(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】免疫調節ミニ細胞および使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240730BHJP
C12N 9/20 20060101ALN20240730BHJP
A61K 35/74 20150101ALN20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20240730BHJP
A61P 35/04 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N9/20
A61K35/74 A
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
C12N15/31
C12N15/55
C12N15/19
(21)【出願番号】P 2023001326
(22)【出願日】2023-01-06
(62)【分割の表示】P 2021120776の分割
【原出願日】2013-10-02
【審査請求日】2023-02-03
(32)【優先日】2012-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511001448
【氏名又は名称】バキシオン セラピューティクス,リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】ジャカローン,マシュー ジェイ.
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-510794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207754(US,A1)
【文献】Appl. Environ. Microbiol., 1997, Vol.63, No.10, pp.3851-3857
【文献】Mol. Mirobiol., 1991, Vol.5, No.5, pp.1135-1143
【文献】Cancer Res., 2012.04, Vol.72, No.8 Suppl., p.5703
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質を含む、癌治療において使用するための細菌ミニ細胞であって、
前記細菌ミニ細胞は抗腫瘍免疫調節効果を誘導し、
前記細菌ミニ細胞はコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質、Th1サイトカイン、Th2サイトカイン、タンパク質毒素および/またはホスホリパーゼ以外のいかなる治療タンパク質も含まず、
前記細菌ミニ細胞は(1)抗体、または(2)抗体のFc領域を含むその他の分子を提示せず、
前記細菌ミニ細胞中のコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質の量が、前記細菌ミニ細胞
が哺乳類細胞と接触した際に前記哺乳類細胞を殺傷することが出来るレベルであり、ならびに
前記コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質が、パーフリンゴリジンO、リステリオリジンO、リステリオリジンO L461T、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO L461T、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン(sphaericolysin)、アントロリジンO(anthrolysin O)、セレオリジン(cereolysin)、チューリンゲンシリジンO(thuringiensilysin O)、ウエイヘンステファネンシリジン(weihenstephanensilysin)、アルベオリジン(alveolysin)、ブレビリジン(brevilysin)、ブチリクリジン(butyriculysin)、テタノリジンO(tetanolysin O)、ノビイリジン(novyilysin)、レクチノリジン(lectinolysin)、ニューモリジン(pneumolysin)、ミチリジン(mitilysin)、シュードニューモリジン(pseudopneumolysin)、スイリジン(suilysin)、インテルメジリジン(intermedilysin)、イバノリジン(ivanolysin)、セエリゲリオリジンO(seeligeriolysin O)、バギノリジン(vaginolysin)およびピオリジン(pyolysin)から成る群から選択される、
細菌ミニ細胞。
【請求項2】
前記コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質が、パーフリンゴリジンOである、または前記コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を含
む、請求項1に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項3】
さらにインベイシンを含む、請求項1又は2に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項4】
前記細菌ミニ細胞がインベイシンを含まない、請求項1又は2に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項5】
さらにTh1サイトカイン、Th2サイトカイン及びホスホリパーゼの1または複数を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項6】
前記Th1サイトカインが、IL‐2、GMCSF、IL‐12p40、IL‐12p70、IL‐18、TNF‐α、およびIFN‐γから選択される、請求項5に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項7】
前記Th2サイトカインが、IL‐1α、IL‐1β、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐10、およびIL‐13から選択される、請求項5に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項8】
前記ホスホリパーゼが、PC‐PLCおよびPI‐PLCから選択される、請求項5に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項9】
さらにジフテリア毒素の断片A/B、ジフテリア毒素の断片A、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、シュードモナス外毒素A、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、メリチン、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、ならびにこれらの組み合わせから選択されるタンパク質毒素を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項10】
前記細菌ミニ細胞が、その他のいずれの治療活性部分も含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項11】
前記細菌ミニ細胞が、治療小分子、その他のいずれの治療タンパク質、または治療核酸も含まない、請求項10に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項12】
前記細菌ミニ細胞が、プロテインGまたはプロテインAのFc結合部分を提示しない、請求項1~11のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項13】
前記癌が、固形腫瘍、転移性腫瘍、または液性腫瘍を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項14】
前記癌が、上皮、線維芽細胞、筋肉、または骨に由来する癌である、請求項1~12のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項15】
前記癌が、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、胃癌、腸癌、口腔癌、舌癌、咽頭癌、肝臓癌、肛門癌、直腸癌、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、皮膚癌、子宮癌、膣癌、陰茎癌(penal)、および腎臓癌から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項16】
前記癌が、膀胱癌である、請求項1~12のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項17】
前記癌が、腺癌、肉腫、線維肉腫、ならびに眼、脳、および骨の癌から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項18】
前記癌が、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【請求項19】
投与により、Th1優位の免疫応答またはTh2優位の免疫応答が発生する、請求項1~18のいずれか一項に記載の細菌ミニ細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、その全内容が明確に本明細書に援用される2012年10月2日出願の米国特許仮出願第61/709102号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
<配列表の参照>
本出願は、電子フォーマットでの配列リストと共に出願されている。配列表は、2013年10月2日に作成され、20Kbのファイルサイズであり、ファイル名がSEQLISTING.TXTであるファイルとして提供される。配列表の電子フォーマット中の情報は、その全内容が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本出願は、膀胱癌およびその他の悪性腫瘍などの疾患の治療に使用するための免疫調節真正細菌ミニ細胞の作製、精製、製剤化、および使用のための組成物ならびに方法に関する。
【0004】
本発明の背景についての以下の記述は、本発明の理解を補助するために提供するものであり、本発明に対する先行技術を記述すること、または本発明に対する先行技術を構成することを認めるものではない。本出願中に言及もしくは引用される論文、特許、および特許出願、ならびにその他のすべての文書、および電子入手可能情報の内容は、その全内容について、各刊行物が参照により援用されるとして具体的におよび個別に示された場合と同じ程度にて、参照により本明細書に援用される。出願人は、そのようないずれの論文、特許、特許出願、またはその他の文書からであっても、そのすべての情報を、本出願に物理的に援用する権利を保有する。
【背景技術】
【0005】
免疫系が癌の予防において重要な役割を担っていることは周知である。免疫調節が癌の治療における魅力的な治療的手法であり得ることが、徐々に明らかになりつつある。最も長く市販され続けている抗癌免疫調節療法は、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)の弱毒生菌株であり、これは、筋層非浸潤性膀胱癌の治療のための術後アジュバント療法として用いられる。他の市販されていない実験的抗癌免疫調節手法としては、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、ビフィズス属細菌(Bifidobacteria)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyrogenes)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)、サルモネラ・コレレスイス(Salmonella choleraesius)、およびビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)などの細菌のその他の弱毒生菌種の使用が挙げられる。ある程度効果的ではあるが、用いられる各菌株は、感染リスク、弱毒生菌株の病原性への遺伝的復帰の恐れ、および敗血症によって制限される。これらの手法はすべて、最も有効な用量で、またはその近辺で発生する毒性での生菌感染を思わせる極度の毒性に直面してきた。この結果、各菌株型に対する治療指数は狭い。
【0006】
免疫調節療法としての生細菌による毒性の問題に対処するために、他の研究者らは、異なる細菌成分(全生細菌とは対照的に)を用いて、同じ免疫学的効果を発生させる試みを行った。この種の実験的治療剤としては、精製細菌毒素、精製炎症性リポポリサッカリド(LPS)、精製タイコ酸(TCA)、ならびにその他の細菌細胞壁製剤およびその他の細菌細胞成分画分が挙げられる。これらの手法は、毒性プロファイルを改善したが、同時
に有効性が失われる場合もある。加えて、多くは、極性化免疫応答(polarizing immune response)(Th1またはTh2のいずれか)のみを刺激し、大部分は、Th2(抗体産生)応答を刺激する。Th1応答(細胞性免疫応答)が、抗腫瘍免疫調節効果を有するという意味で、優先的であると思われることは、比較的充分に報告されている。最後に、これらの製剤は、市場での需要を支援するスケールおよび品質で製造することが困難であり得、ならびに最終的には、抗腫瘍効果を発生させることができない免疫応答の一部を発生させるだけであり得る。ほとんどの癌の治療に用いられるタンパク質毒素の場合、タンパク質毒素の有効性は、正常組織に対する毒性によって大きく制限される。加えて、全身暴露レベルに寄与する薬物の薬物動態(PK)パラメーターは、多くの場合、特に、同じ細胞標的または機構が抗腫瘍活性および正常組織毒性を担う場合に、同時に抗腫瘍活性を最大化し、副作用を最小化するように充分に最適化されず、および最適化することができない。ここでもはやり、この結果として、治療指数が非常に狭くなり、これはほとんどのタンパク質毒素に共通である。
【0007】
免疫調節性「万能型(generalists)」としての生細菌ベクターおよび細菌成分に加えて、他の研究者らは、抗癌治療剤として、異なる特異的Th1免疫調節性サイトカインおよびケモカインの開発を試みてきた。例としては、これらに限定されないが、インターフェロンガンマ(IFN‐γ)、インターフェロンアルファ(IFN‐α)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF‐α)、インターロイキン‐2(IL‐2)、インターロイキン‐12(IL‐12)、およびインターロイキン‐18(IL‐18)が挙げられる。これらの手法の各々は、単独で投与された場合に、免疫学的治療の有益性がほとんどまたはまったくなく、予測されない重篤な毒性によって制限されてきた。単一のサイトカインまたはケモカイン剤では、抗癌効果を有するために必要とされる完全な範囲のTh1免疫応答が引き起こされないこと、およびこれらの因子が、経時で動的である様々なレベルにて一緒に作用している可能性が高いことがある程度明らかにありつつある。このことは、複合的な製品製剤化によって再現し、組織化することがほぼ不可能である免疫学的シグナル伝達イベントのカスケードである。慢性C型肝炎ウィルス感染の治療のためのペグ化インターフェロン以外、ほとんどの単一剤サイトカインは、臨床的に成功していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
免疫調節抗癌治療剤の開発に対するこれらの手法の観察された制限に基づいて、感染および感染に伴う毒性のリスクは導入しないが、抗癌活性を付与するのに充分に強力で多様な免疫応答を引き起こす生細菌感染を模倣することが可能である免疫調節療法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施形態は、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質を含む細菌ミニ細胞を開示し、前記ミニ細胞は、抗体、または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示しない。
【0010】
ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、リステリオリジンO、リステリオリジンO L461T、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO L461T、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン(sphaericolysin)、アントロリジンO(anthrolysin O)、セレオリジン(cereolysin)、チューリンゲンシリジンO(thuringiensilysin O)、ウエイヘンステファネンシリジン(weihenstephanensilysin)、アルベオリジン(alveolysin)、ブレビリジン(brevilysin)、ブチリクリジン(butyriculysin)、テタノリジンO(tetanolysin O)、ノビイリジン(novyilysin)、レクチノリジン(lectinolysin)、ニューモリジン(pneumolysin)、ミチリジン(mitilysin)、シュードニューモリジン(pseudopneumolysin)、スイリジン(suilysin)、インテルメジリジン(intermedilysin)、イバノリジン(ivanolysin)、セエリゲリオリジンO(seeligeriolysin O)、バギノリジン(vaginolysin)、およびピオリジン(pyolysin)から選択される。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、パーフリンゴリジンO(perfringolysin O)である。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0011】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにインベイシンを含む。ある実施形態では、ミニ細胞は、インベイシンを含まない。
【0012】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにTh1サイトカインを含む。ある実施形態では、Th1サイトカインは、IL‐2、GMCSF、IL‐12p40、IL‐12p70、IL‐18、TNF‐α、およびIFN‐γから選択される。
【0013】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにTh2サイトカインを含む。ある実施形態では、Th2サイトカインは、IL‐1α、IL‐1β、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐10、およびIL‐13から選択される。
【0014】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにホスホリパーゼを含む。ある実施形態では、ホスホリパーゼは、PC‐PLCまたはPI‐PLCである。
【0015】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらに、ジフテリア毒素の断片A/B、ジフテリア毒素の断片A、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、シュードモナス外毒素A、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、メリチン、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、ならびにこれらの組み合わせから選択されるタンパク質毒素を含む。
【0016】
ある実施形態では、ミニ細胞は、その他のいずれの治療活性部分も含まない。ある実施形態では、ミニ細胞は、治療小分子、その他のいずれの治療タンパク質、または治療核酸も含まない。ある実施形態では、ミニ細胞は、プロテインGまたはプロテインAのFc結合部分を提示しない。ある実施形態では、ミニ細胞は、siRNAを例とするいかなる治療核酸も含まない。
【0017】
本明細書にて開示されるある実施形態は、隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;ならびにコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質の機能発現が可能である組換え発現カセットを含むミニ細胞産生細菌を提供し、細菌は、抗体、または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示せず、およびプロテインGまたはプロテインAのFc結合部分も提示しない。
【0018】
ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに:異種エンドヌクレアーゼをコードし、ミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺(genetic suicide)」遺伝子;定められた栄養素要求性;およびlpxM/msbB遺伝子における欠失または変異を含む。
【0019】
ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIから選択される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子は、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCから選択される。
【0020】
ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、リステリオリジンO、リステリオリジンO L461T、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO L461T、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、およびピオリジンから選択される。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、パーフリンゴリジンOである。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、配列番号1を含む。
【0021】
ある実施形態では、ミニ細胞は、インベイシンの機能発現が可能である組換え発現カセットをさらに含む。
【0022】
ある実施形態は、癌を治療する方法を提供し、その方法は、それを必要とする患者に、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質を含む細菌ミニ細胞を投与することを含み、前記投与により、非免疫原性抗腫瘍免疫調節効果が誘導される。
【0023】
ある実施形態では、ミニ細胞は、抗体、または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示しない。
【0024】
ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、リステリオリジンO、リステリオリジンO L461T、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO L461T、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、およびピオリジンから選択される。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、パーフリンゴリジンOである。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、配列番号1を含む。
【0025】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにインベイシンを含む。ある実施形態では、ミニ細胞は、インベイシンを含まない。
【0026】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにTh1サイトカインを含む。ある実施形態では、Th1サイトカインは、IL‐2、GMCSF、IL‐12p40、IL‐12p70、IL‐18、TNF‐α、およびIFN‐γから選択される。
【0027】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにTh2サイトカインを含む。ある実施形態では、Th2サイトカインは、IL‐1α、IL‐1β、IL‐4、IL‐5、IL‐6、I
L‐10、およびIL‐13から選択される。
【0028】
ある実施形態では、ミニ細胞は、さらにホスホリパーゼを含む。ある実施形態では、ホスホリパーゼは、PC‐PLCまたはPI‐PLCである。
【0029】
ある実施形態では、方法は、さらに、ジフテリア毒素の断片A/B、ジフテリア毒素の断片A、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、シュードモナス外毒素A、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、メリチン、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、ならびにこれらの組み合わせから選択されるタンパク質毒素を含む。
【0030】
ある実施形態では、ミニ細胞は、その他のいずれの治療活性部分も含まない。ある実施形態では、ミニ細胞は、治療小分子、その他のいずれの治療タンパク質、または治療核酸も含まない。ある実施形態では、ミニ細胞は、プロテインGまたはプロテインAのFc結合部分を提示しない。
【0031】
ある実施形態では、癌は、固形腫瘍、転移性腫瘍、または液性腫瘍を含む。ある実施形態では、癌は、上皮、線維芽細胞、筋肉、または骨に由来する癌である。ある実施形態では、癌は、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、胃癌、腸癌、口腔癌、舌癌、咽頭癌、肝臓癌、肛門癌、直腸癌、結腸癌、食道癌、胆嚢癌、皮膚癌、子宮癌、膣癌、陰茎癌(penal)、および腎臓癌から選択される。ある実施形態では、癌は、膀胱癌である。ある実施形態では、癌は、腺癌、肉腫、線維肉腫、ならびに眼、脳、および骨の癌から選択される。ある実施形態では、癌は、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病から選択される。
【0032】
ある実施形態では、投与により、Th1優位の免疫応答(Th1-dominated immune response)が発生する。ある実施形態では、投与により、Th2優位の免疫応答が発生する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイの結果を示すヒストグラムであり、PFO媒介による哺乳類細胞膜の透過性化(permeabilization)を示している。
【
図2】
図2は、精製組換えパーフリンゴリジンO(BTX‐100)の生体外細胞傷害性を、ミニ細胞によって送達されたパーフリンゴリジンO(PFO)の同等量と比較して示すプロットである。
【
図3】
図3は、標的化部分インベイシンの除去が、PFOを含有するミニ細胞の抗腫瘍活性に影響を及ぼさなかったことを示すプロットである。
【
図4】
図4は、肺および卵巣転移におけるVAX‐IPDミニ細胞の類似の抗腫瘍効果を示す写真および図を示す。
【
図5】
図5は、VAX‐IPDミニ細胞が、静脈内投与後、マウスの肺では検出可能であるが、卵巣では検出されないことを示すヒストグラムである。
【
図6】
図6は、VAX‐IPDミニ細胞が、重度に免疫が損なわれたNIH‐IIIマウスにおいて、ほとんど抗腫瘍効果を持たないことを示すヒストグラムである。
【
図7】
図7は、VAX‐IPミニ細胞が、確立された筋層非浸潤性膀胱癌のMB49マウスモデルにおいて、非常に効果的であることを示すプロットである。
【
図8】
図8は、VAX‐IPミニ細胞産生株およびそれ由来のVAX‐IPミニ細胞の構築の一般スキームの概略図である。
【
図9】
図9は、pVX‐336のプラスミドマップである。
【
図10】
図10は、pVX‐128のプラスミドマップである。
【
図11】
図11は、誘導性ミニ細胞形成の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図12】
図12は、VAX‐IPミニ細胞中におけるインベイシンおよびパーフリンゴリジンOの発現を示す写真および図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<定義>
本明細書で用いられる場合、「Th1免疫調節ミニ細胞」の用語は、Th1免疫応答を刺激することができるミニ細胞を意味する。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「Th2免疫調節ミニ細胞」の用語は、Th2免疫応答を刺激することができるミニ細胞を意味する。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「Th1/Th2免疫調節ミニ細胞」の用語は、Th1およびTh2免疫応答の両方を刺激することができるミニ細胞を意味する。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「組換え浸潤免疫調節ミニ細胞」の用語は、真核細胞中への内部移行を刺激することができる異種ミニ細胞表面タンパク質を発現し、提示するように遺伝子操作されたミニ細胞を意味する。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「天然浸潤免疫調節ミニ細胞」の用語は、真核細胞中への内部移行を刺激することができる天然ミニ細胞表面タンパク質を、前記ミニ細胞が発現し、提示するように通常は浸潤性である細菌から産生されたミニ細胞を意味する。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「免疫原性」の用語は、適応免疫機構によって媒介される抗原特異的体液性または細胞性免疫応答を意味する。免疫原性ミニ細胞は、特定の特異的な抗原に対して応答する免疫応答を誘導するものであり、例えば病原体に特異的なワクチンとして免疫原性ミニ細胞を用いるという状況において有用である。
【0040】
本明細書で用いられる場合、「免疫調節」の用語は、Th1およびTh2免疫応答の発生を含むがこれに限定されない所望される様式での免疫応答の包括的調節(すなわち、それ自体免疫原性ではない)を意味する。
【0041】
本明細書で用いられる場合、「免疫療法」の用語は、免疫調節ミニ細胞を例とする免疫調節化合物を用いて、疾患、特に癌の排除または進行の遅延に関して有益な効果を有する包括的(すなわち、それ自体免疫原性ではない)免疫応答を発生させることを意味する。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「接着性ミニ細胞」の用語は、前記ミニ細胞の認識できる程度のエンドサイトーシスを刺激することなく、非構成的食作用性真核生物の表面に結合し、接着することができるミニ細胞を意味する。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「粘膜接着性ミニ細胞」の用語は、粘膜表面に結合し、接着することができるミニ細胞を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐Pミニ細胞」の用語は、パーフリンゴリジンO(PFO)を発現し、これを含むミニ細胞を意味する。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシス(Yersinia pseudotuberculosis)からの全ベータ1‐インテグリン標
的細胞表面分子(pan-Beta1-integrin-targeting cell surface molecule)インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、さらに、パーフリンゴリジンO(PFO)を含む。
【0046】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPTミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシスからの全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、さらに、パーフリンゴリジンO(PFO)およびタンパク質毒素を含む。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPPミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシスからの全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)、およびタンパク質毒素以外の外来性ポリペプチドを含む。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPDミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシスからの全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびジフテリア毒素の触媒断片を含む。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPGミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシスからの全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびゲロニンを含む。
【0050】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPPAミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシスからの全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびシュードモナス外毒素Aを含む。
【0051】
本明細書で用いられる場合、「VAX‐IPRミニ細胞」の用語は、エルシニア・シュードツベルクロシスからの全ベータ1‐インテグリン標的細胞表面分子インベイシンおよびそのいずれかの機能等価物を発現し、提示するミニ細胞を意味し、ミニ細胞は、パーフリンゴリジンO(PFO)およびリシンAを含む。
【0052】
本明細書で用いられる場合、「ポア形成細胞溶解素タンパク質」の用語および「コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質」の用語は、交換可能に用いられ、コレステロールを含む細胞膜を攻撃して、細胞膜に(1もしくは複数の)ポアを形成することができるタンパク質を意味する。いくつかのコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質の場合、細胞膜中にコレステロールが存在することは、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質が細胞膜と結合するために必要とされない。例えば、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、グラム陽性細菌によって分泌されるβ‐バレルポア形成外毒素のファミリーのメンバーであってよい。コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質の限定されない例としては、リステリオリジンO、リステリオリジンO L461T、リステリオリジンO
E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO E247M、リステリオリジンO D320K、リステリオリジンO L461T、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、ピオリジン、およびパーフリンゴリジンOが挙げられる。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、ECTGLAWEWWR(配列番号1)のアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質は、WEWWRT(配列番号2)のアミノ酸配列を含む。
【0053】
本明細書で用いられる場合、「治療核酸」の用語は、真核生物(例:ヒトなどの哺乳類)中に導入された際に治療効果を有する核酸分子を意味する。治療核酸は、例えば、ssDNA、dsDNA、ssRNA(shRNAを含む)、dsRNA(siRNAを含む)、tRNA(レアコドン使用tRNA(rare codon usage tRNA)を含む)、mRNA、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ペプチド核酸(PNA)、DNA:RNAハイブリッド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、アプタマー、またはこれらのいずれかの組み合わせであってよい。
【0054】
本明細書で用いられる場合、「治療タンパク質」の用語は、真核生物(例:ヒトなどの哺乳類)中に導入された際に治療効果を有するタンパク質を意味する。治療ポリペプチドは、例えば、タンパク質毒素、コレステロール依存性細胞溶解素、機能酵素、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、または上記のいずれかの組み合わせおよび/もしくは上記のうちの複数であってよい。
【0055】
本明細書で用いられる場合、「治療の」の用語は、動物における疾患もしくはその他の異常な生物学的プロセスの進行を予防、阻害、排除、もしくは予防する生物学的効果、または複数の生物学的効果の組み合わせを有することを意味する。治療活性部分としては、例えば、治療活性小分子、治療活性タンパク質、および/または治療活性核酸が挙げられ得る。
【0056】
本明細書で用いられる場合、「小分子」の用語は、生物学的効果を有し、および5000ダルトン未満の分子量を有する分子を意味する。ある実施形態では、小分子は、2500ダルトン未満の分子量を有する。ある実施形態では、小分子は、1000ダルトン未満の分子量を有する。ある実施形態では、小分子は、800ダルトン未満の分子量を有する。ある実施形態では、小分子は、500ダルトン未満の分子量を有する。
【0057】
本明細書で用いられる場合、「治療小分子薬物」または「小分子薬物」の用語は、真核生物(例:ヒトなどの哺乳類)中に導入された際に治療効果を有する小分子を意味する。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「ベータ1インテグリンインベイシン標的」の用語は、インベイシンによって結合されることが可能である哺乳類ベータ1インテグリンヘテロ二量体を意味する。
【0059】
本明細書で用いられる場合、「原核細胞分裂遺伝子」の用語は、原核細胞分裂プロセスに関与する遺伝子産物をコードする遺伝子を意味する。本技術分野において、多くの細胞分裂遺伝子が発見され、特徴付けられている。細胞分裂遺伝子の例としては、これらに限定されないが、zipA、sulA、secA、dicA、dicB、dicC、dicF、ftsA、ftsI、ftsN、ftsK、ftsL、ftsQ、ftsW、ftsZ、minC、minD、minE、seqA、ccdB、sfiC、およびddlBが挙げられる。
【0060】
本明細書で用いられる場合、「導入遺伝子」の用語は、自然に、または数多くの遺伝子操作技術のうちのいずれかによって、ある生物から別の生物へ移された遺伝子、または遺伝物質を意味する。ある実施形態では、導入遺伝子は、ある生物から単離され、異なる生物へ導入される遺伝子配列を含有するDNAのセグメントである。このDNAの非天然セ
グメントは、トランスジェニック生物中においてRNAまたはタンパク質を産生する能力を保持していてよく、またはそれは、トランスジェニック生物の遺伝子コードの正常機能を改変してもよい。ある実施形態では、導入遺伝子は、それが遺伝子コード配列を含有するかどうかに関わらず、人工構築DNA配列であり、それは、導入遺伝子がこれまでに見出されていなかった生物中に導入される。
【0061】
本明細書で用いられる場合、物質が「精製された」と称されるのは、その物質が精製される組成物と比較して、組成物中においてその濃度が増加された場合、および/または1つ以上の望ましくない混入物の濃度が減少された場合である。ある実施形態では、精製は、組成物中の物質の濃縮、および/またはそれからの物質の単離を含む。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「親細胞が充分に欠如している」の用語は、「充分に欠如している」の同義語であり、目的の治療ミニ細胞の毒性プロファイルおよび/もしくは治療効果に対してほとんど、またはまったく影響を及ぼさない親細胞の混入レベルを有する精製されたミニ細胞の組成物を意味する。
【0063】
本明細書で用いられる場合、「ドメイン」または「タンパク質ドメイン」の用語は、共通の物理的および/もしくは化学的特徴を共有する分子または構造の領域を意味する。タンパク質ドメインの限定されない例としては、疎水性膜貫通または表在性膜結合領域(hydrophobic transmembrane or peripheral membrane binding regions)、球状酵素もしくは受容体領域(globular enzymatic or receptor regions)、タンパク質‐タンパク質相互作用ドメイン、および/または核酸結合ドメインが挙げられる。
【0064】
本明細書において、「真正細菌」および「原核生物」の用語は、これらの用語が当業者によって用いられる通りに用いられる。本明細書で用いられる「真正細菌の」および「原核生物の」の用語は、グラム陰性およびグラム陽性細菌の両方を含む真正細菌、原核ウィルス(例:バクテリオファージ)、ならびに偏性細胞内寄生虫(例:リケッチア属(Richettsia)、クラミジア属(Chlamydia)など)を包含する。
