(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】シンカー、シンカー配列及び経編機
(51)【国際特許分類】
D04B 27/04 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
D04B27/04
(21)【出願番号】P 2022517920
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020075862
(87)【国際公開番号】W WO2021053014
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-14
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブッツ,トルステン
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-027058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノックオーバーエッジ(2)とホールドエッジ(3)とスロートエッジ(4)とを含む経編機用のシンカー(1)であって、ノックオーバーエッジ(2)は幅方向(B)及び少なくとも一部が長手方向(L)へ延び、シンカー(1)の高さ方向(H)はノックオーバーエッジ(2)の表面から垂直方向へ上向きに延び、ホールドエッジ(3)は高さ方向(H)に間隔をあけてノックオーバーエッジ(2)と反対側に位置し、スロートエッジ(4)は後方に向かって長手方向(L)に区画され、ノックオーバーエッジ(2)とホールドエッジ(3)とを連結し、
ノックオーバーエッジ移行点(5)において、ホールドダウンエッジ(6)はノックオーバーエッジ(2)に隣接し、サポートエッジ移行点(7)において、サポートエッジ(8)はホールドダウンエッジ(6)に隣接し、サポートエッジ(8)は少なくとも一部が長手方向(L)へ延び、ノックオーバーエッジ(2)から高さ方向(H)下方に配置され、
サポートエッジ移行点(7)は、
前記ノックオーバーエッジ移行点(5)から
の高さ方向(H)の距離が、前記ノックオーバーエッジ移行点(5)からの長手方向(L)の距離の少なくとも4倍の距離離れていることを特徴とするシンカー(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のシンカー(1)であって、
前記サポートエッジ移行点(7)は、前記ノックオーバーエッジ移行点(5)から高さ方向(H)へ3mm以上10mm以下の距離に位置することを特徴とするシンカー(1)。
【請求項3】
請求項1に記載のシンカー(1)であって、
前記ホールドダウンエッジ(6)は、前記ホールドダウンエッジ(6)の一部の凹部又は凸部として形成される保持手段(9)を備えることを特徴とするシンカー(1)。
【請求項4】
請求項1に記載のシンカー(1)であって、
前記サポートエッジ(8)は、前記サポートエッジ移行点(7)から前方に向かって長手方向(L)へ最大で2mm延びることを特徴とするシンカー(1)。
【請求項5】
請求項1に記載のシンカー(1)であって、
前記ノックオーバーエッジ(2)と前記ホールドダウンエッジ(6)とは、90°から115°までの角度をなすことを特徴とするシンカー(1)。
【請求項6】
請求項1に記載のシンカー(1)であって、
前記ノックオーバーエッジ(2)は、長手方向(L)において、前記ホールドエッジ(3)から前方に向かって最大で5mm突出することを特徴とするシンカー(1)。
【請求項7】
請求項1に記載の複数個のシンカー(1)からなる経編機用シンカー配列(10)であって、幅方向(B)に一定の間隔をあけて列状に整列されて配置されると共に、少なくとも1つのノックオーバーバンド(11)を備え、前記ノックオーバーバンド(11)は、少なくとも一部のシンカー(1)のサポートエッジ(8)及びホールドダウンエッジ(6)に隣接すると共に、少なくとも2つのシンカー(1)間の幅方向(B)の距離を中継し、前記ノックオーバーバンド(11)の外面(12)は、前記ノックオーバーバンド(11)が前記シンカー(1)のホールドダウンエッジ(6)に突き当たる表面と反対側に設けられ、
前記ノックオーバーバンド(11)の外面(12)の高さ方向(H)の上端は、前記ノックオーバーバンド(11)の外面(12)の高さ方向(H)の下端から
の高さ方向(H)の距離が、前記ノックオーバーバンド(11)の外面(12)の高さ方向(H)の下端からの長手方向(L)の距離の少なくとも4倍の距離離れていることを特徴とするシンカー配列(10)。
【請求項8】
請求項7に記載のシンカー配列(10)であって、
前記ノックオーバーバンド(11)は、幅方向(B)の延長線上で一定である長方形の断面を有することを特徴とするシンカー配列(10)。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のシンカー配列(10)であって、
ノックアウトバンド(11)は、高さ方向(H)において、複数のシンカー(1)の少なくとも一部のノック
オーバーエッジ(2)に対して同一平面上に配置されるか、又は離間して配置されることを特徴とするシンカー配列(10)。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載のシンカー配列(10)であって、
前記ノックオーバーバンド(11)の長手方向(L)の延び量は、前記サポートエッジ(8)の長手方向(L)の延び量と同じであることを特徴とするシンカー配列(10)。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載のシンカー配列(10)であって、
ノックオーバーバンド(11)は、少なくとも一部のシンカー(1)に対して取り外し可能に固定するため、複数個のシンカー(1)の少なくとも一部のシンカー(1)の、ホールドダウンエッジ(6)の少なくとも1つの保持手段(9)と協働することを特徴とするシンカー配列(11)。
【請求項12】
請求項7乃至11のいずれか一項に記載のシンカー配列(10)であって、
前記ノックオーバーバンド(11)は、該ノックオーバーバンド(11)に固定されると共に前記ホールドダウンエッジ(6)の保持手段(9)に取り外し可能に固定される連結手段(13)を有することを特徴とするシンカー配列(10)。
【請求項13】
請求項12に記載のシンカー配列(10)であって、
前記連結手段(13)は、その前端部における前記シンカー(1)間の幅方向(B)の距離を調整する少なくとも1つのスペーサ(14)を有することを特徴とするシンカー配列(10)。
【請求項14】
少なくとも以下の特徴を有するユニバーサル経編
編物を製造するための経編機であって、
・請求項7に記載の少なくとも1つのシンカー配列(10)、
・前記シンカー配列のノックオーバーエッジ又はノックオーバーバンドにおけるノックオーバーによりステッチが形成されるステッチ形成領域、及び
・前記ステッチ形成領域から経編地を引き取るための
編物引き取り手段(15)
前記
編物引き取り手段(15)は、少なくとも1つの既定の第1の調節手段(16)において、前記経編地を水平方向の前方に向けた方向(Hz)へ引き取ることが可能であり、少なくとも1つの既定の第2の調節(17)において、前記経編地を垂直方向(V)の下方へ引き取ることを可能にするため、前記ステッチ形成領域に対して調節可能に適合されることを特徴とする経編機。
【請求項15】
請求項14に記載の経編機であって、
前記
編物引き取り手段(15)のうち、前記ステッチ形成領域に最も近い位置に配置される少なくとも1つの第1ローラ(18)は、その回転方向が反転可能に付勢されるように設けられることを特徴とする経編機。
【請求項16】
請求項15に記載の経編機であって、
前記第1ローラ(18)に追従する前記
編物引き取り手段(15)の少なくとも1つの第2ローラ(19)は、前記第1ローラ(18)の垂直方向(V)下方における前記
編物引き取り手段の第1の既定の調節手段(16)に配置され、前記第1ローラ(18)垂直方向(V)上方における前記
