(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】複数の検知能力を有するマルチピクセル・ガス・マイクロセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G01N27/12 M
G01N27/12 B
(21)【出願番号】P 2022517179
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2020076048
(87)【国際公開番号】W WO2021053116
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-07
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507412704
【氏名又は名称】ユニベルシテ カトリック ドゥ ルーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレウィンス、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フランシス、ローラン
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0106774(US,A1)
【文献】特表2007-535662(JP,A)
【文献】N. Marchand et al.,Ultra-low-power chemiresistive microsensor array in a back-end CMOS process towards selective volatile compounds detection and IoT applications,2017, ISOCS/IEEE International Symposium on Olfaction and Electronic Nose (ISOEN), Montreal, QC, Canada,2017年,pp. 1-3,doi: 10.1109/ISOEN.2017.7968914.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマルチピクセル・ガス・マイクロセンサを製造する方法であって、各マルチピクセル・ガス・マイクロセンサが、第1のセンシング材料を有する1つ又は複数のピクセルと、前記第1の
センシング材料とは異なる第2のセンシング材料を有する1つ又は複数のピクセルとを少なくとも有し、前記方法が、
A)絶縁層(12)を有するウエハ基板(10)を提供し、且つ前記複数のマルチピクセル・
ガス・マイクロセンサを構築するために前記ウエハ基板を処理するステップであって、前記処理が、
A1)前記複数の
マルチピクセル・ガス・マイクロセンサのそれぞれのために、
i)第1のピクセル・グループ(G1)を形成する1つ又は複数の第1の電極対(E1)であって、各第1の電極対が第1及び第2の電極を有する、1つ又は複数の第1の電極対(E1)と、
ii)第2のピクセル・グループ(G2)を形成する1つ又は複数の第2の電極対(E2)であって、各第2の電極対が第3及び第4の電極を有する、1つ又は複数の第2の電極対(E2)と、
iii)前記第1の電極対(E1)の前記第1の電極のそれぞれに接続された第1の電気接続ラインと、前記第1の電極対(E1)のうちの前記第2の電極のそれぞれに接続された第2の電気接続ラインと、
を画定するリソグラフィ・マスクを生成するステップと、
A2)前記複数の
マルチピクセル・ガス・マイクロセンサのそれぞれについて、前記第1の電極対と、前記第2の電極対と、前記第1の電気接続ラインと、前記第2の電気接続ラインとを前記リソグラフィ・マスクに従って形成するために、前記絶縁層に金属化プロセスを適用するステップであって、前記金属化プロセスが1つ又は複数の金属層を前記基板上に堆積させることを含む、ステップと、
A3
)保護マスクを前記基板に堆積させるステップと
を少なくとも含む、ステップと、
B)前記第1のセンシング材料及び前記第2のセンシング材料を選択するステップであって、前記第1のセンシング材料が、電解重合に適した第1のポリマーである、ステップと、
C)前記第1のピクセル・グループ(G1)及び前記第2のピクセル・グループ(G2)のオンウエハ活性化又はオンダイ活性化を実行するステップであって、前記オンウエハ活性化又はオンダイ活性化が、
C1)前記第1のピクセル・グループ(G1)の前記第1の電極対(E1)を覆っている前記保護マスクの一部を局所的に除去するステップと、
C2)前記第1のセンシング材料で前記第1のピクセル・グループ(G1)の前記第1の電極対(E1)のそれぞれを同時にコーティングするために第1の電解重合プロセスを適用するステップであって、前記第1及び第2の電気接続ラインが、前記第1の電解重合プロセス中に、前記第1及び第2の電極に第1の電圧を印加するため又は前記第1及び第2の電極間に第1の電圧差を印加するために電気接続部として使用される、ステップと、
C3)前記第2のピクセル・グループ(G2)の前記第2の電極対(E2)を覆っている前記保護マスクの一部を局所的に除去するステップと、
C4)前記第2のセンシング材料で前記第2のピクセル・グループの前記第2の電極対(E2)をコーティングするステップと
を少なくとも含む、ステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記ウエハ基板が、
i
)半導体材料で作られた、或い
は金属で作られた第1の層(11)と、
ii)前記絶縁層(12)を形成する第2の層であって、前記絶縁層(12)が、酸化プロセス、窒化プロセス、酸化物沈着又は窒化物沈着のいずれかによって形成される、第2の層と
を少なくとも有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウエハ基板が
、絶縁材料で作られた層を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップC1)及びC3)の両方が、ステップC2)及びC4)を実行する前に実行されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記
マルチピクセル・ガス・マイクロセンサのそれぞれに対して、前記第1及び第2の電気接続ラインが共通の接続ラインを形成していること、又は前記第1及び第2の接続ラインが、前記第1及び第2の電極を短絡させるように相互接続され、それにより前記第1の電解重合プロセス中、前記第1の電圧が前記第1及び第2の電極の両方に対して単一の共通電圧であること、及び
