(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】負極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240730BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240730BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240730BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240730BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240730BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/133
H01M4/36 E
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2022554688
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 CN2021124798
(87)【国際公開番号】W WO2023065128
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】史 ▲東▼洋
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲寧▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 双双
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 斯通
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-338993(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031516(WO,A1)
【文献】特開2013-008586(JP,A)
【文献】特開2005-183264(JP,A)
【文献】特開2007-042393(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112289997(CN,A)
【文献】Zhipeng GENG et al.,“Preparation and electrochemical performance of ball milling SiOx/(Cu,Ni) anode materials for lithium-silicon batteries”,Journal of Materials Science: Materials in Electronics,2020年05月28日,Vol. 31, No. 14,p.11049-11058
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板であって、
銅箔集電体と、前記
銅箔集電体の少なくとも一つの面に塗布されるコーティングとを含み、
前記コーティングは、負極活物質と、金属粉末とを含み、
ここで、前記コーティングにおいて、前記金属粉末のリチウムに対する電極電位は1.6~3.5Vであり、前記負極活物質はケイ素系材料であり、
前記ケイ素系材料はSiO
x
を含み、前記SiO
x
において0<x<2であり、
前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量に対して、前記金属粉末の質量比率は、5~20%であり
、
前記ケイ素系材料の質量比率は80~95%で
ある、負極板。
【請求項2】
前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量に対して、前記金属粉末の質量比率は5~15%であり、前記ケイ素系材料の質量比率は85%~95%である、請求項1に記載の負極板。
【請求項3】
前記金属粉末は、Mn、Cr、Zn、Ga、Fe、Cd、Co、Ni、Tl、In、Sn、Pbのうちの一つ又は複数であ
る、請求項1
又は2に記載の負極板。
【請求項4】
前記金属粉末は、Mn、Co、Fe、Crのうちの一つ又は複数である、請求項3に記載の負極板。
【請求項5】
前記金属粉末はDv50=20nm~20μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項6】
前記金属粉末はDv50=50nm~10μmである、請求項5に記載の負極板。
【請求項7】
前記ケイ素系材料は、SiO
x、SiO
xと黒鉛との混合物のうちの少なくとも一つであり、ここで、
前記ケイ素系材料がSiO
x
と黒鉛との混合物である場合、前記ケイ素系材料の総質量に対して、前記SiO
xの質量比率は10~30%であり、前記黒鉛の質量比率は70~90%であ
る、請求項
1~6のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項8】
前記SiO
x
はDv50=1~10μmであり、及び/又は、前記黒鉛はDv50=3~20μmである、請求項7に記載の負極板。
【請求項9】
前記コーティングにおいて、前記コーティングの総質量に対して、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量比率は95~99%である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の負極板。
【請求項10】
二次電池であって、請求項1~
9のいずれか一項に記載の負極板を含む、二次電池。
【請求項11】
電池モジュールであって、請求項
10に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項12】
電池パックであって、請求項
11に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項13】
電力消費装置であって、請求項
10に記載の二次電池、請求項
11に記載の電池モジュール、又は請求項
