子11のドレイン端子11dが互いに接続され、複数の上側スイッチング素子11のソース端子11sが互いに接続され、複数の上側スイッチング素子11のゲート端子11gが互いに接続される。また下側スイッチング素子12が複数個設けられる場合、複数の下側スイッチング素子12は互いに並列に接続される。すなわち、複数の下側スイッチング素子12のドレイン端子12dが互いに接続され、複数の下側スイッチング素子12のソース端子12sが互いに接続され、複数の下側スイッチング素子12のゲート端子12gが互いに接続される。本実施形態では、上側スイッチング素子11は3個設けられ、下側スイッチング素子12は3個設けられている。
【0224】
また上側ダイオード71及び下側ダイオード72のそれぞれの個数は任意に変更可能である。例えば、上側ダイオード71及び下側ダイオード72のそれぞれの個数は、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12を避けて流す還流電流の大きさに基づいて設定される。上側ダイオード71が複数個設けられる場合、複数の上側ダイオード71は互いに並列に接続される。すなわち、複数の上側ダイオード71のアノードが互いに接続され、複数の上側ダイオード71のカソードが互いに接続される。複数の上側ダイオード71のカソードは第1配線15に接続され、複数の上側ダイオード71のアノードは第4配線18におけるノードNよりも上側スイッチング素子11側の部分に接続される。また下側ダイオード72が複数個設けられる場合、複数の下側ダイオード72は互いに並列に接続される。すなわち、複数の下側ダイオード72のアノードが互いに接続され、複数の下側ダイオード72のカソードが互いに接続される。複数の下側ダイオード72のカソードは第4配線18におけるノードNよりも下側スイッチング素子12側の部分に接続され、複数の下側ダイオード72のアノードは第5配線19に接続される。本実施形態では、上側ダイオード71は2個設けられ、下側ダイオード72は2個設けられている。
【0225】
パワーモジュール1は、上側ダイオード71が許容可能なDC定格電流が、上側スイッチング素子11が許容可能なDC定格電流未満となり、かつ下側ダイオード72が許容可能なDC定格電流が、下側スイッチング素子12が許容可能なDC定格電流未満となるように構成されている。ここで、DC定格電流は、絶対最大定格の直流電流である。上側ダイオード71及び上側スイッチング素子11がそれぞれ複数個設けられる場合、パワーモジュール1は、複数の上側ダイオード71のDC定格電流の合計が、複数の上側スイッチング素子11のDC定格電流の合計未満となるように構成されている。また下側ダイオード72及び下側スイッチング素子12がそれぞれ複数個設けられる場合、パワーモジュール1は、複数の下側ダイオード72のDC定格電流の合計が、複数の下側スイッチング素子12のDC定格電流の合計未満となるように構成されている。
【0226】
一例では、パワーモジュール1は、上側ダイオード71の個数が上側スイッチング素子11の個数よりも少なく、かつ下側ダイオード72の個数が下側スイッチング素子12の個数よりも少なくなるように構成されている。上述したとおり、本実施形態では、図19に示すとおり、パワーモジュール1は、3個の上側スイッチング素子11、3個の下側スイッチング素子12、2個の上側ダイオード71、及び2個の下側ダイオード72を有する。また例えば、1つの上側ダイオード71が許容可能なDC定格電流が、1つの上側スイッチング素子11が許容可能なDC定格電流未満であってもよい。また1つの下側ダイオード72が許容可能なDC定格電流が、1つの下側スイッチング素子12が許容可能なDC定格電流未満であってもよい。この場合、上側スイッチング素子11の個数と上側ダイオード71の個数とが互いに等しくてもよい。また下側スイッチング素子12の個数と下側ダイオード72の個数とが互いに等しくてもよい。
【0227】
3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71はそれぞれ、第1入力配線部23に半田等により実装されている。3個の上側スイッチング素子11及び2個の上側ダイオード71は、第1方向Xに沿って交互に並べて配置されている。
【0228】
上側コンデンサ13は、第1方向Xにおいて3個の上側スイッチング素子11のうちの最も第1入力端子部材30側の上側スイッチング素子11よりも第1入力端子部材30側に位置している。上側コンデンサ13は、第1上側制御配線部25において、3個の上側スイッチング素子11のうちの最も第1入力端子部材30側の上側スイッチング素子11のゲート電極42に接続された上側制御用ワイヤ45が接続される部分よりも第1上側制御端子部材33側の部分に接続されている。
【0229】
3個の下側スイッチング素子12及び2個の下側ダイオード72はそれぞれ、出力配線部22に半田等により実装されている。3個の下側スイッチング素子12及び2個の下側ダイオード72は、第1方向Xに沿って交互に並べて配置されている。第1方向Xにおいて、3個の下側スイッチング素子12の位置は3個の上側スイッチング素子11の位置と等しい。第1方向Xにおいて2個の下側ダイオード72の位置は2個の上側ダイオード71の位置と等しい。
【0230】
下側コンデンサ14は、第1方向Xにおいて3個の下側スイッチング素子12のうちの最も第2入力端子部材31側の下側スイッチング素子12よりも第2入力端子部材31側に位置している。下側コンデンサ14は、第1下側制御配線部27において、3個の下側スイッチング素子12のうちの最も第2入力端子部材31側の下側スイッチング素子12のゲート電極42に接続された下側制御用ワイヤ47が接続される部分よりも第1下側制御端子部材35側の部分に接続されている。
【0231】
各スイッチング素子11,12の各電力用ワイヤ44,46及び各制御用ワイヤ45,47による接続態様は、第1実施形態の各スイッチング素子11,12の各電力用ワイヤ44,46及び各制御用ワイヤ45,47による接続態様と同様である。各ダイオード71,72の各ダイオード用ワイヤ91,92の接続態様は、第2実施形態の各ダイオード71,72の各ダイオード用ワイヤ91,92の接続態様と同様である。本実施形態の上側ダイオード用ワイヤ91の線径は、上側電力用ワイヤ44の線径と等しい。4本の上側ダイオード用ワイヤ91は、そのインダクタンスが4本の上側電力用ワイヤ44のインダクタンスよりも小さくなるように構成されることが好ましい。一例では、図37に示すとおり、4本の上側ダイオード用ワイヤ91の長さはそれぞれ、4本の上側電力用ワイヤ44の長さよりも短く、4本の下側ダイオード用ワイヤ92の長さはそれぞれ、4本の下側電力用ワイヤ46の長さよりも短い。なお、各ダイオード用ワイヤ91,92のインダクタンスが各電力用ワイヤ44,46のインダクタンスよりも小さくなる構成の一例として、各ダイオード用ワイヤ91,92の線径が各電力用ワイヤ44,46の線径よりも大きくなるように構成されてもよい。なお、各電力用接続部材は、例えばCIC(Cu/Inver/Cu)のリードフレームなどであってもよい。
【0232】
