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特許7529756電気加熱式エアロゾル発生装置における温度制御のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電気加熱式エアロゾル発生装置における温度制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/50 20200101AFI20240730BHJP
【FI】
A24F40/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022208561
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2019556604の分割
【原出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2023024754
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】17169337.7
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ジャック
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ベッサン ミシェル
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057286(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0104916(US,A1)
【文献】特開2006-304914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体エアロゾル形成基体から吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置(1)であって、前記装置(1)が、
抵抗ヒーター(4)と、
電池(2)が電池電圧(V電池)を発生するように構成されている、電池(2)と、
制御ユニット(3)であって、
前記電池電圧(V電池)を入力として前記電池から受け入れるように、かつ出力電圧(Vヒーター)を前記抵抗ヒーター(4)に出力するように配置されたバックコンバータ(32)と、
前記抵抗ヒーター(4)に提供される前記出力電圧を調整するために、前記バックコンバータ(32)を制御するように構成されたマイクロコントローラー(30)と、
を備える制御ユニット(3)と、
を備え
前記マイクロコントローラー(30)が、前記抵抗ヒーター(4)を通る電流を監視するように、かつ前記抵抗ヒーターを通る前記電流が最大電流閾値を超えないことを確実にするために、前記バックコンバータ(32)を制御するように構成されている、
エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記マイクロコントローラー(30)が、前記出力電圧(Vヒーター)が前記電池電圧(V電池)以下となるように、前記バックコンバータ(32)を制御する、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記マイクロコントローラー(30)が、吸煙の間前記ヒーターへの電力の供給を制御する、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記マイクロコントローラー(30)が、前記抵抗ヒーターの測定されたもしくは算出された抵抗または温度に基づいて、前記バックコンバータを制御するように構成されている、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記マイクロコントローラー(30)が、閉ループ制御スキームを動作するように構成されている、請求項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記ヒーターの温度または抵抗を測定するための手段をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記マイクロコントローラーが開ループ制御スキームを動作するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記電池電圧が最小電池電圧以上に維持されることを確実にするために、前記マイクロコントローラーが前記バックコンバータを制御する、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
前記マイクロコントローラーが、5秒を超える期間にわたり、前記バックコンバータから前記抵抗ヒーターに電流を連続的に供給するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項10】
液体エアロゾル形成基体から吸入可能なエアロゾルを発生するためのエアロゾル発生装置(1)を制御する方法であって、エアロゾル発生装置(1)が、抵抗ヒーター(4)と、電池(2)であって、電池電圧(V電池)を発生するように構成されている、電池(2)と、制御ユニット(3)であって、前記電池電圧(V電池)を入力として前記電池から受け入れるように、かつ出力電圧(Vヒーター)を前記抵抗ヒーター(4)に出力するように配置されたバックコンバータ(32)を備える制御ユニット(3)と、を備え、
前記抵抗ヒーター(4)に提供される前記出力電圧を調整するために、前記バックコンバータ(32)を制御することを含み、
前記方法が、
前記抵抗ヒーター(4)を通る電流を監視すること、及び
前記抵抗ヒーターを通る前記電流が最大電流閾値を超えないことを確実にするために、前記バックコンバータ(32)を制御すること
をさらに備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱式エアロゾル発生装置に関し、特に電池式エアロゾル発生装置内のヒーターのための温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、加熱式電池式エアロゾル発生装置において、エアロゾル形成基体を加熱するために、電気抵抗性のある発熱体が使用されている。エアロゾル形成基体は、抵抗発熱体によって気化され、次いで冷却されてエアロゾルを形成する一つ以上の揮発性化合物を含む。抵抗発熱体の温度は、生成されるエアロゾルの量および質の両方を決定する上で重大な役割を果たす。従って、装置内の発熱体の温度の制御を提供するためのこうした装置のニーズがある。
