(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】時間計測装置、蛍光寿命計測装置、及び時間計測方法
(51)【国際特許分類】
G04F 10/00 20060101AFI20240730BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G04F10/00 Z
G01N21/64 B
(21)【出願番号】P 2022541120
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 JP2021018264
(87)【国際公開番号】W WO2022030063
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2020133842
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】新倉 史智
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-518952(JP,A)
【文献】特開2016-053516(JP,A)
【文献】特開平02-234051(JP,A)
【文献】特開2011-027621(JP,A)
【文献】米国特許第7893409(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04F 10/00
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出器が現象を検出して出力した検出信号が入力され、前記検出信号に係る時間に応じた計測信号を出力する、第1の時間計測器と、
前記検出器及び前記第1の時間計測器の間に設けられ、前記検出信号を前記第1の時間計測器方向に通過させる第1状態、又は、前記検出信号を前記第1の時間計測器方向に通過させない第2状態とされるゲート部と、
前記ゲート部が前記第2状態とされる時間であるゲートデッドタイムを前記ゲート部に設定する設定部と、
前記第1の時間計測器から出力された前記計測信号に基づいて、前記検出信号に係る時間情報を導出し出力する導出部と、を備え、
前記設定部は、前記検出器において検出される前記現象の繰り返し周期の整数倍の時間であって前記第1の時間計測器自体のデッドタイムよりも長い時間を、前記ゲートデッドタイムとして前記ゲート部に設定する、時間計測装置。
【請求項2】
ディレイ生成回路を更に備え、
前記設定部は、前記繰り返し周期の整数倍のディレイ量を前記ディレイ生成回路に設定し、
前記ディレイ生成回路は、前記第1状態とされた前記ゲート部を通過した前記検出信号の入力を受け、該検出信号について前記設定部により設定された前記ディレイ量だけ遅延させたディレイ信号を前記ゲート部に出力し、
前記ゲート部は、前記第1状態とされて前記検出信号を通過させた後、前記ディレイ信号の入力を受けるまで前記第2状態とされ、前記ディレイ信号の入力を受けた後、新たな前記検出信号が入力されるまで前記第1状態とされる、請求項1記載の時間計測装置。
【請求項3】
前記第1の時間計測器は、前記検出信号に係る時間に応じた前記計測信号をアナログ信号として出力する時間振幅変換器と、前記時間振幅変換器から出力された前記アナログ信号をデジタル信号に変換して出力するコンバータと、を有する、請求項1又は2記載の時間計測装置。
【請求項4】
クロック信号に応じてカウント信号を出力するカウンタを更に備え、
前記第1の時間計測器は、前記検出信号及び前記クロック信号が入力され、前記検出信号及び前記クロック信号間の時間に応じた前記計測信号を出力し、
前記導出部は、前記カウンタから出力された前記カウント信号と前記第1の時間計測器から出力された前記計測信号とに基づいて、前記時間情報を導出し出力する、請求項1~3のいずれか一項記載の時間計測装置。
【請求項5】
計測対象物から発せられる蛍光の寿命を計測する蛍光寿命計測装置であって、
光を生成する光源と、
前記光源からの光が照射された前記計測対象物からの前記蛍光を検出し、前記検出信号を出力する前記検出器と、
前記検出信号に係る時間情報を出力する、請求項1~4のいずれか一項に記載された前記時間計測装置と、
前記時間情報に基づいて前記計測対象物の蛍光寿命を導出する演算部と、を備える、蛍光寿命計測装置。
【請求項6】
前記光源による光の出力を制御するパルス信号を生成する信号生成部を更に備え、
前記信号生成部は、前記パルス信号と同期した、前記蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を、前記設定部に出力する、請求項5記載の蛍光寿命計測装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を前記設定部に出力する、請求項5又は6記載の蛍光寿命計測装置。
【請求項8】
前記光源による光の出力を制御するパルス信号を生成する信号生成部を更に備え、
前記信号生成部は、前記パルス信号に同期した同期信号を出力し、
前記時間計測装置は、前記同期信号に応じた信号を出力する第2の時間計測器を更に備え、
前記導出部は、前記同期信号に応じた信号に基づいて、前記時間情報を導出する、請求項5~7のいずれか一項記載の蛍光寿命計測装置。
【請求項9】
時間計測装置が実行する時間計測方法であって、
検出器が現象を検出して出力する検出信号が時間計測器に入力されない第1デッドタイムを、前記現象の繰り返し周期の整数倍に設定する工程と、
前記時間計測器から出力された前記検出信号に基づいて、前記検出信号に係る時間情報を導出し出力する工程と、を含み、