編物引き取り手段(15)の第2の既定の調節手段(17)に配置されることを特徴とする経編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノックオーバーエッジとホールドダウンエッジとスロートエッジとを有するシンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
経編機は高価な設備である。例えば、トリコット機又はラッシェル機として用いられる様々なタイプの経編機は、特に経編編物又は編物に対して特別に異なる編糸張力及び編糸材料が用いられる場合、異なる編み構造のバリエーションを有する種々の経編編物を製造するため使用される。前述のマシンタイプは一部に類似性を示すとはいえ、これまでのところ、すべてのタイプの経編編物を製造するため普遍的に使用できる経編機は知られていない。例えば、公知の経編機における編物引き取り手段は、経編機上に強固に固定されているため、経編編物の引き取り方向は、主としてトリコット機械編物又はラッシェル編物の製造にのみ適する。また、シンカー及びシンカー配列は、通常、1種類の経編機で使用するためのみ提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ドイツ国特許第2643565号(C2)は、トリコット機タイプの経編機に設けられるシンカーであって、ノックオーバー及び押し付け手段を有するものを開示している。隣接する下降する前エッジを有するノックオーバーエッジの特殊な構成の結果として、ラッシェル機タイプの経編機で生産される編地を生産するためシンカーを使用することが可能である。このシンカーは、垂直に立てた針と一緒に使用することが望ましい。しかし、前述のシンカーは、相対的に配置された針がシンカーのホルダーに衝突するため、幾何学的に不可能である。たとえ、特別に凹んだシャンクを持つ針(この針で編むことは不可能と思われる)を衝突することなくシンカーと組み合わせることができたとしても、そのためのスペースがないため、針はシンカーのネブを越えて編糸を搬送することができない。さらに、ピラーステッチを確実にノックオーバーすることを可能にするシンカーのノックオーバーエッジの間の交差接続が開示されていないため、特別に付与されたピラーステッチのラッピングは不可能である。公知のホルダーをノックオーバーのため使用することはできない。よって、機能的に信頼できるシンカーの特徴は、この刊行物(特に図を含む)から直接かつ一義的に推論することはできない。
【0004】
欧州特許第3276062号(A1)は、トリコット機タイプの経編機を開示しており、この経編機は、特殊な動作をするシンカーと追加の押し付け手段とにより、ラッシェル機タイプの経編機でしか製造できなかった編物(レース)を製造することを可能とした。この目的のため、トリコット編機で一般的に使用されるシンカーを使用し、その配列には(バー上に)ノックオーバー手段が追加で設けられる。ラッシェル機で生産可能なすべての経編編物は、水平に配置されたノックオーバー手段を介して編物が引き取られるため、普遍的に生産することはできない。
【0005】
ドイツ国特許第1174010号は、引き取りローラ対の回転方向が反転可能な経編機の編物引き取り手段を開示する。走行方向を変えることにより、異なる引き取り張力を調整可能であることが望ましい。また、編地の引き取り角度に一定のバリエーションが得られることが望ましい。しかし、異なる張力を有する編物の製造の他に、製造される編物の更なる可能性について言及されていない。
【0006】
ドイツ国特許第4228048(A1)には、ラッシェル機で製造される強化編物を製造することが可能なトリコット機が開示されている。この目的のため、トリコットマシンのシンカーは固定され、連続した横方向キャリアがシンカー上に配置される。横方向のキャリアはワイヤーで固定され、このワイヤーはシンカーに設けられた穴に導入され、その穴にはノックオーバー要素として機能するワイヤーが配置される。シンカーの前端には、標準的な横方向へ連続したリードの安定手段が取り付けられる。このような安定手段を確実に固定するため、シンカーは前端に、上、前、下からの安定手段により完全に包囲される輪郭を持つことがよくある。このような改良型トリコットマシンは、ここでも特定の1種類のラッシェル編物(横糸と立毛糸とによる補強編物)しか生産することができない。
【0007】
前述の先行技術から鑑みて、本発明の目的は、異なるタイプの機械を用意する必要がなく、経編機で経編地を普遍的に製造することが可能なシンカー、シンカー配列、及び経編機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る経編機用シンカーは、ノックオーバーエッジと、ホールドダウンエッジと、スロートエッジとを有する。ノックオーバーエッジは、シンカーの幅方向及び少なくとも一部が長手方向へ延びる。好適には、ノックオーバーエッジは直線状に形成され、ノックオーバーエッジは全体が長手方向へ延びる。しかし、ノックオーバーエッジは、ノックオーバーエッジが具体的に長手方向へ一部にしか、場合によっては限りなく小さい断面だけに延びるように、曲線状に延ばすことも可能である。そして、長手方向は、ノックオーバーエッジの移行点とホールドダウンエッジが前方に向かって延びる終点より上の点との間の中央でノックオーバーエッジに適用される接線により決定することができる。シンカーの高さ方向は、ノックオーバーエッジの表面から垂直方向上方に向けられる。ホールドダウンエッジは、高さ方向へ距離をあけてノックオーバーエッジと対向する位置にある。スロートエッジは、後方に向かって区画し、長手方向においてノックオーバーエッジとホールドダウンエッジとを中継する。ノックオーバーエッジの前端部のノックオーバーエッジ移行部では、ホールドダウンエッジがノックオーバーエッジに隣接する。サポートエッジの移行点では、サポートエッジがノックオーバーエッジに隣接する。サポートエッジは、少なくとも一部に略長手方向へ延び、ノックオーバーエッジの下の高さ方向へ配置される。好ましくは、サポートエッジは、サポートエッジ移行点から長手方向前方へ延び、及び/又は、サポートエッジ移行点から専ら長手方向前方へ延びる。本発明によるシンカーは、サポートエッジ移行点が、高さ方向において長手方向の少なくとも4倍の距離、ノックオーバーエッジ移行点から離れていることを特徴とする。
【0009】
トリコットミシンには、ノックオーバーエッジ、ホールドエッジ、スロートエッジを有するシンカーが一般的に使用される。ノックオーバーエッジに隣接する、対応して設計されたホールドダウンエッジとサポートエッジとを追加して配置した結果、シンカーは、経編機の引き取り方向が垂直方向であるとき(ピラー)ステッチをノックオーバーするように構成される。よって、ラッシェル機でしか生産されない経編地をシンカーで生産することができる。トリコット編機の編物をラッシェル編機に変換することは、編機(例えばシンカーだけでなく針など)を交換することなく実施することさえ可能である。
【0010】
