(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】バックアップ管理装置およびバックアップ先移行方法
(51)【国際特許分類】
G06F 9/50 20060101AFI20240730BHJP
G06F 11/14 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G06F9/50 150Z
G06F11/14 658
(21)【出願番号】P 2023009734
(22)【出願日】2023-01-25
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】壁谷 勇磨
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0410418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/50
G06F 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想マシンまたは物理サーバからなるバックアップ対象のデータを、ストレージ装置またはクラウド領域からなるバックアップ先にバックアップするときのバックアップ先を選定するバックアップ管理装置であって、
バックアップの要件情報を保持するバックアップ要件テーブルと、
前記バックアップ先の容量リソースまたは計算性能に関する情報を保持するバックアップ諸元テーブルと、
前記バックアップ先から収集されたバックアップ容量を保持する既存バックアップ情報テーブルと、
前記バックアップ対象のデータを前記バックアップ先にバックアップするタスクに関する情報を保持するバックアップスケジュールテーブルとを有し、
前記バックアップ要件テーブルと、前記バックアップ諸元テーブルと、前記バックアップスケジュールテーブルとを参照し、
前記バックアップスケジュールテーブルのバックアップ対象のタスクに関して、バックアップ先にデータをバックアップするときに、前記バックアップ要件テーブルに規定された容量リソースに関する条件を満たせないときに、
前記既存バックアップ情報テーブルを参照して、前記タスクにおけるバックアップ対象のデータを、他のバックアップ先ごとにバックアップしたときの予測リソース消費量を算出し、
前記予測リソース消費量に基づいて、他のバックアップ先ごとに移行したときのリソースの影響の少なさを表すスコアを算出し、
前記スコアに基づいて、前記タスクに関するバックアップの移行先となるバックアップ先を決定し、決定された前記バックアップ先が前記タスクに関するバックアップ先になるよう前記バックアップスケジュールテーブルを更新することを特徴とするバックアップ管理装置。
【請求項2】
前記スコアは、
前記バックアップ先がストレージ装置であるときに、前記ストレージ装置の容量リソースへの影響の少なさを表す容量リソーススコアと、前記ストレージ装置の計算リソースの影響の少なさを表す計算リソーススコアとに基づいて算出され、
前記バックアップ先がクラウド領域であるときに、前記クラウド領域において課されるコストの影響の少なさを表すクラウドコストスコアに基づいて算出されることを特徴とする請求項1記載のバックアップ管理装置。
【請求項3】
前記容量リソーススコアは、算出した予測消費容量リソースと、前記バックアップ諸元テーブルが保持する最大容量リソース、現在の消費容量リソースとに基づいて算出することを特徴とする請求項2記載のバックアップ管理装置。
【請求項4】
前記容量リソーススコアは、前記最大容量リソースから、前記現在の消費容量リソース、前記予測消費容量リソースとを減算した値に基づいて算出することを特徴とする請求項3記載のバックアップ管理装置。
【請求項5】
前記計算リソーススコアは、算出された予測最大消費メモリと、前記バックアップ諸元テーブルが保持する最大メモリ、現在の消費メモリとに基づいて算出することを特徴とする請求項2記載のバックアップ管理装置。
【請求項6】
前記計算リソーススコアは、前記最大メモリから、前記現在の消費メモリ、前記予測最大消費メモリを減算した値により算出することを特徴とする請求項5記載のバックアップ管理装置。
【請求項7】
前記スコアは、前記バックアップ先ごとに定義された固有補正スコアに基づいて算出することを特徴とする請求項1記載のバックアップ管理装置。
【請求項8】
仮想マシンまたは物理サーバからなるバックアップ対象のデータを、ストレージ装置またはクラウド領域からなるバックアップ先にバックアップするときのバックアップ先を選定するバックアップ管理装置によるバックアップ先移行方法であって、
前記バックアップ管理装置が、
バックアップの要件情報を保持するバックアップ要件テーブルと、
前記バックアップ先の容量リソースまたは計算性能に関する情報を保持するバックアップ諸元テーブルと、
前記バックアップ先から収集されたバックアップ容量を保持する既存バックアップ情報テーブルと、
前記バックアップ対象のデータを前記バックアップ先にバックアップするタスクに関する情報を保持するバックアップスケジュールテーブルとを有し、
前記バックアップ管理装置が、前記バックアップ要件テーブルと、前記バックアップ諸元テーブルと、前記バックアップスケジュールテーブルとを参照し、
前記バックアップスケジュールテーブルのバックアップ対象のタスクに関して、バックアップ先にデータをバックアップするときに、前記バックアップ要件テーブルに規定された容量リソースに関する条件を満たせるか否かを判定するステップと、
前記バックアップ管理装置が、前記バックアップスケジュールテーブルのバックアップ対象のタスクに関して、バックアップ先にデータをバックアップするときに、前記バックアップ要件テーブルに規定された容量リソースに関する条件を満たせないときに、前記既存バックアップ情報テーブルを参照して、前記タスクにおけるバックアップ対象のデータを、他のバックアップ先ごとにバックアップしたときの予測リソース消費量を算出するステップと、
前記バックアップ管理装置が、前記予測リソース消費量に基づいて、他のバックアップ先ごとに移行したときのリソースの影響の少なさを表すスコアを算出するステップと、
前記バックアップ管理装置が、前記スコアに基づいて、前記タスクに関するバックアップの移行先となるバックアップ先を決定し、決定された前記バックアップ先が前記タスクに関するバックアップ先になるよう前記バックアップスケジュールテーブルを更新するステップとを有し、
前記スコアは、
前記バックアップ先がストレージ装置であるときに、前記ストレージ装置の容量リソースへの影響の少なさを表す容量リソーススコアと、前記ストレージ装置の計算リソースの影響の少なさを表す計算リソーススコアとに基づいて計算され、
前記バックアップ先がクラウド領域であるときに、前記クラウド領域において課されるコストの影響の少なさを表すクラウドコストスコアに基づいて計算され、
前記容量リソーススコアは、算出した予測消費容量リソースと、前記バックアップ諸元テーブルが保持する最大容量リソース、現在の消費容量リソースとに基づいて算出し、
前記計算リソーススコアは、算出された予測最大消費メモリと、前記バックアップ諸元テーブルが保持する最大メモリ、現在の消費メモリとに基づいて算出することを特徴とするバックアップ先移行方法。
【請求項9】
前記容量リソーススコアは、前記最大容量リソースから、前記現在の消費容量リソース、前記予測消費容量リソースとを減算した値に基づいて算出することを特徴とする請求項8記載のバックアップ先移行方法。
【請求項10】
前記計算リソーススコアは、前記最大メモリから、前記現在の消費メモリ、前記予測最大消費メモリを減算した値により算出することを特徴とする請求項8記載のバックアップ先移行方法。
【請求項11】
前記スコアは、前記バックアップ先ごとに定義された固有補正スコアに基づいて算出することを特徴とする請求項8記載のバックアップ先移行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ管理装置およびバックアップ先移行方法に係り、特に、複数のバックアップ先があるシステムにおいて、仮想マシンのデータをバックアップするときに、バックアップ先の装置容量を有効活用し、バックアップ処理を最適化するのに好適なバックアップ管理装置およびバックアップ先移行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラウドコンピューティングの進歩と普及に伴い、多くのITシステムが仮想マシン環境やコンテナ環境により構築されるようになり、管理者は、各環境をシステム要件に応じて、そのような仮想マシン環境やコンテナ環境上で構成、運用することが一般的になってきている。また、近年において、高度かつ多様化するサイバー攻撃や、大規模化、複雑化するシステムの運用中のヒューマンエラーにより障害が発生した際にもシステムを継続的に運用できるように、各環境のバックアップを運用要件に応じて適切に管理することが重要になる。