前記方法が、前記第1の電解重合プロセス後に前記第1及び第2の電気接続ラインを切断する又は前記共通の接続ラインを切断するさらなるステップを含み、それにより、前記第1の電極対のそれぞれのために前記第1及び第2の電極間に開回路が形成されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2のピクセル・グループの前記活性化がオンウエハで実行され、第1の電解重合プロセスを適用するサブ・ステップC2)が、第1の電解液内に前記ウエハ基板を配置することによって、前記複数のマルチピクセル・
ガス・マイクロセンサの各第1のピクセル・グループに対して同時に実行されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の電解重合プロセス後に、前記第1及び前記第2の電気接続ラインを切断する追加のステップを含み、それにより前記第1の
ピクセル・グループ(G1)の各第1の電極対(E1)が前記第1の
ピクセル・グループ(G1)の他の第1の電極対から分離されるようになる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2のピクセル・グループの前記活性化がオンダイで実行されること、前記方法が、前記第1及び第2のピクセル・グループの前記オンダイ活性化を実行する前に前記ウエハ
基板をダイシングする追加のステップを有すること、ステップA)で提供される前記ウエハ基板が、前記第1のピクセル・グループの各第1の電極対(E1)のために一対のトランジスタ(15)を形成するステップを含む初期フロント・エンド・プロセスから生じること、前記第1の電極対の前記トランジスタが、前記第1の電解重合プロセス中に前記第1の電圧又は前記第1の電圧差を制御することを可能にするスイッチとして使用されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセンシング材料が、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリシラン化合物のうちのいずれかのポリマーであること、又は前記第1のセンシング材料が、分子インプリント・ポリマーであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のセンシング材料が、カーボン・ナノチューブ、グラフェン又はナノコンポジットのうちのいずれかで、又はそれらのいずれかの組み合わせでできていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のセンシング材料が、抵抗性材料又は半導体材料でできていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のセンシング材料が、スプレー・コーティング、ドロップ・コーティング又はインクジェット印刷プロセスを使用することによって前記第2の電極対にコーティングされることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のセンシング材料が、電解重合に適した第2のポリマーであること、リソグラフィ・マスクを提供する前記ステップA1)が、iv)前記第2の電極対(E2)の前記第3の電極のそれぞれに接続された第3の電気接続ラインと、前記第2の電極対(E2)の前記第4の電極のそれぞれに接続された第4の電気接続ラインとをさらに画定すること、
金属化の前記ステップA2)が、前記第3及び第4の電気接続ラインをさらに形成すること、
前記ステップC4)が、前記第2のセンシング材料で前記第2の
ピクセル・グループ(G2)の前記第2の電極対(E2)のそれぞれを同時にコーティングするために第2の電解重合プロセスを適用することを含むこと、
前記第3及び第4の接続ラインが、前記第3及び第4の電極に第2の電圧を印加するため、又は前記第3及び第4の電極間に第2の電圧差を印加するために、前記第2の電解重合プロセス中、電気接続部として使用されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の電極対及び/又は前記第2の電極対が、櫛形電極によって形成されること、又は2つの対向する電気接点によって形成されることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップA3)において、前記保護マスクが窒化物又は酸化物でできていることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の検知能力を有するマルチピクセル・マイクロセンサの製造方法に関する。より具体的には、本発明は、ガス及び/又は揮発性有機化合物を検出するためのマルチピクセル・マイクロセンサにも関する。
【背景技術】
【0002】
インダストリー4.0及びモノのインターネット(IoT:Internet of Things)におけるスマート環境モニタリング・ソリューション、プロセス制御、安全性又はヘルスケア・アプリケーションを求めて、低消費電力及び低コストのセンサ、特に、揮発性化合物のような特定の有毒ガス又は疾患マーカーの有無や濃度を検出するためのセンサが必要とされている。
【0003】
既知の環境センサの実例は、ガスを検出するために金属酸化物表面を利用する固体半導体センサである。しかしながら、これらの金属酸化物ガス・センサは、検出すべき材料とガスとの間の表面反応を活性化するために、典型的には200~500℃を超える高い動作温度を必要とする。したがって、これらのタイプのセンサは、消費電力の観点からはあまり適していない。
【0004】
代替的なセンサは、ポリマー・ベース及びナノコンポジット・ベースのセンサ材料を利用したセンサである。これらの材料は、室温又は60℃未満で反応するため、センサの消費電力を大幅に削減できる。
【0005】
しかしながら、これらのポリマー・ベース及びナノコンポジット・ベースのセンサ材料を利用した現在のセンサは、大量生産プロセスに従って製造されないため、必ずしも費用対効果の高い方法で生産されるとは限らない。さらに、検出すべきガスの種類又は環境パラメータに応じて、選択的なセンサ・アレイを形成するために、さまざまなセンサを製造して組み立てる必要がある。これにより、製造コストがさらに増加する。
【0006】
したがって、特にガス及び揮発性化合物を検出するための複数の検知能力を有するセンサを製造する方法を改善する余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特にガス及び揮発性化合物を検出するための、複数の検知能力を有するマルチピクセル・マイクロセンサを製造する方法を提供することである。さらなる目的は、製造工程数を減らすことにより、費用対効果の高い製造方法を提供することである。より詳細には、当該方法は、特に長寿命又はバッテリレスの自律式アプリケーション用の「スマート・センサ」の統合及びIoT通信プロトコルに対応した低消費電力のマイクロセンサを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、添付の独立請求項に定義される。好ましい実施例は、従属請求項に定義される。
