(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】自己位置推定装置
(51)【国際特許分類】
G01C 21/30 20060101AFI20240730BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20240730BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01C21/30
G08G1/0969
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2023037170
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2018159020の分割
【原出願日】2018-08-28
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小山 和紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 令司
(72)【発明者】
【氏名】天野 克巳
(72)【発明者】
【氏名】乘松 直人
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142604(JP,A)
【文献】特開2015-194373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/30
G08G 1/0969
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に描かれた標示が一定サイズの複数のセルで分割されて表されており、前記複数のセルのそれぞれには、当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データ、を取得する地図データ取得部と、
移動体に搭載されたセンサから得られたセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報取得部が取得した前記センサ情報から前記標示に該当する前記センサ情報を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記標示に該当する前記センサ情報と、前記地図データと、のマッチングを行うことにより前記移動体の自己位置を推定する推定部と、
を備え、
前記セル毎に、当該セルに対応する点群の反射強度に関する情報を含む属性情報を有している、
ことを特徴とする自己位置推定装置。
【請求項2】
移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置で実行される自己位置推定方法であって、
路面に描かれた標示が一定サイズの複数のセルで分割されて表されており、前記複数のセルのそれぞれには、当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データ、を取得する地図データ取得工程と、
前記移動体に搭載されたセンサから得られたセンサ情報を取得するセンサ情報取得工程と、
前記センサ情報取得工程で取得された前記センサ情報から前記標示に該当する前記センサ情報を認識する認識工程と、
前記認識工程により認識された前記標示に該当する前記センサ情報と、前記地図データと、のマッチングを行うことにより前記移動体の自己位置を推定する推定工程と、
を含み、
前記セル毎に、当該セルに対応する点群の反射強度に関する情報を含む属性情報を有している、
ことを特徴とする自己位置推定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の自己位置推定方法を、コンピュータにより実行させることを特徴とする自己位置推定プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載の自己位置推定プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項5】
路面を検知領域に含むセンサから得られたセンサ情報を取得する取得部と、
前記センサ情報に基づいて、前記路面に描かれた標示を一定サイズの複数のセルに分割し、且つ前記複数のセルのそれぞれに当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データを生成する生成部と、
を備え、
前記セルは、当該セルに対応する点群の反射強度に関する情報を含む属性情報を有している、