12に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウムイオン二次電池技術分野に関し、特に負極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池の適用範囲が益々広くなるにつれて、リチウムイオン電池は、水力、火力、風力と太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動ツール、電動自転車、電動バイク、電動自動車、軍事装備、航空宇宙などの数多くの分野に広く適用されている。リチウムイオン二次電池が飛躍的な発展を遂げたため、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対してもより高い要求が出されている。また、負極活物質の選択が益々制限されるため、ケイ素系材料は、高エネルギー密度の要求を満たすための最適な選択肢であると考えられる。
【0003】
しかし、ケイ素系材料は、初回充放電の時に粒子表面に固体電解質界面膜(SEI膜)を生成し、SEI膜は、絶えずに分解し放熱し、リチウムイオン二次電池の安全性能を劣化させる。そのため、ケイ素系材料を採用する従来のリチウムイオン二次電池の安全性能は、依然として向上する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、負極板を提供することであり、この負極板に含まれる金属粉末のリチウムに対する電極電位が1.5~3.5Vであるため、二次電池の容量に影響を与えることなく、負極板が銅析出電位に達する前に、金属を大量に析出させ、電池短絡を引き起こすことによって、二次電池の過放電テストに合格する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本出願は、負極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。
【0006】
本出願の第1の態様は、負極板を提供し、この負極板は、集電体と、前記集電体の少なくとも一つの面に塗布されるコーティングとを含み、前記コーティングは、負極活物質と、金属粉末と、導電剤と、接着剤とを含み、ここで、前記コーティングにおいて、前記金属粉末のリチウムに対する電極電位は1.6~3.5Vであり、前記負極活物質は、ケイ素系材料であり、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量に対して、前記金属粉末の質量比率は、5~20%であり、任意選択的に、5~15%であり、前記ケイ素系材料の質量比率は、80~95%であり、任意選択的に、85%~95%である。
【0007】
これによって、本出願は、負極板のコーティングに、リチウムに対する電極電位が1.6~3.5Vでる金属粉末を添加することによって、電池過放電過程において、負極電位が金属粉末の酸化電位に達した時、金属粉末は、銅箔集電体より先に酸化して金属イオンになることを向上させ、そしてセパレータを通過し、正極板の表面で還元し、金属を析出させ、且つセパレータを突き通して、リチウムイオン二次電池の内部短絡を引き起こすことができ、それによってリチウムイオン二次電池の容量に影響を与えることなく、リチウムイオン二次電池の過放電テストに合格する。前記リチウムイオン二次電池の過放電テストについては、例えば、リチウムイオン二次電池を0.33Cのレートで4.25Vまで定電流満充電してから、0.05Cまで定電圧充電し、1時間静置し、1Cのレートで90分間放電し、室温で1時間観察する。電池の発火、爆発が発生しなければ、リチウムイオン二次電池が過放電テストに合格したと考えられる。
【0008】
それとともに、本出願は、上記質量比率の金属粉末とケイ素系材料によって、過放電テスト中に負極板から十分な量の金属が析出し、且つセパレータを突き通して、リチウムイオン二次電池の内部短絡を引き起こすことを確保するとともに、負極板コーティングにおける多すぎる金属粉末による負極のグラム容量への影響を可能な限り低減することによって、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度への悪い影響を低減する。
【0009】
いずれかの実施形態において、前記金属粉末は、Mn、Cr、Zn、Ga、Fe、Cd、Co、Ni、Tl、In、Sn、Pbのうちの一つ又は複数であり、任意選択的に、Mn、Co、Fe、Crのうちの一つ又は複数であり、さらに任意選択的に、前記金属粉末は、Dv50=20nm~20μmであり、任意選択的に、50nm~10μmである。
【0010】
これによって、本出願において、リチウムに対する電極電位が1.6~3.5Vである金属元素を選択することによって、本出願の負極板を含むリチウムイオン二次電池は、過放電テストに合格することができる。リチウムイオン二次電池の安全性能と使用寿命の観点から、リチウムに対する電極電位の下限として1.6Vを選択する。リチウムイオン二次電池の負極電位が極端な条件で1.5V程度に達することができるため、上記金属粉末のリチウムに対する電極電位値は1.5Vよりも大きくなる必要がある。それとともに、負極板は、一般的には、銅箔を集電体として選択し、銅箔集電体の酸化電位が3.6V程度であるため、金属粉末のリチウムに対する電極電位が3.5Vより低くないと、リチウムイオン二次電池の過放電テストの合格率を向上させることができない。それとともに、負極板の加工ニーズの観点から、前記金属粉末のDv50が上記範囲内にある場合、スラリー凝集の発生又は塗布時の集電体における傷の発生を回避することができる。
【0011】
いずれかの実施形態において、前記ケイ素系材料は、SiOx、SiOxと黒鉛との混合物のうちの少なくとも一つであり、ここで、前記ケイ素系材料の総質量に対して、前記SiOxの質量比率は10~30%であり、前記黒鉛の質量比率は70~90%であり、ここで、前記SiOxにおいて、0≦x<2である。任意選択的に、前記SiOx は、Dv50=1~10μmであり、及び/又は、前記黒鉛は、Dv50=3~20μmである。これによって、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度とサイクル性能を両立させる観点から、上記ケイ素系材料を負極活物質として選択する。前記SiOxと前記黒鉛のDv50が上記範囲内にある場合、上記SiOxと黒鉛がスラリーで分散しやすく、後続の塗布プロセスに有利である。
【0012】
いずれかの実施形態において、前記コーティングにおいて、前記コーティングの総質量に対して、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量比率は95~99%である。これによって、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量比率が上記範囲内にある場合、前記負極板が、十分なケイ素系材料を負極活物質として担持しているし、適量の金属粉末を含むため、この負極板を含むリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、また過放電テストに合格することができる。
