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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/03 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H05K5/03 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023123536
(22)【出願日】2023-07-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀越 正太
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-202247(JP,A)
【文献】特開2014-116305(JP,A)
【文献】特開2019-125371(JP,A)
【文献】特開2015-185787(JP,A)
【文献】特開2002-056830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
互いに略平行する第1縁部及び第2縁部を有して略矩形のプレート状に形成された第1筐体部材と、前記第1筐体部材が着脱可能に連結される第2筐体部材と、を有する筐体と、
前記筐体内に収容されたバッテリーと、
前記第1筐体部材の前記第1縁部に沿って複数設けられ、該第1縁部を前記第2筐体部材に締結するねじと、
前記第1筐体部材の前記第2縁部の長手方向で一方の端部に設けられ、該第2縁部の外側を向いて突出した第1係合片と、
前記第1筐体部材の前記第2縁部の長手方向で他方の端部に設けられ、該第2縁部の外側を向いて突出した第2係合片と、
前記第2筐体部材に設けられ、前記第1係合片が係脱される第1受け部、及び前記第2係合片が係脱される第2受け部と、
を備え、
前記バッテリーは、前記筐体内で前記第1縁部側よりも前記第2縁部側に寄った位置に配置され、
前記第1係合片の端面及び前記第1受け部の端面は、それぞれ前記一方の端部側から前記他方の端部側に向かう第1方向に向かって、次第に前記第1縁部側から前記第2縁部側へと傾斜する第1傾斜面を有し、
前記第2係合片の端面及び前記第2受け部の端面は、それぞれ前記第1方向に向かって、次第に前記第2縁部側から前記第1縁部側へと傾斜する第2傾斜面を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面は、前記第2縁部の長手方向に直交する面に対して対称形状を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記第1係合片及び前記第2係合片は、それぞれ前記第2縁部の長手方向を基準として前記バッテリーの端部からはみ出した位置に配置されることで、該長手方向と直交する方向に対して前記バッテリーとオーバーラップしない位置にある
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器であって、
前記第1筐体部材の前記第2縁部の長手方向で前記一方の端部と前記他方の端部との間の位置に設けられ、該第2縁部の外側を向いて突出した第3係合片と、
前記第2筐体部材に設けられ、前記第3係合片が係脱される第3受け部と、
をさらに備え、
前記第3係合片は、前記第2縁部の長手方向を基準として前記バッテリーの端部からはみ出さない位置に配置されることで、該長手方向と直交する方向に対して前記バッテリーとオーバーラップした位置にあり、
前記第3係合片の端面及び前記第3受け部の端面は、それぞれ前記第2縁部の長手方向に沿う平面である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記第1筐体部材は、前記第1縁部及び第2縁部と略直交し、互いに略平行する第3縁部及び第4縁部をさらに有し、
さらに、
前記第1筐体部材の前記第3縁部及び前記第4縁部の長手方向での中間部にそれぞれ設けられた第1吸着体と、
前記第2筐体部材に設けられ、前記第1吸着体と吸着可能な第2吸着体と、
を備え、
前記第1吸着体及び前記第2吸着体は、一方が磁石であり、他方が磁石又は磁性体である