【0065】
「免疫強化ポリペプチド(immunopotentiating polypeptide)」の用語は、「免疫賦活ポリペプチド」および「免疫調節ポリペプチド」と同義語であり、これらの用語は、本明細書で交換可能に用いられ、真核生物または細胞(例:ヒトなどの哺乳類)中に導入された際に免疫調節効果を有する様々な種類のタンパク質分子のいずれの集まりをも意味する。免疫調節ポリペプチドは、サイトカイン、ケモカイン、コレステロール依存性細胞溶解素、機能酵素、抗体もしくは抗体ミメティック、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、または上記のいずれかの組み合わせおよび/もしくは上記のうちの複数であってよい。
【0066】
「免疫原」および「抗原」の用語は、交換可能であり、本明細書にて、抗原特異的抗体、細胞、および/またはアレルゲン性の応答が開始され得る対象であるポリペプチド、炭水化物、脂質、核酸、およびその他の分子を意味するために用いられる。本発明の文脈において、「抗原性」と同義語であるミニ細胞の「免疫原性」は、免疫療法効果を担っているものではない。抗原特異的免疫応答は、抗原/免疫原の存在に依存するものであり、本明細書で用いられる場合のTh1またはTh2免疫調節応答の定義には含まれない。
【0067】
本明細書で用いられる「過剰発現」の用語は、宿主細胞中のDNAによってコードされる機能核酸、ポリペプチド、またはタンパク質の発現を意味し、その核酸、ポリペプチド、またはタンパク質が、宿主細胞中に通常は存在しないか、または、その核酸、ポリペプチド、またはタンパク質が、その核酸、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする内在性遺伝子から通常発現されるよりも高いレベルで宿主細胞中に存在する。
【0068】
本明細書で用いられる場合、「調節」の用語は、標的と直接または間接的に相互作用を起こし、それによって生物学的プロセスを制御するように標的の活性を改変することを意味する。「調節」のモードとしては、これらに限定されないが、標的の活性の強化、標的の活性の阻害、標的の活性の制限、および標的の活性の拡張(extending)が挙げられる。
【0069】
本明細書で用いられる場合、「異種性」の用語は、ミニ細胞またはミニ細胞産生細菌株中で天然には見出されず、異種物質をコードする、または異種物質(例:親細胞にとって天然ではない生物活性代謝物)を産生することができる遺伝子をコードする組換え遺伝物質を持つミニ細胞産生細菌株によって発現、転写、翻訳、増幅、またはそれ以外で産生されるタンパク質、遺伝子、核酸、撮像剤、緩衝剤成分、またはその他のいずれかの生物活性もしくは不活性物質を意味する。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「外来性」の用語は、細胞にとって天然ではない、またはミニ細胞の場合は、ミニ細胞の親細胞にとって天然ではないタンパク質(抗体を含む)、遺伝子、核酸、小分子薬物、撮像剤、緩衝剤、放射性核種、またはその他のいずれかの生物活性もしくは不活性物質を意味する。外来性物質は、それが別個に作製、精製、および添加されるという事実により、異種物質とは異なる。
【0071】
本明細書で用いられる場合、「治療の」の用語は、動物における疾患もしくはその他の異常な生物学的プロセスの進行を予防、阻害、排除、もしくは予防する生物学的効果、または複数の生物学的効果の組み合わせを有することを意味する。
【0072】
本明細書で用いられる場合、「診断の」の用語は、動物(ヒトを含む)において、または血液、尿、唾液、汗、および糞便物が挙げられるがこれらに限定されない生物学的サンプルから、疾患もしくは状態の検出、モニタリング、追跡、および/または識別を行う能力を有することを意味する。
【0073】
本明細書で用いられる場合、「セラノスティックの」の用語は、治療および診断組成物を組み合わせた効果を有することを意味する。
【0074】
本明細書で用いられる場合、「組換え発現された」の用語は、最新の遺伝子操作技術を用いて構築される核酸分子からの1つ以上の核酸および/またはタンパク質の発現を意味し、構築された核酸分子は、ミニ細胞および/またはミニ細胞産生細菌株中に天然には存在せず、この人工核酸分子は、エピソーム核酸分子として、またはミニ細胞産生細菌染色体の一部として存在する。
【0075】
本明細書で用いられる場合、「エピソームの」の用語は、任意の生物または細胞の(1もしくは複数の)染色体とは独立した核酸分子を意味する。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「解毒された」の用語は、組成物またはその成分に対して行われ、組成物またはその成分に対する毒性の原因となる生物学的基礎が偶然どのようなものであるかに関わらず、改変された組成物またはその成分に急性毒性の著しい低下をもたらす改変を意味する。
【0077】
本明細書で用いられる場合、「生物活性分子」の用語は、真核生物または細胞(例:ヒトなどの哺乳類)に対して、ヒト生物または細胞中へ導入された際に、生物学的効果を有する分子を意味する。生物活性分子としては、これらに限定されないが、治療核酸、治療ポリペプチド(タンパク質毒素を含む)、および治療小分子薬物が挙げられる。
【0078】
<記述>
本出願は、免疫系を、前記免疫応答によって媒介される間接的抗癌効果を有するように刺激するための、生体外および生体内での細菌ミニ細胞の使用に関する。真正細菌ミニ細胞は、生細菌を模倣するが、生きてはおらず、感染性は持たず、従って、生細菌免疫調節療法と比較した場合に毒性が抑制されているという点で、免疫調節剤として明確な利点を有している。加えて、細菌ミニ細胞は、異なる分子成分を含有し、その各々が、選択的に特定の種類の免疫応答(すなわち、Th1対Th2)を高めるか、引き起こすか、またはそれ以外では刺激し得るように、遺伝子操作されてよい。本明細書で開示される細菌ミニ細胞は、いずれかの直接の抗腫瘍活性に加えて、間接的な抗癌活性を有する免疫応答を発生させるように設計される。ミニ細胞はまた、動物における免疫学的応答の開始、促進、支援、および維持に関与していることが知られている細胞型または組織を特異的に標的とすることもできる。本出願は、癌およびその他の疾患のための非生存免疫調節療法(non-living immunomodulatory therapies)としての細菌ミニ細胞の使用を提供する。
【0079】
細菌ミニ細胞は、細菌細胞の正常分裂装置の破壊後に細菌によって形成される非染色体性の(achromosomal)膜封入型生物学的ナノ粒子(membrane-encapsulated biological nanoparticles)である(直径およそ250~500nm)。本質的には、ミニ細胞は、染色体DNAを含有しないこと以外は正常細菌細胞の小代謝活性レプリカであり、このため、非分裂性、非生存、および非感染性である。ミニ細胞は、細菌染色体を含有しないが、プラスミドDNA分子(染色体よりも小さい)、RNA分子(あらゆるサブタイプおよび構造のもの)、天然および/または組換え発現タンパク質、ならびにその他の代謝物はすべて、ミニ細胞中に隔離されることが示されている。ミニ細胞は、1つ以上の異なる天然、異種、または外来性免疫調節分子成分を、各成分が別々の量(discreet amount)で存在する状態で組み合わせて単一の粒子とするように操作可能であることから、独特の形で生体内免疫調節剤として適する。このことは、生体内への投与後に、生細菌が分裂、存続、および未知量の免疫調節成分の新たな産生を継続することができる生細菌に基づく免疫療法とは、明らかに対照的である。生細菌免疫療法の存続および増殖は、感染、臓器不全、敗血症および死亡を含む多くの様々な合併症に繋がり得る。まとめると、ミニ細胞は、予防的および治療的医薬品用途の両方において免疫調節応答をその後に発生させるための種々の核酸、タンパク質、小分子薬物、およびこれらのいずれかの組み合わせを含む生物活性分子を、選択的に封入、結合、または吸収するように「操作」することができるものであり、前記免疫調節応答によって、疾患が予防、維持、および/または阻害されることが望ましい。
【0080】
遺伝子操作細菌ミニ細胞は、その全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第7,183,105号に記載のように、抗癌剤として直接用いられてきた。例えば、米国特許第7,183,105号には、ミニ細胞表面局在化抗体を用いるようにミニ細胞を操作することで、小分子薬物、ペプチド、タンパク質、および種々の核酸を、一緒に、または組み合わせて直接癌細胞へ標的化および送達し、直接標的化抗癌効果を発揮させることができるとして教示されている。各々が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20070298056号、同第20080051469号、および同第20070237744号に説明されるように、その他の研究者らも、標的化送達媒体としてのミニ細胞の使用に関して、米国特許第7,183,105号に教示されるものと同じ発見を報告している。これらの参考文献のいずれも、ミニ細胞を操作して、間接的抗腫瘍効果を発揮することができる抗癌免疫療法として用いることができることを教示していない。むしろ、各参考文献は、生体内にて腫瘍細胞へ、直接にのみ抗癌剤を特異的に標的化し、送達するためにミニ細胞を用いるという同じ手法を教示している。上記を含む参考文献は、まとめて、生体内において癌治療剤として用いられる場合に非免疫原性免疫調節効果を引き起こすための細菌ミニ細胞の使用を阻害する(teach away)内容を教示するものである。
例えば、米国特許第7,183,105号には、L型細菌(外膜を持たない)からのミニ細胞の使用、ならびにプロトプラスト(外膜および細胞壁を持たない)の作製を含む、免疫応答を低減または回避するために用いられ得るいくつかの手法について記載されている。米国特許出願公開第20070298056号、同第20080051469号、および同第20070237744号に提供される例から、ミニ細胞媒体の表面に結合された既知の腫瘍選択的細胞表面受容体に対して選択的である抗体を用いた標的化が、抗腫瘍活性のために必要であることが示されている。さらに、これらの参考文献にも、非標的化ミニ細胞が用いられる場合、有意な抗腫瘍応答が観察されないことが示唆されている。その他の関連する研究において、MacDiarmidおよびその共同研究者らは、細胞傷害性薬物ペイロードを持たない非標的化ミニ細胞および腫瘍標的化ミニ細胞がいずれも、同様に抗腫瘍応答を発生させることができないこと、そして標的化抗体および細胞傷害性ペイロードの両方が必要であることを実証している(MacDiarmid, et al. Cancer Cell, 2007, Volume 11, p. 431-445)。加えて、MacDiarmid, et al.は、免疫系を回避することの有益性を考察し、そのような回避を、設計に対する自身の理論的根拠の一部として記述し、従って、免疫調節治療剤としてのミニ細胞の使用を明確に阻害(teach away)している。対照的に、本開示は、例えば、強力で間接的な抗腫瘍活性を引き起こすことができる免疫調節治療剤としての細菌ミニ細胞の使用を提供している。例えば、本明細書で開示されるミニ細胞を用いて、被験者中に非免疫原性抗腫瘍免疫調節効果を誘導することができる。
【0081】
ある実施形態では、本開示は、直接の腫瘍標的化および付随する抗腫瘍免疫調節効果によってそれぞれ媒介される、同時に発生する直接および間接的機構によって強力な抗腫瘍効果を引き起こすことができる免疫調節治療剤としての細菌ミニ細胞の使用を提供する。例えば、ミニ細胞は、抗癌免疫応答を非特異的に刺激し、同時に、癌細胞への直接の毒性ペイロードの送達によっても、特異的に、および前記免疫応答と組み合わせて作用するように設計することができる。従って、本開示のある実施形態は、ミニ細胞を用いた標的化薬物送達による、ならびにTh1応答に典型的であるサイトカインの放出が挙げられるがこれに限定されないNKおよびその他の免疫細胞作用の活性化を含む間接的非特異的アジュバント効果による、腫瘍細胞および/または腫瘍内皮細胞の直接の殺傷に関する。
【0082】
本明細書で開示されるように、他の生細菌療法は、抗癌剤としてこれまでに用いられてきたが、その生存可能である性質に起因する毒性によって制限されてきた。これらの技術の提供者らは、生細菌療法は、腫瘍の低酸素領域に選択的にコロニー形成し、そのプロセスで腫瘍細胞に浸潤し、さらなるネクロシスを引き起こすことによって作用すると主張している。重要なことには、これらの技術の各々は、有効性を達成するために生細菌製剤を有することの重要性を強調しており、殺傷された細菌による治療法が不活性であることを示してさえいるものもある。これらの例は、熟練医師がミニ細胞を利用することには繋がらず、むしろ、腫瘍組織内での細菌の生存性、コロニー形成、および存続が有効性にとって最も重要であるとする教示内容により、利用することを回避することに繋がる。ミニ細胞は、生存可能ではなく、存続するものでもなく、従って、生細菌療法を用いる教示内容を考えると、効果を持つことは期待されない。これらの教示内容とは対照的に、本開示は、生体内で存続することができない自己制限性の非生存ミニ細胞を、癌に対する免疫療法として利用するものである。
【0083】
本明細書で開示される免疫調節療法は、いかなる腫瘍型にも用いることができる。当業者であれば、特定の腫瘍型が、より感受性が高い場合があり、従って、治療へのこの手法により適する可能性があることが理解される。例えば、本明細書で開示される免疫調節療法およびミニ細胞を用いて、浸潤性膀胱癌を治療することができる。30万を超える膀胱癌の新たなケースが毎年世界中で報告されており、その70%は、筋層非浸潤ステージで初期に検出されている。この集団は、通常、Ta、Tl、およびTisと称される疾患の3つのステージに分類され、それぞれ、腫瘍が、乳頭状である(以前は表在性と称された
)、粘膜固有層へ浸潤しているが筋肉はまだである、および上皮内癌である(扁平非浸潤性腫瘍)。各腫瘍型は、次に、増殖指標などを含む様々な因子に基づいて段階分けすることにより(グレード1~3)さらに分類される。ステージおよびグレードに基づく低リスク疾患の標準治療は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、およびこれに続く即時の化学療法剤の術後投与である。中リスク患者に推奨される標準治療は、TURBT、およびこれに続く即時の化学療法の術後実施(postoperative installation)、およびこれに続く化学療法による6週間の導入治療である。患者に化学療法が成功しない場合、2回目の膀胱鏡下切除術が実施され、患者には、マイコバクテリウム・ボビス、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)の弱毒生菌株が、14日後に与えられる。即時術後実施のための化学療法剤の選択肢は、マイトマイシンCであるが、類似の効果を有する、ドキソルビシン、エピルビシン、バルルビシン、パクリタキセル、およびゲムシタビンはすべて用いられる。上皮内癌を示す患者を含む高リスク疾患の場合は、BCGが唯一の有効な薬剤である。BCG免疫調節治療は、中および高リスク集団において現在までに用いられてきた化学療法剤のいずれよりも遥かに優れているが、術後即時に投与することができないという点で制限される。TURBT手順の過程で膀胱に穿孔処理する場合、生BCGの全身吸収に伴うリスクが大き過ぎるため、BCG媒介による免疫調節は、観察される再発率という点で化学療法よりも遥かに優れた手法ではあるが、術後即時の状況でそれを用いる価値はない。従って、ほとんどの泌尿器科医は、BCGを投与するまで14日間待つ傾向にあり、その間に、推奨される即時術後実施が先に行われる。他方、予後は、やはり再発という点で、即時術後臨床治療のガイドラインを用いて治療を開始する場合、非常に良好である。合わせて考えると、BCGとは異なり、筋層非浸潤膀胱癌に対してTURBTを受けた患者に、術後直ちに投与することができる非生存免疫調節療法が明らかに求められている。さらに、BCGを受けた患者のおよそ30%が、毒性の副作用のために、自発的に治療法を中止している。毒性は、BCG生存率の関数であることが実証されている。従って、BCGと同じ免疫調節の有益性を付与することができるが、感染のリスクまたは生存率に関連する毒性は持たない治療剤が強く求められている。
【0084】
ある実施形態では、免疫調節ミニ細胞は、(i)筋層非浸潤膀胱癌の場合の術後即時の状況において、(ii)その導入および維持療法のためのBCG療法の代わりに、ならびに(iii)BCG不耐性およびBCG抵抗性の患者の場合のサルベージ療法として、膀胱内投与される免疫療法として用いることができる。この使用方法は、いかなる形であっても本開示を限定することを意図するものではなく、むしろ、癌に用いるための効果的な非生存免疫療法の必要性を例証することを意図するものである。加えて、封入された細胞傷害性ポリペプチド、エンドソーム破壊ポリペプチド(endosomal disrupting polypeptides)、小分子薬物、または核酸の組み合わせの1つ以上と合わせてミニ細胞表面上にインテグリン標的化部分インベイシンを含有する多効果インテグリン標的化免疫調節ミニ細胞(multi-effect integrin-targeted immunomodulatory minicells)の使用は、それが、インテグリンの標的化および送達による直接の腫瘍細胞殺傷効果、ならびに腫瘍内皮細胞殺傷効果の両方を引き起こすことができ、同時になお、免疫系によって機能される追加の間接的な抗腫瘍免疫調節効果も作用させることから、膀胱癌に有益である。膀胱癌における多効果インテグリン標的化細胞傷害性免疫調節ミニ細胞の限定されない1つの適用は、VAX‐IPの使用であり、これは、表面局在化インテグリン標的化部分インベイシンおよびパーフリンゴリジンOを含むミニ細胞である。VAX‐IPは、免疫調節療法および/または直接抗腫瘍/腫瘍内皮細胞療法として用いることができる。膀胱癌における多効果インテグリン標的化細胞傷害性免疫調節ミニ細胞の別の限定されない適用は、VAX‐IPDの使用であり、これは、表面局在化インテグリン標的化部分インベイシン、ジフテリア毒素の触媒断片、およびパーフリンゴリジンOを含むミニ細胞である。VAX‐IPDは、免疫調節療法および/または直接抗腫瘍/腫瘍内皮細胞療法として用いることができる。
【0085】
ある実施形態では、ミニ細胞は、Th1優位の免疫応答を発生させるように操作され、用いられる。Th1免疫調節ミニ細胞は、IFN‐γ、IFN‐α、IL‐12、IL‐2、GMCSF、IL‐18、TGF‐β、およびTNF‐αが挙げられるがこれらに限定されないTh1サイトカインおよびケモカインの産生を生じることができる。
【0086】
ある実施形態では、本明細書で開示されるミニ細胞は、コレステロール依存性細胞溶解素タンパク質を含む。ある実施形態では、ミニ細胞は、抗体のFc領域を含む分子を提示しない。抗体のFc領域を含む分子は、例えば、抗体または抗体誘導体であってよい。ある実施形態では、ミニ細胞は、インベイシンを含まない。ある実施形態では、ミニ細胞は、治療小分子および/または治療核酸を含まない。ある実施形態では、ミニ細胞はまた、タンパク質毒素、Th1サイトカイン、Th2サイトカイン、ホスホリパーゼ、および/またはコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質以外のいかなる治療タンパク質も含まない。ある実施形態では、ミニ細胞は、タンパク質毒素、Th1サイトカイン、Th2サイトカイン、ホスホリパーゼ、および/またはコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質以外のいかなる治療活性部分も含まない。ある実施形態では、ミニ細胞上のコレステロール依存性細胞溶解素タンパク質の量は、哺乳類細胞に対して、ミニ細胞が前記哺乳類細胞と接触した際に毒性であるレベルである。
【0087】
ある実施形態では、Th1免疫調節ミニ細胞としては、これらに限定されないが、サルモネラ属菌種、リステリア属菌種、マイコバクテリウム属菌種、シゲラ属菌種(Shigella
spp.)、エルシニア属菌種、および大腸菌の浸潤菌株が挙げられるがこれらに限定されない天然浸潤菌株から産生されたものが挙げられる。これらの天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、真核細胞中へのミニ細胞の内部移行を刺激することができる天然ミニ細胞表面局在化リガンドを提示して、Th1優位の免疫治療応答の発生を補助する。当業者であれば、天然浸潤ミニ細胞が、それ自体は自然に存在するのではなく、本明細書で述べるミニ細胞作製のための遺伝子的手法の1つ以上を用いて細菌の非ミニ細胞産生浸潤菌株から操作されるものであることは理解される。
【0088】