【0003】
しかしながら、管理者がそれぞれの仮想マシン環境やコンテナ環境の要件を考慮し、バックアップを取得するスケジュールを適切に設定するためには、大きな運用コストが必要となる。
【0004】
仮想マシン(Virtual Machine:以下、単に「VM」ともいう)のバックアップスケジュールを最適化する技術としては、例えば、特許文献1に開示がある。特許文献1のVMのスケジュール作成方法では、バックアップデータをストレージ装置に保存する際に、各環境のRPO(目標復旧時点)、RTO(目標復旧時間)といったVMの運用における要件やシステム全体のリソースを確保するためのバックアップ要件、各環境の稼働時間、リソース領域の使用率といったシステムの状況に基づいて、バックアップを実行するスケジュールを自動的に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の特許文献1では、バックアップデータを保存するストレージ装置が特定されるときに、バックアップを実行するスケジュールを調整する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、バックアップデータを保存するストレージ装置が複数あり、VMごとに保存先のストレージ装置が異なり、バックアップ処理の設定のときに、あるストレージ装置では、装置の容量があまっているのにもかかわらず、それ以外のストレージ装置へのバックアップでは、装置の容量が逼迫する事態が発生することがありうる。上記特許文献1の技術では、あるVMのバックアップスケジュールを調整するとき、そのVMのバックアップ保存先であるストレージ装置のリソースの使用率をもとにする。このとき、調整後にリソースの使用率の増加によりバックアップ要件が満たされない場合は、他のストレージ装置に余剰リソースがあったとしても、バックアップスケジュールの調整を完了できない。この場合には、システム管理者が他のストレージ装置の余剰リソースを当該VMのストレージ装置に移設するなどの方法により構成を変更することにより、バックアップの構成を調整しなければならず、したがって、管理者にとって、システムの構成変更のための計画、操作を行うための手間やコストが発生することになっていた。
【0008】
このような事態は、VMのみならず、実マシンにおけるデータのバックアップについても同様の課題が発生しうる。
【0009】
本発明の目的は、複数のバックアップ先があるシステムにおいて、実マシンや仮想マシンのデータをバックアップするときに、システムの構成変更に要するコストや管理者の負荷を軽減し、バックアップ先の装置容量を有効活用し、バックアップ処理を最適化するバックアップ管理装置およびバックアップ先移行方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバックアップ管理装置の構成は、好ましくは、仮想マシンまたは物理サーバからなるバックアップ対象のデータを、ストレージ装置またはクラウド領域からなるバックアップ先にバックアップするときのバックアップ先を選定するバックアップ管理装置であって、バックアップの要件情報を保持するバックアップ要件テーブルと、バックアップ先の容量リソースまたは計算性能に関する情報を保持するバックアップ諸元テーブルと、バックアップ先から収集されたバックアップ容量を保持する既存バックアップ情報テーブルと、バックアップ対象のデータをバックアップ先にバックアップするタスクに関する情報を保持するバックアップスケジュールテーブルとを有し、バックアップ要件テーブルと、バックアップ諸元テーブルと、バックアップスケジュールテーブルとを参照し、バックアップスケジュールテーブルのバックアップ対象のタスクに関して、バックアップ先にデータをバックアップするときに、バックアップ要件テーブルに規定された容量リソースに関する条件を満たせないときに、既存バックアップ情報テーブルを参照して、タスクにおけるバックアップ対象のデータを、他のバックアップ先ごとにバックアップしたときの予測リソース消費量を算出し、予測リソース消費量に基づいて、他のバックアップ先ごとに移行したときのリソースの影響の少なさを表すスコアを算出し、スコアに基づいて、タスクに関するバックアップの移行先となるバックアップ先を決定し、決定されたバックアップ先がタスクに関するバックアップ先になるようバックアップスケジュールテーブルを更新するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のバックアップ先があるシステムにおいて、実マシンや仮想マシンのデータをバックアップするときに、システムの構成変更に要するコストや管理者の負荷を軽減し、バックアップ先の装置容量を有効活用し、バックアップ処理を最適化するバックアップ管理装置およびバックアップ先移行方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】バックアップ管理システムの一例を示す構成図である。
【
図6】バックアップ管理装置のハードウェア・ソフトウェア構成図である。
【
図7】バックアップ先諸元テーブルの一例を示す図である。
【
図8】バックアップ要件テーブルの一例を示す図である。
【
図9】既存バックアップ情報テーブルの一例を示す図である。
【
図10】バックアップスケジュールテーブルの一例を示す図である。
【
図11】移行先想定バックアップ情報テーブルの一例を示す図である。
【
図12】移行先想定バックアップスケジュールテーブルの一例を示す図である。
【
図13】予測リソース消費量テーブルの一例を示す図である。
【
図15】バックアップ管理装置の行うバックアップ先移行処理の概要を説明する図である。
【
図16】バックアップ管理装置のバックアップスケジュールの調整処理を示すフローチャートである。
【
図17】バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理を示すフローチャートである。
【
図18A】バックアップ移行処理を示すフローチャートである(その一)。
【
図18B】バックアップ移行処理を示すフローチャートである(その二)。
【
図18C】バックアップ移行処理を示すフローチャートである(その三)。
【
図18D】バックアップ移行処理を示すフローチャートである(その四)。
【
図18E】バックアップ移行処理を示すフローチャートである(その五)。
【
図19】バックアップ移行先ユーティリティ画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る一実施形態を、
図1ないし
図19を用いて説明する。
【0014】
先ず、
図1ないし
図5を用いて本発明の一実施形態に係るバックアップ管理システムの構成について説明する。
【0015】
バックアップ管理システムは、
図1に示されるように、バックアップ管理装置100、VM管理サーバ10、物理サーバ20(
図1では、20a、20b、…と表記)、クラウド領域30(
図1では、30a、30b、…と表記)、転送サーバ40、ストレージ装置50(
図1では、50a、50b、…と表記)を有しており、相互にネットワークで接続された構成になっている。
【0016】
管理ネットワーク1は、VM管理サーバ10、物理サーバ20、転送サーバ40、ストレージ装置50の各機器と接続されており、インターネット3と接続されている。管理ネットワーク1は、バックアップ管理装置が、VM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20などの業務で実行されるサーバのバックアップ実行などの管理を行うときに各機器と通信したり、バックアップ管理装置の設定、メンテナンスのために管理者がアクセスするためのネットワークである。
【0017】
業務ネットワーク2は、VM管理サーバ10、物理サーバ20の各機器と接続されている。業務ネットワーク2は、VM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20などの業務で実行されるサーバにおいて、各サーバにユーザがアクセスしたり、各サーバ間で通信し、業務を行うためのネットワークである。
【0018】
SAN(Storage Area Network)4は、VM管理サーバ10、物理サーバ20、転送サーバ40の各機器と接続されており、インターネット3と接続されている。SAN4は、VM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20などの業務で実行されるサーバが、ストレージ装置50とデータを入出力するためのネットワークである。
【0019】