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体にバッテリーを収容した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCやタブレット型PC等の電子機器は、通常、2つの筐体部材を重ねて連結することで扁平な箱状に構成された筐体と、筐体内に収容されたバッテリーとを備える(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6212322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状、上記したバッテリーには、薄型化と大容量の両立が可能なリチウムイオン電池や、薄いフィルムパッケージでセルを包むことでさらなる薄型化を図ったリチウムポリマー電池等が用いられる。これらのバッテリーは、稀ではあるが製造不良等によって使用時に体積が400~500%以上にも膨張する場合がある。このような不良を生じたバッテリーは交換が必要となるが、膨張時に筐体部材を塑性変形させたり、クラック等の破損を生じさせたりする懸念がある。そうすると、バッテリー交換だけでなく筐体の交換も必要となり、メンテナンスのコストや手間が増大する。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、バッテリー不良を生じた場合であっても筐体部材の破損を抑制することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電子機器は、互いに略平行する第1縁部及び第2縁部を有して略矩形のプレート状に形成された第1筐体部材と、前記第1筐体部材が着脱可能に連結される第2筐体部材と、を有する筐体と、前記筐体内に収容されたバッテリーと、前記第1筐体部材の前記第1縁部に沿って複数設けられ、該第1縁部を前記第2筐体部材に締結するねじと、前記第1筐体部材の前記第2縁部の長手方向で一方の端部に設けられ、該第2縁部の外側を向いて突出した第1係合片と、前記第1筐体部材の前記第2縁部の長手方向で他方の端部に設けられ、該第2縁部の外側を向いて突出した第2係合片と、前記第2筐体部材に設けられ、前記第1係合片が係脱される第1受け部、及び前記第2係合片が係脱される第2受け部と、を備え、前記バッテリーは、前記筐体内で前記第1縁部側よりも前記第2縁部側に寄った位置に配置され、前記第1係合片の端面及び前記第1受け部の端面は、それぞれ前記一方の端部側から前記他方の端部側に向かう第1方向に向かって、次第に前記第1縁部側から前記第2縁部側へと傾斜する第1傾斜面を有し、前記第2係合片の端面及び前記第2受け部の端面は、それぞれ前記第1方向に向かって、次第に前記第2縁部側から前記第1縁部側へと傾斜する第2傾斜面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、バッテリー不良を生じた場合であっても筐体部材の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器の平面図である。
図2図2は、筐体の底面図である。
図3A図3Aは、図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。
図3B図3Bは、図3Aに示すバッテリーが膨張した状態を示す断面図である。
図4図4は、係合片及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図5図5は、受け部及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図6A図6Aは、係合片を受け部に係合させる直前の状態を模式的に示す底面図である。
図6B図6Bは、図6Aに示す係合片を受け部に係合させた状態を示す底面図である。
図7図7は、第1~第3係合部の係合状態を模式的に示す説明図である。
図8図8は、第1係合部の係合片が斜め方向に移動した際の受け部との係合状態の変化を示す説明図である。
図9図9は、図8に示す第1係合部の比較例に係る係合部の係合片が斜め方向に移動した際の受け部との係合状態の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の平面図である。本実施形態ではノート型PCである電子機器10を例示するが、本発明を適用可能な電子機器はノート型PC以外、例えばタブレット型PC、スマートフォン又は携帯用ゲーム機等であってもよい。図1に示すように、電子機器10は、筐体12と蓋体14とをヒンジ16によって相対的に回動可能に連結した構成である。図1は、筐体12から蓋体14を開いた状態(使用態様)を示している。
【0011】