なお、本実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)~(1-9)の効果及び第2実施形態の(2-1)、(2-2)、(2-5)、及び(2-6)の効果と同様の効果が得られる。また、本実施形態において、上側スイッチング素子11及び上側ダイオード71に代えて上側MISトランジスタ130を用いてもよく、下側スイッチング素子12及び下側ダイオード72に代えて下側MISトランジスタ131を用いてもよい。この場合、第3実施形態の(3-1)の効果が得られる。
【0233】
(シミュレーション結果)
比較例及び本実施形態のパワーモジュール1において、上側スイッチング素子11をオフ状態に維持し、下側スイッチング素子12を駆動した場合における負側のサージ電圧の発生とスイッチング損失との関係について、図7及び図38に示す模式的な回路構成に基づいてシミュレーションを行った。図7は比較例のパワーモジュールの模式的な回路構成を示し、図38は本実施形態のパワーモジュール1の模式的な回路構成を示す。
【0234】
図38の回路構成では、上側スイッチング素子11のドレインに上側ダイオード71のカソード及び上側コンデンサ13の第1端子が電気的に接続され、上側スイッチング素子11のソースに上側ダイオード71のアノードが電気的に接続され、上側スイッチング素子11のゲート端子に上側コンデンサ13の第2端子が電気的に接続されている。上側スイッチング素子11のソースとゲートとが短絡されている。
【0235】
下側スイッチング素子12のドレインに下側ダイオード72のカソード及び下側コンデンサ14の第1端子が電気的に接続され、下側スイッチング素子12のソースに下側ダイオード72のアノードが電気的に接続され、下側スイッチング素子12のゲートに下側コンデンサ14の第2端子が電気的に接続されている。また下側スイッチング素子12のゲートに下側ゲート駆動回路3が電気的に接続されている。下側スイッチング素子12のゲートと下側ゲート駆動回路3との間には、ゲート抵抗8が設けられている。上側スイッチング素子11のドレインには電源ESの正側端子が電気的に接続され、下側スイッチング素子12のソースには電源ESの負側端子が電気的に接続されている。図38の回路構成は、電源ESの正側端子と上側スイッチング素子11のドレインとの間と、上側スイッチング素子11のソースと下側スイッチング素子12のドレインとの間とを繋ぐ配線9を有する。配線9は、インダクタ負荷9aを有する。
【0236】
比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を2Ω、3Ω、4Ω、及び5Ωと変化させた場合のシミュレーションを行った。ここで、比較例のパワーモジュールの回路構成であってゲート抵抗8が2Ωの場合を基準条件と規定する。
【0237】
図39に示すように、比較例のパワーモジュールでは、ゲート抵抗8を大きくすることにより、下側スイッチング素子12のスイッチング速度(ドレイン・ソース間電圧Vdslの変化速度)が遅くなることにより負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる一方、ゲート抵抗8を大きくすることにより、スイッチング損失が急激に大きくなる。
【0238】
本実施形態のパワーモジュール1では、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14の容量が150pFのものを用いた場合のシミュレーションを行った。その結果が図39の点Aとなる。
【0239】
図39の点Aに示すように、本実施形態のパワーモジュール1では、上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14と上側ダイオード71及び下側ダイオード72とにより、基準条件よりも負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。一方、スイッチング損失が大きくなるが、比較例のパワーモジュールのようにゲート抵抗8を大きくする場合に比べ、スイッチング損失が小さくなる。
【0240】
また本実施形態のパワーモジュール1では、上側スイッチング素子11及び上側ダイオード71に代えて上側MISトランジスタ130を用い、下側スイッチング素子12及び下側ダイオード72に代えて下側MISトランジスタ131を用いた場合のシミュレーションを行った。その結果が図39の点Bとなる。
【0241】
図39の点Bに示すように、本実施形態のパワーモジュール1では、点Aよりも負側のサージ電圧の絶対値が小さくなる。一方、スイッチング損失が大きくなるが、比較例のパワーモジュールのようにゲート抵抗8を大きくする場合に比べ、スイッチング損失が小さくなる。
【0242】
(変形例)
上記各実施形態に関する説明は、本発明に従う半導体装置及びパワーモジュールが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う半導体装置及びパワーモジュールは、上記各実施形態以外に例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合せられた形態を取り得る。
【0243】
・第1実施形態のパワーモジュール1の半導体装置10と第2実施形態のパワーモジュール1の基板80とを組み合せてもよい。この場合、上側コンデンサ13は、第1上側制御端子部材88Aに最も近い上側スイッチング素子11に接続された上側制御用ワイヤ45が第1上側制御配線部86cに接続される部分と、第1上側制御端子部材88Aが第1上側制御配線部86cに接続される部分との間の部分に設けられる。下側コンデンサ14は、第1下側制御端子部材89Aに最も近い下側スイッチング素子12に接続された下側制御用ワイヤ47が第1下側制御配線部87cに接続される部分と、第1下側制御端子部材89Aが第1下側制御配線部87cに接続される部分との間の部分に設けられる。またこの場合、第2入力端子部材84は、図33に示す第2入力端子部材84と同様に第1接続部84a、第2接続部84b、及び第3接続部84cを有し、第4接続部84d及び第5接続部84eを有していない構成であってもよい。
【0244】
・第2実施形態のパワーモジュール1の半導体装置10と第1実施形態のパワーモジュール1の基板20とを組み合せてもよい。この場合、例えば図37に示す第4実施形態のパワーモジュール1の構成から上側コンデンサ13及び下側コンデンサ14を省略した構成となる。なお、上側アイランド部37及び上側接続用ワイヤ39Uと、下側アイランド部38及び下側接続用ワイヤ39Lとの少なくとも一方を省略してもよい。
【0245】
・第4実施形態のパワーモジュール1と第3実施形態のパワーモジュール1とを組み合せてもよい。すなわち、第4実施形態のパワーモジュール1において、上側スイッチング素子11及び上側ダイオード71が同一チップに形成され、下側スイッチング素子12及び下側ダイオード72が同一チップに形成されてもよい。
【0246】
・第2及び第3実施形態において、上側信号基板86に接続される第1上側制御端子部材88A及び第2上側制御端子部材88Bは、第2方向Yにおいて、第2入力端子部材84の第1接続部84a側に配置されてもよい。また下側信号基板87に接続される第1下側制御端子部材89A及び第2下側制御端子部材89Bは、第2方向Yにおいて、第2入力端子部材84の第1接続部84a側に配置されてもよい。
【0247】
・第1及び第4実施形態において、下側アイランド部38を用いた下側コンデンサ14と出力配線部22との電気的な接続態様は任意に変更可能である。例えば、図40及び図41に示すような接続態様に変更してもよい。
【0248】