本発明によるシンカーは、通常のシンカーと同様に、鋼バンドからプレス加工することができる。そして、鋼バンドの厚み方向がシンカーの幅方向となる。シンカーは、ノックオーバーエッジ、ホールドダウンエッジ及びスロートエッジを有する通常のシンカーのように、ステッチを形成するためにノックオーバーエッジに対して長手方向へ移動するように構成することができる。サポートエッジは、ノックオーバーエッジと平行に配置することができる。しかし、サポートエッジは、ノックオーバーエッジに対して0°~25°の間の角度で配置することもできる。好ましくは、サポートエッジとノックオーバーエッジとの間の理論的な交点は、その後、シンカーの前方の長手方向に位置する。ホールドダウンエッジとサポートエッジとの間の角度は、好ましくは90°である。よって、有利な長方形断面を有するノックオーバーバンドをサポートエッジにより支持することができる。さらに、このように支持されたノックオーバーバンドは、経編地に作用する引き取り力によりホールドダウンエッジに押し付けられるようにホールドダウンエッジに沿わせることができる。経編機において、引き取り力は、その上下方向下方に作用する。サポートエッジ移行点とノックオーバーエッジ移行点との間の距離が、高さ方向において長手方向の少なくとも4倍の距離であることは、シンカーのホールドダウンエッジ又は機械におけるシンカー配列の外面が、機械の垂直方向へ略配置されるという結果をもたらす。ホールドダウンエッジ又は外側表面は、ホールドダウンエッジ又は外側表面のさらに下方にある領域が垂直方向上方にある領域よりも水平方向前方にさらに突出するように、機械の垂直方向へ対して最大25°又は例えば15°、10°又は5°の角度で傾斜させることができる。以下、垂直方向への引き取りは、結果的に、垂直から前記角度のみで引き取る引き取り方向としても理解される。サポートエッジは、サポートエッジ移行点を起点として長手方向前方へ延ばすことができる。ホールドダウンエッジのうちノックオーバーエッジ移行点に隣接する部分と比較して、サポートエッジは、長手方向の前方又は専ら前方に延在することができる。ノックオーバーエッジ移行点に隣接するホールドダウンエッジの区間又はノックオーバーエッジ移行点に隣接するホールドダウンエッジの区間を長くする仮想線と比較して、サポートエッジ移行点は、長手方向のさらに前方に配置することができる。その結果、例えば、ノックオーバーバンドをサポートエッジで支持することが可能であり、このノックオーバーバンドは、経編地の引き取り力によりサポートエッジに押し付けられ、ホールドダウンエッジに押し付けられ、その結果、経編地の引き取り力は、ホールドダウンエッジに押し付ける。シンカーは、表面コーティングを有することができる。シンカーは、脚部を有することができる。シンカーは、脚部を持たないように設計することができる。シンカーは、その長手方向へ対して実質的に平行に移動されるように構成することができる。この目的のため、シンカーは、その高さ方向よりもその長手方向へかなり長く延びることができる。ホールドダウンエッジは、ノックオーバーエッジと平行に延びることができる。サポートエッジ移行点では、ホールドダウンエッジは、曲げを伴って又は角を伴ってサポートエッジを乗り越えることが可能であり、ここで、包囲された角度は、好ましくは70°~110°である。シンカーは、好ましくは、丸編み機の円形櫛におけるガイダンスに適するような手段を構成しない。
【0011】
サポートエッジ移行点は、高さ方向において、ノックアウトエッジ移行点から3mmから10mmの間の距離とすることができる。この距離は任意の値に設定することが可能であり、例えば、5mm又は6.5mmとすることができる。ホールドダウンエッジは、少なくとも一部に凹部及び/又は高台を形成可能な保持手段を設けることができる。保持手段は、ノックオーバーバンドを挟み込む、又は挟み込むことができるようにするため、ホールドダウンエッジに対して垂直、又はホールドダウンエッジに対して小さな角度で延びる部分を設けることができる。この目的のため、保持手段は、辺の長さに対して角のRを小さくした長方形に設計することも可能であり、及び/又はアンダーカットを設けることもできる。サポートエッジ移行点とノックオーバーエッジ移行点との間の距離を大きくすると、ホールドダウンエッジへの保持具の取り付けのための設置スペースをより多く確保することができる。
【0012】
サポートエッジは、サポートエッジ移行点から前方に向かって長手方向へ最大2mmで終わることができる。サポートエッジは、長手方向へ最大2mmの延長を有することが可能であり、例えば、0.7mm又は1mmである。2mmまでの任意の値が有利である。サポートエッジの前端領域は、サポートエッジ移行点から長手方向へ前方に向かって最も遠いシンカーの要素であり得る。
【0013】
ノックオーバーエッジ及びホールドダウンエッジは、90°から115°までの間の角度を囲むことができる。特に好ましいのは、95°から110°までの間の角度である。
【0014】
ノックオーバー端は、長手方向においてホールドダウン端よりも前方に向かって最大2mm突出することができる。粗い繊度(機械ピッチ)又は広幅の編物の場合、ノックオーバーエッジは、長手方向においてホールドダウンエッジを越えて前方に向かって最大5mm突出することが可能である。好適には、ノックオーバーエッジは、長手方向においてホールドダウンエッジを越えて前方に向かって、1mm以上5mm以下の値、又は1.5mm以上4mm以下の値、例えば2mm、2.5mm又は3mmだけ突出することができる。ホールドダウンエッジよりも前方に向かって2mm以下だけ突出するノックオーバーエッジは、ステッチ形成のためシンカー又はシンカー配列が大きな距離をカバーする必要がなく、経編地を経編機の垂直方向下方へ引き取ることができる。
【0015】
経編機のための本発明によるシンカー配列は、幅方向へ一定の距離で配列配置される請求項1に記載の複数のシンカーを備え、少なくとも1つのノックオーバーバンドから構成される。前記ノックオーバーバンドは、前記シンカーの少なくとも一部のサポートエッジとホールドダウンエッジとに接する。前記ノックオーバーバンドは、少なくとも2つのシンカー間の幅方向の距離を中継する。前記ノックオーバーバンドの外面は、前記ノックオーバーバンドが前記シンカーのホールドダウン面に対する突き当て面と反対側に位置することを特徴とする。前記シンカー配列は、高さ方向において、前記ノックオーバーバンドの外周面の高さ方向上端が、前記ノックオーバーバンドの外周面の高さ方向下端から長手方向の少なくとも4倍の距離であることを特徴とする請求項1に記載のシンカー。
【0016】
ノックオーバーバンドは、特に、シンカー間をスライドする柱状ステッチをノックオーバーする役割を果たすことができる。高さ方向を基準とするノックオーバーバンドの位置により、経編機は、ノックオーバーバンドの外側を通過して、略経編機の垂直方向下方に滑り落ちるように引き取ることができる。また、機械方向水平方向で手前に向かって引き取ることも当然可能である。特に垂直方向へ引き取る場合、ノックオーバーバンドは経編地によりシンカーの支持端とホールドダウンエッジに押し付けられる。よって、ノックオーバーバンドは、取り外し可能な留め具によりシンカーに十分に確実に連結させることができる。
【0017】
ノックオーバーバンドは、幅方向においてその延長にわたって実質的に一定であることが可能な実質的に長方形の断面を有することができる。このようなバンドは、安価に調達することが可能であり、シンカー配列の幅方向の延在全域にわたって再現性よく取り付けることができる。シンカーの幅方向は、シンカー配列の幅方向に相当する。シンカー配列の幅方向は、経編機で経編地を製造することが可能な幅と略同じである。経編機は、通常、1.28メートルから7メートルの間、典型的には数メートル、例えば約4メートルの幅である。ノックオーバーバンドは、機械幅全体を中継することができる。また、ノックオーバーバンドは、幅方向へわたる複数の部分から構成され、その後、幅全体にわたって延びることができる。好ましくは、シンカー配列は、シンカーの複数の部分配列又はシンカーを有するモジュールからなる。ノックオーバーバンドは、焼入れ鋼のような耐摩耗性材料からなり、及び/又は耐摩耗性コーティングを施すことができる。好ましくは、ノックオーバーバンドは、経糸編み編物のブラッシング通過の品質に影響を与えないように、滑らかな表面、好適にはR形状のエッジを有する。
【0018】
ノックオーバーバンドは、複数のシンカーのうち少なくとも一部のノックオーバーエッジに対して高さ方向へ同一平面上に配置されるか、又は後退させることが可能である。このため、引き取り時に、経編地をノックオーバーバンドの上に容易に確実に引き寄せることができる。
【0019】
ノックオーバーバンドは、長手方向において、少なくともサポートエッジと同様の延長部を有することができる。その結果、ノックオーバーバンドの外エッジに沿ってスライドするとき、経編地はサポート面への移行部で引っ掛かることがない。サポートエッジは、ノックオーバーバンドの外周エッジに対して後退する。
【0020】