蓋体14は、扁平な箱状を成している。蓋体14の正面にはディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機ELや液晶である。筐体12の後縁部に対してヒンジ16で連結されている。図1では左右一対のヒンジ16で蓋体14を筐体12に連結した構成を例示している。ヒンジ16はX方向に延在する長尺な構成、いわゆるワンバーヒンジ等で構成されてもよい。
【0012】
以下では筐体12について、図1に示す使用態様においてディスプレイ18を見ながらキーボード20を操作するユーザから見た方向で、左右の幅方向をX1,X2方向、前後の奥行方向をY1,Y2方向、上下の厚み方向をZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向は、まとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向、Z1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶこともある。
【0013】
筐体12は第1筐体部材22と第2筐体部材23とを連結した構造である。筐体12は扁平な箱状を成している。キーボード20は、第2筐体部材23に固定され、筐体12の表面12aを臨んでいる。筐体12の表面12aには、キーボード20の前側にタッチパッド24が設けられている。筐体12の内部には、CPU及びメモリ等を実装したマザーボード26等の電子部品の他、CPU等を冷却するための冷却モジュール27も収容されている。
【0014】
さらに筐体12の内部には、電子機器10の電源となるバッテリー28が収容されている。バッテリー28は、例えばリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池である。本実施形態ではリチウムポリマー電池を用いている。バッテリー28は、例えば全体としてX方向に長く、Y方向に短い略矩形のプレート形状を有する。バッテリー28は筐体12内において、Y方向の中央からY1側に寄った位置に配置される。このためバッテリー28は、筐体12の縁部22d及び立壁23dに近い位置でX方向に延在している。マザーボード26はバッテリー28のY2側に並ぶように配置され、X方向に延在している。
【0015】
次に、筐体12の具体的な構成例を説明する。
【0016】
図2は、筐体12の底面図である。図3Aは、図2中のIII-III線に沿う模式的な断面図である。図3Bは、図3Aに示すバッテリー28が膨張した状態を示す断面図である。図1図3Aに示すように、第1筐体部材22は略矩形のプレート状に形成されている。第2筐体部材23は略矩形のバスタブ状に形成されている。筐体部材22,23は、マグネシウム若しくはアルミニウム等の金属材料、ABS樹脂若しくはガラス繊維強化プラスチック等の樹脂材料、又は、炭素繊維強化プラスチック等のカーボン材料等で形成することができる。
【0017】
第1筐体部材22は筐体12の底面12bを形成する。第1筐体部材22は、Y方向に沿って延在し、互いに略平行する一対の縁部22a,22bと、X方向に沿って延在し、互いに略平行する一対の縁部22c,22dとを有する。第2筐体部材23は、筐体12の四周側面を形成する立壁23a~23dを四周縁部に有し、底面12b側が開口している。立壁23a~23dは、それぞれ縁部22a~22dと密接する。第1筐体部材22は、第2筐体部材23の底面12b側の開口を塞ぐカバー部材となる。筐体12のY2側の側面を形成する立壁23cは、左右両端付近にそれぞれ凹状部16aを有する。凹状部16aは、ヒンジ16の設置スペースである。
【0018】
なお、縁部22a,22b及び縁部22c,22dがそれぞれ略平行するとは、各縁部22a~22dが完全な直線で形成されて互いに完全に平行している場合は勿論、各縁部22a~22dが多少のカーブや凹凸を有して完全には平行していない場合も含む概念である。そこで、このような縁部22a~22dで四周が形成された第1筐体部材22の外形についても、真四角及び多少歪んだ四角を含む概念として略矩形と呼んでいる。
【0019】
図2中の参照符号30は、底面12bの適宜位置に固着されたゴム脚である。図2中の参照符号27aは、冷却モジュール27のための吸気口であり、例えば底面12bに開口形成された複数のスリットで形成されている。
【0020】
図2に示すように、第1筐体部材22は、締結部32と、第1係合部34と、第2係合部35と、第3係合部36と、吸着部38と、補助係合部40とを用いて第2筐体部材23に着脱可能に連結される。
【0021】