インターネット3は、TCP/IPよるグローバルネットワークであり、クラウド領域30、管理ネットワーク1、SAN4と接続されている。インターネット3は、本実施形態では、管理ネットワーク1、SAN4からクラウド領域30にアクセスするときに経由するネットワークである。
【0020】
バックアップ管理装置100は、VM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20のデータのストレージ装置50へのバックアップ処理を管理するための装置である。バックアップ管理装置100は、管理ネットワーク1に接続され、バックアップスケジュールを管理しており、バックアップ実行を、バックアップスケジュールに従って、転送サーバ40に指示する。また、バックアップ管理装置100は、バックアップの要件(システムインフラに関する要件、業務に関するバックアップ要件)を受付け、要件に応じてバックアップスケジュールを調整する機能も有する。さらに、バックアップ先であるストレージ装置またはクラウド領域の容量リソースに関する要件をチェックし、必要があるときには、バックアップ先を切り換え、バックアップスケジュールを再構成する(詳細は、後述)。
【0021】
VM管理サーバ10は、管理ネットワーク1、業務ネットワーク2、SAN4に接続され、単数あるいは複数のVMを管理し、実行するサーバである。
【0022】
物理サーバ20は、管理ネットワーク1、業務ネットワーク2、SAN4に接続され、物理的なハードウェアで実現されるサーバ装置である。
【0023】
クラウド領域30は、インターネット3に接続され、クラウドサービスによって提供されVM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20などの業務で実行されるサーバのバックアップデータを管理する領域であり、課金コストに応じて提供される容量リソースにバックアップデータを保存する領域である。
【0024】
転送サーバ40は、管理ネットワーク1、SAN4に接続され、バックアップ管理装置100から指示を受けて、VM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20のデータをバックアップデータとして、バックアップ先となるストレージ装置50に転送するサーバである。
【0025】
バックアップ管理装置100は、
図2に示されるように、機能構成として、バックアップスケジュール管理部101、バックアップ移行処理部102、バックアップ指示部103、バックアップ対象稼動状況収集部104、記憶部110を有する。
【0026】
バックアップスケジュール管理部101は、バックアップ実行のバックアップスケジュールを管理しており、バックアップのために要求されるシステムの要件、バックアップ先の容量、課金コストに応じて、バックアップスケジュールを最適なものに調整する機能部である。バックアップ移行処理部102は、バックアップ先の諸元と、バックアップに要されるシステムのリソースに基づき、バックアップ先となるストレージ装置50やクラウド領域30を選定し、バックアップの移行を行う機能部である。バックアップ指示部103は、バックアップスケジュールに基づいて、VM管理サーバ10上で実行されるVM、物理サーバ20のデータのバックアップを転送サーバ40に指示する機能部である。バックアップ対象稼動状況収集部104は、バックアップ対象となるVMまたは物理サーバのバックアップに関する稼動状況を収集する機能部である。
【0027】
記憶部110は、バックアップ管理装置100で使用されるテーブル、データを保持する記憶部である。
【0028】
記憶部110は、バックアップ先諸元テーブル200、バックアップ要件テーブル201、既存バックアップ情報テーブル202、バックアップスケジュールテーブル203、移行先想定バックアップ情報テーブル204、移行先想定バックアップスケジュールテーブル205、予測リソース消費量テーブル206、スコアテーブル207を保持する。なお、各テーブルの詳細は、後に説明する。
【0029】
VM管理サーバ10は、VMを実行させるサーバ装置であり、
図3に示されるように、機能構成として、VM管理OS(Operating System)11、仮想化ソフトウェア12、VMi:13-i(i=1,2,…)からなる。
【0030】
VM管理OS11は、VMを管理するオペレーティングシステムである。仮想化ソフトウェア12は、VM管理OS11上で、ハードウェア資源をVM上に割り当て、VMを実現するソフトウェアである。
【0031】
VMi:13-iは、VM管理サーバ上で実現されるVMである。VMi:13-iは、仮想的な計算機として、VM管理OS11上で実現され、VMOS(Operating System)14-i(i=1,2,…)の上で、アプリケーションソフトウェア15-i(i=1,2,…)を実行する。
【0032】
VMの実現の仕方としては、一般的には、ホスト型、ハイパー型があり、
図3では、VM管理サーバ10は、ホスト型の実現形態で記述しているが、本実施形態のバックアップ先移行方法は、ハイパー型であってもよい。なお、ホスト型のVMでは、しばしば、VM管理OS11は、ホストOS、VMOS14-iは、ゲストOSと呼ばれる。ハイパー型のVMでは、VM管理OS11と仮想化ための機能が一体化され、ハイパーバイザ上で、VMOS14-i(ゲストOS)が実行されるモデルとなる。
【0033】
クラウド領域30は、
図4に示されるように、ユーザ管理部31、アップロード・ダウンロード部32、オンラインストレージ部33からなる。本実施形態のクラウド領域30は、クラウドサービスによりデータのストレージ機能、いわゆるオンラインストレージのサービスを提供するものである。クラウド領域30は、インターネット3に接続されたファイルサーバとして実現される。なお、以下の説明では、ユーザの課金さえ許せば、クラウド領域30として十分なストレージの容量が提供できるものとして説明する。
【0034】
ユーザ管理部31は、サービスを利用するユーザとユーザの課金を管理する機能部である。アップロード・ダウンロード部32は、クラウドサービスの提供をうけるクライアントからのデータのアップロード・ダウンロードを受け取る機能部である。オンラインストレージ部33は、クラウドサービスのストレージ機能を実現する機能部である。
【0035】
ストレージ装置50は、
図5に示されるように、制御部51、データ入出力部52、容量削減部53、容量リソース部54からなる。
【0036】
制御部51は、ストレージ装置50の制御をつかさどり、データ入出力部52に対して、記憶媒体のデータの入出力(Read/Write)を指令する機能部である。容量削減部53は、容量削減機能を実現する機能部である。容量削減機能は、複数のバックアップが行われる場合に、重複するデータを解析し、重複を排除したデータ記憶を行う機能である。
【0037】
容量リソース部54は、大容量のデータを格納する機能部であり、ハードウェア的には、HDD(Hard Disk Drive)のような磁気記憶装置、SSD(Solid State Drive)のような不揮発性の半導体記憶装置により実現される。大規模なストレージ装置50の容量リソース部54は、Disk Arrayを構成し、RAIDのような冗長記憶機能を有する。
【0038】
次に、
図6を用いてバックアップ管理装置のハードウェア・ソフトウェア構成を説明する。
バックアップ管理装置100のハードウェア構成としては、例えば、
図6に示されるワークステーションのような一般的な情報処理装置で実現される。
【0039】
バックアップ管理装置100は、CPU(Central Processing Unit)302、主記憶装置304、ネットワークI/F(InterFace)306、表示I/F308、入出力I/F310、補助記憶I/F312が、バスにより結合された形態になっている。
【0040】
CPU302は、バックアップ管理装置100の各部を制御し、主記憶装置304に必要なプログラムをロードして実行する。
【0041】
主記憶装置304は、通常、RAMなどの揮発メモリで構成され、CPU302が実行するプログラム、参照するデータが記憶される。
【0042】
ネットワークI/F306は、ネットワーク5と接続するためのインタフェースである。
【0043】
表示I/F308は、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置320を接続するためのインタフェースである。
【0044】
入出力I/F310は、入出力装置を接続するためのインタフェースである。
図6の例では、キーボード330とポインティングデバイスのマウス332が接続されている。
【0045】
