(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】フットスイッチがワイヤレス接続された医療技術機器
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240730BHJP
A61B 18/20 20060101ALI20240730BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20240730BHJP
A61B 17/22 20060101ALI20240730BHJP
A61N 7/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/20
A61B17/00 700
A61B17/22 510
A61N7/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063369
(22)【出願日】2023-04-10
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516236908
【氏名又は名称】オリンパス・ヴィンター・ウント・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルター,ミヒャエル
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-000295(JP,A)
【文献】特開2005-323734(JP,A)
【文献】特開2012-005136(JP,A)
【文献】特開2021-137558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/00
A61F 2/01
A61N 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療技術機器(10)と、フットスイッチ(20)と、を備えるシステム(1)であって、前記医療技術機器(10)は、前記フットスイッチ(20)を介して制御可能であり、
前記フットスイッチ(20)から前記医療技術機器(10)へ、一義的に割り当て可能な制御用の信号をワイヤレスで送信するために、前記フットスイッチ(20)は送信機を備え、前記医療技術機器(10)は受信機を備え、
前記医療技術機器(10)の前記受信機は、前記フットスイッチ(20)からの信号の信号強度を測定するように設計されており、
前記医療技術機器(10)は、前記医療技術機器(10)の前記受信機で測定された信号強度または信号対雑音比が予め定義された閾値を下回った場合に警告を発するように設計されて
おり、
前記フットスイッチ(20)の前記送信機および前記医療技術機器(10)の前記受信機は、それぞれ、前記フットスイッチ(20)と前記医療技術機器(10)との間の双方向通信のための送信機及および受信機を含むトランシーバ(15、21)の一部であり、
前記フットスイッチ(20)の前記トランシーバ(21)は、前記医療技術機器(10)からの信号の信号強度を測定するように設計されており、
前記フットスイッチ(20)は、前記フットスイッチ(20)の前記トランシーバ(21)で測定された信号強度又は信号対雑音比が予め定められた閾値を下回る場合に警告を発するように設計されている、システム。
【請求項2】
前記フットスイッチ(20)の前記トランシーバ(21)及び/又は前記医療技術機器(10)の前記トランシーバ(15)は、前記医療技術機器(10)の前記トランシーバ(15)又は前記フットスイッチ(20)の前記トランシーバ(21)から受信したping信号に応じて信号を送信するように設計されており、それに基づいて、前記医療技術機器(10)又は前記フットスイッチ(20)の前記受信機は信号強度を決定することができる、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記フットスイッチ(20)及び/又は前記医療技術機器(10)は、前記医療技術機器の必要な制御とは別に信号を定期的に送信するように設計されており、その信号に基づいて、前記医療技術機器(10)又は前記フットスイッチ(20)の前記受信機が信号強度及び/又は信号対雑音比を決定することができる、請求項1
または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記フットスイッチ(20)及び/又は前記医療技術機器(10)は、警告を発するための視覚警告要素及び/又は可聴警告要素(14、22)を有する、請求項1
または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記フットスイッチ(20)及び/又は前記医療技術機器(10)は、信号強度を表示するための視覚的インジケータ(13)を有する、請求項1