前記第1デッドタイムは、前記時間計測器時自体の第2デッドタイムよりも長い、時間計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、時間計測装置、蛍光寿命計測装置、及び時間計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光寿命計測等を行う時間相関単一光計数(TCSPC:Time Correlated Single Photon Counting)装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載されたTCSPC装置は、複数のTDC(Time-digital-converter)回路を有している。TDC回路は、時間計測結果をデジタル信号として出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102008004549号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したTDC回路や、時間計測結果をアナログ信号として出力するTAC回路においては、時間が計測されると、計測後、一定の時間は再度の時間計測が行えないデッドタイムとなる。デッドタイムが生じることによって、例えば蛍光等の現象を検出して現象に係る時間計測(例えば蛍光寿命計測)を行う場合において、現象についての時間波形を適切に取得することができないおそれがある。すなわち、デッドタイム中においては時間波形を取得することができないため、取得することができた時間波形を合成しても、現象についての正確な時間波形を取得することとならない場合がある。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、現象に係る時間波形を適切に取得することができる時間計測装置、蛍光寿命計測装置、及び時間計測方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る時間計測装置は、検出器が現象を検出して出力した検出信号が入力され、検出信号に係る時間に応じた計測信号を出力する、第1の時間計測器と、検出器及び第1の時間計測器の間に設けられ、検出信号を第1の時間計測器方向に通過させる第1状態、又は、検出信号を第1の時間計測器方向に通過させない第2状態とされるゲート部と、ゲート部が第2状態とされる時間であるゲートデッドタイムをゲート部に設定する設定部と、第1の時間計測器から出力された計測信号に基づいて、検出信号に係る時間情報を導出し出力する導出部と、を備え、設定部は、検出器において検出される現象の繰り返し周期の整数倍の時間であって第1の時間計測器自体のデッドタイムよりも長い時間を、ゲートデッドタイムとしてゲート部に設定する。
【0007】
本発明の一態様に係る時間計測装置では、検出信号に係る時間に応じた計測信号を出力する第1の時間計測器に検出信号が入力される第1状態と、入力されない第2状態とが切り替えられる。ゲート部は、現象の繰り返し周期の整数倍であって第1の時間計測器自体のデッドタイムよりも長いゲートデッドタイムが設定されており、該ゲートデッドタイムの間において上述した第2状態となる。このような時間計測装置では、ゲート部に、現象の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムが設定されるため、第1の時間計測器から出力された計測信号に基づき導出される時間情報における時間波形が、デッドタイム(非計測状態)の前後において時間的に連続しているのと同等の波形になる。そして、本時間計測装置では、ゲート部に設定されるゲートデッドタイムが第1の時間計測器自体のデッドタイムよりも長いため、第1の時間計測器に検出信号が入力される計測状態であるのに第1の時間計測器自体のデッドタイム中であるということが起こり得ず、上述したゲートデッドタイムの前後における時間波形の連続性を適切に担保することができる。以上のように、本発明の一態様に係る時間計測装置によれば、現象に係る時間波形を適切に(連続的に)取得することができる。
【0008】
時間計測装置は、ディレイ生成回路を更に備え、設定部は、繰り返し周期の整数倍のディレイ量をディレイ生成回路に設定し、ディレイ生成回路は、第1状態とされたゲート部を通過した検出信号の入力を受け、該検出信号について設定部により設定されたディレイ量だけ遅延させたディレイ信号をゲート部に出力し、ゲート部は、第1状態とされて検出信号を通過させた後、ディレイ信号の入力を受けるまで第2状態とされ、ディレイ信号の入力を受けた後、新たな検出信号が入力されるまで第1状態とされてもよい。このような構成によれば、繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを確実にゲート部に設定することができる。
【0009】
第1の時間計測器は、検出信号に係る時間に応じた計測信号をアナログ信号として出力する時間振幅変換器と、時間振幅変換器から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するコンバータと、を有していてもよい。計測信号をアナログ信号として出力する時間振幅変換器及びコンバータが用いられることにより、例えば時間デジタル変換器が用いられる場合と比較して、現象の計測における時間分解能を高めることができる。
【0010】