【0009】
本発明の第1の態様(aspect)によれば、複数のマルチピクセル・ガス・マイクロセンサを製造する方法が提供される。各マルチピクセル・ガス・マイクロセンサは、第1のセンシング材料を有する1つ又は複数のピクセルと、第1の材料とは異なる第2のセンシング材料を有する1つ又は複数のピクセルとを少なくとも有する。その方法は、
A)絶縁層を有するウエハ基板を設け、複数のマルチピクセル・マイクロセンサを構築するために前記ウエハ基板を処理することであって、前記処理は、
A1)複数のマイクロセンサのそれぞれのために、
i)第1のピクセル・グループを形成する1つ又は複数の第1の電極対であって、各第1の電極対は第1及び第2の電極を有する、1つ又は複数の第1の電極対と、
ii)第2のピクセル・グループを形成する1つ又は複数の第2の電極対であって、各第2の電極対は第3及び第4の電極を有する、1つ又は複数の第2の電極対と、
iii)第1の電極対のうちの第1の電極のそれぞれに接続された第1の電気接続ラインと、第1の電極対のうちの第2の電極のそれぞれに接続された第2の電気接続ラインと、
を画定するリソグラフィ・マスクを作成するステップと、
A2)第1の電極対と、第2の電極対と、第1の電気接続ラインと、第2の電気接続ラインとを前記リソグラフィ・マスクに従って形成するために、絶縁層に金属化プロセスを適用するステップであって、金属化プロセスが基板上に1つ又は複数の金属層を堆積させることを有する、ステップと、
A3)好ましくは窒化物又は酸化物でできている保護マスクを基板に堆積させるステップと、
を少なくとも有するステップと、
B)第1のセンシング材料及び第2のセンシング材料を選択するステップであって、第1のセンシング材料は電解重合(electropolymerization)に適した第1のポリマーである、ステップと、
C)第1及び第2のピクセル・グループのオンウエハ活性化(on-wafer activation)又はオンダイ活性化(on-die activation)を実行し、前記オンウエハ又はオンダイ活性化は、
C1)第1のピクセル・グループの第1の電極対を覆っている保護マスクの一部を局所的に除去するステップと、
C2)第1のセンシング材料で第1のピクセル・グループ(G1)の第1の電極対のそれぞれを同時にコーティングするために第1の電解重合プロセスを適用するステップであって、第1及び第2の電気接続ラインが、第1の電解重合プロセス中に、第1及び第2の電極に第1の電圧を印加するための、又は、第1及び第2の電極間に第1の電圧差を印加するための電気接続部として使用される、ステップと、
C3)第2のピクセル・グループの第2の電極対を覆っている保護マスクの一部を局所的に除去するステップと、
C4)第2のセンシング材料で第2のピクセル・グループの第2の電極対をコーティングするステップと、
を少なくとも有するステップと、
を有する。
【0010】
有利なことには、電極対のグループを画定するウエハ基板処理後に、別個のステップ、すなわちバック・エンド・ステップとしてピクセルの活性化を実行することにより、センシング材料は、このウエハ基板処理とは無関係に選択できる。したがって、さまざまなセンシング材料は、ウエハ基板処理後に選択することができる。これにより、安価なカスタマイズされたセンサ・アレイを製造することが可能になる。実際、本発明による方法では、ピクセルの「オン・デマンド」の活性化は、所与のアプリケーションに必要とされる特定のセンシング材料で電極対を覆うことによって実行される。
【0011】
有利なことには、ポリマーでピクセルを活性化するための電解重合プロセスを使用することにより、ピクセルを形成するために、電極対上にポリマーを容易に低コストで堆積させるための技術が実施される。実際、同じセンシング材料、すなわち同じピクセル・グループに属するセンシング材料を要するピクセルのそれぞれは、同時にコーティングすることができる。
【0012】
有利なことには、第1の電極対のための電気接続ラインを画定することにより、且つ、電解重合プロセス中に第1の電圧又は第1の電圧差を印加するためにこれらの相互接続ラインを使用することにより、第1の電極対のみが第1の電圧を受け取り、したがって、重合が選択的に行われる。
【0013】
有利なことには、本発明による方法によって、複数の異なるガスを検出するためのコンパクトで安価な単一のチップ検出器が得られる。
【0014】
有利なことには、本発明による方法によって、いくつかのピクセル・グループは、ガスを検知するためにポリマーでコーティングすることができ、一方、他のピクセル・グループは、例えば、オンチップ温度及び/又は湿度を測定するのに適した他の材料でコーティングすることができる。これにより、ドリフト又は経年劣化などの寄生効果について検出された信号を補正することができる。
【0015】
本発明による方法は、A)、B)及びC)などの文字列によって識別されるような、又は、他の記号列によって識別されるようなステップの特定の順序によって限定されるものではない。例えば、実施例において、ステップC1)及びC3)の両方は、ステップC2)及びC4)を実行する前に実行される。他の実施例では、ステップB)は、例えばステップA)の前に実行される。
【0016】
実施例では、第1のセンシング材料及び/又は第2のセンシング材料は、下記のポリマーのいずれか、すなわち、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリシラン化合物のいずれかである。他の実施例では、第1のセンシング材料及び/又は第2のセンシング材料は、分子インプリント・ポリマーである。
【0017】
実施例では、この方法は、第1の電解重合プロセス後に、第1のグループの各第1の電極対が、第1のグループの別の第1の電極対から分離された状態になるように、第1及び第2の電気接続ラインを切断する追加のステップを有する。
【0018】
実施例では、第1及び第2の電気接続ラインは共通の接続ラインを形成するか、又は、第1及び第2の接続ラインは、第1の電解重合プロセス中に、第1の電圧が第1及び第2の電極の両方に対して単一の共通電圧であるように、第1及び第2の電極を短絡させるように相互接続され、その方法は、第1の電解重合プロセス後に、第1の電極対のそれぞれのために第1及び第2の電極間に開回路が形成されるように、第1及び第2の電気接続ラインを切断又は共通の接続ラインを切断するさらなるステップを有する。
【0019】
実施例では、本発明による方法は、第1の電解重合プロセス後に、第1のグループの各第1の電極対が第1のグループの別の第1の電極対から分離された状態になるように、各マイクロセンサのために前記第1及び前記第2の電気接続ラインを切断する追加のステップを有する。