ノックオーバーバンドは、複数のシンカーの少なくとも一部のシンカーのホールドダウンエッジの少なくとも1つの保持手段と、複数のシンカーの少なくとも一部に対する取り外し可能な固定のため協働することができる。好適には、ノックオーバーバンドは、ノックオーバーエッジに締結することが可能であり、例えば、それに接着剤で結合可能な連結手段を有することができる。連結手段は、ホールドダウンエッジの保持手段に取り外し可能に固定することが可能であり、例えば、クリップで留めることができる。接続手段は、例えば、ノックオーバーバンドに粘着接着することができる。また、連結手段は、ノックオーバーバンドに接着以外の方法で固定することもできる。接続手段は、ノックオーバーバンドと一体化させることもできる。接続手段は、プラスチックプロファイルとすることができる。接続手段は、シンカーのノックオーバーエッジの凹部に挟み込むことができる。凹部は、少なくとも一部に連結手段の断面に対応する断面を有することが可能であり、又は張力下で連結手段の断面を受けることができる。取り外し可能な留め具の機能に関しては、すべての既知の可能性を使用することができる。
【0021】
連結手段は、その前端部におけるシンカー間の幅方向の距離を長手方向へ調整する少なくとも1つのスペーサを有することができる。また、シンカーの配列は、連結手段により安定させることができる。スペーサは、連結手段の規則的に発生する高さとすることができる。よって、シンカー配列の均一性を確保することが可能であり、この目的を果たすホルダーは不要である。しかし、シンカーの前端部の距離の調節が、ホルダを介して公知のように達成されると有利である。このようなホルダーは、公知のように鋳造することができる。そして、ホルダーは、シンカーの穴又はシンカーの受入突起を通過させることができる。
【0022】
ユニバーサル経編地を製造するための本発明による経編機は、少なくとも以下の特徴を有する。
・少なくとも1つのシンカー配列
・シンカー配列のノックオーバーエッジ又はノックオーバーバンド部でのノックオーバーによりステッチが形成されるステッチ形成領域、及び
・ステッチ形成領域から経編地を引き取るための編物引き取り手段
この経編機は、少なくとも1つの第1の既定の調整手段において経編地を実質的に水平に前方に引き取ることが可能であり、少なくとも1つの第2の既定の調整手段において経編地を実質的に垂直に下方へ引き取ることができるように、編物引き取り手段がステッチ形成領域に対して調整可能に構成されることを特徴とする。トリコット機では、経編地を実質的に前方へ引き取る。ラッシェル機では、ワープ編地を垂直下方へ引き取る。ステッチ形成領域は、経編機の全幅にわたって狭い帯状に延び、経編機の垂直方向及び経編機の前方又は後方への水平方向へは極めて限られた範囲にしか延びない。編機が中央トランスミッション(クランクケース)を介して駆動される既知の経編機では、ステッチ形成は狭く規定された空間においてのみ可能である。これは、中央変速機により既定の動作シーケンスにより定められる。
【0023】
シンカー配列の構成及び編物引き取り手段の調整の可能性の結果として、経編機は、そうでなければトリコット機及びラッシェル機を設備しなければならない経編地を製造するため汎用的に使用することができる。編物引き取り手段の調整又は変換後、全く異なる経編地を、編機を交換することなく生産することができる。
【0024】
経糸編み機の常として、シンカー配列は、円弧状経路に沿って移動させることができる。円弧状経路は、経糸編み機の水平方向前方を含むことができる。前方とは、経編機が通常操作される方向であり、トリコット機編物が引き取られる方向である。シンカー配列のノックアウトエッジ、すなわちシンカーの長手方向は、ステッチ形成中に少なくとも一時的に経編機の水平方向と平行に配置することができる。好ましくは、少なくともステッチをノックオーバー後の時点で、ノックオーバーエッジは、水平方向と平行でない場合、前方に向かって最大10°傾斜する。シンカー配列もまた、ステッチ形成中にいかなる動作も阻止する。針配置は、経編機で通常行われるように、ステッチ形成中に円弧状経路をたどることができる。円弧状の経路は、経編機の垂直方向を含むことができる。細長い針シャンクは、ステッチ形成中、少なくとも一時的に垂直方向と略平行に整列させることができる。針は、垂直方向から最大10°傾斜させることが可能であり、その後、好ましくは、そのフックと共に後方に傾斜させる。針は、好ましくは、シンカー配列のノックオーバーバンドの外エッジよりも垂直方向へ対して大きく傾斜していない。
【0025】
ステッチ形成領域に最も近い位置に配置される編物引き取り手段の少なくとも1つの第1ローラは、駆動可能かつ回転方向が可逆であるように構成することができる。よって、引き取り角度を最適な方法で調整することが可能であり、ステッチ形成領域のアクセス性を維持することができる。
【0026】
第1ローラに追従する編物引き取り手段の少なくとも1つの第2ローラは、第1ローラの下での編物引き取り手段としての第1の既定の調整手段と、第1ローラの上での編物引き取り手段としての第2の既定の調整手段とにおいて、処置可能に構成することができる。よって、編物引き取り手段の調整又は変換は、迅速に実施することができる。編物引き取り力を確実に受け入れるため必要なラップアラウンドは、両方の調整手段において十分に存在する。
【0027】
通常、経編機では、複数の編機がバーにより搬送され、機械幅方向へ延びるレバー軸を有するバーキャリアを介して駆動される。レバー軸は、大抵の場合、機械幅方向へ相互にオフセットして配置された複数の中央壁からなる機械フレームに取り付けられる。使用される編物ツールは、通常、フック針、編糸ガイド要素、例えばガイド針又はガイドチューブ、スライダ及び編物シンカー、例えばノックオーバー又はホールドダウンシンカー等を含む。編物ツールは、通常、バーにより搬送され、このバーは、経編機において、それぞれ1つのレバー軸により、動作中にレバー軸の横断面、すなわち機械高さ方向及び機械奥行き方向へ延びる平面において相互に独立して揺動運動するように駆動される。編糸ガイド要素を搬送するバーはガイドバーと称され、さらに、その揺動運動に連動して機械幅方向へ振動変位運動を行うように取り付けられ、駆動される。フック針により占有される1つのバー、ニッティングシンカーにより占有される少なくとも1つのバー、及び編糸ガイド要素により占有される少なくとも1つの編糸ガイドバーは、それぞれ、経編編物の編物層を製造するため相互に機能する関係にある。経糸編物及び経糸編機の種類に応じて、追加のバー及び編物ツールが機能的に接続可能である。経編機の既知の設計は、製造された経編地が編物引き取りにより略水平方向前方に向かって引き取られるトリコット機と、製造された経編地が編物引き取りにより機械から垂直方向略下方に引き取られるラッシェル機とである。この場合、経編地には引き取り力が作用し、生産される経編地の特性に影響を与える。
【0028】
多様な組成を有する経編編物、すなわち、例えば、編糸材料の異なる組成、ステッチ当たりの糸の異なる数、異なる編物構造及び/又は編物構造の異なる組成からなる経編編物の製造は、異なる数のガイドバー又は異なる経編機、例えば、トリコット機の代わりにラッシェル機を用いることが必要となり得る。
【0029】
従来、トリコット機で、4本のガイドバーを必要とする4本バー経編地と、4本以下のガイドバーを必要とする経編地の両方を異なるバッチで製造することが知られている。しかし、可能な限り速く、効率的で、欠陥のないステッチ形成を保証するため、フック針に対する編糸ガイド要素の最適な揺動運動及びフック針の最適な揺動運動は、ガイドバーの数により変化する。フック針の回動運動は、フック針が編物プロセス中に略垂直な上下運動をするように設計される。よって、例えば、4本のガイドバーを有する経編機では、編糸ガイド要素の揺動運動とフック針の揺動運動の両方が、2本のガイドバーを有する経編機よりも長くなる。現在、2本バーの経編物を4本のガイドバーを有する経編機で製造する場合、編糸ガイド要素及びフック針は、2本のガイドバーだけを有する経編機に比べて、その揺動運動において長い距離をカバーしなければならず、その結果、編物速度が遅くなる。また、使用されるガイドバーの数に編成速度を最適に適合するように、揺動運動の空間プロファイルの適合が必要となり得る。よって、製造のため異なる数のガイドバーが必要とされる経編編物は、これまで通常、異なる経編機で最適な編速度で製造されてきた。さらに、その構成の結果として、主にその編組織と編組織との組み合わせの結果として、ラッシェル機でのみ製造可能であるか、トリコット機でのみ製造可能である経編編物が存在する。例えば、フリンジの比率が高い経編地、すなわち、1本の糸が数列のステッチで同じフック針に次々と挿入され、よって隣接するステッチウェールとの接続がない編組織を有する経編地は、トリコット機では製造できず、ラッシェル機を使用する必要がある。