時間計測装置は、クロック信号に応じてカウント信号を出力するカウンタを更に備え、第1の時間計測器は、検出信号及びクロック信号が入力され、検出信号及びクロック信号間の時間に応じた計測信号を出力し、導出部は、カウンタから出力されたカウント信号と第1の時間計測器から出力された計測信号とに基づいて、時間情報を導出し出力してもよい。このような構成によれば、クロック信号に同期して動作するカウンタがカウント信号を出力することによりクロックの周波数に依存した大まかな時間計測(低時間分解且つ長時間計測)が行われると共に、第1の時間振幅変換器が検出信号及びクロック信号間の時間に応じた計測信号を出力することによりカウンタの計測粗さを補う細かな時間計測(高時間分解且つ短時間計測)が行われる。これらの時間計測結果を合わせて最終的な時間情報が導出されることにより、高時間分解且つ長時間計測を実現することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る蛍光寿命計測装置は、計測対象物から発せられる蛍光の寿命を計測する蛍光寿命計測装置であって、光を生成する光源と、光源からの光が照射された計測対象物からの蛍光を検出し、検出信号を出力する検出器と、検出信号に係る時間情報を出力する上記時間計測装置と、時間情報に基づいて計測対象物の蛍光寿命を導出する演算部と、を備えている。このような蛍光寿命計測装置によれば、上述した時間計測装置を用いて、蛍光寿命の時間波形を適切に(連続的に)取得することができる。蛍光寿命の時間波形を取得するためには、従来、複雑な光量調整及びディレイ調整が必要であったが、本発明の蛍光寿命計測装置によれば、このような複雑な調整をすることなく、容易に、蛍光波形の時間波形を取得することができる。
【0012】
蛍光寿命計測装置は、光源による光の出力を制御するパルス信号を生成する信号生成部を更に備え、信号生成部は、パルス信号と同期した、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を、設定部に出力してもよい。このように、パルス信号を生成する信号生成部から、パルス信号と同期した、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号が出力されることにより、設定部において、蛍光の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを適切にゲート部に設定することができる。
【0013】
演算部は、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を設定部に出力してもよい。このように、演算部から、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号が出力されることにより、設定部において、蛍光の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを適切にゲート部に設定することができる。
【0014】
蛍光寿命計測装置は、光源による光の出力を制御するパルス信号を生成する信号生成部を更に備え、信号生成部は、パルス信号に同期した同期信号を出力し、時間計測装置は、同期信号に応じた信号を出力する第2の時間計測器を更に備え、導出部は、同期信号に応じた信号に基づいて、時間情報を導出してもよい。これにより、蛍光が生じる実際のタイミングを考慮して、蛍光寿命をより高精度に導出することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る時間計測方法は、時間計測装置が実行する時間計測方法であって、検出器が現象を検出して出力する検出信号が時間計測器に入力されない第1デッドタイムを、現象の繰り返し周期の整数倍に設定する工程と、時間計測器から出力された検出信号に基づいて、検出信号に係る時間情報を導出し出力する工程と、を含み、第1デッドタイムは、時間計測器時自体の第2デッドタイムよりも長い。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、現象に係る時間波形を適切に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る蛍光寿命計測装置を模式的に示す図である。
【
図2】TAC回路における時間計測原理を説明する図である。
【
図3】TAC回路における時間計測原理を説明する図である。
【
図4】TAC回路における時間計測原理を説明する図である。
【
図13】比較例に係る時間波形の取得を説明する図である。
【
図14】比較例に係る時間波形の取得を説明する図である。
【
図15】比較例に係る時間波形の取得を説明する図である。
【
図16】比較例に係る時間波形の取得を説明する図である。
【
図17】比較例に係る時間波形の取得を説明する図である。
【
図18】比較例に係る時間波形の取得を説明する図である。
【
図19】変形例に係る蛍光寿命計測装置を模式的に示す図である。
【
図20】変形例に係る蛍光寿命計測装置を模式的に示す図である。
【
図21】変形例に係る蛍光寿命計測装置を模式的に示す図である。
【
図22】変形例に係る蛍光寿命計測装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一態様に係る時間計測装置、時間計測方法、蛍光寿命計測装置の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る蛍光寿命計測装置1を模式的に示す図である。蛍光寿命計測装置1は、試料S(計測対象物)から発せられる蛍光の寿命を計測する装置である。
【0020】