【0020】
実施例では、各マルチピクセル・ガス・マイクロセンサについて、第1のセンシング材料を有するピクセルの数は、2以上である。有利なことには、同じセンシング材料を有する複数のピクセルを有する検出器を用いて、例えば、平均値をとることによって、又は同じセンシング材料を有するさまざまなセンサからデータを蓄積することによって、より信頼性のある検知を行うことができる。一般には、信号対雑音比を改善することができる。
【0021】
本発明による実施例では、第2のセンシング材料は、電解重合に適した第2のポリマーであり、リソグラフィ・マスクを提供するステップA1)は、iv)第2の電極対のうちの第3の電極のそれぞれに接続された第3の電気接続ライン、及び第2の電極対(E2)のうちの第4の電極のそれぞれに接続された第4の電気接続ラインをさらに画定し、金属化のステップA2)は、第3及び第4の電気接続ラインをさらに形成し、ステップC4)は、第2のセンシング材料で第2のグループの第2の電極対のそれぞれを同時にコーティングするために第2の電解重合プロセスを適用することを有し、第3及び第4の接続ラインは、第2の電解重合プロセス中に、第3及び第4の電極に第2の電圧を印加するための、又は、第3及び第4の電極間に第2の電圧差を印加するための電気接続部として使用される。
【0022】
さらなる実施例では、第3及び第4の電気接続ラインもまた、さらなる共通の接続ラインを形成しているか、又は、第3及び第4の接続ラインは、第2の電解重合プロセス中に第2の電圧が第3及び第4の電極の両方に印加されるように、第3及び第4の電極を短絡させるように相互接続され、その方法は、第2の電解重合プロセス後に、第2の電極対のそれぞれのために第3及び第4の電極間に開回路が形成されるように、第3及び第4の電気接続ラインを切断又は共通の接続ラインを切断するさらなるステップを有する。
【0023】
さらなる実施例では、その方法は、第2の電解重合プロセス後に、第2のグループの各第2の電極対が第2のグループの別の第2の電極対から分離された状態になるように、第3及び第4の電気接続ラインを切断する追加のステップを有する。
【0024】
本発明による方法で得ることができるマイクロセンサは、第1及び第2のピクセル・グループに限定されず、実施例では、3つ以上のピクセル・グループが、第1のピクセル・グループ及び/又は第2のピクセル・グループについて定義された方法ステップを追加のピクセル・グループに適用することによって提供される。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、ガス及び揮発性有機化合物を検出するためのマルチピクセル・マイクロセンサは、添付の特許請求の範囲に定義された方法に従って製造される。
【0026】
有利なことには、単一の装置上で、分子インプリント・ポリマー(molecularly imprinted polymer)及び非インプリント・ポリマーのようないくつかのセンシング材料を組み合わせることによって、感度及び選択性の両方が向上し、ガスの識別が可能になる。
【0027】
有利なことには、本発明によるマルチピクセル・マイクロセンサは、室温で作動する。
【0028】
本発明のこれらの態様及びさらなる態様は、実例として、添付の図面を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による方法の一実施例によるフローチャートである。
【
図2】本発明による方法から得られるピクセル・アレイの一実施例を示す、ウエハ基板の上面図及びウエハ基板の一部の拡大図である。
【
図3】ピクセルの活性化前の本発明によるピクセルの一実施例の概略的な断面図である。
【
図4】ピクセルの活性化後の
図2に示すピクセルの実施例の概略的な断面図である。
【
図5】本発明によるマイクロセンサのピクセルのさらなる実施例の概略的な断面図である。
【
図6】本発明によるマイクロセンサのための読み出し装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面は縮尺通りに描かれていない。一般に、図面において、同一の構成要素は、同じ参照番号で示されている。
【0031】
本開示は、特定の実施例に関して説明しているが、実施例は本開示の例示であって、限定的なものとして解釈されるべきではない。本開示が、特に図示及び/又は説明されたものに限定されないこと、及び、代替実施例又は変形実施例を本開示の全体的な教示に照らして発展させることができることは、当業者に理解されよう。記載されている図面は、概略的なものであり、限定的なものではない。
【0032】
動詞「~を有する(to comprise)」及びそれぞれの活用形を使用することによって、記載されているもの以外の要素の存在が排除されるということはない。
【0033】
要素の前にある冠詞「a」、「an」又は「the」を使用することによって、そのような要素が複数存在することが排除されるということはない。
【0034】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」などの用語は、類似の要素同士を区別するために使用しており、必ずしも時間的、空間的、等級的又は他のいかなる様態での順序を説明するために使用するわけではない。このように使用される用語は、適切な状況下で置き換え可能であり、本明細書に記載の開示の実施例は、本明細書に記載又は図示したものとは別の順序で動作可能であると理解すべきである。
【0035】
一般的な製造方法
本発明の第1の態様によれば、複数の検知能力を有するマルチピクセル・ガス・マイクロセンサの大量生産のための方法が提供される。
【0036】
マルチピクセル・マイクロセンサは、複数のピクセルで構成されたセンサ・アレイとして解釈されるべきであり、少なくとも第1のピクセル・グループは、センサ・アレイの第2のピクセル・グループと比較した場合、異なる検知能力を有する。ピクセルは、トランスデューサと呼ばれることもある。ピクセルのために異なるセンシング材料を使用することにより、異なる検知能力が得られる。このように、マイクロセンサは「環境カメラ」のように動作し、第1のピクセル・グループは、例えば、第1の特定のガスを検出することができ、第2のピクセル・グループは、温度及び/又は湿度、若しくは第1のガスとは異なる第2の特定のガスを測定することができる。マルチピクセル・マイクロセンサは、使用される異なるセンシング材料の数に限定されない。例えば、第3のピクセル・グループは、さらなる特定のガスを検出するためのセンシング材料を有することができる。実用的な理由から、マイクロセンサ内の異なるセンシング材料の数は、好ましくは25に限定される。
【0037】