ある実施形態では、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞はさらに、Th1優位の免疫応答をさらに向上、調節、または安定化させるように設計された1つ以上の組換え発現タンパク質および核酸を含む。組換え発現タンパク質としては、これらに限定されないが、IL‐2、GMCSF、IL‐12p40、IL‐12p70、IL‐18、TNF‐α、およびIFN‐γなどのTh1サイトカインが挙げられる。加えて、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、リステリオリジンO(LLO)などの1つ以上のポア形成細胞溶解素タンパク質、およびそのいずれかの機能変異体または等価物を発現して、前記ミニ細胞を内部移行した細胞のサイトゾルへのミニ細胞成分のエンドソーム脱出(endosomal escape)を促進し、前記ミニ細胞によって媒介されるTh1優位の免疫応答を向上、調節、または安定化させることができる。PC‐PLCまたはPI‐PLCなどのホスホリパーゼも、前記ミニ細胞を内部移行した真核細胞のサイトゾルへのエンドソームからのミニ細胞成分放出を増加させることによってTh1優位の免疫応答を向上、調節、または安定化させるために用いられるエンドソーム破壊剤として用いることができる。天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、Th1サイトカインの1つ以上および1つ以上のエンドソーム破壊細胞溶解素の組み合わせを発現することができる。天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞はまた、ネクロシスおよび/またはアポトーシスを促進し、それらは次に、さらにTh1免疫応答を向上、調節、および/または安定化させることもできる組換え発現タンパク質毒素も含有してよい。好ましい組換え発現/産生タンパク質毒素は、パーフリンゴリジンOである。天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞を用いて利用されるその他の組換え発現/産生タンパク質毒素としては、これらに限定されないが、ジフテリア毒素の断片A/B、ジフテリア毒素の断片A、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロス
トリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、シュードモナス外毒素A、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、メリチン、リステリオリジンOのpH安定変異体(pH‐非依存性;アミノ酸置換 L461T)、リステリオリジンOの熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K)、リステリオリジンOのpHおよび熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K、およびL461T)、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、およびピオリジン、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、ならびに前述の例のいずれかの組み合わせが挙げられる。(1もしくは複数の)ポリペプチドの組換え発現は、これらに限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、および細菌人工染色体(BAC)、ならびに前述の例のいずれかの組み合わせを含む本技術分野にて公知の種々のエピソーム組換え原核生物発現ベクターのいずれからの発現の結果であってもよい。同様に、組換え発現は、ミニ細胞産生親細胞染色体の1つ以上のコピーに存在する染色体に位置する原核生物発現カセットによって達成されてよい。天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞はまた、エンドソーム局在化トール様受容体3、7、8、および/または9を刺激してTh1免疫調節効果を向上させることが知られている1つ以上の免疫調節核酸を発現または含有するように操作されてもよい。そのような核酸としては、これらに限定されないが、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNAヘアピン、およびRNAへアピンが挙げられ、これらの各々は、当業者であれば容易に認識されるように、組換え発現することができる。ある実施形態では、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20100112670号のホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子自殺系を持つミニ細胞産生菌株から誘導される。そこに記載されているI‐ceuIホーミングエンドヌクレアーゼは、別々の保存部位におけるほとんどの細菌種の染色体を選択的に消化し、一方では、選択的に親細胞を殺傷するように働き、他方では、そのプロセスにおいて二本鎖DNA断片を作り出すように作用する。
【0089】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;ならびに(ii)パーフリンゴリジンOが挙げられるがこれに限定されない免疫治療効果を刺激することができるタンパク質毒素を含む天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌を提供する。ある実施形態では、細菌は、抗体、または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示せず、およびプロテインGまたはプロテインAのFc結合部分も提示しない。ある実施形態では、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌はさらに、(iii)異種エンドヌクレアーゼをコードし、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(iv)定められた栄養素要求性;および(v)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子の例としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子の欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸(myristolic acid)の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いており、遺伝子自殺機構からの回復のリスクが低減される。ある実施形態では、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、エルシニア属菌種、カンピロバクター属菌種(Campylobacter spp.)、シュードモナス属菌種(Pseudomonas spp.)、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、リケッチア属菌種、および大腸菌の浸潤菌株が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、マイコバクテリウム属菌種、ストレプトコッカス属菌種、リステリア・モノサイトゲネス、クラミジア属菌種、およびブルセラ属菌種(Brucella spp.)が挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0090】
Th1免疫調節ミニ細胞としては、これらに限定されないが、浸潤性となるように遺伝子操作された細菌の非浸潤菌株から産生されたものが挙げられる。多くの細菌の非浸潤菌株が当業者に公知であり、これらに限定されないが、大腸菌、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、ラクトバチルス属菌種(Lactobacillus spp.)、シュードモナス属菌種などが挙げられる。これらの通常は非浸潤性である菌株は、真核細胞中へのミニ細胞の内部移行を刺激することができる異種ミニ細胞表面局在化リガンドを提示するように遺伝子改変される。得られた組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、免疫細胞およびその他の真核細胞によって内部移行され、Th1優位の免疫治療応答を発生させることができる。ある実施形態では、組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、さらに、Th1優位の免疫応答をさらに向上、調節、または安定化させるように設計された1つ以上の組換え発現免疫調節タンパク質および核酸を含む。免疫調節タンパク質の例としては、これらに限定されないが、IL‐2、GMCSF、IL‐12p40、IL‐12p70、IL‐18、TNF‐α、およびIFN‐γなどのTh1サイトカインが挙げられる。組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、リステリオリジンO(LLO)などの1つ以上のポア形成細胞溶解素タンパク質、およびそのいずれかの機能変異体または等価物を発現して、ミニ細胞を内部移行した細胞のサイトゾルへのミニ細胞成分のエンドソーム脱出を促進し、ミニ細胞によって媒介されるTh1優位の免疫応答を向上、調節、または安定化させることができる。PC‐PLCまたはPI‐PLCなどのホスホリパーゼも、ミニ細胞を内部移行した真核細胞のサイトゾルへのエンドソームからのミニ細胞成分放出を増加させることによってTh1優位の免疫応答を向上、調節、または安定化させるために用いられるエンドソーム破壊剤として用いることができる。組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、Th1サイトカインの1つ以上および1つ以上のエンドソーム破壊細胞溶解素の組み合わせを発現することができる。天然浸潤Th1免疫調節ミニ細胞はまた、ネクロシスおよび/またはアポトーシスを促進し、それらは次に、さらにTh1免疫応答を向上、調節、および/または安定化させることもできる組換え発現タンパク質毒素も含有してよい。好ましい組換え発現/産生タンパク質毒素は、パーフリンゴリジンOである。組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞を用いて利用することができる組換え発現/産生タンパク質毒素のその他の例としては、これらに限定されないが、ジフテリア毒素の断片A/B、ジフテリア毒素の断片A、炭疽毒素
LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、シュードモナス外毒素A、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、メリチン、リステリオリジンOのpH安定変異体(pH‐非依存性;アミノ酸置換 L461T)、リステリオリジンOの熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K)、リステリオリジンOのpHおよび熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K、およびL461T)、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、およびピオリジン、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、ならびに前述の例のいずれかの組み合わせが挙げられる。(1もしくは複数の)ポリペプチドの組換え発現は、これらに限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、および細菌人工染色体(BAC)、ならびに前述の例のいずれかの組み合わせを含む本技術分野にて公知の種々のエピソーム組換え原核生物発現ベクターのいずれからの発現の結果であってもよい。同様に、組換え発現は、ミニ細胞産生親細胞染色体の1つ以上のコピーに存在する染色体に位置する原核生物発現カセットによって達成されてよい。組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞はまた、エンドソーム局在化トール様受容体3、7、8、および/または9を刺激してTh1免疫調節効果を向上させることが知られている1つ以上の免疫調節核酸を発現または含有するように操作されてもよい。そのような核酸としては、これらに限定されないが、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNA、直鎖状二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNAヘアピン、およびRNAへアピンが挙げられ、これらの各々は、当業者であれば容易に認識されるように、組換え発現することができる。ある実施形態では、組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2010‐0112670号のホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子自殺系を持つミニ細胞産生菌株から誘導される。そこに記載されているI‐CeuIホーミングエンドヌクレアーゼは、別々の保存部位におけるほとんどの細菌種の染色体を選択的に消化し、一方では、選択的に親細胞を殺傷するように働き、他方では、そのプロセスにおいて二本鎖直鎖状DNA断片を作り出すように作用する。
【0091】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;(ii)真核細胞中への内部移行を刺激することができる1つ以上の異種ミニ細胞表面局在化標的化部分の機能発現および表面提示の能力を有する組換え発現カセット、ならびに(iii)パーフリンゴリジンOが挙げられるがこれに限定されない免疫治療効果を刺激することができるタンパク質毒素を含む組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌を提供する。組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、ある実施形態では、さらに、(iv)異種エンドヌクレアーゼをコードし、ミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(v)定められた栄養素要求性;および(vi)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上も含んでよい。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いている。ある実施形態では、組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、ブルセラ属菌種、フランシセラ・ツラレミア(Franciscella tularemia)、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、クリエブセラ(Kliebsella)、エルシニア属菌種、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、シュードモナス属菌種、および大腸菌が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、組換え浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、スタフィロコッカス属菌種(Staphylococcus spp.)、ラクトバチルス属菌種、ストレプトコッカス属菌種、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、およびバチルス・セレウス(Bacillus cereus)が挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0092】
ある実施形態では、Th1免疫調節ミニ細胞は、細菌の非浸潤菌株から産生される。多くの細菌の非浸潤菌株が当業者に公知であり、これらに限定されないが、大腸菌、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、ラクトバチルス属菌種、シュードモナス属菌種などが挙げられる。これらの非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、免疫細胞およびその他の真核細胞によって内部移行され、Th1優位の免疫治療応答を発生させることができる。ある実施形態では、組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、さらに、Th1優位の免疫応答をさらに向上、調節、または安定化させるように設計された1つ以上の組換え発現免疫調節タンパク質および核酸を含む。免疫調節タンパク質の例としては、これらに限定されないが、IL‐2、GMCSF、IL‐12p40、IL‐12p70、IL‐18、TNF‐α、およびIFN‐γなどのTh1サイトカインが挙げられる。組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、リステリオリジンO(LLO)などの1つ以上のポア形成細胞溶解素タンパク質、およびそのいずれかの機能変異体または等価物を発現して、前記ミニ細胞を内部移行した細胞のサイトゾルへのミニ細胞成分のエンドソーム脱出を促進し、前記ミニ細胞によって媒介されるTh1優位の免疫応答を向上、調節、または安定化させることができる。PC‐PLCまたはPI‐PLCなどのホスホリパーゼも、前記ミニ細胞を内部移行した真核細胞のサイトゾルへのエンドソームからのミニ細胞成分放出を増加させることによってTh1優位の免疫応答を向上、調節、または安定化させるために用いられるエンドソーム破壊剤として用いることができる。組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、Th1サイトカインの1つ以上および1つ以上のエンドソーム破壊細胞溶解素の組み合わせを発現することができる。組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、ネクロシスおよび/またはアポトーシスを促進し、それらは次に、さらにTh1免疫応答を向上、調節、および/または安定化させることもできる組換え発現タンパク質毒素も含有してよい。好ましい組換え発現/産生タンパク質毒素は、パーフリンゴリジンOである。組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞を用いて利用されるその他の組換え発現/産生タンパク質毒素としては、これらに限定されないが、ジフテリア毒素の断片A/B、ジフテリア毒素の断片A、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ゲロニン、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、シュードモナス外毒素A、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、メリチン、リステリオリジンOのpH安定変異体(pH‐非依存性;アミノ酸置換 L461T)、リステリオリジンOの熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K)、リステリオリジンOのpHおよび熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K、およびL461T)、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、およびピオリジン、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、ならびに前述の例のいずれかの組み合わせが挙げられる。(1もしくは複数の)ポリペプチドの組換え発現は、これらに限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、および細菌人工染色体(BAC)、ならびに前述の例のいずれかの組み合わせを含む本技術分野にて公知の種々のエピソーム組換え原核生物発現ベクターのいずれからの発現の結果であってもよい。同様に、組換え発現は、ミニ細胞産生親細胞染色体の1つ以上のコピーに存在する染色体に位置する原核生物発現カセットによって達成されてよい。組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞はまた、エンドソーム局在化トール様受容体3、7、8、および/または9を刺激してTh1免疫調節効果を向上させることが知られている1つ以上の免疫調節核酸を発現または含有するように操作されてもよい。そのような核酸としては、これらに限定されないが、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNA、直鎖状二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNAヘアピン、およびRNAへアピンが挙げられ、これらの各々は、当業者であれば容易に認識されるように、組換え発現することができる。ある実施形態では、組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2010‐0112670号に記載のホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子自殺系を持つミニ細胞産生菌株から誘導される。そこに記載されているI‐CeuIホーミングエンドヌクレアーゼは、別々の保存部位におけるほとんどの細菌種の染色体を選択的に消化し、一方では、選択的に親細胞を殺傷するように働き、他方では、そのプロセスにおいて二本鎖直鎖状DNA断片を作り出すように作用する。