【0003】
さらに、経時的な特定の温度プロファイルに従う発熱体の温度を制御できることが望ましい。エアロゾル形成基体の状態の変化、および装置を通る気流の変化は、発熱体を単一の目標温度に単に制御することが最適な結果を提供しないことを意味しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的に、発熱体(複数可)に供給される電圧のパルス幅変調(PWM)は、発熱体の温度を制御するために使用される。これは、発熱体の温度の単純かつ反応性の高い制御を提供する。しかしながら、温度制御のための唯一の方法としてパルス幅変調を使用することには数多くの制約がある。エアロゾル発生システム内の発熱体の温度を制御するための代替的な方法およびシステムを提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様において、エアロゾル発生装置用の制御ユニットが提供されていて、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体を加熱するための抵抗ヒーターと、電池とを備え、電池は電池電圧を発生するように構成されていて、前記制御ユニットは、
電池電圧を入力として電池から受け入れるように、かつ出力電圧を抵抗ヒーターに出力するように配置されたDC/DCコンバータと、
抵抗ヒーターのための所定の温度プロファイルに基づいて出力電圧を調整するために、前記DC/DCコンバータを制御するように構成されたマイクロコントローラーと、を備える。
【0006】
抵抗ヒーターに印加されるDC電圧を調整するためにDC/DCコンバータを使用することは、特に抵抗ヒーターの質量が小さい時、パルス幅変調(PWM)を単独で使用することに勝る著しい利点を有する。PWM制御は実装するのに比較的単純かつ安価であり、また反応性が高いが、抵抗ヒーター構造の質量がオン期間とオフ期間との間の温度を効果的に平均化するのに十分でない場合、オン期間中に抵抗ヒーターが過熱することになる危険がPWM制御にはある。PWM周波数が過度に高い時、装置の効率が低下することになるので、この問題を軽減するために単にPWM周波数を増やすことは望ましくない。同様に、エアロゾル形成基体での温度スパイクを低減するために、抵抗ヒーター要素(複数可)とエアロゾル形成基体との間に大きい熱伝達構造物を組み込むことによってヒーター構造物の質量を増加することは、それ独自の問題をもたらす。ヒーター構造物の質量が過度に大きい場合、ヒーターは必要とされる動作温度まで加熱するのに過度に長い時間がかかることになる。
【0007】
そのため、PWM制御パラメータと抵抗ヒーターの構造との間の正しいバランスを見いだすことは非常に困難でありうる。PWM制御を使用することは、ヒーター構造物にとっての設計の自由度を効果的に制限する。
【0008】
対照的に、目標温度プロファイルに従って抵抗ヒーターに印加される電圧を制御するためにDC/DCコンバータを使用することは、ヒーター設計においてはるかにより高い柔軟性を可能にし、特に低ヒーター質量を可能にする。
【0009】
抵抗ヒーターが低温の時に低い電気抵抗を有する抵抗ヒーターで使用される時のPWM制御には別の問題がある。PWMは、オン期間中に全電池電圧が送られることを意味する。低い温度で、装置が最初にオンに切り替えられた時、ヒーター抵抗が低くまたそのため電流が大きく、電池はこれを送ることができない場合があり、特に電池が低温である時にも送ることができない。これは、装置の完全な故障につながる可能性がある。
【0010】
DC/DCコンバータの使用は、ヒーター全体の電圧の制御を可能にし、そのため電池から引き出される最大電流に対する制御を可能にする。
【0011】
本明細書で使用される「DC/DCコンバータ」という用語は、直流(DC)の供給源を一つの電圧レベルから別の電圧レベルに変換する電子回路または電気機械式装置を意味する。DC/DCコンバータは、例えばバックコンバータ、ブーストコンバータ、またはバックブーストコンバータであってもよい。DC/DCコンバータは、二つ以上の電力コンバータ段階を含んでもよい。有利なことに、DC/DCコンバータはプログラム可能なDC/DCコンバータである。
【0012】
制御ユニットは、マイクロコントローラーとDC/DCコンバータとの間に接続されたデジタル電位差計をさらに備えてもよい。デジタル電位差計は、DC/DCコンバータからの出力電圧を設定するために使用されてもよい。デジタル電位差計はプログラム可能であってもよい。
【0013】
制御ユニットは、所定の温度プロファイルまたは電気抵抗プロファイルを保存する不揮発性メモリーをさらに備えてもよい。所定の温度または電圧プロファイルは、ルックアップテーブル内に保存されてもよい。メモリーは、ヒーターまたはDC/DCコンバータのパラメータに相互に関連するさらなるルックアップテーブルまたはルーチンを保存してもよい。
【0014】
有利なことに、マイクロコントローラーは、抵抗ヒーターの測定されたまたは算出された抵抗または温度に基づいて、前記DC/DCコンバータを制御するように構成されている。一実施形態において、電気抵抗ヒーターは、その温度に依存する電気抵抗を有する。その場合、マイクロコントローラーは、電気抵抗ヒーターの算出された電気抵抗に基づいて、前記DC/DCコンバータを制御するように構成されてもよい。制御ユニットは、電気抵抗ヒーターの電気抵抗を電圧測定値および電流測定値から算出するように構成されてもよい。
【0015】
別の実施形態において、制御ユニットは、マイクロコントローラーに接続された、かつ電気抵抗ヒーターの近傍に位置付けられた温度センサーを備えてもよい。その場合、マイクロコントローラーは、温度センサーからの信号に基づいて、前記DC/DCコンバータを制御するように構成されてもよい。
【0016】