ことを特徴とする地図データ生成装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記反射強度に関する情報に基づいて前記セルを生成することを特徴とする請求項5に記載の地図データ生成装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記反射強度に関する情報に基づいて二値化情報を生成し、前記二値化情報に基づいて前記セルを生成することを特徴とする請求項6に記載の地図データ生成装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記路面外の前記反射強度に関する情報を除去した後に前記セルを生成することを特徴とする請求項6または7に記載の地図データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車両等の移動体では、ライダ(LiDAR;Light Detection and Ranging)などのセンサで計測した地物位置と、自動運転用の地図情報の地物位置と、をマッチングして高精度に現在位置を推定する必要がある。特許文献1は、ライダを用いて検出したランドマークとしての地物の位置と、地図情報の地物とを用いて現在位置を推定する手法の一例が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、ライダを用いて白線を検出し、車両に対する白線の横方向の相対位置または白線に対して車両が向いている方向を高精度に検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-72422号公報
【文献】特開2017-215199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の方法により、白線(区画線)を利用して車両等の自己位置を推定することはできる。しかしながら、例えば、右折や左折等を示す進行方向別通行区分のような路面上に白線以外の標示がある場合に、当該標示を白線と誤って検出してしまうと自己位置推定の精度が低下してしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、移動体の自己位置推定の精度を向上させることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、路面に描かれた標示が一定サイズの複数のセルで分割されて表されており、前記複数のセルのそれぞれには、当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データ、を取得する地図データ取得部と、移動体に搭載されたセンサから得られたセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記センサ情報取得部が取得した前記センサ情報から前記標示に該当する前記センサ情報を認識する認識部と、前記認識部により認識された前記標示に該当する前記センサ情報と、前記地図データと、のマッチングを行うことにより前記移動体の自己位置を推定する推定部と、
を備え、前記セル毎に、当該セルに対応する点群の反射強度に関する情報を含む属性情報を有している、ことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置で実行される自己位置推定方法であって、路面に描かれた標示が一定サイズの複数のセルで分割されて表されており、前記複数のセルのそれぞれには、当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データ、を取得する地図データ取得工程と、前記移動体に搭載されたセンサから得られたセンサ情報を取得するセンサ情報取得工程と、前記センサ情報取得工程で取得された前記センサ情報から前記標示に該当する前記センサ情報を認識する認識工程と、前記認識工程により認識された前記標示に該当する前記センサ情報と、前記地図データと、のマッチングを行うことにより前記移動体の自己位置を推定する推定工程と、を含み、前記セル毎に、当該セルに対応する点群の反射強度に関する情報を含む属性情報を有している、ことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自己位置推定方法を、コンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の自己位置推定プログラムを格納したことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施例にかかるサーバ装置と車載装置からなるシステムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたサーバ装置の機能的構成図である。
【
図3】
図1に示された車載装置の機能的構成図である。
【
図4】
図2に示されたサーバ装置における地図データ生成方法のフローチャートである。
【
図6】
図5に示した二値化画像から不要なピクセルを除去した画像である。
【
図7】本実施例におけるセルについての説明図である。
【
図8】本発明の一実施例にかかる地図データ構造の説明図である。
【
図9】
図4に示されたフローチャートの変形例である。
【
図11】本発明の一実施例にかかる自己位置推定方法のフローチャートである。