補助記憶I/F312は、HDD(Hard Disk Drive)350やSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を接続するためのインタフェースである。
【0046】
HDD350は、大容量の記憶容量を有しており、本実施形態を実行するためのプログラムが格納されている。バックアップ管理装置100には、バックアップスケジュール管理プログラム361、バックアップ移行処理プログラム362、バックアップ指示プログラム363、バックアップ対象稼動状況収集プログラム364がインストールされている。
【0047】
バックアップスケジュール管理プログラム361、バックアップ移行処理プログラム362、バックアップ指示プログラム363、バックアップ対象稼動状況収集プログラム364は、それぞれバックアップスケジュール管理部101、バックアップ移行処理部102、バックアップ指示部103、バックアップ対象稼動状況収集部104の機能を実現するプログラムである。
【0048】
また、HDD350には、
図6には図示しなかったが、バックアップ先諸元テーブル200、バックアップ要件テーブル201、既存バックアップ情報テーブル202、バックアップスケジュールテーブル203、移行先想定バックアップ情報テーブル204、移行先想定バックアップスケジュールテーブル205、予測リソース消費量テーブル206、スコアテーブル207が格納されている。
【0049】
次に、
図7ないし
図14を用いてバックアップ管理装置で使用されるデータ構造について説明する。
【0050】
バックアップ先諸元テーブル200は、バックアップ先となるストレージ装置またはクラウド領域の諸元を格納するテーブルであり、
図7に示されるように、バックアップ先ID200a、バックアップ先タイプ200b、属性名200c、属性値200dの各フィールドからなる。
【0051】
バックアップ先ID200aには、バックアップ先となるストレージ装置またはクラウド領域を一意に表すIDが格納される。バックアップ先タイプ200bには、バックアップ先がストレージ装置またはクラウド領域であるかを示すフラグが格納される。属性名200cには、バックアップ先となるストレージ装置またはクラウド領域の属性を示すIDまたは名称が格納される。属性値200dには、バックアップ先ID200aに対応するストレージ装置またはクラウド領域の属性名200cの格納された属性の値が格納される。
【0052】
例えば、バックアップ先ID200a「ストレージ装置A」のストレージ装置における属性名200c「リストア性能」に対して、「1分あたり0.1GBリストア可能」、属性名200c「最大容量リソース」に対して、「1000GB」などである。
【0053】
また、例えば、バックアップ先ID200a「クラウド領域D」のクラウド領域における属性名200c「リストア性能」に対して、「1分あたり1.0GBリストア可能」、属性名200c「上限バックアップコスト」に対して、「25000円/月」などである。
【0054】
バックアップ要件テーブル201には、バックアップ管理システムでバックアップの要件となる情報を格納するテーブルであり、
図8に示されるように、バックアップ要件種別201a、バックアップ要件項目201b、バックアップ要件内容201c、対象システムリソースID201dの各フィールドからなる。
【0055】
バックアップ要件種別201aには、パックアップするために要求される要件の種別が格納される。バックアップ要件種別201a「ITインフラ要件」のレコードは、バックアップ管理システムに要求されるシステムのハードウェアリソース、ソフトウェアリソースに対する要件などが格納され、バックアップ要件種別201a「ユーザ要件」のレコードは、ユーザがバックアップ処理に対して要求する要件が格納される。バックアップ要件項目201bには、バックアップ要件の項目を一意に表すIDまたは名称が格納される。バックアップ要件内容201cには、バックアップ要件項目201bに関するバックアップ要件の内容が格納される。対象システムリソースID201dには、バックアップ要件に関わるシステムリソース(ストレージ装置、クラウド領域、物理サーバ、VM)のIDが格納される。
【0056】
既存バックアップ情報テーブル202は、バックアップ先移行前のバックアップに関する情報が格納するテーブルであり、
図9に示されように、システムリソースID202a、バックアップ容量種別202b、バックアップ容量値202cの各フィールドよりなる。
【0057】
システムリソースID202aには、バックアップに関わるVMまたは物理サーバのIDが格納される。バックアップ容量種別202bには、バックアップに係る容量の種別を表す名称またはIDが「現在のフルバックアップ容量」、「現在の差分バックアップ容量」、「平均フルバックアップ容量」のように格納される。バックアップ容量値202cには、システムリソースID202aの値のVMまたは物理サーバのバックアップ容量種別202bの示すバックアップ容量種別のバックアップ容量値が格納される。
【0058】
バックアップスケジュールテーブル203は、現在のバックアップスケジュールに関する情報を格納するテーブルであり、
図10に示されるように、タスクID203a、バックアップ対象ID203b、バックアップ先ID203c、バックアップタイプ203d、タスク実行時刻203eの各フィールドからなる。
【0059】
タスクID203aには、バックアップスケジュールのタスクを一意に表すIDが格納される。ここで、「タスク」とは、 バックアップスケジュール内で予定される1回のバックアップ実行処理をいう。バックアップ対象ID203bには、バックアップ対象となるVMまたは物理サーバを一意に表すIDが格納される。バックアップ先ID203cには、バックアップ先となるストレージ装置またはクラウド領域を一意に表すIDが格納される。バックアップタイプ203dには、バックアップのタイプとして、「フルバックアップ」、「差分バックアップ」、「増分バックアップ」のようなバックアップの形態が格納される。タスク実行時刻203eには、バックアップを実行する日時が“yyyy/mm/dd hhmm”の形式で格納される。
【0060】
移行先想定バックアップ情報テーブル204は、移行先となる候補を選定してバックアップを行うときのバックアップ先移行後に想定されるバックアップに関する情報が格納するテーブルであり、
図11に示されように、バックアップ対象ID204a、バックアップ移行先候補ID204b、想定バックアップ内容種別204c、想定バックアップ内容値204dの各フィールドを有する。
【0061】
バックアップ対象ID204aには、バックアップ対象となるVMまたは物理サーバを一意に表すIDが格納される。バックアップ移行先候補ID204bには、バックアップの移行先の候補(詳細は、後述)となるストレージ装置またはクラウド領域を一意に表すIDが格納される。想定バックアップ内容種別204cには、想定するバックアップ内容の種別として、「想定フルバックアップ数」、「想定最大差分データ累積量」を表すIDまたは名称が格納される。想定バックアップ内容値204dには、想定バックアップ内容種別204cの値に応じて、想定フルバックアップ数か、想定最大差分データ累積量が格納される。
【0062】
移行先想定バックアップスケジュールテーブル205は、移行先となる候補を選定してバックアップを行うときのバックアップスケジュールに関する情報を格納するテーブルであり、
図12に示されるように、各フィールドは、
図10に示したバックアップスケジュールテーブル203と同様である。
【0063】
予測リソース消費量テーブル206は、バックアップ先を移行したときに、予測されるバックアップに要するリソース消費量を格納するテーブルであり、
図13に示されるように、バックアップ対象ID206a、バックアップ移行先ID206b、バックアップ先タイプ206c、予測消費リソース種別206d、予測消費リソース値206eの各フィールドを有する。
【0064】
バックアップ対象ID206aには、バックアップ対象となるVMまたは物理サーバを一意に表すIDが格納される。バックアップ移行先ID206bには、バックアップ先となるストレージ装置またはクラウド領域を一意に表すIDが格納される。バックアップ先タイプ206cには、バックアップ先がストレージ装置またはクラウド領域であるかを示すフラグが格納される。予測消費リソース種別206dには、バックアップ移行先ID206bに示すストレージ装置またはクラウド領域にバックアップ先を移行したときに、消費されると予測するリソースの種別が格納される。バックアップ先タイプ206cが「ストレージ装置」のときには、予測消費リソース種別206dは、例えば、「予測消費容量リソース」、「予測最大消費メモリ」であり、バックアップ先タイプ206cが「クラウド領域」のときには、予測消費リソース種別206dは、例えば、「予測クラウドコスト」である。予測消費リソース値206eには、予測消費リソース種別206dに示した予測消費リソースの値が、容量または課金/月を単位として格納される。
