(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61M25/09 516
(21)【出願番号】P 2022564906
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044007
(87)【国際公開番号】W WO2022113233
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史一
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154164(WO,A1)
【文献】特表2002-539901(JP,A)
【文献】特開2004-190167(JP,A)
【文献】特開平07-227429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤであって、
コアシャフトと、
複数の素線を撚り合わせた撚線から構成され、前記コアシャフトの外周を取り囲むように配置された撚線コイル体であって、先端を含み、かつ、特徴部分を含む先端部と、基端部と、を有する撚線コイル体と、を備え、
前記特徴部分における前記撚線コイル体の外径は、前記基端部における前記撚線コイル体の外径と比較して小さく、
前記特徴部分における前記撚線コイル体の横断面における、前記複数の素線のうち、前記コアシャフトの中心点との間の距離が最も大きい素線である最外素線の断面積は、前記基端部における前記撚線コイル体の横断面における、前記複数の素線のうち、前記コアシャフトの前記中心点からの距離が最も大きい素線の断面積と比較して小さく、
前記撚線コイル体の内径は一定であ
り、
前記特徴部分における前記撚線コイル体の横断面のうちの少なくとも1つの横断面において、前記特徴部分を構成する前記最外素線は、隣り合う前記素線との間に間隙を有している、
ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項
1に記載のガイドワイヤであって、
前記特徴部分における前記撚線コイル体の横断面において、前記最外素線を構成する表面のうちの最外面は、平坦形状である、
ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記特徴部分は、前記基端部側において、前記最外素線の断面積が、前記基端部側から前記先端に向かって連続的に小さくなる部分を含んでいる、
ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記撚線コイル体の前記基端部と、前記特徴部分とは、一体に形成されている、
ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項
2に記載のガイドワイヤであって、
前記特徴部分における前記最外素線の前記最外面における表面粗さは、前記特徴部分における前記撚線コイル体の内周面における表面粗さと比較して粗い、
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、血管等に挿入されるガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。一般に、カテーテルを血管等における病変部に案内するために、ガイドワイヤが用いられる。ガイドワイヤは、コアシャフトと、コアシャフトの外周を取り囲むように配置されたコイル体とを備える。ガイドワイヤには、例えば、ガイドワイヤの基端側部分に加えられた回転力を先端側部分へと伝達させる回転性能と、ガイドワイヤの先端側部分における良好な柔軟性とが求められる。また、ガイドワイヤに種々の性能を付与することができる部材を配置する等の目的で、コアシャフトとコイル体との間に内腔が形成される。
【0003】
従来のガイドワイヤは、単線ワイヤ(単素線)で構成されるコイル体において、コイル体の内径を一定としつつ、ガイドワイヤの先端側におけるコイル体の外周面を研削することにより、ガイドワイヤの外径が先端側に向かうほど小さくなるよう形成されている(例えば、特許文献1参照)。また、複数の素線を撚り合わせた撚線から構成された撚線コイル体を備えたガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-539901号公報
【文献】特開2009-337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガイドワイヤの外径が先端側に向かうほど小さくなるよう形成された従来のガイドワイヤでは、コイル体を構成する単素線が先端側において細くなるため、回転性能の点で向上の余地がある。一方、撚線から構成された撚線コイル体を備えたガイドワイヤであれば、回転性能は向上するものの、撚線を構成する複数の素線同士が干渉することにより、柔軟性が低下するおそれがある。撚線コイル体を備えたガイドワイヤにおいて、撚線を構成する素線の径を小さくすれば、柔軟性は向上するが、回転性能が低下するおそれがある。また、従来の撚線を用いて、先端側における撚線コイル体の外径が小さくなるよう巻回すれば、撚線コイル体の内径も小さくなり、コアシャフトとの間に形成される内腔を確保することが困難となる。このように、ガイドワイヤには、コアシャフトとコイル体との間に形成される内腔を確保しつつ、ガイドワイヤの先端部分の良好な柔軟性を維持し、かつ、回転性能を向上させることが望まれている。
【0006】
本明細書では、上述した課題の少なくともいずれか一つ以上を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるガイドワイヤは、ガイドワイヤであって、コアシャフトと、複数の素線を撚り合わせた撚線から構成され、前記コアシャフトの外周を取り囲むように配置された撚線コイル体であって、先端を含み、かつ、特徴部分を含む先端部と、基端部と、を有する撚線コイル体と、を備え、前記特徴部分における前記撚線コイル体の外径は、前記基端部における前記撚線コイル体の外径と比較して小さく、前記特徴部分における前記撚線コイル体の横断面における、前記複数の素線のうち、前記コアシャフトの中心点との間の距離が最も大きい素線である最外素線の断面積は、前記基端部における前記撚線コイル体の横断面における、前記複数の素線のうち、前記コアシャフトの前記中心点からの距離が最も大きい素線の断面積と比較して小さく、前記撚線コイル体の内径は一定である。