マルチピクセル・マイクロセンサのピクセル・グループは、同じセンシング材料を有するマイクロセンサの1つ又は複数のピクセルをグループ分けしたものとして解釈されなければならない。例えば、マイクロセンサの一実施例では、第1のピクセル・グループは、第1のセンシング材料を有する3つのピクセルを有することができ、第2のピクセル・グループは、第2のセンシング材料を有する1つのピクセルを有することができる。言い換えれば、実施例では、ピクセル・グループのいくつかは、1つのピクセルから成るものであってもよい。
【0038】
本発明による方法で製造されたマルチピクセル・ガス・マイクロセンサのそれぞれは、第1のセンシング材料を有する第1のピクセル・グループG1と、第1の材料とは異なる第2のセンシング材料を有する第2のピクセル・グループG2とを少なくとも有する。
【0039】
マルチピクセル・マイクロセンサを製造する方法は、
図1に概略的に示されるような3つの主要なステップ、すなわち、ウエハ基板を設けて、第1のピクセル・グループG1及び第2のピクセル・グループG2を備えた複数のマルチピクセル・マイクロセンサを構築するためにウエハ基板を処理する第1のステップ100と、ピクセル・グループのそれぞれについてセンシング材料を選択する第2のステップ200と、選択されたセンシング材料で第1及び第2のピクセル・グループを活性化させる第3のステップ300とを有する。
【0040】
本発明の方法による第1のステップ100は、外面が絶縁層を形成しているウエハ基板を設け、次いで、そのウエハ基板は、複数のマルチピクセル・マイクロセンサを構築するために処理される。本発明の方法を適用するのに適したウエハ基板のさまざまな実例を、以下でさらに説明する。ウエハ基板の処理は、リソグラフィ・マスクを作成するサブ・ステップA1)を少なくとも有する。リソグラフィ・マスクは、複数のマイクロセンサのそれぞれについて、i)ピクセルの第1のグループG1を形成するための1つ又は複数の第1の電極対E1であって、各第1の電極対は第1及び第2の電極を有する、1つ又は複数の第1の電極対E1と、ii)第2のピクセル・グループG2を形成する1つ又は複数の第2の電極対E2であって、各第2の電極対は第3及び第4の電極を有する、1つ又は複数の第2の電極対E2と、iii)第1の電極対E1のうちの第1の電極のそれぞれに接続された第1の電気接続ラインと、第1の電極対E1のうちの第2の電極のそれぞれに接続された第2の電気接続ラインと、を画定している。これらの第1及び第2の電気接続ラインは、一般に、相互接続ラインとも呼ばれる。
【0041】
本発明は、リソグラフィ・マスクを適用するための特定のリソグラフィ技術に限定されない。実施例では、リソグラフィ・マスクは、例えば、フォトリソグラフィによって得られるライトフィールド・マスクであり、他の実施例では、電子ビーム・リソグラフィ技術、又はマスクを適用するための任意の他の適切なリソグラフィ技術が適用される。
【0042】
実施例では、第1の電極対の第1の電極、及び第2の電極対の第3の電極は正極であり、第1の電極対の第2の電極、及び第2の電極対の第4の電極は負極である。
【0043】
グループごとの電極対の数は、各グループで必ずしも同じというわけではないことに留意されたい。例えば、第1のグループは、4対の第1の電極を有することができ、第2のグループは、2対の第2の電極対を有することができる。
【0044】
サブ・ステップA2)では、第1の電極対と、第2の電極対と、第1及び第2の電気接続ラインとを、作成されたリソグラフィ・マスクに従って形成するために、金属化プロセスがウエハ基板の絶縁層に適用される。この金属化プロセスは、ウエハ基板上に1つ又は複数の金属層を少なくとも堆積させることを有する。リソグラフィに基づく金属化プロセスは、典型的にIC製造プロセスのバック・エンド・オブ・ラインで使用される既知のプロセスである。
図2では、ウエハ基板10の上面図、及び、処理ステップA1)及びA2)から生じるピクセル・アレイの実施例を示すウエハ基板の一部の拡大図が示されている。この実例では、マイクロセンサを形成するためのピクセル・アレイΣP
iは、ピクセルP1、P2、P3、P4、P5の5つのグループを有する。この実例では、ピクセル・アレイにおけるピクセルP
iの総数は20に等しい。グループP1は4つの電極対E1を有し、グループP2は4つの電極対E2を有する。グループP3は、8つの電極対E3を有する。グループG4は2つの電極対E4を有し、グループP5も2つの電極対を有する。以下でさらに説明するように、これらの電極対E1からE5は、同一であっても異なっていてもよい。
【0045】
製造プロセスをさらに示すために、
図3では、処理ステップA1)及びA2)から生じるピクセルの実施例の断面図が示されている。この断面図は、ウエハ基板10上に構築された1つのピクセルの第1の電極E1を示しており、この実施例では、電極対E1が2つの櫛形電極(interdigitated electrode)によって形成される。この例示的な実施例では、ピクセル・グループの電気接続ラインは、3つの金属化層20a、20b及び20cを使用して実現され、その層はビア21a、21bに相互接続されている。必要とされる金属化層の数は、定義されるピクセル・グループの数によって異なる。一般的に、製造されるマイクロセンサが2つの異なるセンシング材料のみを必要とする場合は、2つの金属層で十分である。より多くの異なるセンシング材料が必要な場合、より多くの層が提供される。
【0046】
金属化プロセスの後に、第3のサブ・ステップA3)において、保護マスクは、基板上に堆積される。実施例では、この保護マスクは、窒化物又は酸化物でできている。
【0047】
第2のステップ200では、第1のピクセル・グループのための第1のセンシング材料及び第2のピクセル・グループのための第2のセンシング材料の選択が行われる。第1のセンシング材料は、電解重合に適した第1のポリマーである。この第2のステップ200は、カスタマイズ意思決定ステップ(customization decision making step)として解釈することができ、第1のステップ100の前又は後のいずれかで実行することができる。
【0048】
第3のステップ300では、オンウエハ活性化又はオンダイ活性化が、第1及び第2のピクセル・グループに対して実行される。このオンウエハ又はオンダイ活性化は、少なくとも下記の4つのステップ、すなわち、
C1)第1のピクセル・グループの複数の第1の電極対を覆っている保護マスクの一部を局所的に除去するステップと、
C2)第1のセンシング材料で第1のピクセル・グループの第1の電極対のそれぞれを同時にコーティングするために第1の電解重合プロセスを適用するステップであって、第1及び第2の電気接続ラインは、第1の電解重合プロセス中に、第1の電極対に第1の電圧を印加するための電気接続部として使用される、ステップと、