【0030】
特に有利なのは、1台の経編機で異なる組成の経編地のバッチを連続的に製造することを可能にする経編機である。この目的のため、少なくとも1つのガイドバーが駆動可能なレバー軸と、それぞれ少なくとも1つのさらなるバーが駆動可能なレバー軸との相対位置は、経編機の機械高さ方向及び/又は機械奥行方向へ調節可能である。この相対位置は、機械高さ方向及び/又は機械奥行方向へ変化させることが可能であり、製造される編物ウェブの組成を変化させることができる。
【0031】
ガイドバーの数が増加したとき、フック針の編み動作に対する編糸ガイド要素の揺動動作のプロファイルを適合させることができる。例えば、4本のガイドバーを有する機械では、編糸ガイド要素及びフック針の揺動運動をガイドバーの数に最適に一致させることができる。例えば、2本のガイドバーを有する経編機では、フック針はより短い揺動運動が可能で、編上げ速度を向上させることができる。ガイドバーのレバー軸の機械高さ方向及び/又は機械奥行き方向の相対位置を調整することにより、編糸ガイド要素の揺動運動をフック針の変化した揺動運動に適合させることができる。さらに、例えば、経編機のトリコット機からラッシェル機への改造時に、トリコット機におけるフック針の高さでの編糸ガイド要素の揺動運動が、その大きさに対して機械高さ方向及び機械奥行き方向の方向成分が比較的大きいのに対し、フック針の高さでの編糸ガイド要素の揺動運動が機械奥行き方向へ移動するように、ガイドバーを駆動するレバー軸の相対位置を調整することができる。
【0032】
本発明は、すべてのタイプの経編機に適用することができる。しかし、本発明は、単一の編物層の製造にのみ適する経編機(例えば、ダブルセクションラッシェル機や、2つの編物層を有するスペーサ編物の製造に適した経編機ではない)に適用することが有利である。通常、このような機械には、フック針を搭載したバーに接続されるため、トルクを伝達する1つのレバー軸しか備えていない。フック針を担持するバーは、以下、針バーと称する。このような機械の異なるバーは、1つの編物層の生産において協働することが有利である。一方、ダブルセクションラッシェル機では、2つの編物層と、この2つの編物層でスペーサ編物が製造される。経編機で機械幅方向へ隣接して同時に生産される複数の編物ウェブは、編み工程に関するすべてのフック針が1つのレバー軸により同じ回転軸を中心に駆動することで1つの編物層に相当する。
【0033】
少なくとも1つのガイドバーを駆動するレバー軸の揺動運動の角度範囲が調節可能である場合、さらなる利点が得られる。主に、レバー軸の回転軸を中心とする固定ピボット半径を有する外接円上のピボット移動の位置及び長さは、ピボット移動の角度範囲に適合させることが可能である。よって、ガイドバーの数が変化した場合、揺動運動の角度範囲を適合させることが特に有利である。また、トリコット機械編物からラッシェル機械編物への変更時に、あるいは逆に、フック針の高さにおけるラッシェル機械編物の回動運動が機械奥行き方向へ大きく移動するのに対し、フック針の高さにおけるトリコット機械編物の回動運動が機械奥行き方向と高さ方向へ同等の方向成分を有するようにして回動運動の角度範囲を適合させることも有利である。このような調整は、1つ又は複数の歯車を連結する等の伝達手段を用いて行うことができる。これは、この「ガイドシャフト」に個別の単一駆動手段が割り当てられておらず、必要なトルクが、例えば、中央駆動手段又は少なくとも2つのシャフト用の駆動手段から伝達される場合にも適用される。他のバーに割り当てられたレバー軸は、好適には、その揺動運動の角度範囲において変化することもできる。本発明のすべての例示的な実施形態に関連して、少なくとも2つの駆動手段が提供されると有利である。これらの駆動手段のうちの1つが、少なくとも1つのガイドバーに割り当てることで、さらなる利点がある。他方の駆動手段は、好適には、残りのバーを駆動することができる。しかし、残りのバーには、複数の駆動手段、例えば、各バーに1つの駆動手段を割り当てることもできる。後述するように、複数のレバー軸駆動手段を制御する有利な態様は、駆動手段を制御する1つ又は複数の制御手段を設けることによる。
【0034】
特に有利なのは、レバー軸を担持し、機械上部と機械下部とからなる機械フレームを備えた経編機であり、機械上部と機械下部とは、機械高さ方向及び/又は機械奥行き方向へ相互に相対的に調節可能である。機械上部は、少なくともガイドバーのレバー軸と、これにより駆動可能な部品とから構成されると有利である。例えば、ガイドバーのレバー軸は、機械上部により回転軸を中心に回転可能に受けられる。有利な実施形態は、ガイドバーのレバー軸が、取り付け具により回転軸を中心に回転可能に受けられる場合であり、機械上部は、少なくとも2つのベアリングを有する取り付け具を受ける。
【0035】
本発明の有利な実施形態は、機械上部が機械幅方向へ相互に平行にオフセットした少なくとも2つの上部中央壁からなり、機械下部が機械幅方向へ相互に平行にオフセットした少なくとも2つの下部中央壁からなるワープ編機である。上部中央壁と下部中央壁がベアリングを有し、異なる中央壁の少なくとも2つのベアリングが、少なくとも1つのレバー軸のための少なくとも1つの取付部を形成すると有利である。さらに、それぞれ1つの上部中央壁が、それぞれ1つの下部中央壁に、中央壁の相互に対する相対位置が調節可能であるように接続されていると有利である。例えば、それぞれ1つの上部中央壁は、それぞれ1つの下部中央壁にねじ接続により連結することができ、ねじ接続は、少なくとも1つのねじ及び/又は嵌合ねじ、少なくとも1つの貫通穴又は長孔及び少なくとも1つのねじ穴から構成される。嵌合ねじの代わりに、少なくとも1つの嵌合ねじに機能的に接続されるねじによるねじ接続が有利である。このような可変の機械は、複数の変種の製造を不要にし、また、異なるタイプの経編機を製造できるようにする場合、より少ない部品で済むので、このような経編機の製造業者にとって製造コスト及び維持コストに関する点で有利である。
【0036】
機械フレームの部品、例えば機械上部と機械下部との間の相対位置を調整するための手段を備えている経編機が有利である。相対位置を調整するための特に有利な手段は、機械フレームの部品間に配置されるスペーサプレートである。機械高さ方向へ延びるスペーサプレートの厚さは、機械高さ方向における機械フレームの部品間の相対位置を決定する。また、機枠の部品間に少なくとも2つのスペーサプレートを設け、少なくとも2つのスペーサプレートの厚さの合計で機枠の部品間の相対位置を調整することが有利である。よって、少なくとも2つのスペーサプレートを組み合わせることにより、別の厚さのスペーサプレートを必要とせずに、機械上部と機械下部との間の距離をより大きく調整することが可能である。機械上部と機械下部との間の相対位置を調整するさらに有利な手段は、少なくとも1つのねじと、長手方向軸が機械奥行き方向へ延びる少なくとも1つの長孔と、少なくとも1つのねじ穴とからなるねじ接続部である。例えば、機械下部が少なくとも1つのねじ穴を構成し、機械上部及びスペーサプレートが、それぞれねじ穴ごとに少なくとも1つの長孔を構成することができる。長孔の長手軸方向、すなわち機械奥行き方向へ機械上部を変位させることにより、機械奥行方向における機械下部に対する機械上部の相対位置を調整することが可能である。機械上部及び/又は機械下部が、機械高さ方向及び/又は機械奥行方向のスケーリングからなり、相対位置の正確かつ再現可能な調節が可能であると特に有利である。機械上部と機械下部との間の相対位置を調整するためのさらに有利な手段はレール接続である。レール接続はポジティブであることが有利である。特に有利なのは、機械奥行き方向及び/又は機械高さ方向へ調整可能で、機械奥行き方向へ遊びのないレール接続である。また、機械上部と機械下部との間の相対位置をロックする手段からなるレール接続も有利である。また、機械上部を機械高さ方向及び/又は機械奥行き方向への調節において駆動する少なくとも1つの電気モータを備える経編機も有利である。