または2に記載のシステム。
【請求項6】
前記フットスイッチ(20)は、ワイヤレス動作のためのエネルギー貯蔵
部を備える、請求項1
または2に記載のシステム。
【請求項7】
前記フットスイッチ(20)および前記医療技術機器(10)は、Bluetooth
(登録商標)規格に従って通信するように設計されている、請求項1
または2に記載のシステム。
【請求項8】
制御対象の前記医療技術機器(10)が、特に内視鏡用の高周波発生器、超音波発生器及び/又はレーザシステムである、請求項1
または2のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項9】
前記フットスイッチ(20)は、前記エネルギー貯蔵部としてバッテリーを備える、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットスイッチを介して制御可能な医療技術機器と、フットスイッチとを備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
フットスイッチは、医療技術分野において、医療技術機器を制御するために一般的に使用されている。フットスイッチを使用すると、例えば、手で誘導する(ハンドガイドの)器具の作動状態を、ガイドする手自体、あるいはその指1本さえも動かさずに制御することができる。したがって、医療スタッフは、手で器具の誘導にのみ集中することができ、それとは別に器具の作動状態を足で制御することができる。作動状態は、ハンドガイド器具の特定の機能の起動および停止に限定される必要はなく、無段階の調整も可能である。対応するフットコントロールを有する医療技術機器の例としては、ドリルなどの歯科用器具、高周波手術用の高周波(HF)発生器、超音波メス用の超音波発生器、および/またはレーザシステムが挙げられる。
【0003】
フットスイッチは、制御対象となる医療技術機器にケーブルで接続され得る。しかし、手術室などで医療スタッフの動きの自由を制限したり妨げたりしないように、制御対象の医療機器にワイヤレスで制御信号を送信するフットスイッチも知られている。この場合、制御信号の適切な受信機を医療機器に直接組み込むか、または、信号出力部に適切な外部受信機を設けて、これに例えばケーブル接続されたフットスイッチを接続することもできる。
【発明の概要】
【0004】
フットスイッチで制御可能な医療機器をトラブルなく使用することを確実にするためには、制御信号をワイヤレス送信する場合、医療技術機器で受信される制御信号の信号強度が十分に高く、制御信号を明確に識別して実行できることが必要である。
【0005】
例えば、外科手術または手術室で医療技術機器が使用される場合、様々な干渉源がフットスイッチと対応する(assigned)医療技術機器との間の制御信号のワイヤレス送信に影響を与える可能性があることが証拠によって示されている。このような干渉源は、フットスイッチを介した医療技術機器の正しい動作を制限したり、完全に妨げたりする。
【0006】
考えられる干渉源は、無線信号を送信する他の機器である。このような機器は、同じ周波数で送信するため制御信号が重なるか、少なくともノイズの増加を引き起こし、ノイズから制御信号を十分に識別できなくする。また、金属製であることが多い移動式器具台や、回転式の技術機器も、フットスイッチと対応する医療機器との間の無線経路を妨害する可能性がある。
【0007】
特に、医療技術機器の本質的な使用中に、例えば器具台の移動や他の技術機器の作動によって発生する干渉は、重大なものとなり得る。また、このような状況(患者の治療中であることが多い)では、広範なトラブルシューティングを行うことは通常不可能である。
【0008】
本発明の目的は、フットスイッチを介して制御可能な医療技術機器と、フットスイッチと、を備え、先行技術から知られる問題点が少なくとも緩和されたシステムを提供することである。
【0009】
この目的は、主請求項に記載されたシステムによって達成される。有利な開発は、従属請求項の主題を構成する。
【0010】
したがって、本発明は、フットスイッチを介して制御可能な医療技術機器と、フットスイッチと、を備えるシステムに関する。フットスイッチから医療技術機器への一義的に割り当て可能な(unambiguously assignable)制御用の信号のワイヤレス送信のために、フットスイッチは送信機を備え、医療技術機器は受信機を備える。医療技術機器の受信機は、フットスイッチからの信号の信号強度を測定するように設計され、医療技術機器は、測定された信号強度または信号対雑音比が予め定義された閾値を下回る場合に警告を出力するように設計されている。
【0011】