図2及び図3Aに示すように、締結部32は、ねじ42と、ねじ42を螺合するねじ穴43とで構成されている。締結部32は、第1筐体部材22の縁部22cの長手方向(X方向)に沿って例えば3箇所に設けられる。締結部32は、縁部22cの長手方向で一方(X1側)の端部と、他方(X2側)の端部と、これら両端部の中間部とを第2筐体部材23に対して締結する。締結部32の配置や設置数は適宜変更可能である。
【0022】
ねじ42は、例えば第1筐体部材22の内面22eからZ1方向に突出するボス部42aにZ1方向に向かって挿通される。ねじ穴43は、例えば第2筐体部材23の内面23eからZ2方向に突出するボス部43aの内周面に形成される。これにより締結部32は第1筐体部材22の縁部22cを第2筐体部材23に対して強固に固定することができる。
【0023】
図2及び図3Aに示すように、第1係合部34は、係合片(第1係合片)44と、受け部(第1受け部)45とで構成されている。第1係合部34は、第1筐体部材22の縁部22dを第2筐体部材23に対して連結するフック状のラッチ式係合部である。第1係合部34は、縁部22dの長手方向で一方(X1側)の端部22d1の内面22eに設けられている。つまり第1係合部34は第1筐体部材22のX1側端部とY1側端部との角部近傍に位置している。
【0024】
図4は、係合片44及びその周辺部を拡大した斜視図である。図5は、受け部45及びその周辺部を拡大した斜視図である。図6Aは、係合片44を受け部45に係合させる直前の状態を模式的に示す底面図である。図6Bは、図6Aに示す係合片44を受け部45に係合させた状態を示す底面図である。図7は、第1~第3係合部34~36の係合状態を模式的に示す説明図である。図7は、係合片44,46,48以外の第1筐体部材22の図示を省略した状態で筐体12を底面12b側から見た模式図である。
【0025】
図4図6A及び図7に示すように、係合片44は、縁部22dの一方(X1側)の端部22d1の内面22eに設けられ、縁部22dの外側(Y1側)を向いて突出したフック形状部である。係合片44は、突出片44aと、爪部44bと、傾斜面44cとを有する。
【0026】
突出片44aは、第1筐体部材22の内面22eからZ1方向に突出した板片である。爪部44bは、突出片44aの先端から屈曲してY1方向に突出している。
【0027】
傾斜面44cは、図4中にドットパターンで明示したように、爪部44bの先端面(Y1側端面)の一部をカットした構成を有する。傾斜面44cは、Z方向に沿う鉛直面であると共に、X2方向に向かって次第にY2側からY1側へと傾斜している。つまり筐体12の平面視において、傾斜面44cは、縁部22dの一方の端部22d1側から他方の端部22d2側に向かうX2方向(第1方向)に向かって、次第に縁部22c側から縁部22d側へと傾斜している。爪部44bは、このような傾斜面44cを先端に有する。これにより係合片44は、X2方向とY2方向との中間にある斜め方向(X2・Y2方向)に水平移動した際、受け部45との係合状態が解除され易くなっている。
【0028】
図5図6A及び図7に示すように、受け部45は、縁部22dに対応する第2筐体部材23の立壁23dの内壁面に形成され、フック状の係合片44が係脱される部分である。受け部45は、受け面45aと、傾斜面45bとを有する。
【0029】
立壁23dは内壁面からY2方向に突出する板片45cが形成されている。受け面45aは板片45cのZ1側表面である。受け面45aは、係合片44の爪部44bのZ2側表面をZ方向に係止する係止面として機能する。本実施形態の受け部45は、立壁23dの内壁面にY1側に窪んだ凹部45dを形成し、これにより板片45c及び受け面45aを内壁面から突出させている。受け部45は、凹部45dを設けず、立壁23dの内壁面から板片45cを突出させて形成してもよい。
【0030】
傾斜面45bは、図5中にドットパターンで明示したように、受け部45(板片45c)の先端面(Y2側端面)の一部をカットした構成を有する。傾斜面45bは、Z方向に沿う鉛直面であると共に、X2方向に向かって次第にY2側からY1側へと傾斜している。つまり筐体12の平面視において第1筐体部材22での各部の方向を基準にすると、傾斜面45bは、縁部22dの一方の端部22d1側から他方の端部22d2側に向かうX2方向(第1方向)に向かって、次第に縁部22c側から縁部22d側へと傾斜している。受け部45は、このような傾斜面45bを先端に有する。これにより受け面45aは、係合片44がX2・Y2方向に水平移動した際、爪部44bとの係合状態が解除され易くなっている。
【0031】