【0065】
スコアテーブル207は、バックアップ移行先を選定するために用いられスコア(詳細は、後述)を、バックアップ移行先の候補ごとに保持するテーブルであり、
図14に示されるように、バックアップ対象ID207a、バックアップ移行先ID207b、バックアップ先タイプ207c、スコア名207d、スコア値207eの各フィールドを有する。
【0066】
バックアップ対象ID207aには、バックアップ対象となるVMまたは物理サーバを一意に表すIDが格納される。バックアップ移行先ID207bには、バックアップ先となるストレージ装置またはクラウド領域を一意に表すIDが格納される。バックアップ先タイプ207cには、バックアップ先がストレージ装置またはクラウド領域であるかを示すフラグが格納される。スコア名207dには、バックアップ移行先を選定するために用いられスコアの名称が格納される。バックアップ先タイプ207cが「ストレージ装置」のときには、スコア名207dは、「計算リソーススコア」、「容量リソーススコア」、「固有補正スコア」、「合計スコア」であり、バックアップ先タイプ207cが「クラウド領域」のときには、スコア名207dは、「クラウドコストスコア」、「固有補正スコア」、「合計スコア」である。スコア値207eには、スコア名207dに示したスコアの値が格納される。
【0067】
次に、
図15を用いてバックアップ管理装置の行うバックアップ先移行処理の概要について説明する。
先ず、業務システムの平常運用中に、バックアップ管理装置100のバックアップ対象稼働状況収集部104は、業務を行っているVMまたは物理サーバの既存バックアップに関する以下の情報を収集し(S01)、既存バックアップ情報テーブル202に格納する(S01→a)。
(01)現在のフルバックアップ総容量:フルバックアップで取得した全てのバックアップの容量の合計値[GB]
(02)現在の差分バックアップ総容量:差分バックアップで取得した全てのバックアップの容量の合計値[GB]
(03)平均フルバックアップ容量:フルバックアップで取得した全てのバックアップの容量の平均値[GB/個]
【0068】
なお、一般に、バックアップ対象となるデータを全てコピーし、バックアップ先に保存するバックアップ手法を、フルバックアップ、前回のフルバックアップからの差分情報のみを保存するバックアップ手法を差分バックアップという。差分バックアップの状態への復旧のためには、最新のフルバックアップから累積した差分情報を取得し復元するための処理が必要である。
【0069】
さらに、バックアップ先の以下の情報を収集し、バックアップ先諸元テーブル200に格納する(S01→b)。
【0070】
(11)リストア性能:バックアップ先のストレージ装置50またはクラウド領域30から差分バックアップを復旧した際に、単位時間あたりに復旧できるデータ容量
(12)ストレージ装置50の情報
(121)最大容量リソース:当該装置の容量リソースのデータ容量の最大値
(122)現在消費容量リソース:当該装置の容量リソースで現在消費されているデータ容量の値
(123)容量削減性能:バックアップデータを当該装置に格納した場合、実際の消費容量が、元々のデータの容量の何パーセントに(当該装置の機能により)削減されるかを表す値[%]
(124)基本消費メモリ:一つの差分バックアップを復旧する際に、必ず消費されるメモリ容量[GB]
(125)容量依存消費メモリ:一つの差分バックアップを復旧する際に、当該差分バックアップの差分情報の累積量に比例して消費されるメモリ容量[GB/GB(累積量)]
(126)最大メモリ:当該装置のメモリ容量の最大値[GB]
(127)現在消費メモリ:当該装置の現在消費されているメモリ容量の値[GB]
(13)クラウド領域30の情報
(131)現在の消費クラウドコスト:当該クラウド領域を当該システムのために使用し、現在課されている一定期間あたりのコスト[円/月]
(132)容量依存クラウドコスト:当該クラウド領域でバックアップデータを管理した場合に、バックアップデータ容量によって消費される容量リソースの使用容量に比例して課される一定期間あたりのコスト[円/月・GB]
(133)上限クラウドコスト:当該クラウド領域を当該システムために使用する上で課されることを許容する一定期間あたりのコストの上限値[円/月]
【0071】
また、バックアップ管理者は、バックアップ先の事情に応じて、以下の情報をバックアップ先諸元テーブル200に格納しておく。
(14)固有補正スコア:バックアップ先となるストレージ装置50またはクラウド領域30の選出優先度に関わり、容量・処理性能といったスペックの数値に表されない固有の性質がある場合、その性質によるスコアの増減値を直接表したスコア値
【0072】
例えば、あるストレージ装置は、データを保存するハードウェア群のうち故障アラートが点灯しているものが多く、今後、部分的な故障により機能が縮退するリスクがあるため、当該装置が移行先として選出される優先度を下げるのが望ましい。そこで、当該装置の固有補正スコアを「-100」と指定する。
【0073】
次に、バックアップ管理装置100は、既存の手法によりバックアップスケジュールの調整処理を実施する(S00、例えば、特許文献1)。
【0074】
スケジュール調整処理においては、バックアップスケジュールテーブル203内の各バックアップのタスクに対して、バックアップ先となるストレージ装置50またはクラウド領域30に対して、バックアップ要件テーブル201に規定されるバックアップ要件をチェックし、容量リソース使用率に関するポリシーを満たせなかった場合(S00→c)、当該バックアップ対象となるVMまたは物理サーバ(以下、「移行バックアップ対象」という)に対して以下の処理を実施する。
【0075】
バックアップ対象の現在のバックアップ先となっているストレージ装置またはクラウド領域以外のバックアップ先(以下、「バックアップ移行先候補」という)に対して、順次以下を実行する。
【0076】
バックアップ移行先候補を調整対象のバックアップ先、移行バックアップ対象を調整対象として、既存の方法により、バックアップスケジュールの調整処理を実施する。これによって、バックアップ移行先候補により、移行バックアップ対象のバックアップを実行する場合のバックアップスケジュール(以下、「移行先想定スケジュール」という)を求める(S11)。
【0077】
その際、バックアップ移行先候補の容量リソースにつき、現在の消費容量リソースに加えて、移行バックアップ対象の現在のフルバックアップ総容量と現在の差分バックアップ総容量が消費されているものとして処理する。
【0078】
次に、移行先想定スケジュールとバックアップ保存期間から以下を算出し、移行先想定バックアップ情報テーブル204に格納する(S11→d)。
(21)想定フルバックアップ数:移行先想定スケジュールの中の、最古の既存バックアップから数えてバックアップ保存期間以内に取得されると想定されるバックアップの中で、フルバックアップであるものの数[個]
(22)想定最大差分データ累積量:移行先想定スケジュールの中の、最古の既存バックアップから数えてバックアップ保存期間以内に取得されると想定される差分バックアップの中で、直近のフルバックアップ時点からの差分データ累積の容量が最も大きい時点のその差分データ累積量の値[GB]
【0079】
次に、当該移行バックアップ対象のバックアップ先となっているバックアップ先以外に対して、以下を算出し(S12)、予測リソース消費量テーブル206に追加する(S12→e)。
【0080】
(31)ストレージ装置50の場合
(311)予測消費容量リソース:既存バックアップ情報テーブル202および移行先想定バックアップ情報テーブル204の情報と、当該ストレージ装置の容量削減性能とに基づき、当該ストレージ装置で当該バックアップ対象のバックアップを実行した場合に消費されると予想される容量リソースの容量値[GB]
(312)予測最大消費メモリ:想定最大差分データ累積量と、当該ストレージ装置の差分バックアップ復旧時の計算性能値(基本消費メモリ、容量依存消費メモリ)に基づき、当該ストレージ装置で当該バックアップ対象の差分バックアップを復旧した場合に消費されると予想される最も大きい消費メモリの値[GB]
【0081】
(32)クラウド領域30の場合
(321)予測クラウドコスト:既存バックアップ情報テーブル202および移行先想定バックアップ情報テーブル204の情報と、当該クラウド領域の容量依存クラウドコストに基づき、当該クラウド領域で当該バックアップ対象のバックアップを実行した場合に課されると予想されるコスト[円/月]
【0082】