【0037】
本発明の有利な実施形態は、機械上部が、少なくとも1つのガイドバーを機械幅方向へ振動変位運動するように駆動する少なくとも1つの変位駆動手段を含む経編機である。ここでの利点は、機械上部と機械下部との間の相対位置の調整により、少なくとも1つのガイドバーに対する少なくとも1つの変位駆動の位置が変化しないので、少なくとも1つの変位駆動と少なくとも1つのガイドバーとの間の接続を調整する必要がないことである。これにより、機械上部と機械下部間の相対位置の調整のためのセットアップ時間を短縮することができる。
【0038】
レバー軸はそれぞれ、各々の回動運動のため、各々1つの回動駆動手段が割り当てられていると有利であり、回動駆動手段は、好ましくは電気機械からなる。揺動駆動手段は、レバー軸をその回転軸を中心に回転運動させる。各レバー軸に独自の揺動駆動手段を割り当てると、すべてのレバー軸を中央の駆動モータに接続する複雑な中央変速機を省略することが可能であり、経編機の製造コスト、維持コスト、及び煩雑さを低減することができる。
【0039】
少なくとも1つの揺動駆動手段がリニアステップモータにより構成されると、さらに有利である。スライダクランク機構がリニアステップモータ出力軸をレバー軸の1つに接続し、スライダクランク機構が駆動レバーと、レバー軸に偏心して接続された結合とにより構成されていると特に有利である。スライダクランク機構は、直線的な駆動運動をレバー軸の回転軸を中心とした回転運動に変換する。スライダクランク機構の大きな利点は、移動方向を変更する場合に遊びが殆どないため、移動成分を損なうことなく駆動運動を伝達できることである。
【0040】
また、少なくとも1つの揺動駆動手段がロータリステップモータで構成されると有利である。特に、無段変速機が、ロータリステップモータ出力軸をレバー軸の1つに接続されると有利である。例えば、レバー軸は、ロータリーステップモータから歯付ベルトにより駆動することが可能であり、歯付ベルトプーリが、歯付ベルトに噛み合うように接続されたロータリーステップモータ出力シャフト及びレバー軸に配置される。このように噛み合い接続されるため、駆動運動は滑ることなく伝達されるので、運動成分を損なうこともない。
【0041】
本発明の有利な実施形態は、機械上部が少なくとも1つのガイドバーのレバー軸のための少なくとも1つの揺動駆動手段を含む経編機である。これにより、少なくとも1つのガイドバーのレバー軸に対する少なくとも1つの揺動駆動手段の位置が変化しないので、揺動駆動手段と少なくとも1つのガイドバーのレバー軸との間の接続を適合させることなく、機械上部と機械下部との間の相対位置を調整することができる。このようにして、機械上部と機械下部との間の相対位置の調整のためのセットアップ時間を短縮することができる。例えば、揺動駆動手段が歯付ベルトによりレバー軸に接続されている場合、機械上部と機械下部との間の相対位置の調整中、揺動駆動手段が機械上部に受け入れられていないとき、歯付ベルトを適合した長さの歯付ベルトに交換しなければならない。
【0042】
さらに有利なのは、複数の揺動駆動手段が電気機械からなる経編機である。これらの電気機械は、好適には、電子制御手段により制御可能であり得る。電子制御手段は、信号を生成し増幅するための手段、記憶手段及びパワーエレクトロニクスから構成することができる。通常、制御信号を供給する機械コンピュータで構成する必要がある。通常の電気機械の制御には周波数変換器、ステップモータの制御には増幅回路(モータドライバ)等、適切なパワーエレクトロニクスを制御する。最後に電気機械に、適切な動作プロファイルに適した強さ、電圧、周波数、信号形状の電流を供給する。このようにして、電子制御手段は電気機械の駆動動作を制御し、経編機は電気機械の駆動動作を編機の編成動作に変換し、その結果、編機は電気機械により駆動される。
【0043】
既定の運動プロファイルにより、電気機械により駆動される編物を駆動するように、電気機械を制御する電子制御手段が有利である。プログラム可能な動作プロファイルは特に有利である。動作プロファイルをグループ化することがさらに有利であり、各グループは、経編機の各編機のためのそれぞれ1つの動作プロファイルからなり、動作プロファイルは、編機が同じ時間区間で適合する編み動作を実行するように相互に一致させる。このように動作プロファイルを指定することにより、編み機の編み動作を具体的に制御することができる。例えば、機械上部と機械下部との相対位置の調整中、編糸ガイド要素の編成動作を他の編成ツールの相対位置及び編成動作に再調整することが可能であり、経編機は、異なる多様な組成を有する経編編物のバッチの製造のため、より可変的に調整することができる。
【0044】
異なる多様な組成を有する経編編物のバッチの連続的な製造のため、少なくとも2つの異なる揺動駆動手段が使用され、そのうち第1の揺動駆動手段が少なくともガイドバーを駆動し、第2の揺動駆動手段が少なくとも1つの他のバーを駆動し、これら2つの揺動駆動手段の動きが、ガイドバーの編糸ガイド要素及び他のバーの針が相互に一致した編み動作を実行する制御方法が有利である。少なくとも2つの異なる揺動駆動手段を使用することにより、異なるバーの揺動運動を相互に独立して制御することが可能であり、その結果、バーの編成運動を相互に一致させることができる。経編編物のバッチが変更された結果、ガイドバーを駆動するレバー軸の相対位置を変更する必要がある場合、編機の編成動作をより可変的に相互に一致させることができる。
【0045】
少なくとも2つの揺動駆動手段の制御は、それぞれのバッチの構成に個別に適合する記憶された動作プロファイルに基づいて達成される場合、特に有利である。この場合、それぞれ1つの動作プロファイルは、編物ツールの特定の編物の動作を対応付ける。経編機の設定時に入力変数として動作プロファイルを予め定義しておき、製造される経編編物に応じて選択しプログラムすることが有利である。
【0046】
編み工具の動作プロファイルは、編み工具が同期的に協働して所望の経編地を製造するように、製造される経編地の選択された組成に応じて相互に一致させる必要がある。特定の組成を有する経編地を製造するため、編機ごとに正確に1つの動作プロファイルからなる適合する動作プロファイルのグループが存在する。少なくとも2つの互換性のある動作プロファイルのグループを記憶手段に保存し、製造される経糸編物の選択された組成に応じてこれらを使用することが有利である。よって、経編機を設定する際に、適切な動作プロファイルを選択することが可能であり、再プログラミングの必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明に係るシンカーの前端部を幅方向から見た状態を示すシンボル図である。
【
図2】例えば、ノックオーバーバンドを有するシンカー配列の2つのシンカーを斜め上方及び前方から見た状態を模式的に示す図である。
【
図3】連結手段を有するノックオーバーバンドの断面を模式的に示す斜視図である。
【
図4】経編機の関連部品を、
編物引き取りを水平方向へ調整した状態で幅方向へ模式的に示す図である。
【
図5】経編機の関連部品を示す図であり、幅方向において、
編物引き取りを上下方向へ調整した状態を模式的に示す図である。
【
図6】機上部101と機械下部102とからなる経編機126を示す図である。
【
図7】
図6の経編機126を別の角度から見た図であって、機械ベッド114、複数の上部中央壁112及び下部中央壁113、並びに揺動駆動手段115及び変位駆動手段116を示す図である。
【
図8】機械上部101と機械下部102との間の2つのスペーサプレート110の領域における経糸編み機126を通るA-A断面を示す図である。