【
図12】本発明の第2の実施例にかかる地図データ生成方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる自己位置推定装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる自己位置推定装置は、路面に描かれた標示が複数のセルで分割されて表されており、複数のセルのそれぞれには、当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データを、地図データ取得部が取得し、センサ情報取得部が車両走行によってセンサから得られたセンサ情報を取得する。そして、認識部がセンサ情報取得部で取得されたセンサ情報から路面に描かれた標示に該当するセンサ情報を認識し、推定部が認識部により認識された路面に描かれた標示に該当するセンサ情報と、地図データと、のマッチングを行うことにより車両の自己位置を推定する。このようにすることにより、路面に描かれた標示を利用して自己位置推定をすることができ、移動体の自己位置推定の精度を向上させることができる。
【0013】
また、セル毎に当該セルについての所定の属性情報を有してもよい。このようにすることにより、例えば、セル内における点群の分散や反射強度を属性情報として有するようにすれば、そのセルにおける標示を示すペイントの分布や割合等を把握することが可能となる、つまり、標示の輪郭が含まれるセルを特定することができる。
【0014】
また、本自己位置推定装置が対象とする路面に描かれた標示は、区画線を除く標示であってもよい。このようにすることにより、例えば白線等の区画線が既に他の方法によりデータ化されている場合は、白線等の区画線を除く、右折や左折等を示す進行方向別通行区分や最高速度といった道路標示について地図データに含めることが可能となる。
【0015】
また、本発明の一実施形態にかかる自己位置推定方法は、路面に描かれた標示が複数のセルで分割されて表されており、複数のセルのそれぞれには、当該セルの位置に関する情報が設定されている地図データを、地図データ取得工程で取得し、センサ情報取得工程で車両走行によってセンサから得られたセンサ情報を取得する。そして、認識工程でセンサ情報取得工程により取得されたセンサ情報から路面に描かれた標示に該当するセンサ情報を認識し、推定工程で認識工程により認識された路面に描かれた標示に該当するセンサ情報と、地図データと、のマッチングを行うことにより車両の自己位置を推定する。このようにすることにより、路面に描かれた標示を地図データに含めることができ、移動体の自己位置推定の精度を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態にかかる自己位置推定プログラムは、上述した自己位置推定方法を、コンピュータにより実行させている。このようにすることにより、コンピュータを用いて、路面に描かれた標示を地図データに含めることができ、移動体の自己位置推定の精度を向上させることができる。
【0017】
また、上述した自己位置推定プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例1】
【0018】
本発明の第1の実施例にかかる地図データ生成装置及び地図データ構造を
図1~
図11を参照して説明する。本実施例にかかる地図データ生成装置は、
図1ではサーバ装置1として構成されている。サーバ装置1は、移動体としての車両Vに搭載されている車載装置2が収集した情報をインターネット等のネットワークNを介して取得し、取得した情報に基づいて後述する地図データ構造を有する地図データを生成する。
【0019】
図2にサーバ装置1の機能的構成を示す。サーバ装置1は、
図2に示したように、制御部11と、通信部12と、記憶部13と、を備えている。制御部11は、サーバ装置1のCPU(Central Processing Unit)が機能し、サーバ装置1の全体制御を司る。制御部11は、車載装置2から送信された例えば点群情報に基づいて地図データを生成する。
【0020】
通信部12は、サーバ装置1のネットワークインターフェース等が機能し、車載装置2が送信した例えば点群情報を受信する。また、通信部12は、制御部11で生成された地図データを、車両Vの車載装置2へ配信(送信)する。即ち、サーバ装置1は、地図データが格納されている記憶装置として機能する。
【0021】
記憶部13は、サーバ装置1のハードディスク等の記憶媒体が機能し、制御部11で生成された地図データ等を記憶する。なお、記憶媒体としては、光ディスクやメモリーカード等のであってもよい。
【0022】
図3に車載装置2の機能的構成を示す。車載装置2は、
図3に示したように、制御部21と、通信部22と、記憶部23と、を備えている。また、車載装置2は、
図3に示したように、ライダ3aやGPS(Global Positioning System)受信機3b等を含む車両Vに搭載されたセンサ3が接続されている。
【0023】