図2及び図3Aに示すように、第2係合部35は、係合片(第2係合片)46と、受け部(第2受け部)47とで構成されている。第2係合部35は、第1筐体部材22の縁部22dを第2筐体部材23に対して連結するフック状のラッチ式係合部である。第2係合部35は、縁部22dの長手方向で他方(X2側)の端部22d2の内面22eに設けられている。つまり第2係合部35は第1筐体部材22のX2側端部とY1側端部との角部近傍に位置している。
【0032】
本実施形態の第2係合部35は、縁部22dの長手方向に直交する面(YZ平面)に対して対称形状を有する(図2及び図7参照)。そこで、係合片46及び受け部47の各構成要素については、上記した第1係合部34を構成する係合片44及び受け部45の各構成要素と同一の参照符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0033】
すなわち係合片46についても、突出片44a、爪部44b、及び傾斜面44cを有する。係合片46の傾斜面44cは、Z方向に沿う鉛直面であると共に、X1方向に向かって次第にY2側からY1側へと傾斜している。つまり筐体12の平面視において、係合片46の傾斜面44cは、縁部22dの一方の端部22d1側から他方の端部22d2側に向かうX2方向(第1方向)に向かって、次第に縁部22d側から縁部22c側へと傾斜している。同様に受け部47についても、受け面45a及び傾斜面45bを有する。受け部47の傾斜面45bは、Z方向に沿う鉛直面であると共に、X1方向に向かって次第にY2側からY1側へと傾斜している。つまり筐体12の平面視において第1筐体部材22での各部の方向を基準にすると、受け部47の傾斜面45bは、縁部22dの一方の端部22d1側から他方の端部22d2側に向かうX2方向(第1方向)に向かって、次第に縁部22d側から縁部22c側へと傾斜している。
【0034】
このように第2係合部35も係合片46及び受け部47の先端に傾斜面44c,45bを有する。これにより第2係合部35は、係合片46が平面視でX1方向とY2方向との中間にある斜め方向(X1・Y2方向)に水平移動した際、受け部47との係合状態が解除され易くなっている。
【0035】
図2及び図3Aに示すように、第3係合部36は、係合片(第3係合片)48と、受け部(第3受け部)49とで構成されている。第3係合部36は、第1筐体部材22の縁部22dを第2筐体部材23に対して連結するフック状のラッチ式係合部である。第3係合部36は、縁部22dの長手方向で端部22d1,22d2間の内面22eに設けられている。本実施形態の第3係合部36は、縁部22dに沿って並ぶように一対設けられている。第3係合部36は1又は3以上設けてもよい。
【0036】
係合片48は、図4に示す係合片44に傾斜面44cを設けていない構成である。すなわち係合片48は、係合片44と同様な突出片44a及び爪部44bを有する。但し、係合片48の爪部44bは先端面がカットされていない。このため係合片48のY1側端面には、Z方向に沿う鉛直面であると共に縁部22dの長手方向(X方向)に沿う平面48aが設けられている(図7参照)。
【0037】
受け部49は、図5に示す受け部45に傾斜面45bを設けていない構成である。すなわち受け部49は、受け部45と同様な受け面45a及び板片45cを有する。但し、受け部49の板片45cは先端面がカットされていない。このため受け部49のY2側端面には、Z方向に沿う鉛直面であると共に縁部22d及び立壁23dの長手方向(X方向)に沿う平面49aが設けられている(図7参照)。
【0038】
図2及び図3Aに示すように、吸着部38は、互いに吸着可能な第1吸着体38a及び第2吸着体38bで構成されている。吸着部38は、第1筐体部材22の左右の縁部22a,22bをそれぞれ第2筐体部材23に対して磁力で固定するものである。吸着体38a,38bは、一方を磁石で構成し、他方を一方の磁石と吸着可能な磁石又はスチール等の磁性体で構成することができる。本実施形態の吸着体38a,38bはいずれも磁石である。
【0039】
第1吸着体38aは、第1筐体部材22の左右の縁部22a,22bの長手方向(Y方向)での中間部の内面22eに固定されている。第2吸着体38bは、第1吸着体38aとZ方向にオーバーラップする位置で第2筐体部材23の内面23eに固定されている。吸着部38は、このように締結部32及び係合部34~36が設けらない縁部22a,22bの中間部、つまりY方向での中央付近に設けられ、筐体部材22,23間のがたつきや隙間の発生を抑制するものである。例えば第1筐体部材22が十分な剛性を有する場合等には吸着部38は省略してもよい。
