(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】併用療法を用いて脳腫瘍を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/53 20060101AFI20240730BHJP
A61K 31/166 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/175 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K31/53
A61K31/166
A61K31/175
A61K31/4375
A61K31/439
A61P35/00
A61P43/00 121
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200321
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2020518597の分割
【原出願日】2018-06-12
【審査請求日】2022-12-15
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521281955
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア マーティー
(72)【発明者】
【氏名】ネラマンガラ ナガラジャ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン ニコレイ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シェンケイン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン イェン
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526561(JP,A)
【文献】特表2015-525798(JP,A)
【文献】特開平10-045589(JP,A)
【文献】国際公開第2017/004532(WO,A1)
【文献】特定非営利活動法人 日本緩和医療学会,がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2010年版) [online],2010年,[retrieved on 2022-03-17], Retrieved from the Internet: <URL: https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pai
【文献】Jpn J Neurosurg,Vol.21, No.3,2012年,pp.216-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IDH1変異またはIDH2変異の存在を特徴とする神経膠腫を処置する必要のある患者において、前記神経膠腫を処置するための組み合わせ物であって、前記IDH1変異またはIDH2変異は、R(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらし、前記組み合わせ物は、(a)式(I)の化合物
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)1つ以上の追加の治療薬を含み、
前記1つ以上の追加の治療薬が、テモゾロミドまたはPCV化学療法であり、前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬は、前記神経膠腫を処置するのに有効な量で前記患者に同時にまたは順次投与されることを特徴とする、組み合わせ物。
【請求項2】
前記
1つ以上の追加の治療薬が、テモゾロミドである、請求項
1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
前記テモゾロミドが、前記患者の体表面積に基づいて150~200mg/m
2の1日用量で投与されることを特徴とする、請求項
2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
前記1つ以上の追加の治療薬が、PCV化学療法である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
前記組み合わせ物が、1日あたり10~50mgの前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の量で投与されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
前記IDH1変異が、R132X変異である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
前記IDH1変異が、R132H変異またはR132C変異である、請求項
6に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
前記IDH2変異が、R140X変異またはR172X変異である、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項9】
前記IDH2変異が、R140Q変異、R140W変異、またはR140L変異である、請求項
8に記載の組み合わせ物。
【請求項10】
前記IDH2変異が、R172K変異またはR172G変異である、請求項
8に記載の組み合わせ物。
【請求項11】
前記組み合わせ物が、放射線療法と組み合わせてさらに投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項12】
前記式(I)の化合物が、非塩形態で投与されることを特徴とする、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項13】
IDH1変異またはIDH2変異の存在を特徴とする神経膠腫を処置する必要のある患者において、前記神経膠腫を処置するための組成物であって、前記IDH1変異またはIDH2変異は、R(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらし、前記組成物は、式(I)の化合物
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩を含み、前記組成物は、前記患者に、1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて、前記神経膠腫を処置するのに有効な量で投与され、
前記1つ以上の追加の治療薬が、テモゾロミドまたはPCV化学療法であり、前記組成物および前記1つ以上の追加の治療薬は、同時にまたは順次投与されることを特徴とする、組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)は、イソクエン酸塩から2-オキソグルタル酸(すなわち、α-ケトグルタル酸)の酸化的脱炭酸を触媒する。これらの酵素は、2つの別個のサブクラスに属し、そのうちの1つは電子受容体としてNAD(+)を、もう1つはNADP(+)を利用する。5つのイソクエン酸デヒドロゲナーゼが報告されており、すなわち、ミトコンドリアマトリックスに局在する3つのNAD(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、ならびに1つがミトコンドリア、およびもう1つが主として細胞質にある2つのNADP(+)依存性デヒドロゲナーゼである。各NADP(+)依存性アイソザイムは、ホモ二量体である。
【0002】
IDH1(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(NADP+)、細胞質型)は、IDH、IDP、IDCD、IDPCまたはPICDとしても既知である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞質およびペルオキシソームの中に認められるNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。該タンパク質は、PTS-1ペルオキシソーム標的化シグナル配列を含有する。ペルオキシソーム内のこの酵素の存在は、2,4-ジエノイル-CoAから3-エノイルCoAへの変換などのペルオキシソーム内還元のためのNADPHの再生における役割、および2-オキソグルタル酸を消費するペルオキシソーム反応、すなわちフィタン酸のアルファ-ヒドロキシル化における役割を示唆している。細胞質酵素は、細胞質NADPH産生において有意な役割を果たす。
【0003】
ヒトIDH1遺伝子は、414個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする。ヒトIDH1についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列はそれぞれ、GenBank受入NM_005896.2およびNP_005887.2として認めることができる。IDH1についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、Nekrutenko
et al.,Mol.Biol.Evol.15:1674-1684(1998)、Geisbrecht et al.,J.Biol.Chem.274:30527-30533(1999)、Wiemann et al.,Genome Res.11:422-435(2001)、The MGC Project Team,Genome Res.14:2121-2127(2004)、Lubec et al.,UniProtKBへ提出済み(2008年12月)、Kullmann et al.,EMBL/GenBank/DDBJデータベースへ提出済み(1996年6月)、およびSjoeblom et al.,Science 314:268-274(2006)においても記載されている。
【0004】
非変異体、例えば、野生型であるIDH1は、イソクエン酸からα-ケトグルタル酸への酸化的脱炭酸を触媒する。
【0005】
ある特定の癌細胞内に存在するIDH1の変異が結果として、酵素の新たな能力をもたらし、α-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)へのNAPH依存的還元を触媒することが発見された。2HGの産生は、癌の形成および進行に寄与すると考えられている(Dang,L et al.,Nature 2009,462:739-44)。
【0006】
IDH2(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(NADP+)、ミトコンドリア型)は、IDH、IDP、IDHM、IDPM、ICD-M、またはmNADP-IDHとしても既知である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、ミトコンドリア内に認められるNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。該タンパク質は、中間代謝およびエネルギー産生において役割を担っている。このタンパク質は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体と密接に関係または相互作用することができる。ヒトIDH2遺伝子は、452個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする。IDH2についてのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列はそれぞれ、GenBank受入NM_002168.2およびNP_002159.2として認められることができる。ヒトIDH2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、Huh et al.,EMBL/GenBank/DDBJデータベースへ提出済み(1992年11月)、およびThe MGC Project Team,Genome Res.14:2121-2127(2004)においても記載されている。
【0007】
非変異体、例えば、野生型であるIDH2は、イソクエン酸塩からα-ケトグルタル酸(α-KG)への酸化的脱炭酸を触媒する。
【0008】
ある特定の癌細胞内に存在するIDH2の変異が結果として酵素の新たな能力をもたらし、α-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)へのNAPH依存的還元を触媒することが発見された。2HGは、野生型IDH2によって形成されない。2HGの産生は、癌の形成および進行に寄与すると考えられる(Dang,L et al,Nature 2009,462:739-44)。
IDH1またはIDH2における変異は、びまん性軽度悪性神経膠腫(LGG)腫瘍の70%超において生じる。IDH変異は結果的に、2-HGの蓄積をもたらし、これはDNA高メチル化、抑制性ヒストンメチル化の上昇、および分化過程の阻害を経た腫瘍形成を促進すると考えられる。変異体IDH1(mIDH1)を阻害するが、変異体IDH2(mIDH2)を阻害しないことが示されてきたAGI-5198として既知のツール化合物を用いて実施された研究は、mIDH1タンパク質の阻害が、一部のモデル系においてmIDH1により駆動される神経膠腫の成長を抑制することができることを実証した(D.Rohle et al.Science 340:626-630(2013))。しかしながら、近年のmIDH1神経膠腫モデルにおけるインビトロでの研究では、AGI-5198で処理したmIDH1細胞が放射線療法に対して脱感作されたことが示され、これらの研究の著者らは、放射線療法中のmIDH1阻害剤の投与が好ましくない臨床結果を結果としてもたらし得ることを示唆した(R.J.Molenaar et al.,Cancer Research 75:4790-4802(2015))。
米国公開第2015/0018328 A1号は、化学名6-(6-クロロピリジン-2-イル)-N2,N4-ビス((R)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンによって記載される化合物を開示しており、該化合物は、生化学的アッセイおよび細胞アッセイにおいて、変異体IDH1およびIDH2タンパク質の阻害剤として作用することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2015/0018328号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Nekrutenko et al.,Mol.Biol.Evol.15:1674-1684(1998)