【0009】
ガイドワイヤの横断面における撚線コイル体の断面積が小さいほど、柔軟性は向上する。本ガイドワイヤでは、撚線コイル体の内径が一定であり、かつ、特徴部分における撚線コイル体の外径は、基端部における撚線コイル体の外径と比較して小さい。換言すれば、ガイドワイヤの横断面において、特徴部分における撚線コイル体の断面積は、基端部における撚線コイル体の断面積より小さい。このため、基端部と比較して、特徴部分における撚線コイル体の柔軟性を向上させることができ、ひいては、ガイドワイヤの柔軟性を向上させることができる。
【0010】
ガイドワイヤの回転性能は、撚線コイル体を構成する撚線が有する素線の径が大きいほど向上する。本ガイドワイヤでは、特徴部分における撚線コイル体の横断面において、撚線を構成する複数の素線のうちの最外素線の断面積が、基端部における撚線コイル体の横断面における最外素線の断面積と比較して小さい。すなわち、本ガイドワイヤでは、撚線コイル体を構成する一の素線の径を、撚線コイル体の全体にわたって一律に小さくすることなく、撚線コイル体の外径を小さくすることができる。このため、ガイドワイヤの回転性能が低下することを低減することができる。本ガイドワイヤでは、撚線コイル体の内径を一定にすることにより、コアシャフトとコイル体との間に形成される内腔を確保できる。従って、本ガイドワイヤによれば、コアシャフトとコイル体との間に形成される内腔を確保しつつ、ガイドワイヤの先端部分の良好な柔軟性を維持し、かつ、回転性能を向上させることができる。
【0011】
(2)上記ガイドワイヤにおいて、前記特徴部分における前記撚線コイル体の横断面のうちの少なくとも1つの横断面において、前記特徴部分を構成する前記最外素線は、隣り合う前記素線との間に間隙を有している構成としてもよい。複雑に屈曲した血管内におけるガイドワイヤの操作性を向上させるため、指先や器具(例えば、シェイプ針)を用いて、ガイドワイヤの先端部分を屈曲させて使用し、または、使用後に当該先端部分を元の形状に戻すことがある(以下、「シェイプ・リシェイプ」という)。このように、ガイドワイヤの先端部分には、シェイプ・リシェイプの容易性が求められることがある。本構成のガイドワイヤでは、特徴部分を構成する最外素線が、隣り合う素線との間に間隙を有している。このため、当該間隙を有していない構成と比較して、素線同士の干渉を抑制することができ、特徴部分における撚線コイル体のシェイプ・リシェイプの容易性および柔軟性が向上する。従って、本構成のガイドワイヤによれば、ガイドワイヤのシェイプ・リシェイプの容易性および柔軟性をより効果的に向上させることができる。
【0012】
(3)上記ガイドワイヤにおいて、前記特徴部分における前記撚線コイル体の横断面において、前記最外素線を構成する表面のうちの最外面は、平坦形状である構成としてもよい。換言すれば、本構成のガイドワイヤでは、特徴部分における撚線コイル体の外周面に平坦面を有する。このため、外周面が円弧状である構成と比較して、指先や器具(例えば、シェイプ針)に対して面接触させることができ、特徴部分における撚線コイル体のシェイプ・リシェイプの容易性が向上する。従って、本構成のガイドワイヤによれば、ガイドワイヤのシェイプ・リシェイプの容易性をより効果的に向上させることができる。
【0013】
(4)上記ガイドワイヤにおいて、前記特徴部分は、前記基端部側において、前記最外素線の断面積が、前記基端部側から前記先端に向かって連続的に小さくなる部分を含んでいる構成としてもよい。本構成のガイドワイヤでは、特徴部分における最外素線の断面積が連続的に小さくなる部分において、撚線コイル体の剛性は徐々に小さくなる。本構成のガイドワイヤによれば、上記部分が特徴部分における基端部側に含まれているため、特徴部分と基端部との間で剛性が急変することに起因して、トルク伝達性や回転追従性等の回転性能が低下することを抑制することができる。
【0014】
(5)上記ガイドワイヤにおいて、前記撚線コイル体の前記基端部と、前記特徴部分とは、一体に形成されている構成としてもよい。撚線コイル体の基端部と、特徴部分とを接合部等により繋ぎ合わせた構成では、基端部から伝達された回転力が特徴部分にスムーズに伝達されず、接合部における残留応力に起因して、トルク伝達性や回転追従性等の回転性能が低下する。一方、本構成のガイドワイヤによれば、撚線コイル体の基端部と、特徴部分とが、一体に形成されているため、基端部へ伝達された回転力をスムーズに特徴部分へと伝達することができ、ガイドワイヤの回転性能を向上させることができる。
【0015】
(6)上記ガイドワイヤにおいて、前記特徴部分における前記最外素線の前記最外面における表面粗さは、前記特徴部分における前記撚線コイル体の内周面における表面粗さと比較して粗い構成としてもよい。本構成のガイドワイヤによれば、例えば、ガイドワイヤの外周面を樹脂により覆う構成において、撚線コイル体の外周面の表面積が大きくなるため、当該外周面と、樹脂との密着性を向上させ、樹脂がコイル体から剥がれること等を抑制することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ガイドワイヤやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図
【
図2】
図1のガイドワイヤ100のXY断面構成を概略的に示す説明図
【
図3】
図1のガイドワイヤ100のXY断面構成を概略的に示す説明図
【
図4】第2実施形態におけるガイドワイヤ100Aの構成を概略的に示す説明図
【
図5】変形例のガイドワイヤを構成するコイル体30B,30Cの一の撚線300B,300CのXY断面構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の基本構成:
図1、
図2および
図3は、本実施形態におけるガイドワイヤ100の構成を概略的に示す説明図である。
図1には、ガイドワイヤ100の縦断面(YZ断面)の構成が示されており、
図2には、
図1のII-IIの位置におけるガイドワイヤ100の横断面(XY断面)の構成が示されている。また、
図3のA欄、B欄およびC欄には、それぞれ、
図1のIIIA-IIIAの位置、IIIB-IIIBの位置およびIIIC-IIICの位置におけるガイドワイヤ100の横断面(XY断面)の構成が示されている。なお、
図1では、ガイドワイヤ100の一部分の図示が省略されている。
図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。
図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の可撓性を有している。
【0019】
なお、本明細書では、説明の便宜上、ガイドワイヤ100が
図1に示された状態であるものとし、Z軸方向を「ガイドワイヤ100の軸方向」または単に「軸方向」といい、Z軸を中心とする回転方向を「ガイドワイヤ100の周方向」または単に「周方向」という。
【0020】
ガイドワイヤ100は、血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテルを案内するために、血管等に挿入される長尺状の医療用デバイスである。ガイドワイヤ100の全長は、例えば1500mm~3000mm程度であり、ガイドワイヤ100の外径は、例えば0.5~1.2mm程度である。
【0021】
ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体30と、先端側接合部42と、基端側接合部44と、樹脂部50とを備えている。
【0022】
コアシャフト10は、先端側が細径であり基端側が太径である長尺状の部材である。より具体的には、コアシャフト10は、棒状の細径部11と、細径部11に対して基端側に位置し、細径部11より径の大きい棒状の太径部13と、細径部11と太径部13との間に位置し、細径部11との境界位置から太径部13との境界位置に向けて径が徐々に大きくなるテーパ部12とから構成されている。コアシャフト10の各位置における横断面(XY断面)の形状は、任意の形状を取り得るが、例えば、円形や平板形である。太径部13の外径は、例えば0.2~0.6mm程度である。
【0023】
コアシャフト10を構成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が使用される。コアシャフト10は、全体が同じ材料により構成されていてもよいし、部分毎に互いに異なる材料により構成されていてもよい。
【0024】
図1および
図2に示すように、コイル体30は、複数の撚線300を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材であり、コアシャフト10の外周を取り囲むように配置されている。コアシャフト10とコイル体30との間には、内腔Hが形成されている。本実施形態では、コイル体30は、8本の撚線300が密巻された構成である。コイル体30は、基端部BPと、コイル体30の先端を含む先端部APとを有している。コイル体30は、特許請求の範囲における撚線コイル体の一例であり、先端部APは、特許請求の範囲における先端部および特徴部分の一例である。コイル体30の詳細構成については、後で詳述する。
【0025】
コイル体30を構成する形成材料としては、公知の材料が使用され、例えば金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が使用される。複数の撚線300は、同一の材料により構成されていてもよいし、互いに異なる材料により構成されていてもよい。また、撚線300を構成する後述の芯素線310および側素線330とは、同一の材料により構成されていてもよいし、互いに異なる材料により構成されていてもよい。
【0026】
先端側接合部42は、コアシャフト10の先端とコイル体30の先端部AP(具体的には、平坦部FP)の先端とを接合する部材である。すなわち、コアシャフト10の先端とコイル体30の先端部APの先端とが、先端側接合部42の内部に埋め込まれるようにして固着されている。先端側接合部42の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略半球面)となっている。また、基端側接合部44は、軸方向に沿ってコアシャフト10の基端と先端との間の所定の位置において、コアシャフト10とコイル体30の基端部BPの基端とを接合する部材である。すなわち、コイル体30の基端部BPの基端は、基端側接合部44の内部に埋め込まれるようにして固着されている。
【0027】
先端側接合部42および基端側接合部44を構成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等が使用される。本実施形態では、先端側接合部42および基端側接合部44を構成する材料として、ロウ材が使用されている。
【0028】
樹脂部50は、樹脂により形成され、コイル体30、先端側接合部42および基端側接合部44の外周面を覆うコート部材である。樹脂部50を構成する材料としては、公知の材料が使用され、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルプロピレン、PTFE等のフッ素系樹脂、シリコン樹脂等が使用される。樹脂部50の厚みは、例えば0.01~0.1mm程度である。
【0029】
A-2.コイル体30の詳細構成:
次に、本実施形態のガイドワイヤ100におけるコイル体30の詳細構成について説明する。上述の通り、本実施形態のガイドワイヤ100のコイル体30は、複数の撚線300から構成され、基端部BPと、先端部APとを有している。コイル体30を構成する複数の撚線300は、それぞれ、基端部BPから先端部APにわたって連続している。換言すれば、基端部BPと先端部APとは、一体に形成されている。先端部APにおけるコイル体30の外径DEは、基端部BPにおけるコイル体30の外径DEと比較して小さい。一方、コイル体30の内径DIは、基端部BPと、先端部APとの両方にわたって略一定である。また、撚線300の外径DFは、例えば0.1~0.4mm程度である。なお、外径DEは、コイル体30の外接円OCの直径であり、内径DIは、コイル体30の内接円ICの直径である。また、撚線300の外径DFは、コアシャフト10の径方向RDにおける長さである。
【0030】
先端部APは、漸減部DPと平坦部FPとから構成されている。漸減部DPは、基端部BPに連続する部分であり、平坦部FPは、漸減部DPに連続し、かつ、コイル体30の先端を含む部分である。漸減部DPにおいて、コイル体30の外径DEは、基端側から先端側に向かって連続的に小さくなっている。一方、平坦部FPにおいて、コイル体30の外径DEは、基端側から先端側にわたって略一定である。すなわち、漸減部DPの基端側における外径DEは、基端部BPの先端側における外径DEと同等であり、平坦部FPの基端側における外径DEは、漸減部DPの先端側における外径DEと同等である。漸減部DPは、特許請求の範囲における「最外素線の断面積が、基端部側から先端に向かって連続的に小さくなる部分」の一例である。
【0031】
図2を用いて、コイル体30を構成する各撚線300について説明する。
図2には、基端部BPにおけるコイル体30の横断面(以下、単に「基端部BPの横断面」ともいう)が示されている。なお、
図2に示すコイル体30の横断面は、コイル体30の横断面の一例であり、他の横断面において
図2に示すコイル体30の横断面に示す構成と異なる構成となっていてもよい。以下では、コイル体30を構成する撚線300のうちの一の撚線300(以下、「特定撚線300X」という)について説明するが、特定撚線300X以外の撚線300についても特定撚線300Xと同様の構成を有している。特定撚線300Xは、芯素線310と、側素線330(以下、芯素線310と側素線330とをまとめて「素線310,330」ということがある)とが、互いに撚り合わされた2層構造を有している。具体的には、特定撚線300Xは、1本の芯素線310と、その周囲に配置された6本の側素線330とを備える。基端部BPの横断面において、素線310,330の形状は、それぞれ、略円形である。基端部BPの横断面において、芯素線310と側素線330とは、互いに当接しており、また、隣り合う側素線330は互いに当接している。より具体的には、側素線330は、それぞれ、隣り合う側素線330との間に間隙を有していない。各側素線330の径D1は、例えば0.01~0.1mm程度である。素線310,330は、特許請求の範囲における素線の一例である。
【0032】
図2に示すように、特定撚線300Xを構成する側素線330は、具体的には、最外素線331、第1の外素線332、第2の外素線333、第1の内素線334、第2の内素線335および最内素線336から構成されている。最外素線331は、6本の側素線330のうち、径方向RDにおいて、コアシャフト10の中心点Oから最も離れた位置に位置する素線である。換言すれば、最外素線331は、6本の側素線330のうち、コアシャフト10の中心点Oとの間の距離が最も大きい素線である。例えば、最外素線331と、コアシャフト10の中心点Oとの間の距離は、コアシャフト10の中心点Oを通る仮想直線VLにおいて、中心点Oと、最外素線331の交点POとの間の距離である。最外素線331の交点POは、仮想直線VLと、最外素線331の外縁との交点のうち、中心点Oとの距離が大きい方の交点である。最内素線336は、6本の側素線330のうち、径方向RDにおいて、コアシャフト10の中心点Oから最も近い位置に位置する素線であり、中心点Oとの間の距離が最も小さい素線である。外素線332,333は、最外素線331と隣り合う素線であり、内素線334,335は、最内素線336と隣り合う素線である。外素線332,333と、内素線334,335とは、それぞれ、互いに隣り合っている。
図2に示す基端部BPの横断面において、コイル体30の外周面SOは、5本の素線331,332,333,334,335で構成されており、コイル体30の内周面SIは、3本の素線334,335,336で構成されている。基端部BPの横断面において、特定撚線300Xを構成する最外素線331の断面積A1の大きさは、他の素線332,333,334,335,336の各断面積の大きさと、互いに略同一である。最外素線331は、特許請求の範囲における最外素線の一例である。
【0033】
図3を用いて、先端部APにおける特定撚線300Xの横断面について説明する。
図3(A)には、漸減部DPのうち基端側における特定撚線300Xの横断面が示されており、
図3(B)には、漸減部DPのうち先端側における特定撚線300Xの横断面が示されており、
図3(C)には、平坦部FPにおける特定撚線300Xの横断面が示されている。特定撚線300Xは、漸減部DPおよび平坦部FPにおいても、基端部BPと同様に、最外素線331、第1の外素線332、第2の外素線333、第1の内素線334、第2の内素線335および最内素線336から構成されている。
【0034】
図3(A)~(C)に示すように、漸減部DPおよび平坦部FPにおける最外素線331は、基端部BPにおける最外素線331と比較して、コイル体30の外周側の一部が欠損した形状を有している。すなわち、漸減部DPおよび平坦部FPにおける最外素線331の長さDa,Db,Dc(径方向RDにおける長さ)は、いずれも、基端部BPにおける最外素線331の径D1より小さい。このため、漸減部DPおよび平坦部FPにおける特定撚線300Xの長さDA,DB,DCは、いずれも、基端部BPにおける特定撚線300Xの外径DFより短い。換言すれば、漸減部DPおよび平坦部FPにおける最外素線331の断面積A1a,A1b,A1cは、いずれも、基端部BPにおける最外素線331の断面積A1より小さく、ひいては、漸減部DPおよび平坦部FPにおける特定撚線300Xの断面積は、基端部BPにおける特定撚線300Xの断面積より小さい。