本発明では、フットスイッチまたはその送信機によって送信される信号の信号強度を監視することによって、少なくとも医療技術機器において、医療技術機器の使用中に突然発生し、フットスイッチと医療技術機器との間の無線リンクに影響を及ぼす干渉を、直ちにそのようなものであると識別できるようになり得ると認識した。さらに、対応する警告が発せられることにより、例えば、器具台の移動または特定の装置の作動などの干渉源を即座に決定することができる場合が多い。この後、例えば、干渉のない動作に十分な信号強度まで干渉を低減するために、器具台、問題の装置、またはフットスイッチを移動させるなどの適切な対応を行うことができる。
【0012】
本発明によって、外部環境に関係なくフットスイッチと医療技術機器との間の完全に干渉のない通信が確保できなくても、本発明によるシステムでは、通信に影響を与える干渉が発生すると直ちに警告が発せられる。これにより、干渉源を排除するなどの即時介入が可能になるので、医療技術機器のユーザにとって突然発生し、即座に理解できないような障害を防止することができる。このタイプの障害は、医療技術機器および手術室や治療室での医療技術機器の通常の使用の場合、非常に好ましくなく、患者の健康に重大な影響を及ぼすことさえある。
【0013】
実際の信号強度の決定および予め定義された閾値との比較を行う代わりに、またはそれに加えて、フットスイッチからの信号の信号対雑音比を監視することもできる。信号対雑音比は、有用な信号(ここではフットスイッチからの信号)がバックグラウンドノイズからどれだけ明確に区別できるかを示し、信号から情報を確実に抽出する能力に直接影響を与える。デジタル信号の場合、信号対雑音比とエラーレート(エラー率)との間には関連性(相関関係)があることが多い。
【0014】
フットスイッチの送信機と医療技術機器の受信機は、それぞれ、フットスイッチと医療技術機器との間の双方向通信のための送信機と受信機とを含むトランシーバの一部であると好ましい。これにより、フットスイッチと医療技術機器との間の双方向通信が可能になり、この双方向通信を使用して、例えば、フットスイッチと医療技術機器とを結合する、すなわち、フットスイッチからの信号のみが当該医療技術機器によってのみ処理されるように、フットスイッチと医療技術機器との間に論理的なリンクを確立することができる。
【0015】
トランシーバがフットスイッチと医療技術機器との両方に設けられている場合、フットスイッチのトランシーバを使用して医療技術機器からの信号の信号強度を測定し、測定された信号強度または信号対雑音比が所定の閾値を下回った場合に、フットスイッチを使用して警告を発することが好ましい。このように、信号強度および/または信号対雑音比のチェック、ひいてはフットスイッチと医療機器との間の干渉のない通信のチェックを冗長に行うことができるので、この通信に影響を及ぼす干渉に対して直ちに警告する確実性を高めることができる。したがって、2つのトランシーバのうちの1つの不具合も、通信に影響を及ぼす可能性のある干渉として識別することができる。このような場合、例えば、2つの装置のうち1つだけが実際に警告を発する。
【0016】
フットスイッチのトランシーバおよび/または医療技術機器のトランシーバが、医療技術機器のトランシーバまたはフットスイッチのトランシーバから受信したping信号に応答して信号を送信するように設計されており、その信号に基づいて医療技術機器の受信機またはフットスイッチの受信機が信号強度を決定することができると、有利である。「ping信号」は、通信相手からの応答受信を目的として送信される信号であり、通常は特定の内容を持たず、本発明に従って信号強度および/または信号対雑音比の測定を可能にするだけの信号である。また、ping信号に対する応答から、例えば信号の往復遅延時間などの更なる情報を決定することも当然可能である。
【0017】
代替的または追加的に、フットスイッチおよび/または医療技術機器が、医療技術機器の必要な制御とは別に(独立して)信号を定期的に送信するように設計されており、その信号に基づいて医療技術機器の受信機またはフットスイッチの受信機が信号強度を決定することができると、さらに好ましい。
【0018】
上述のいずれの変形例でも、例えばフットスイッチの非作動などにより、実際の制御信号を送信する必要がない場合でも、フットスイッチと医療技術機器との間で信号の交換を確実に行うことができる。Ping信号を用いた上記変形例では、Ping信号に応答するだけでよい1つの機器の電子装置(electronics)は、非常にシンプルなものとして設計され得ることが多く、これは特にフットスイッチに適している。上記の定期的な信号の送信は、特に堅牢であることが確認されている。
【0019】
フットスイッチおよび/または医療技術機器は、警告を発するための視覚警告要素および可聴警告要素を有することができる。特に、フットスイッチには可聴警告要素が好ましい。一方、医療技術機器は、視覚警告要素および可聴警告要素の両方を有することが好ましい。視覚警告要素は、例えば、警告灯または警告LEDであり得る。可聴警告要素は、トーンジェネレータ(音源)であり得る。