【0040】
図2及び図3Aに示すように、補助係合部40は、弾性係合片50と、受け部51とで構成されている。補助係合部40は、第1筐体部材22の左右の縁部22a,22bを第2筐体部材23に対して連結するフック状のラッチ式係合部である。補助係合部40は、縁部22a,22bの長手方向(Y方向)での中間部の内面22eに設けられ、吸着部38と隣接している。
【0041】
弾性係合片50は、内面22eからZ1方向に突出した突出片の先端から縁部22a,22bの外側を向いて突出した爪部を有する。縁部22aの弾性係合片50は爪部がX1方向に突出している。縁部22bの弾性係合片50は爪部がX2方向に突出している。受け部51は、縁部22a,22bに対応する第2筐体部材23の立壁23a,23bの内壁面に形成され、弾性係合片50の爪部が係脱される部分である。弾性係合片50は、上記した係合片44,46,48よりも相当に小型のフック形状部である。弾性係合片50の突出片はX方向に対して弾性変形可能である。こおため弾性係合片50は受け部51に対してZ方向に沿って容易に係脱可能である。
【0042】
補助係合部40は、吸着部38と同様に縁部22a,22bの中間部に設けられ、筐体部材22,23間のがたつきや隙間の発生を抑制するものである。例えば第1筐体部材22が十分な剛性を有する場合等には補助係合部40は省略してもよい。
【0043】
ところで、本実施形態の電子機器10において、例えばリチウムポリマー電池で構成されたバッテリー28は、稀ではあるが製造不良等によって使用時に体積が400~500%以上に膨張する、いわゆるSwell現象を生じる場合がある(図3B参照)。図2及び図7では、バッテリー28の膨張部28aを1点鎖線で囲んで模式的に図示している。このような不良を生じたバッテリー28は交換が必要となる。ところが、バッテリー28が膨張すると第1筐体部材22を内側から押圧するため、第1筐体部材22の破損が問題となる。そこで当該電子機器10は、特に上記の係合部34,35を備えることで、バッテリー28の膨張時に第1筐体部材22の破損を抑制しつつ、円滑に第2筐体部材23から取り外してバッテリー28を交換することを可能としている。
【0044】
次に、バッテリー28が膨張した際の筐体12の動作及び作用効果を説明する。
【0045】
図2及び図3Aに示すように、筐体12は、筐体部材22,23が連結された状態では、締結部32でねじ42がねじ穴43に締め付けられ、吸着部38で吸着体38a,38bが吸着固定され、補助係合部40で弾性係合片50が受け部51に係合している。さらに、図2図3A図6B、及び図7中に実線で描いた係合片44,46,48で示すように、各係合部34~36の係合片44,46,48がそれぞれ受け部45,47,49に係合している。その結果、第1筐体部材22は第2筐体部材23に対してがたつきなく強固に連結されている。
【0046】
この状態で、バッテリー28が不良等によって膨張すると、図3Bに示すように膨張部28aが第1筐体部材22の内面22eをZ2方向に押し上げる(図3B中の矢印A参照)。バッテリー28は、筐体12内でY1側に寄った位置にある(図2も参照)。このため膨張部28aは、第1筐体部材22のX方向で中央付近であって、且つ、Y2側の縁部22cよりもY1側の縁部22dに近い位置で内面22eを押し上げる。そうすると、図7中に4つの矢印で示すように、第1筐体部材22は、膨張部28aとZ方向にオーバーラップする部分を屋根の頂上として、ドーム状或いはテント状に膨らむように弾性変形する。その結果、第1筐体部材22は、縁部22cがY2方向に移動しつつ、端部22d1及びその周辺はX2側にも移動し、端部22d2及びその周辺はX1側にも移動する。
【0047】
従って、端部22d1付近の第1係合部34では、係合片44が斜め方向(X2・Y2方向)に移動する。端部22d2付近の第2係合部35では、係合片46が斜め方向(X1・Y2方向)に移動する。一方、端部22d1,d2間にある第3係合部36では、係合片48が略直線方向(Y2方向)に移動する。
【0048】
そして、例えばバッテリー28の膨張率が設定値、例えば100~150%を超えると、図3B及び図7中に2点鎖線で描いた係合片44,46,48で示すように各係合部34~36での係合状態が解除される。つまり係合片44,46,48と受け部45,47,49との係合状態が解除され、縁部22dがフリーになる(図3B中の矢印B参照)。その結果、第1筐体部材22は、縁部22dが第2筐体部材23から離隔してZ2側に持ち上がる(図3B中の矢印C参照)。その際、磁力のみで固定されていた吸着体38a,38bの固定も解除される。また補助係合部40でも、膨張部28aによって弾性係合片50がX方向で第1筐体部材22の中央側に引き寄せられて受け部51との係合状態が解除される。