【0013】
本出願の第2の態様は、本出願第1の態様の負極板を含む二次電池を提供する。
【0014】
本出願の第3の態様は、本出願の第2の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0015】
本出願の第4の態様は、本出願の第3の態様の電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0016】
本出願の第5の態様は、本出願の第2の態様の二次電池、本出願の第3の態様の電池モジュール、又は本出願の第4の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む電力消費装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本出願は、負極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。本出願の負極板のコーティングには、負極活物質としてのケイ素系材料及びリチウムに対する電極電位が1.6~3.5Vである金属粉末が含まれ、ケイ素系材料が大きいグラム容量を有し、それによってこの負極板を含むリチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上させる。金属粉末の添加によって、リチウムイオン二次電池の容量に影響を与えることなく、リチウムイオン二次電池の過放電テストの合格率を向上させ、さらにリチウムイオン二次電池の安全性能を改善した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本出願の一実施形態による二次電池の概略図である。
【
図2】
図1に示される本出願の一実施形態による二次電池の分解図である。
【
図3】本出願の一実施形態による電池モジュールの概略図である。
【
図4】本出願の一実施形態による電池パックの概略図である。
【
図5】
図4に示される本出願の一実施形態による電池パックの分解図である。
【
図6】本出願の一実施形態による、二次電池が電源として用いられる電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の負極板、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示する実施形態を詳細に説明する。しかし、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定するためのものではない。
【0020】
本出願に開示されている「範囲」は、下限と上限の形で限定され、所定の範囲は、特定の範囲の境界を限定する下限と上限を選択することによって限定される。このように限定された範囲は、端値を含んでもよく、含まなくてもよいとともに、任意に組み合わせることができ、即ち任意の下限は任意の上限と組み合わせて一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60~120と80~110の範囲が列挙されている場合、60~110と80~120の範囲も予想されていると理解することができる。なお、最小範囲値1と2、最大範囲値3、4と5が列挙されている場合、以下の範囲の1~3、1~4、1~5、2~3、2~4と2~5は全て予想されている。本出願において、特に説明されていない限り、数値範囲「a~b」は、a~bのいずれかの実数組み合わせの短縮表現を表し、そのうち、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書には「0~5」の間の全ての実数が列挙されていることを表し、「0~5」はこれらの数値組み合わせの短縮表現に過ぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、このパラメータが例えば整数の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示することになる。
【0021】
特に説明しない場合、本出願の全ての実施形態及び任意選択的な実施形態は、互いに組み合わせて新な技術案を形成することができる。
【0022】
特に説明しない場合、本出願の全ての技術的特徴及び任意選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新な技術案を形成することができる。
【0023】
特に説明しない場合、本出願の全てのステップは、順次行われてもよく、ランダムに行われてもよく、任意選択的に、順次行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順次行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順次行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含むことは、ステップ(c)が任意の順で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば、前記方法は、ステップ(a)、(b)と(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)と(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)と(b)などを含んでもよい。
【0024】
特に説明しない場合、本出願で言及された「含む」と「包含」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含」は、リストアップされていない他の成分をさらに含み又は包含してもよく、リストアップされた成分のみを含み又は包含してもよいことを表してもよい。
【0025】
特に説明しない場合、本出願において、用語「又は」は包括的である。例えば、「A又はB」という用語は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、Aが真(又は存在する)でありかつBが偽(又は存在しない)である条件と、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)である条件と、また、AとBが共に真(又は存在する)である条件のいずれかも「A又はB」を満たしている。
【0026】
[負極板]