制御部21は、例えばCPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータで構成され、車載装置2の全体制御を司る。制御部21は、センサ3で検出された点群情報等を通信部12からサーバ装置1へ送信させる。また、制御部21は、ライダ3aを用いて認識した路面上に描かれた標示等の地物を示す情報と、サーバ装置1で生成された後述する地図データ構造を有する地図データに含まれる路面上に描かれた標示等の情報と、に基づいて自己位置を推定する。また、制御部21は、推定された自己位置に基づいて予め探索された経路に沿って車両Vを誘導(案内)する誘導装置(案内装置)の制御部として機能してもよい。この誘導装置には、車両Vを経路に沿って自律的に走行させる所謂自動運転機能と、ドライバ等に経路に沿った案内情報を提示するナビゲーション機能の少なくともいずれかを含むものである。
【0024】
通信部22は、制御部21が取得した点群情報等をサーバ装置1に送信する。また、通信部22は、サーバ装置1から配信された地図データ等を受信する。
【0025】
記憶部23は、制御部21で動作するプログラムや各種データ等が格納されている。また、記憶部23は、サーバ装置1から配信された地図データを記憶する。
【0026】
センサ3は、ライダ3aと、GPS受信機3bと、を備えている。なお、センサ3は、これらのセンサ以外に、例えば速度センサ等の他のセンサを備えていてもよい。さらには、車両の前方等の周囲を撮像する車載カメラをセンサ3に含めてもよい。
【0027】
ライダ3aは、電磁波としてレーザ光を出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定する。所定の検知領域において出力方向を変えながらパルス状のレーザを出力し、そのレーザの反射波を受信して点群情報を生成する。ライダ3aは、検知領域内に複数パルスのレーザを出力し、この複数パルスのレーザの反射波に基づいて点群情報を生成する。点群情報を構成するそれぞれの情報は、レーザの出力方向と、当該レーザを反射した対象物までの距離と、反射波の強度(反射強度)と、を示す情報である。本実施例では、ライダ3aは、主にレーザを路面に向けて照射し、路面を検知領域としている。このため、点群情報は、対象物としての路面までの距離を示す情報及び反射強度の情報が含まれる。勿論、路面以外にレーザを出射して、路面情報以外の周辺情報を取得するようにしてもよい。
【0028】
GPS受信機3bは、公知であるように複数のGPS衛星から送信される電波を定期的に受信して、現在の位置情報及び時刻を検出する。
【0029】
次に、上述した構成のサーバ装置1(地図データ生成装置)における地図データ生成方法について
図4~
図7を参照して説明する。
図4は、サーバ装置1で実行されるフローチャートである。このフローチャートは、サーバ装置1の制御部11で実行される。つまり、制御部11のCPUで実行されるコンピュータプログラム(地図データ生成プログラム)として構成されている。なお、このプログラムは、記憶部13に記憶させるに限らず、光ディスクやメモリーカード等に記憶させてもよい。
【0030】
まず、ステップS11において、制御部11は、車載装置2から点群情報等を取得する。なお、本ステップでは、車載装置2から収集した点群情報について、GPS受信機3bが検出した現在位置に基づいて各点までの距離を絶対座標に変換している。あるいは、予め車載装置2で絶対座標に変換してもよい。即ち、制御部11は、ライダ3a(所定のセンサ)から点群情報(路面情報)を取得する取得部として機能する。
【0031】
次に、ステップS12において、制御部11は、ステップS11で取得した点群情報に基づいて二値化画像を生成する。本実施例の二値化画像とは、三次元座標を持つ点群を二次元化して、各点の反射強度に基づいて所定の閾値により二値化した画像である。このようにして生成された二値化画像は、反射強度の高い点が輝度が高いピクセルとして表現される。この二値化画像に含まれるピクセルは、変換前の点群が有する座標情報も引き継いでいる。
【0032】
即ち、制御部11は、取得部が取得した点群情報(路面情報)に基づいて、二値化画像(当該路面に描かれた標示を示す情報)を生成する標示情報生成部として機能する。
【0033】
次に、ステップS13において、制御部11は、ステップS12で生成した二値化画像から路面外の輝度が高いピクセルを除去する。除去の例を
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、ある道路の点群情報に基づいて生成された二値化画像である。この二値化画像上に白線(区画線)Wと、右折を示す進行方向別通行区分R(以下右折矢印Rとする)と、直進を示す進行方向通行区分S(以下直進矢印Sとする)が描かれている。また、この二値化画像には、路面外の不要なピクセルU(路面外の輝度が高いピクセル)も含まれている場合がある。
【0034】
