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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】LED構造及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/14 20100101AFI20240730BHJP
   H01L 33/24 20100101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L33/14
H01L33/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022570460
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2021033097
(87)【国際公開番号】W WO2021236732
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】63/027,069
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ミアオ-チャン
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512567(JP,A)
【文献】特開2012-009810(JP,A)
【文献】特表2010-510655(JP,A)
【文献】特表2014-527313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0144871(US,A1)
【文献】QUAN, Zhijue et al.,Roles of V-shaped pits on the improvement of quantum efficiency in InGaN/GaN multiple quantum well light-emitting diodes,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,米国,AIP Publishing,2014年11月14日,Vol.116,pp.183107-1~283107-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)構造であって、
平面成長面を有する半導体テンプレートと、
前記平面成長面上に設けられている活性量子井戸(QW)構造とを備え、前記活性QW構造は、前記平面成長面に非平行な側壁を有し、さらに、
前記活性QW構造上に設けられているp型層を備え、前記p型層は、前記活性QW構造の前記側壁に対向する面を有し、前記p型層は、前記平面成長面において終端しかつ前記平面成長面に接触しており、
前記p型層の前記面及び前記活性QW構造の前記側壁は、前記LED構造の動作の間、正孔が、前記p型層から前記p型層の前記面を通してかつ前記活性QW構造の前記側壁を通して前記平面成長面に平行な方向に前記活性QW構造に注入されるように配置されている、発光ダイオード(LED)構造。
【請求項2】
前記活性QW構造は、前記半導体テンプレートに平行に形成されており、かつ、前記平面成長面に対して面法線方向に積層されている複数のQW層および量子障壁層のペアを含み、
前記p型層の前記面と前記複数のQW層および量子障壁層のペアとは、前記LED構造の動作の間、正孔が、前記活性QW構造の前記側壁を通して前記活性QW構造内の複数の前記QW層の各々に注入されるように配置されている、請求項1に記載のLED構造。
【請求項3】
前記活性QW構造内の前記量子障壁層の少なくとも1つは、前記面法線方向に、50ナノメートルより大きな厚みを有する、請求項2に記載のLED構造。
【請求項4】
前記活性QW構造と前記半導体テンプレートとの間に形成されている正孔ブロック層をさらに備え、前記正孔ブロック層は、前記LED構造の動作の間、前記活性QW構造から前記半導体テンプレートへの正孔の移動を防止する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項5】
前記半導体テンプレートと前記正孔ブロック層との間に配置されている準備層をさらに備える、請求項4に記載のLED構造。
【請求項6】
前記p型層上に配置されているpコンタクト層をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項7】
前記平面成長面に対して垂直な断面において、前記LED構造は、台形、三角形、または矩形のうちの一つである形状を形成している、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項8】
前記p型層の前記面は、前記平面成長面に対して非垂直でありかつ非平行である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項9】
前記活性QW構造の前記側壁は、前記平面成長面に対して非垂直でありかつ非平行である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項10】
半導体テンプレート上に発光ダイオード(LED)構造を製造する方法であって、前記半導体テンプレートは平面成長面を有し、前記方法は、
前記平面成長面上に、活性量子井戸(QW)構造を形成することを備え、前記活性QW構造は、前記平面成長面に非平行な側壁を有し、さらに、