マイクロコントローラーは、閉ループ制御スキームを動作するように構成されてもよい。閉ループ制御スキームは、マイクロコントローラーのファームウェア内のルーチンとして実施されてもよい。閉ループ制御スキームは、連続的に加熱されるエアロゾル発生システムで必要とされるように、例えば数分間の比較的長い期間にわたってヒーター温度を制御するために適切である場合がある。閉ループ制御スキームは、電気抵抗ヒーターの温度を目標温度に向かって調整するために、DC/DCコンバータを制御するように配置されてもよい。目標温度は、保存された目標温度プロファイルに従って時間とともに変化してもよい。目標温度プロファイルは、電気抵抗ヒーターの抵抗の温度係数に基づいて、目標抵抗プロファイルに変換されてもよい。制御ユニットは、不揮発性メモリー内に目標抵抗プロファイルを保存してもよく、または不揮発性メモリー内に保存された目標温度プロファイルから目標抵抗プロファイルを生成してもよい。
【0017】
マイクロコントローラーは、閉ループ制御スキーム内の目標温度に向かって電気抵抗ヒーターの温度を調整するために、比例積分微分(PID)コントローラーとして動作するように構成されてもよい。別の方法として、マイクロコントローラーは、予測ロジックを使用して、閉ループ制御スキーム内の目標温度に向かって電気抵抗ヒーターの温度を調整するように構成されてもよい。
【0018】
別の方法として、マイクロコントローラーは、開ループ制御スキームを動作するように構成されてもよい。その場合、制御ユニットは、制御値入力のための目標プロファイルをDC/DCコンバータに保存してもよい。制御値は、DC/DCコンバータからのVヒーター出力のレベルを決定してもよい。マイクロコントローラーは、制御値のための目標プロファイルに従って、前記DC/DCコンバータに制御値を提供するように構成されてもよい。開ループ制御スキームは、ユーザーの吸煙中にのみ電力がヒーターに供給される吸煙作動式エアロゾル発生システムにおいて、比較的短い期間(数秒間など)にわたり電気抵抗ヒーターを制御するために適切である場合がある。
【0019】
マイクロコントローラーは、抵抗ヒーターおよびDC/DCコンバータと直列に接続されたスイッチの動作を制御することによって、DC/DCコンバータから抵抗ヒーターに供給される平均電流を調整するように追加的に構成されてもよい。マイクロコントローラーは、スイッチのパルス幅変調制御を使用するように構成されてもよい。そのため、マイクロコントローラーは、DC/DCコンバータを使用する制御に加えて、PWM制御スキームを動作するように構成されてもよい。原理的な温度制御は、DC/DCコンバータを使用して実施されてもよく、またこれはより迅速な応答を提供するため、温度を微調整するためにPWM制御スキームを使用してもよい。
【0020】
マイクロコントローラーは、抵抗ヒーターを通る電流を監視するように、かつ抵抗ヒーターを通る電流が最大電流閾値を超えないことを確実にするために、DC/DCコンバータを制御するように構成されてもよい。これは、装置の故障を引き起こす可能性がある電池の過負荷を防止する。
【0021】
マイクロコントローラーは、電池電圧が最小電池電圧以上に維持されることを確実にするために、DC/DCコンバータを制御してもよい。最小電池電圧は、マイクロコントローラーなどの装置内の特定の構成要素(複数可)の動作のために必要とされる最小電圧であってもよい。これは、構成要素、特にマイクロコントローラーが常に動作可能であることを確実にする。
【0022】
別の方法として、または加えて、装置はマイクロコントローラー用の第二の電圧供給源を備えてもよい。第二の電圧供給源は、第二の電池であってもよく、または電池とマイクロコントローラーとの間に接続された第二のDC/DCコンバータもしくはリニアドロップアウトレギュレータ(LDO)などの電圧調整器であってもよい。これは、マイクロコントローラーおよびその他の電子構成要素が必要とされる最小電圧を受けることを確実にするために使用されうる。
【0023】
マイクロコントローラーは、任意の適切なマイクロコントローラーであってもよいが、プログラム可能であることが好ましい。
【0024】
本発明の第二の態様において、吸入可能なエアロゾルを生成するためのエアロゾル発生装置が提供されていて、この装置は、
エアロゾル形成基体を加熱するための抵抗ヒーターと、
電池が電池電圧を発生するように構成されている、電池と、
本発明の第一の態様による制御ユニットと、を備える。
【0025】
エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体を受容するように構成されてもよい。
【0026】
抵抗ヒーターは、電気抵抗性の材料を含みうる。適切な電気抵抗性の材料には例えば、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料製・金属材料製の複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル白金、金、銀が挙げられる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル含有、コバルト含有、クロム含有、アルミニウム含有、チタン含有、ジルコニウム含有、ハフニウム含有、ニオビウム含有、モリブデン含有、タンタル含有、タングステン含有、スズ含有、ガリウム含有、マンガン含有、金含有、および鉄含有合金、ならびにニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、ならびに鉄-マンガン-アルミニウム系合金が挙げられる。複合材料において、電気抵抗性材料は、必要とされるエネルギー伝達の動態学および外部の物理化学的特性に応じて随意に、断熱材料内に包埋、断熱材料内に封入、もしくは断熱材料で被覆されてもよく、またはその逆も可である。
【0027】
エアロゾル発生装置は、内部抵抗ヒーターまたは外部抵抗ヒーター、または内部抵抗ヒーターと外部抵抗ヒーターの両方を含みうるが、ここで「内部」および「外部」は、エアロゾル形成基体についてである。内部抵抗ヒーターは、任意の適切な形態を取りうる。例えば、内部抵抗ヒーターは、加熱ブレードの形態を取ってもよい。別の方法として、内部抵抗ヒーターは、異なる導電性部分または電気抵抗性の金属チューブを有するケーシングまたは基体の形態を取りうる。別の方法として、内部抵抗ヒーターは、エアロゾル形成基体の中心を貫通する一つ以上の加熱用の針またはロッドとしうる。その他の代替としては、加熱ワイヤーまたはフィラメント、例えばNi-Cr(ニッケルクロム)、白金、タングステン、または合金ワイヤーもしくは加熱プレートが挙げられる。随意に、内部抵抗ヒーターは、固い担体材料内またはその上に配置されてもよい。こうした一つの実施形態において、電気抵抗ヒーターは、温度と比抵抗の間で明確な関係を有する金属を使用して形成しうる。こうした例示的な装置において、金属は、セラミック材料などの適切な断熱材料上にトラックとして形成された後、ガラスなどの別の断熱材料内に挟まれることができる。このように形成されたヒーターは、動作中の発熱体の加熱と、その温度の監視の両方に使用しうる。