【文献】Geisbrecht et al.,J.Biol.Chem.274:30527-30533(1999)
【文献】Wiemann et al.,Genome Res.11:422-435(2001)
【文献】The MGC Project Team,Genome Res.14:2121-2127(2004)
【文献】Sjoeblom et al.,Science 314:268-274(2006)
【文献】Dang,L et al.,Nature 2009,462:739-44
【文献】D.Rohle et al.Science 340:626-630(2013)
【文献】R.J.Molenaar et al.,Cancer Research 75:4790-4802(2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、脳腫瘍を処置することを必要とする患者において、脳腫瘍を処置する方法を提供し、本方法は、該患者に、本明細書に記載の化合物ならびに放射線療法および/または1つ以上の追加の治療薬を投与することを含む。
【0012】
一態様において、本発明は、脳腫瘍を処置することを必要とする患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方法は、該患者に、(a)式(I)の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)放射線療法を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、脳腫瘍を処置することを必要とする患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方法は、該患者に、(a)式(I)の化合物
【化2】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)1つ以上の追加の治療薬を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、脳腫瘍を処置することを必要とする患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方は、該患者に(a)式(I)の化合物
【化3】
またはその薬学的に許容可能な塩、(b)放射線療法、および(c)1つ以上の追加の治療薬を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
神経膠腫を処置する必要のある患者において、前記神経膠腫を処置する方法であって、前記患者に(a)式(I)の化合物
【化11】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)放射線療法を、神経膠腫を処置するのに有効な量で投与することを含む、方法。
(項目2)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および放射線療法が同時に投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および放射線療法が順次投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、10~50mg/日の量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約25mg、50mg、100mg、200mg、または300mgの量で1日1回投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約50mgの量で1日1回投与される、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約10mgの量で1日2回投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記式(I)の化合物が、非塩形態で投与される、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
(項目9)
前記放射線療法が、X線放射の形態で投与される、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
(項目10)
前記放射線療法が、30~60Gyの累積線量で投与される、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
(項目11)
前記神経膠腫が、IDH1変異の存在を特徴とし、前記IDH1変異が、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
前記IDH1変異がR132X変異である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記IDH1変異がR132H変異またはR132C変異である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記神経膠腫が、IDH2変異の存在を特徴とし、前記IDH2変異が、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目15)
前記IDH2変異が、R140X変異である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記IDH2変異が、R140Q、R140W、またはR140L変異である、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記IDH2変異が、R172X変異である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記IDH2変異が、R172K変異またはR172G変異である、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記神経膠腫が、IDH1変異およびIDH2変異の存在を特徴とし、前記IDH1変異およびIDH2変異が共同で、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目1~10のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
神経膠腫を処置する必要のある患者において、前記神経膠腫を処置する方法であって、患者に(a)式(I)の化合物
【化12】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)1つ以上の追加の治療薬を、前記神経膠腫を処置するのに有効な量で投与することを含む、方法。
(項目21)
前記1つ以上の追加の治療薬が、DNA反応性薬である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記DNA反応性薬が、テモゾロミドである、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記テモゾロミドが、前記患者の体表面積に基づいて150~200mg/m
2の1日用量で投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記1つ以上の追加の治療薬が、PARP阻害剤である、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記1つ以上の追加の治療薬が、制吐薬である、項目20に記載の方法。
(項目26)
前記1つ以上の追加の治療薬が、抗痙攣薬または抗てんかん薬である、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記1つ以上の追加の治療薬が、チェックポイント阻害剤である、項目20に記載の方法。
(項目28)
前記1つ以上の追加の治療薬が、PVC化学療法である、項目20に記載の方法。
(項目29)
前記1つ以上の追加の治療薬が、ベバシズマブである、項目20に記載の方法。
(項目30)
前記1つ以上の追加の治療薬が、ゲムシタビンである、項目20に記載の方法。
(項目31)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬が、同時に投与される、項目20~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬が、順次投与される、項目20~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、10~50mg/日の量で投与される、項目20~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目34)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約25mg、50mg、100mg、200mg、または300mgの量で1日1回投与される、項目20~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約50mgの量で1日1回投与される、項目20~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約10mg/日の量で投与される、項目20~32のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記式(I)の化合物が、非塩形態で投与される、項目20~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記神経膠腫が、IDH1変異の存在を特徴とし、前記IDH1変異が患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目20~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
前記IDH1変異が、R132X変異である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記IDH1変異が、R132H変異またはR132C変異である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記神経膠腫が、IDH2変異の存在を特徴とし、前記IDH2変異が、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目20~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記IDH2変異が、R140X変異である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記IDH2変異が、R140Q変異、R140W変異、またはR140L変異である、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記IDH2変異が、R172X変異である、項目41に記載の方法。
(項目45)
前記IDH2変異が、R172K変異またはR172G変異である、項目41に記載の方法。
(項目46)
前記神経膠腫が、IDH1変異およびIDH2変異の存在を特徴とし、前記IDH1変異およびIDH2変異が共同で、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目20~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
神経膠腫を処置する必要のある患者において、前記神経膠腫を処置する方法であって、前記患者に(a)式(I)の化合物
【化13】
またはその薬学的に許容可能な塩、(b)放射線療法、および(c)1つ以上の追加の治療薬を、前記神経膠腫を処置するのに有効な量で投与することを含む、方法。
(項目48)
前記1つ以上の追加の治療薬が、DNA反応性薬である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記DNA反応性薬が、テモゾロミドである、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記テモゾロミドが、前記患者の体表面積に基づいて、150~200mg/m
2の1日用量で投与される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記1つ以上の追加の治療薬が、PARP阻害剤である、項目47に記載の方法。
(項目52)
前記1つ以上の追加の治療薬が、制吐薬である、項目47に記載の方法。
(項目53)
前記1つ以上の追加の治療薬が、抗痙攣薬または抗てんかん薬である、項目47に記載の方法。
(項目54)
前記1つ以上の追加の治療薬が、チェックポイント阻害剤である、項目47に記載の方法。
(項目55)
前記1つ以上の追加の治療薬が、PVC化学療法である、項目47に記載の方法。
(項目56)
前記1つ以上の追加の治療薬が、ベバシズマブである、項目47に記載の方法。
(項目57)
前記1つ以上の追加の治療薬が、ゲムシタビンである、項目47に記載の方法。
(項目58)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、および1つ以上の追加の治療薬が同時に投与される、項目47~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、および1つ以上の追加の治療薬が、順次投与される、項目47~57のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、10~50mg/日の量で投与される、項目47~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約25mg、50mg、100mg、200mg、または300mgの量で1日1回投与される、項目47~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目62)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約50mgの量で1日1回投与される、項目47~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目63)
前記式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が、1回の投与あたり約10mg/日の量で1日2回投与される、項目47~59のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記式(I)の化合物が、非塩形態で投与される、項目47~63のいずれか1項に記載の方法。
(項目65)