そして、このような二値化画像において、白線Wや進行方向別通行区分といった道路標示等の路面に描かれた標示以外の不要なピクセルUを除去する。除去の方法としては、例えば、点群情報を取得した領域の地図データを別途取得し、その地図データに設定されている通行可能領域(路面の領域)と二値化画像とを対比させて、路面外にある輝度が高いピクセルを特定する方法が挙げられる。また、地図データに含まれる道路や車線のネットワークデータから道路や車線の幅員情報を取得して、路面外にある輝度が高いピクセルを特定してもよい。
【0035】
不要なピクセルUの除去後の二値化画像を
図6に示す。上述した処理によって、不要なピクセルUが除去され、白線Wや右折矢印R、直進矢印Sといった路面に描かれた標示のみが残る。
【0036】
次に、ステップS14において、制御部11は、ステップS13の処理が施された二値化画像において、路面に描かれた標示に対応するピクセルを一定サイズのセルにまとめる(セルを生成する)。生成されたセルは、当該セルに含まれるピクセルに基づいて座標情報が付与されている。即ち、標示情報生成部で生成された二値化画像(標示を示す情報)に基づいて当該標示を複数のセルで分割している。
【0037】
ここで、本実施例のセルについて
図7を参照して説明する。
図7は、白線Wと右折矢印Rとが描かれた路面を示している。
図7では、白線W、右折矢印Rとも破線内がステップS13において輝度が高いピクセルとして表現されている。つまり、破線内が路面上に白線Wや右折矢印Rとして描かれた領域となる。
【0038】
図7に示したように、路面に描かれた標示に対応するピクセルを一定サイズのセルCにまとめることで、白線Wや右折矢印Rは複数のセルCで分割される。このセルCのサイズは路面に描かれた標示を複数に分割できる程度の大きさで適宜定めればよい。また、セルCの形状は正方形に限らず長方形等の矩形や、三角形や六角形等の多角形でもよい。
【0039】
また、
図7の例では、路面に描かれた標示が一部でも含まれる部分のみをセルにまとめているが、路面全体を複数のセルに分割したグリッド状(メッシュ状)としてもよい。但し、路面に描かれた標示のみをセルとした方が地図データのデータ量を小さくすることができる。また、路面全体を複数のセルに分割する場合は、路面に描かれた標示を含むセルには、その旨を示すフラグ等の情報を付与するとよい。
【0040】
図4の説明に戻り、ステップS15において、制御部11は、後述する統計情報の付与のためステップS14で生成されたセルCの座標からステップS11で取得した点群を参照して、セルCと点群とを対応させる。即ち、各セルCには座標情報が位置情報(位置に関する情報)として付与されている。
【0041】
そして、ステップS16において、制御部11は、各セルCに属性情報としての統計情報を付与する。統計情報の例としては、当該セルCに対応する点群の反射強度の平均や分散あるいはヒストグラム等が挙げられる。このようにして統計情報が付与された複数のセルCからなる路面に描かれた標示を地図データに含めることで地図データが生成される。即ち、制御部11は、複数のセルCのそれぞれに、点群情報(路面情報)に基づく当該セルCの位置に関する情報を含めて地図データを生成する地図データ生成部として機能する。
【0042】
以上の説明から明らかなように、ステップS11が取得工程、ステップS12が標示情報生成工程、ステップS14~S16が地図データ生成工程として機能する。
【0043】
なお、センサ3に含まれるものとして車載カメラが車両Vに搭載されている場合は、各点にカメラで撮像された画像に基づく色を付加した色付き点群とし、反射強度に代えて色の平均や分散を用いてもよい。また、当該セルCに対応する点群の座標値の平均や共分散を統計情報として付与することもできる。この場合は、反射強度又は色によるフィルタリング処理を施して路面に描かれた標示のみの点群の座標値を取り出す処理が必要となる。
【0044】
図8に、
図4のフローチャートにより生成された地図データの地図データ構造の例を示す。
図8に示したように、地図データ構造は、セルID131と、位置132と、統計情報133と、を含んでいる。セルIDは、セルを識別するIDである。位置132は、セルの位置を示す情報である、この位置132は、セルC毎に絶対位置(緯度、経度)を設定するに限らず、基準となるセルCからの相対位置を設定してもよい。例えば
図7の右折矢印Rであれば、左隅にあるセルCを基準セルとして絶対位置を設定し、他のセルCは基準セルからの相対位置を設定するようにしてもよい。統計情報133は、上述した反射強度や座標値の平均や分散等の情報が設定されている。また、
図8に示した項目以外に、例えばその標示の内容を示す情報(白線、右折矢印、最高速度等)を含めてもよい。
【0045】
即ち、
図8に示した地図データ構造は、路面に描かれた標示が複数のセルCで分割されて表され、更に複数のセルCのそれぞれには、当該セルCの位置に関する情報(位置132)が設定されている。
【0046】