有機材料や蛍光プローブの蛍光スペクトルは、ピーク波長や蛍光強度等、試料の機能や特性を制御、評価する上で重要なパラメータである。しかしながら、蛍光スペクトルは時間的に積分された情報を取得するため、試料に複数の物質や反応系が含まれる場合には、それらが積分された情報しか得ることができない。このような場合には、試料の機能や特性を評価する手段として、試料がパルス光により光励起された後に基底状態に戻るまでの時間をサブナノ秒~ミリ秒の時間領域で計測する蛍光寿命計測が効果的である。本実施形態に係る蛍光寿命計測装置1では、後述する時間計測装置10によって蛍光の検出タイミングが導出され、蛍光が複数回検出されることにより検出タイミングの頻度分布が得られ、当該頻度分布に基づいて試料Sの蛍光寿命が推定される。
【0021】
図1に示されるように、蛍光寿命計測装置1は、パルスジェネレータ2(信号生成部)と、光源3と、検出器4と、コンピュータ5(演算部)と、表示装置6と、入力装置7と、時間計測装置10と、を含んで構成されている。なお、
図1では、蛍光寿命計測装置1の構成のうち、後述するクロック生成回路9(
図2参照)の図示を省略している。
【0022】
パルスジェネレータ2は、光源3による光の出力を制御するパルス信号を生成し、該パルス信号を光源3に出力する。パルスジェネレータ2は、コンピュータ5からの指示に基づいて、パルス信号を生成する。より具体的には、パルスジェネレータ2は、コンピュータ5から、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を受け、該設定信号に応じてパルス信号を生成する。
【0023】
光源3は、パルスジェネレータ2から出力された上記パルス信号に基づいて、試料Sに照射される励起光を出力する。すなわち、光源3は、試料Sに、生成した光を照射する。光源3としては、LED(Light Emitting Diode)光源、レーザ光源、SLD(Super Luminescent Diode)光源、ランプ系光源等を用いることができる。励起光の強度は、例えば、試料Sに励起光が照射されると1光子が発光される程度に設定されてもよい。励起光が照射された試料Sからは、励起光に応じた蛍光が出力される。
【0024】
検出器4は、光源3からの光が照射された試料Sからの蛍光を検出し、時間計測装置10の計測用ゲート11(詳細は後述)に検出信号を出力する。検出器4としては、光電子増倍管又はアバランシェフォトダイオード、HPD(Hybrid Photo Detector)、SSPD(Superconductive Single Photon Detector)等を用いることができる。
【0025】
コンピュータ5は、時間計測装置10(より詳細には制御部14)から出力される計測結果に基づき、蛍光寿命を導出する。具体的には、コンピュータ5は、計測結果に含まれる蛍光の時間情報(蛍光の検出タイミング)から、蛍光の検出タイミングの頻度分布を導出し、当該頻度分布から試料Sの蛍光寿命を求める。また、コンピュータ5は、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号をパルスジェネレータ2及び制御部14に出力する。コンピュータ5は、例えばCPU等の演算部とRAMやフラッシュメモリ等の記憶部から構成される。なお、時間計測装置10の制御部14の機能を、コンピュータ5が担ってもよい。
【0026】
表示装置6は、コンピュータ5に電気的に接続されたディスプレイであり、上述した試料Sの蛍光寿命解析結果を表示する。入力装置7は、キーボード又はマウス等であり、蛍光寿命の解析条件や計測条件の入力・設定を行うことができる。
【0027】
時間計測装置10は、第1のトリガ信号が入力されてから第2のトリガ信号が入力されるまでの時間を計測時間として算出する時間計測装置である。時間計測装置10は、異なるタイミングで入力される2つの信号(第1のトリガ信号及び第2のトリガ信号)から、当該2つの信号の入力タイミングの差を導出する、各種の装置及びシステムに適用することができる。本実施形態では、上述したように、時間計測装置10は、試料Sから発せられる蛍光の寿命を計測する蛍光寿命計測装置1に適用されている。
【0028】
図1に示されるように、時間計測装置10は、計測用ゲート11(第1の切替部)と、第1の時間計測器を構成するTAC(Time-Analog-Converter)回路12(時間振幅変換器)及びTAC制御部13(コンバータ)と、制御部14(設定部,導出部)と、ディレイ生成回路30と、を備えている。なお、
図1では、時間計測装置10の構成のうち、後述するデジタルカウンタ20(
図2参照)の図示を省略している。当該デジタルカウンタ20は、TAC制御部13に設けられていてもよいし、TAC制御部13とは別に設けられていてもよい。
【0029】
TAC回路12は、第1のトリガ信号が入力されてから第2のトリガ信号が入力されるまでの時間差をアナログ信号(振幅)として出力する時間振幅変換器の回路である。TAC回路12は、例えば10nsの時間を計測可能に構成されている。TAC回路12は、具体的には、検出器4が蛍光(現象)を検出して出力した検出信号を第1のトリガ信号、クロック生成回路9(
図2参照)から出力されたクロック信号を第2のトリガ信号として、検出信号及びクロック信号間の時間に応じたアナログ信号(振幅)を計測信号としてTAC制御部13に出力する。すなわち、TAC回路12は、検出器4が蛍光を検出して出力した検出信号、及び、クロック信号が入力され、検出信号及びクロック信号間の時間(検出信号に係る時間)に応じた計測信号を出力する。TAC回路12は、計測用ゲート11を介して、検出信号の入力を受け付ける。
【0030】
TAC制御部13は、TAC回路12から出力された計測信号であるアナログ信号(振幅)をデジタル信号に変換して出力するADコンバータである。TAC制御部13は、AD変換後のデジタル信号を計測信号として制御部14に出力する。
【0031】