本出願の一実施形態において、本出願は、集電体と、前記集電体の少なくとも一つの面に塗布されるコーティングとを含む負極板を提供し、前記コーティングは、負極活物質と、金属粉末と、導電剤と、接着剤とを含み、ここで、前記コーティングにおいて、前記金属粉末のリチウムに対する電極電位は1.6~3.5Vであり、前記負極活物質は、ケイ素系材料であり、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量に対して、前記金属粉末の質量比率は、5~20%であり、任意選択的に、5~15%であり、前記ケイ素系材料の質量比率は、80~95%であり、任意選択的に、85%~95%である。
【0027】
メカニズムがまだよく分かっていないが、本出願者は、大量の実験により、本出願において、負極板のコーティングに、リチウムに対する電極電位が1.6~3.5Vでる金属粉末を添加することによって、電池過放電過程において、負極電位が金属粉末の酸化電位に達した時、金属粉末は、銅箔集電体より先に酸化して金属イオンになり、そしてセパレータを通過し、正極板の表面で金属を還元し、析出させ、且つセパレータを突き通して、リチウムイオン二次電池の内部短絡を引き起こすことができ、それによってリチウムイオン二次電池の容量に影響を与えることなく、リチウムイオン二次電池の過放電テストに合格し、その安全性能を向上させたことを意外に見出した。前記リチウムイオン二次電池の過放電テストについては、例えば、リチウムイオン二次電池を0.33Cのレートで4.25Vまで定電流満充電してから、0.05Cまで定電圧充電し、1時間静置し、1Cのレートで90分間放電し、室温で1時間観察する。電池の発火、爆発が発生しなければ、リチウムイオン二次電池が過放電テストに合格したと考えられる。
【0028】
それとともに、本出願は、上記質量比率の金属粉末とケイ素系材料によって、過放電テスト中に負極板から十分な量の金属が析出し、且つセパレータを突き通して、リチウムイオン二次電池の内部短絡を引き起こすことを確保するとともに、負極板コーティングにおける多すぎる金属粉末による負極のグラム容量への影響を可能な限り低減することによって、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度への悪い影響を低減する。
【0029】
いずれかの実施形態において、前記金属粉末は、Mn、Cr、Zn、Ga、Fe、Cd、Co、Ni、Tl、In、Sn、Pbのうちの一つ又は複数であり、任意選択的に、Mn、Co、Fe、Crであり、さらに任意選択的に、前記金属粉末は、Dv50=20nm~20μmであり、任意選択的に、50nm~10μmである。
【0030】
これによって、本出願において、リチウムに対する電極電位が1.6~3.5Vである金属元素を選択することによって、本出願の負極板を含むリチウムイオン二次電池が過放電テストに合格することができることを確保する。リチウムイオン二次電池の安全性能と使用寿命の観点から、リチウムに対する電極電位の下限として1.6Vを選択する。リチウムイオン二次電池の負極電位が極端な条件で1.5V程度に達することができるため、上記金属粉末のリチウムに対する電極電位値は1.5Vよりも大きくなる必要がある。それとともに、負極板は、一般的には、銅箔を集電体として選択し、銅箔集電体の酸化電位が3.6V程度であるため、金属粉末のリチウムに対する電極電位が3.5Vより低くくないと、リチウムイオン二次電池の過放電テストの合格率を向上させることができない。それとともに、負極板の加工ニーズの観点から、前記金属粉末のDv50が上記範囲内にある場合、スラリー凝集の発生又は塗布時の集電体における傷の発生を回避することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記ケイ素系材料は、SiOx、SiOxと黒鉛との混合物のうちの少なくとも一つであり、ここで、前記ケイ素系材料の総質量に対して、前記SiOxの質量比率は10~30%であり、前記黒鉛の質量比率は70~90%であり、任意選択的に、前記SiOx は、Dv50=1~10μmであり、及び/又は、前記黒鉛は、Dv50=3~20μmである。ここで、前記SiOxにおいて、0≦x<2である。これによって、本出願は、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度とサイクル性能を確保する観点から、上記ケイ素系材料を負極活物質として選択する。前記SiOxと前記黒鉛のDv50が上記範囲内にある場合、上記ケイ素系材料と黒鉛がスラリーで分散しやすく、後続の塗布プロセスに有利である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記コーティングにおいて、前記コーティングの総質量に対して、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量比率は95~99%である。これによって、前記ケイ素系材料と前記金属粉末の総質量比率が上記範囲内にある場合、前記負極板が、十分なケイ素系材料を負極活物質として担持しているし、十分な金属粉末も含むため、この負極板を含むリチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、また過放電テストにおいて優れた性能を示すことができる。
【0033】
また、平均体積分布粒径Dv50は、前記負極活物質、前記金属粉末の累積体積分布パラメータが50%に達した時に対応する粒径を指す。本出願において、負極活物質、金属粉末の体積平均粒径Dv50は、レーザ回折粒度分析法を採用して測定することができる。例えば、標準GB/T 19077-2016を参照し、レーザ粒度分析器(例えば、Malvern Master Size 3000)で測定する。
【0034】
また以下では、図面を適当に参照しながら、本出願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0035】
本出願の一実施形態において、二次電池を提供する。
【0036】
一般的には、二次電池は正極板と、負極板と、電解質とセパレータとを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極板と負極板との間を往復して吸蔵し放出する。電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を奏する。セパレータは、正極板と負極板との間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する作用を奏するとともに、イオンを通過させることができる。
【0037】
[正極板]
正極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は正極活物質を含む。
【0038】
例示的に、正極集電体は、その自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のいずれか一方又は両方上に設けられている。