C3)第2のピクセル・グループの第2の電極対を覆っている保護マスクの一部を局所的に除去するステップと、
C4)第2のセンシング材料で第2のピクセル・グループの第2の電極対をコーティングするステップと、を有する。
【0049】
図4では、処理ステップC1)及びC2)から生じるピクセルの一実施例の断面図が示される。この断面図は、ポリマー40で覆われた第1の電極E1を示す。
【0050】
実施例では、ステップC1)及びC3)の両方は、ステップC2)及びC4)を実行する前に実行される。実際、発明者は、すべての電極対のために保護マスクの一部を局所的に除去し、その後、適切なセンシング材料でピクセル・グループをコーティングすることが、個々のピクセル・グループのコーティング・プロセスに影響を及ぼさないことを観察してきた。有利なことには、これにより、ピクセル・グループのそれぞれの活性化を行うのに必要な時間が短縮される。
【0051】
代替実施例では、ステップC3)は、ステップC1)及びC2)を完了した後にのみ実行される。
【0052】
上述のように、マイクロセンサは、異なるガスを検知するための異なるセンシング材料を有することができる。これらの実施例では、第2のセンシング材料は、例えば、電解重合に適した第2のポリマーである。次いで、リソグラフィ・マスクを提供するサブ・ステップA1)は、iv)第2の電極対のうちの第3及び第4の電極のそれぞれに接続された第3及び第4の電気接続ラインをさらに画定し、次いで、金属化のステップA2)は、第3及び第4の電気接続ラインをさらに形成する。ステップC4)は、第2のセンシング材料で第2の検知グループの第2の電極対のそれぞれを同時にコーティングするために第2の電解重合プロセスを適用することをさらに有する。第3及び第4の電気接続ラインは、これにより、第2の電解重合プロセス中に、第2の電極対に第2の電圧を印加するための電気接続部として使用される。
【0053】
当業者は、センサ材料として3種類以上の異なるポリマーを有するマイクロセンサを製造するための本発明の方法を拡張できるということが理解される。
【0054】
いくつかの実施例では、活性化プロセス後に、ステップA3)に適用された保護マスクは、例えばエッチングの手順によって完全に除去される一方で、他の実施例では、保護マスクは維持される。
図5では、保護マスク50が維持されている例が示されている。
【0055】
ウエハ基板
本発明による方法を実行するために提供されるウエハ基板は、方法ステップA1)からA3)までを適用するのに適した任意の基板として解釈されなければならない。
【0056】
実施例では、
図3に示すように、ウエハ基板10は、Si若しくはGeなどの半導体材料で作られた、又は、Al、Au、Ag、Ptなどの金属で作られた第1の層11と、絶縁材料で作られた第2の層12とを少なくとも有する。第2の絶縁層は、基板ウエハの外面を形成しており、上述した処理ステップ100を実行するための開始層である。
【0057】
典型的には、ウエハ基板の絶縁層12は、下記のもののいずれか、すなわち、酸化プロセス、窒化プロセス、酸化物沈着又は窒化物沈着のいずれかによって形成される。
【0058】
他の実施例では、ウエハ基板は、ガラス又は石英などの絶縁材料で作られた層を有する。実施例では、ウエハ基板全体がガラス又は石英でできている。
【0059】
特定の実施例では、本発明による方法を実行するために提供されるウエハ基板は、初期フロント・エンド(FEOL:front-end-of-line)プロセスによって生じるウエハ基板である。例えば、ウエハ基板は、マイクロセンサの電極対によって生成される信号を読み出すために構成されたトランジスタを有することができる。ピクセルのオンダイ活性化の場合、これらのトランジスタは、電極対に供給される重合電圧を制御するためのスイッチとして使用することもできる。
【0060】
センシング材料
さまざまな材料は、例えば、分子インプリント・ポリマー(MIP:molecularly imprinted polymers)及び非インプリント・ポリマー(NIP:non-imprinted polymers)などの導電性ポリマー、並びに、例えばカーボン・ナノチューブ又はグラフェンに基づいたナノコンポジットのような、ピクセルのためのセンシング材料として使用することができる。
【0061】
本発明による製造方法から得られるマイクロセンサは、第1のセンシング材料として少なくともポリマーを有する。実施例では、センシング材料は、下記のポリマーのいずれか、すなわち、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリシラン化合物のいずれかである。
【0062】
実施例では、マイクロセンサは、第1のセンサ材料が分子インプリント・ポリマー(MIP)であり、第2のセンサ材料が非インプリント・ポリマー(NIP)であるセンサ材料の組み合わせを有する。
【0063】
いくつかの実施例では、例えば、グラフェンでできた膜をセンシング材料として1つ又は複数のピクセル・グループを有することができる。他の実施例では、センシング材料は、抵抗性材料又は半導体材料でできている。
【0064】
上述のように、本発明により製造されたマイクロセンサは、センサ材料としてポリマーを有する第1のピクセル・グループを少なくとも有し、このセンサ材料は、第1の電解重合プロセスによって第1の電極対上に堆積される。
【0065】
マイクロセンサが、例えば、カーボン・ナノチューブ、グラフェン又はナノコンポジットをセンシング材料として有する第2のピクセル・グループを有する場合、本発明による方法のステップC4)において、下記プロセスのうちの1つ、すなわち、スプレー・コーティング、ドロップ・コーティング又はインクジェット印刷などのプロセスのうちの1つが、センシング材料を堆積するために使用される。これらのプロセスは、コーティングを塗布するための当該技術分野で知られている。
【0066】
いくつかの実施例では、1つ又は複数の電極対はコーティングされない。すなわち、センシング材料は、電極対の電極間に追加されない。これらの電極対は、例えば、温度測定の目的で、コーティングなしで抵抗測定のために使用される。
【0067】
電極
実施例では、第1の電極対及び/又は第2の電極対は、2つの櫛形電極によって形成される。代替実施例では、第1及び第2の電極対は、2つの対向する電気接点によって形成される。電極対のそれぞれは、正極及び負極を有する。電極は、例えば銅でできている。
【0068】
いくつかの実施例では、第1のピクセル・グループは、2つの櫛形電極によって形成された電極対を有し、第2のピクセル・グループは、2つの対向する電気接点によって形成された電極対を有する。言い換えれば、電極対は、ピクセル・グループごとに異なっていてもよい。
【0069】