【0020】
代替的または付加的に、フットスイッチおよび/または医療技術機器が、信号強度を表示するための視覚的インジケータを有していると、好ましい。視覚的インジケータは、例えば、携帯電話で知られているタイプのバーディスプレイとして設計され得る。対応するインジケータによって、実際に干渉が発生して警告が表示される前に、フットスイッチと医療技術機器との間の通信における問題を明確に示すことができる。
【0021】
フットスイッチは、完全ワイヤレス動作のために、エネルギー貯蔵部、好ましくはバッテリーを備えることができる。
【0022】
フットスイッチと医療技術機器とは、好ましくは、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)規格に従って通信を行うように設計される。
【0023】
制御対象の医療技術機器は、例えば、特に内視鏡用の高周波発生器(HF generator)、超音波発生器、および/またはレーザシステムであり得る。
【0024】
次に、添付の図面を参照して、有利な実施形態に基づいて本発明を例示的にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるシステムの第1の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明によるシステム1の第1の例示的な実施形態を示す。システム1は、ワイヤレスで相互接続される医療技術機器10とフットスイッチ20とを備える。
【0027】
医療技術機器10は、高周波(HF)発生器である。高周波発生器の端子11には、例えば低侵襲手術の場合でも、電気メス(図示せず)を接続することができる。高周波発生器の設定は、タッチセンサ式ディスプレイ12から読み取り可能であるが、タッチセンサ式ディスプレイ12上で設定を行うことも可能である。
【0028】
バーディスプレイ13と、可聴警告要素14としてのトーンジェネレータとが、ディスプレイ12と共に設けられている。医療技術機器10の内部には、同様に内部アンテナ16を有するトランシーバ15が設けられている。トランシーバ15は、送信機と受信機とを備え、Bluetooth規格に従って信号の送受信を行うように設計されている。
【0029】
フットスイッチ20は、電池駆動であり、同様に、医療技術機器10のトランシーバ15と同じBluetooth規格に従って信号を送受信するように設計されたトランシーバ21を有している。さらに、フットスイッチ20は、可聴警告要素22としてのトーンジェネレータも有している。
【0030】
医療技術機器10のトランシーバ15とフットスイッチ20のトランシーバ21との両方は、互いに通信するように設計されている。特に、これら2つのトランシーバ15、21の間でフットスイッチ20の作動を介して信号が送信されるので、フットスイッチ20の設定に従って医療技術機器10が制御される。
【0031】
両方のトランシーバ15、21は、さらに、それらの間で交換される信号の信号強度及び信号対雑音比を決定するように設計されている。医療技術機器のトランシーバ15によって決定された信号強度は、バーディスプレイ13を介して直接表示される。
【0032】
さらに、医療技術機器10のトランシーバ15とフットスイッチ20のトランシーバ21との両方が、決定された信号強度および決定された信号対雑音比を、予め定義されたそれぞれの閾値と比較する。閾値を下回る場合、これは、2つのトランシーバ15、21の間の接続が中断または不良であることを示し、それぞれのトーンジェネレータ14、22を介して可聴警告が発される。さらに、医療技術機器10のバーディスプレイ13は、通常の色とは異なる色で点灯及び/又は点滅することができる。
【0033】
フットスイッチ20のトランシーバ21が信号強度又は信号対雑音比の関連する決定及びチェックを定期的に実行できるようにするために、医療技術機器10のトランシーバ15は、フットスイッチ20に一定間隔で信号を送信し、当該信号はフットスイッチ20のトランシーバ21によって受信され、適切に処理される。
【0034】
医療技術機器10のトランシーバ15が定期的に送信するこれらの信号は、フットスイッチ20による信号強度または信号対雑音比のチェックと同時に、フットスイッチ20のトランシーバ21に対して、代わりに信号を起動するフットスイッチの作動があるかどうかにかかわらず、同様に信号を送信するように求めるping信号である。このようにして、医療技術機器10のトランシーバ15は、信号強度および信号対雑音比を定期的にチェックすることもでき、説明したように、2つの値のうちの一方が予め定義されたそれぞれの閾値よりも低くなるとすぐに警告を発することができる。
【0035】
上記信号は、同様に、特に、使用されるBluetooth規格で提供されるping信号である。