【0039】
いくつかの実施形態において、正記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料基層と高分子材料基層の少なくとも一つの表面上に形成された金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することによって形成されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、正極活物質は、当分野でよく知られている電池用の正極活物質を採用してもよい。一例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも一つの材料を含んでもよい。しかし、本出願では、これらの材料に限定されず、さらに電池の正極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、一つのみを単独に使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えば、LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えば、LiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称されてもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、LiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えば、LiFePO4(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えば、LiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限られない。
【0041】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、任意選択的に、接着剤をさらに含む。例示的に、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及び含フッ素アクリル酸エステル樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0042】
いくつかの実施形態において、正極膜層は、任意選択的に、導電剤をさらに含む。一例として、前記導電剤は、超伝導性カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、以下の方式で正極板を製造することができ、正極板を製造するための上記成分、例えば、正極活物質、導電剤、接着剤といずれかの他の成分を溶媒(例えば、N-メチルピロリドン)に分散させて、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間加圧などのプロセスを経て、正極板が得られる。
【0044】
[負極板]
前記負極板は、本出願の第1の態様の負極板である。
【0045】
[電解質]
電解質は、正極板と負極板との間でイオンを伝導する作用を奏する。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択してもよい。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、前記電解質は、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホンイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート及びリチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェートのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジプロピル、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトンン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記電解液は、任意選択的に、添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極被膜形成添加剤と、正極被膜形成添加剤とを含んでいてもよいし、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などをさらに含んでいてもよい。
【0050】
[セパレータ]
いくつかの実施形態において、二次電池は、セパレータをさらに含む。本出願では、セパレータの種類に対して特に制限することはなく、よく知られている、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の多孔質構造のセパレータを選択してもよい。
【0051】
幾つかの実施の形態では、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも一つから選択されてもよい。セパレータは、単層薄膜であってもよく、多層複合薄膜であってもよく、特に制限はない。セパレータが多層複合薄膜である場合、各層の材料は同じであってもよく、異なってもよく、特に制限はない。
【0052】
幾つかの実施の形態では、正極板と負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリと電解質のパッケージングに用いられてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、スチールシェルなどの硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、軟包装でもよく、例えば、袋型軟包装である。軟包装の材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとして、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
【0055】
本出願は、二次電池の形状に特に制限がなく、それは、円柱状、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0056】
いくつかの実施形態において、