このような地図データ構造を有する地図データは、例えば、車載装置2がナビゲーションや自動運転等の車両Vを誘導(案内)する機能を有する誘導(案内)装置として機能する場合に、この地図データを参照することで、路面に描かれた標示について、白線以外の標示も認識して案内することができる。
【0047】
ところで、
図4に示したフローチャートでは、路面に描かれた標示は全てセルCで分割されるようにしているが、区画線(例えば白線)は、形状が線であり単純であるため、例えば区画線の中心線を点列として地図データに格納することで、よりデータ量を削減することが可能である。そのため、セルCに分割する対象から区画線を除いてもよい。区画線を除いてセルCに分割する地図データ生成方法を
図9に示す。
【0048】
まず、ステップS21において、制御部11は、
図4のステップS11と同様に、車載装置2から点群情報等を取得する。
【0049】
次に、ステップS22において、制御部11は、
図4のステップS12と同様に、ステップS21で取得した点群情報に基づいて二値化画像を生成する。
【0050】
次に、ステップS23において、制御部11は、二値化画像から白線(区画線)を抽出する。本ステップにおける区画線の抽出方法の例を説明する。まず、二値化画像について画像処理を行い、例えば線分(直線)等を検出する。そして、検出した線分(直線)等のグルーピングを行い、一つの区画線の輪郭を抽出する。そして、既知の手法等を用い、抽出された区画線を点列により表現する。さらに、抽出された区画線から白線の端部及び非端部を認識し、当該認識した端部及び非端部間に点列を内挿(すなわち、端部と端部の間の連続部分に点列を内挿)してもよい。
【0051】
このようにして、白線を点列により表現することができる(
図10を参照)。
図10は、
図7について、白線Wの部分を点列で示したものである、白線Wは上述したステップS23の処理によって、セルCではなく複数の点Pにより表現される。
【0052】
図9の説明に戻る。次に、ステップS24において、制御部11は、ステップS22で生成した二値化画像から路面外の輝度が高いピクセル及びステップS23で抽出した白線部分のピクセルを除去する。路面外の輝度が高いピクセルについては、ステップS13と同様の方法で除去すればよい。白線部分については、ステップS23の処理によって抽出された輪郭に基づいて除去すればよい。
【0053】
次に、ステップS25において、制御部11は、ステップS24の処理が施された二値化画像において、路面に描かれた標示に対応するピクセルを一定サイズのセルCにまとめる(セルCを生成する)。本ステップでは、ステップS24で白線部分は除去されているので、白線を除いた路面に描かれた標示がセルCに分割される。
【0054】
次に、ステップS26において、制御部11は、
図4のステップS15と同様に統計情報の付与のためステップS25で生成されたセルCの座標からステップS21で取得した点群を参照してセルCと点群とを対応させる。
【0055】
そして、ステップS27において、制御部11は、
図4のステップS16と同様に各セルCに統計情報を付与する。このようにして統計情報が付与された複数のセルCからなる路面に描かれた標示及び、ステップS23で点列として表現された白線を地図データに含めることで地図データが生成される。
【0056】
次に、上述した方法により生成された地図データ構造を有する地図データを用いて車載装置2で実行される自己位置推定方法について
図11のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートは、車載装置2の制御部21で実行される。つまり、制御部21のCPUで実行されるコンピュータプログラム(地図データ生成プログラム)として構成されている。なお、このプログラムは、記憶部23に記憶させるに限らず、光ディスクやメモリーカード等に記憶させてもよい。
【0057】
まず、ステップS31において、制御部21は、ライダ3aから点群情報を取得する。この点群情報は、ライダ3aがリアルタイムに取得した情報である。即ち、制御部21は、車両走行によってライダ3a(センサ)から得られた点群情報(センサ情報)を取得するセンサ情報取得部として機能する。
【0058】
次に、ステップS32において、制御部21は、ステップS31で取得した点群情報から路面に描かれた標示を、例えば地表面点群をフィルタリングする等により認識する。即ち、制御部21は、センサ情報取得部が取得した点群情報(センサ情報)から路面に描かれた標示に該当する点群情報(センサ情報)を認識する認識部として機能する。
【0059】
次に、ステップS33において、制御部21は、記憶部23から地図データを取得する。本ステップで取得する地図データは、
図8で説明した地図データ構造を有するものである。即ち、制御部21は、路面に描かれた標示が複数のセルCで分割されて表されており、複数のセルCのそれぞれには、当該セルCの位置に関する情報が設定されている地図データ、を取得する地図データ取得部として機能する。なお、地図データはサーバ装置1か