図40に示すように、下側アイランド部38が第2入力配線部24を第1方向Xから覆うように第2方向Yに延びている。第2方向Yにおいて、下側アイランド部38は、出力配線部22と隣り合うように設けられている。これにより、下側アイランド部38と出力配線部22とを電気的に接続する下側接続用ワイヤ39Lが第2入力配線部24を跨がない。すなわち、下側接続用ワイヤ39Lの長さを短くすることができる。
【0249】
図41に示すように、第1方向Xにおいて下側アイランド部38が第2入力配線部24と対向するように設けられる。下側アイランド部38は、第2方向Yにおいて出力配線部22と隣り合うように設けられている。また下側アイランド部38は、第2方向Yにおいて第1下側制御配線部27の屈曲部27cと隣り合うように設けられている。この場合、下側コンデンサ14は、その第1端子及び第2端子の配列方向が第2方向Yに沿う方向となるように配置されている。
【0250】
・第1及び第4実施形態において、上側アイランド部37を省略してもよい。この場合、上側コンデンサ13の第1端子は第1上側制御配線部25の屈曲部25cに直接的に接続され、上側コンデンサ13の第2端子は第1入力配線部23に直接的に接続される。
【0251】
・第1及び第4実施形態において、下側アイランド部38を省略してもよい。この場合、第2入力配線部24の第1部分24aの第1方向Xの長さを短くして出力配線部22の一部を、第1部分24aを第1方向Xから覆うように第2方向Yに延ばす。これにより、出力配線部22の一部が第2方向Yにおいて第1下側制御配線部27の屈曲部27cと第2方向Yに隙間を空けて対向する。下側コンデンサ14の第1端子は屈曲部27cに直接的に接続され、下側コンデンサ14の第2端子は出力配線部22の一部に直接的に接続される。
【0252】
・第1及び第4実施形態において、出力配線部22の第1部分22aの第1方向Xの長さ、及び第1入力配線部23の第1部分23aの第1方向Xの長さはそれぞれ任意に変更可能である。例えば、第1実施形態では、出力配線部22に実装する下側スイッチング素子12の個数に応じて出力配線部22の第1部分22aの第1方向Xの長さを設定してもよく、第1入力配線部23に実装する上側スイッチング素子11の個数に応じて第1入力配線部23の第1部分23aの第1方向Xの長さを設定してもよい。例えば上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12がそれぞれ1個の場合、出力配線部22の第1部分22aの第1方向Xの長さ及び第1入力配線部23の第1部分23aの第1方向Xの長さを短くすることができる。これにより、パワーモジュール1の第1方向Xの小型化を図ることができる。また、第4実施形態では、出力配線部22に実装する下側スイッチング素子12の個数及び下側ダイオード72の個数に応じて出力配線部22の第1部分22aの第1方向Xの長さを設定してもよい。また第1入力配線部23に実装する上側スイッチング素子11の個数及び上側ダイオード71の個数に応じて第1入力配線部23の第1部分23aの第1方向Xの長さを設定してもよい。
【0253】
・第1実施形態において、図42に示すように、パワーモジュール1は、上側スイッチング素子11のゲート端子11g(図1参照)に電気的に接続される上側制御抵抗の一例であるゲート抵抗180と、下側スイッチング素子12のゲート端子12g(図1参照)に電気的に接続される下側制御抵抗の一例であるゲート抵抗181とを有してもよい。ゲート抵抗180は、上側スイッチング素子11とは別体として設けられている。ゲート抵抗181は、下側スイッチング素子12とは別体として設けられている。ゲート抵抗180は、第1上側制御配線部25において、上側スイッチング素子11のゲート電極42(図5(a)参照)に接続された上側制御用ワイヤ45が接続される部分と屈曲部25cとの間の部分に実装されている。これにより、ゲート抵抗180の第1端子(第1上側抵抗端子)は上側スイッチング素子11のゲート端子11gに電気的に接続され、ゲート抵抗180の第2端子(第2上側抵抗端子)は上側コンデンサ13の第1端子に電気的に接続される。ゲート抵抗181は、第1下側制御配線部27において、下側スイッチング素子12のゲート電極42に接続された下側制御用ワイヤ47が接続される部分と屈曲部27cとの間の部分に実装されている。これにより、ゲート抵抗181の第1端子(第1下側抵抗端子)は下側スイッチング素子12のゲート端子12gに電気的に接続され、ゲート抵抗181の第2端子(第2下側抵抗端子)は下側コンデンサ14の第1端子と電気的に接続される。この構成によれば、ゲート抵抗180,181の抵抗値を変更することによって上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12が適切な動作速度になるように調整することができる。
【0254】
・各実施形態において、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12の構成は任意に変更可能である。例えば、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12は、図43に示すような構成であってもよい。なお、以下の説明において、上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12は同一構造であるため、上側スイッチング素子11の構成を説明し、下側スイッチング素子12の構成の説明を省略する。
【0255】
図43(a)(b)に示すように、上側スイッチング素子11は、窒化ガリウム(GaN)のHEMT(High Electron Mobility Transistor)などの窒化物半導体からなるトランジスタであってもよい。なお、窒化物半導体としては、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化インジウムガリウム(InGaN)等を用いてもよい。
【0256】
図43(a)に示す上側スイッチング素子11は、例えばシリコン基板(Si基板210)上に形成され、窒化ガリウム(GaN)等からなるバッファ層211と、バッファ層211上に形成され、アンドープGaN層からなるチャネル層212と、チャネル層212上に形成され、アンドープAlGaN層からなる電子供給層213とを有する。さらに、電子供給層213上には、ソース電極214、ドレイン電極215、及び絶縁層216が形成されている。また電子供給層213の上には、絶縁層216を介してゲート電極217が形成されている。
【0257】
このような上側スイッチング素子11は、アンドープGaNからなるチャネル層212の表面にはアンドープAlGaNからなる電子供給層213がヘテロ接合しているため、接合している部分の界面には、2次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electron Gas)が発生する。このため、2DEG層内の電子がキャリアとなってチャネル層212は導電性を示すようになる。
【0258】
図43(b)に示す上側スイッチング素子11では、図43(a)の上側スイッチング素子11の構成に対して、アンドープAlGaNからなる電子供給層213にトレンチ溝218が形成されている。トレンチ溝218の側面及び底面には、絶縁層216が形成されている。この絶縁層216の側面及び底面に対してゲート電極217が充填されている。その他の構成は、図43(a)の上側スイッチング素子11の構成と同様である。