図2を参照すると、外装は、筐体51および蓋板53を含むことができる。ここでは、筐体51は、底板と底板に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とで取り囲んで収容キャビティを形成する。筐体51は収容キャビティに連通する開口を有し、蓋板53は、前記開口をカバーして設けられることによって前記収容キャビティを閉鎖することができる。正極板と負極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、当業者は実際の具体的な需要に応じて選択してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよく、電池モジュールに含まれる二次電池の数は一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者は電池モジュールの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0058】
図3は、一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の縦方向に沿って順に並べて設けられてもよい。無論、任意の他の方式に従って配置してもよい。さらに、この複数の二次電池5を締め具で固定してもよい。
【0059】
選択可能には、電池モジュール4は、複数の二次電池5を収容する収容空間を有する筐体をさらに備えていてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者は電池パックの応用と容量に基づいて選択してもよい。
【0061】
図4と
図5は、一例としての電池パック1である。
図4と
図5を参照すると、電池パック1には、電池ケースと電池ケースの中に設けられた複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ケースは上ケース2と下ケース3とを含み、上ケース2は、下ケース3をカバーして設けられ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式に従って電池ケースの中に配置されてもよい。
【0062】
また、本出願は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよいし、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体設備(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶と衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、それらに限られない。
【0063】
前記電力消費装置として、その使用上の需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択してもよい。
【0064】
図6は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置は二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0065】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般に軽量化が求められており、二次電池を電源として採用することができる。
【0066】
(実施例)
以下では、本出願の実施例を説明する。以下に記述されている実施例は、例示的なもので、本出願を解釈することのみに用いられ、本出願を制限するものとして理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、当技術分野の文献に記述されている技術若しくは条件、又は製品説明書に従って実行する。使用する試薬又は機器について、製造メーカーが明記されていないものは、いずれも市販で購入できる一般的な製品である。
【0067】
(実施例1)
金属Mn粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0068】
ここで、金属Mn粉末はDv50=10μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Mn粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Mn粉末との質量比率は85:15である。
【0069】
(実施例2)
金属Mn粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0070】
ここで、金属Mn粉末はDv50=20μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Mn粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Mn粉末との質量比率は90:10である。
【0071】
(実施例3)
金属Mn粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0072】
ここで、金属Mn粉末はDv50=5μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Mn粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Mn粉末との質量比率は90:10である。
【0073】
(実施例4)
金属Mn粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0074】
ここで、金属Mn粉末はDv50=5μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Mn粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Mn粉末との質量比率は90:10である。
【0075】
(実施例5)
金属Fe粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0076】
ここで、金属Fe粉末はDv50=10μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Fe粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Fe粉末との質量比率は90:10である。
【0077】
(実施例6)
金属Co粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0078】