前記活性QW構造上にp型層を形成することを備え、前記p型層は、前記活性QW構造の前記側壁に対向する面を有し、前記p型層は、前記平面成長面において終端しかつ前記平面成長面に接触しており、
前記p型層の前記面及び前記活性QW構造の前記側壁は、前記LED構造の動作の間、正孔が、前記p型層から前記p型層の前記面を通してかつ前記活性QW構造の前記側壁を通して前記平面成長面に平行な方向に前記活性QW構造に注入されるように配置されている、方法。
【請求項11】
前記活性QW構造から前記半導体テンプレートに前記正孔が移動することを防止するために、前記活性QW構造と前記半導体テンプレートとの間に正孔ブロック層を形成することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記p型層の前記面は、前記平面成長面に対して非垂直かつ非平行である、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記半導体テンプレートは、n型にドープされている、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項14】
前記活性QW構造は、前記側壁に接続され、かつ、前記半導体テンプレートとは反対側にある上面(但し、ピットを含む上面を除く。)を有する、請求項1~9、13のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項15】
前記活性QW構造は、前記側壁に接続され、かつ、前記半導体テンプレートとは反対側にある上面(但し、ピットを含む上面を除く。)を有する、請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2020年5月19日に出願された米国仮特許出願番号63/027,069から利益を受け、その優先権を主張し、その開示は参照により全体として本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
技術分野
本開示の態様は、一般に、様々なタイプのディスプレイ及び他のデバイスで使用される発光素子の構造等の発光構造に関するものである。
【背景技術】
【0003】
背景
ディスプレイにおける発光素子(例えば、画素)の数は、より良いユーザー体験を提供し、新しい用途を可能にするために増加し続けている。しかしながら、発光素子の数を増加させることは、デザインの観点および製造の観点から困難である。発光素子の小型化は、デバイス内の発光素子の密度を高めることを可能にする。しかしながら、効果的かつ効率的により小型の発光素子を多数および高密度に作成するための技術は、広く普及していない。例えば、より小型の発光ダイオード(LED)を製造すること、および、パフォーマンスおよびサイズについての厳しい要件を伴ってますます高度化するディスプレイアーキテクチャにこのようなLEDを組み込むことは、困難である。加えて、ディスプレイ用途の発光素子の発行特性の改良も必要である。
【0004】
以上より、発光素子の効果的かつ効率的な設計および製造、並びに、発光素子の改善された動作を可能にする技術およびデバイスが本明細書に開示される。
【発明の概要】
【0005】
概要
以下に、各態様の基本的な理解のための1つ以上の態様の簡略化された概要について示す。本概要は、全ての想定される態様の広範な概観ではなく、また、全ての態様の主要なまたは必須の要素を特定することも、任意または全ての態様の範囲を詳述することも意図していない。その目的は、より詳細な説明の前置きとして、簡略化して、1つ以上の態様のいくつかの概念を提供することである。
【0006】
本開示は、改善された効率で完全な可視スペクトルでの発光を可能にする半導体発光器の態様を提供する。いくつかの例において、態様は、マイクロLEDに適用され得る。いくつかの例において、態様は、マイクロLEDディスプレイに適用され得る。本開示の態様は、デバイスの小型化において高効率を維持するLED技術およびディスプレイ技術の用途を可能にする。
【0007】
ある実施の態様によると、発光ダイオード(LED)構造は、テンプレート上面を有する半導体テンプレートと、半導体テンプレート上に形成されている活性量子井戸(QW)と、p型層とを含む。p型層は、活性QWおよびテンプレート上面に対向する底面を有する。底面は、奥まった側壁を含む。p型層の奥まった側壁は、活性QW構造のQW側壁を通した活性QW構造への正孔の注入を促進するように構成されている。
【0008】
本開示の他の態様によると、半導体テンプレート上にQWベースのLED構造を形成するための方法が開示される。半導体テンプレートは、テンプレート上面を有している。方法は、テンプレート上面上に活性量子井戸(QW)構成を形成することを含む。方法は、また、活性QW上にp型層を形成することを含む。p型層は、活性QWおよびテンプレート上面に対向する底面を有する。底面は、奥まった側壁を含む。方法は、また、非垂直面を通過して、活性QWに正孔を注入することを含む。
【0009】
また、本開示の他の態様によると、半導体テンプレート上に、量子井戸ベースの発光ダイオード構造を形成するための方法が開示される。半導体テンプレートは、平面と、当該平面に対する面法線とを定義する。方法は、面法線に垂直である発光ダイオード構造の表面に正孔を注入することを含む。
【0010】