【0028】
外部抵抗ヒーターは任意の適切な形態を取ってもよい。例えば、外部抵抗ヒーターは、ポリイミドなどの誘電性基体上の一つ以上の可撓性の加熱箔の形態を取ってもよい。可撓性の加熱箔は、基体を受容するくぼみの周辺部に適合する形状にすることができる。別の方法として、外部発熱体は、金属のグリッド(複数可)、可撓性プリント基板、成形回路部品(MID)、セラミックヒーター、可撓性炭素繊維ヒーターの形態を取ってもよく、または適切な形状の基体上にプラズマ蒸着などの被覆技法を使用して形成されてもよい。ヒーターを形成するために、蒸発、化学的エッチング、レーザーエッチング、スクリーン印刷、グラビア印刷、およびインクジェット印刷などのその他の技法も使用されてもよい。外部抵抗ヒーターはまた、温度と比抵抗の間に明確な関係を有する金属を使用して形成されてもよい。こうした例示的な装置において、金属は適切な断熱材料の二層の間のトラックとして形成されうる。この方法で形成された外部抵抗ヒーターは、動作中の外部発熱体の加熱と、その温度の監視との両方に使用されうる。
【0029】
抵抗ヒーターは有利なことに、伝導によってエアロゾル形成基体を加熱する。抵抗ヒーターは基体と、または基体が堆積されている担体と、少なくとも部分的に接触してもよい。別の方法として、内部ヒーターまたは外部ヒーターのいずれかからの熱は、熱伝導性要素によって基体に伝導しうる。
【0030】
抵抗ヒーターは0.1g~0.5gの質量を有してもよく、また0.15g~0.25gの質量を有することがより好ましい。電池は再充電可能電池としうる。電池は、リチウムイオン電池、例えばリチウムコバルト電池、リン酸鉄リチウム電池、チタン酸リチウム電池、またはリチウムポリマー電池であってもよい。別の方法として、電池はニッケル水素電池またはニッケルカドミウム電池など、別の形態の再充電可能電池でもよい。
【0031】
マイクロコントローラーは、5秒を超える期間にわたり、DC/DCコンバータから抵抗ヒーターに電流を連続的に供給するように構成されてもよい。マイクロコントローラーは、装置の起動後に時間とともに変化する目標温度プロファイルに基づいて、DC/DCコンバータを制御するように構成されてもよい。
【0032】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置に関する。エアロゾル形成基体はエアロゾル発生物品の一部であってもよい。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体と相互作用してユーザーの口を通してユーザーの肺に直接吸入可能なエアロゾルを発生する装置であってもよい。エアロゾル形成基体は装置内に完全にまたは部分的に収容されてもよい。
【0033】
エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は液体であってもよく、または固体構成要素と液体構成要素の両方を備えてもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含むたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0034】
エアロゾル形成基体が固体エアロゾル形成基体である場合、固体エアロゾル形成基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎の断片、再構成たばこ、均質化したたばこ、押し出し成形たばこ、キャストリーフたばこ、および膨化たばこのうちの一つ以上を含む、例えば粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片、またはシートのうちの一つ以上を含んでもよい。固体エアロゾル形成基体は、容器に入っていない形態にしてもよく、または適切な容器またはカートリッジで提供されてもよい。随意に、固体エアロゾル形成基体は、基体の加熱に伴い放出される追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含有してもよい。固体エアロゾル形成基体はまた、例えば追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含むカプセルも含有してもよく、こうしたカプセルは固体エアロゾル形成基体の加熱中に溶けてもよい。
【0035】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもよく、またはその中に包埋されてもよい。担体は、粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片またはシートの形態を取ってもよい。別の方法として、担体は、その内表面上、もしくはその外表面上、またはその内表面および外表面の両方の上に堆積された固体基体の薄い層を有する、管状の担体であってもよい。こうした管状の担体は、例えば紙、または紙様の材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の粗いメッシュ金属スクリーン、もしくは穿孔された金属箔、またはその他の任意の熱的に安定した高分子マトリクスで形成されてもよい。
【0036】
固体エアロゾル形成基体は、例えばシート、発泡体、ゲル、またはスラリーの形態で担体の表面上に堆積されてもよい。固体エアロゾル形成基体は担体の表面全体の上に堆積されてもよく、または別の方法として、使用中に不均一な風味送達を提供するためのパターンで堆積されてもよい。
【0037】