次に、予測リソース消費量と当該バックアップ移行先候補のリソース消費状況(最大メモリ、現在の消費メモリ、最大容量、現在の消費容量、上限クラウドコスト、現在の消費クラウドコスト)に基づき、リソースへの影響の少なさを表すスコア(容量リソーススコア、計算リソーススコア、クラウドコストスコア)を算出し、容量リソーススコア、計算リソーススコア、クラウドコストスコアおよび固有補正スコアから、当該バックアップ移行先候補の合計スコアを算出する(S13)。そして、各スコアの値をスコアテーブル207に格納する(S13→f)。
【0083】
スコアテーブル207に格納したスコアに基づいて、合計スコアが最も高いストレージ先を選出し、当該バックアップ対象のバックアップ移行先として決定し(S14)、そのバックアップ移行先に対して、当該バックアップ対象の既存バックアップを実行し(S15)、当該バックアップ対象の今後のバックアップ先を、選出したバックアップ先に切り替え、その場合の移行先想定スケジュールを、スケジュールテーブルに反映する(S14→g)。
【0084】
図15では、バックアップ対象が、VM2であり、既存のストレージ装置Aの容量リソース使用率が不足したため、VM2のバックアップ移行先をストレージ装置Bにした場合の例が示されている。
【0085】
次に、
図16ないし
図18Eを用いてバックアップ管理装置の詳細な処理について説明する。
先ず、バックアップ管理装置のバックアップスケジュールの調整処理について説明する。
先ず、
図16を用いてバックアップ管理装置のバックアップスケジュールの調整処理について説明する。
【0086】
バックアップ管理装置100は、バックアップ対象となるVMまたは物理サーバに対する各々に対して、S101~S106の処理を行う(S100~S107)。
【0087】
次に、バックアップ管理装置100のバックアップスケジュール管理部101は、バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理を行う(S101)。
【0088】
バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理の詳細は、後に、
図17を用いて説明する。
【0089】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理が、調整成功で完了したか、調整失敗で完了したかを判定し(S102)、調整成功で完了したときには(S102:調整成功)、S103に行き、調整失敗で完了したときには(S102:調整失敗)、S104に行く。
【0090】
バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理が、調整成功で完了したときには、調整後のスケジュールをバックアップスケジュールテーブル203の該当するレコードに上書きして(S103)、S107に行く。
【0091】
バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理が、調整失敗で完了したときには、バックアップ管理装置100のバックアップ移行処理部102は、該当するバックアップ対象に対して、バックアップの移行処理を実行する(S104)。
【0092】
なお、バックアップの移行処理の詳細は、後に、
図18Aないし
図18Eを用いて説明する。
【0093】
次に、バックアップ管理装置100は、該当するバックアップ対象に対して、バックアップの移行処理が移行成功で完了したか、移行失敗で完了したかを判定し(S105)、移行成功のときには(S105: 移行成功)、S107に行き、移行失敗のときには(S105:移行失敗)、S106に行く。
【0094】
該当するバックアップ対象に対して、移行失敗で完了したときには、バックアップ管理装置100は、該当するバックアップ対象に対して、移行失敗で完了した旨を表示する(S106)。
【0095】
また、必要ならば、バックアップ先となるストレージ装置50またはクラウド領域30の容量リソースを人手により調整するため、Eメールの送信、また、管理画面のポップアップ表示などの手段により、ITインフラ管理者に連絡する。
【0096】
次に、
図17を用いてバックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理について説明する。
これは、
図16のS101に該当する処理である。
【0097】
先ず、バックアップ管理装置100は、バックアップスケジュールテーブル203からバックアップ対象のバックアップスケジュールを参照し、既存のタスク以降に十分な数のタスクが予定されていない場合は、差分バックアップのタスクを一定間隔で、十分高い頻度で追加する(S200)。
【0098】
ここで、「十分な数のタスク」とは、バックアップ対象に関して、バックアップ要件テーブルに記載されたバックアップ要件を満たすほど、バックアップが行われるタスクがバックアップスケジュールテーブル203に記載されていることを意味する。
【0099】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ対象に関する各タスクに対して、S202~S204の処理を行う(S201~S205)。
【0100】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ要件テーブル201から、バックアップ対象のユーザ要件と、バックアップ先のITインフラ要件を参照し、バックアップ先諸元テーブル200から、リストア性能や現在の消費容量リソース等、要件充足可否の判定に関わる項目を参照する(S202)。
【0101】
次に、バックアップ管理装置100は、タスクがバックアップ要件テーブルに規定されるバックアップ要件を満たさない場合には、実行時刻の変更やタスクの削減、バックアップタイプの変更等により、バックアップ要件を満たすように調整する(S203)。
【0102】
なお、S200で追加したタスクにむだや必要性がないものは、S203で削除される。
【0103】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ先の消費容量リソースを削減でき、タスクが容量リソース使用率の要件を満たせたか否かを判定し(S204)、肯定的なときには(S204:YES)、S205に行き、否定的なとき(すなわち、バックアップ先の消費容量リソースをこれ以上削減できずに、タスクが容量リソース使用率の要件を満たせるようにできないとき)には(S204:NO)、S201~S205のループをExitし、バックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理を、調整失敗として完了する。
【0104】
S204が肯定的なときには、S205に行き、次のループを繰り返す。
【0105】
次に、
図18Aないし
図18Eを用いて、バックアップの移行処理について説明する。
バックアップ管理装置100は、バックアップ移行先候補(バックアップ対象の現在のバックアップ先となっているストレージ装置またはクラウド領域以外のバックアップ先)に対して、S301~S318の処理を行う(S300~S319)。
【0106】
バックアップ管理装置100は、既存バックアップ情報テーブル202から、移行バックアップ対象に関する現在のフルバックアップ総容量、現在の差分バックアップ総容量、平均フルバックアップ容量を参照する(S301)。
【0107】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ移行先候補を、調整対象のバックアップ先、移行バックアップ対象を、調整対象のバックアップ対象として、
図17に示したバックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理を実行し、移行先想定スケジュール(移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを行った場合のスケジュール)を算出する(S302)。
【0108】
その際、バックアップ移行先候補の容量リソースにつき、現在の消費容量リソースに加えて、移行バックアップ対象の現在のフルバックアップ総容量と現在の差分バックアップ総容量が消費されているものとして処理する。
【0109】
次に、バックアップ管理装置100は、S302で呼び出したバックアップ対象に対するバックアップスケジュールの調整処理が、調整成功で完了したか、調整失敗で完了したかを判定し(S303)、調整成功で完了したときには(S303:調整成功)、S305に行き、調整失敗で完了したときには(S303:調整失敗)、S304に行く。
【0110】
バックアップスケジュールの調整処理が、調整失敗で完了したとき、バックアップ管理装置100は、バックアップ移行先候補を候補から除外する(S304→
図18EのS319)。
【0111】