計測用ゲート11は、検出器4から第1のトリガ信号である検出信号の入力を受け、該検出信号をTAC回路12に出力する。計測用ゲート11は、検出器4及びTAC回路12の間に設けられ、検出信号をTAC回路12方向に通過させる第1状態、又は、検出信号をTAC回路12方向に通過させない第2状態とされる。すなわち、計測用ゲート11は、常に、第1状態又は第2状態のいずれか一方の状態とされる。計測用ゲート11には、デッドタイム(ゲートデッドタイム)が設定されている。ここでのデッドタイム(ゲートデッドタイム)とは、計測用ゲート11がTAC回路12方向に検出信号を通過させない状態、すなわち上述した第2状態とされる時間をいう。ゲートデッドタイムは、ディレイ生成回路30を介して制御部14(設定部)によって設定されており、現象(例えば検出器4において検出される蛍光)の繰り返し周期の整数倍の時間とされる。また、制御部14によって設定されるゲートデッドタイムは、TAC回路12自体のデッドタイムよりも長い時間とされる。TAC回路12自体のデッドタイムとは、TAC回路12において時間が計測された後に一定の時間再度の時間計測が行えなくなる時間をいう。
【0032】
計測用ゲート11は、詳細には、ディレイ生成回路30からディレイ信号を受け、該ディレイ信号に基づいて、上述した第1状態及び第2状態が切り替えられる。すなわち、計測用ゲート11は、第1状態とされて検出信号を通過させた後、ディレイ信号の入力を受けるまで第2状態とされ、ディレイ信号の入力を受けた後、新たな検出信号が入力されるまで第1状態とされる。当該ディレイ信号は、蛍光の繰り返し周期の整数倍のディレイ量だけ遅延させた信号とされている(詳細は後述)。このため、計測用ゲート11において、検出信号を通過させた後ディレイ信号の入力を受けるまで第2状態とされることにより、第2状態とされるゲートデッドタイムを、適切に、蛍光の繰り返し周期の整数倍とすることができる。
【0033】
制御部14は、計測用ゲート11が第2状態とされる時間であるゲートデッドタイムを計測用ゲート11に設定する設定部、及び、TAC制御部13から出力された計測信号に基づいて検出信号に係る時間情報を導出し出力する導出部、として機能する。
【0034】
制御部14は、設定部としての機能として、検出器4において検出される蛍光の繰り返し周期の整数倍の時間であってTAC回路12自体のデッドタイムよりも長い時間を、ゲートデッドタイムとして計測用ゲート11に設定する。制御部14は、ディレイ生成回路30を介して、ゲートデッドタイムを計測用ゲート11に設定する。制御部14は、コンピュータ5から入力された設定信号(蛍光の繰り返し周期を示す信号)に基づき、ディレイ生成回路30のディレイ制御を行う。すなわち、制御部14は、設定信号に基づいて、繰り返し周期の整数倍のディレイ量をディレイ生成回路30に予め設定しておく。ディレイ生成回路30は、設定されたディレイ量だけ遅延させたディレイ信号を計測用ゲート11に出力する。詳細には、ディレイ生成回路30は、第1状態とされた計測用ゲート11を通過した検出信号が入力されるように(TAC回路12と同様に検出信号が入力されるように)構成されており、該検出信号の入力を受けると、該検出信号について制御部14により設定されたディレイ量だけ遅延させたディレイ信号を計測用ゲート11に出力する。上述したように、計測用ゲート11では、検出信号を通過させた後ディレイ信号の入力を受けるまでは第2状態(ゲートデッドタイムの状態)とされる。これにより、計測用ゲート11のゲートデッドタイムを蛍光の繰り返し周期の整数倍とすることができる。
【0035】
制御部14は、導出部としての機能として、デジタルカウンタ20(
図2参照)から出力されたカウント信号とTAC回路12から出力されてTAC制御部13においてデジタル信号に変換された計測信号とに基づいて、検出器4によって検出された検出信号に係る時間情報を導出し出力する。
図2に示されるように、デジタルカウンタ20は、検出器4からの検出信号とクロック生成回路9からのクロック信号とが入力されるカウンタである。デジタルカウンタ20は、クロック信号に同期して動作しており、クロック信号に応じて(クロック信号を数えて)カウント信号を制御部14に出力する。このようなデジタルカウンタ20は、検出信号について長時間計測を行うことができるものの、時間分解能を高くすることが難しい。制御部14は、デジタルカウンタ20による時間計測結果と、時間分解能が高いTAC回路12による時間計測結果とを組み合わせることにより、検出信号に係る時間情報の高時間分解且つ長時間計測を実現している。
【0036】
図3及び
図4は、上述した時間情報の導出を説明する図である。
図3及び
図4において、横軸は時間軸を示している。
図3に示されるように、デジタルカウンタ20は、クロック信号を数えてカウント信号を出力している。
図3では、デジタルカウンタ20が、23、24、25、26、27、28を示すカウント信号を出力している例が示されている。上述したように、デジタルカウンタ20はクロック信号に同期して動作している。そして、
図3に示されるように、いま、TAC回路12が、検出器4からの検出信号TRG1が入力されてから、検出信号TRG1の直後のクロック信号TRG2が入力されるまでの時間差Tを計測したとする。TAC回路12が出力する計測信号では、
図4に示されるように、検出信号TRG1が入力されたタイミング(時間t1)から電圧(振幅)が検出信号TRG1に応じて増加を開始し、クロック信号TRG2が入力されたタイミング(時間t2)から電圧(振幅)がクロック信号TRG2に応じて一定となる。
【0037】
制御部14は、カウント信号が示すカウント値に応じた時間から、計測信号が示す時間を減算することによって、検出信号がTAC回路12に入力されるまでの時間を示す時間情報を導出している。すなわち、