上記では、固体エアロゾル形成基体を参照したが、その他の形態のエアロゾル形成基体をその他の実施形態で使用しうることが当業者に明らかであろう。例えば、エアロゾル形成基体は液体エアロゾル形成基体としうる。液体エアロゾル形成基体が提供される場合、エアロゾル発生装置は、液体を保持する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基体は容器内に保持されうる。別の方法として、または追加的に、液体エアロゾル形成基体は多孔性担体材料に吸収されうる。多孔性担体材料は、任意の適切な吸収性のプラグまたは本体、例えば発泡性の金属またはプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維またはセラミックで作成しうる。液体エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置を使用する前に、多孔性担体材料内に保持されてもよく、または別の方法として、液体エアロゾル形成基体材料は、使用中にまたは使用の直前に多孔性担体材料の中へと放出されてもよい。例えば、液体エアロゾル形成基体はカプセル内に提供されてもよい。カプセルのシェルは、加熱に伴い溶融し、液体エアロゾル形成基体を多孔性担体材料の中へと放出することが好ましい。カプセルは随意に、液体と組み合わせた固体を含有してもよい。別の方法として、担体は、たばこ成分が組み込まれた不織布繊維または繊維の束としうる。不織布繊維または繊維の束は、例えば炭素繊維、天然セルロース繊維、またはセルロース誘導体繊維を含みうる。
【0038】
動作中、エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置内に完全に収容されうる。その場合、ユーザーはエアロゾル発生装置のマウスピースで吸煙しうる。別の方法として、動作中、エアロゾル形成基体を含有するエアロゾル形成物品は、エアロゾル発生装置内に部分的に収容されうる。その場合、ユーザーは直にエアロゾル形成物品で吸煙しうる。
【0039】
エアロゾル形成物品は実質的に円筒状でありうる。エアロゾル形成物品は実質的に細長くてもよい。エアロゾル形成物品は、長さと、その長さに対して実質的に直角を成す円周とを有してもよい。エアロゾル形成基体は実質的に円筒状であってもよい。エアロゾル形成基体は実質的に細長くてもよい。エアロゾル形成基体はまた、長さと、その長さに対して実質的に直角を成す円周とを有してもよい。
【0040】
エアロゾル形成物品の全長は、およそ30mm~およそ100mmであってもよい。エアロゾル形成物品の外径は、およそ5mm~およそ12mmであってもよい。エアロゾル形成物品はフィルタープラグを備えうる。フィルタープラグはエアロゾル形成物品の下流端に位置しうる。フィルタープラグは、セルロースアセテートフィルタープラグであってもよい。一実施形態において、フィルタープラグの長さは、およそ7mmであるが、およそ5mm~およそ10mmであってもよい。
【0041】
一つの実施形態において、エアロゾル形成物品の全長はおよそ45mmである。エアロゾル形成物品の外径は、およそ7.2mmとしうる。さらに、エアロゾル形成基体の長さは、およそ10mmであってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は、およそ12mmの長さを有しうる。さらに、エアロゾル形成基体の直径は、およそ5mm~およそ12mmであってもよい。エアロゾル形成物品は外側紙ラッパーを備えうる。さらに、エアロゾル形成物品は、エアロゾル形成基体とフィルタープラグの間の分離部を備えてもよい。分離部は、およそ18mmであってもよいが、およそ5mm~およそ25mmの範囲であってもよい。
【0042】
装置は、片手の指の間に保持するのが快適な携帯型または手持ち式の装置であることが好ましい。装置は実質的に円筒状で、70~200mmの長さを有しうる。装置の最大直径は10~30mmであることが好ましい。一実施形態において、装置は多角形の断面を有し、一方の面上に形成された突出したボタンを有する。この実施形態において、装置の直径は、一方の平坦な面から反対側の平坦な面までで12.7~13.65mmであり、一方の縁から反対側の縁まで(すなわち、装置の一方の側上の二つの面の交差するところから他方の側の対応する交差するところまで)で13.4~14.2mmであり、ボタンの上部から反対側の底部の平坦な面までで14.2~15mmである。
【0043】
本発明の第三の態様において、エアロゾル発生装置を制御する方法が提供されていて、エアロゾル発生装置は、抵抗ヒーターと、電池であって、電池電圧を発生するように構成されている電池と、制御ユニットであって、電池電圧を入力として電池から受け取るように、および抵抗ヒーターに出力電圧を出力するように配置されたDC/DCコンバータを備える制御ユニットと、を備え、
抵抗ヒーターのための所定の温度プロファイルに基づいて出力電圧を調整するために、前記DC/DCコンバータを制御することを含む。
【0044】
有利なことに、方法は、抵抗ヒーターの測定されたまたは算出された抵抗または温度に基づいて、前記DC/DCコンバータを制御することを含んでもよい。一実施形態において、電気抵抗ヒーターは、その温度に依存する電気抵抗を有する。その場合、方法は、電気抵抗ヒーターの算出された電気抵抗に基づいて、前記DC/DCコンバータを制御することを含んでもよい。方法は、電気抵抗ヒーターの電気抵抗を電圧測定値および電流測定値から算出することをさらに含んでもよい。
【0045】
方法は、閉ループ制御スキームを動作することを含んでもよい。閉ループ制御スキームは、マイクロコントローラーのファームウェア内のルーチンとして実施されてもよい。閉ループ制御スキームは、連続的に加熱されるエアロゾル発生システムで必要とされるように、数分間の比較的長い期間にわたってヒーター温度を制御するために適切である場合がある。閉ループ制御スキームは、電気抵抗ヒーターの温度を目標温度に向かって調整するために、DC/DCコンバータを制御するように配置されてもよい。目標温度は、保存された目標温度プロファイルに従って時間とともに変化してもよい。目標温度プロファイルは、電気抵抗ヒーターの抵抗の温度係数に基づいて、目標抵抗プロファイルに変換されてもよい。
【0046】
方法は、閉ループ制御スキーム内の目標温度に向かって電気抵抗ヒーターの温度を調整するために、比例積分微分(PID)コントローラーを動作することを含んでもよい。別の方法として、方法は、閉ループ制御スキーム内の目標温度に向かって電気抵抗ヒーターの温度を調整するために、予測ロジックを使用することを含んでもよい。
【0047】
別の方法として、方法は開ループ制御スキームを動作することを含んでもよい。開ループ制御スキームは、ユーザーの吸煙中にのみ電力がヒーターに供給される吸煙作動式エアロゾル発生システムにおいてなど、比較的短い期間にわたり電気抵抗ヒーターを制御するために適切である場合がある。
【0048】