【0035】
漸減部DPにおいて最外素線331の長さは、長さDa,Dbに代表されるように、基端側から先端側に向かって連続的に小さくなる(
図1および
図2参照)。換言すれば、漸減部DPにおいて最外素線331の断面積は、断面積A1a,A1bに代表されるように、基端側から先端側に向かって連続的に小さくなる。また、平坦部FPにおいて最外素線331の長さDcは、漸減部DPの先端側の長さ(例えば、長さDb)より小さく、基端側から先端側にわたって略一定である。換言すれば、平坦部FPにおいて最外素線331の断面積A1cは、漸減部DPの先端側の断面積(例えば、断面積A1b)より小さく、基端側から先端側にわたって略一定である。
【0036】
漸減部DPおよび平坦部FPにおいて、最外素線331の最外面S31は、平坦形状である。なお、最外面S31は、最外素線331を構成する表面のうち、径方向RDにおいて最も外周側に位置する表面であり、コイル体30の外周面SOの一部を構成する表面である。漸減部DPおよび平坦部FPにおいて、最外素線331の最外面S31における表面粗さは、最内素線336の内周面(コイル体30の内周面SI)における表面粗さと比較して粗い。
【0037】
本実施形態では、漸減部DPおよび平坦部FPにおける特定撚線300Xは、最外素線331の他にも、コイル体30の外周側の一部が欠損した側素線330を有している。例えば、
図3(A)に示すように、漸減部DPの基端側において、外素線332,333の各断面積は、それぞれ、基端部BPにおける外素線332,333の断面積より小さい。また、
図3(B)および(C)に示すように、漸減部DPの先端側および平坦部FPにおいては、外素線332,333に加えて、内素線334,335についても、その各断面積は、それぞれ、基端部BPにおける内素線334,335の断面積より小さい。なお、外素線332,333および内素線334,335における、漸減部DPおよび平坦部FPにおける断面積の変化は、最外素線331の断面積の変化と同様である。すなわち、漸減部DPにおいて、外素線332,333および内素線334,335の断面積は、基端側から先端側に向かって連続的に小さくなっており、平坦部FPにおいては、基端側から先端側にわたって略一定である。外素線332,333および内素線334,335においても、その最外面は平坦形状であり、最外面の表面粗さは、最内素線336の内周面(コイル体30の内周面SI)における表面粗さと比較して粗い。なお、漸減部DPおよび平坦部FPにおける芯素線310および最内素線336の各断面積は、それぞれ、基端部BPにおける芯素線310および最内素線336の断面積と略同一である。
【0038】
図3(B)および(C)に示すように、漸減部DPの先端側および平坦部FPでは、最外素線331と外素線332,333との間に間隙SPを有している。同様に、外素線332,333と内素線334,335との間にも間隙SPを有している。本実施形態において、平坦部FPにおける間隙SPの大きさは、漸減部DPの先端側における間隙SPの大きさと比較して、大きい。ここで、「間隙SPを有している」とは、隣り合う素線が、互いに当接していないことを意味する。
【0039】
ガイドワイヤ100におけるコイル体30の作製方法は、例えば以下の通りである。すなわち、芯素線310と、最内素線336の形状を有する6本の側素線とを撚り合わせて、撚線(以下、「未加工撚線」という)を作製する。
【0040】
次いで、未加工コイル体を作製する。未加工コイル体は、例えば、複数の(本実施形態においては8本の)未加工撚線を、芯金に巻き付けてコイル状にし、その後、芯金を抜き出し、所定の長さに切断することにより作製することができる。
【0041】
次いで、コイル体30を作製する。コイル体30は、例えば、未加工コイル体における一方の端部(コイル体30において先端部AP(漸減部DPおよび平坦部FP)が形成される部分)を電解液に浸漬し、当該端部を電解研磨により小径化することにより製造されうる。なお、厳密には、漸減部DPおよび平坦部FPの形状の調整は、電解研磨パラメータを調節して研磨量を調節することにより行うことができる。電解研磨パラメータとしては、電解液の液温、液粘度、電流値や、未加工コイル体を電解液から引き抜く際の引き抜き速度等を挙げることができる。以上の製造方法により、上述した構成のコイル体30が製造される。
【0042】
なお、コイル体30を構成する撚線300の最外素線331の最外面S31の表面粗さは、例えば、電解研磨の際の電流値を大きくすること等により、粗くすることができる。
【0043】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、素線310,330を撚り合わせた撚線300から構成され、コアシャフト10の外周を取り囲むように配置されたコイル体30とを備える。また、コイル体30は、先端部APと基端部BPとを有する。先端部APにおけるコイル体30の外径DEは、基端部BPにおけるコイル体30の外径DEと比較して小さい。また、先端部APにおけるコイル体30の横断面における最外素線331の断面積A1a,A1b,A1cは、基端部BPにおけるコイル体30の横断面における最外素線331の断面積A1と比較して小さい。また、コイル体30の内径DIは一定である。
【0044】
ガイドワイヤの横断面におけるコイル体の断面積が小さいほど、柔軟性は向上する。本実施形態のガイドワイヤ100では、コイル体30の内径DIが一定であり、かつ、先端部APにおけるコイル体30の外径DEは、基端部BPにおけるコイル体30の外径DEと比較して小さい。換言すれば、ガイドワイヤ100の横断面において、先端部APにおけるコイル体30の断面積は、基端部BPにおけるコイル体30の断面積より小さい。このため、基端部BPと比較して、先端部APにおけるコイル体30の柔軟性を向上させることができ、ひいては、ガイドワイヤの柔軟性を向上させることができる。
【0045】