図3に示される例では、制御部14は、カウント信号が示すカウント値に応じた時間である23から、計測信号が示す時間情報である時間差Tを減算することによって、検出信号TRG1がTAC回路12に入力されるまでの時間を示す時間情報(23-T)を導出する。このような時間情報の導出は、デジタルカウンタ20に入力されるクロック信号と、TAC回路12に入力されるクロック信号とが対応している(TAC回路12に入力されたクロック信号が示すカウント値が一意に定まる)ことにより可能になるものである。制御部14は、導出した時間情報(計測結果)をコンピュータ5に出力する。
【0038】
次に、
図5~
図18を参照して、蛍光の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを設定することの意味(効果)について説明する。
図5~
図12は、本実施形態に係る蛍光寿命計測装置1における、蛍光時間波形の取得を説明する図である。
図13~
図18は、比較例に係る蛍光寿命計測装置1における、蛍光時間波形の取得を説明する図である。
図5~
図18において横軸は時間を示している。
【0039】
いま、
図5の上段に示されるような繰り返し周期の蛍光が入射する場合を考える。
図5に示される例では、パルスジェネレータ2から出力されるパルス信号の周波数が1MHzであり、蛍光の繰り返し周期が1μsであるとされている。
図5の上段に示された曲線に沿って蛍光発光が起きるとし、
図5の上段に示された複数の四角がそれぞれ蛍光に係るフォトンの発生を示しているとする(以下、
図6以降の図面においても同様)。
図5の下段においては検出器4から出力される検出信号が示されている。フォトンの発生によって、
図5の下段に示されるように、各フォトンを検出したタイミングにおいて検出器4から各フォトンに応じた検出信号が出力される。
【0040】
ここで、TAC回路12では、フォトンが入力された後(時間が計測された後)に、一定の時間、再度の時間計測が行えなくなるデッドタイムが生じる。一般的な蛍光寿命計測装置(例えば後述する比較例に係る蛍光寿命計測装置)では、フォトンの数え損ねを極力減らすべく、装置としてのデッドタイムを極力短くしようとし、TAC回路12自体のデッドタイム以外のデッドタイムを設けることはしない。この点、本実施形態に係る蛍光寿命計測装置1では、蛍光の繰り返し周期の整数倍の(且つTAC回路12自体のデッドタイムよりも長い)時間が、ゲートデッドタイムとして計測用ゲート11に設定されている。
図6の下段には、蛍光の繰り返し周期の1倍の(蛍光の繰り返し周期と同じ)ゲートデッドタイムが計測用ゲート11に設定される例を示している。なお、
図6~10中における「デッドタイム」とはゲートデッドタイムを示している。
【0041】
最初のフォトンを計測した後に
図6に示されるゲートデッドタイム(最初のゲートデッドタイム)が生じると、当該最初のゲートデッドタイム中の信号は取得できないので、当該最初のゲートデッドタイムを考慮して実際に計測用ゲート11を通過する検出信号は
図7の下段のようになる。そして、最初のゲートデッドタイムが終了し、次のフォトンを計測すると、再度、
図8に示されるゲートデッドタイム(2回目のゲートデッドタイム)が生じる。当該2回目のゲートデッドタイム中の信号も取得できないので、当該2回目のゲートデッドタイムを考慮すると、実際に計測用ゲート11を通過する検出信号は
図9の下段のようになる。このように、フォトン計測後にゲートデッドタイムとなることを繰り返すと、実際に計測用ゲート11を通過する検出信号は
図10に示されるようになる。
【0042】
ここで、このような蛍光寿命計測装置において時間計測を行うことができた時間(フォトンが発生した場合にいつでも計測することができた時間)は、
図11の「計測した領域」で示される時間である。このような時間の状態は、いつフォトンが入力されても計測することができる計測待機状態である。計測待機状態は、蛍光寿命計測装置1が実際に時間計測を実施した時間である。そして、
図12に示されるように、「計測した領域」を時間軸上で発生した順に並べると、元の蛍光発光の曲線が現れることがわかる。これは、ゲートデッドタイムが蛍光の繰り返し周期の整数倍(ここでは1倍)とされることによって、各デッドタイムの前後の時間波形を合成すると、時間的に連続した蛍光曲線の波形と同等になることによるものである。以上のように、蛍光の繰り返し周期の整数倍のデッドタイムを計測用ゲート11に設定することによって、連続計測を行ったかのような計測(蛍光波形の連続的な取得)が可能になる。
【0043】
つづいて、ゲートデッドタイムを設定しない構成(比較例に係る構成)について、
図13~
図18を参照して説明する。なお、
図13~
図16中における「デッドタイム」とはゲートデッドタイムではなくTAC回路自体のデッドタイムを示している。比較例に係る構成では、
図13の上段に示されるように、蛍光の繰り返し周期が1μsとされており、また、ゲートデッドタイムが設定されていない。ゲートデッドタイムが設定されていないため、
図13の下段に示されるように、フォトンを検出した後のデッドタイムは、TAC回路自体のデッドタイム(上述したゲートデッドタイムよりも短いデッドタイム)のみとなる。最初のフォトンを計測した後に
図13に示されるデッドタイムが生じ、該デッドタイム中においてはフォトンを計測することができない。そして、最初のデッドタイムが終了すると、
図14の下段に示されるようにフォトンの計測が可能になり、該フォトンの計測後には再度デッドタイムが生じる。2回目のデッドタイムが終了すると、