前記放射線療法が、X線放射の形態で投与される、項目47~64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記放射線療法が、30~60Gyの累積線量で投与される、項目47~65のいずれか1項に記載の方法。
(項目67)
前記神経膠腫が、IDH1変異の存在を特徴とし、前記IDH1変異が、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目47~66のいずれか1項に記載の方法。
(項目68)
前記IDH1変異が、R132X変異である、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記IDH1変異が、R132H変異またはR132C変異である、項目67に記載の方法。
(項目70)
前記神経膠腫が、IDH2変異の存在を特徴とし、前記IDH2変異が、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目47~66のいずれか1項に記載の方法。
(項目71)
前記IDH2変異が、R140X変異である、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記IDH2変異が、R140Q、R140W、またはR140L変異である、項目70に記載の方法。
(項目73)
前記IDH2変異が、R172X変異である、項目70に記載の方法。
(項目74)
前記IDH2変異が、R172K変異またはR172G変異である、項目70に記載の方法。
(項目75)
前記神経膠腫が、IDH1変異およびIDH2変異の存在を特徴とし、前記IDH1変異およびIDH2変異が共同で、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす、項目47~66のいずれか1項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ビヒクル、放射線療法、化合物A、ならびに放射線療法および化合物Aの組み合わせを用いた処置中の、IHD1m神経膠腫マウスモデルにおける腫瘍体積中央値対時間のグラフである。
【
図2】ビヒクル、テモゾロミド、化合物A、ならびにテモゾロミドおよび化合物Aの組み合わせを用いた処置中の、IDH1m神経膠腫マウスモデルにおける腫瘍体積中央値対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一態様において、本発明は、脳腫瘍を処置する必要のある患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方法は、該患者に、(a)式(I)の化合物
【化4】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)放射線療法を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、非塩(すなわち、遊離塩基)形態で投与される。
【0018】
放射線療法は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の投与と同時にまたは順次(該投与の前または後)投与されることができる。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および放射線療法は、同時に投与される。他の実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および放射線療法は、順次投与される。例えば、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、放射線療法の前に投与される。他の実施形態において、放射線療法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の前に投与される。
【0019】
別の態様において、本発明は、脳腫瘍を処置する必要のある患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方法は、該患者に(a)式(I)の化合物
【化5】
またはその薬学的に許容可能な塩および、(b)1つ以上の追加の治療薬を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、非塩(すなわち、遊離塩基)形態で投与される。
【0021】
1つ以上の追加の治療薬は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と一緒に、単一剤形(例えば、薬学的組成物)で、または個別の剤形として投与されることができる。個別の剤形として投与される場合、1つ以上の追加の治療薬は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の投与と同時にまたは順次(該投与の前または後)、投与されることができる。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬は、同時に投与される。他の実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬は、順次投与される。例えば、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1つ以上の追加の治療薬の前に投与される。他の実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の前に投与される。
【0022】
別の態様において、本発明は、脳腫瘍を処置することを必要とする患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方法は、該患者に(a)式(I)の化合物
【化6】
またはその薬学的に許容可能な塩、(b)放射線療法、および(c)1つ以上の追加の治療薬を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、非塩(すなわち、遊離塩基)形態で投与される。
【0024】
1つ以上の追加の治療薬は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と一緒に、単一の剤形(例えば、薬学的組成物)でまたは個別の剤形として投与されることができる。式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬が単一剤形で投与される場合、単一剤形は、放射線療法の投与と同時にまたは順次(該投与の前もしくは後)、投与されることができる。
【0025】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、および1つ以上の追加の治療薬が個別の剤形として投与される場合、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、1つ以上の追加の治療薬、および放射線療法は、互いに同時にまたは何らかの順序で順次投与されることができる。
【0026】
別の態様において、本発明は、脳腫瘍を処置することを必要とする患者において、脳腫瘍を処置するための方法を提供し、本方法は、該患者に、(a)式(I)の化合物
【化7】
またはその薬学的に許容可能な塩、および(b)DNA反応性薬を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、非塩(すなわち、遊離塩基)形態で投与される。
【0028】
DNA反応性薬は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と一緒に、単一剤形(例えば、薬学的組成物)でまたは個別の剤形として投与されることができる。個別の剤形として投与される場合、DNA反応性薬は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の投与と同時にまたは順次(該投与の前または後)、投与されることができる。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、およびDNA反応性薬は、同時に投与される。他の実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、およびDNA反応性薬は、順次投与される。例えば、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、DNA反応性薬の前に投与される。他の実施形態において、DNA反応性薬は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の前に投与される。
【0029】
別の態様において、本発明は、脳腫瘍を処置する必要のある患者に、式(a)の化合物
【化8】
またはその薬学的に許容可能な塩、(b)放射線療法、および(c)DNA反応性薬を、脳腫瘍を処置するのに有効な量で投与することを含む、該患者における脳腫瘍を処置するための方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、非塩(すなわち、遊離塩基)形態で投与される。
【0031】
DNA反応性薬は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と一緒に、単一剤形(例えば、薬学的組成物)でまたは個別の剤形として投与されることができる。式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、およびDNA反応性薬が単一剤形で投与される場合、単一剤形は、放射線療法の投与と同時にまたは順次(該投与の前または後)、投与されることができる。
【0032】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、およびDNA反応性薬が個別の剤形として投与される場合、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、DNA反応性薬、および放射線療法は、互いに同時にまたは何らかの順序で順次投与されることができる。
【0033】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかにおける使用のために、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかにおける使用のための薬剤の製造のための、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0035】
本明細書において使用される場合、「有効量の」という句は、併用投与されるとき、本明細書に記載の方法における脳腫瘍を処置するための治療上の利益を達成するのに十分である式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、ならびに放射線療法および/または1つ以上の追加の治療薬(例えば、DNA反応性薬)の量を指す。本明細書に記載の方法において有効な量は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬(例えば、DNA反応性薬)を単剤療法として投与されるときに有効である量と同じであってもなくてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法において有効である式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の量は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩が単剤療法として投与されるときに有効である、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の量と同じであるか、該量よりも少ないか、または該量よりも多い。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法において有効である放射線療法の量は、放射線療法が単剤療法として投与されるときに有効である放射線療法の量と同じであるか、該量よりも少ないか、または該量よりも多い。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法において有効である1つ以上の追加の治療薬(例えば、DNA反応性薬)の量は、1つ以上の追加の治療薬(例えば、DNA反応性薬)が単剤療法として投与されるときに有効である1つ以上の追加の治療薬(例えば、DNA反応性薬)の量と同じであるか、該量よりも少ないか、または該量よりも多い。
【0036】
本明細書において使用される場合、「処置すること」という用語は、脳腫瘍を指すとき、脳腫瘍の1つ以上の症状を軽減すること、脳腫瘍の進行を変化させること、脳腫瘍の大きさを低減すること、脳腫瘍の成長を遅延もしくは抑制すること、脳腫瘍の悪性度を低減すること、または脳腫瘍の静止を誘導すること、または脳腫瘍を処置するために投与もしくは適用される別の療法と関係する1つ以上の副作用を軽減もしくは最小限にすることを意味する。いくつかの実施形態において、「処置すること」は、脳腫瘍の大きさを低減することまたは脳腫瘍の成長を遅延もしくは抑制することを含む。いくつかの実施形態において、「処置すること」は、ある期間、脳腫瘍の大きさを低減するか、または脳腫瘍の成長を遅延もしくは抑制することを含み、それに続いて脳腫瘍が静止する。いくつかの実施形態において、「処置すること」は、脳腫瘍の大きさに影響することなく、脳腫瘍に及ぼす治療効果を有すること、脳腫瘍の症状を軽減すること、脳腫瘍の進行を変化させること、または脳腫瘍の静止を誘導することを含む。いくつかの実施形態において、「処置すること」は、脳腫瘍内の悪性細胞の数または百分率を低減することを含む。
【0037】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、神経膠腫に罹患している患者において完全奏功、部分奏功、または安定した疾患を提供する。
【0038】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の全生存を増やす。
【0039】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の完全寛解率を増大させる。
【0040】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の客観的奏功率を上昇させる。
【0041】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の進行に至るまでの時間を延長する。
【0042】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の無再発生存期間を延長させる。