バックアップスケジュールの調整処理が、調整成功で完了したとき、バックアップ管理装置100は、移行先想定スケジュールを移行先想定バックアップスケジュールテーブル205に追加し、バックアップ要件テーブル201から、移行バックアップ対象のバックアップ保存期間を参照し、移行先想定スケジュールとバックアップ保存期間から、移行バックアップ対象に関する想定フルバックアップ数と、想定最大差分データ累積量を算出し、移行先想定バックアップ情報テーブル204に追加する(S305→
図18BのS306)。
【0112】
ここで、想定フルバックアップ数とは、移行先想定スケジュールの中で、最古の既存バックアップから数えて保存期間(移行先想定スケジュールにより実行されると想定されるバックアップの実行期間)以内に実行されると想定されるバックアップの中で、フルバックアップであるものの数[個]である。また、想定最大差分データ累積量とは、移行先想定スケジュールの中で、最古の既存バックアップから数えて保存期間(同上)以内に実行されると想定される差分バックアップの中で、直近のフルバックアップ時点からの差分データ累積の容量が最も大きい時点のその差分データ累積量の値[GB]である。
【0113】
S305の後に、バックアップ管理装置100は、バックアップ移行先候補が、ストレージ装置か、クラウド領域かを判定し(S306)、バックアップ移行先候補が、ストレージ装置のときには(S306: ストレージ装置)、S307に行き、バックアップ移行先候補が、クラウド領域のときには(S306: クラウド領域)、S308に行く。
【0114】
バックアップ移行先候補が、ストレージ装置のとき、バックアップ管理装置100は、バックアップ先諸元テーブル200から、バックアップ移行先候補に関する容量削減性能、基本消費メモリ、容量依存消費メモリを参照する(S307→
図18CのS309)。
【0115】
バックアップ移行先候補が、クラウド領域のとき、バックアップ先諸元テーブル200から、バックアップ移行先候補に関する容量依存クラウドコストを参照する(S308→
図18DのS315)。
【0116】
S307の後に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象に関する現在のフルバックアップ総容量、現在の差分バックアップ総容量、平均フルバックアップ容量、想定フルバックアップ数、想定最大差分データ累積量と、バックアップ移行先候補に関する容量削減性能に基づいて、バックアップ移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の予測消費容量リソースを算出し、予測リソース消費量テーブルに追加する(S309)。
【0117】
予測消費容量リソースは、以下の(式1)により算出される。
(予測消費容量リソース)[GB]={現在のフルバックアップ総容量)[GB]+(現在の差分バックアップ総容量)[GB]+(平均フルバックアップ容量)[GB/個]×(想定フルバックアップ数)[個]+(想定最大差分データ累積量)[GB/個]×(想定フルバックアップ数)[個]}×(容量削減性能)[%] …(式1)
【0118】
ここで、(式1)の第一項と第二項は、既存のバックアップデータの総容量を表し、第三項~第六項は、バックアップ保存期間内の今後のバックアップスケジュールに伴って消費されると想定される容量を表す。また、(容量削減性能)をかけるのは、ストレージ装置の機能によって削減された容量を計算するためである。
【0119】
次に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象に関する想定最大差分データ累積量と、バックアップ移行先候補に関する基本消費メモリ、容量依存消費メモリに基づき、バックアップ移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の予測最大消費メモリを算出し、予測リソース消費量テーブル206に格納する(S310)。
【0120】
予測最大消費メモリは、以下の(式2)により算出される。
(予測最大消費メモリ)[GB]=(想定最大差分データ累積量)[GB]×(容量依存消費メモリ)[GB/GB]+(基本消費メモリ)[GB] …(式2)
【0121】
(式2)における(予測最大消費メモリ)は、当該バックアップ先のリストア時に最もメモリ消費が大きい時のメモリであり、バックアップ保存期間内の今後のバックアップスケジュールに伴って保存される差分バックアップのうち、リストアのための計算コストが最も大きい時点での消費メモリとなる。
【0122】
また、想定最大差分データ累積量の意義は、既に説明した通りであり、この容量が(式2)に含まれるのは、リストアのための計算コストが最も大きい時点での容量を考慮するためである。
【0123】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ先諸元テーブル200から、バックアップ移行先候補に関する最大容量リソース、現在の消費容量リソース、最大メモリ、現在の消費メモリ、固有補正スコアを参照する(S311)。
【0124】
次に、バックアップ移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の予測消費容量リソースと、バックアップ移行先候補に関する最大容量リソース、現在の消費容量リソースに基づき、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関する容量リソーススコアを算出し、スコアテーブル207に格納する(S312)。
【0125】
容量リソーススコアは、以下の(式3)により算出される。
(容量リソーススコア)=Fc(予測消費容量リソース[GB],最大容量リソース[GB],現在の消費容量リソース[GB]) …(式3)
【0126】
ここで、Fc()は、容量スコア算出関数であり、例えば、以下の(式4)のように、 ストレージ装置50における残りのリソース容量から予測される消費リソース容量を減算した値により表される。
Fc(予測消費容量リソース[GB],最大容量リソース[GB],現在の消費容量リソース[GB])={(最大容量リソース)[GB]-(現在の消費容量リソース)[GB]-(予測消費容量リソース)[GB]}×Kc[/GB] …(式4)
ここで、Kcは、容量あたりの(容量リソースに関するスコア化係数)であり、例えば、1とする。
【0127】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の予測最大消費メモリと、バックアップ移行先候補に関する最大メモリ、現在の消費メモリに基づき、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関する計算リソーススコアを算出し、スコアテーブルに格納する(S313)。
【0128】
計算リソーススコアは、以下の(式5)より算出される。
(計算リソーススコア)=Fp(予測最大消費メモリ[GB],最大メモリ[GB],現在の消費メモリ[GB]) …(式5)
【0129】
ここで、Fp()は、計算リソーススコア算出関数であり、例えば、以下の(式6)のように、ストレージ装置50における残りのメモリ量から予測される消費メモリ量を減算した値により表される。
Fp(予測最大消費メモリ[GB],最大メモリ[GB],現在の消費メモリ[GB])={(最大メモリ)[GB]-(現在の消費メモリ)[GB]-(予測最大消費メモリ))[GB]}×Kp[/GB] …(式6)
ここで、Kpは、メモリ量あたりの(計算リソースに関するスコア化係数)であり、例えば、1とする。
【0130】
次に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関する容量リソーススコア、計算リソーススコアと、バックアップ移行先候補に関する固有補正スコアに基づき、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関する合計スコアを算出し、スコアテーブル207に格納する(S314)。
【0131】
ストレージ装置50における合計スコアは、以下の(式7)により算出される。
(合計スコア)=(容量リソーススコア)+(計算リソーススコア)+(固有補正スコア) …(式7)
【0132】
S308の後に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象に関する現在のフルバックアップ総容量、現在の差分バックアップ総容量、平均フルバックアップ容量、想定フルバックアップ数、想定最大差分データ累積量と、バックアップ移行先候補に関する容量依存クラウドコストに基づき、バックアップ移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の予測クラウドコストを算出し、予測リソース消費量テーブル206に追加する(S315)。