【0049】
一方で、締結部32はねじ42で固定されているため、縁部22cは依然として第2筐体部材23に連結されたままである。その結果、第1筐体部材22は、バッテリー28に近い縁部22d及び左右の縁部22a,22bのY1側の一部が第2筐体部材23から外れてZ2側に持ち上がったオープン状態となる。
【0050】
このため、ユーザはバッテリー28の膨張によって第1筐体部材22が外れたことを迅速に認識できる。そこでメンテナンス作業者は、締結部32のねじ42を外すだけで第1筐体部材22を第2筐体部材23から完全に取り外すことができ、容易にバッテリー28を交換することができる。このように、当該電子機器10はバッテリー28が膨張した際、第1筐体部材22の縁部22d及びその周辺部が円滑に第2筐体部材23から外れるため、第1筐体部材22が膨張部28aからの過度な力を受けて塑性変形し或いは破損することを抑制できる。
【0051】
ここで、図8及び図9を参照し、傾斜面44c,45bを有する第1係合部34(実施例)の動作及び作用効果について従来からある一般的な構成の係合部52(比較例)と比較してより具体的に説明する。第2係合部35の動作及び作用効果も第1係合部34の場合と略同様である。
【0052】
図8は、第1係合部34の係合片44が斜め方向(X2・Y2方向)に移動した際の受け部45との係合状態の変化を示す説明図である。図9は、図8に示す第1係合部34の比較例に係る係合部52の係合片44が斜め方向(X2・Y2方向)に移動した際の受け部45との係合状態の変化を示す説明図である。
【0053】
図9に示す比較例の係合部52は、図8に示す実施例の第1係合部34の傾斜面44c,45bのうち、第3係合部36と同様な平面48a,49aに置き換えた構成である。
【0054】
図8に示す第1係合部34では、バッテリー28の膨張に伴って係合片44が斜め方向(X2・Y2方向)に移動すると、爪部44bと受け面45aとの係合状態が容易に解除される。なぜなら傾斜面44c,45bを有することで、爪部44bと受け面45aは、係合片44と受け部45の相対移動の方向(X2・Y2方向)に沿う方向でのかかり量(係止距離)が小さい。このため、第1係合部34では、縁部22dの中央付近にある第3係合部36と比べてY2方向への係合片44の移動距離が小さいが、設計上の最短距離で容易に爪部44bが受け面45aから離脱するためである。なお、第2係合部35も同様な作用でバッテリー28の膨張時に円滑に受け部47から係合片46が離脱する(図7も参照)。
【0055】
一方、図9に示す比較例の係合部52では、係合片44が図8に示す場合と同一距離斜め方向に移動した場合であっても、爪部44bが受け面45aから容易には離脱できない。なぜなら平面48a,49aを有する爪部44bと受け面45aは、係合片44と受け部45の相対移動の方向(X2・Y2方向)に沿う方向でのかかり量(係止距離)が大きい。このため、係合部52は、縁部22dの中央付近にある第3係合部36と比べてY2方向への移動距離が小さい係合片44の爪部44bが容易には受け面45aから離脱できないためである。このように、図8に示す実施例の第1係合部34は、図9に示す比較例の係合部52と比べて、バッテリー28の膨張時に係合片44が斜め方向に引っ張られた際、より円滑に受け部45から離脱可能である。
【0056】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、バッテリー28が筐体12内で縁部22c側よりも縁部22d側に寄った位置に配置されている。第1筐体部材22の縁部(第2縁部)22dの一方の端部22d1に設けられた係合片44及びこれと係脱される受け部45の端面には、それぞれ他方の端部22d2側に向かって次第に縁部22c側から縁部22d側に傾斜する傾斜面(第1傾斜面)44c,45bが設けられている。同様に、第1筐体部材22の縁部22dの他方の端部22d2に設けられた係合片46及びこれと係脱される受け部47の端面には、それぞれ端部22d1側から端部22d2側に向かって次第に縁部22d側から縁部22c側に傾斜する傾斜面(第2傾斜面)44c,45bが設けられている。
【0057】