【0043】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の無増悪生存期間を延長させる。
【0044】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の無事象生存期間を延長させる。
【0045】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されていない患者と比較して、有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の寛解の持続時間を延長させる。
【0046】
一実施形態では、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の化合物で処置されていない患者と比較して、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の持続時間または応答を増大させる。
【0047】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩の化合物を用いて処置されていない患者と比較して、有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を用いて処置されたとき、神経膠腫に罹患している患者の寛解/応答に至るまでの時間を延長する。
【0048】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の全生存期間を延長させる。
【0049】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の完全寛解率を上昇させる。
【0050】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の客観的奏功率を上昇させる。
【0051】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の進行に至るまでの時間を延長させる。
【0052】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくは薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の無再発生存期間を延長させる。
【0053】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の無増悪生存期間を延長させる。
【0054】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の無事象生存期間を延長させる。
【0055】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の寛解の持続時間を延長させる。
【0056】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の持続時間または応答を増大させる。
【0057】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、放射線療法、または1つ以上の追加の治療薬を個々に用いて処置された患者と比較して、神経膠腫に罹患している患者の寛解/反応に至るまでの時間を延長させる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「完全奏功」という用語は、処置に応答した、癌のすべての徴候の消失を指す。このことは、癌が治癒したことを必ずしも意味するわけではない。該用語は、当技術分野において「完全寛解」と相互交換可能でもある。
【0059】
本明細書で使用される場合、「部分奏功」という用語は、処置に応答した、腫瘍の大きさの低下、または体内の癌の程度の低下を指す。該用語は、当技術分野において「部分寛解」と相互交換可能でもある。
【0060】
本明細書で使用される場合、「安定した疾患」という用語は、範囲または重症度が増大も低下もしない癌を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「全生存期間」(OS)という用語は、臨床試験における無作為化から何らかの原因による死亡までの時間を意味する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「完全寛解率」という用語は、疾患のこのようなすべての症状発現の完全な消失を指す。
【0063】
本明細書において使用される場合、「客観的奏功率」(ORR)という用語は、所定の量の腫瘍の大きさの低減が最短期間で起こる患者の比率を指す。応答持続時間は通常、初期応答の時点から腫瘍進行の文書化まで測定される。概して、米国食品医薬品局は、部分奏功と完全奏功の合計としてORRを定義している。このように定義されるとき、ORRは、薬剤抗腫瘍活性の直接的な尺度であり、これは単一アーム試験で査定することができる。安定した疾患は、ORRの構成要素であるべきではない。安定した疾患は、疾患の自然な病歴を反映することができるのに対し、腫瘍低減は、直接的な治療効果である。ORRの有意性は、その大きさおよび持続時間、ならびに完全奏功(腫瘍の検出可能な証拠なし)の百分率によって評価される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「進行に至るまでの時間」(TPP)という用語は、無作為化から客観的腫瘍進行までの時間を指し、TTPは死亡を含まない。
【0065】
本明細書において使用される場合、「無再発生存期間」(RFS)という用語は、癌のいかなる徴候または症状もなく患者が生存する、癌に対する一次処置が終了した後の時間の長さを指す。臨床試験において、無再発生存期間を測定することは、新たな処置がいかに良好に効いているかをみるための1つの方法である。該用語はまた、当技術分野において無疾患生存期間(DFS)と相互交換可能である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)という用語は、臨床試験における無作為化から進行または死亡までの時間を意味する。
【0067】
本明細書で使用される場合、「無事象生存期間」(EFS)という用語は、試験登録から、疾患進行、何らかの理由のための処置中断、または死亡を含む何らかの処置不全までの時間を意味する。
【0068】
本明細書で使用される場合、「応答の持続時間」(DoR)という用語は、応答を達成してから再発または疾患進行までの時間である。
【0069】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、マウス、ラット、イヌおよびヒトを含む、脳腫瘍(例えば、神経膠腫)に罹患している哺乳類動物を指す。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0070】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1~100mg/日、2~50mg/日、3~30mg/日、4~20mg/日、5~15mg/日、8~12mg/日、または約10mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1~500mg/日、1~250mg/日、5~100mg/日、8~75mg/日、10~50mg/日、15~40mg/日、20~30mg/日、または約25mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1~500mg/日、10~250mg/日、20~100mg/日、30~80mg/日、40~60mg/日、45~55mg/日、または約50mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1~500mg/日、20~400mg/日、40~200mg/日、50~150mg/日、75~125mg/日、85~115mg/日、90~110mg/日、または約100mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1~500mg/日、50~400mg/日、100~300mg/日、150~250mg/日、175~225mg/日、185~215mg/日、190~210mg/日、または約200mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1~500mg/日、100~500mg/日、200~400mg/日、250~350mg/日、275~375mg/日、285~315mg/日、290~310mg/日、または約300mg/日の量で投与される。他の実施形態において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1日当たり0.01~10mg/体重kg、1日当たり0.2~8.0mg/体重kg、1日当たり0.4~6.0mg/体重kg、1日当たり0.6~4.0mg/体重kg、1日当たり0.8~2.0mg/体重kg、1日当たり0.1~1mg/体重kg、1日当たり0.2~1.0mg/体重kg、1日当たり0.15~1.5mg/体重kg、または1日当たり0.1~0.5mg/体重kgである。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1日の上述の量の投与を達成するために、1日1回、または1日1回超(例えば、1日2回、1日3回、1日4回、など)投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1日の上述の量の投与を達成するために1日1回投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1日の上述の量投与を達成するために、1日当たり2回投与される。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1回あたり30~70mg、35~65mg、40~60mg、45~55mg、または約50mgの量で1日1回投与される。他の実施形態において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1回あたり約10mg、約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、または約300mgの量で1日1回投与される。さらに他の実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、1回あたり5~35mg、5~20mg、5~15mg、または約10mgの量で、1日2回投与される。本明細書に明らかにされる式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の量は、式(I)の化合物の量に基づく。いかなる特定の対象に対する具体的な薬用量および処置投与計画も、採用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与回数、排泄量、薬物の組み合わせ、疾患、容態または症状の重症度および経過、疾患、容態または症状に対する対象者の素因、ならびに処置する医師の判断によることになる。
【0071】
いくつかの実施形態において、放射線療法は、nccn.orgで入手可能なNCCNガイドライン(National Comprehensive Cancer Network Clinical Practice Guidelines in Oncology)初版(2016年)に準拠した様式で投与される(例えば、投与の量およびスケジュール)。いくつかの実施形態において、放射線療法は、20~100Gy、または30~80Gy、または30~60Gy、または40~70Gy、または40~60Gy、または30~40Gy、または40~50Gy、または50~60Gy、または45~55Gyの累積線量で、1.0~5.0Gyフラクション、または1.5~3.0Gyフラクション、または1.0~1.5Gyフラクション、または1.5~2.0Gyフラクション、または2.0~2.5Gyフラクション、または2.5~3.0Gyフラクション、または1.8~2.0Gyフラクション、または1.8Gyフラクション、または2.0Gyフラクションで投与される。いくつかの実施形態において、放射線療法は、1.5~2.5Gyフラクションで50~70Gy、または2.0Gyフラクションで60Gyの累積線量で投与される。累積線量は、処置の経過の間に与えられた分割量の全部の合計を指す。
【0072】
放射線療法の線量は、脳腫瘍の性質に基づいて選択されることができる。脳腫瘍が軽度悪性神経膠腫であるいくつかの実施形態において、放射線療法は、1.5~2.5Gyフラクションで40~50Gyの累積線量で、または1.8~2.0Gyフラクションで45~54Gyの累積線量で、または1.8~2.0Gyフラクションで45.5Gyの累積線量で投与される。いくつかの実施形態において、脳腫瘍が高度悪性神経膠腫であるいくつかの実施形態において、放射線療法は、1.5~2.5Gyフラクションで50~70Gyの累積線量で、または1.8Gyフラクションで59.4Gyの累積線量で、または1.8Gyフラクションで55.8~59.4Gyの累積線量で、または1.9Gyフラクションで57Gyの累積線量で、または1.8~2.0Gyフラクションで60Gy、または5.0Gyフラクションで25Gyの累積線量で投与される。脳腫瘍が膠芽腫であるいくつかの実施形態において、放射線療法は、2.0~4.0Gyフラクションで30~60Gyの累積線量で、または3.4Gyフラクションで34Gyの累積線量で、または2.5~3.0Gyフラクションで35~45Gyの累積線量で、または2.5Gyフラクションで50Gyの累積線量で投与される。
【0073】
追加の治療薬
本明細書で使用される場合、本明細書に記載の方法において採用される「1つ以上の追加の治療薬」には、脳腫瘍を処置するのに有用であること、すなわち、脳腫瘍に対して治療効果を有する、脳腫瘍の1つ以上の症状を軽減する、脳腫瘍の進行を変化させる、脳腫瘍を撲滅する、脳腫瘍の大きさを低減する、脳腫瘍の成長を遅延させもしくは抑制する、脳腫瘍と関係する1つ以上の症状を遅延させもしくは最小限にする、または脳腫瘍を処置するために適用もしくは投与される別の療法と関係する1つ以上の副作用を軽減しもしくは最小限にすることに対して有用であることが既知である薬剤が含まれる。