ガイドワイヤの回転性能は、コイル体を構成する撚線が有する素線の径が大きいほど向上する。本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APにおけるコイル体30の横断面において、撚線300(特定撚線300X)を構成する最外素線331の断面積A1a,A1b,A1cが、基端部BPにおけるコイル体30の横断面における最外素線331の断面積A1と比較して小さい。すなわち、本実施形態のガイドワイヤ100では、コイル体を構成する一の素線の径を、コイル体の全体にわたって一律に小さくすることなく、コイル体30の外径DEを小さくすることができる。このため、ガイドワイヤ100の回転性能が低下することを低減することができる。本実施形態のガイドワイヤ100では、コイル体30の内径DIを一定にすることにより、コアシャフト10とコイル体30との間に形成される内腔Hを確保できる。従って、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、コアシャフト10とコイル体30との間に形成される内腔Hを確保しつつ、ガイドワイヤ100の先端部分の良好な柔軟性を維持し、かつ、回転性能を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、撚線300(特定撚線300X)が、芯素線310と、複数の側素線330とから構成されている。側素線330に取り囲まれた芯素線310は、コイル体30の全体にわたって外周面SOを構成しないため、コイル体30の全体にわたって一定の径を有している。換言すれば、芯素線310は、コイル体30の全体にわたって、欠損していない。このため、芯素線310は、コイル体30の全体にわたって、ガイドワイヤ100の回転性能の向上に貢献することができる。また、本実施形態のガイドワイヤ100では、撚線300(特定撚線300X)を構成する最内素線336は、基端部BPおよび先端部APの全体にわたって一定の径を有している。このため、最内素線336は、コイル体30の全体にわたって、ガイドワイヤ100の回転性能の向上に貢献することができる。従って、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、ガイドワイヤ100の回転性能をより効果的に向上させることができる。
【0047】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APにおけるコイル体30の横断面において、先端部APを構成する最外素線331は、隣り合う素線(外素線332,333)との間に間隙SPを有している。複雑に屈曲した血管内におけるガイドワイヤの操作性を向上させるため、指先や器具(例えば、シェイプ針)を用いて、ガイドワイヤの先端部分を屈曲させて使用し、または、使用後に当該先端部分を元の形状に戻すことがある(以下、「シェイプ・リシェイプ」という)。このように、ガイドワイヤの先端部分には、シェイプ・リシェイプの容易性が求められることがある。本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APを構成する最外素線331が、隣り合う素線(外素線332,333)との間に間隙SPを有している。このため、当該間隙を有していない構成と比較して、素線同士の干渉を抑制することができ、先端部APにおけるコイル体30のシェイプ・リシェイプの容易性および柔軟性が向上する。従って、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、ガイドワイヤ100のシェイプ・リシェイプの容易性および柔軟性をより効果的に向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APにおけるコイル体30の横断面において、最外素線331を構成する表面のうちの最外面S31は、平坦形状である。換言すれば、本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APにおけるガイドワイヤ100の外周面SOに平坦面(最外面S31)を有する。このため、外周面(最外素線の最外面)が円弧状である構成と比較して、指先や器具(例えば、シェイプ針)に対して面接触させることができ、先端部APにおけるコイル体30のシェイプ・リシェイプの容易性が向上する。従って、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、ガイドワイヤ100のシェイプ・リシェイプの容易性をより効果的に向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APは、基端部BP側において、最外素線331の断面積(例えば、断面積A1a,A1b)が、基端部BP側から先端に向かって連続的に小さくなる漸減部DPを含んでいる。本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APにおける漸減部DPにおいて、コイル体30の剛性は徐々に小さくなる。本実施形態のガイドワイヤ100によれば、漸減部DPが先端部APにおける基端部BP側に含まれているため、先端部APと基端部BPとの間で剛性が急変することに起因して、トルク伝達性や回転追従性等の回転性能が低下することを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、コイル体30の基端部BPと、先端部APとは、一体に形成されている。コイル体の基端部と、特徴部分とを接合部等により繋ぎ合わせた構成では、基端部から伝達された回転力が特徴部分にスムーズに伝達されず、接合部における残留応力に起因して、トルク伝達性や回転追従性等の回転性能が低下する。一方、本実施形態のガイドワイヤ100によれば、コイル体30の基端部BPと、先端部APとが、一体に形成されているため、基端部BPへ伝達された回転力をスムーズに先端部APへと伝達することができ、ガイドワイヤ100の回転性能を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態のガイドワイヤ100では、先端部APにおける最外素線331の最外面S31における表面粗さは、先端部APにおけるコイル体30の内周面SIにおける表面粗さと比較して粗い。本実施形態のガイドワイヤ100によれば、コイル体30の外周面SOの表面積が大きくなるため、外周面SOと、樹脂部50との密着性を向上させ、樹脂部50がコイル体30から剥がれること等を抑制することができる。