添付の図面は、単に、いくつかの実施形態を示しており、よって、範囲の限定をするものと考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】量子井戸ベースのLED構造の一例を示す図である。
図2】本開示の態様に従い、量子井戸層の側壁正孔の注入で強化された量子井戸ベースのLED構造の一例を示す図である。
図3】本開示の態様に従い、量子井戸層の側壁正孔の注入で強化された量子井戸ベースのLED構造の他の例を示す図である。
図4】本開示の態様に従い、量子井戸層の側壁正孔の注入で強化された量子井戸ベースのLED構造のさらに他の例を示す図である。
図5】本開示の態様に従い、量子井戸層の側壁正孔の注入で強化された量子井戸ベースのLED構造のさらに他の例を示す図である。
図6】本開示の態様に従い、量子井戸層の側壁正孔の注入により強化され、かつ、1つの半導体テンプレート上で支えられる複数の量子井戸ベースのLED構造の一例を示す図である。
図7】本開示の態様に従うアレイの一部である複数のLED構造の上面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
添付図面に関連して以下に示される詳細な説明は、様々な構成の説明を意図したものであり、本開示の概念を実施可能な唯一の構成を表すことを意図したものではない。詳細な説明は、様々な概念の徹底的な理解を提供することを目的とした具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの概念は、これらの具体的な詳細なしでも実施可能であることは、当業者には明らかである。いくつかの例では、そのような概念を不明確にしないように、ブロック図の態様でよく知られた構成が示される。
【0013】
本開示で使用されるように、「発光構造」および「発光素子」という用語は、互換的に使用されてもよく、例えば、「発光構造」という単語は、特定の色の光を生成するように構成された1つのコンポーネントの構造的配置(素材、層、構成等)を表すために使用されてもよく、また、「発光素子」、「発光器(light emitter)」または単に「エミッター(emitter)」は、より一般的に、1つのコンポーネントを示すために使用され得る。
【0014】
光デバイスまたはディスプレイにおける発光構造または素子(画素等)の増加は、ユーザー体験を向上させ、新しい用途を可能にする。しかしながら、発光素子の数または発光素子の密度を増加させることは、困難である。数および密度の両方の増加を可能にする発光構造の小型化によって、小型LED(マイクロLEDまたはナノエミッター等)の潜在的な利用法がより魅力的になる。大量に、高密度に、および、異なる色(赤、緑、青等)を出力可能な小型LEDを製造するための現状利用可能な技術は、面倒で、時間がかかり、コストがかかり、または、性能上の制限を有する構造をもたらす。よって、高品質な活性(エミッティング等)領域を有する小型の発光構造を形成することを可能にする新しい技術、デバイスまたは構造的構成が必要とされている。
【0015】
本開示は、改善された効率での発光を可能にする半導体発光器の態様を示す。本開示の態様は、デバイスの小型化において高効率を維持するLED技術の用途を可能にする。いくつかの例では、発光器は、ミクロンスケールまたはサブミクロンスケールのサイズを有し得る。
【0016】
一例として、III族窒化物LEDは、光の可視スペクトルの広域部分をカバーするために、照明またはディスプレイシステムに組み込まれ得る。しかしながら、長波長(赤の波長等)の発光により、および/または、個々の発光器のサイズの小型化により、発光器の効率は低下することがある。例えば、この低下は、所望の輝度で高いキャリア濃度を有し、非放射過程に対してより影響を受けやすい側壁表面の劣化、エピタキシャル(epitaxial)成長の問題、発光物質の量の削減、および/または、発光器の活性量子井戸領域にまたがる非対称なキャリア濃度を引き起こす量子井戸構造全体の非均一な正孔の分布等に起因する。
【0017】
図1は、活性量子井戸(QW)構造をベースにして発光する典型的なLED構造100を示す。図1に示されるように、LED構造100は、半導体テンプレート110上に形成されている。準備層120は、半導体テンプレート110上で活性QW構造130を形成する準備として、半導体テンプレート110上において形成、配置または成長させられる。準備層120は、例えば、活性QW構造130が半導体テンプレート110上で直接成長した場合と比較して、その上で成長した活性QW構造130の材料特性を向上させる表面の段差および/または形態を提供する遷移層として機能する。p型層140は、導電性コンタクト層と共に保護層を提供するために、活性QW構造130の上面に形成されている。準備層120、活性QW構造130およびp型層140は図1に単一の層として示されているが、これらの層の各々は、上記の機能を提供するために異なる材質の複数の層を含んでもよいと認識される。例えば、活性QW構造130は、QWおよび量子障壁(QB)層の1つ以上の対を含み得る。
【0018】