【0093】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;ならびに(ii)パーフリンゴリジンOが挙げられるがこれに限定されない免疫治療効果を刺激することができるタンパク質毒素を含む組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌を提供する。ある実施形態では、組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌はさらに、(iii)異種エンドヌクレアーゼをコードし、組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(iv)定められた栄養素要求性;および(v)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。
ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いており、遺伝子自殺機構からの回復のリスクが低減される。ある実施形態では、組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、エルシニア属菌種、カンピロバクター属菌種、シュードモナス属菌種、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、リケッチア属菌種、および大腸菌の浸潤菌株が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、組換え非浸潤Th1免疫調節ミニ細胞産生細菌は、マイコバクテリウム属菌種、ストレプトコッカス属菌種、リステリア・モノサイトゲネス、クラミジア属菌種、およびブルセラ属菌種が挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0094】
ある実施形態では、ミニ細胞は、Th2優位の免疫応答を発生させるように操作され、用いられる。Th2サイトカインおよびケモカインの産生を生じることができるTh2免疫調節ミニ細胞の例としては、これらに限定されないが、IL‐1α、IL‐1β、IL‐4、IL‐5、IL‐6、IL‐10、およびIL‐13が挙げられる。
【0095】
ある実施形態では、Th2免疫調節ミニ細胞としては、これらに限定されないが、ストレプトコッカス属菌種、スタフィロコッカス属菌種、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、ラクトバチルス属菌種、シュードモナス属菌種、クレブシエラ属菌種(Klebsiella spp.)、および大腸菌の非浸潤、接着性ならびに粘膜付着性(muco-adhesive)菌株が挙げられるがこれらに限定されない細菌の天然非浸潤、接着性または粘膜付着性菌株から産生されたものが挙げられる。これらの天然非浸潤Th2免疫調節ミニ細胞は、真核細胞中へのミニ細胞の内部移行を刺激することができる天然ミニ細胞表面局在化リガンドを提示しないが、それらは、マクロファージ、樹状細胞、および好中球などの構成的食作用免疫細胞によって貪食され得る。接着性および粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞は、それぞれ、真核細胞の表面および粘膜表面への接着を刺激することができるミニ細胞表面局在化タンパク質を発現するが、マクロファージ、好中球、および樹状細胞などの通常は構成的に食作用性である細胞を除いて、認識可能な内部移行を引き起こさない。当業者であれば、天然非浸潤Th2免疫調節ミニ細胞、接着性Th2免疫調節ミニ細胞、および粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞が、それ自体は自然に存在するのではなく、本明細書で述べるミニ細胞作製のための遺伝子的手法の1つ以上を用いて細菌の非ミニ細胞産生非浸潤、接着性、および粘膜接着性種から操作されるものであることは理解される。ストレプトコッカス属菌種、スタフィロコッカス属菌種、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、ラクトバチルス属菌種、シュードモナス属菌種、クレブシエラ属菌種、および大腸菌の非接着性菌株は、細菌細胞表面接着因子のクローン化および組換え発現を、前記異種接着因子の発現の結果として組換え接着性Th2免疫調節ミニ細胞が得られるようにして行うことにより、分子生物学および/または微生物遺伝学の当業者によって容易に操作されて、接着性とされる。
【0096】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子を含む天然非浸潤、接着性または粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞産生細菌を提供する。ある実施形態では、天然非浸潤、接着性または粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞産生細菌はさらに、(ii)異種エンドヌクレアーゼをコードし、天然非浸潤、接着性および/または粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(iii)定められた栄養素要求性;および(iv)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いており、遺伝子自殺機構からの回復のリスクが低減される。ある実施形態では、天然非浸潤、接着性および/または粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞産生細菌は、エルシニア属菌種、カンピロバクター属菌種、シュードモナス属菌種、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、リケッチア属菌種、および大腸菌の浸潤菌株が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、天然非浸潤、接着性または粘膜接着性Th2免疫調節ミニ細胞産生細菌は、マイコバクテリウム属菌種、ストレプトコッカス属菌種、リステリア・モノサイトゲネス、クラミジア属菌種、およびブルセラ属菌種が挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0097】
ある実施形態は、多効果標的化細胞傷害性免疫調節ミニ細胞(multi-effect targeted cytotoxic immunomodulatory minicells)を提供する。多効果標的化細胞傷害性免疫調節ミニ細胞は、ミニ細胞表面局在化標的化部分、細胞傷害性ペイロード、および/またはエンドソーム脱出タンパク質を含有する。多効果標的化細胞傷害性免疫調節ミニ細胞は、さらなる抗腫瘍活性をもたらす結果となるTh1免疫調節効果を引き起こすことができることに加えて、細胞傷害性ペイロードを腫瘍細胞へ直接標的化し、送達することで、直接の抗腫瘍効果を誘発することもできる。
【0098】
本明細書で述べるように、VAX‐IPミニ細胞は、インベイシンおよびパーフリンゴリジンOを合わせて発現し、提示するすべての多効果細胞傷害性免疫調節ミニ細胞を包含する。ミニ細胞の最終的な製剤は、解毒LPSを含み、新規な誘導性遺伝子自殺機構およびDAP栄養素要求性によって、いずれの生体内生存混入親細胞も充分に存在していないことが好ましい。
【0099】
本明細書で述べるように、VAX‐IPTミニ細胞は、インベイシン、パーフリンゴリジンO、およびタンパク質毒素を合わせて発現し、提示するすべての多効果細胞傷害性免疫調節ミニ細胞を包含する。ミニ細胞の最終的な製剤は、解毒LPSを含み、新規な誘導性遺伝子自殺機構およびDAP栄養素要求性によって、いずれの生体内生存混入親細胞も充分に存在していないことが好ましい。
【0100】
本明細書で述べるように、VAX‐IPTミニ細胞の1つの限定されない好ましいサブクラスは、VAX‐IPDミニ細胞であり、これは、インベイシン、パーフリンゴリジンO、およびジフテリア毒素の触媒断片(断片A)を合わせて発現し、提示する多効果細胞傷害性免疫調節ミニ細胞である。ミニ細胞の最終的な製剤は、解毒LPSを含み、新規な誘導性遺伝子自殺機構およびDAP栄養素要求性によって、いずれの生体内生存混入親細胞も充分に存在していないことが好ましい。ある実施形態では、VAX‐IPD細菌ミニ細胞を用いて、生体外および生体内においてジフテリア毒素の触媒断片を標的化し、より効率的に送達する。例えば、最適な殺傷活性は、インベイシン、PFO、およびジフテリア毒素の触媒断片(断片A)の3つすべての存在下にて観察される。そして、VAX‐IPDは、活性化されたベータ1インテグリンを発現することが知られている一連のマウスおよびヒト内皮ならびに腫瘍細胞型全体にわたる広範な効力を発揮するために、3つの成分すべてに対する類似の必要条件を有している。驚くべきことに、やはりベータ1インテグリンを発現することが知られているHL60細胞は、VAX‐IPDによる影響を受けない。この結果は予想外であり、文献のレビューをさらに行うことで、HL60細胞は、ベータ1インテグリンを発現するが、不活性化形態であることが見出された。しかし、充分に特徴付けられてきたインベイシン活性が、ベータ1活性化状態自体に依存するという報告はこれまでに成されていない。この予想外の結果は、ほとんどの場合は非常に低いレベルではあるが多くの組織型でベータ1インテグリンが発現され、リガンド結合形態または不活性化形態でも見出されることから、生体内で示される予想される毒性の欠如にも寄与しているだろう。重要なことには、VAX‐IPDミニ細胞は、転移を予防または排除し、ならびに生体内での主たる抗腫瘍効果を発揮させることができることが観察される。異なるモデルではあるが、活性および毒性に関する類似の結果も観察される。
【0101】
プロテインGは、グラム陽性細菌Gグループのストレプトコッカス属によって発現される細胞表面タンパク質である。その天然の生物学的機能は、Fc領域が免疫系からマスクされるように抗体のFc領域と結合することにより、感染プロセスの過程においてGグループのストレプトコッカス属のオプソニン化を防止することである。プロテインGは、2つのFc結合ドメインを含有する。ある実施形態では、ミニ細胞は、プロテインGのFc結合部分を持たない。ある実施形態では、ミニ細胞は、プロテインGのFc結合部分を提示しない。
【0102】
プロテインAは、グラム陽性細菌スタフィロコッカス・アウレウスによって発現される細胞表面タンパク質である。プロテインGと同様に、その天然の生物学的機能は、やはり、感染プロセスの過程においてスタフィロコッカス・アウレウスのオプソニン化を防止することである。スタフィロコッカス・アウレウスは、プロテインAを用いて抗体のFc領域と結合する。プロテインAは、4つの別々のFc結合ドメインを含有する。ある実施形態では、ミニ細胞は、プロテインAのFc結合部分を持たない。ある実施形態では、ミニ細胞は、プロテインAのFc結合部分を提示しない。
【0103】
本明細書で開示されるミニ細胞は、ある実施形態では、抗体または抗体のFc領域を含むその他の分子を含まない。本明細書で開示されるミニ細胞は、ある実施形態では、抗体または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示しない。
【0104】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;ならびに(ii)パーフリンゴリジンOの機能発現を行うことができる組換え発現カセットを含むVAX‐Pミニ細胞産生細菌を提供する。ある実施形態では、この細菌は、抗体または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示せず、プロテインGまたはプロテインAのFc結合部分も提示しない。ある実施形態では、VAX‐Pミニ細胞産生細菌はさらに、(iii)異種エンドヌクレアーゼをコードし、このミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(iv)定められた栄養素要求性;および(v)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子の例としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いている。ある実施形態では、VAX‐Pミニ細胞産生細菌は、カンピロバクター・ジェジュニ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、ボルデテラ・パータシス、ブルセラ属菌種、フランシセラ・ツラレミア、レジオネラ・ニューモフィリア、ナイセリア・メニンギティディス、クリエブセラ、エルシニア属菌種、ヘリコバクター・ピロリ、ナイセリア・ゴノレア、レジオネラ・ニューモフィラ、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、シュードモナス・エルジノーサ、および大腸菌が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、VAX‐Pミニ細胞産生細菌は、スタフィロコッカス属菌種、ラクトバチルス属菌種、ストレプトコッカス属菌種、バチルス・スブチリス、クロストリジウム・ディフィシル、およびバチルス・セレウスが挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0105】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;ならびに(ii)パーフリン
ゴリジンOの発現に加えて、インベイシンの機能発現および表面提示を行うことができる組換え発現カセットを含むVAX‐IPミニ細胞産生細菌を提供する。ある実施形態では、この細菌は、抗体または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示せず、プロテインGまたはプロテインAのFc結合部分も提示しない。ある実施形態では、VAX‐IPミニ細胞産生細菌はさらに、(iii)異種エンドヌクレアーゼをコードし、このミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(iv)定められた栄養素要求性;および(v)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子の例としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いている。ある実施形態では、VAX‐IPミニ細胞産生細菌は、カンピロバクター・ジェジュニ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、ボルデテラ・パータシス、ブルセラ属菌種、フランシセラ・ツラレミア、レジオネラ・ニューモフィリア、ナイセリア・メニンギティディス、クリエブセラ、エルシニア属菌種、ヘリコバクター・ピロリ、ナイセリア・ゴノレア、レジオネラ・ニューモフィラ、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、シュードモナス・エルジノーサ、および大腸菌が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、VAX‐IPミニ細胞産生細菌は、スタフィロコッカス属菌種、ラクトバチルス属菌種、ストレプトコッカス属菌種、バチルス・スブチリス、クロストリジウム・ディフィシル、およびバチルス・セレウスが挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0106】
ある実施形態は、(i)隔壁形成、二分裂、および染色体分離のうちの1つ以上を調節するミニ細胞産生遺伝子産物をコードする発現可能遺伝子;ならびに(ii)パーフリンゴリジンOおよびジフテリア毒素の触媒断片(断片A)の発現に加えて、インベイシンの機能発現および表面提示を行うことができる組換え発現カセットを含むVAX‐IPDミニ細胞産生細菌を提供する。ある実施形態では、この細菌は、抗体または抗体のFc領域を含むその他の分子を提示せず、プロテインGまたはプロテインAのFc結合部分も提示しない。ある実施形態では、VAX‐IPDミニ細胞産生細菌はさらに、(iii)異種エンドヌクレアーゼをコードし、このミニ細胞産生細菌の染色体が、そのエンドヌクレアーゼの1つ以上の認識部位を含んでいる発現可能「遺伝子自殺」遺伝子;(iv)定められた栄養素要求性;および(v)lpxM/msbB遺伝子(またはその他の機能等価物)における欠失または変異のうちの1つ以上を含む。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、細胞分裂遺伝子である。細胞分裂遺伝子の例としては、これらに限定されないが、ftsZ、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。ある実施形態では、ミニ細胞産生遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼ自殺遺伝子は、ミニ細胞産生細菌の染色体上に位置する。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである。ホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、これらに限定されないが、I‐CeuI、PI‐SceI、I‐ChuI、I‐CpaI、I‐SceIII、I‐CreI、I‐MsoI、I‐SceII、I‐SceIV、I‐CsmI、I‐DmoI、I‐PorI、PI‐TliI、PI‐TliII、およびPI‐ScpIが挙げられる。ある実施形態では、エンドヌクレアーゼは、誘導性プロモーターの制御下で発現される。ある実施形態では、栄養素要求性は、必須代謝遺伝子における欠失または不活性化変異によるものである。ある実施形態では、欠失または不活性化変異は、dapA遺伝子またはその機能相同体に存在する。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌はさらに、リポポリサッカリド合成に関与する遺伝子産物をコードする遺伝子に、欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されている。ある実施形態では、不活性化された遺伝子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して変更されたリピドA分子を細菌に産生させる遺伝子産物をコードするlpxM/msbBである。ある実施形態では、変更されたリピドA分子は、対応する野生型細菌中のリピドA分子と比較して、リポポリサッカリド分子のリピドA部分へのミリストレイン酸の付加という点が欠けている。ある実施形態では、ミニ細胞産生細菌は、さらに、相同組換えに関与する遺伝子中に欠失または不活性化変異を含み、この遺伝子は、対応する野生型遺伝子と比較して遺伝子改変されており、ミニ細胞産生細菌は、DNA損傷修復を欠いている。ある実施形態では、VAX‐IPDミニ細胞産生細菌は、カンピロバクター・ジェジュニ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、ボルデテラ・パータシス、ブルセラ属菌種、フランシセラ・ツラレミア、レジオネラ・ニューモフィリア、ナイセリア・メニンギティディス、クリエブセラ、エルシニア属菌種、ヘリコバクター・ピロリ、ナイセリア・ゴノレア、レジオネラ・ニューモフィラ、サルモネラ属菌種、シゲラ属菌種、シュードモナス・エルジノーサ、および大腸菌が挙げられるがこれらに限定されないグラム陰性細菌である。ある実施形態では、VAX‐IPDミニ細胞産生細菌は、スタフィロコッカス属菌種、ラクトバチルス属菌種、ストレプトコッカス属菌種、バチルス・スブチリス、クロストリジウム・ディフィシル、およびバチルス・セレウスが挙げられるがこれらに限定されないグラム陽性細菌である。
【0107】
ミニ細胞は、免疫調節ポリペプチド(例:サイトカイン、タンパク質毒素、および細胞溶解素)および核酸(例:二本鎖RNA、ヘアピンRNA、二本鎖直鎖状DNA)のローディングに関して独特の機構および利点を有する。例えば、免疫調節ミニ細胞産生親細菌細胞を用いて、ミニ細胞が産生される前またはそれと同時に、1つ以上のサイトカイン、タンパク質毒素、および細胞溶解素を組換え発現/産生させることができる。組換えポリペプチドは、ミニ細胞によって発現、分離、および封入され、次に、免疫調節ミニ細胞によって生体内で誘発されるTh1またはTh2免疫応答を向上、調節、および/または安定化するために用いられる。種々の免疫調節ミニ細胞タンパク質成分の組換え産生は、これらに限定されないが、パーフリンゴリジンOおよびインベイシンを含んでよく、当業者に公知の組換え発現方法のいかなる組み合わせによって促進されてもよい。限定されない例として、組換え発現は、染色体に位置し、インベイシンなどの特定のタンパク質成分をコードする操作可能に連結されたオープンリーディングフレームから促進することができる。免疫調節ミニ細胞のタンパク質成分の組換え発現は、プラスミド、コスミド、ファージミド、および細菌人工染色体(BAC)などの1つ以上のエピソーム原核生物発現コンストラクトの使用によって促進することができる。最終免疫調節ミニ細胞産物の個々の所望されるタンパク質成分をコードする操作可能に連結された原核生物オープンリーディン