【0074】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、DNA反応性薬、PARP阻害剤、制吐薬、抗痙攣薬または抗てんかん薬、チェックポイント阻害剤、PVC化学療法、ベバシズマブ、およびゲムシタビンのうちの1つ以上を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、DNA反応性薬である。本明細書で使用される場合、「DNA反応性薬」は、細胞DNAと共有結合的にまたは非共有結合的に相互作用するアルキル化剤、架橋剤、およびDNA挿入剤などの薬剤である。例えば、DNA反応性薬には、アドゼレシン、アルトレタミン、ビゼレシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボクオン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムスチン、ホテムスチン、ヘプスルファム、イホスファミド、イムプロスルファン、イロフルベン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、ミトゾロミド、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピポスルファン、プロカルバジン、セムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、チオテパ、トレオスルファン、ジエチルニトロソアミン、ベンゾ(a)ピレン、ドキソルビシン、ミトマイシンC、およびこれらに類するものが含まれる。これらのDNA反応性薬の多くは、癌療法においてDNA反応性化学療法薬として有用である。
【0076】
いくつかの実施形態において、DNA反応性薬は、テモゾロミド(TMZ)である。これらの実施形態の一態様において、TMZは、nccn.orgで入手可能なNCCNガイドライン(例えば、投与の量およびスケジュール)、初版(2016年)に準拠した様式で投与される。これらの実施形態の一態様において、TMZは、TEMODAR(登録商標)(テモゾロミド)カプセル剤および注射用TEMODAR(登録商標)(テモゾロミド)についての処方情報に準拠した様式で投与される。これらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、患者の体表面積に基づく100~250mg/m2、または100~150mg/m2、または150~200mg/m2、または200~250mg/m2の1日用量で投与される。これらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、患者の体表面積に基づく50~100mg/m2、または50~75mg/m2、または75~100mg/m2、または60~90mg/m2
、または65~85mg/m2、または70~80mg/m2の1日用量で投与される。これらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、患者の体表面積に基づいて125~175mg/m2の1日用量で28日間処置周期の連続した5日間投与される。これらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、放射線療法との組み合わせで患者の体表面積に基づいて50~100mg/m2、または50~75mg/m2、または75~100mg/m2、または60~90mg/m2
、または65~85mg/m2、または70~80mg/m2の1日用量で投与される。これらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、放射線療法との組み合わせで、患者の体表面積に基づいて70~80mg/m2の1日用量で42日間投与される。脳腫瘍が高度悪性神経膠腫または膠芽腫であるこれらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、放射線療法との組み合わせで、患者の体表面積に基づいて70~80mg/m2の1日用量で42日間投与される。脳腫瘍が退形成性星細胞腫であるこれらの実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、患者の体表面積に基づいて125~175mg/m2の1日用量で、28日間処置周期の連続した5日間投与される。脳腫瘍が退形成性星細胞腫であるこれら実施形態のうちのいくつかの態様において、TMZは、患者の体表面積に基づいて175~225mg/m2の1日用量で、28日間処置周期の連続した5日間投与される。
【0077】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、PARP阻害剤である。本明細書で使用される場合、「PARP阻害剤」は、酵素ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害剤を指す。PARP阻害剤の例としては、パミパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ベラパリブ、イニパリブ、タラゾパリブ、ニラパリブなどが挙げられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、制吐薬である。本明細書で使用される場合、「制吐薬」は、嘔吐および悪心の症状を低減するのに有効である薬剤を指す。制吐薬の例としては、5-HT3受容体アンタゴニスト(例えば、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、ミルタザピンなど)、ドパミンアゴニスト(例えば、ドンペリドン、オランザピン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロクロルペラジン、メトクロプラミドなど)、NK1受容体アンタゴニスト(例えば、アプレピタント、カソピタント、ロラピタントなど)、抗ヒスタミン薬(例えば、シンナリジン、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、ドキシラミン、メクリジン、プロメタジン、ヒドロキシジンなど)、カンナビノイド(例えば、カンナビス、ドロナビノール、合成カンナビノイドなど)、ベンゾジアゼピン(例えば、ミダゾラム、ロラゼパムなど)、抗コリン作動性薬(例えば、スコポラミンなど)、ステロイド(例えば、デキサメタゾンなど)、トリメトベンズアミド、ショウガ、プロポフォール、グルコース/フルクトース/リン酸(商品名Emetrol(登録商標)の下で販売)、ペパーミント、ムスシモール、アジョワンなどが挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、抗痙攣薬または抗てんかん薬である。本明細書で使用される場合、「抗痙攣薬または抗てんかん薬」は、てんかん発作を含む痙攣を処置または予防するのに有効である薬剤を指す。抗痙攣薬の例としては、パラアルデヒド、スチリペントール、フェノバルビタール、メチルフェノバルビタール、バルベキサクロン、クロバザム、クロナゼパム、クロラゼペート、ジアゼパム、ミダゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、テマゼパム、ニメタゼパム、臭化カリウム、フェルバメート、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、エスリカルバゼピンアセテート、バルプロ酸、バルプロ酸ナトリウム、ジバルプレックスナトリウム、ビガバトリン、プロガビド、チアガビン、トピラマート、ガバペンチン、プレガバリン、エトトイン、フェニトイン、メフェニトイン、ホスフェニトイン、パラメタジオン、トリメタジオン、エタジオン、ベクラミド、プリミドン、ブリバラセタム、エチラセタム、レベチラセタム、セレトラセタム、エトスクシミド、フェンスクシミド、メスクシミド、アセタゾールアミド、スルチアム、メタゾラミド、ゾニサミド、ラモトリギン、フェネツリド、フェナセミド、バルプロミド、バルノクタミド、ペランパネル、スチリペントール、ピリドキシンなどが挙げられる。
【0080】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、チェックポイント阻害剤である。本明細書で使用される場合、「チェックポイント阻害剤」は、それがなければ癌細胞に対する免疫系攻撃を防止するであろう免疫チェックポイント(例えば、CTLA-4、PD-1/PD-L1など)を阻害する治療薬を指し、それにより免疫系に癌細胞を攻撃することが可能となる。チェックポイント阻害剤の例としては、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BGB-A317、スパルタリズマブなどが挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、PVC化学療法である。本明細書で使用される場合、「PVC化学療法」は、プロカルバジン、ロムスチン(商品名CCNU(登録商標)の下で販売)、およびビンクリスチン(商品名Onocovin(登録商標)の下で販売)の組み合わされた投与を含む化学療法投与計画を指す。典型的には、ビンクリスチンは静脈内投与されるのに対し、プロカルバジンおよびロムスチンは経口投与される。PCV化学療法はしばしば、周期で投与され、各周期はビンクリスチンおよびロムスチンの単回投与と、プロカルバジンを用いた10日間コースの処置とを含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、ベバシズマブである。商品名Avastin(登録商標)の下で販売されているベバシズマブは、組換えヒト化モノクローナル抗体である。
【0083】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療薬は、ゲムシタビンである。商品名Gemzar(登録商標)の下で販売されているゲムシタビンは、ピリミジンヌクレオシド類似体である。
【0084】
本発明の方法によって処置された脳腫瘍
本発明の方法は、脳腫瘍を処置するのに有用である。これには、ヒト頭蓋骨(頭蓋)内部のまたは中枢管の内側のすべての腫瘍が含まれる。腫瘍は、脳自体に由来し得るが、リンパ組織、血管、脳神経、脳エンベロープ(髄膜)、頭蓋骨、下垂腺、または松果体にも由来し得る。脳自体の内部では、関連する細胞はニューロンまたはグリア細胞(星状細胞、希突起グリア細胞および上衣細胞を含む)であり得る。脳腫瘍は、主として他の器官の内部に位置する癌から広がることもできる(転移性腫瘍)。
【0085】
いくつかの実施形態において、脳腫瘍は、上衣種、星状細胞腫、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、神経節膠腫、膠芽腫(多形膠芽腫としても既知)、または混合性グリオーマなどの神経膠腫である。神経膠腫は、一次脳腫瘍であり、顕微鏡下での外観、特に異型細胞、有糸核分裂、内皮増殖、および壊死の存在に基づいて、4つの悪性度(I、II、III、およびIV)に分類される。「軽度悪性神経膠腫」と呼ばれる悪性度IおよびIIの腫瘍は、これらの特色のうちのいずれも有さないかまたは1つを有し、びまん性星状細胞腫、毛様性星細胞腫、低分化型星細胞腫、低分化型乏突起星細胞腫、軽度悪性乏突起膠腫、神経節膠腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、多形黄色星細胞腫、および混合性グリオーマを含む。「高度悪性神経膠腫」と呼ばれる悪性度IIIおよびIVの腫瘍は、これらの特色のうちの2つ以上を有し、退形成性星細胞腫、退形成性乏突起膠腫、退形成性乏突起星細胞腫、退形成性上衣腫、および膠芽腫(巨細胞膠芽腫および神経膠肉腫を含む)を含む。これらの実施形態のうちの一態様において、神経膠腫は、軽度悪性神経膠腫である。これらの実施形態のうちの別の態様において、神経膠腫は、高度悪性神経膠腫である。これらの実施形態の別の態様において、神経膠腫は膠芽腫である。
【0086】
いくつかの実施形態において、処置されることになっている脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH1変異の存在を特徴とし、ここで、IDH1変異は、患者においてR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす。これらの実施形態のうちの一態様において、IDH1変異は、患者におけるα-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸へのNADPH依存的還元を触媒する酵素の新たな能力を提供することによって、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす。これらの実施形態のうちの別の態様において、IDH1変異はR132X変異である。これらの実施形態のうちの別の態様において、R132X変異は、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、およびR132Gから選択される。これらの実施形態のうちの別の態様において、R132X変異は、R132HまたはR132Cである。これらの実施形態のうちのさらに別の態様において、R132X変異はR132Hである。これらの実施形態のうちのなおも別の態様において、脳腫瘍(例えば、神経膠腫)細胞のうちの少なくとも30、40、50、60、70、80または90%は、診断時または処置時に、R132H、R132C、R132L、R132V、R132SまたはR132G変異などのIDH1 R132X変異を保有する。脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH1のアミノ酸132での変異の存在および特異的な性質(例えば、該変異に存在する変化したアミノ酸)を決定するために細胞試料を配列決定することによって分析されることができる。
【0087】
他の実施形態において、処置されることになっている脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH2変異の存在を特徴とし、ここで、IDH2変異は、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす。これらの実施形態のうちの一態様において、IDH2変異は、患者におけるα-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸へのNADPH依存的還元を触媒する酵素の新たな能力を提供することによって、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす。これらの実施形態のうちの別の態様において、変異体IDH2は、R140X変異を有する。これらの実施形態のうちの別の態様において、R140X変異はR140Q変異である。これらの実施形態のうちの別の態様において、R140X変異は、R140W変異である。これらの実施形態のうちの別の態様において、R140X変異は、R140L変異である。これらの実施形態のうちの別の態様において、変異体IDH2は、R172X変異を有する。これらの実施形態のうちの別の態様において、R172X変異は、R172K変異である。これらの実施形態のうちの別の態様において、R172X変異は、R172G変異である。これらの実施形態のうちのなおも別の態様において、脳腫瘍(例えば、神経膠腫)細胞のうちの少なくとも30、40、50、60、70、80または90%は、診断時または処置時に、R140Q、R140W、もしくはR172XなどのIDH2