従って、電子機器10は、仮に不良によってバッテリー28が膨張して第1筐体部材22を押圧した場合であっても、バッテリー28に近い位置にある縁部22dを第2筐体部材23に連結する係合片44,46と受け部45,47との係合状態が円滑に解除される。換言すれば、筐体12は、バッテリー28が所定以上の膨張率まで膨張すると同時に筐体部材22,23間の連結状態が解除され、縁部22d側が口開く。その結果、第1筐体部材22が膨張するバッテリー28からの過度な力を受けてクラック等の破損を生じることを抑制でき、メンテナンスのコストや手間を抑制できる。この際、縁部22cはねじ42による締結部32で固定されている。これにより締結部32は、上記した口開き後も第1筐体部材22を支えるため、意図しない第1筐体部材22の落下等を防止でき、取り扱い性が向上する。
【0058】
本実施形態の場合、係合片44は、縁部22dの長手方向を基準としてバッテリー28のX1側の端部(側面)からはみ出した位置に配置され、Y方向に対してバッテリー28とオーバーラップしない位置にある(図2及び図7参照)。同様に、係合片46は、縁部22dの長手方向を基準としてバッテリー28のX2側の端部(側面)からはみ出した位置に配置され、Y方向に対してバッテリー28とオーバーラップしない位置にある。このため、係合片44,46は、バッテリー28の膨張時に持ち上がる第1筐体部材22によって引き寄せられる際、Y2方向への移動量よりもX方向への移動量が大きい傾向にある。従って、例えば図9に示すような係合部52では、このようなX方向への移動量が大きい場合に係合状態が一層解除され難い。この点、本実施形態の係合部34,35は、傾斜面44c,45bを設けたことで、このようなX方向への移動量が大きい場合にも係合状態が円滑に解除されるようになっている。
【0059】
なお、各係合部34,35の爪部44bと受け面45aは、傾斜面44c,45bを有することで、上記した斜め方向への移動時には互いの係合状態が解除され易い反面、筐体部材22,23の通常の連結状態ではY方向に十分なかかり量(係止距離)を有する。このため、係合部34,35は、例えば筐体12が落下等の衝撃を受けた際に意図せずに係合状態が外れることは抑えられている。
【0060】
一方で、縁部22dの端部22d1,22d2間にある第3係合部36は、縁部22dの長手方向を基準としてバッテリー28のX1,X2側の各端部(側面)からはみ出さない位置に配置され、Y方向に対してバッテリー28とオーバーラップした位置にある(図2及び図7参照)。このため、第3係合部36の係合片48は、バッテリー28の膨張時に持ち上がる第1筐体部材22によって引き寄せられる際、X方向へはほとんど移動せず、専らY2方向に移動する。そこで、第3係合部36は、傾斜面44c,45bに代えてXZ方向に沿う平面48a,49aを有する構成とし、バッテリー28の膨張時に円滑に係合状態が解除されるようにしている。勿論、このような第3係合部36もY方向に十分なかかり量(係止距離)を有するため、筐体12が落下等の衝撃を受けた際に意図せずに係合状態が外れることは抑えられている。
【0061】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10 電子機器
12 筐体
22 第1筐体部材
23 第2筐体部材
28 バッテリー
32 締結部
34 第1係合部
35 第2係合部
36 第3係合部
38 吸着部
38a 第1吸着体
38b 第2吸着体
40 補助係合部
44,46,48 係合片
44c,45b 傾斜面
45,47,49,51 受け部
48a,49a 平面
【要約】
【課題】バッテリー不良を生じた場合であっても筐体部材の破損を抑制する。
【解決手段】電子機器は、第1筐体部材と、前記第1筐体部材が着脱可能に連結される第2筐体部材と、バッテリーとを備える。さらに電子機器は、第1筐体部材の第1縁部に沿って複数設けられ、第1縁部を第2筐体部材に締結するねじと、第1筐体部材の第2縁部の長手方向で一方の端部に設けられた第1係合片と、第2縁部の長手方向で他方の端部に設けられた第2係合片と、第2筐体部材に設けられ、第1係合片が係脱される第1受け部、及び第2係合片が係脱される第2受け部とを備える。バッテリーは、筐体内で第1縁部側よりも第2縁部側に寄った位置に配置されている。第1係合片の端面及び第1受け部の端面はそれぞれ第1傾斜面を有する。第2係合片の端面及び第2受け部の端面はそれぞれ第2傾斜面を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9