【0133】
予測クラウドコストは、以下の(式8)により算出される。
(予測クラウドコスト)[円/月]={(現在のフルバックアップ総容量)[GB]+(現在の差分バックアップ総容量)[GB]+(平均フルバックアップ容量)[GB/個]×(想定フルバックアップ数)[個]+(想定最大差分データ累積量)[GB/個]×(想定フルバックアップ数)[個]}×(容量依存クラウドコスト)[円/月・GB] …(式8)
【0134】
ここで、(式8)の第一項と第二項は、既存のバックアップデータの総容量を表し、第三項~第六項は、バックアップ保存期間内の今後のバックアップスケジュールに伴って消費されると想定される容量を表す。また、(容量依存クラウドコスト)をかけるのは、クラウド領域において、想定される総容量を、月あたりのコスト(クラウドサービス利用費)に変換するためである。
【0135】
次に、バックアップ管理装置100は、バックアップ先諸元テーブル200から、バックアップ移行先候補に関する上限クラウドコスト、現在の消費クラウドコスト、固有補正スコアを参照する(S316)。
【0136】
次に、バックアップ移行先候補で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の予測クラウドコストと、バックアップ移行先候補に関する上限クラウドコスト、現在の消費クラウドコストに基づき、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関するクラウドコストスコアを算出し、スコアテーブル207に格納する(S317)。
【0137】
クラウドコストスコアは、以下の(式9)により算出される。
(クラウドコストスコア)=Fcc(予測クラウドコスト[円/月],上限クラウドコスト[円/月],現在のクラウドコスト[円/月]) …(式9)
【0138】
ここで、Fcc()は、クラウドコストスコア算出関数であり、例えば、以下の(式10)のように、クラウド領域30における使用可能な月当たりの残りの許容されるコストから予測コストを減算した値により表される。
Fcc(予測クラウドコスト[円/月],上限クラウドコスト[円/月],現在のクラウドコスト[円/月])={(上限クラウドコスト)[円/月]-(現在のクラウドスコア)[円/月]-(予測クラウドコスト)[円/月]}×Kcc[月/円] …(式10)
ここで、Kccは、クラウド領域の容量あたりの(クラウドコストに関するスコア化係数)であり、例えば、0.01とする。
【0139】
次に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関するクラウドコストスコアと、バックアップ移行先候補に関する固有補正スコアに基づき、移行バックアップ対象とバックアップ移行先候補に関する合計スコアを算出し、スコアテーブル207に格納する(S318)。
【0140】
クラウド領域30における合計スコアは、以下の(式11)により算出される。
(合計スコア)=(クラウドコストスコア)+(固有補正スコア) …(式11)
【0141】
S304、S314、S318を実行すると、S319に到達し、S300に戻り、ループを繰り返す。
S300~S319のループを抜けると、バックアップ管理装置100は、スコアテーブル207を参照し(S320)、バックアップ対象に関するスコアが存在するか否かを判定し(S321)、バックアップ対象に関するスコアが存在するときには(S321:YES)、S323に行き、バックアップ対象に関するスコアが存在しないときには(S321:NO)、S322に行く。
【0142】
バックアップ対象に関するスコアが存在しないとき、バックアップ管理装置100は、移行先となるバックアップ先が存在しないため、移行失敗として完了する(S322)。
【0143】
バックアップ対象に関するスコアが存在するとき、バックアップ管理装置100は、スコアテーブル207のスコアを参照し、移行バックアップ対象の各バックアップ移行先候補に関する合計スコアを比較し、合計スコアが最も高いバックアップ移行先候補を、移行バックアップ対象のバックアップの移行先として選択する(S323)。
【0144】
次に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象に関するタスクをスケジュールテーブルから削除し、移行先想定バックアップスケジュールテーブル205から、選択された移行先で移行バックアップ対象のバックアップを実行した場合の移行先想定スケジュールを参照し、参照したスケジュールを、バックアップスケジュールテーブル203に追加する(S324)。
【0145】
次に、バックアップ管理装置100は、移行バックアップ対象に関する既存のバックアップデータを、移行元ストレージ装置から移行先へ移行し(S325)、移行成功として完了する。
【0146】
次に、
図19を用いてバックアップ管理装置の提供するユーザインタフェースの例について説明する。
バックアップ管理装置100は、バックアップ先移行に関して算出した結果を
図19に示されるようなバックアップ移行先ユーティリティ画面500により、管理者に提示することができる。
【0147】
バックアップ移行先ユーティリティ画面500は、移行対象表示領域501、既存バックアップ先表示領域510、バックアップ移行先表示領域520、「移行後のバックアップスケジュール確認」ボタン531、OKボタン532、キャンセルボタン523のアイテムを有する。
【0148】
移行対象表示領域501は、移行バックアップ対象となるVMまたは物理サーバの名称またはIDが表示される。
【0149】
既存バックアップ先表示領域510には、移行バックアップ対象に関して、現在のバックアップ先の情報が表示される。
図19の例では、「ストレージ装置A」における消費容量リソースの移行前と移行後の値、最大消費メモリの値が表示されている。
【0150】
バックアップ移行先表示領域520には、移行先となったバックアップ先の情報が表示される。
図19の例では、「ストレージ装置B」における消費容量リソースの移行前と移行後の値、最大消費メモリの値が表示されている。
【0151】
また、「移行後のバックアップスケジュール確認」ボタン531は、クリックすると図示しなかったが、移行後のバックアップスケジュール情報を示すウインドウが表示される。OKボタン532を、クリックすると、バックアップ管理装置100が算出したバックアップ先の移行を確定させ、キャンセルボタン523、クリックすると、バックアップ先の移行は、キャンセルされる。
【0152】
以上、本実施形態のバックアップ管理装置によれば、移行先の候補となるバックアップ先に関して、容量に関する容量スコア、計算性能に関する計算リソーススコア、各々のストレージ装置、クラウド領域に関する特殊事情を考慮した固有補正スコアにより、ストレージ装置、クラウド領域の合計スコアを算出して、適正な移行先を選択する。
【0153】
これにより、実マシンや仮想マシンのデータをバックアップするときに、システムの構成変更に要するコストや管理者の負荷を軽減し、バックアップ先の装置容量を有効活用し、バックアップ処理を最適化することができる。
【符号の説明】
【0154】
10…VM管理サーバ、20…物理サーバ、30…クラウド領域、40…転送サーバ、50…ストレージ装置、
100…バックアップ管理装置、101…バックアップスケジュール管理部、102…バックアップ移行処理部、103…バックアップ指示部、104…バックアップ対象稼動状況収集部、110…記憶部、
200…バックアップ先諸元テーブル、201…バックアップ要件テーブル、202…既存バックアップ情報テーブル、203…バックアップスケジュールテーブル、204…移行先想定バックアップ情報テーブル、205…移行先想定バックアップスケジュールテーブル、206…予測リソース消費量テーブル、207…スコアテーブル
【要約】
【課題】バックアップするときに、システムの構成変更に要するコストや管理者の負荷を軽減し、バックアップ先の装置容量を有効活用し、バックアップ処理を最適化する。
【解決手段】バックアップ先にデータをバックアップするときに、バックアップ要件テーブルに規定された容量リソースに関する条件を満たせないときに、既存バックアップ情報テーブルを参照して、タスクにおけるバックアップ対象のデータを、他のバックアップ先ごとにバックアップしたときの予測リソース消費量を算出し、予測リソース消費量に基づいて、他のバックアップ先ごとに移行したときのリソースの影響の少なさを表すスコアを算出し、スコアに基づいて、タスクに関するバックアップの移行先となるバックアップ先を決定し、決定されたバックアップ先がタスクに関するバックアップ先になるようバックアップスケジュールテーブルを更新する。
【選択図】
図15