グフレームは、同じエピソーム発現コンストラクト上に存在しても、または別々の異なるエピソーム発現コンストラクト上に存在してもよい。所望されるタンパク質成分の産生は、誘導性原核生物プロモーターの制御下に置かれてよく、または別の選択肢として、構成的に活性である原核生物プロモーター系の制御下に置かれてもよい。当業者であれば、本発明での使用に利用可能である原核生物プロモーター系を容易に認識するであろう。プロモーター系の例としては、これらに限定されないが、IPTG誘導性Lac系およびその数々の誘導体、L‐ラムノース誘導性pRHA系、L‐アラビノース誘導性pBAD系、T7ポリメラーゼ系、CI857ts系などが挙げられる。VAX‐IPミニ細胞産生菌株およびそこからVAX‐IPミニ細胞を作製することの1つの限定されない実施形態は、実施例6および
図8に示される。
【0108】
原核生物発現カセット(染色体またはエピソームに位置する)からの組換え発現により、親細胞によって(1もしくは複数の)ポリペプチドが予め形成され、次に免疫賦活剤としてミニ細胞の内部にパッケージングされる場合、ミニ細胞内での(1もしくは複数の)ポリペプチドの半減期は、タンパク質分解を担うプロテアーゼ遺伝子(例:大腸菌のlonプロテアーゼ)中の1つ以上の欠失またはその他の非機能変異を持つ免疫調節ミニ細胞産生細菌株の使用によって延長され得る。(1もしくは複数の)プロテアーゼの非存在下にて、タンパク質毒素分子は、高いレベルで蓄積し、治療ポリペプチド分子を送達する標的化ミニ細胞の効力が増加される。大腸菌ミニ細胞産生菌株の場合、変異または欠失は、lon、tonB、abgA、ampA、ampM、pepP、clpP、dcp、ddpX/vanX、elaD、frvX、gcp/b3064、hslV、hchA/b1967、hyaD、hybD、hycH、hycI、iadA、ldcA、ycbZ、pepD、pepE、pepQ、pepT、pmbA、pqqL、prlC、ptrB、sgcX、sprT、tldD、ycaL、yeaZ、yegQ、ygeY、yggG、yhbO、yibG、ydpF、degS、ftsH/hflB、glpG、hofD/hopD、lepB、lspA、pppA、sohB、spa、yaeL、yfbL、dacA、dacB、dacC、degP/htrA、degQ、iap、mepA、nlpC,pbpG、tsp、ptrA、teas、umuD、ydcP、ydgD、ydhO、yebA、yhbU、yhjJ、およびnlpD遺伝子のうちの1つ以上に導入されてよい。
【0109】
原核生物発現カセット(染色体またはエピソームに位置する)からの組換え発現により、親細胞によって(1もしくは複数の)免疫調節核酸が予め形成され、次に免疫賦活剤としてミニ細胞の内部にパッケージングされる場合、ミニ細胞内での(1もしくは複数の)核酸の半減期は、二本鎖RNA分解を担うヌクレアーゼ遺伝子(例:大腸菌のrncヌクレアーゼ)中の1つ以上の欠失またはその他の非機能変異を持つ免疫調節ミニ細胞産生細菌株の使用によって延長される。(1もしくは複数の)ヌクレアーゼの非存在下にて、免疫調節核酸分子は、高いレベルで蓄積し、前記免疫調節核酸分子を持つ免疫調節ミニ細胞の効力が増加される。
【0110】
免疫調節ミニ細胞をヒトの免疫治療剤として用いるためには、前記ミニ細胞は、生存親細菌細胞などの混入物をほとんどまたはまったく含有してはならない。生存混入細胞およびその他の混入物のレベルは、患者において有害な副作用を引き起こさないように、またはミニ細胞活性に干渉しないように、充分に低くなければならない。遺伝子自殺機構と称されるホーミングエンドヌクレアーゼ遺伝子の誘導性発現は、特に従来のろ過方法と組み合わせて用いられる場合に、生存混入親細胞を排除するための好ましい機構である。ミニ細胞は、病原性または日和見病原性である一部の細菌から誘導されるため、混入親細胞は、全身投与、特に静脈内投与の前に、任意の集団から機能的に排除されることが望ましい。TURBT手術を受けた筋層非浸潤膀胱癌患者への膀胱内投与にも、特に膀胱への穿孔が発生したか、またはそれが疑われる場合に、同じことが言える。その結果、所望されるミニ細胞製剤は、有害な副作用を引き起こさないように、または意図するミニ細胞活性に干渉しないように、残留生存親細胞数が可能な限り低い製剤ということになる。安全性を最大化し、いずれの混入親細胞の生存性による毒性をも制限するために、本明細書で開示されるミニ細胞は、以下で開示される3つの安全機能のうちの1つ以上を例とする安全機能を含むミニ細胞産生菌株から誘導される。ある実施形態では、ミニ細胞産生菌株は、これら3つの相乗効果的安全機能を少なくとも含む。第一は、ミニ細胞形成工程の完了後、残留生存親細胞を、溶解することなく(および遊離リポサッカリドを排出することなく)殺傷する遺伝子自殺機構である。本出願は、米国特許出願公開第20100112670号に記載のように、適切な誘導因子に暴露されると修復不能な損傷をミニ細胞産生親細胞の染色体に導入する制御された遺伝子自殺機構の使用を取り入れる。自殺機構は、親細胞の染色体に修復不能な二本鎖の破壊を導入するように働き、ミニ細胞精製を改善するための従来の分離技術への補助として用いることができる。第二の安全機能は、必須ではないが好ましくはジアミノピメリン酸(DAP)生合成経路における、最も好ましくは大腸菌ミニ細胞産生菌株のdapA遺伝子における、定められた栄養素要求性である。DAP栄養素要求性(dapA‐)を示す大腸菌のミニ細胞産生菌株は、DAPの補充なしでは実験室外で生存することができない。さらに、DAPは、ヒトを含む哺乳類には見られず、そのため、ミニ細胞製品中に存在するいかなるミニ細胞産生親細胞も、環境中または生体内で生存することができない。この主題に関して、異なるグラム陰性およびグラム陽性細菌に対して多くの変更が存在する。例えば、サルモネラ属菌種では、芳香族アミノ酸生合成経路の栄養素要求性(aro遺伝子)が、実質的に同じ結果をもたらす。シゲラ属菌種の場合は、グアニン生合成経路の栄養素要求性が、実質的に同じ結果をもたらす。第三の安全機能は、所望に応じて存在してよいものであり、大腸菌ミニ細胞産生菌株におけるlpxM遺伝子の欠失を伴う。lpxM遺伝子の欠失の結果、解毒リポポリサッカリド(LPS)分子の産生を得ることができる。lpxM遺伝子(msbB遺伝子とも称される)は、LPS分子のリピドA部分に末端ミリストレイン酸基を付加するように機能するものであり、この基の除去の結果(lpxM遺伝子の消失による)、LPSの顕著な解毒が得られる。具体的には、解毒は、LPSへの暴露に応答する炎症性サイトカインの産生の減少として特徴付けられる。当業者であれば、LPSの解毒形態を用いてもサイトカインが作り出されることは理解される。解毒は、産生されるサイトカインのレベルを制御するだけであり、それによって、急性敗血症様炎症応答を抑制することが可能となり、同時により強力なTh1および/またはTh2免疫応答を、明らかな毒性なしに達成することができる。この欠失は、いかなるグラム陰性またはグラム陽性ミニ細胞産生菌株のいかなる機能的に等価である遺伝子へも導入して、同じ効果を達成することができる。向上された安全プロファイルにより、感染のリスクおよび敗血症を発症する可能性を低減すること、他の細菌との組換えイベントを通しての遺伝子復帰の可能性を低下させること、およびホストでの挿入イベントのリスクを最小限に抑えることができる。法規制および製造の観点から、抗生物質抵抗性マーカーがミニ細胞産生親細胞株の細菌染色体から排除されることも好ましい。ヒトにおける使用に関する米国食品医薬品局(FDA)によって課される規制要件に従うには、ほとんどの抗生物質抵抗性遺伝子マーカーは、細菌のミニ細胞産生菌株での使用が望ましくない。最終品がヒトでの使用を意図している場合にFDAによって認められているのは、細菌または細菌の生産株を選別する目的でのカナマイシン抵抗性遺伝子マーカーの使用だけである。
【0111】
ある実施形態は、免疫調節ミニ細胞を作製する方法を提供し、その方法は、本明細書で開示される適切な免疫調節ミニ細胞産生細菌を培養すること、およびミニ細胞産生親細胞から免疫調節ミニ細胞を実質的に分離し、それによって、免疫調節ミニ細胞を含む組成物を作製することを含む。ある実施形態では、この方法は、さらに、ミニ細胞産生親細胞の培養物からの免疫調節ミニ細胞の形成を誘導することを含む。ある実施形態では、この方法は、さらに、遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現を誘導することを含む。ある実施形態では、ミニ細胞形成は、イソプロピルβ‐D‐1‐チオガラクトピ
ラノシド(IPTG)、ラムノース、アラビノース、キシロース、フルクトース、メリビオース、およびテトラサイクリンから選択される1つ以上の化学化合物の存在によって誘導される。ある実施形態では、遺伝子自殺エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子の発現は、温度の変化によって誘導される。ある実施形態では、この方法は、さらに、組成物から免疫調節ミニ細胞を精製することを含む。ある実施形態では、免疫調節ミニ細胞は、これらに限定されないが、遠心分離、ろ過、限外ろ過、超遠心分離、密度勾配、免疫親和性、免疫沈降、および前述の精製方法のいずれかの組み合わせを含む群から選択されるプロセスによって親細胞から実質的に分離される。
【0112】
ある実施形態は、外膜のリポポリサッカリド成分がミリストレイン酸部分を持たないリピドA分子を含んでいる(「解毒リポポリサッカリド」または「解毒LPS」)、外膜を有する真正細菌ミニ細胞を提供する。解毒LPSは、対応する野生型細菌に由来する真正細菌ミニ細胞の外膜によって誘導される炎症性応答と比較して、哺乳類ホストにおける炎症性免疫応答が低減される。
【0113】
本開示は、いずれかの直接の抗腫瘍効果に加えて、完全にまたは部分的に免疫応答によって媒介される強力な間接的抗腫瘍効果を有するような方法で免疫系を刺激する目的のための免疫調節真正細菌ミニ細胞の新規な使用について記載する。例えば、本明細書で開示される免疫調節ミニ細胞は、筋層非浸潤性膀胱癌のための膀胱内療法として用いることができる。
【0114】
1.ミニ細胞作製
ミニ細胞は、正常細胞分裂装置の破壊後に細菌によって形成される非染色体性の膜封入生物学的ナノ粒子である(菌株型および用いられる増殖条件に応じて、直径およそ250~500nm)。本質的には、ミニ細胞は、染色体DNAを含有しないこと以外は正常細菌細胞の小代謝活性レプリカであり、このため、非分裂性および非生存性である。ミニ細胞は、染色体DNAを含有しないが、プラスミドDNA、RNA、天然および/または組換え発現タンパク質、ならびにその他の代謝物はすべて、ミニ細胞中に隔離されることが示されている。
【0115】
染色体複製および細胞分裂が合わせて破壊されることにより、ほとんどの桿状原核生物の極領域(polar region)からミニ細胞形成が引き起こされる。染色体複製および細胞分裂を合わせて破壊することは、隔壁形成および二分裂に関与する遺伝子の一部の過剰発現を通して促進することができる。別の選択肢として、ミニ細胞は、隔壁形成および二分裂に関与する遺伝子に変異を持つ菌株中で産生させることができる。多くの異なる原核生物で示されているように、損傷された染色体分離機構も、ミニ細胞形成を引き起こすことができる。
【0116】
同様に、ミニ細胞産生は、新生染色体の娘細胞中への分離に関与する遺伝子の過剰発現または変異によって達成することができる。例えば、大腸菌のparCまたはmukB遺伝子座の変異によって、ミニ細胞が産生されることが示されている。これらはいずれも、腸内細菌科の染色体分離における個々の必須工程に影響を与える。上述の細胞分裂遺伝子と同様に、ミニ細胞産生をもたらす染色体分離プロセスに関与するいずれかの任意の遺伝子の野生型レベルを操作することも、他のファミリーメンバーにおいて類似の効果を有するものと想定することができる。
【0117】
細胞分裂および染色体複製プロセスは、生存するために非常に重要であることから、これらのプロセスを担う遺伝子に関して、原核生物ファミリーメンバーの中で、高いレベルの遺伝子的および機能的保存が存在する。その結果、1つのファミリーメンバーでミニ細胞産生を進めることができる細胞分裂遺伝子の過剰発現または変異を、別のメンバーでの
ミニ細胞産生に用いることができる。例えば、サルモネラ属菌種およびシゲラ属菌種などのその他の腸内細菌科ファミリーメンバー、ならびにシュードモナス属菌種などのその他のクラスメンバーでの大腸菌ftsZ遺伝子の過剰発現が、類似レベルのミニ細胞産生をもたらすことが示されている。
【0118】
腸内細菌科の変異系ミニ細胞産生菌株においても、同じことを示すことができる。例えば、腸内細菌科ファミリーメンバーのいずれにおけるmin遺伝子座の欠失でも、ミニ細胞産生がもたらされる。変異によってミニ細胞形成を引き起こすことができる腸内細菌科からの細胞分裂遺伝子としては、これらに限定されないが、min遺伝子(MinCDE)が挙げられる。min変異菌株からのミニ細胞産生が可能である一方で、これらの菌株は、生産菌株という意味での商業的価値が限定的である。その理由は、min遺伝子内に欠失または変異を持つ菌株は、構成的に低いレベルでミニ細胞を作り出すからである。このことは、商業化およびスケールの経済性という意味で2つの問題を提起する。第一は、これらの菌株からのミニ細胞収率が低いことであり、それによって、生産コストが上昇する。第二は、ミニ細胞収率が、変異菌株によって非常に変わりやすいことであり、ロット間の変動性は、生産コスト、製造品質管理、および規制順守に甚大な影響を及ぼす。細胞分裂変異菌株を用いて、診断用または治療用送達のためのタンパク質、RNA、DNA、およびその他の異化産物などの生物活性分子を封入するミニ細胞を産生させることは、問題が多い。変異菌株中でのミニ細胞産生の開始は、制御することができず、低いレベルで発生し、それによって、最終的には、まったく生物活性分子を含有しないミニ細胞がある一方で、広く様々な量の生物活性分子を含有するミニ細胞もあるという結果となる。これらの欠点は、一緒に、または別々に考えた場合、商業目的でのこれらの変異菌株の有用性を大きく制限するものである。
【0119】
細胞分裂遺伝子を過剰発現するミニ細胞産生菌株(「過剰発現株(overexpressers)」)は、変異系菌株よりも好ましく、それは、ミニ細胞産生フェノタイプが、過剰発現されるべき細胞分裂遺伝子が誘導性またはその他の条件下で活性である真正細菌プロモーター系の制御下に置かれる限りにおいて、制御可能であるからである。細胞分裂遺伝子ftsZを過剰発現する菌株からのミニ細胞産生は、プラスミドに基づく相補性の研究を用いて大腸菌における必須細胞分裂遺伝子の識別を行っていた研究者らによって発見された。これらの研究において、ftsZ遺伝子は、細胞あたり10以上のコピーとして存在していた。ftsZの複数の遺伝子コピーの存在によって、ミニ細胞および極めて長いフィラメント状細胞(filamented cells)が産生されることが示された。最終的には、この不可逆的なフィラメント状のフェノタイプへの移行は、マルチコピープラスミドからのftsZを過剰発現する菌株からのミニ細胞収率に負の影響を与えるが、産生されるミニ細胞の数は、それでも、いずれの変異菌株のそれよりも多い。以降、ftsZ遺伝子コピーの数を単一の染色体重複(single, chromosomal duplication)に低減することにより、ftsZがマルチコピープラスミド上に位置する菌株の場合よりも産生されるミニ細胞の数が増加すること、およびフィラメント状フェノタイプが広範囲ではなくなることが示されてきた。従って、(1もしくは複数の)好ましい組成物は、染色体上に組み込まれたftsZの重複コピー(duplicate, chromosomally integrated copy of ftsZ)からftsZ遺伝子を誘導的に過剰発現するミニ細胞産生菌株である。用いられる重複ftsZ遺伝子は、ミニ細胞産生フェノタイプが操作されている細菌種から直接誘導することができ、また、他の細菌種からのftsZ遺伝子配列から誘導することもできる。限定されない例として、大腸菌のftsZ遺伝子の過剰発現を用いて、大腸菌およびサルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)からミニ細胞を作製することができる。得られた菌株は、染色体上の野生型ftsZ遺伝子、およびftsZ遺伝子の別個の重複性および誘導性コピー、ならびにその全内容が本明細書に援用される米国特許出願公開第2010/0112670号に記載の(1もしくは複数の)誘導性遺伝子自殺機構を含む。限定されない例として、腸内細菌科においてミニ細胞を産生させるために過剰発現させることができる分裂遺伝子としては、これらに限定されないが、ftsZ、minE、sulA、ccdB、およびsfiCが挙げられる。好ましい組成物は、誘導性プロモーターの制御下にあり、所定の真正細菌株の染色体へ安定的に組み込まれた(1もしくは複数の)細胞分裂遺伝子の(1もしくは複数の)重複コピーを有するべきである。当業者であれば、誘導性細胞分裂遺伝子カセットが、プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、組換えバクテリオファージ、または細胞中に存在するその他のエピソームDNA分子上に存在する場合、同じ戦略が与えられ得ることは容易に理解される。
【0120】
ミニ細胞産生のためのこの誘導性フェノタイプの手法は、変異体系と比較していくつかの明確な利点を有する。第一として、これらの菌株中に構成的遺伝子変異が存在しないことから、正常成長の過程で選択圧は存在せず、培養細胞は、ミニ細胞フェノタイプが誘導されるまで、非常に安定で正常な生理機能を維持する。最終的な結果としては、誘導性ミニ細胞産生菌株は、より健康、およびより安定であり、その結果、最終的には、ミニ細胞のより高い収率が得られる。ミニ細胞産生のために誘導性フェノタイプの手法を用いる別の明確な利点は、ミニ細胞産生親細胞によって産生され得るタンパク質、治療RNA、プラスミドDNA、およびその他の生物活性異化産物などの生物活性分子の、ミニ細胞を使用する送達が、産生されるミニ細胞がこれらの生物活性分子を封入するように行われる場合である。このような場合、好ましい方法は、ミニ細胞フェノタイプを誘導する前に、親細胞内に(1もしくは複数の)生物活性分子の形成を誘導し、それによって、産生されるミニ細胞のすべてが、(1もしくは複数の)その生物活性分子の所望される量を含有するようにすることである。別の選択肢として、ミニ細胞自体が、親細胞から分離された後に、生物活性分子を産生することができる。これには、限定されないが、親細胞から分離された後に、ミニ細胞内に位置する生物活性分子をコードするエピソーム核酸またはRNAから、またはミニ細胞のタンパク質成分を予め存在させておくことによって、生物活性分子を形成することが挙げられる。これらの発現戦略のいずれも、ミニ細胞の表面に結合部分を発現、提示させるために用いることができる。これらの利点は、組み合わせて用いられる場合、ミニ細胞の品質および量が高められる結果をもたらす。加えて、これらのミニ細胞は、さらに、以下でより詳細に述べるように、ミニ細胞中にローディングすることができる小分子薬物を含むこともできる。
【0121】
2.ミニ細胞精製
ミニ細胞は、病原性または日和見病原性である一部の細菌から誘導されるため、いかなる混入親細胞も、投与の前に、所定の集団から機能的に排除されることが最大限に重要である。従来から、生存親細胞は、物理的手段または生物学的手段またはその両方によって排除されてきた。
【0122】
物理的手段としては、遠心分離に基づく分離手順、ろ過による方法、クロマトグラフィによる方法、またはこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0123】
生物学的排除は、これらに限定されないが、親細胞の選択的溶解、栄養素要求性親菌株の使用、抗生物質での処理、UV放射線での処理、ジアミノピメリン酸(DAP)欠乏、親細胞の選択的吸着、その他のDNA損傷剤での処理、および自殺遺伝子の誘導によって達成される。
【0124】
親細胞の選択的溶解は、通常、溶原性プロファージの溶解サイクルを誘導することによって媒介される。ミニ細胞産生菌株の場合、ミニ細胞が、溶解フェノタイプの活性化の過程で、続いて感染および溶解されないように、溶解能力は有するが、再感染は欠損しているプロファージを用いることが最も有用である。別の選択肢として、および限定されない例として、ホリン遺伝子ファミリーのメンバーとして分類されるものなどの個別の遺伝子を発現させて、溶原性プロファージの使用に固有の再感染に関する懸念なしに、類似レベルの溶解を達成することもできる。いずれの手法も、それを達成するために用いられる方法に関わらず、溶解イベントが許容されない量の遊離内毒素を媒体中へ排出するという事実によって制限される。そのような大量の遊離内毒素を除去することは、時間が掛かり、ロット間の変動の影響を受け、最終的にはコストが非常に高くなってしまう。