いくつかの実施例では、例えばグラフェンでできたグリッドなどの導電性要素は、電極対を形成する2つの対向する電気接点の間に配置される。これにより、電気接点の間の距離を長くすることが可能であり、重合プロセスを容易にすることが可能である。これらの実施例について、この方法は、電極対の電極間のこのような導電性要素を結合するために、ピクセル活性化ステップ300の一部として、さらなるステップを有する。
【0070】
櫛形電極を用いる実施例では、ポリマーでコーティングするとき、電極対の2つの電極を完全に回復させて抵抗接点を得るために、電極対にコーティングされたポリマーの厚さは、約1~2μmの厚さである。
【0071】
他の実施例では、電極対の電極間の距離は、1μmよりも短く、例えば、数百ナノメートルであり得る。一般に、電解重合プロセスには、短い距離ほど、より効率的である。
【0072】
櫛形電極は、多くの指を有しており、指の数は、電極対の電極間の必要な抵抗の関数として最適化される。例えば、実施例では、必要な抵抗は、100キロオームから1メガオームの範囲であってもよい。
【0073】
電気接続ライン
電気接続ラインは、同じセンシング材料を有する電極対の電極を相互接続するための導体又は導体の一部として解釈されなければならない。電気接続ラインは、例えば銅でできている。
【0074】
実施例では、第1のピクセル・グループの第1の電気接続ライン及び第2の電気接続ラインは、相互接続されている。すなわち、第1のピクセル・グループの電極対の第1及び第2の電極は、短絡を形成している。このように、第1の電解重合プロセス中に、第1の単一電圧は、第1のグループの第1の電極対の第1及び第2の電極に印加することができる。このことは、電解重合プロセス中に、例えば正極及び負極が同じ電圧にあるということを意味している。
【0075】
いくつかの実施例では、第1及び第2の電気接続ラインは、第1の電極対の第1及び第2の電極がデフォルトで短絡を形成しているように、共通の接続ラインを形成している。
【0076】
結果として、第1の電極対が上述のように短絡化されている実施例では、本発明による方法は、第1の電解重合プロセス後に、第1の電極対のそれぞれのために第1及び第2の電極間に開回路が形成されるように、第1及び第2の電気接続ラインを切断又は共通の接続ラインを切断するさらなるステップを有する。
【0077】
同様に、例えば、第2のセンシング材料が第2のポリマーの場合、第3及び第4の電気接続ラインは相互接続され、さらなる短絡を形成している。このように、第2の電解重合プロセス中に、第2の単一電圧は、すべての第2の電極対の第3及び第4の電極に印加することができる。したがって、ここでも、第2の電解重合プロセス中に、正極及び負極は同じ電圧にある。
【0078】
より一般的には、いくつかの実施例では、マイクロセンサは、センシング材料として複数のポリマーを使用するための複数のピクセル・グループを有し、ピクセル・グループのそれぞれの電極対の電気導体のそれぞれは、電極対が短絡化されるように構成されている。
【0079】
他の実施例では、第1及び第2の電気接続ラインは、2つの別々の電気導体、すなわち、例えばすべての第1の電極対の正極を接続する第1の電気導体と、すべての第1の電極対の負極を接続する第2の電気導体とを形成している。このように、第1及び第2の電気接続ラインは、電解重合プロセス中に、第1の電圧をすべての正極に印加し、第2の電圧を第1の電極対のすべての負極に印加するように使用することができる。言い換えれば、第1の電圧差は、第1及び第2の電極間に印加することができる。
【0080】
電極対が、共通の接続ラインを使用することによって、又は、上述のように第1及び第2の電気接続ラインを相互接続することによって短絡化されるとき、金属化プロセス中に適用する必要のある金属化層の数が減少する。この場合、1つの金属化層で、2つの異なるセンサ材料を覆うことができる。2つの金属化層で、例えば、4つの異なるセンサ材料を覆うことができる。他方、第1及び第2の電極が、それぞれ第1及び第2の電極に接続された専用の第1及び第2の電気接続ラインを使用することによって分離されたままである場合、センサ材料ごとに、より多くの金属化層が必要である。一般的に、1つのセンシング材料につき、1つの金属化層が必要である。
【0081】
ピクセルのオンウエハ活性化
ピクセルの活性化は、ウエハのレベル上で、すなわち「オンウエハ」で、又は、ウエハをダイシングした後のダイのレベル上で、すなわち「オンダイ」のいずれかで実行することができる。
【0082】
第1及び第2のピクセル・グループの活性化がオンウエハで実行される実施例では、第1の電解重合プロセスを適用するサブ・ステップC2)は、ウエハ基板によって維持された複数のマルチピクセル・マイクロセンサの各第1のピクセル・グループに対して同時に実行される。オンウエハでの同時電解重合は、ステップA1)からA3)の処理後、第1の電解液内にウエハ基板を配置し、第1及び第2の電極が短絡化されている場合は、第1及び第2の電極対に第1の電圧を印加し、第1及び第2の電極が短絡されていない場合は、第1及び第2の電極の間に電圧差を印加することによって実行される。上述のように、第1及び第2の電気接続ラインは、電圧を電極に印加するための電気接続部として使用される。
【0083】
ピクセルの活性化がオンウエハで実行される場合、ウエハ基板は、処理ステップA1)からA3)を実行する前に、ウエハの周縁にグローバル電気接点(global electric contact)GC1,GC2を備え、それらは、重合プロセスを実行するための電圧を提供する電圧源を接続することができる。これらの実施例では、金属化ステップA2)の一部として、マイクロセンサのそれぞれの第1及び第2の電気接続ラインは、ウエハの周縁で1つ又は2つのグローバル電気接点に接続されている。製造されるマルチピクセル・センサが、異なるポリマー・センシング材料をそれぞれが有している複数のグループを有する場合、ポリマー・センシング材料を必要とする各ピクセル・グループに対して、1つ又は2つのグローバル電気接点がウエハの周縁に提供される。
【0084】
図2に示す実施例では、ウエハ基板上の5つのグローバル接点GC1からGC5が示されており、これにより、異なるポリマー・センシング材料で5つのピクセル・グループG1からG5をコーティングすることができる。ウエハ基板上で必要とされるグローバル接点の数は、センシング材料としてポリマーを必要とするピクセル・グループの数によって決まる。
図2に示す実例では、グループG1からグループG3までのみを重合プロセスでコーティングする必要がある場合は、ウエハ上の3つのグローバル接点で十分である。
【0085】