方法は追加的に、抵抗ヒーターおよびDC/DCコンバータと直列に接続されたスイッチの動作を制御することによって、DC/DCコンバータから抵抗ヒーターに供給される平均電流を調整することを含んでもよい。方法は、抵抗ヒーターに供給される電流のパルス幅変調を提供するために、スイッチを操作することを含んでもよい。この技法は、DC/DCコンバータによって提供される電圧制御の微調整を提供するために使用されてもよい。
【0049】
方法は、抵抗ヒーターを通る電流を監視することと、抵抗ヒーターを通る電流が最大電流閾値を超えないことを確実にするために、DC/DCコンバータを制御することと、を含んでもよい。これは、装置の故障を引き起こす可能性がある電池の過負荷を防止する。
【0050】
方法は、電池電圧を最小電池電圧以上に維持されることを確実にするために、DC/DCコンバータを制御することを含んでもよい。最小電池電圧は、マイクロコントローラーなどの装置内の特定の構成要素(複数可)の動作のために必要とされる最小電圧であってもよい。別の方法として、または加えて、方法は、マイクロコントローラーのための第二の電圧供給を動作することを含んでもよい。第二の電圧供給源は、第二の電池であってもよく、または電池とマイクロコントローラーとの間に接続された第二のDC/DCコンバータもしくは低ドロップアウトレギュレータ(LDO)などの電圧調整器であってもよい。
【0051】
本発明の第四の態様において、電気的に作動するエアロゾル発生装置の制御ユニット内のプログラム可能電気回路上で動作する時、エアロゾル発生装置が、抵抗ヒーターと、電池であって、電池電圧を発生するように構成されている電池と、制御ユニットであって、電池電圧を入力として電池から受け取るように、および抵抗ヒーターに出力電圧を出力するように配置されたDC/DCコンバータを備える制御ユニットと、を備え、プログラム可能電気回路に本発明の第三の態様による方法を実施させる、コンピュータプログラムが提供されている。
【0052】
異なる態様を参照することによって本開示を説明してきたが、本開示の一つの態様に関連して説明した特徴を、本開示の他の態様に適用できることは明確であるはずである。特に、本発明の第一の態様に関して説明した態様は、本発明の第二の態様および第三の態様に適用されてもよい。
【0053】
ここで本発明の実施例を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、本発明の一実施形態による装置の概略図である。
図2図2は、ヒーターの温度の制御に関与する装置の構成要素を図示する概略的な線図である。
図3図3は、抵抗ヒーターのための温度プロファイル、ならびに対応する抵抗および発生した電圧プロファイルの実施例を図示する。
図4図4は、ヒーター電圧のためのPIDに基づく制御ループを図示する。
図5図5は、ヒーター電圧のための予測ロジックを使用する制御ループを図示する。
図6図6は、ユーザーによる吸入中のみヒーターを起動する装置にとって適切な、抵抗ヒーターおよび対応する電圧プロファイルのための温度プロファイルの別の実施例を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1では、電気加熱式のエアロゾル発生装置1の実施形態の構成要素を簡略化された様式で示す。電気加熱式のエアロゾル発生装置1の要素は、図1で実寸に比例して描かれていない。本実施形態の理解に関連性のない要素は、図1を簡略化するために、省略されている。
【0056】
電気加熱式のエアロゾル発生装置1は、ハウジング10とエアロゾル形成基体12(例えば紙巻たばこなどのエアロゾル形成物品)とを備える。エアロゾル形成基体12は、ハウジング10内に押し込まれ、ヒーター4と熱的に近接するようになる。この実施例では、ヒーターはエアロゾル形成基体の中へと延びるブレードである。エアロゾル形成基体12は、異なる温度で様々な揮発性化合物を放出する。ヒーターの動作温度を一部の揮発性化合物の放出温度より低く制御することによって、これらの煙成分の放出または形成を回避することができる。典型的にエアロゾル形成基体は、摂氏170~450度の温度に加熱される。一実施形態において、エアロゾル形成基体は摂氏170~250度の温度まで加熱され、また摂氏約180度~240度まで加熱されることが好ましい。別の実施形態において、エアロゾル形成基体は摂氏240~450度の温度まで加熱され、また摂氏約250度~350度まで加熱されることが好ましい。ハウジング10内には、電池2、例えば再充電可能なリチウムイオン電池がある。制御ユニット3は、発熱体4、電池2、およびユーザーインターフェース6(例えばボタンまたはディスプレイ)に接続されている。このタイプのシステムは、例えば欧州特許第2800486号に記載されている。
【0057】
制御ユニット3は、その温度を調節するために発熱体4に供給される電力を制御する。装置の単回使用の間、温度を変化させることが望ましい場合がある。一実施例において、第一の吸煙が可能になるまでの時間を最小限にするために、装置の起動直後の温度を迅速に高めることが望ましく、その後次の数回の吸煙のために基体が一定温度に維持されるように、ヒーターの温度を低下させることが望ましい。その後、十分なエアロゾルが依然としてユーザーに送達されることを確実にするために、エアロゾル形成基体を枯渇した際にヒーターの温度を上げることが望ましい場合がある。このタイプの加熱プロファイルは、国際特許公開公報第2014/102091号に詳細に記載されている。
【0058】
図2は、ヒーターの温度の制御に関与する装置の構成要素を図示する。特に、図2は電池2、制御ユニット3、およびヒーター4の配置を示す。制御ユニットは、マイクロコントローラー30およびデジタル制御DC/DCコンバータ32を備える。デジタル制御DC/DCコンバータ32は、電池2とヒーター4の間に接続されていて、マイクロコントローラー30によって制御されている。DC/DCコンバータは、その入力で電池出力電圧(V電池)を受け取り、出力電圧(Vヒーター)を出力する。この実施例において、DC/DCコンバータはバックコンバータまたはステップダウンコンバータであり、これによってVヒーターはV電池以下となる。しかし、本発明は、例えばブーストコンバータもしくはバックブーストコンバータ、または電力コンバータ段階の組み合わせを使用して実施されてもよい。
【0059】
ヒーター4は、基体上に複数の電気抵抗性のあるトラックを備える。ヒータートラックは白金で形成されてもよく、また基体はジルコニアなどのセラミック材料であってもよい。基体は、エアロゾル形成基体を簡単に貫通して、かつエアロゾル形成基体から取り外されることを可能にするブレードとして形作られる。