【0125】
栄養素要求性親菌株の使用では、復帰変異に関する懸念が持ち上がり、このため、ミニ細胞が細菌の共生または非病原性菌株から産生されることになる場合にのみ用いることができる。従って、その適用は、ミニ細胞産生に用いられる生存非病原性親細胞を排除するための方法として用いられることに制限される。
【0126】
UV放射線による処理は、UV放射線が核酸に対するその効果という点でランダムであり、結果がロット間で非常に変動しやすいということを除けば、ミニ細胞産生の実施時に生存親細胞を排除するのに有用であり得る。加えて、この方法は、UV放射線がすべての核酸をランダムに損傷させるため、治療または予防核酸を送達するためにミニ細胞を用いる場合には好ましくない。例えば、プラスミドDNAも、UV放射線によるDNA損傷を非常に受けやすく、それでもミニ細胞によって効果的に送達はされるが、無効力とされ得る。
【0127】
ジアミノピメリン酸(DAP)欠乏は、この手法を用いることができる種の数によって制限されること以外は、生存親細胞の排除に有用であり得る。言い換えると、ミニ細胞を産生することができるすべての親細胞種が、生存にDAPを必要としている訳ではない。大腸菌ミニ細胞産生菌株のDAP変異体は、非常に有利であり、場合によっては、野生型よりも好ましい。DAPを用いることの利点は、この化合物(ジアミノピメリン酸、大腸菌細胞壁の構成成分)が大腸菌の成長にとって不可欠であり、動物には存在せず、動物によって産生もされないことである。従って、「生存」大腸菌ミニ細胞産生親細胞が標的化ミニ細胞と共に投与されたとしても、親細胞は、成長することができず、それにより、動物にとって、およびミニ細胞活性という点で、不活性となる。類似の手法を、サルモネラ属菌種系ミニ細胞産生親菌株で用いることができるが、但しこの場合は、aro遺伝子、好ましくはaroBが除去される。
【0128】
選択的吸着法は、生存親細胞からのミニ細胞の精製に関してはまだ研究されていない。選択的吸着は、親細胞またはミニ細胞が、基材に対するそれらの親和性によって基材へ選択的に吸着されるいずれかのプロセスとして定義される。限定されない例として、高親和性タンパク質‐タンパク質相互作用が、この用途に利用され得る。限定されない例として、新規なミニ細胞外膜タンパク質Lpp‐OmpA::プロテインAは、ほとんどの抗体のFc領域に対して高い親和性を有する。Lpp‐OmpA::プロテインAをコードする遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下にあり、免疫調節ミニ細胞産生菌株の染色体上へ容易に導入され得る。免疫調節ミニ細胞は、産生されたミニ細胞がその細胞表面上にLpp‐OmpA::プロテインAを発現または提示しないように、インベイシン遺伝子の発現の活性化の前にこの菌株から産生され得る。免疫調節ミニ細胞の所望される量がこの菌株から産生されると、Lpp‐OmpA::プロテインAが生存細胞上でのみ発現および提示されるように、培養物内の生存細胞にLpp‐OmpA::プロテインAタンパク質を産生するシグナルが与えられ得る。Lpp‐OmpA::プロテインAが生存親細胞の表面上で選択的に発現されると、細胞は、抗体またはその他のFc領域含有タンパク質でコーティングした基材へ容易に吸着することができる。一旦吸着されると、ミニ細胞は、用いられた基材の種類に応じたいくつかの種々の手段により、生存親細胞から選択的に精製することができる。基材としては、これらに限定されないが、重力ろ過用途に用いられる固相クロマトグラフィカラム、磁気ビーズ、イオン交換カラム、またはHPLCカラムが挙げられる。
【0129】
ある実施形態では、ミニ細胞は、ミニ細胞を含む組成物中のミニ細胞産生親細胞から実質的に分離される。例えば、分離後、ミニ細胞を含む組成物は、約99.9%、99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、または30%を超えるミニ細胞産生親細胞非含有率である。ある実施形態では、組成物は、約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、または30%未満のミニ細胞産生親細胞を含有する。
【0130】
好ましくは、治療目的で生体内投与された場合に、過度に毒性でないように、または標的化ミニ細胞の活性に干渉しないように、生存であってもまたはそうでなくても、最終組成物が含有する混入親細胞は充分に少ない。
【0131】
混入生存親細菌細胞を充分に排除するか、またはその生体内での生存を防止する好ましい方法は、誘導性遺伝子自殺機構の組み込みによるものであり、これらに限定されないが、米国特許出願公開第20100112670号に記載のホーミングエンドヌクレアーゼまたはその機能的等価物の活性化および発現が挙げられる。
【0132】
3.特定の細胞、組織、および器官へのミニ細胞の標的化
産生およびそれに続く精製の後、VAX‐IP、VAX‐IPT、VAX‐IPP、VAX‐IPD、VAX‐IPG、VAX‐IPPA、およびVAX‐IPRミニ細胞を、ベータ1‐インテグリンの高められた発現および/または活性を有し、生体内で疾患に関与する特定の細胞型を標的とし、そのタンパク質毒素ペイロードを、標的とされた組織、器官、および細胞型へ選択的に、およびより効率的に送達するための標的化送達媒体として用いることができる。本明細書で開示される標的化VAX‐IP、VAX‐IPT、VAX‐IPP、VAX‐IPD、VAX‐IPG、VAX‐IPPA、およびVAX‐IPRミニ細胞は、インテグリンα3β1、インテグリンα4β1、インテグリンα5β1、インテグリンα6β1、インテグリンαvβ1、およびインテグリンβ1が挙げられるがこれらに限定されない真核生物癌細胞特異的表面抗原へ標的化することができる。以下でより詳細に述べるように、これらのベータ1インテグリンファミリーメンバーの発現および/または活性レベルは、正常組織および脈管構造における低レベル、非活性化、および/またはリガンド占有ベータ1インテグリンと比較して、多くの固形腫瘍型、ならびに腫瘍脈管構造で見出される。
【0133】
4.ミニ細胞へのペイロードのローディング
真正細菌ミニ細胞は、動物にとっての治療、予防、または診断上の有益性を持ついくつかのクラスの生物活性化合物を封入し、送達することができる。ミニ細胞による送達が可能である生物活性化合物(ペイロード)の種類としては、これらに限定されないが、小分子(小分子薬物を含む)、核酸、ポリペプチド、放射性同位元素、脂質、リポポリサッカリド、およびこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0134】
タンパク質は、ポリペプチドを含み、DNAによってコードされる。タンパク質は、酵素、毒素、またはシグナル伝達タンパク質など、生物学的に機能性であってよい。タンパク質は、アクチンなどの場合など、構造的であってよい。タンパク質は、抗体および抗体模倣物となど、他のタンパク質と強く結合し、タンパク質/タンパク質相互作用を必要とする機能を破壊するために用いることができる。タンパク質は、蛍光または生物発光とすることで、局在化シグナルを提供することができる。タンパク質は、免疫原として作用す
るか、またはその他の治療目的で(標的細胞、組織、器官、もしくは動物における酵素の供給または回復など)作用することができる。タンパク質は、その他の種類のペイロードのエンドサイトーシス後における細胞内移行を補助することができる。例えば、リステリア・モノサイトゲネスからのリステリオリジンOなどのタンパク質を用いて、標的細胞の(1もしくは複数の)エンドサイトーシスコンパートメントから標的細胞のサイトゾルへの(1もしくは複数の)ミニ細胞ペイロードの移行を促進することができる。タンパク質はまた、プロドラッグ変換酵素であってもよい。1つの限定されない好ましい組換え発現/産生タンパク質毒素は、パーフリンゴリジンOである。標的化ミニ細胞によって送達されるその他の組換え発現/産生治療ポリペプチドとしては、これらに限定されないが、タンパク質毒素、コレステロール依存性細胞溶解素、機能性酵素、抗体模倣物、タンパク質/タンパク質相互作用破壊物質(protein/protein interaction disrupters)、活性化カスパーゼ、プロカスパーゼ、サイトカイン、ケモカイン、細胞透過性ペプチド、および前述のいずれかの組み合わせが挙げられる。(1もしくは複数の)治療ポリペプチドの組換え発現は、これらに限定されないが、プラスミド、コスミド、ファージミド、および細菌人工染色体(BAC)、ならびに前述のいずれかの組み合わせを含む本技術分野にて公知の種々のエピソーム組換え原核生物発現ベクターのいずれからの発現の結果であってもよい。同様に、組換え発現は、ミニ細胞産生親細胞染色体の1つ以上のコピーに存在する染色体に位置する原核生物発現カセットによって達成されてよい。種々の免疫調節ミニ細胞成分(これらに限定されないが、パーフリンゴリジンOおよびインベイシンが挙げられる)の組換え産生は、当業者に公知の組換え発現法のいずれの組み合わせによって促進されてもよい。限定されない例として、組換え発現は、染色体に位置し、インベイシンなどの特定のタンパク質成分をコードする操作可能に連結されたオープンリーディングフレームから促進することができる。免疫調節ミニ細胞のタンパク質成分の組換え発現は、プラスミド、コスミド、ファージミド、および細菌人工染色体(BAC)などの1つ以上のエピソーム原核生物発現コンストラクトの使用によって促進することができる。最終免疫調節ミニ細胞産物の個々の所望されるタンパク質成分をコードする操作可能に連結された原核生物オープンリーディングフレームは、同じエピソーム発現コンストラクト上に存在しても、または別々の異なるエピソーム発現コンストラクト上に存在してもよい。所望されるタンパク質成分の産生は、誘導性原核生物プロモーターの制御下に置かれてよく、または別の選択肢として、構成的に活性である原核生物プロモーター系の制御下に置かれてもよい。当業者であれば、使用することができる原核生物プロモーター系を容易に認識するであろう。プロモーター系の例としては、これらに限定されないが、IPTG誘導性Lac系およびその数々の誘導体、L‐ラムノース誘導性pRHA系、L‐アラビノース誘導性pBAD系、T7ポリメラーゼ系、CI857ts系などが挙げられる。限定されない例として、VAX‐IPミニ細胞産生菌株およびそこからVAX‐IPミニ細胞を作製する具体的な方法は、実施例6および
図8として含まれる。
【0135】
タンパク質毒素の例としては、これらに限定されないが、パーフリンゴリジンO、ゲロニン、ジフテリア毒素断片A、ジフテリア毒素断片A/B、破傷風毒素、大腸菌熱不安定性毒素(LTIおよび/またはLTII)、コレラ毒素、C.パーフリンジェス イオタ毒素(C. perfringes iota toxin)、シュードモナス外毒素A、志賀毒素、炭疽毒素、MTX(B.スファエリクス 殺蚊毒素(B. sphaericus mosquilicidal toxin))、ストレプトリジン、オオムギ毒素(barley toxin)、メリチン、炭疽毒素LFおよびEF、アデニル酸シクラーゼ毒素、ボツリノリジンB、ボツリノリジンE3、ボツリノリジンC、ボツリヌス毒素A、コレラ毒素、クロストリジウム毒素A、B、およびアルファ、リシン、志賀A毒素、志賀様A毒素、コレラA毒素、百日咳S1毒素、大腸菌熱不安定性毒素(LTB)、リステリオリジンOのpH安定変異体(pH‐非依存性;アミノ酸置換 L461T)、リステリオリジンOの熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K)、リステリオリジンOのpHおよび熱安定変異体(アミノ酸置換 E247M、D320K、およびL461T)、ストレプトリジンO、ストレプトリジンO c、ストレプトリジンO e、スファエリコリジン、アントロリジンO、セレオリジン、チューリンゲンシリジンO、ウエイヘンステファネンシリジン、アルベオリジン、ブレビリジン、ブチリクリジン、テタノリジンO、ノビイリジン、レクチノリジン、ニューモリジン、ミチリジン、シュードニューモリジン、スイリジン、インテルメジリジン、イバノリジン、セエリゲリオリジンO、バギノリジン、ならびにピオリジンが挙げられる。タンパク質毒素は、当業者の判断により、ミニ細胞の異なる細胞内コンパートメントに局在化されてよい。本明細書で開示される標的化ミニ細胞が、グラム陰性親ミニ細胞産生菌株から誘導される場合、それから産生される組換え発現治療ポリペプチドは、サイトゾル、内膜の内層(inner leaflet)、内膜の外層、ペリプラズム、外膜の内層、ミニ細胞の外膜、および前述のいずれかの組み合わせに局在化されてよい。本明細書で開示される標的化ミニ細胞が、グラム陽性親ミニ細胞産生菌株から誘導される場合、それから産生される組換え発現治療ポリペプチドは、サイトゾル、細胞壁、膜の内層、ミニ細胞の膜、および前述のいずれかの組み合わせに局在化されてよい。
【0136】
5.医薬組成物
本出願はまた、医薬組成物が挙げられるがこれに限定されない組成物にも関する。本明細書で用いられる「組成物」の用語は、少なくとも1つのキャリア、好ましくは生理学的に許容されるキャリア、および1つ以上のミニ細胞組成物を含む混合物を意味する。本明細書で用いられる「キャリア」の用語は、(1もしくは複数の)生物活性ペプチドの細胞または組織への取り込みを阻害または阻止しない化学化合物を意味する。キャリアは、通常、活性成分を適切な剤形(例:丸剤、カプセル、ゲル、フィルム、錠剤、マイクロ粒子(例:マイクロスフィア)、溶液;軟膏;ペースト、エアロゾル、液滴、コロイド、またはエマルジョンなど)へ製剤化または配合することを可能とする不活性物質である。「生理学的に許容されるキャリア」は、化合物の生物学的活性および特性を抑止(減少、阻害、または阻止)することのない、生理学的条件下での使用に適するキャリアである。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞または組織中への多くの有機化合物の取り込みを促進することから、キャリアである。好ましくは、キャリアは、生理学的に許容されるキャリアであり、好ましくは、薬理学的に、または獣医学的に許容されるキャリアであり、ミニ細胞組成物がその中に配置される。
【0137】
「医薬組成物」は、キャリアが薬理学的に許容されるキャリアである組成物を意味し、一方「獣医学的組成物」は、キャリアが獣医学的に許容されるキャリアである組成物のことである。本明細書で用いられる「薬理学的に許容されるキャリア」または「獣医学的に許容されるキャリア」の用語は、生物学的またはそれ以外で望ましくないものではないいずれの媒体または物質も含み、すなわち、キャリアは、いかなる望ましくない生物学的影響も引き起こすことなく、または、複合体もしくはその成分のいずれか、または生物と有害な形での相互作用を起こすことなく、ミニ細胞組成物と一緒に生物へ投与することができる。薬理学的に許容される試薬の例は、参照により本出願に援用されるThe United States Pharmacopeia, The National Formulary, United States Pharmacopeial Convention, Inc., Rockville, Md.1990に提供される。「治療有効量」および「薬理学的有効量」の用語は、生物の標的細胞、組織、または身体に測定可能な応答を誘導する、または引き起こすのに充分な量を意味する。治療有効量を構成するものは、様々な因子に依存し、知識豊富な医師であれば、それらを考慮に入れて、所望される投与レジメンに到達するであろう。
【0138】
組成物はまた、希釈剤および賦形剤などのその他の化学成分も含んでよい。「希釈剤」とは、溶媒中、好ましくは水性溶媒中で希釈され、溶媒中での組成物の溶解を促進する化学化合物であり、それはまた、組成物またはその成分の1つ以上の生物活性形態を安定化するようにも作用し得る。緩衝溶液に溶解された塩は、本技術分野にて希釈剤として用いられる。例えば、好ましい希釈剤は、1つ以上の異なる塩を含有する緩衝溶液である。好
ましい緩衝溶液の限定されない例は、リン酸緩衝生理食塩水であり(特に、医薬投与を意図する組成物と組み合わされる)、それは、これがヒト血液の塩条件を模倣するものであるからである。緩衝塩は、低濃度にて溶液のpHを制御することができることから、緩衝希釈剤が所定の化合物または医薬組成物の生物活性を改変することはほとんどない。
【0139】
「賦形剤」は、適切な粘度を例とする適切な特性の付与、または薬物製剤の作製のために組成物に添加されてよいほぼ不活性の物質である。適切な賦形剤およびキャリアとしては、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖類、セルロース製剤、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、カンテン、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、イナゴマメガム、ヒアルロン酸、カゼインジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル‐セルロース、ポリアクリレート、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの充填剤が挙げられる。所望される場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤も含まれてよい。その他の適切な賦形剤およびキャリアとしては、ヒドロゲル、ゲル化性ヒドロコロイド(gellable hydrocolloids)、およびキトサンが挙げられる。キトサンマイクロスフィアおよびマイクロカプセルが、キャリアとして用いられてよい。例えば、国際公開第98/52547号を参照されたい(化合物を胃へ標的化するためのマイクロスフィア製剤について記載しており、その製剤は、1つ以上の活性成分を含有する内部コア(所望に応じてゲル化ヒドロコロイドを含む)、(1もしくは複数の)活性成分の放出速度を制御するための水不溶性ポリマー(例:エチルセルロース)を含む膜、ならびにカチオン性ポリサッカリド、カチオン性タンパク質、および/または合成カチオン性ポリマーを例とする生体接着性カチオン性ポリマーを含む外層を有する;米国特許第4,895,724号。通常、キトサンは、グルタルアルデヒド、グリオキサール、エピクロロヒドリン、およびスクシンアルデヒドを例とする適切な剤を用いて架橋される。キャリアとしてキトサンを用いる組成物は、丸剤、錠剤、マイクロ粒子、およびマイクロスフィアを含み、(1もしくは複数の)活性成分の制御放出を提供するものを含む種々の剤形に製剤化されてよい。その他の適切な生体接着性カチオン性ポリマーとしては、酸性ゼラチン、ポリガラクトサミン、ポリリジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチンなどのポリアミノ酸、ポリ第四級化合物、プロラミン、ポリイミン、ジエチルアミノエチルデキストラン(DEAE)、DEAE‐イミン、DEAE‐メタクリレート、DEAE‐アクリルアミド、DEAE‐デキストラン、DEAE‐セルロース、ポリ‐p‐アミノスチレン、ポリオキセタン、コポリメタクリレート、ポリアミドアミン、カチオン性デンプン、ポリビニルピリジン、およびポリチオジエチルアミノメチルエチレンが挙げられる。
【0140】
組成物は、適切ないかなる方法で製剤化されてもよい。ミニ細胞組成物は、キャリア中に均一に(均質に)または不均一に(不均質に)分散されていてよい。適切な製剤は、乾燥および液体製剤を含む。乾燥製剤としては、フリーズドライおよび凍結乾燥粉末が挙げられ、これは、洞もしくは肺へのエアロゾル送達に、または長期保存し、その後、投与前に適切な希釈剤で再構成するのに特に良く適している。その他の好ましい乾燥製剤としては、本明細書で開示される組成物が、経口投与に適する錠剤もしくは丸剤の形態に圧縮されるか、または徐放製剤に配合される場合のものが挙げられる。組成物が、腸管上皮へ送達するための経口投与を意図するものである場合、製剤を保護し、その中に含まれるミニ細胞組成物の早過ぎる放出を防止するために、製剤は、腸溶コーティングで封入されることが好ましい。当業者であれば理解されるように、本明細書で開示される組成物は、適切ないかなる剤形にされてもよい。丸剤および錠剤は、そのような剤形の一部を表している。組成物はまた、適切ないかなるカプセルまたはその他のコーティング材料中に封入されてもよく、例えば、圧縮、浸漬、パンコーティング、スプレー乾燥などによる。適切なカプセルとしては、ゼラチンおよびデンプンから作られたものが挙げられる。さらに、所望される場合、そのようなカプセルは、腸溶コーティングを例とする1つ以上の追加の材料でコーティングされてもよい。液体製剤としては、水性製剤、ゲル、およびエマルジョンが挙げられる。
【0141】