図15の下段に示されるようにフォトンの計測が可能になり、該フォトンの計測後には再度デッドタイムが生じる。このように、フォトン計測後にゲートデッドタイムとなることを繰り返すと、実際に計測用ゲートを通過する検出信号は
図16に示されるようになる。そして、
図17に示される「計測した領域」を時間軸上で発生した順に並べると、
図18に示される波形となる。当該波形は、上述した
図12に示される波形と異なり、元の蛍光曲線の波形と全く一致しないものである。このように、蛍光の繰り返し周期の整数倍のデッドタイムが設定されていない構成においては、連続計測を行ったかのような計測(蛍光波形の連続的な取得)ができない。
【0044】
次に、本実施形態に係る時間計測装置10及び蛍光寿命計測装置1の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態に係る時間計測装置10は、検出器4が現象を検出して出力した検出信号が入力され、検出信号に係る時間に応じた計測信号を出力する、TAC回路12と、検出器4及びTAC回路12の間に設けられ、検出信号をTAC回路12方向に通過させる第1状態、又は、検出信号をTAC回路12方向に通過させない第2状態とされる計測用ゲート11と、計測用ゲート11が第2状態とされる時間であるゲートデッドタイムを計測用ゲート11に設定する設定部として機能する制御部14と、TAC回路12から出力された計測信号に基づいて、検出信号に係る時間情報を導出し出力する導出部として機能する制御部14と、を備え、設定部として機能する制御部14は、検出器4において検出される蛍光の繰り返し周期の整数倍の時間であってTAC回路12自体のデッドタイムよりも長い時間を、ゲートデッドタイムとして計測用ゲート11に設定する。
【0046】
本実施形態に係る時間計測装置10では、検出信号に係る時間に応じた計測信号を出力するTAC回路12に検出信号が入力される第1状態と、入力されない第2状態とが切り替えられる。計測用ゲート11は、蛍光の繰り返し周期の整数倍であってTAC回路12自体のデッドタイムよりも長いゲートデッドタイムが設定されており、該ゲートデッドタイムの間において上述した第2状態となる。このような時間計測装置10では、計測用ゲート11に、蛍光の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムが設定されるため、TAC回路12から出力された計測信号に基づき導出される時間情報における時間波形が、デッドタイム(非計測状態)の前後において時間的に連続しているのと同等の波形になる。そして、本時間計測装置10では、計測用ゲート11に設定されるゲートデッドタイムがTAC回路12自体のデッドタイムよりも長いため、TAC回路12に検出信号が入力される計測状態であるのにTAC回路12自体のデッドタイム中であるということが起こり得ず、上述したゲートデッドタイムの前後における時間波形の連続性を適切に担保することができる。以上のように、本実施形態に係る時間計測装置10によれば、現象に係る時間波形を適切に(連続的に)取得することができる。
【0047】
時間計測装置10は、ディレイ生成回路30を更に備え、設定部として機能する制御部14は、繰り返し周期の整数倍のディレイ量をディレイ生成回路30に設定し、ディレイ生成回路30は、第1状態とされた計測用ゲート11を通過した検出信号の入力を受け、該検出信号について設定部として機能する制御部14により設定されたディレイ量だけ遅延させたディレイ信号を計測用ゲート11に出力し、計測用ゲート11は、第1状態とされて検出信号を通過させた後、ディレイ信号の入力を受けるまで第2状態とされ、ディレイ信号の入力を受けた後、新たな検出信号が入力されるまで第1状態とされてもよい。このような構成によれば、繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを確実に計測用ゲート11に設定することができる。
【0048】
第1の時間計測器は、検出信号に係る時間に応じた計測信号をアナログ信号として出力するTAC回路12と、TAC回路12から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するTAC制御部13と、を有していてもよい。計測信号をアナログ信号として出力するTAC回路12及びTAC制御部13が用いられることにより、例えば時間デジタル変換器が用いられる場合と比較して、現象の計測における時間分解能を高めることができる。
【0049】
時間計測装置10は、クロック信号に応じてカウント信号を出力するデジタルカウンタ20を更に備え、TAC回路12は、検出信号及びクロック信号が入力され、検出信号及びクロック信号間の時間に応じた計測信号を出力し、導出部として機能する制御部14は、デジタルカウンタ20から出力されたカウント信号とTAC回路12から出力された計測信号とに基づいて、時間情報を導出し出力してもよい。このような構成によれば、クロック信号に同期して動作するデジタルカウンタ20がカウント信号を出力することによりクロックの周波数に依存した大まかな時間計測(低時間分解且つ長時間計測)が行われると共に、TAC回路12が検出信号及びクロック信号間の時間に応じた計測信号を出力することによりデジタルカウンタ20の計測粗さを補う細かな時間計測(高時間分解且つ短時間計測)が行われる。これらの時間計測結果を合わせて最終的な時間情報が導出されることにより、高時間分解且つ長時間計測を実現することができる。
【0050】
本実施形態に係る蛍光寿命計測装置1は、試料Sから発せられる蛍光の寿命を計測する蛍光寿命計測装置であって、試料Sに生成した光を照射する光源3と、光源3からの光が照射された試料Sからの蛍光を検出し、検出信号を出力する検出器4と、検出信号に係る時間情報を出力する上記時間計測装置10と、時間情報に基づいて試料Sの蛍光寿命を導出するコンピュータ5と、を備えている。このような蛍光寿命計測装置1によれば、上述した時間計測装置10を用いて、蛍光寿命の時間波形を適切に(連続的に)取得することができる。