【0259】
図43(b)の上側スイッチング素子11では、アンドープAlGaNからなる電子供給層213に対して形成されたトレンチ溝218内に絶縁層216を介してゲート電極217が形成されることにより、ゲート電極217の下側のチャネル層212と電子供給層213との界面の2DEG層のノーマリオフ特性を実現している。
【0260】
・各実施形態において、上側ゲート駆動回路2は、下側スイッチング素子12がオンオフ駆動しているときに上側スイッチング素子11が同期整流するようにしてもよい。下側ゲート駆動回路3は、上側スイッチング素子11がオンオフ駆動しているときに下側スイッチング素子12が同期整流するようにしてもよい。言い換えれば、各実施形態において、各ゲート駆動回路2,3は、上側スイッチング素子11と下側スイッチング素子12とが相補的にオンオフするように上側スイッチング素子11及び下側スイッチング素子12を制御してもよい。なお、パワーモジュール1と各ゲート駆動回路2,3とを含めた構成をパワー駆動回路と称する場合がある。パワー駆動回路は、各ゲート駆動回路2,3がパワーモジュール1に内蔵された構成であってもよい。
【0261】
(パワーモジュール1を適用する回路)
図44及び図45を参照して、パワーモジュール1を適用する回路を例示して説明する。
【0262】
図44に示すフルブリッジ型インバータ回路(以下、単に「インバータ回路230」)は、パワーモジュール1に適用することができる。インバータ回路230は、第1インバータ部231、第2インバータ部232、入力キャパシタ233、及びゲート駆動回路234を備える。このインバータ回路230は、例えば2相交流モータ(図示略)の駆動や電源回路に用いられる。
【0263】
第1インバータ部231は、上側スイッチング素子231U及び下側スイッチング素子231Lを有する。上側スイッチング素子231Uのソース端子と下側スイッチング素子231Lのドレイン端子とは電気的に接続されている。第1インバータ部231は、入力キャパシタ233と並列に接続されている。詳述すると、上側スイッチング素子231Uのドレイン端子は入力キャパシタ233の第1端子に電気的に接続され、下側スイッチング素子231Lのソース端子は入力キャパシタ233の第2端子に電気的に接続されている。
【0264】
第2インバータ部232は、上側スイッチング素子232U及び下側スイッチング素子232Lを有する。上側スイッチング素子232Uのソース端子と下側スイッチング素子232Lのドレイン端子とは電気的に接続されている。第2インバータ部232は、第1インバータ部231と並列に接続されている。詳述すると、上側スイッチング素子232Uのドレイン端子は上側スイッチング素子231Uのドレイン端子に電気的に接続され、下側スイッチング素子232Lのソース端子は下側スイッチング素子231Lのソース端子に電気的に接続されている。
【0265】
ゲート駆動回路234は、各スイッチング素子231U,231L,232U,232Lのゲート端子にそれぞれ電気的に接続されている。ゲート駆動回路234は、各スイッチング素子231U,231L,232U,232Lのオンオフを制御する。
【0266】
このようなインバータ回路230において、パワーモジュール1は、第1インバータ部231及び第2インバータ部232の少なくとも一方に適用することができる。第1インバータ部231にパワーモジュール1が適用された場合、パワーモジュール1の第1入力端子P及び第2入力端子Nにはそれぞれ入力キャパシタ233の第1端子及び第2端子が電気的に接続され、第1上側制御端子GU1及び第1下側制御端子GL1にゲート駆動回路234が電気的に接続されている。第2インバータ部232にパワーモジュール1が適用された場合、第1入力端子P及び第2入力端子Nにはそれぞれ上側スイッチング素子231Uのドレイン端子及び下側スイッチング素子231Lのソース端子が電気的に接続され、第1上側制御端子GU1及び第1下側制御端子GL1にゲート駆動回路234が電気的に接続されている。
【0267】
図45に示す3相交流インバータ回路(以下、単に「3相インバータ回路240」)もパワーモジュール1に適用することができる。
3相インバータ回路240は、3相交流モータ(以下、単に「モータ247」)のU相、V相、及びW相のコイルに電気的に接続されたパワー駆動部241、パワー駆動部241を制御するゲート駆動回路245、及びパワー駆動部241と電源ESとに接続されたコンバータ部246を備える。コンバータ部246は、正側電力端子EP及び負側電力端子ENを有する。
【0268】
パワー駆動部241は、モータ247のU相、V相、及びW相のコイルに供給する電力を制御する。パワー駆動部241は、U相インバータ部242、V相インバータ部243、及びW相インバータ部244を有する。U相インバータ部242、V相インバータ部243、及びW相インバータ部244は、正側電力端子EPと負側電力端子ENとの間において互いに並列に接続されている。
【0269】
U相インバータ部242は、上側スイッチング素子242U及び下側スイッチング素子242Lを有する。上側スイッチング素子242Uのドレイン端子は正側電力端子EPに電気的に接続されている。上側スイッチング素子242Uのソース端子と下側スイッチング素子242Lのドレイン端子とは電気的に接続されている。下側スイッチング素子242Lのソース端子は負側電力端子ENに接続されている。上側スイッチング素子242Uにはスナバダイオード242Aが逆並列に接続され、下側スイッチング素子242Lにはスナバダイオード242Bが逆並列に接続されている。詳述すると、スナバダイオード242Aのアノードが上側スイッチング素子242Uのソース端子に電気的に接続され、スナバダイオード242Aのカソードが上側スイッチング素子242Uのドレイン端子に電気的に接続されている。スナバダイオード242Bのアノードが下側スイッチング素子242Lのソース端子に電気的に接続され、スナバダイオード242Bのカソードが下側スイッチング素子242Lのドレイン端子に電気的に接続されている。
【0270】
V相インバータ部243は、上側スイッチング素子243U及び下側スイッチング素子243Lを有する。上側スイッチング素子243Uのドレイン端子は正側電力端子EPに電気的に接続されている。上側スイッチング素子243Uのソース端子と下側スイッチング素子243Lのドレイン端子とは電気的に接続されている。下側スイッチング素子243Lのソース端子は負側電力端子ENに接続されている。上側スイッチング素子243Uにはスナバダイオード243Aが逆並列に接続され、下側スイッチング素子243Lにはスナバダイオード243Bが逆並列に接続されている。詳述すると、スナバダイオード243Aのアノードが上側スイッチング素子243Uのソース端子に電気的に接続され、スナバダイオード243Aのカソードが上側スイッチング素子243Uのドレイン端子に電気的に接続されている。スナバダイオード243Bのアノードが下側スイッチング素子243Lのソース端子に電気的に接続され、スナバダイオード243Bのカソードが下側スイッチング素子243Lのドレイン端子に電気的に接続されている。
【0271】