【0060】
マイクロコントローラーは、ヒーターが望ましい温度プロファイルを追う目的でデジタル制御DC/DCコンバータを制御する。この実施形態において、閉ループ制御スキームは、ヒーター抵抗に基づいて使用される。白金ヒーターのトラックの電気抵抗は、白金の抵抗の温度係数によるヒーターの温度に直接的に関連する。マイクロコントローラーは、Vヒーターの測定値およびヒーターを通る電流の測定値を受信する。電流測定ブロック34は、ヒーターと接地の間に接続されて示されていて、出力はマイクロコントローラー30に接続されている。電流測定ブロック34は、ヒーター4と直列の(非常に低抵抗の)分路抵抗器を備えてもよい。分路抵抗器を通る電流(これは、ヒーターを流れる電流でもある)は、分路抵抗器に並列に接続された増幅器を使用して測定することができる。次いで、ヒーターの抵抗は、オームの法則を使用して算出される。
【0061】
図3を参照すると、マイクロコントローラーは、ルックアップテーブル41として保存された、望ましい温度プロファイル(グラフ40に図示)を保存する。グラフ40は、装置の起動に続く目標ヒーター温度対時間を図示する。この実施例において、温度プロファイルは五つの別個の段階を含む。第一の段階において、ヒーターは周囲温度T0から初期目標温度T1に昇温される。この第一の段階は30秒間の継続時間を有する。第二の段階において、一分間の継続時間を有し、ヒーターの温度はT1に維持される。第三の段階において、温度は低下し、第二の目標温度T2に維持される。第三の段階は、二分間の継続時間を有する。第四の段階において、20秒間の継続時間を有し、温度は第三の目標温度T3に徐々に昇温される。さらに2分間の最終段階において、ヒーターは温度T3に維持される。最終段階に続いて、ヒーターへの電力はオフに切り替えられる。
【0062】
この温度プロファイルに基づいて閉ループ制御スキームを実行するために、マイクロコントローラーは、ヒーターの温度と電気抵抗の間の関係に基づいて、目標温度プロファイルを、対応する目標電気抵抗プロファイルに変換する。抵抗プロファイルは、グラフ42として、およびルックアップテーブル43として図示されている。ルックアップテーブル44は、温度プロファイルを電気抵抗プロファイルに変換するためにマイクロプロセッサ内に保存されてもよい。
【0063】
望ましい温度プロファイルを温度値の形態で保存することが常に必要なわけではない。その代わりに望ましい電気抵抗プロファイルを保存することが、一部の実施形態において有益である場合がある。これは温度プロファイルであり、装置に保存される前に、抵抗プロファイルに単純に変換される。ヒーターが交換可能でない場合、抵抗プロファイルを保存することが、データ記憶要件および装置上での処理工程を減少させるので、好ましい場合がある。しかしながら、特にヒーターが交換可能である場合、装置上に温度プロファイルを保存し、その後装置上でその温度プロファイルを抵抗プロファイルに変換することは、その温度が最終的に制御されなければならない温度であるため、有益である場合がある。ヒーターが交換された時、新しいヒーターは、以前のヒーターとは異なる抵抗の温度係数を有してもよい。
【0064】
次いで、ヒーター抵抗を目標抵抗に向かわせるために、閉ループ制御スキームが使用される。結果として得られる電圧出力のVヒーターは、グラフ46に図示されている。
【0065】
図4は、マイクロプロセッサによって実施されてもよい閉ループ制御スキームの第一の実施例を図示する。第一の工程50において、ヒーターを通る電流の測定およびVヒーターの測定が受信される。第二の工程52において、ヒーターの電気抵抗を算出するために測定値が使用される。算出されたヒーター抵抗は工程53で目標抵抗と比較され、差異は工程54で比例積分微分(PID)コントローラーに出力される。PIDコントローラーの出力は、Vヒーターがヒーターの電気抵抗を目標抵抗に向かわせるために必要な値である。PIDコントローラーを使用することは、閉ループ制御のための周知の技法である。PIDコントローラーは、ヒーター温度または抵抗とは無関係の固定パラメータを有する。PIDコントローラーの出力がDC/DCコンバータを制御するために使用される前に、ヒーターを通じた、またはDC/DCコンバータからの必要な出力を通じた電流もしくは電圧が所定の最大限度より大きいかどうかが最初にチェックされる。ヒーターを通る電流が、電池が送ることのできる最大電流より大きい場合、工程55においてVヒーターに必要な値は、最大許容電流と、算出されたヒーター抵抗との積として設定される。PIDコントローラーによって算出されたVヒーターの値がDC/DCコンバータによって提供することができる値より大きい場合、VヒーターはDC/DCコンバータの最大出力電圧に設定される。
【0066】
デジタル制御DC/DCコンバータは、プログラム可能なDC/DCコンバータおよびデジタル電位差計を備える。マイクロコントローラーはデジタル電位差計に接続されていて、このデジタル電位差計はプログラム可能なDC/DCコンバータの出力電圧を設定するデジタル電位差計である。DC/DCコンバータのDC/DCフィードバックピンは、デジタル電位差計に接続されていて、DC/DCコンバータからのVヒーター出力のレベルを決定するのは、このフィードバックピン上の値である。図3を再度参照すると、グラフ46に示す電圧プロファイルは、ルックアップテーブル48を使用してDC/DCフィードバックピンに適用される値に変換される。ルックアップテーブル48は、例えば0.05Vの工程においてVヒーターをDC/DCフィードバックピンに適用される値に関連させてもよい。デジタル電位差計の値を変更することによって、DC/DCはVヒーターの値を望ましいレベルに自動的に調整する。この配置では、Vヒーターの値を10ミリ秒未満で調整することが可能である。デジタル電位差計は、この実施例において、シリアル・ペリフェラル・インタフェース(SPI)を通してマイクロコントローラーによって制御されるが、例えばI2Cまたはパラレルバスによって制御することもできる。
【0067】