R140X変異および/もしくはR172K変異、またはR172G変異を保有する。脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH2のアミノ酸140および/または172における変異(において存在する、例えば、変化したアミノ酸)の存在および特異的性質を決定するために、細胞試料を配列決定することによって分析されることができる。
【0088】
なおも他の実施形態において、処置されることになっている脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH1変異およびIDH2変異の存在を特徴とし、ここで、IDH1変異およびIDH2変異は共同で、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす。これらの実施形態のうちの一態様において、IDH1変異およびIDH2変異は、患者におけるα-ケトグルタル酸からR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸へのNADPH依存的還元を触媒する酵素の新たな能力を提供することによって、患者におけるR(-)-2-ヒドロキシグルタル酸の蓄積を結果としてもたらす。これらの実施形態のうちの種々の態様において、IDH1変異は、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、およびR132Gから選択されるR132X変異である。これらの実施形態のうちの種々の態様において、IDH2変異は、R140Q、R140W、R140L、R172K、またはR172G変異である。これらの実施形態のうちの種々の他の態様において、処置されることになっている脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、上述のIDH1変異およびIDH2変異の何らかの組み合わせを特徴とする。これらの実施形態のうちのなおも他の態様において、脳腫瘍(例えば、神経膠腫)細胞のうちの少なくとも30、40、50、60、70、80または90%は、診断時もしくは治療時に、R132H、R132C、R132L、R132V、R132SもしくはR132G変異などのIDH1 R132X変異、ならびにR140Q、R140W、もしくはR140Lおよび/またはR172KもしくはR172G変異などのIDH2 R140Xおよび/またはR172X変異を保有する。脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH1のアミノ酸132ならびに/またはIDH2のアミノ酸140および/もしくは172における変異(に例えば存在する変化したアミノ酸)の存在ならびに特異的な性質を決定するために、細胞試料を配列決定することによって分析されることができる。
【0089】
なおも他の実施形態において、処置されることになっている脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、R132X変異を含まないIDH1対立遺伝子、およびR140XまたはR172Xの変異を含まないIDH2対立遺伝子の存在を特徴とする。これらの実施形態のうちの一態様において、脳腫瘍(例えば、神経膠腫)細胞のうちの少なくとも90%は、診断時または処置時にIDH1のアミノ酸132またはIDH2のアミノ酸140もしくは172に変異を含まない。脳腫瘍(例えば、神経膠腫)は、IDH1のアミノ酸132におけるならびにIDH2のアミノ酸140および/または172における変異の有無を決定するために、細胞試料を配列決定することによって分析されることができる。
【0090】
本発明の方法において使用される化合物およびその薬学的に許容可能な塩
本明細書に記載の方法で使用される式(I)の化合物は、6-(6-クロロピリジン-2-イル)-N2,N4-ビス((R)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-イル)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミンとして既知であり、実施例においては化合物Aと呼ばれる。
【0091】
式(I)の化合物は、米国公開第2015/0018328 A1の段落[1032]~[1036]に記載の方法によって調製されることができ、これらの段落は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0092】
本明細書で使用される場合、「化合物」および「薬学的に許容可能な塩」という用語は、式(I)の化合物およびその薬学的に許容可能な塩を指すとき、その何らかの互変異性体もしくは回転異性体、その何らかの固体形態(その何らかの重合体形態を含む)、その何らかの溶媒和物形態もしくは水和物形態、その何らかの共結晶、およびその何らかの溶液を含む、何らかの形態における特定の化合物および薬学的に許容可能な塩を含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよびそれより下等の動物の組織と、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などなく接触させて使用するのに適しており、かつ妥当な有益性/危険比でいる塩を指す。の組織との接触に適した、ヒトおよび下部動物の組織との接触、刺激性、アレルギー反応、およびこれに類するものなしに使用するのに適しており、かつ合理的な有益性/リスク比と釣り合っている塩を指す。式(I)の化合物の「薬学的に許容可能な塩」には、受け手への投与の際に、式(I)の化合物を直接的または間接的のいずれかで提供することができる何らかの非毒性塩を含む。薬学的に許容可能な塩は、参照により本明細書に組み込まれるS.M.Berge,et.al,J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において詳細に記載されている。
【0094】
本明細書で使用される場合、「共結晶」という用語は、個々に種と比較したとき、明確な結晶学的特性および分光特性を有する定義された化学量論比における2つ以上の中性化学種から成る結晶固体を指す。「共結晶」は、帯電して平衡のとれた帯電した種でできている「塩」とは異なる。共結晶を構成する種は典型的には、水素結合ならびに他の非共有結合性相互作用および非イオン性相互作用によって連結されている。したがって、薬剤の薬学的共結晶は典型的には、薬剤と1つ以上の共形体とを含む。
【0095】
本明細書および特許請求の範囲において、式(I)の化合物の各原子は、指定された元素の何らかの安定した同位体を表すことを意味する。実施例において、特定の同位体において化合物Aの何らかの原子を濃縮させる尽力をしなかったので、各原子は、指定の元素のおよそ天然量の放射性同位体組成物で存在した。
【0096】
本明細書で使用される場合、「安定した」という用語は、同位体を指すとき、同位体が自然発生的な放射性崩壊を受けることが知られていないことを意味する。安定した同位元素には、V.S.Shirley & C.M.Lederer,Isotopes Project,Nuclear Science Division,Lawrence
Berkeley Laboratory,核種の表(1980年1月)において崩壊様式が特定されていない同位体が含まれるが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、指定の元素のおよそ天然量の同位体組成物で各構成要素原子を含む。
【0098】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩の組成物および投与経路
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩は、対象者に投与される前に、薬学的組成物中へと薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクルと一緒に製剤されてもよい。
【0099】
「薬学的に許容可能な担体、アジュバント、またはビヒクル」という用語は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩と一緒に対象者に投与されることができ、かつその薬理学的活性を損なわず、治療量の化合物を送達するのに十分な用量で投与されるときに非毒性である担体、アジュバント、またはビヒクルを指す。
【0100】
薬学的組成物において使用されることができる薬学的に許容可能な担体、アジュバントおよびビヒクルには、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネートなどの自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、Tweenまたは他の類似の高分子送達マトリックスなどの、薬学的剤形において使用される界面活性剤、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸、水、塩などの緩衝性物質、または硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。α-、β-、およびγ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、2-および3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含むヒドロキシアルキルシクロデキストリンなどの化学的に修飾された誘導体、または他の可溶化された誘導体も、式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の送達を亢進するために有利に使用することができる。
【0101】
薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸に、鼻腔に、頬側に、膣に、または植え込まれた貯蔵器を介して、好ましくは経口投与または注射による投与によって投与されることができる。薬学的組成物は、何らかの従来の非毒性の薬学的に許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含有することができる。いくつかの場合において、製剤のpHは、製剤された化合物またはその送達形態の安定性を亢進するために、薬学的に許容可能な酸、塩基または緩衝液を用いて調整されることができる。本明細書で使用される場合、非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、髄腔内、病変内および頭蓋内への注射技術または注入技術を含む。
【0102】
薬学的組成物は、滅菌済みの注射可能な調製物の形態で、例えば、滅菌済みの注射可能な水性または油性の懸濁液としてであってもよい。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁剤を使用して、当技術分野で既知の技術によって製剤されることができる。滅菌済みの注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の、例えば、1,3-ブタンジオール溶液としての滅菌済みの注射可能な液剤または懸濁剤であってもよい。採用されることのできる許容可能なビヒクルおよび溶媒には、マンニトール、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌済みの固定油は、溶媒または懸濁媒体として従来通り採用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む何らかの無刺激性固定油を採用してもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にポリオキシエチル化版におけるオリーブ油またはひまし油などの天然の薬学的に許容可能な油のように、注射剤の調製において有用である。これらの油の溶剤または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロースまたはエマルションおよびもしくは懸濁剤などの薬学的に許容可能な剤形の製剤において一般的に使用される類似の分散剤も含むことができる。TweenもしくはSpansなどの他の一般的に使用される界面活性剤および/または薬学的に許容可能な固体、液体、もしくは他の剤形の製造において一般的に使用される他の類似の乳化剤もしくは生物学的利用率増強剤も、製剤の目的のために使用されることができる。
【0103】
薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、エマルションならびに水性の懸濁剤、分散剤および液剤を含むがこれに限定されない、何らかの経口的に許容可能な剤形で経口投与されることができる。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体はラクトースおよびトウモロコシデンプンを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与については、有用な希釈剤はラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンを含む。水性懸濁剤および/またはエマルションが経口投与されるとき、有効成分は、乳化剤および/または懸濁剤と組み合わせられた油相において懸濁または溶解することができる。所望の場合、ある特定の甘味剤および/または着香剤および/または着色剤を添加することができる。
【0104】
薬学的組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与されることもできる。これらの組成物は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、室温で固体であるが直腸温で液体であり、それゆえ、有効成分を放出するために直腸内で融解することになる適切な非刺激性の賦形剤と混合することによって調製されることができる。このような材料には、カカオバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