W相インバータ部244は、上側スイッチング素子244U及び下側スイッチング素子244Lを有する。上側スイッチング素子244Uのドレイン端子は正側電力端子EPに電気的に接続されている。上側スイッチング素子244Uのソース端子と下側スイッチング素子244Lのドレイン端子とは電気的に接続されている。下側スイッチング素子244Lのソース端子は負側電力端子ENに接続されている。上側スイッチング素子244Uにはスナバダイオード244Aが逆並列に接続され、下側スイッチング素子244Lにはスナバダイオード244Bが逆並列に接続されている。詳述すると、スナバダイオード244Aのアノードが上側スイッチング素子244Uのソース端子に電気的に接続され、スナバダイオード244Aのカソードが上側スイッチング素子244Uのドレイン端子に電気的に接続されている。スナバダイオード244Bのアノードが下側スイッチング素子244Lのソース端子に電気的に接続され、スナバダイオード244Bのカソードが下側スイッチング素子244Lのドレイン端子に電気的に接続されている。
【0272】
ゲート駆動回路245は、各スイッチング素子242U,242L,243U,243L,244U,244Lのゲート端子にそれぞれ電気的に接続されている。ゲート駆動回路245は、各スイッチング素子242U,242L,243U,243L,244U,244Lのオンオフを制御する。
【0273】
このような3相インバータ回路240において、パワーモジュール1は、U相インバータ部242、V相インバータ部243、及びW相インバータ部244の少なくとも1つに適用することができる。U相インバータ部242にパワーモジュール1が適用された場合、パワーモジュール1の第1入力端子P及び第2入力端子Nにはそれぞれ正側電力端子EP及び負側電力端子ENが電気的に接続され、第1上側制御端子GU1及び第1下側制御端子GL1にゲート駆動回路245が電気的に接続されている。パワーモジュール1の出力端子Oは、モータ247のU相のコイルに電気的に接続される。また、V相インバータ部243にパワーモジュール1が適用された場合及びW相インバータ部244にパワーモジュール1が適用された場合も、パワーモジュール1がU相インバータ部242に適用された場合と同様である。V相インバータ部243を構成するパワーモジュール1の出力端子Oは、モータ247のV相のコイルに電気的に接続される。W相インバータ部244を構成するパワーモジュール1の出力端子Oは、モータ247のW相のコイルに電気的に接続される。なお、パワーモジュール1は、インバータ回路に限られず、コンバータ回路に適用してもよい。
【0274】
(付記)
次に、上記各実施形態及び上記各変形例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記A1)ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有する上側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有する下側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが第2上側端子に接続され、カソードが第1上側端子に接続されている上側ダイオードと、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが第2下側端子に接続され、カソードが第1下側端子に接続されている下側ダイオードと、前記上側スイッチング素子の前記上側制御端子及び前記下側スイッチング素子の前記下側制御端子に電気的に接続され、前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子を制御する制御駆動回路と、を有し、前記上側ダイオードの順方向しきい値電圧が前記上側スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、前記下側ダイオードの順方向しきい値電圧が前記下側スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、前記制御駆動回路は、前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子を同期整流する、パワー駆動回路。
【0275】
(付記A2)前記上側ダイオードの許容可能なDC定格電流が前記上側スイッチング素子の許容可能なDC定格電流未満であり、前記下側ダイオードの許容可能なDC定格電流が前記下側スイッチング素子の許容可能なDC定格電流未満である、付記A1に記載のパワー駆動回路。
【0276】
(付記B1)ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有する上側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有する下側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが第2上側端子に接続され、カソードが第1上側端子に接続されている上側ダイオードと、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが第2下側端子に接続され、カソードが第1下側端子に接続されている下側ダイオードと、前記上側スイッチング素子の前記上側制御端子及び前記下側スイッチング素子の前記下側制御端子に電気的に接続され、前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子を制御する制御駆動回路と、を有するパワーモジュールの制御方法であって、前記上側ダイオードの順方向しきい値電圧が前記上側スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、前記下側ダイオードの順方向しきい値電圧が前記下側スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子を同期整流する、パワーモジュールの制御方法。
【0277】
(付記C1)ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有する上側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有する下側スイッチング素子と、前記第1上側端子と前記上側制御端子との間に、前記上側スイッチング素子とは別体として設けられた上側コンデンサと、前記第1下側端子と前記下側制御端子との間に、前記下側スイッチング素子とは別体として設けられた下側コンデンサと、を有し、前記第2上側端子及び前記第1下側端子が電気的に接続されている、半導体装置。
【0278】
この構成によれば、例えば下側スイッチング素子がオン状態からオフ状態に変化するとき、下側コンデンサによって下側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の変化速度が遅くなる。これにより、上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の変化速度も遅くなるため、上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧の変化速度が遅くなる。したがって、上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧のサージ電圧の増加が抑制されるため、上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる。また、例えば上側スイッチング素子がオン状態からオフ状態に変化するときも同様に下側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧のサージ電圧の増加が抑制されるため、下側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる。