【0052】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態におけるガイドワイヤ100Aの構成を概略的に示す説明図である。
図4には、ガイドワイヤ100Aの縦断面(YZ断面)の構成が示されている。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成の内、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0053】
第2実施形態のガイドワイヤ100Aは、コアシャフト10と、コイル体30Aと、先端側接合部42Aと、基端側接合部44と、樹脂部50とを備えている。ガイドワイヤ100Aは、第1実施形態のコイル体30に代えて、コイル体30Aを備えている点で、第1実施形態のガイドワイヤ100とは異なっている。
【0054】
コイル体30Aは、第1実施形態のコイル体30と同様に、複数の撚線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材であり、コアシャフト10の外周を取り囲むように配置されている。コイル体30Aは、基端部BPと、コイル体30の先端を含む先端部APとを有している。本実施形態においても、コイル体30Aを構成する複数の撚線は、それぞれ、基端部BPから先端部APにわたって連続している。換言すれば、基端部BPと先端部APとは、一体に形成されている。コイル体30Aの形成材料は、コイル体30と同様である。コイル体30Aは、特許請求の範囲における撚線コイル体の一例である。
【0055】
コイル体30Aにおいて、先端部APは、漸減部DPと、平坦部FPと、頭部HPとから構成されている。漸減部DPは、基端部BPに連続する部分であり、平坦部FPは、一方の端部において漸減部DPに連続し、かつ、他方の端部において頭部HPに連続する部分である。頭部HPは、平坦部FPに連続し、かつ、コイル体30Aの先端を含む部分である。第1実施形態のコイル体30と同様に、コイル体30Aの外径DEは、漸減部DPにおいて、基端側から先端側に向かって連続的に小さくなっており、平坦部FPにおいて、基端側から先端側にわたって略一定である。すなわち、漸減部DPの基端側における外径DEは、基端部BPの先端側における外径DEと同等であり、平坦部FPの基端側における外径DEは、漸減部DPの先端側における外径DEと同等である。換言すれば、漸減部DPおよび平坦部FPおけるコイル体30Aの外径DEは、基端部BPにおけるコイル体30Aの外径DEと比較して小さい。一方、コイル体30の内径DIは、基端部BPと、先端部APとの両方にわたって略一定である。平坦部FPおよび漸減部DPは、特許請求の範囲における特徴部分の一例であり、漸減部DPは、特許請求の範囲における「最外素線の断面積が、基端部側から先端に向かって連続的に小さくなる部分」の一例である。
【0056】
頭部HPにおいて、コイル体30Aの外径DEは、平坦部FPの外径DEより大きく、頭部HPの先端側では、基端部BPの外径DEと同等である。頭部HPの基端側における外径DEは、平坦部FPの先端側における外径DEと同等である。頭部HPは、特許請求の範囲における先端部の一例である。
【0057】
本実施形態において、先端側接合部42Aは、コアシャフト10の先端とコイル体30の先端部AP(具体的には、頭部HP)の先端とを接合する部材である。すなわち、コアシャフト10の先端とコイル体30の先端部APの先端とが、先端側接合部42Aの内部に埋め込まれるようにして固着されている。
【0058】
上記構成を備える第2実施形態のガイドワイヤ100Aにおいても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態では、コイル体30Aの頭部HPの先端側において、コイル体30Aを構成するいずれの素線も欠損していない。このため、本実施形態のコイル体30Aでは、コイル体30Aを構成する撚線の解けを抑制することができる。
【0059】
C.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0060】
上記実施形態では、
図3(B),(C)に示すように、最外素線331と外素線332,333との間に間隙SPを有する構成としたが、これに限定されない。
図5(A)には、
図3(C)と同一の位置(
図1のIIIC-IIICの位置)におけるコイル体30Bを構成する撚線300BのXY断面構成が概略的に示されている。
図5(A)に示すように、撚線300Bが、最外素線331Bと外素線332B,333Bとが当接している構成、すなわち、間隙SPを有さない構成を採用してもよい。本構成においても、先端部APにおけるコイル体30Bの外径DEを、基端部BPにおけるコイル体30Bの外径DEと比較して小さくし、かつ、コイル体30Bの内径DIを一定にすることができる。また、先端部APにおけるコイル体30Bの横断面における、素線331B,332B,333B,334B,335Bの断面積は、それぞれ、基端部BPにおける各素線の断面積と比較して小さい。このため、本構成においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
上記実施形態では、
図3(A)~(C)に示すように、最外素線331の最外面S31が平坦形状である構成としたが、これに限定されない。
図5(B)には、
図3(C)と同一の位置(
図1のIIIC-IIICの位置)におけるコイル体30Cを構成する撚線300CのXY断面構成が概略的に示されている。