一般的に、活性QW構造130の発光特性は、III族窒化物発光素子のc方向150におけるc面139を通した、p型層140から活性QW構造130への正孔の注入に依存する。いくつかの実施の形態によると、c面方向150は、半導体テンプレート110の表面に対して定義される面法線160に対して平行である。図1に示されるように、面法線160は、準備層120、活性QW構造130およびp型層140が成長する層積層軸に対して平行である。しかしながら、正孔注入のこの方法は、p型層140付近に非常に多くの正孔が集中すること、および、準備層120に向けて活性QW構造130において正孔の密度が低下することを引き起こし、そして、活性QW構造130全体を通して正孔の不均一な分布をもたらす。より具体的には、そのような問題は、正孔の移動度が電子の移動度よりも低い場合に発生し、これは発光デバイスに使用される半導体材料の多くの場合で発生し、III族窒化物材料システムの場合において特に顕著である。このような活性QW構造130全体の非対称なキャリア濃度は、低減された放射性再結合、および、LED構造100からの発光の効率の低下を引き起こすかもしれない。
【0019】
1つ以上の量子井戸層の側壁正孔注入のために構成された発光構造を通じて、より広い電流密度範囲に加えてより広い波長範囲においてより高い効率を可能にするマイクロLEDおよび/またはナノLED構造の態様が本明細書に提示されている。例えば、本明細書に提示される態様は、発光のより長い波長における効率を改善し得る。本明細書に開示されるデバイス構成および技術は、任意の半導体QW構造およびデバイスに適用可能であることを留意されたい。
【0020】
図2は、本明細書に記載されているように、側壁正孔注入によって強化されたQWベースのLED構造200の例を示す。図2に示されるように、LED構造200は、GaNテンプレートまたは半導体基板上に形成されているエピタキシャル層等の半導体テンプレート110上に形成されている。いくつかの例では、エピタキシャル成長およびドライエッチングまたは選択領域成長などの技術は、LED構造200の素子の位置、形状およびサイズを規定するために使用され得る。
【0021】
LED構造200は、半導体テンプレート110の上面119上に形成されている準備層220を含む。いくつかの実施形態では、図2に示されるように、準備層220の1つ以上の表面が面119に平行になるように、準備層220は半導体テンプレート110上に形成され得る。準備層220は、その上に活性QW構造230を形成するための表面条件を改善するために、1つ以上の材料の層を含む。活性QW構造230は、準備層220上に形成、成長または配置されている量子障壁(QB)層に挟まれる1つ以上のQW層のセットを含む。活性QW構造230は、LED構造200の発光源として機能する。例えば、5セット以上のQW/QB層のセットは、活性QW構造230内に含まれる。活性QW構造230からの意図された発光波長および動作輝度に応じて、50セット以上のQW/QB層が、活性QW構造230内に含まれてもよい。活性QW構造230の所望の性能特性に応じて、InGaN等の様々な材料がQW層として実装され得る。準備層220および活性QW構造230からの電流漏れを防ぐために、電子ブロック層240は、準備層220および活性QW構造230の周囲に形成されている。
【0022】
再度図2を参照すると、c面方向150における、活性QW構造230の上面239を通した通常のc面移動に加えて、矢印254によって示される方向における、活性QW構造230の側壁252を通した正孔注入を提供するために、p型層250は、電子ブロック層240のまわりに形成されている。QW層230に向けた側壁正孔注入は、活性QW構造230にわたってより均一な正孔の分布を可能にし、これは、LED構造200の外部量子効率(EQE(external quantum efficiency))を改善できる。
【0023】
以下にさらに詳細に記載されるように、側壁正孔注入の実装はQW層230内のQW/QBペアの数を増加させることができ、並びに、各QB層の厚みを増加させ得ることに留意されたい。すなわち、QW/QB層の数およびQB層の厚みの増加があったとしても、側壁正孔注入は、QW層のセット全体を通してより均一な正孔の分布を可能にし、したがって、改善されたLED発光性能、ならびに、追加のデバイス設計およびエピタキシャル成長構造の柔軟性をもたらす。例えば、側壁正孔注入と共に、数十のQW/QBの組み合わせ層がLED構造200に含まれてもよく、したがって、従来よりも、広い範囲の波長にわたる発光のための拡張された設計オプションを提供する。また、各QB層は、LED構造200のEQE特性を減少させることなく、50nmまたはそれより大きな厚みを有し得る。各QB層の増加した厚みは、例えば、活性QW構造230全体の歪みバランスおよび成長形態を改善するのに役立ち得る。最後に、pコンタクト260は、p型層250上に形成されており、LED構造200への電気的接触を提供する。pコンタクト260は、金属、金属合金もしくは透明導体、または、p型層250と互換性のある他の導電材料で形成されている。
【0024】
いくつかの態様によると、準備層への正孔の移動を防止するために追加の正孔ブロック層がLED構造に組み込まれてもよく、これにより、活性QW構造への正孔注入効率が改善する。図3および図4に、正孔ブロック層を含むLED構造の2つの例が示される。
【0025】
図3に示されるように、LED構造200の様々なコンポーネントに加えて、LED構造300は、半導体テンプレート110と準備層220との間に配置されている正孔ブロック層310を含むことで、半導体テンプレート110を通した、準備層への正孔の移動を防止する。同様に、図4において、LED構造400は、準備層220を囲む正孔ブロック層410を含むことで、準備層220への側壁正孔注入を防止し、したがって、活性QW構造230に対する側壁正孔注入効果を分離する。正孔ブロック層に適した材料は、nドープAlInGaN又はAlGaN材料などのnドープ層を含むが、これらに限定されない。