ら直接取得するようにしてもよい。
【0060】
そして、ステップS34において、制御部21は、ステップS32の処理が施された点群情報と、地図データに含まれる標示と、のマッチングを行って自己位置の推定をする。具体的には、点群情報と、地図データ側の各セルの統計情報とのマッチングを行って自己位置の推定をする。なお、マッチングの方法としては、NDT(Normal Distributions Transform)等の周知のセルCと点群とのマッチング方法を利用すればよい。即ち、制御部21は、認識部により認識された標示に該当する点群情報(センサ情報)と、地図データと、のマッチングを行うことにより車両の自己位置を推定する推定部として機能する。
【0061】
なお、マッチングは、ライダ3aからリアルタイムに取得した点群情報を地図データと同様にセルで分割して統計情報を生成した上で行ってもよい。
【0062】
以上の説明から明らかなように、ステップS31がセンサ情報取得工程、ステップS32が認識工程、ステップS33が地図データ取得工程、ステップS34が推定工程として機能する。
【0063】
また、上述した説明では、サーバ装置1で地図データを生成していたが、車載装置2で地図データの生成を行ってサーバ装置1へアップロードするようにしてもよい。つまり、
図4や
図9に示したフローチャートは車載装置2で実行される。この場合、サーバ装置1では、各車載装置2からアップロードされた部分的な地図データの結合や更新等の処理を行う。
【0064】
また、上述した説明では、点群等の収集を行う車両と、自己位置推定を行う車両が同じ車両Vであったが、異なる車両であってもよい。例えば、点群等の収集は専用の計測機器を搭載した計測車両が行い、その計測結果を利用して生成された地図データの配信を一般車両が受けて自己位置推定をするといった構成でもよい。
【0065】
また、上述した実施例では、点群を取得するのは車両に搭載されたライダ3aであったが、車両ではなく航空機等の飛翔体にライダを搭載し、上空から地上に向けてレーザ光を照射して得られた点群について上記した二値化処理等を行って地図データを生成してもよい。
【0066】
本実施例によれば、サーバ装置1は、通信部12がライダ3aで検出された点群情報を取得し、制御部11が通信部12で取得された点群情報に基づいて、二値化画像を生成する。そして、二値化画像の路面に描かれた標示の部分を複数のセルCで分割し、複数のセルCのそれぞれに、位置132及び統計情報133を含めて地図データを生成する。このようにすることにより、路面に描かれた標示を地図データに含めることができ、車両Vの自己位置推定の精度を向上させることができる。また、複数のセルCによって路面に描かれた標示を表現するため、複雑な形状の標示について、その輪郭を抽出して図化するといった複雑な処理を必要とせず、また、輪郭を再現する必要が無いので情報量を少なくすることが可能となる。
【0067】
また、制御部11は、点群情報に基づいて統計情報133をセルC毎に設定しているので、例えば、セルC内における点群の分散や反射強度を統計情報として有するようにすれば、そのセルCにおける標示を示すペイントの分布や割合等を把握することが可能となる、つまり、標示の輪郭が含まれるセルCを特定することができる。
【0068】
また、路面に描かれた標示は、区画線を除く標示であってもよい。このようにすることにより、白線等の区画線を除く、右折や左折等を示す進行方向別通行区分や最高速度といった道路標示について地図データに含めることが可能となる。
【0069】
また、本実施例にかかる地図データ構造は、路面に描かれた標示が複数のセルCで分割されて表され、更に複数のセルCのそれぞれには、当該セルCの位置132が設定されており、この地図データ構造を利用する車載装置2は、セルCの位置132によって、路面に描かれた標示を認識して車両Vの自己位置推定処理を行う。このようにすることにより、路面に描かれた標示を地図データに含めることができ、車両Vの自己位置推定の精度を向上させることができる。また、複数のセルCによって標示を表現するため、複雑な形状の標示について、その輪郭を抽出して図化するといった複雑な処理を必要とせず、また、輪郭を再現する必要が無いので情報量を少なくすることが可能となる。
【0070】
また、地図データ構造は、セルC毎に当該セルCについての統計情報を有していている。このようにすることにより、セルC内における点群の座標や反射強度の分散等を統計情報として格納することで、そのセルCにおける標示を示すペイントの分布や割合等を把握することが可能となる、つまり、標示の輪郭が含まれるセルを特定することができる。
【0071】
また、サーバ装置1は、上述した地図データ構造を有する地図データが格納されているので、サーバ装置1から複数の車両に地図データを配信等することができる。
【0072】