薬学的組成物は、皮膚に局所的に投与されることができる。薬学的組成物は、担体中に懸濁されまたは溶解した有効成分を含有する適切な軟膏で製剤されるべきである。本発明の一態様の化合物の局所投与のための担体には、鉱油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が含まれるがこれらに限定されない。あるいは、薬学的組成物は、適切な乳化剤を用いて担体中に懸濁されまたは溶解した有効化合物を含有する適切なローションまたはクリームで製剤化されることができる。適切な担体としては、鉱油、ソルビタンモノステアリン酸塩、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一態様の薬学的組成物は、直腸用坐薬製剤または適切な浣腸製剤によって下部消化管に局所的に適用されることもできる。局所的経皮パッチも本発明の一態様に含まれる。
【0106】
薬学的組成物は、鼻腔用エアゾールまたは吸入によって投与されることができる。このような組成物は、薬学的製剤の分野において周知の技術によって調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤生物学的利用率を亢進するための吸収促進剤、フルオロカーボン、ならびに/または当技術分野で既知の他の可溶化剤もしくは分散剤を採用して、塩類溶液中の液剤として調製されることができる。
【0107】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせられることができる有効成分の量は、処置される患者および特定の投与様式に応じて異なることになる。典型的な調製物は、約5%~約95%の有効化合物(w/w)を含有することになる。あるいは、このような調製物は、約20%~約80%の有効化合物を含有する。
【0108】
式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物は、DNA反応性薬(先に定義)など、癌を処置するのに有用な別の治療薬をさらに含むことができる。
【0109】
式(I)の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物は、1つ以上の追加の治療薬(例えば、DNA反応性薬)をさらに含むことができる。
【0110】
放射線療法の投与経路
放射線療法は、癌細胞を損傷させおよび/または殺滅し、腫瘍を縮小するための高エネルギー放射(例えば、X線、ガンマ線、または荷電粒子)の使用を包含する。本発明の方法において、放射線は、体外に配置された機械によって(外部ビーム放射線療法)、脳腫瘍の近くで体内に置かれた放射性材料によって(近接照射療法とも呼ばれる内部放射線療法)、または脳腫瘍へ血流を経て移動する全身投与された放射性物質(例えば、放射性ヨウ素)によって、脳腫瘍(例えば、神経膠腫)に送達されることができる。あるいは、これらの送達方法を併用することができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、放射線療法は、外部放射線療法(例えば、分割外部ビーム放射線療法、Cyberknife(登録商標)またはGamma Knife(登録商標)プロトン療法などの立体放射線などを含む外部ビーム放射線療法)を含み、ここで、放射線は、体外にある機器によって脳腫瘍(例えば、神経膠腫)に送達される。外部放射線療法は、何日間または何週間にもわたるいくつかの処置の経過として与えられることができる。これらの実施形態の一態様において、放射線はX線の形態で投与される。
【0112】
他の実施形態において、放射線療法は内部放射線療法を含み、放射線は、体内に置かれたインプラントまたは材料(液体、固体、半固体または他の物質)から来る。これらの実施形態のうちの一態様において、内部放射線療法は近接照射療法であり、ここで、固体放射線源は脳腫瘍の近くで体内に置かれる。これらの実施形態のうちの別の態様において、内部放射線療法は、放射線源、典型的には放射性核種(放射性同位体または密封されていない源)の全身投与を含む。放射線源は経口投与されることができ、または静脈内に注入されることができる。
【0113】
追加の処置および治療薬
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、患者に 追加の癌治療薬または追加の癌処置を投与する追加のステップをさらに含む。
【0114】
例えば、本明細書に記載の方法は、神経膠腫のための既存の標準治療療法と組み合わされて実施されることができる。神経膠腫と診断された患者についての標準治療は、腫瘍の場所、潜在的な症状、および異なる処置選択肢(様式)の潜在的な利益対リスクを考慮する。神経膠腫の初期診断の際に、標準処置は、最大外科的切除、放射線療法、ならびに/または同時化学療法およびアジュバント化学療法(例えば、テモゾロミド(TMZ)を用いる)からなる。70歳よりも高齢の患者については、放射線療法またはTMZを単独で使用するあまり攻撃的ではない療法が採用される。(概してnccn.orgで入手可能なNCCNガイドライン,初版(2016)を参照されたい)
【0115】
例えば、初期悪性度IVの膠芽腫(GBM)の処置のための現行投与計画は、放射線療法および化学療法と組み合わせた外科的切除である。現在の米国食品医薬品局が承認する初期悪性度IVのGBM腫瘍のための化学療法には、ニトロソ尿素(ロムスチンおよびカルムスチン)およびTMZが含まれる。神経膠腫の術後の標準治療療法は、抗腫瘍療法としての放射線およびTMZと、神経学的症候性緩和のためのデキサメタゾン(DEX)とからなる。より近年、血管内皮成長因子(VEGF)に対する抗体であるベバシズマブは、腫瘍再発に対してより頻繁に使用されている。数多くの実験薬は、開発中である前臨床適用および臨床適用の種々の相にあり、膠芽腫の標準治療への変化を結果としてもたらすことができる。
【0116】
本明細書に記載の方法は、放射線療法または手術と組み合わせることができる。ある特定の実施形態において、方法は、放射線療法を受けている患者、放射線療法を以前に受けた患者、または放射線療法を受けることになっている患者において実施される。ある特定の実施形態において、方法は、脳腫瘍除去手術を受けた患者で実施される。脳腫瘍に対して以前に処置されたが、例えばテモゾロミドを用いた標準療法に対して非応答性である患者、およびこれまで措置されていない患者を処置するための方法が本明細書でさらに提供される。問題の容態を処置する試みで手術を受けた患者、および手術を受けていない患者を処置するための方法が、本明細書でさらに提供される。脳腫瘍に罹患している患者は、異質な臨床的症状発現および変化する臨床結果を有する可能性があるので、患者に与えられた処置は、予後に応じて変えることができる。当業者は、脳腫瘍に罹患している個々の患者を処置するのに有効に使用されることができる特異的な二次薬、手術の種類、および非薬物系標準療法の種類を、過度の実験をすることなく容易に決定することができることになる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、テモゾロミドの投与を追加的に含む。いくつかのこのような実施形態において、脳腫瘍は、テモゾロミド耐性である。
【0117】
例示的な追加の癌治療薬には、例えば、化学療法、標的治療、免疫療法、抗てんかん薬、ステロイド、チェックポイント阻害剤、CAR-T、Gliadel(登録商標)(カルムスチンインプラント)、およびAvastin(登録商標)(ベバシズマブ)が含まれる。追加的な癌処置には、例えば、手術および放射線療法が含まれる。
【0118】
いくつかの実施形態において、追加の癌治療薬は、標的治療薬である。標的治療は、癌細胞の調節解除されたタンパク質に特異的な薬剤の使用を構成する。小分子標的治療薬は概して、癌細胞内にある変異したタンパク質、過剰発現したタンパク質、またはそうでなければ重要なタンパク質に関する酵素ドメインの阻害剤である。顕著な例は、アキシチニブ、ボスチニブ、セジラニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、レスタウチニブ、ニロチニブ、セマキサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、およびバンデタニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、ならびにまたアルボシジブおよびセリシクリブなどのサイクリン依存性キナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態において、標的治療は、本明細書に記載の方法と併用することができ、例えば、メトホルミンまたはフェンホルミン、好ましくはフェンホルミンなどのビグアニドである。
【0119】
標的療法は、細胞表面受容体、または腫瘍を包囲している影響された細胞外基質に結合することができる「ホーミング素子」として小さなペプチドを包含することもできる。これらのペプチド(例えば、RGD)に付着した放射性核種は、核種が細胞近傍で崩壊する場合、癌細胞を最終的に殺滅させる。このような療法の例としては、BEXXAR(登録商標)が挙げられる。
【0120】
いくつかの実施形態において、追加の癌治療薬は、免疫療法薬である。癌免疫療法は、腫瘍と戦う対象者自身の免疫系を誘導するように設計された多様な治療戦略セットを指す。
【0121】
ドナーの免疫細胞が、移植片対腫瘍の効果において腫瘍をしばしば攻撃することになるので、同種造血幹細胞移植は免疫療法の形態とみなすことができる。いくつかの実施形態において、免疫療法薬は、本明細書に記載の方法と併用することができる。
【0122】
他の考えられ得る追加の治療様式には、イマチニブ、遺伝子療法、ペプチドおよび樹状細胞ワクチン、合成クロロトキシン、ならびに放射性標識した薬物および抗体が含まれる。
【実施例】
【0123】
略語
別途記載がない限り、または文脈が別途指定しない限り、次の略語は、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【表9】
【0124】
実施例1
IDH1m神経膠腫モデルにおける化合物Aおよび放射線療法の組み合わせ
【0125】
試験目的:
本試験の目的は、雌マウスにおけるIDH1 R132H変異を担持する確立された同所性ヒトニューロスフェア由来悪性度III神経膠腫細胞に対する1日2回与えられる化合物Aの潜在的な有効性を単独で、および焦点ビーム放射線との組み合わせで、磁気共鳴撮像法(MRI)を使用して査定することとした。
【0126】
試験設計
本試験のマウスを、接種37日後および38日後にMRIによって撮像し、腫瘍量のMRI推定に基づいて5つの試験群に選別した。38日後に病期分類値を記録した。表1に要約した処置スケジュールを用いて、接種39日後に処置を開始した。
【表1】
【0127】
表1に反映されたプロトコル逸脱は次のとおりであった。
【0128】
*第1群、第3群、第4群、および第5群については、試験終了まで化合物Aまたはビヒクル対照の投与を延長した。表1((Q12Hx2)QDx17)で指定された投与スケジュールは、各群について計画された投与スケジュールであった。しかしながら、各群について、投与は、動物が該群にいなくなるまで継続された。表1の各群について指定した期間中、投与を継続した。
【0129】
**第2群、第4群、および第5群については、SARRPユニットは、処置の3日目の後に破壊され(41日後)、第2群における試験動物6~10ならびに第4群および第5群の試験動物1~10に対する放射線処置において2日間の遅延を結果としてもたらした。第2群の試験動物1~5について処置に遅延は発生しなかった。臨床試験実施基準において共通であるように、患者が放射線セッションを受け損なっている場合、療法中の2日間の間隙からの線量曝露の分割を占める生物学的有効線量(BED)の計算を使用することによって、放射線曝露を、遅延に供される試験動物に対し修正した。2日間のSARRP処置遅延の後、調整された放射線曝露を計算して、同時期にわたって生物学的有効線量(BED)を得た。2Gyについては、腫瘍に対してQDx5処置(組織アルファ/ベータ=10)を行い、BED10=12Gyとした。それゆえ、このBEDを達成するために、最後の2回の投与を2.1Gyで送達した。
【0130】
上述のプロトコル逸脱は、本試験の結果に影響したとは考えられていない。
【0131】
材料および方法:
試験動物(Envigoから入手した雌マウス)に、IDH1R132H変異を保有する5×104個の細胞を、試験の0日後に頭蓋内に植え込んだ。細胞株は、Mellinghoff研究室(Memorial Sloan Kettering Cancer
Institute/NYC)により作製された初代由来ヒト神経膠腫細胞株であり、TS603細胞株として特定される。該細胞株を、Neurocult NS補液、0.0002%ヘパリン、20ng/mLのEGF、および10ng/mLのbFGFを含有するStemCell Technologies NeuroCult培地中で培養した。腫瘍を、わずかな腫瘍体積(平均9.1mm3)で38日後に登録するために企図した。
【0132】
化合物Aを、用量レベルの要件を満たすように調製した。該化合物を、0.5%メチルセルロース、0.2% Tween80、および水からなるビヒクル中で5mg/mLの濃度で製剤した。いかなる塊も溶解するために、およそ30~60秒間ポリトロンを使用した。結果として得られた製剤は、pH値2.8の微細な白色の懸濁液であった。製剤を毎日新鮮に調製し、投与前に少なくとも1時間撹拌した。投与製剤を、投与の間、4℃で保存した。
【0133】
化合物Aを、50mg/kg(化合物Aの量に基づく)で、第3~5群に対して1日2回経口投与した。化合物Aの用量は、この用量での履歴データに基づいて選択され、2HG産生は、健常な脳組織と比較したとき、脳腫瘍内で>98%で抑制される。
【0134】
放射線処置は、Xstrahl Life Science Small Animal Radiation Research PlatformまたはSARRPを介して投与した。このシステムは、ヒト患者に適用されたものを模倣する高度に標的化された照射を可能にするように設計されている。SARRP上のX線管は、可変出力を有し、処置を誘導するためのコンピュータ断層撮影法(CT)撮像に、および単一または複数のビームを用いた処置送達のためにも使用される。腫瘍に送達される放射線の合計量は、第2群、第4群、および第5群に対して10Gy/個体(2Gy、QDx5)とした。
【0135】
第1群は、同じ処置スケジュールで麻酔をかけた。
【0136】
試験動物はすべて、44日後に皮下液(乳酸リンガー)を受容し始めた。ヒドロゲルの補充物を、39日後に開始のすべてのケージに加えた。
【0137】
T2重みつけ(T2w)磁気共鳴画像(MRI)を取得し、それにより体積測定結果を評価して疾患進行を決定することができた。脳腫瘍体積を、38、45、49、52、56、59、63、66、および71日後にMRIを介して査定した。
【0138】
結果:
化合物Aまたは放射線と関連した死亡はなかった。ビヒクルを用いた処置は十分に耐容性があり、結果として処置関連の死亡率をもたらさなかった。処置は、25.1%の体重減少と関係しており、そのほとんどが進行性腫瘍の量によるものであるようであり、ビヒクルまたは麻酔によるものではないようであった。試験動物は、42日後に臨床徴候を示し始めた。試験動物の大部分は、49日後には粗い毛衣、猫背の姿勢、および脱水の開始を展開し始めた。