【0051】
コンピュータ5は、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を設定部として機能する制御部14に出力してもよい。このように、コンピュータ5から、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号が出力されることにより、設定部として機能する制御部14において、蛍光の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを適切に計測用ゲート11に設定することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、
図19に示されるように、蛍光寿命計測装置1Aの時間計測装置10Aは、TAC回路16を更に備えていてもよい。TAC回路16は、第1のトリガ信号が入力されてから第2のトリガ信号が入力されるまでの時間差をアナログ信号(振幅)として出力する時間振幅変換器の回路である。TAC回路16は、検出器4において検出される検出信号に係る現象の同期信号に応じた信号を出力する。検出器4において検出される検出信号に係る現象とは、検出器4において検出される試料Sからの蛍光である。現象の同期信号とは、パルスジェネレータ2が出力する信号であり、パルス信号に同期した(例えば同一の)信号である。TAC回路16は、具体的には、同期信号を第1のトリガ信号、クロック生成回路9から出力されたクロック信号を第2のトリガ信号として、同期信号及びクロック信号の時間差に応じたアナログ信号(振幅)を、上述した同期信号に応じた信号としてTAC制御部13に出力する。この場合、導出部として機能する制御部14は、TAC回路16から出力された、上記同期信号に応じた信号を更に考慮して(当該信号に基づいて)、時間情報を導出してもよい。すなわち、制御部14は、同期信号に応じた信号から、現象の開始タイミング(始点)を特定し、検出器4によって検出された検出信号に係る時間情報をより高精度に導出してもよい。これにより、蛍光が生じる実際のタイミングを考慮して、蛍光寿命をより高精度に導出することができる。
【0053】
また、
図20に示されるように、蛍光寿命計測装置1Bの時間計測装置10Bは、TAC回路16として2つのTAC回路16a,16bを有し、基準用ゲート15を更に備えていてもよい。また、当該時間計測装置10Bは、TAC制御部13として2つのTAC制御部13a,13bを有していてもよい。TAC回路16aは、上述した同期信号に応じた信号をTAC制御部13bに出力する。また、TAC回路16bは、上述した同期信号に応じた信号をTAC制御部13bに出力する。TAC制御部13bは、TAC回路16a,16bから入力された信号をデジタル信号に変換し制御部14に出力する。なお、この場合には、TAC回路12から出力された信号はTAC制御部13aに出力され、TAC制御部13aはTAC回路12から入力された信号をデジタル信号に変換し制御部14に出力してもよい。基準用ゲート15は、TAC回路16のデッドタイムを考慮して、上述した同期信号が入力されるTAC回路16a,16bを切り替える。基準用ゲート15は、パルスジェネレータ2から同期信号の入力を受け、該同期信号をTAC回路16a,16bのうち一方にのみ出力する。基準用ゲート15は、デッドタイムを考慮して予め設定された切り替え情報に基づき、同期信号が入力されるTAC回路16a,16bを切り替えている。当該切り替え情報は、デッドタイム中のTAC回路16a,16bに同期信号が入力されないように規定されている。このように、基準用ゲート15によって同期信号が入力されるTAC回路16a,16bが切り替えられることにより、TAC回路16におけるデッドタイムの影響により信号の計測効率が悪化することを適切に回避できる。
【0054】
また、
図21に示されるように、時間計測装置10Cを有する蛍光寿命計測装置1Cのように、パルスジェネレータ2が、パルス信号と同期した、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号を、設定部として機能する制御部14に出力してもよい。このように、パルス信号を生成するパルスジェネレータ2から、パルス信号と同期した、蛍光の繰り返し周期を示す設定信号が出力されることにより、設定部として機能する制御部14において、蛍光の繰り返し周期の整数倍のゲートデッドタイムを適切に計測用ゲート11に設定することができる。
【0055】
また、
図22に示されるように、蛍光寿命計測装置1Dの時間計測装置10Dは、上述した時間計測装置10Cの構成に加えて、TAC回路16を有していてもよい。このような構成によれば、パルスジェネレータ2から設定信号が出力される構成においても、蛍光が生じる実際のタイミングを考慮して、蛍光寿命をより高精度に導出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B,1C,1D…蛍光寿命計測装置、2…パルスジェネレータ(信号生成部)、3…光源、4…検出器、5…コンピュータ(演算部)、10,10A,10B,10C,10D…時間計測装置、11…計測用ゲート(ゲート部)、12…TAC回路(時間振幅変換器)、13…TAC制御部(コンバータ)、14…制御部(設定部,導出部)、15…基準用ゲート、16…TAC回路(第2の時間計測器)、20…デジタルカウンタ、30…ディレイ生成回路。