【0279】
(付記C2)基板と、ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有し、前記基板に実装された上側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有し、前記基板に実装された下側スイッチング素子と、前記上側スイッチング素子とは別体として設けられ、前記第1上側端子と前記上側制御端子との間に設けられた上側コンデンサと、前記下側スイッチング素子とは別体として設けられ、前記第1下側端子と前記下側制御端子との間に設けられた下側コンデンサと、前記上側スイッチング素子、前記下側スイッチング素子、前記上側コンデンサ、及び前記下側コンデンサを封止する封止樹脂と、を備え、前記第2上側端子及び前記第1下側端子が電気的に接続されている、パワーモジュール。
【0280】
この構成によれば、例えば下側スイッチング素子がオン状態からオフ状態に変化するとき、下側コンデンサによって下側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の変化速度が遅くなる。これにより、上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の変化速度も遅くなるため、上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧の変化速度が遅くなる。したがって、上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧のサージ電圧の増加が抑制されるため、上側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる。また、例えば上側スイッチング素子がオン状態からオフ状態に変化するときも同様に下側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧のサージ電圧の増加が抑制されるため、下側スイッチング素子のゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる。
【0281】
(付記C3)基板と、ワイドギャップ半導体からなり、第1端子と、第2端子と、前記第1端子と前記第2端子との間のスイッチングを制御する制御端子とを有するスイッチング素子と、前記第1端子と前記制御端子との間に、前記スイッチング素子とは別体として設けられたコンデンサと、前記スイッチング素子及び前記コンデンサを封止する封止樹脂と、を有する、パワーモジュール。
【0282】
(付記C4)ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有する上側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有する下側スイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2上側端子に接続され、カソードが前記第1上側端子に接続されている上側ダイオードと、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2下側端子に接続され、カソードが前記第1下側端子に接続されている下側ダイオードと、前記上側スイッチング素子、前記下側スイッチング素子、前記上側ダイオード、及び前記下側ダイオードのそれぞれが実装された基板と、を有し、前記上側ダイオードの順方向しきい値電圧が前記上側スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、かつ前記上側ダイオードの許容可能なDC定格電流が前記上側スイッチング素子のボディダイオードが許容可能なDC定格電流未満であり、前記下側ダイオードの順方向しきい値電圧が前記下側スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、かつ前記下側ダイオードの許容可能なDC定格電流が前記下側スイッチング素子のボディダイオードが許容可能なDC定格電流未満である、パワーモジュール。
【0283】
(付記C5)ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2端子に接続され、カソードが前記第1端子に接続されるダイオードと、前記スイッチング素子及び前記ダイオードが実装されている基板と、を有し、前記ダイオードの順方向しきい値電圧が前記スイッチング素子のボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低く、かつ前記ダイオードの許容可能なDC定格電流が前記スイッチング素子のボディダイオードが許容可能なDC定格電流未満である、パワーモジュール。
【0284】
この構成によれば、例えば下側スイッチング素子がオン状態からオフ状態に変化するとき、上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧が負側に低下しても上側ダイオードの順方向しきい値電圧で上側スイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の低下がクランプされる。このとき、ドレイン・ソース間電圧の変動期間が短くなるため、ゲート・ソース間電圧の変動期間が短くなる。したがって、ゲート・ソース間電圧の変動を低減することができる。
(付記1)
ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において前記第1端子がカソードに接続されるように設けられたワイドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードと、
前記第2端子にアノードが接続され、前記第1端子にカソードが接続されているダイオードと、
を備え、
前記ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記ダイオードの順方向しきい値電圧よりも低い、半導体装置。
(付記2)
前記ダイオードは、前記スイッチング素子のボディダイオードであり、
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、同一チップに形成されている
付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記ショットキーバリアダイオードは、複数設けられており、
前記複数のショットキーバリアダイオードは、平面視で所定間隔ごとに配置されている
付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記スイッチング素子は、複数設けられており、
前記複数のショットキーバリアダイオードの配列方向において、前記ショットキーバリアダイオードと前記スイッチング素子とは交互に配置されている
付記3に記載の半導体装置。