ここで、金属Co粉末はDv50=5μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Co粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Co粉末との質量比率は95:5である。
【0079】
(実施例7)
金属Cr粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0080】
ここで、金属Cr粉末はDv50=5μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Cr粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Cr粉末との質量比率は95:5である。
【0081】
(比較例1)
ケイ素系材料、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0082】
ここで、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。
【0083】
(比較例2)
金属Mn粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0084】
ここで、金属Mn粉末はDv50=10μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Mn粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Mn粉末との質量比率は98:2である。
【0085】
(比較例3)
金属Mn粉末とケイ素系材料を混合し、導電性カーボンSuper P、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC、接着剤のSBRを、96:1:1.2:1.8の質量比率で脱イオン水に溶解させ、撹拌して均一な負極スラリーを得て、銅箔基材の表面にスラリーを片面塗布し、乾燥し、ロールプレスして負極板を得る。
【0086】
ここで、金属Mn粉末はDv50=20μmであり、SiOはDv50=4μmであり、黒鉛はDv50=13μmであり、ケイ素系材料において、黒鉛の質量比率は70%であり、SiOの質量比率は30%である。ケイ素系材料と金属Mn粉末の総質量に対して、ケイ素系材料と金属Mn粉末との質量比率は70:30である。
【0087】
上記実施例1~7、比較例1~3の負極板に関するパラメータは、下記表1に示されるとおりである。
【0088】
【0089】
また、上記実施例1~7と比較例1~3で得られた負極板を、それぞれ以下に示されるように二次電池に製造し、性能テストを行う。テスト結果は以下の表2に示されるとおりである。
【0090】
(1)二次電池の製造
正極活物質と導電剤のアセチレンブラック、接着剤のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を94:3:3の重量比で、N-メチルピロリドン溶媒系において十分で均一に混合した後、アルミニウム箔に塗布し、乾燥、冷間加圧して、正極板を得る。
【0091】
負極板は、上記実施例と比較例における負極板を選択する。
【0092】
ポリエチレン(PE)製の多孔質重合フィルムをセパレータとする。正極板、セパレータ及び負極板を順に重ね合わせることにより、セパレータは、正負極の間で隔離作用を奏し、且つ捲回してベアセルを得る。ベアセルを外装に入れ、電解液を注入し、且つパッケージして、各実施例と比較例における正極板を使用する二次電池を得る。
【0093】
(4)二次電池の初回放電容量テスト
上記製造された各二次電池を、それぞれ25℃の恒温環境で、39分間静置し、1/3Cで2.5Vまで放電し、30分間静置した後、1/3Cで4.25Vまで充電し、そして、4.25Vで、電流≦0.05Cになるまで定電圧充電し、30分間静置し、そして、1/3Cで2.5Vまで放電し、この時の放電容量は初回放電容量であり、D0と記す。
【0094】
(2)二次電池の過放電テスト
上記実施例と比較例における二次電池に対して、GB38031-2020におけるテスト方法に従って、BT-2000型電池性能測定装置(メーカー:米国Arbin)を選択して過放電テストを行い、且つ最小逆方向電圧を読取り、0.33Cのレートで4.25Vまで定電流満充電してから、0.05Cまで定電圧充電し、1時間静置し、1Cのレートで90分間放電し、室温で1時間観察する。電池の発火、爆発が発生しなければ、過放電テストに合格したと考えられる。
【0095】
【0096】
上記結果から分かったように、実施例1~7における負極板は、いずれも適量のケイ素系材料と金属粉末を含み、金属粉末のリチウムに対する電極電位がいずれも1.6~3.5Vであるため、過放電テストおいて、いずれも優れた性能を示した。負極板における金属粉末は、酸化してカチオンになり、その後に正極板の表面において還元し析出してからセパレータを突き通すことによって、二次電池内部で短絡を引き起こし、さらに過放電テストにおける持続的な温度上昇による発火から二次電池を保護し、二次電池の安全性能を改善した。
【0097】
これに対して、比較例1において、リチウムに対する電極電位が1.6~3.5Vである金属粉末を添加せず、比較例2において、上記金属粉末をわずかに添加したため、比較例1と比較例2における二次電池は、いずれもその内部で短絡を形成できず、最小逆方向電圧が32.7Vと高くなり、電池内部が放熱し続け、さらに二次電池を保護する作用を奏することによって、過放電テストに合格することができなかった。比較例3における二次電池も過放電テストに合格することができたが、負極板における金属粉末含有量が高すぎて、二次電池のグラム容量を損ない、二次電池のエネルギー密度に影響を与えた。
【0098】
説明すべきことは、本出願は上記実施の形態に限定されない。上記実施形態は例示に過ぎず、本出願の技術案の範囲内で、技術思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用と効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術範囲内に含まれるものとする。なお、本出願の主旨から逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を実施し、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本出願の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0099】
1電池パック、2上ケース、3下ケース、4電池モジュール、5二次電池、51筐体、52電極アセンブリ、53トップカバーアセンブリ