【0139】
放射線療法のみによる処置(第2群)、化合物Aのみによる処置(第3群)、化合物Aおよび放射線療法の同時投与による処置(第4群)、ならびに放射線療法に続く化合物Aの順次投与による処置(第5群)を比較した。MRIからの腫瘍体積概算値は、併用療法を受けているマウス(第4群および第5群)が各群をビヒクル処置マウス(第1群)と比較したとき、単独療法のみ(第2群および第3群)と比較して有意に小さな腫瘍量を実証したことを発見した。各群における59日後を含むそれまでの動物の測定された腫瘍体積の中央値(mm
3)を表2および
図1に報告する。63日後、66日後、および71日後に測定された腫瘍体積は、第1群が59日後に終了したので、
図1に含まれておらず、それゆえ、ビヒクル対照との比較は、のちの時点について可能ではない。
図1の誤差棒は、各データ点についての絶対分布の中央値に対応する。
【表2】
【0140】
表3に示すように、指定された群間での59日後の腫瘍量における差異は統計的に有意であった。データ点は、疾患量によって試験の異なる段階で終了したので、すべてのマウスからの腫瘍体積を組み込むことができるように、本試験を成し遂げられた。最終データの統計的有意性は、群間の対応のないマン・ホイットニー検定を使用して行った。
【表3】
【0141】
したがって、放射線療法中のmIDH1阻害剤の投与が、放射線療法に対してmIDH1細胞を脱感作させることがインビトロでの実験から示唆された(R.J.Molenaar et al.,Cancer Research 75:4790-4802(2015))が、
図1に示される結果は、化合物Aおよび放射線療法の組み合わせが、同所性変異体IDH1神経膠腫脳腫瘍モデルにおいてインビボで拮抗作用がないことを示すことを実証している。
【0142】
実施例2
IDH1mグリアモデルにおける化合物Aおよびテモゾロミド療法の組み合わせ
【0143】
試験目的:
本試験の目的は、雄マウスにおいて、IDH1 R132H変異を担持する確立された皮下ヒトニューロスフェア由来神経膠腫細胞に対する、1日2回、単独で、およびテモゾロミドとの組み合わせで与えられる化合物Aの潜在的な有効性を査定することとした。
【0144】
試験設計:
試験マウスを6つの試験群に分け、表4に要約した処置スケジュールに従って処置した。
【表4】
【0145】
材料および方法
90匹の5~6週齢の雄マウス(Taconic Biosciencesから取得)に、マトリゲルを含有する成長ホルモン/ヘパリン非含有培地中のIDH1R132Hを保持する1×106個を皮下に植え込んだ(最終、1:1)。細胞株は、Mellinghoff研究室(Memorial Sloan Kettering Cancer Institute/NYC)によって作製された初代由来ヒト神経膠腫細胞株とし、TS603細胞株として特定される。細胞株を、Neurocult NS補充物、0.0002%ヘパリン、20ng/mLのEGF、および10ng/mLのbFGFを含有するStemCell Technologies NeuroCult培地中で培養した。腫瘍の可変性を説明するために、余剰のマウスに接種した。腫瘍体積および体重を、腫瘍が約200mm3に到達するまで週2回監視した。腫瘍が約200mm3に達したら、腫瘍量のデジタルカリスパ概算に基づいて、動物を6群に無作為化した。
【0146】
ビヒクル対照製剤(第1群)は、水中に0.5%メチルセルロースおよび0.1%Tween80を含有し、塩酸でpH3.5になるよう調整した。
【0147】
TMZ(2mg/mL)製剤(第2群、第4群、第5群、および第6群)を次のとおり調製した。
【0148】
1)24mgのTMZを透明バイアル中へ入れて秤量した。
【0149】
2)水中の12mlの0.5%メチルセルロースおよび0.1%のTween80を添加した。
【0150】
3)バイアルを1~2分間ボルテックスし、必要な場合、超音波処理し、使用前に氷上で保存した。
【0151】
化合物A(10mg/mL)製剤(第3群および第6群)を次のとおり調製した。
【0152】
1)120mgの化合物Aを透明バイアル中へ入れて秤量した。
【0153】
2)水中の12mlの0.5%メチルセルロースおよび0.1%のTween80を添加した。
【0154】
3)バイアルを1~2分間ボルテックスし、必要な場合、超音波処理し、使用前に氷上で保存した。
【0155】
化合物A(2mg/mL)製剤(第5群)を次のとおり調製した。
【0156】
1)1.4mLの10mg/mLの製剤を透明バイアル中に移した。
【0157】
2)水中の5.6mLの0.5%のメチルセルロースおよび0.1%のTween80を添加した。
【0158】
3)バイアルを1~2分間ボルテックスし、必要な場合、超音波処理し、使用前に氷上で保存した。
【0159】
化合物A(0.4mg/mL)製剤(第4群)を次のとおり調製した。
【0160】
1)1.2mLの2mg/mL製剤を、透明バイアル中に移した。
【0161】
2)水中の4.8mLの0.5%メチルセルロースおよび0.1%のTween80を添加した。
【0162】
3)バイアルを1~2分間ボルテックスし、必要な場合、超音波処理し、使用前に氷上で保存した。
【0163】
表4に示すように、各製剤を、最新の体重に基づいて5ml/kgで経口強制飼養を介して投与した。ビヒクル対照および化合物A製剤を、動物を群へと無作為化に分けた1日後で開始し、1日2回、7日間/週で投与した。TMZ製剤を、月曜日~木曜日に1日1回、次いで、動物を群へと無作為に分けた1日後に3日間の休薬を開始した。TMZの投与については、マウスが初回強制飼養投与から回復できるように、化合物Aの投与から少なくとも1時間あけて動物に投与した。本試験は55日間継続した。
【0164】
結果:
TMZ単独投与(第2群)、化合物A単独投与(第3群)、ならびにTMZおよび化合物Aの同時投与(第4群~第6群)を用いた処置を比較した。44、47、50、54、57、60、および64日後にデジタルカリスパによって腫瘍体積を測定した。表5および
図2に示すように、化合物AおよびTMZの組み合わせた治療様式(第4群~第6群)は、いずれかの処置単独(第2群および第3群)と比較すると、腫瘍体積に対する匹敵する効果を生じた。
図2の誤差棒は、各データ点についての平均の標準誤差に対応する。
【表5】
【0165】
表6に示すように、TMZ(第2群)および化合物A(第3群)は、ビヒクル(第1群)に対して統計的に有意な腫瘍成長抑制を個々に生じた。しかしながら、単一の薬剤(第2群および第3群)のうちのいずれかと組み合わせ(第4群、第5群、および第6群)との間には統計的に有意な差はなかった。統計解析は、54日後の最終的な腫瘍測定値からの腫瘍体積を、群間に対応のないStudentのT検定試験を用いて比較することによって行った。
【表6】
【0166】
したがって、
図2に示す結果は、化合物AとTMZとの組み合わせが、各単剤療法と比較したときに抗腫瘍活性の喪失を結果的にもたらさなかったことを実証する。
【0167】
実施例3
IDH1m神経膠腫における化合物Aと放射線療法との組み合わせ
【0168】
試験目的:
本試験の目的は、エンドポイントとして生存を使用した雌マウスのIDH1 R132H変異を担持する確立された同所性ヒトニューロスフェア由来悪性度III神経膠腫細胞に対して、1日2回、単独の、および焦点ビーム放射線と組み合わせた化合物Aの潜在的な有効性を査定することとした。
【0169】
試験設計:
本試験マウスを、接種37日後および38日後にMRIによって撮像し、腫瘍量のMRI概算に基づき5つの試験群へと分けた。病期分類値を38日後に記録した。処置は、表7に要約した処置スケジュールを用いて、接種40日後に開始した。
【表7】
【0170】
表7に反映されたプロトコル逸脱は次のとおりであった。
【0171】
*第1群、第3群、第4群、および第5群については、試験終了まで化合物Aの投与を延長した。表7に指定の投薬スケジュール((Q12Hx2)QDx17)は、各群についての計画された投与スケジュールであった。しかしながら、各群について、該群に動物がいなくなるまで投与を継続した。表7の各群に指定の期間中、投与を継続した。投与の延長は、インビボでの試験において共通である。本研究の場合、腫瘍体積は依然として、試験前に予測されたものを超えてビヒクルまたは化合物Aのいずれかを用いた処置をマウスが受けることができる範囲内であった。
【0172】
上述のプロトコル逸脱は、本試験の結果に影響を与えたとは考えられていない。
【0173】
材料および方法:
試験動物(Envigoから取得した雌マウス)に、IDH1R132Hを担持する5x104個の細胞を試験の0日後に頭蓋内に植え込んだ。細胞株は、Mellinghoff研究室(Memorial Sloan Kettering Cancer Institute/NYC)により作製された初代由来ヒト神経膠腫細胞株とし、TS603細胞株として特定された。細胞株を、Neurocult NS補充物、0.0002%ヘパリン、20ng/mLのEGF、および10ng/mLのbFGFを含有するStemCell Technologies NeuroCult培地中で培養した。
【0174】
T2重みづけ(T2w)磁気共鳴画像(MRI)を取得して、それにより体積測定値を評価して疾患進行を決定することができた。
【0175】
マウスをすべて、腫瘍量の磁気共鳴概算に基づいて試験群へと分けた。マウスは、全群に対する平均腫瘍量が、試験集団に対する全体的な平均腫瘍量の10%以内であることを確実にするよう分配された。全体的な平均腫瘍量が9.8mm3である40日後に処置が始まった(群平均の範囲、9.7~9.8mm3)。すべてのマウスは、処置当日に個々の体重(0.2mL/20g)によって、または一定の体積で投与された。
【0176】
ヒドロゲル(登録商標)補充物を、試験開始時にすべての試験マウスのためのすべてのケージに添加し(40日後)、試験終了まで毎日補充した。皮下液(乳酸リンガー)を44日後に開始するすべてのマウスに与えた。体重減少が20%未満であるマウスは、毎日合計1.5mL受けたのに対し、体重減少が20%を超えていたマウスは、毎日合計2mLで受けていた。すべてのマウスに対する皮下液は、試験終了まで継続された。
【0177】
化合物Aは、0.5%メチルセルロース、0.2%Tween80、および水のビヒクル中で製剤された。いかなる塊も溶解するために、ポリトロンをおよそ30~60秒間使用した。結果として得られた製剤は、pH値4.5および濃度5mg/mLの微細な白色の懸濁液であった。製剤を毎日新鮮に調製し、投与前に少なくとも1時間撹拌した。投与用製剤を4℃で投与間に保存した。
【0178】
放射線処置を、Xstrahl Life Science Small Animal Radiation Research Platform(SARRP)を介して投与した。このシステムは、ヒト患者において適用されたものを模倣する高度に標的化された照射を可能にするように設計されている。SARRP上のX線管は、可変出力を有しており、処置を誘導するためにコンピュータ断層撮影法(CT)による撮像のために、および単一または複数のビームを用いた処置送達のためにも使用される。腫瘍に送達される放射線の総量は、第2群、第4群、および第5群に対して10Gy/個体(2Gy、QD×5)とした。
【0179】
第1群は、同じ処置スケジュールで麻酔をかけた。
【0180】
化合物Aの午前の投与の6時間後、安楽死基準(30%超の体重減少、膨隆頭蓋、重度の運動障害、重度の呼吸困難、および/または立ち直り反射の喪失)を上回るマウスを、血液および脳の収集のために二酸化炭素への過剰曝露を介して安楽死させた。
【0181】
測定およびエンドポイント:
有効性に使用した主要エンドポイントは、寿命の延長とした。
【0182】
副作用の評価すべての動物を、少なくとも1日1回臨床徴候について観察した。各処置日に動物を秤量した。個々の体重を週3回記録した。次の事象のうちのいずれか1つまたは組み合わせに対して動物を安楽死させた:30%超の体重減少、膨隆頭蓋、重度の運動障害、重度の呼吸困難、および/または立ち直り反射の喪失。
【0183】
処置関連体重減少および正味の処置関連体重減少も測定した。それぞれの日に対して処置された各動物についての体重変化から、ビヒクル対照平均処置関連体重変化を減じることによって、正味の体重減少を計算した。処置関連体重を、施設内実験動物委員会(IACUC)承認済みのプロトコル施策に従ってのみ監視した。処置関連体重減少は、疾患量進行と同時であり、試験の処置に関連していなかった。
【0184】
寿命中央値。各動物の寿命を、各動物について初回処置当日(腫瘍植え込み当日ではない)から測定し(Kaplan-Meier生存-対数階級)、各群について寿命中央値を計算するのに使用した。この計算は、疾患または処置関連原因のために、死亡したかまたは安楽死したかのいずれかである、すべての動物についての死亡日に基づいた。試料採取または療法と関連していない原因のために安楽死した動物は、この計算から除外した。
【0185】
各群についての寿命の中央値を使用して、寿命の%延長(%ILS)を計算した。%ILSは、群エンドポイントである。これを次のとおり計算した。
%ILS={[(処置群の寿命の中央値)-(対照の寿命の中央値)]/(対照の寿命の中央値)}×100
【0186】
SigmaPlo12.5ソフトウェアを使用して、処置群(第2群~第5群)と対照群(第1群)との比較について、P値および統計的有意性を決定した。
【0187】
結果:
処置の初日における本実験中のすべての群についての平均概算腫瘍量は9.8mm3であり、本実験のすべての群は、良好に一致していた(群平均の範囲、9.7~9.8mm3)。すべての動物は、療法開始時に少なくとも16.1gの体重を測定した。初回の処置での平均群体重も良好に一致していた(群平均の範囲19.0~19.3g)。
【0188】
第2群~第5群の寿命の中央値および%ILSを、表8に報告する。
【表8】
【0189】
表8に示すように、処置群は、焦点放射線(第2群)を受けている処置群ならびに化合物Aおよび焦点放射線を包含する併用療法を受けている処置群(第4群および第5群)は、寿命の実質的な延長を経験した。統計的に有意ではないが、併用療法を受けている処置群(第4群および第5群)は、焦点放射線を受けている群(第2群)よりも寿命の延長が大きいことを経験した。
【0190】
したがって、放射線療法中のmIDH1阻害剤の投与が、放射線療法に対してmIDH1細胞を脱感作させることは、インビトロでの実験から示唆されてきた(R.J.Molenaar et al.,Cancer Research 75:4790-4802(2015))が、表8に示す結果は、化合物Aおよび放射線療法の組み合わせが、同所性変異体IDH1神経膠腫脳腫瘍モデルにおいてインビボでの拮抗作用を示さないことを実証している。