【0026】
図5は、実施例に従う側壁正孔注入により強化されたQWベースのLED構造500の例示的な実施形態を示す。LED構造500は、半導体テンプレート110上に形成されている準備層520を含む。準備層520の寸法は、例えば、エピタキシャル成長およびドライエッチングまたは選択領域成長技術により定義され得る。図4のLED構造400のように、準備層520は、正孔ブロック層525に囲まれることで、準備層520への正孔の移動を減らす。活性QW構造530は、本実施例では、正孔ブロック層525上に、ピラミッド型になるように、QB層532およびQW層534の交互の積層を形成することにより生成される。活性QW構造530は、電子ブロック層540により囲まれており、そして、p型層550はその上に形成されている。p型層550は、c面方向150に垂直または垂直成分を有する方向を示す矢印554によって示されるように、特にQW層534への正孔の注入を促進する。pコンタクト560は、p型層550上に部分的に形成されており、LED構造500への電気的接触を提供する。図5に示される例では、LED構造500は、さらに、半導体テンプレート110上に配置され得、かつ、正孔ブロック層525に隣接し得る誘電体層580を含むことに留意されたい。実施例において、誘電体層580は、電子ブロック層540、p型層550および半導体テンプレート110の接触を防止し、さらに、準備層520への正孔の移動を防止する。例えば、誘電体層580は、p型層550と半導体テンプレート110との間の不要な電流の流れを防止するように構成されてもよい。既に述べた実施例におけるように、p型層550は、c方向150以外の方向におけるQW層534への正孔注入を可能にし、したがって、活性QW構造530全体への正孔移動において、さらなる均一性をもたらす。その結果、LED構造500は、側壁正孔注入を可能にするデバイスアーキテクチャを有しないLEDデバイスを上回る改善されたEQEおよび発光の改善をもたらす。
【0027】
図6は、実施例に従う、側壁正孔注入によって強化されたQWベースのLED構造を含むLEDアレイ600を示す。図6に示されるように、LEDアレイ600は、LED構造200(図2を参照して説明したような)を含む。第2LED構造200’もLEDアレイ600に含まれる。示されるように、LED構造200’は、準備層220’、活性QW構造230’、電子ブロック層240’、p型層250’およびpコンタクト260’を含む。LED構造200’は、類似の波長において実質的に類似の発光特性を示すように、LED構造200と構造的に同一であってもよい。もしくは、LED構造200’は、LED構造200と同じ側壁正孔注入機構を利用しつつ、LED構造200’がLED構造200とは異なる発光特性を示すために、異なる材料の部品(準備層、活性QW構造等に使用される異なる材料等)を含んでもよい。図7に、それぞれ赤、緑および青の波長で発光するLED構造710,720および730のアレイを含む例示的なLEDアレイ700の上面図が示される。
【0028】
上記の説明は、当業者であれば誰もが本明細書に記載の様々な態様を実現できるように提供されている。これらの態様に対する様々な修正は、当業者にとって明白であり、本明細書で定義される一般的な原理は、他の態様に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に提示される態様に限定されることを意図するものではなく、文言の請求に一致する全範囲が与えられるべきであり、ここで、単数形の要素への言及は、具体的にそう述べない限り、「1つおよび唯一の」という意味ではなく、「1つまたは複数の」という意味を意図するものである。特に断らない限り、「いくつかの」という用語は、1つ以上のものを意味する。「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つ以上」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」、「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」等の組み合わせは、A、B、および/またはCの任意の組み合わせを含み、複数のA、複数のB、または、複数のCを含み得る。具体的には、「A、B、またはCの少なくとも1つ」、「A、B、またはCの1つ以上」、「A、B、およびCの少なくとも1つ」、「A、B、およびCの1つ以上」、および「A、B、C、またはそれらの任意の組み合わせ」などの任意の組み合わせは、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB、AおよびC、BおよびC、または、AおよびBおよびCでもよく、A,BまたはCの1つ以上のメンバーを含む任意の組み合わせを含み得る。当業者に既知であるか、または後に既知となる、本開示を通じて説明される様々な態様の要素に対する全ての構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、請求項に包含されることを意図している。さらに、本明細書に開示されたものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、一般に捧げられることを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7