ある実施形態は、生体接着性、好ましくは、粘膜接着性コーティングを含む組成物を提供する。「生体接着性コーティング」は、物質(例:ミニ細胞組成物)の生物学的表面または物質への接着を、コーティングがない場合よりも良好に行うことを可能とするコーティングである。「粘膜接着性コーティング」は、好ましい生体接着性コーティングであり、組成物を例とする物質の粘膜への接着を、コーティングがない場合よりも良好に行うことを可能とするものである。例えば、ミニ細胞は、粘膜接着剤でコーティングされてよい。次に、コーティングされた粒子が集められて、生物への送達に適する剤形とされてよい。好ましくは、および標的とされる細胞表面輸送部分が発現される位置に応じて、粘膜接着剤が製剤を保持することができるが、組成物が標的細胞表面輸送部分と相互作用を起こす所望される位置に製剤が到達するまで、製剤を保護するために、剤形は続いて、別のコーティングでコーティングされる。
【0142】
本明細書で開示される組成物は、いかなる生物に投与されてもよく、例えば、動物、好ましくは、哺乳類、鳥、魚、昆虫、または蜘蛛である。好ましい哺乳類としては、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、およびブタの動物、ならびに非ヒト霊長類が挙げられる。ヒトが特に好ましい。本技術分野には、化合物を投与または送達する技術が複数存在し、これらに限定されないが、経口、直腸(例:浣腸または坐薬)、エアロゾル(例:経鼻または経肺送達用)、非経口、および局所投与が挙げられる。好ましくは、充分な量の生物活性ペプチドが送達されて、意図する効果が達成される。送達されるべき組成物の特定の量は、多くの因子に依存し、達成されるべき効果、組成物が送達される生物の種類、送達経路、投与レジメン、ならびに生物の年齢、健康状態、および性別が挙げられる。このため、所定の製剤中に組み込まれる組成物の特定の用量は、当業者の判断に任される。
【0143】
当業者であれば、本明細書で開示される組成物が、(1もしくは複数の)治療、診断、もしくは保護効果(ワクチン接種を含む)が挙げられ得る特定の所望される生物学的結果を達成するための剤として投与される場合、ミニ細胞組成物を適切な医薬キャリアと組み合わせることが可能であり得ることは理解される。医薬キャリアの選択および治療または保護剤としてのミニ細胞の製剤は、意図する用途および投与モードに依存する。治療剤の適切な製剤および投与方法としては、経口、経肺、経鼻、頬側、経眼、経皮、直腸、静脈内、または膣内送達用のものが挙げられる。
【0144】
用いられる送達のモードに応じて、状況に依存して異なる機能性要素(context-dependent functional entity)は、様々な薬理学的に許容される形態で送達されてよい。例えば、状況に依存して異なる機能性要素は、固体、溶液、エマルジョン、分散体などの形態で、丸剤、カプセル、錠剤、坐薬、エアロゾル、液滴、またはスプレー中に組み込まれて送達されてよい。丸剤、錠剤、坐薬、エアロゾル、粉末、液滴、およびスプレーは、複雑な多層構造を有し、広い範囲のサイズを有し得る。エアロゾル、粉末、液滴、およびスプレーは、小サイズ(1ミクロン)から大サイズ(200ミクロン)の範囲であり得る。
【0145】
本明細書で開示される医薬組成物は、固体、凍結乾燥粉末、溶液、エマルジョン、分散体などの形態で用いられてよく、得られる組成物は、経腸もしくは非経口投与に適する有機もしくは無機のキャリアまたは賦形剤との混合物として、本明細書で開示される化合物の1つ以上を活性成分として含有する。活性成分は、例えば、錠剤、ペレット、カプセル、坐薬、溶液、エマルジョン、懸濁液、および使用に適するその他のいずれかの形態のための通常の無毒性である薬理学的に許容されるキャリアと共に、配合されてよい。用いられてよいキャリアとしては、固体、半固体、または液体形態のグルコース、ラクトース、マンノース、アラビアガム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイド状シリカ、ジャガイモデンプン、尿素、中鎖長トリグリセリド、デキストラン、および製剤の製造での使用に適するその他のキャリアが挙げられる。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、および着色剤、ならびに香料も用いられてよい。安定化乾燥剤の例としては、トリウロースが挙げられ、好ましくは0.1%以上の濃度である(例えば、米国特許第5,314,695号を参照)。活性化合物は、疾患のプロセスまたは状態に対して所望される効果を発生させるのに充分な量で医薬組成物中に含まれる。
【0146】
6.治療適応症
本開示は、固形腫瘍、転移性腫瘍、および液性腫瘍を含むがこれらに限定されない(1もしくは複数の)癌に対するミニ細胞媒介免疫療法に関する。固形および転移性腫瘍としては、上皮、線維芽細胞、筋肉、および骨に由来する腫瘍が挙げられ、これらに限定されないが、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、精巣癌、卵巣癌、胃癌、腸癌、口腔癌、舌癌、咽頭癌、肝臓癌、肛門癌、直腸癌、結腸癌、食道癌、膀胱癌、胆嚢癌、皮膚癌、子宮癌、膣癌、陰茎癌、および腎臓癌が挙げられる。本明細書で開示される免疫調節ミニ細胞で治療され得るその他の固形癌型としては、これらに限定されないが、腺癌、肉腫、線維肉腫、ならびに眼、脳、および骨の癌が挙げられる。本明細書で開示される免疫調節ミニ細胞で治療され得る液性腫瘍としては、これらに限定されないが、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、およびその他の白血病が挙げられる。
【0147】
VAX‐P、VAX‐IP、およびVAX‐IPDミニ細胞の生体内での免疫調節活性は、
図3~6に示され、実施例2~4にてさらに記載される通りである。免疫調節効果が、VAX‐P、VAX‐IP、およびVAX‐IPDミニ細胞などのパーフリンゴリジンO含有ミニ細胞製剤の抗腫瘍特性に寄与しているという最初の生体内での証拠は、予想外であった。VAX‐IPの開発および生体内特徴付けにおいてコントロール実験を行った際、予想外なことに、標的化部分インベイシンの除去が、生体内有効性に対してほとんどまたはまったく影響を及ぼさないことが見出された(
図3を参照)。しかし、パーフリンゴリジンO成分の除去は、腫瘍成長を阻止するミニ細胞の能力に対して、著しい影響を及ぼした。また、予想外なことに、ミニ細胞が卵巣中に検出不能であった(すなわち、局在化しなかった)場合であっても、雌マウスの卵巣にコロニー形成した腫瘍に対して、ミニ細胞が強い抗腫瘍効果を持つことができることも見出された(
図4および5を参照)。この同じマウスにおいて、肺にコロニー形成した腫瘍も、その成長が著しく阻止され、充分なミニ細胞の共局在化を示した。合わせて考えると、これらのまったく異なる結果は、腫瘍の局在化が、抗腫瘍効果にとって不可欠ではない可能性があり、別の包括的な因子が存在する可能性が高く、それは進行中の免疫系のある態様である可能性が高いことを示している。加えて、パーフリンゴリジンOを含有するミニ細胞は、免疫が重度に損なわれたNIH‐IIIマウス(T細胞機能に加えてNK細胞機能も欠如)では、腫瘍成長に対する効果を持たないことも示された(
図6参照)。
【0148】
本明細書で述べるように製剤化されたミニ細胞の免疫調節効果の結果として、本発明の免疫調節ミニ細胞の限定されないが好ましい1つの治療用途は、膀胱内投与および筋層非浸潤性膀胱癌の治療におけるものである。
図7に示され、実施例5に記載されるように、免疫調節ミニ細胞は、筋層非浸潤性膀胱癌のマウスモデルにおいて、既に有効性が示されている。
【0149】
7.ミニ細胞作製
ある実施形態は、限定されないが、腸内細菌科細菌から、最適化された菌株を作り出すこと、および免疫調節ミニ細胞を作製することに関する。
【0150】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、105のミニ細胞中に1未満である。ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、106のミニ細胞中に1未満である。
【0151】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、107のミニ細胞中に1未満である。
【0152】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、108のミニ細胞中に1未満である。
【0153】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、109のミニ細胞中に1未満である。
【0154】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1010のミニ細胞中に1未満である。
【0155】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1011のミニ細胞中に1未満である。
【0156】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1012のミニ細胞中に1未満である。
【0157】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1013のミニ細胞中に1未満である。
【0158】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1014のミニ細胞中に1未満である。
【0159】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1015のミニ細胞中に1未満である。
【0160】
ある実施形態では、ミニ細胞産生生存親細胞混入のレベルは、1016のミニ細胞中に1未満である。
【0161】
特に断りのない限り、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本出願を、実施形態および実施例を参照して記載してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、種々の変更を行ってよいことは理解されるべきである。本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全内容について参照により本明細書に明確に援用される。
【0162】
本発明の実施形態を、以下の実施例においてさらに詳細に開示するが、それらは、いかなる形であっても、本出願の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0163】
実施例1
パーフリンゴリジンOは、表1および
図2に示されるように、VAX‐IPミニ細胞によって標的化され、送達される場合、生体外において細胞傷害性である。96ウェルプレートに、10% ウシ胎仔血清、ペニシリン、およびストレプトマイシンを含有するRPMI‐1640中の25000個のマウス移行細胞癌細胞株MB49を播種することにより、生体外実験を実施した。翌日、VAX‐IP、VAX‐I(パーフリンゴリジンO非含有)、または組換えパーフリンゴリジンO(BTX‐100、ATCCより購入)の細胞への添加を、播種された哺乳類細胞あたりの添加されたVAX‐IPおよびVAX‐Iミニ細胞の比(MOI) 1000:1で行った。添加されたBTX‐100の濃度は、VAX‐IPによって送達されるパーフリンゴリジンOの量と同等とした。最初に、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性アッセイを、細胞傷害性の代替読み取り(surrogate readout)として用いたが、それは、主として、LDH活性が、パーフリンゴリジンOの作用機構であると報告されている哺乳類細胞膜漏出(mammalian cell membrane leakage)の周知の指標であるからである。予想された通り、
図1に示されるように、マウス乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)は、BTX‐100への暴露のほとんど直後に、MB49細胞から放出された。1000:1のMOIでのVAX‐IPで処理されたMB49細胞も、LDH活性を示したが、放出の開始はよりゆっくりであり、それは、VAX‐IPミニ細胞の内部移行、エンドソーム分解の開始、およびパーフリンゴリジンOによって媒介されるエンドソーム膜破壊による標的細胞中への最終的なパーフリンゴリジンOの放出が必要であることに起因する可能性が高い。コントロールとして用いたVAX‐Iミニ細胞は、LDHの有意な放出を示さなかった。驚くべきことに、BTX‐100で処理した細胞は、24時間の時点までに回復し、完全に生存および接着性であったことが続いて見出された。他方、VAX‐IPミニ細胞で処理したMB49細胞は、プレートから脱離し、死滅したように見えた。この結果を確認するために、様々なVAX‐IPミニ細胞を様々な濃度のBTX‐100と比較する同じ実験を再度行ったが、この場合は、標準的なMTT細胞生存性アッセイを、24時間の時間点で実施した。
図2に示されるこれらの実験の結果は、通常は無毒性であるパーフリンゴリジンOの濃度の細胞内送達が、ミニ細胞によって送達された場合は、強い効力を持ち得ることを明らかに示している。
【0164】
【0165】
実施例2
パーフリンゴリジンOを含有するミニ細胞が生体内において抗腫瘍免疫調節活性を刺激することの第一の証拠は、胸腺欠損ヌードマウス(ヌードマウスは、部分的に免疫が破壊されており、T細胞活性を完全に欠いている)で実施されたヒト異種移植研究から得られた。ヒト膵癌細胞株BxPC3を用いた皮下異種移植研究において、q3dスケジュール
で合計6回の静脈内投与を行った場合、VAX‐IPミニ細胞の抗腫瘍有効性が示された(
図3参照)。このモデルでは、腫瘍細胞をヌードマウスに皮下移植し、100mm
3のサイズとし、その後、無作為に処理グループに分けた。腫瘍を持つマウスを、生理食塩水媒体、パクリタキセル、3.0×10
8 「裸(naked)」ミニ細胞(インベイシンまたはパーフリンゴリジンOを含有しない大腸菌ミニ細胞)、3.0×10
8 VAX‐Pミニ細胞(ミニ細胞表面にインベイシンタンパク質を含有しない)、または3.0×10
8
VAX‐IPミニ細胞のいずれかにより、q3dスケジュールでの合計6回の静脈内投与で処理した。驚くべきことに、非標的化コントロールグループ、VAX‐Pミニ細胞(ミニ細胞表面にインベイシンタンパク質を含有しない)は、このモデルでの腫瘍成長の阻止において、VAX‐IPミニ細胞と同様に有効であり、一方「裸」ミニ細胞は有効ではなかった。ミニ細胞媒体の表面上に腫瘍標的化部分が存在しない場合での抗腫瘍活性は、まったく予想外であった。
【0166】
実施例3
パーフリンゴリジンOを含有するミニ細胞が生体内において抗腫瘍免疫調節活性を刺激することの第二の証拠は、B16F10マウスメラノーマ細胞株を用いた肺および卵巣転移の同系マウスモデルから得られた。このモデルでは、ホタルルシフェラーゼを構成的に発現するB16F10マウスメラノーマ細胞を、雌ヌードマウスに尾静脈注射した。マウスに、3日ごとにルシフェリンを注射し、マウスの肺における確立された転移の存在について、全身マウス画像化によって動物の画像分析を行った。腫瘍の確立が確認されると、マウスを無作為にコントロールグループへと分け、生理食塩水媒体または3.0×10
8
VAX‐IPDミニ細胞のいずれかを、qd3投与スケジュールで合計6回静脈内投与した。肺および卵巣転移に対する有意な抗腫瘍活性が、VAX‐IPDミニ細胞処理マウスで観察された(
図4参照)。同じモデルおよび投与スケジュールを用いた第二の並行定量的VAX‐IPDプラスミド特異的PCRに基づく体内分布研究において、発明者らは、VAX‐IPDがマウスの肺および肺腫瘍に局在化していることを見出した。驚くべきことに、試験を行ったいずれの時間点においても、VAX‐IPDミニ細胞は、卵巣または卵巣腫瘍に局在化していなかった(
図5参照)。これら2つの結果を合わせると、VAX‐IPDミニ細胞が、卵巣の組織または腫瘍に局在化していないのに、その器官部位において強い腫瘍抑制効果を有する場合、1つ以上の免疫因子である可能性が高い何らかの包括的因子が、抗腫瘍活性に寄与しているに違いないと結論付けられた。
【0167】
実施例4
上記実施例2および3で行われた生体内実験の観察結果に基づいて、同系B16F10マウスメラノーマモデルの確立された皮下腫瘍変動を用い、完全な免疫能を持つC57/BL6マウスにおけるVAX‐IPDミニ細胞の抗腫瘍有効性を、重度に免疫欠損したNIH‐IIIマウス(C57/BL6と同じ遺伝的背景であるが、T細胞およびナチュラルキラー細胞活性の両方を欠いている)における抗腫瘍活性と比較する第三の実験を行った。腫瘍が100mm
3のサイズまで成長した後、マウスを無作為に処理グループに分け、生理食塩水または3.0×10
8 VAX‐IPDミニ細胞のいずれかにより、q3dスケジュールでの合計6回の静脈内投与で処理した。最終投与の後、マウスを安楽死させ、腫瘍を外科的に摘出し、秤量し、腫瘍負荷をスコア化した。
図6に示す結果から、VAX‐IPDミニ細胞が、重度に免疫が破壊されたマウスでは有効ではないことが示される。
【0168】
実施例5
筋層非浸潤性膀胱癌のマウスモデルにおいてVAX‐IPミニ細胞が作用する能力を、
図7に示す。この実験では、免疫能を持つ雌C57/BL6マウスに麻酔をかけ、膀胱へのカテーテル処置を施し、膀胱壁を、白金ガイドワイヤに取り付けられ、カテーテルを通して挿入された電気外科手術装置(Bovie 940、5Wに設定)を用いて2つの別
々の部位において麻痺させた。焼灼後、膀胱を50uLのPBSでリンスし、次に100000のMB49マウス移行細胞癌腫瘍細胞を、カテーテルを通して注入した。カテーテルを2時間その位置に固定して、膀胱壁への腫瘍接着を確保した。カテーテルを取り外し、動物を麻酔から回復させた。腫瘍を検出することができるまで、膀胱の触診によって動物を毎日モニタリングし、その時点で、動物を無作為に処理グループに分けた。次に、マウスに、生理食塩水、5×10
7 VAX‐IPミニ細胞、または1×10
8 VAX‐IPミニ細胞のいずれかを、尿路カテーテルを通して、q3dスケジュールで合計5回膀胱内投与した。次に、動物を安楽死させ、膀胱を切除し、秤量し、腫瘍負荷をスコア化した。この結果から、このモデルにおける確立されたMB49膀胱癌に対するVAX‐IPミニ細胞の用量依存的抗腫瘍効果が示される。
【0169】
実施例6
VAX‐IPミニ細胞の作製は、プラスミドpVX‐336(配列番号3)のクローン化から開始する。pVX‐336(プラスミドマップを
図9に示す)を、L‐ラムノース誘導性プラスミドpVX‐128(配列番号4、プラスミドマップを
図10に示す)のSalIおよびXbaI部位へインベイシンを方向性サブクローン化(directionally subcloning)することで構築した。陽性クローンの識別後、特有のXbaIおよびBamHI部位へのパーフリンゴリジンOの続いての方向性サブクローン化を行い、インベイシンとパーフリンゴリジンOとの間での転写融合物を作り出した(インベイシンおよびパーフリンゴリジンOの2つのタンパク質をコードする単一の原核生物メッセージRNA)。pVX‐336の陽性配列の識別後、このプラスミドを、大腸菌のIPTG誘導性ミニ細胞産生菌株に導入した(
図8の概略図の工程1、および
図11のIPTGによる誘導後にミニ細胞を産生する実際の菌株を参照)。この菌株は、熱誘導性I‐ceuI自殺遺伝子の染色体コピー、dapA遺伝子における欠失(実験室外または哺乳類中での親菌株の成長を不能とする)、およびlpxM遺伝子における欠失(リポポリサッカリドのリピドA成分を弱毒化する)も含有する。プラスミドの導入、ならびに10ug/mL ジアミノピメリン酸および50ug/mL カナマイシン含有LB寒天上での選別の後、単一コロニーを用いて、同じものを含有する液体LB培地中、30℃で成長させる一晩の培養を開始する。翌日、スターター培養物を、10ug/mL ジアミノピメリン酸および50ug/mL カナマイシン含有の新しいLB培地3L中に1/100で希釈し、振とうしながら30℃で成長させる。培養物の濁度を、光学密度600(OD600)によってモニタリングする。OD600が0.1の時点で、L‐ラムノースを最終濃度90uMまで添加することにより、培養物に、pVX‐336からのインベイシンおよびパーフリンゴリジンOの発現を誘導する。OD600が1.0の時点で、IPTGを最終濃度100uMまで添加することにより、培養物にVAX‐IPミニ細胞の形成を誘導する。培養物を、一晩定常期まで成長させ、翌日、本技術分野での標準であるように、分画遠心分離工程の組み合わせ、およびそれに続く密度勾配精製を用いて、VAX‐IPミニ細胞を精製する。精製後、赤血球溶血アッセイによってPFO含有量および活性についての試験を、ならびに一次検出抗体がインベイシンに特異的なマウスモノクローナル抗体IgG2b(mAb3A2)であるウェスタンブロットによってインベイシンの存在についての試験を、ミニ細胞に行う(溶血アッセイおよびウェスタンブロットについては
図12を参照)。赤血球溶血アッセイは、VAX‐IPミニ細胞を、2mM EDTA、10ug/mL リゾチーム、5mM システインの組み合わせによって溶解し、続いて氷冷蒸留水による浸透圧ショックによって行う。溶解後、ライセートをタンパク質数について定量し、適切な量を、96ウェルプレート中の100000のヒツジ赤血球に添加する。プレートを、激しく振とうしながら、37℃にて1時間インキュベートする。1時間のインキュベーション時間の後、赤血球を、1000xGで5分間遠心分離し、溶血活性の尺度としての波長541nmでのヘモグロビン放出分析のために、上澄みを新しい96ウェルプレートに移す。
【配列表】