いくつかの実施例では、金属化プロセスの一部として、複数のマイクロセンサの第1の電気接続ラインのいくつかが互いに接続され、これらの複数のマイクロセンサの第2の電気接続ラインのいくつかも互いに接続される。これらの接続された第1の電気接続ライン、及び接続された第2の電気接続ラインは、次に、ウエハの周縁で単一の又は一対のグローバル接点に接続される。このように、センシング材料ごとのウエハの周縁でのグローバル接点の総数は、大幅に減らすことができる。いくつかの実施例では、センシング材料ごとに1つ又は数個のグローバル接点のみが必要である。
【0086】
上述のように、各マイクロセンサについて、第1のグループG1の第1の電極対E1の第1の電極は、第1の電気接続ラインを介して相互接続され、第1のグループG1の第1の電極対E1の第2の電極は、第2の電気接続ラインを介して相互接続される。したがって、前記第1の電解重合プロセスの後に活性化がオンウエハで実行される実施例では、この方法は、追加的なステップ、すなわち、例えばエッチング・プロセスによって、第1のグループG1の第1の電極対E1のそれぞれが第1のグループG1の別の第1の電極対から分離された状態になるように、前記第1及び前記第2の電気接続ラインを切断するステップを有する。実際、各電極対は、そのセンサ材料とともに、独立したピクセル・センサを形成している。マイクロセンサが動作している場合、各ピクセル・センサは、別のピクセル・センサで検出された信号とは独立して信号を取得し、読み取り装置へ信号を伝送する。
【0087】
ピクセルのオンダイ活性化
第1及び第2のピクセル・グループの活性化がオンダイで実行される実施例では、この方法は、ステップC)を実行する前にウエハをダイシングする追加的なステップ、すなわち、第1及び第2のピクセル・グループのオンダイ活性化を実行するステップを有する。
【0088】
ピクセル活性化がオンダイで実行されるこれらの実施例では、ステップA)で提供されるウエハ基板は、初期フロント・エンド・プロセスから生じる。このフロント・エンド・プロセスの一部として、第1のピクセル・グループの第1の電極対ごとに一対のトランジスタが設けられている。有利なことには、第1の電極対のこれらのトランジスタは、第1の電解重合プロセス中に第1の電圧を制御することができるスイッチとして使用される。これらのトランジスタ15は、例えば、NMOS又はPMOSトランジスタである。
図5では、ピクセルの断面図が示されており、ウエハ基板10は、各電極対のための一対のトランジスタが設けられる初期フロント・エンド・オブ・ライン・プロセスによって得られたものである。
図5には、1つのトランジスタ15が、電気接続ライン20a~20dとともに示されている。
【0089】
実施例では、ダイはパッケージ化され、結果として得られるチップは、複数の周辺接続パッドを有する。これらのパッドのいくつかは、第1のピクセル・グループの一対のトランジスタに電気接続され、第1の重合プロセス中に第1の電圧を制御することができる。
【0090】
第1の電極対の活性化がオンダイで実行されるとき、ステップC2)で使用される重合プロセスは、液滴重合プロセス又は専用のマイクロ流体プロセスである。液滴重合プロセスにより、重合液を有する液滴は、局所的に除去される保護マスクを有するピクセルの上部に供給される。マイクロ流体システムが使用されるとき、流体は、例えばピクセル上方の小さなチャンバを通って循環され、その結果、局所的に除去される保護マスクを有するピクセルは、流体と接触するようになる。
【0091】
マルチピクセル・マイクロセンサ
本発明の第2の態様によれば、ガス及び/又は揮発性有機化合物を検出するためのマルチピクセル・マイクロセンサが提供される。本発明によるマルチピクセル・マイクロセンサは、
図1に概略的に示すような製造ステップ100、200及び300を含む上述のような製造方法によって得られる。
【0092】
単一のマイクロセンサに対応するダイは、実施例ごとに変化し得る全体的な表面寸法を有することができる。例えば、実施例では、単一のマイクロセンサに対応するダイは、1×1mm2又は0.5×0.5mm2以下の典型的な全体の表面寸法を有する。他の実施例では、この寸法は、より大きくすることができ、例えば、3×3mm2までの値を有することができる。マイクロセンサの単一のピクセルの表面寸法は、実施例ごとに変化し得る。いくつかの実施例では、ピクセル・サイズは、例えば10×10μm2である。他の実施例では、ピクセル・サイズは、はるかに大きくてもよく、例えば、より大きな面積のマイクロセンサを使用すべき場合は、このマイクロセンサのピクセル・サイズは、1×1mm2にまですることができる。
【0093】
第1のピクセル・グループの各第1の電極対のための一対のトランジスタが、ウエハ基板の初期フロント・エンド・オブ・ライン・プロセスの一部として提供される実施例では、トランジスタを使用して、検出器の読み出しプロセスを制御することもできる。適用される読み出しプロセスは、既知のCMOSカメラと同様の方法で、例えば、多重化によって実行され、その後、抵抗性及び/又は容量性の読み出しが行われる。
【0094】
図6では、マルチプレクサが本発明によるマイクロセンサと結合され、各ピクセルについて読み出しを実行することができ、マイクロセンサの製造プロセス中に電解重合によって電極対のコーティングを選択的に実行することもできる実施例が示されている。
図6に示すシステムは、カラム・デコーダ81とライン・デコーダ82とを有する。ライン・デコーダは、
図6で示すように、ライン・デコーダのラインのうちの1本、例えばラインL1、L2、L3、L4のうちの1本を活性化することを可能にする制御ボックス86に結合される。
図6に概略的に示すように、これらのラインのそれぞれは、ピクセルに関連する一対のトランジスタのいくつかのゲートに結合される。書き込み制御装置84及び読み取り制御装置85は、カラム・デコーダ81に結合される。書き込み制御装置84は、電解重合プロセス中に、電解重合を必要とするピクセルに電圧を選択的に印加するために使用される。例えば、ラインL1が制御ボックス86を介して活性化される場合、書き込み制御装置84は、例えば、ラインL1及びカラムC1/C1’上に配置されたピクセルが重合化を必要とする場合の電解重合プロセスに適したカラムC1及びカラムC1’に電圧を設定することができる。このように、電解重合プロセスは、ピクセルごとに選択的に適用及び制御することができる。使用される電解重合プロセスの種類に応じて、例えばC1及びC1’に印加される電圧は、等しくても異なっていてもよい。
【0095】
上述のように、マイクロセンサのピクセルの活性化が完了して、マイクロセンサが動作するようになると、
図6に示すカラム・デコーダ及びライン・デコーダ、並びに関連する制御を使用して、例えば、抵抗性及び/又は容量性の読み出しによって、ピクセルのそれぞれから選択的にデータを読み出すことができる。1つの実例として、ラインL1が活性化される場合、ラインL1及びカラムC1/C1’上に位置するピクセルからのデータは、カラム接合部C1及びC1’を介して読み出し制御装置85によって読み出しが行われる。