【
図9】リニアステップモータ118、駆動レバー120及び関節121からなるレバー軸103,104,105,106の揺動駆動手段115を示す図である。
【
図10】ロータリステップモータ122と無段変速機124とからなるレバー軸103,104,105,106の揺動駆動手段115を示す図である。
【
図11】経編機126がトリコットマシンの原理により動作するときの、フック針127及び複数の編糸ガイド要素109に対するレバー軸103の位置を模式的に示す図である。
【
図12】ラッシェル機の原理により動作するときの経編機126のフック針127と複数の編糸ガイド要素109に対するレバー軸103の位置を模式的に示す図である。
【
図13】
図4と
図11とを組み合わせた図であって、トリコットマシンの原理による構成における前述要素の配置を示す図である。
【
図14】
図5と
図12とを組み合わせた図であって、ラッシェル機の原理による構成における前述要素の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明によるシンカー1の前端部を幅方向B視線から見た状態を示す図であり、シンカー1は、正面(
図1では左)に向かって直線状に傾斜するように構成されたノックオーバーエッジ2を有する。ホールドダウンエッジ3は、高さ方向Hにおいて、ノックオーバーエッジ2と間隔をあけて対向する。スロートエッジ4は、ノックオーバーエッジ2とホールドダウンエッジ3とを接続し、両エッジを後方(
図1における右方向)に向かって区画する。ノックオーバーエッジは、ノックオーバーエッジ移行点5により前方に区画され、この移行点は、略高さ方向Hに延びる急勾配のホールドダウンエッジ6に隣接する。ホールドダウンエッジ6は、サポートエッジ8に隣接するサポートエッジ移行点7で下向きに終わる。サポートエッジ8は、ノックオーバーエッジ2と略平行に、かつホールドダウンエッジ6に対して直角に延びる。シンカー1は、例えばバーなどの更なる機械要素に接続するため使用される後部(
図1における右側)を除いて示される。シンカー1の更なる機械要素への接続は、従来技術を利用して任意に構成することができる。
【0049】
図2は、上方及び前方から斜めの視線で見たノックオーバーバンド11を有するシンカー配列10の2つのシンカー1を例示的に示す図である。シンカー1は、大部分において、
図1のシンカー1と同一に設計される。ノックオーバーバンド11は、サポートエッジ8上に設けられ、ホールドダウンエッジ6に突き当たる。よって、ホールドダウンエッジ6及びサポートエッジ8は、この図においてノックオーバーバンド11により隠れる。ノックオーバーバンド11は、シンカー1間の幅方向Bの距離を中継し、経編地は、必要に応じてノックオーバーバンド11の上エッジとその外側面12を越えて高さ方向H下方に引き取ることができる。しかし、経編地は、前方に向かってノックオーバーエッジ2に平行な長手方向Lに平行に引き取ることも可能である。
図1と同様に、シンカー1の前端部のみを示す。
図2では、ノックオーバーバンド11及びシンカー配列部10の幅方向Bへ延びる一部のみを示す。
【0050】
図3は、連結手段13を有するノックオーバーバンド11の断面を示す斜視図である。連結手段13の立面であるスペーサ14は、シンカー配列のシンカー間に挿入可能であり、よって、その前端におけるその搬送距離を正確に調整し、安定させることができる。
図2に示されるように、2つのシンカー1は、スペーサ14により間隔をあけて配置することができる。
【0051】
図4は、本発明に係る経編機の関連する構成要素を、ステッチ形成領域を起点として経編機の正面に向かって水平に向けられた方向Hzに
編物引き取り手段15を調整した状態を幅方向Bの視線で見た図を示す。
図4は、シンカー配列10を、当技術分野における針及びスライダからなるスライダ針配列と共に示す。一本の実線で示された経糸編地は、ノックオーバーエッジ2と略平行に引き取られる。経糸は、通常のように実質的に上方から高さ方向へ供給され、これも実線で示される。
編物引き取り手段15は、第1の既定の調整手段16で示される。
編物引き取り手段15の第1ローラ18は、この調整において反時計回りに回転する。
編物引き取り手段15の第2ローラ19又はその軸は、第1ローラ18又は第1ローラ18の軸の下方に垂直方向Vに配置される。
【0052】
図5は、経編機の同じ関連する構成要素を幅方向Bの視線で見た図を示すが、
編物引き取り手段15を垂直方向Vで調整したものであり、
編物引き取り手段15は第2の既定の調整手段17で示される。
編物引き取り手段15の第1ローラ18は、この調整において時計回りに回転する。
編物引き取り手段15の第2ローラ19は、第1ローラ18の上方で垂直方向Vに配置される。経編地は、ノックオーバーバンド11を介して引き取られる。なお、ローラ18,19やその直径は、編機と同じ縮尺で図示していない。
【0053】
図6は、機枠125が機械上部101と機械下部102とに2分割された経編機126の模式図であり、機械下部102は機台114上に配置される。機械上部101は、この機械上部101に回転可能に取り付けられてバーキャリア107に接続されるレバー軸103を有する。バーキャリア107には、ガイドバー108が機械幅方向zへ変位可能に取り付けられる。ここでは簡略化のため、取り付け状態は示されていない。さらに経編機126は、3つのレバー軸104,105,106を有し、これらはすべて機械下部102に回転可能に取り付けられ、バーキャリア及びバーを介して編物ツールに編物動作を協働させる。このバーキャリア及び編みツールは図示されていない。機械上部101と機械下部102は、ねじ111により連結され、この目的のため機械上部101は、ねじ111ごとに、長手軸が機械奥行き方向xへ延びる長孔からなり、機械下部102は、ねじ111に相対するねじ穴が設けられる。しかし、機械上部101を機械下部102に接続するための他の手段、例えばロック可能なレールによる接続も有利に実施可能である。この例示的な実施形態では、機械上部101は、長孔の長さに対応する量だけ、機械下部102に対して機械奥行き方向xへ変位可能である。機械上部101と機械下部102との間には、機械高さ方向yにおける機械上部101と機械下部102との相対位置を調整可能なスペーサ板110が配置される。
【0054】
図7は、
図6の経編機126を機械高さ方向y回りに90度回転させた図である。機械下部102は、機械幅方向zへ相互にオフセットされた機械ベッド114に接続される3つの下部中央壁113を含む。機械上部101は、3つの上部中央壁112と、ガイドバー108が駆動可能なレバー軸103と、レバー軸103の揺動駆動手段115と、ガイドバー108の変位駆動手段116とから構成される。3つのスペーサプレート110と機械上部101は、ネジ111により機械下部102に連結される。揺動駆動手段115は、ガイドバー108が駆動可能なレバー軸103を駆動し、ガイドバー108に加え編糸ガイド要素109においてもレバー軸103の回転軸を中心とした揺動運動を実行させる。同時に、変位駆動手段116は、ガイドバー108及び編糸ガイド要素109を駆動し、機幅方向zへ揺動変位運動させる。揺動運動と変位運動とが協働することにより、編糸ガイド要素109は3次元的な編目運動を行う。
【0055】
図8は、
図6における断面A-Aを示す。3つのスペーサプレート110は断面で示される。スペーサプレート110の各々には、それぞれ1つのねじ111が挿通する2つの長孔117が設けられる。スペーサプレート110の長孔117は、機械上部101と機械下部102との機械奥行き方向xの相対位置の調節を可能にする。
【0056】
図9は、リニアステップモータ118、リニアステップモータ出力軸119、駆動レバー120、レバー軸103,104,105,106のいずれかに偏心して取り付けられる関節部121を有するレバー軸103,104,105,106の揺動駆動手段115を示す図である。リニアステップモータ出力軸119の直線駆動運動は、駆動レバー120及びレバー軸103,104,105,106に偏心して取り付けられた関節部121によりレバー軸103,104,105,106の回転運動に変換される。