図5は、マイクロプロセッサによって実施されてもよい閉ループ制御スキームの代替的な実施例を図示する。第一の工程60において、ヒーターを通る電流の測定値およびVヒーターの測定値が受信され、次いで第二の工程62において、これらはヒーターの電気抵抗を算出するために使用される。算出されたヒーター抵抗は工程63で目標抵抗と比較され、差異は工程64で予測ロジックコントローラーに出力される。予測ロジックコントローラーは、温度Vヒーター、時間電流、および目標抵抗と、算出された抵抗との間の誤差などの複数のパラメータに基づくモデルまたは理想的なヒーター挙動に基づくことができる。図4の制御ループでの場合と同様に、予測ロジックコントローラーの出力が、DC/DCコンバータを制御するために使用される前に、ヒーターを通じた、またはDC/DCコンバータからの必要な出力を通じた電流もしくは電圧が所定の最大限度より大きいかどうかが最初にチェックされる。ヒーターを通る電流が、電池が送ることのできる最大電流より大きい場合、工程65においてVヒーターに必要な値は、最大許容電流と、算出されたヒーター抵抗との積として設定される。予測ロジックコントローラーによって算出されたVヒーターの値がDC/DCコンバータによって提供することができる値より大きい場合、VヒーターはDC/DCコンバータの最大出力電圧に設定される。
【0068】
DC/DCコンバータの制御は、電流が最大許容電流を超えると電池が過負荷になり、また装置に故障を生じさせる場合がある最大許容電流を超えないことを確実にするように作成できることが分かる。制御ユニットはまた、マイクロコントローラーが常に電池から十分な電圧を受け取ることを確実にできる。マイクロコントローラーは典型的に、動作するための最小電圧(2.5ボルトなど)を必要とする。
【0069】
ユーザーが最初の吸煙の前に長い時間待つ必要がないように、ヒーターを第一の目標温度に迅速に昇温させることが望ましい。ヒーターに印加される電力が高いほど、その温度は、より迅速に上昇する。装置が最初に起動される時、ヒーターは典型的に、周囲温度である。正の温度係数を有するヒーターについては、これは動作中のその抵抗と比較して比較的低い電気抵抗を有することを意味する。低い温度では、電池はまた、その出力電圧が低減するために、またその内部抵抗が増加し、これが出力電流を低減するため、より低い電力出力を有する。この要因の組み合わせは、低い温度では、最大電力が電池から抽出された場合、電池電圧がマイクロコントローラーの最小動作電圧より低いレベルまで低減する場合があることを意味する。
【0070】
図2に図示する通り、装置は、電池からマイクロコントローラーに供給される電圧を調節するために電圧調整器36を含む。この実施例において電圧調整器は、リニアドロップアウトレギュレータ(LDO)であるが、例えば第二のDC/DCコンバータであってもよい。この実施例におけるLDOは、マイクロコントローラーに常時安定して2.5Vを送るように構成されている。しかしながら、電池電圧が2.5V未満に下がった場合、LDOは適正に機能しない。
【0071】
この問題は、温度プロファイルの第一の段階中にDC/DCコンバータを制御することによって回避することができる。マイクロコントローラーは、電池電圧を連続的に監視するように、かつ基準電圧(典型的には2.5V)と比較するように構成されてもよい。電池電圧が基準電圧より高い場合、制御信号は、DC/DC出力電圧を増加するようにデジタル電位差計の値を変化させる。電池電圧が基準電圧より低い場合、制御信号は、DC/DC出力電圧を減少するようにデジタル電位差計の値を変化させる。これは、電池電圧が最小電圧の2.5V未満に決してならないことを確実にする一方で、DC/DC出力電圧が常に、可能な限りの最大値である制御されたループシステムに対応する。この方法は、所与の電池温度では、ヒーターの最も迅速な昇温を提供する。
【0072】
一部の実施形態において、DC/DCコンバータ用の開ループ制御スキームが好ましい場合がある。例えば、図1のエアロゾル発生装置は、ユーザーによる吸入に応答してのみ電力をヒーターに供給することによって機能する場合がある。ユーザーによる吸入と吸入の間では、電量はヒーターに提供されない。その場合、ヒーターのための温度プロファイルは、はるかにより短く、たった約2秒または3秒である。複雑な温度プロファイルは必要ない。ヒーターは、可能な限り迅速に気化温度に達する必要があり、気化温度を2秒間または3秒間維持し、その後オフに切り替えられる。このタイプの温度プロファイルをグラフ70として図6に示す。温度とヒーター抵抗の間の関係は、製造中に知られてもよく、または較正されてもよく、また温度プロファイルまたは抵抗プロファイルを、グラフ72に示す通り、DC/DCフィードバックピンに適用される制御値のためのプロファイルに変換することができる。プロファイルは、マイクロコントローラー内のルックアップテーブルに保存される。マイクロコントローラーは、開ループにおいて直接、デジタル電位差計を通してDC/DCコンバータを制御する。マイクロコントローラーは、基体の消耗などの異常な状態または不良状態を検出するために、Vヒーターおよび電流の測定値を依然として受信および監視する場合がある。
【0073】
開ループ制御スキームまたは閉ループ制御スキームのいずれかにおいてDC/DCコンバータを制御することに加えて、マイクロコントローラーは、パルス幅変調(PWM)を使用してヒーターの温度制御を微調整してもよい。MOSFETなどのスイッチは、ヒーターと直列に接続されてもよく、またヒーターに供給される電流を調節するためにマイクロコントローラーによって制御されてもよい。例えば目標ヒーター抵抗と、算出されたヒーター抵抗との間の誤差が閾値量未満である時、PWMが使用されてもよい。別の方法として、または加えて、例えば温度の上昇が速すぎる時、迅速な応答時間を提供するためにPWMが使用されてもよい。
【0074】
所定の温度または電圧プロファイルに従って制御されるDC/DCコンバータの使用は、数多くの利点を有する。ヒーターの温度プロファイルは、PWM制御を用いるものよりスムーズであり、またヒーターが瞬間的に過熱する可能性は非常に低い。電池からの必要とされる瞬間的な電流は、特に装置を起動した直後、PWM制御を使用する時よりも低く、低温での低電池電圧の問題の可能性を低減する。また、DC/DCコンバータの使用は、ヒーターの設計において、はるかにより大きい柔軟性を可能にする。例えば、ブースティングDC/DCコンバータが使用される場合、より高い抵抗ヒーターを使用することができ、これは寄生抵抗および接触抵抗などのシステム内の他の抵抗の影響を軽減する場合がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6