また、車載装置2は、路面に描かれた標示が複数のセルCで分割されて表されており、複数のセルCのそれぞれには、当該セルCの位置132が設定されている地図データを、制御部21が取得し、車両走行によってライダ3aから得られた点群情報を取得する。そして、制御部21が取得した点群情報から路面に描かれた標示に該当する点群情報を認識し、認識された路面に描かれた標示に該当する点群情報と、地図データと、のマッチングを行うことにより車両の自己位置を推定する。このようにすることにより、路面に描かれた標示を利用して自己位置推定をすることができ、車両Vの自己位置推定の精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明の第2の実施例にかかる地図データ生成装置を
図12~
図13を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施例は、構成は
図1と同様であるが、地図データ生成方法が異なる。
図12に本実施例にかかる地図データ生成方法のフローチャートを示す。このフローチャートは、サーバ装置1の制御部11で実行される。
【0075】
まず、ステップS41において、制御部11は、車載装置2から点群情報等を取得する。
【0076】
次に、ステップS42において、制御部11は、ステップS41で取得した点群について、各々が有する反射強度情報及び高さ情報(距離情報)に基づいてフィルタリングする。反射強度情報によるフィルタリングにより、再帰性反射材が用いられた反射強度が高い道路標示等の路面に描かれた標示を抽出することができる。また、高さ情報によるフィルタリングにより、標識等の路面以外の反射強度が高い点を排除することができる。
【0077】
次に、ステップS43において、ステップS42の処理が施された点群情報に対して、ステップS14等と同様に一定サイズのセルCにまとめる(セルCを生成する)。このステップの時点で各セルCには点群情報の各点が有する絶対座標に基づいて位置情報が付与されている。
【0078】
そして、ステップS44において、制御部11は、ステップS16等と同様に、各セルCに属性情報としての統計情報を付与する。このようにして統計情報が付与された複数のセルCからなる路面に描かれた標示を地図データに含めることで地図データが生成される。
【0079】
ここで、本実施例も第1の実施例と同様に、セルCに分割する対象から区画線を除いてもよい。区画線を除いてセルCに分割する地図データ生成方法を
図13に示す。
【0080】
まず、ステップS51において、制御部11は、上述したステップS21と同様に、車載装置2から点群情報等を取得する。
【0081】
次に、ステップS52において、制御部11は、上述したステップS22と同様に、ステップS51で取得した点群情報に基づいて二値化画像を生成する。
【0082】
次に、ステップS53において、制御部11は、二値化画像から白線(区画線)を抽出する。
【0083】
次に、ステップS54において、制御部11は、ステップS51で取得した点群情報から白線に対応する点群をフィルタリングする。また、制御部11は、ステップS42と同様に、各々が有する反射強度情報及び高さ情報(距離情報)に基づいてフィルタリングする。
【0084】
次に、ステップS55において、制御部11は、ステップS54の処理が施された点群情報に対して、ステップS43と同様に一定サイズのセルCにまとめる(セルCを生成する)。
【0085】
次に、ステップS56において、制御部11は、ステップS44と同様に、各セルCに属性情報としての統計情報を付与する。このようにして統計情報が付与された複数のセルCからなる路面に描かれた標示及び、ステップS53で点列として表現された白線を地図データに含めることで地図データが生成される。
【0086】
本実施例によれば、サーバ装置1は、通信部12がライダ3aで検出された点群情報を取得し、制御部11が通信部12で取得された点群情報に基づいて、フィルタリングをする。そして、フィルタリングされた点群における路面に描かれた標示の部分を複数のセルCで分割し、複数のセルCのそれぞれに、位置132及び統計情報133を含めて地図データを生成する。このようにすることにより、点群情報から直接路面に描かれた標示をセル化することができる。
【0087】
なお、上述した2つの実施例では、セルCは平面状のものであったが、ボクセルや柱体など、立体で分割してもよい。
【0088】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の地図データ生成装置、地図データ構造及び自己位置推定装置を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 サーバ装置(記憶装置、地図データ生成装置)
2 車載装置(自己位置推定装置)
3a ライダ(センサ)
11 通信部(取得部)
12 制御部(標示情報生成部、地図データ生成部)
13 記憶部(記憶媒体)
21 制御部(地図データ取得部、センサ情報取得部、認識部、推定部)
23 記憶部(記憶媒体)
132 位置(セルの位置に関する情報)
133 統計情報(属性情報)