【0057】
図10は、リニアステップモータ122とロータリステップモータ出力軸123と無段変速機124とからなるレバー軸103,104,105,106の揺動駆動手段115を示す。好ましくは、無段変速機124は、ロータリステップモータ出力軸123とレバー軸103,104,105,106の歯付ベルトプーリに噛み合わされる歯付ベルトとからなり、ロータリステップモータ出力軸123の速度とトルクが歯付ベルトプーリの歯数に応じてレバー軸103,104,105,106の速度及びトルクにロスなく伝達される。
【0058】
例示的な実施形態の4つのレバー軸103,104,105,106の全てに、共通の電子制御手段を介して制御可能な揺動駆動手段115が割り当てられる。電子制御手段は、編物ツールのための運動プロファイルが格納され、編物ツールの編物運動を既定する記憶手段からなる。経編編物20を製造するため、全ての編みツールが互換性のある編み動作を実行する必要がある。よって、記憶された運動プロファイルは、それぞれ1つの編みツールについて、グループの他の運動プロファイルに一致する1つの運動プロファイルからなるグループに割り当てられる。電子制御手段は、編物ツールが適合する編物動作を実行するように、選択された動作プロファイルのグループにより揺動駆動手段115を制御することができる。異なる多様な組成を有する経編編物20の場合、経編編物20の組成に対する編機の編み動作の適合を考慮した対応する異なる動作プロファイルのグループを記憶することができる。よって、経編地20の組成が変更された場合、正しい動作プロファイルのグループを選択することにより、正しい編み動作を設定することができる。
【0059】
図11は、経編機126がトリコット機の原理により動作するときの、編糸ガイド要素109及びフック針127に対するレバー軸103の空間配置の模式図である。図は縮尺通りではなく、特にピボット半径133は図の他の要素に比べて小さく示される。バーキャリア107及びガイドバー108は、
図11には示されていないが、経編機126では、編糸ガイド要素109をレバー軸103に接続する。編糸ガイド要素109は、レバー軸103を中心とするピボット半径133を有する外接円上で揺動運動128を実行し、この揺動運動は、機械奥行き方向xと機械高さ方向yの両方に方向成分を有する。この揺動運動128の結果、編糸130はフック針127に掛けられ、編糸は編糸ガイド要素109の編糸ガイド開口134を通り、よって揺動運動128に追従して延びる。揺動運動128の所望のプロファイルを達成するため、レバー軸103とフック針127との間には、機械奥行き方向xの奥行きオフセット131と機械高さ方向yの高さオフセット132とを有し、これらは全ての編機の編み動作に一致させることができる。
【0060】
図12は、経編機126がラッシェル原理により動作するときの、編糸ガイド要素109及びフック針127に対するレバー軸103の空間配置の模式図である。この図は、
図11と略同じ要素を示す。しかし、要素の相互に対する配置は、ラッシェル原理の結果として異なる。編糸ガイド要素109の揺動運動129は、トリコット機の原理により動作する経編機の揺動運動128と比較して、機械高さ方向yへ実質的に小さい方向成分を有する。ラッシェル原理では、編糸ガイド要素109の揺動運動129は、機械奥行き方向yへ主に延びる。このプロファイルを達成するため、レバー軸103とフック針127との間の奥行きオフセット131は、トリコット機械の原理により動作する経編機に比べて実質的に小さく、又はレバー軸103及びフック針127は、両者の間に奥行きオフセット131が存在しないように他の上に1つずつ配置される。ピボット半径133が変化しない場合、ラッシェル原理では、フック針127の高さでの編糸ガイド要素129のピボット運動が機械奥行方向xへ主に延びるように、高さオフセット132はトリコット機械の原理により動作する経編機よりも大きくする必要がある。この目的のため、ラッシェル原理では高さオフセット132及びピボット半径133は略同じ大きさである。
【0061】
ガイドバーを駆動するレバー軸103が他のレバー軸104,105,106に対して、即ちこれらのレバー軸104,105,106の1つの編具127に対して、機械奥行方向x及び機械高さ方向yへ相対位置を調整可能な前述した経編機126は、当該相対位置をラッシェル原理及びトリコット機械の原理により、共に正しく調整することにより操作することができる。これは特に、加えて経編機126の編物引き取り手段21及び編物シンカー1がこれに適する場合に適用される。
【0062】
図13は、本発明による経編機126を、トリコットマシン
編物としての経編
編物20を製造するために使用される構成を示す模式図である。
編物引き取り手段15は、第1の既定の調整手段16に位置し、製造された経編
編物20は、水平方向Hzに大きく引き取られる。レバー軸103とフック針127との間の相対的オフセット131,132は、編糸ガイド要素109がトリコット機の揺動運動128を実行するように、すなわちフック針127の高さで水平方向Hz及び垂直方向Vの同等の方向成分で大きく動くように調整され、製造されたステッチはフック針127によるノックオーバーエッジ2との接触によりシンカー配列10においてノックオーバーされる。
【0063】
図14は、ラッシェル機械
編物としての経編
編物20を製造するため使用される構成の経編機の模式図である。
編物引き取り手段15は、第2の既定の調整17に位置し、そこでは、製造された経編
編物20が垂直方向Vに大きく引き取られ、レバー軸とフック針の間の相対オフセット131,132は、編糸ガイド要素109がラッシェル機の揺動運動129を実行するように、すなわちフック針127の高さで水平方向Hzに大きく動くように調整される。生成されたステッチは、フック針127によるノックオーバーバンド11及びノックオーバーエッジ2との接触により、シンカー配列10においてノックオーバーされる。これは、
図13における構成との決定的な相違点である。
【符号の説明】
【0064】
1 シンカー、2 ノックオーバーエッジ、3 ホールドエッジ、4 スロートエッジ、5 ノックオーバーエッジ移行点、6 ホールドダウンエッジ、7 サポートエッジ移行点、8 サポートエッジ、9 保持手段、10 シンカー配列、11 ノックオーバーバンド、12 ノックオーバーバンド(11)の外面、13 連結手段、14 スペーサ要素、15 編物引き取り手段、16 編物引き取り手段の第1の既定の調整手段、17 編物引き取り手段の第2の既定の調整手段、18 編物引き取り手段の第1ローラ、19 編物引き取り手段の第2ローラ、20 ワープ編物、21 編物引き取り方向、22 針バー、23 スライダ、B 幅方向、H 高さ方向、L 長手方向、Hz 水平方向、V 垂直方向、101 機械上部、102 機械下部、103 ガイドバーレバー軸、104 スライダバーのレバー軸、105 針棒のレバー軸、106 編物用シンカーバーのレバー軸、107 バーキャリア、108 ガイドバー、109 編糸ガイド要素、110 スペーサプレート、111 ねじ、112 上部中央壁、113 下部中央壁、114 マシンベッド、115 揺動駆動手段、116 変位駆動手段、117 長孔、118 リニアステップモータ、119 リニアステップモータ出力軸、120 駆動レバー、121 関節部、122 ロータリステップモータ、123 ロータリーステップモータ出力軸、124 無段変速機、125 マシンフレーム、126 ワープ編機、127 フック針、128 トリコット編機の編糸ガイド要素(9)の揺動運動、129 ラッシェル機の編糸ガイド要素(9)の揺動運動、130 編糸,ワープ編糸、131 機械奥行方向(x)におけるレバー軸(3)とフック針(27)との間の相対的なオフセット量、132 機械高さ方向(y)におけるレバー軸(3)とフック針(27)とのオフセット量、133 ピボット半径、134 編糸ガイド開口、x 機械深度方向、y 機械高さ方向、z 機械幅方向