図5(B)に示すように、撚線300Cを構成する素線331C,332C,333C,334C,335Cの最外面が円弧状である構成を採用してもよい。本構成においても、先端部APにおけるコイル体30Cの外径DEを、基端部BPにおけるコイル体30Cの外径DEと比較して小さくし、かつ、コイル体30Cの内径DIを一定にすることができる。また、先端部APにおけるコイル体30Cの横断面における、素線331C,332C,333C,334C,335Cの断面積は、それぞれ、基端部BPにおける各素線の断面積と比較して小さい。このため、本構成においても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
上記実施形態では、コイル体30は芯素線310と6本の側素線330とを撚り合わせた撚線300が密巻きされた構成であるが、コイル体30の基端部BPおよび/または先端部APは撚線300が粗巻きされた構成であってもよい。また、上記実施形態では、コイル体30は、8本の撚線300を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成された構成であるが、1本の撚線300を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよいし、2本から7本の撚線300、または、9本以上の撚線300を螺旋状に巻回することにより中空円筒形状に形成した構成であってもよい。また、撚線を構成する素線は2本以上であれば、特に限定されない。例えば、側素線が、1本から5本、または、7本以上である構成であってもよく、撚線が、芯素線を有さない構成であってもよい。
【0063】
上記実施形態のガイドワイヤ100において、樹脂部50を備えない構成や、一部に樹脂部を備える構成等を採用してもよい。
【0064】
上記実施形態のガイドワイヤ100において、コイル体30を構成する基端部BPと、先端部APとが別体に形成されていてもよい。このような構成では、基端部BPと先端部APとを接合部などにより接合することが好ましい。接合部を構成する材料としては、公知の材料を使用することができ、例えば、ロウ材(アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ等)、金属ハンダ(Ag-Sn合金、Au-Sn合金等)、接着剤(エポキシ系接着剤等)等を使用することができる。
【0065】
上記実施形態では、コイル体30を構成する全ての撚線300が、特定撚線300Xと同様の構成を有しているとしたが、これに限定されず、一部の撚線300が、特定撚線300Xと同様の構成を有していなくてもよい。
【0066】
上記実施形態では、先端部APにおけるコイル体30の横断面において、最外素線331の最外面S31が平坦形状である構成を採用したがこれに限定されず、最外素線の最外面は円弧状等の形状を有していてもよい。また、最外素線331の最外面S31における表面粗さが先端部APにおけるコイル体30の内周面SIにおける表面粗さと同等、または、内周面SIにおける表面粗さが最外面S31における表面粗さより粗い構成であってもよい。
【0067】
上記実施形態において、コアシャフト10とコイル体30との間に形成された内腔Hに、種々の性能を付与することができる部材が配置されていてもよい。このような部材として、例えば、X線不透過の部材、回転性能を向上可能な部材、シェイプ性を向上可能な補助部材、安全性を向上可能な部材等を挙げることができる。X線不透過の部材を内腔Hの先端部分に配置することにより、X線透視下での視認性が向上し、術者の操作性を向上させることができる。X線不透過の部材として、例えば、プラチナ、タングステン等で形成された単コイル、撚線コイルまたはパイプ等が挙げられる。また、回転性能を向上可能な部材として、例えば、コイル体、撚線コイル体等が挙げられる。また、シェイプ性を向上可能な補助部材として、例えば、ステンレスや、焼鈍されたNiTiで形成された線材等が挙げられる。また、安全性を向上可能な部材として、例えば、ステンレスで形成された撚線体等が挙げられる。ステンレスで形成された撚線体を配置することにより、さらに、ガイドワイヤにおける引張強度を確保することができる。
【0068】
上記実施形態では、コアシャフト10が、細径部11とテーパ部12と太径部13とから構成されているが、コアシャフト10の形状は特に限定されず、コアシャフト10が、これら3つの部分の内の少なくとも1つを有さないとしてもよいし、該3つの部分の他に他の部分を有するとしてもよい。例えば、コアシャフト10は、太径部13の基端側が、太径部13より径の大きい部分に接続されていてもよい。
【0069】
上記実施形態における各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。また、上記実施形態におけるコイル体の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、電解研磨以外の化学的加工や、研削や研磨等の物理的加工により、未加工コイル体からコイル体30を作製してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10:コアシャフト 11:細径部 12:テーパ部 13:太径部 30:コイル体 30A:コイル体 30B:コイル体 30C:コイル体 42:先端側接合部 42A:先端側接合部 44:基端側接合部 50:樹脂部 100:ガイドワイヤ 100A:ガイドワイヤ 300:撚線 300B:撚線 300C:撚線 300X:特定撚線 310:芯素線 330:側素線 331:最外素線 331B,332B,333B,334B,335B:素線 331B:最外素線 331C,332C,333C,334C,335C:素線 332:第1の外素線 332A,333A:外素線 333:第2の外素線 334:第1の内素線 335:第2の内素線 336:最内素線 A1:断面積 A1a,A1b,A1c:断面積 AP:先端部 BP:基端部 D1:径 DA,DB,DC:長さ DE:外径 DF:外径 DI:内径 DP:漸減部 Da,Db,Dc:長さ FP:平坦部 H:内腔 HP:頭部 IC:内接円 O:中心点 OC:外接円 PO:交点 RD:径方向 S31:最外面 SI:内周面 SO:外周面 SP:間隙 VL:仮想直線