(付記5)
前記ショットキーバリアダイオードと前記スイッチング素子との配列方向において、前記ショットキーバリアダイオードの大きさは、前記スイッチング素子の大きさよりも大きい
付記4に記載の半導体装置。
(付記6)
前記ダイオードは、前記スイッチング素子のボディダイオードであり、
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、別体として設けられている
付記1に記載の半導体装置。
(付記7)
前記スイッチング素子は、プレーナゲート型VDMOSETである
付記1~6のいずれか一つに記載の半導体装置。
(付記8)
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体である
付記1~7のいずれか一つに記載の半導体装置。
(付記9)
前記スイッチング素子は、
前記第1端子としての第1上側端子、前記第2端子としての第2上側端子、及び前記制御端子としての上側制御端子を有する上側スイッチング素子と、
前記第1端子としての第1下側端子、前記第2端子としての第2下側端子、及び前記制御端子としての下側制御端子を有する下側スイッチング素子と、
を含み、
前記ショットキーバリアダイオードは、
前記第1上側端子と前記第2上側端子との間において前記第1上側端子がカソードに接続されるように設けられた上側ショットキーバリアダイオードと、
前記第1下側端子と前記第2下側端子との間において前記第1下側端子がカソードに接続されるように設けられた下側ショットキーバリアダイオードと、
を含み、
前記ダイオードは、
前記第2上側端子にアノードが接続され、前記第1上側端子にカソードが接続されている上側ボディダイオードと、
前記第2下側端子にアノードが接続され、前記第1下側端子にカソードが接続されている下側ボディダイオードと、
を含み、
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記下側ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記上側ボディダイオード及び前記下側ボディダイオードの順方向しきい値電圧よりも低い、付記1に記載の半導体装置。
(付記10)
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記上側スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体であり、
前記下側ショットキーバリアダイオード及び前記下側スイッチング素子の前記ワイドギャップ半導体は、SiCを用いた半導体である
付記9に記載の半導体装置。
(付記11)
ワイドギャップ半導体からなり、第1端子、第2端子、及び制御端子を有するスイッチング素子と、
前記第1端子と前記第2端子との間において前記第1端子がカソードに接続されるように設けられたワイドギャップ半導体からなるショットキーバリアダイオードと、
前記第2端子にアノードが接続され、前記第1端子にカソードが接続されているダイオードと、
前記スイッチング素子及び前記ショットキーバリアダイオードが実装されている基板と、
前記基板の少なくとも一部と前記スイッチング素子と前記ショットキーバリアダイオードと前記ダイオードとを封止する封止樹脂と、
を備え、
前記ショットキーバリアダイオードの順方向しきい値電圧が前記ダイオードの順方向しきい値電圧よりも低い、パワーモジュール。
(付記12)
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、それぞれ複数設けられ、かつ前記基板上に一列に並ぶように配置され、
前記複数のショットキーバリアダイオードは並列に接続されており、
前記複数のスイッチング素子は並列に接続されている
付記11に記載のパワーモジュール。
(付記13)
前記ダイオードは、前記スイッチング素子のボディダイオードであり、
前記ショットキーバリアダイオード及び前記スイッチング素子は、交互に配列されている
付記11又は12に記載のパワーモジュール。
(付記14)
ワイドギャップ半導体からなり、第1上側端子、第2上側端子、及び上側制御端子を有するとともに、前記第2上側端子にアノードが接続され、前記第1上側端子にカソードが接続されている上側ボディダイオードを有し、互いに並列に接続された複数の上側スイッチング素子と、
ワイドギャップ半導体からなり、第1下側端子、第2下側端子、及び下側制御端子を有するとともに、前記第2下側端子にアノードが接続され、前記第1下側端子にカソードが接続されている下側ボディダイオードを有し、互いに並列に接続された複数の下側スイッチング素子と、
ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2上側端子に接続され、カソードが前記第1上側端子に接続され、互いに並列に接続された複数の上側ショットキーバリアダイオードと、
ワイドギャップ半導体からなり、アノードが前記第2下側端子に接続され、カソードが前記第1下側端子に接続され、互いに並列に接続された複数の下側ショットキーバリアダイオードと、
前記上側スイッチング素子、前記下側スイッチング素子、前記上側ショットキーバリアダイオード、及び前記下側ショットキーバリアダイオードが実装された基板と、
前記基板の少なくとも一部と前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子と前記上側ショットキーバリアダイオードと前記下側ショットキーバリアダイオードとを封止する封止樹脂と、
を備え、
前記上側ショットキーバリアダイオード及び前記下側ショットキーバリアダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧は、前記上側ボディダイオード及び前記下側ボディダイオードのそれぞれの順方向しきい値電圧よりも低い、パワーモジュール。
(付記15)
前記基板は、前記上側スイッチング素子及び前記上側ショットキーバリアダイオードが表面に実装された第1基板と、前記下側スイッチング素子及び前記下側ショットキーバリアダイオードが表面に実装された第2基板とを有し、
前記パワーモジュールの平面視における第1方向において前記第1基板と前記第2基板とが並べられ、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記パワーモジュールの平面視において前記第1方向と直交する第2方向が長手方向となる長方形状に形成され、
前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の上側ショットキーバリアダイオードは、前記第2方向において互いに離間して前記第1基板に実装されており、
前記複数の下側スイッチング素子及び前記複数の下側ショットキーバリアダイオードは、前記第2方向において互いに離間して前記第2基板に実装されており、
前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の下側スイッチング素子は前記第2方向において交互に配置されており、
前記パワーモジュールは、その厚さ方向において前記第1基板と間隔を空けて対向する入力端子部材を有し、
前記入力端子部材は、複数の接続部を有し、
前記複数の接続部は、前記複数の上側スイッチング素子の前記第2方向の間に配置され、前記第1方向において前記複数の下側スイッチング素子と対向しており、
前記複数の上側スイッチング素子の前記第2上側端子はそれぞれ、上側電力用接続部材により前記第2基板に電気的に接続されており、
前記複数の下側スイッチング素子の前記第2下側端子はそれぞれ、前記第1方向において前記下側スイッチング素子と対向する接続部に下側電力用接続部材により電気的に接続されている
付記14に記載のパワーモジュール。
(付記16)
前記複数の上側ショットキーバリアダイオード及び前記複数の下側ショットキーバリアダイオードは前記第2方向において1つずつ交互に配置されており、
前記複数の接続部は、前記複数の上側ショットキーバリアダイオードの前記第2方向の間に配置され、前記第1方向において前記複数の下側ショットキーバリアダイオードと対向しており、
前記複数の上側ショットキーバリアダイオードのアノードはそれぞれ、上側ダイオード用接続部材により前記第2基板に電気的に接続されており、
前記複数の下側ショットキーバリアダイオードのアノードはそれぞれ、前記第1方向において前記下側ショットキーバリアダイオードと対向する接続部に下側ダイオード用接続部材により電気的に接続されている
付記15に記載のパワーモジュール。
(付記17)
前記第1基板は、上側制御配線部を有し、
前記第2基板は、下側制御配線部を有し、
前記上側スイッチング素子は、上側制御部材により前記上側制御端子と前記上側制御配線部とが接続されるものであり、
前記下側スイッチング素子は、下側制御部材により前記下側制御端子と前記下側制御配線部とが接続されるものであり、
前記上側スイッチング素子、前記上側ショットキーバリアダイオード、前記下側スイッチング素子、及び前記下側ショットキーバリアダイオードのそれぞれは、前記上側制御配線部と前記下側制御配線部との前記第1方向の間に配置されており、
前記上側制御配線部及び前記下側制御配線部は、前記第2方向に延びている
付記16に記載のパワーモジュール。
(付記18)
前記第1基板及び前記第2基板のそれぞれは、グラファイト基板を有する
付記15~17のいずれか一つに記載のパワーモジュール。
(付記19)
前記第1基板は、前記第2方向における前記第1基板の熱伝導性が前記第1方向における前記第1基板の熱伝導性よりも低くなるように構成されており、
前記第2基板は、前記第2方向における前記第2基板の熱伝導性が前記第1方向における前記第2基板の熱伝導性よりも低くなるように構成されている
付記18に記載のパワーモジュール。
(付記20)
前記上側ショットキーバリアダイオードは前記上側スイッチング素子に内蔵されており、
前記下側ショットキーバリアダイオードは前記下側スイッチング素子に内蔵されており、
前記上側スイッチング素子及び前記下側スイッチング素子はそれぞれ、複数個設けられ、
前記基板は、グラファイト基板を有し、
前記グラファイト基板は、前記複数の上側スイッチング素子が表面に実装された第1基板と、前記複数の下側スイッチング素子が表面に実装された第2基板とを有し、
前記パワーモジュールの第1方向において前記第1基板と前記第2基板とが並べられ、
前記第1基板及び前記第2基板は、前記パワーモジュールの平面視において前記第1方向と直交する第2方向が長手方向となる長方形状に形成されており、
前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の下側スイッチング素子は前記第2方向において交互に配置されており、
前記パワーモジュールは、その厚さ方向において前記第1基板と間隔を空けて対向する入力端子部材を有し、
前記入力端子部材は、複数の接続部を有し、
前記複数の接続部は、前記複数の上側スイッチング素子の前記第2方向の間に配置され、前記第1方向において前記複数の下側スイッチング素子と対向しており、
前記複数の上側スイッチング素子の前記第2上側端子はそれぞれ、上側電力用接続部材により前記第2基板に電気的に接続されており、
前記複数の下側スイッチング素子の前記第2下側端子はそれぞれ、前記第1方向において前記下側スイッチング素子と対向する接続部に下側電力用接続部材により電気的に接続されている
付記14に記載のパワーモジュール。
(付記21)
前記第1基板において前記複数の上側スイッチング素子及び前記複数の上側ショットキーバリアダイオードが配置される表面には第1表面側金属層が設けられており、
前記第1基板において前記第1基板の表面とは反対側の裏面には第1裏面側金属層が設けられており、
前記第2基板において前記複数の下側スイッチング素子及び前記複数の下側ショットキーバリアダイオードが配置される表面には第2表面側金属層が設けられており、
前記第2基板において前記第2基板の表面とは反対側の裏面には第2裏面側金属層が設けられている
付記20に記載のパワーモジュール。
【符号の説明】
【0285】
1…パワーモジュール
10…半導体装置
11…上側スイッチング素子
11a…ボディダイオード
11d…ドレイン端子(第1上側端子)
11s…ソース端子(第2上側端子)
11g…ゲート端子(上側制御端子)
12…下側スイッチング素子
12a…ボディダイオード
12d…ドレイン端子(第1下側端子)
12s…ソース端子(第2下側端子)
12g…ゲート端子(下側制御端子)
13…上側コンデンサ
14…下側コンデンサ
20…基板
21…セラミック基板(支持基板)
22…出力配線部
23…第1入力配線部
24…第2入力配線部
25…第1上側制御配線部(上側制御配線部)
26…第2上側制御配線部
27…第1下側制御配線部(下側制御配線部)
28…第2下側制御配線部
30…第1入力端子部材
31…第2入力端子部材
32…出力端子部材
33…第1上側制御端子部材
34…第2上側制御端子部材
35…第1下側制御端子部材
36…第2下側制御端子部材
37…上側アイランド部
38…下側アイランド部
39U…上側接続用ワイヤ
39L…下側接続用ワイヤ
40…封止樹脂
44…上側電力用ワイヤ(上側電力用接続部材)
45…上側制御用ワイヤ(上側制御用接続部材)
46…下側電力用ワイヤ(下側電力用接続部材)
47…下側制御用ワイヤ(下側制御用接続部材)
71…上側ダイオード
72…下側ダイオード
80…基板
81…セラミック基板(支持基板)
81a…本体部
81b…裏面金属層(第1裏面側金属層、第2裏面側金属層)
81c…表面金属層(第1表面側金属層、第2表面側金属層)
82…グラファイト基板
82A…第1基板
82B…第2基板
82a…本体部
82b…裏面金属層
82c…表面金属層
83…第1入力端子部材
84…第2入力端子部材(入力端子部材)
84a…第1接続部
84b…第2接続部
84c…第3接続部
84d…第4接続部
84e…第5接続部
85…出力端子部材
88A…第1上側制御端子部材
88B…第2上側制御端子部材
89A…第1下側制御端子部材
89B…第2下側制御端子部材
90…封止樹脂
91…上側ダイオード用ワイヤ(上側ダイオード用接続部材)
92…下側ダイオード用ワイヤ(下側ダイオード用接続部材)
130…上側MISトランジスタ(上側スイッチング素子)
131…下側MISトランジスタ(下側スイッチング素子)
180…ゲート抵抗(上側制御抵抗)
181…ゲート抵抗(下側制御抵抗)
GU2…第2上側制御端子
GL2…第2下側制御端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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