(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】円筒部材の固定構造および鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 37/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B61D37/00 F
B61D37/00 Z
(21)【出願番号】P 2023198287
(22)【出願日】2023-11-22
【審査請求日】2023-11-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年11月8日に、第8回鉄道技術展2023 Mass-Trans Innovation Japan 2023において展示
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中垣 望
(72)【発明者】
【氏名】西村 匡
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽子
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070026(JP,A)
【文献】特開2014-141156(JP,A)
【文献】特開昭63-047450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の室内に円筒部材を固定するための円筒部材の固定構造において、
前記室内の壁面に固定され、前記円筒部材を、前記円筒部材の軸方向の両端で支持する一対の支持部材と、
前記支持部材に前記円筒部材を固定するための固定部材と、
を備え、
前記支持部材は、
前記円筒部材に面する第1面から反対側の第2面まで貫通し、かつ、前記円筒部材の軸方向の両端部の内の一端を挿入可能な貫通孔を備え、
前記固定部材は、
前記第2面の側から前記貫通孔に挿入可能で、前記貫通孔の内部で前記円筒部材と連結する連結部と、
前記固定部材が前記貫通孔を通して前記第2面の側から前記第1面の側へ通り抜けないよう、前記第2面に当接してストッパとなる当接部と、
を備えること、
を特徴とする円筒部材の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の円筒部材の固定構造において、
前記固定部材は、
前記円筒部材の軸心を中心として前記連結部の外周側に、前記第2面の側から前記支持部材に挿し込むことで、前記軸心を中心とした前記固定部材の回転を防止するための凸部を備えること、
を特徴とする円筒部材の固定構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の円筒部材の固定構造を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の室内に円筒部材を固定するための円筒部材の固定構造およびそのような固定構造を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の客室内に取り付けられる荷棚や握り棒、手すり、保護棒、つり手棒には、例えば、特許文献1に開示されるように円筒部材(特許文献1中の荷棚棒)が利用されている。この円筒部材は、客室内の壁面に固定される支持部材(特許文献1中の荷棚棒支持具)により支持されるようになっている。なお、支持部材には、樹脂部品、アルミ樹脂積層材、積層木材、メラミン化粧板等が用いられる。
【0003】
円筒部材は、支持部材に対して、例えば、
図9に示すようにして固定される。
図9は、従来技術に係る円筒部材の固定構造の一例を示す図である。
【0004】
円筒部材100の軸方向(図面の左右方向)の端部には、連結部材101が結合されている。連結部材101は、円筒部材100を挿入可能な円筒状の筒状部101aと、筒状部101aから半径方向に延伸されるフランジ部101bと、を備えている。
【0005】
筒状部101aには、外周側からステンレス製のビス102が挿通されており、当該ビス102は、筒状部101aに挿入された円筒部材100に螺合されている。このようにビス102が円筒部材100に螺合されることで、円筒部材100と連結部材101とが結合されている。
【0006】
さらに、連結部材101のフランジ部101bには、支持部材103の側とは反対側からステンレス製のビス104が挿通され、当該ビス104は支持部材103に螺合されている。これにより連結部材101と支持部材103とが結合されている。以上のように、円筒部材100と連結部材101との結合、連結部材101と支持部材103との結合が行われることで、円筒部材100は、連結部材101を介して支持部材103に支持されるようになっている。なお、以上の円筒部材100の固定構造は、円筒部材100の軸方向の両端部のうちの一端について説明しているが、他端の側も同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したようにビス102,104を用いて円筒部材100を支持部材103に固定した場合、ビス102,104により各部材を連結している箇所(結合部)が露出しているため、ビス102,104の頭に乗客の荷物や衣服がひっかかるおそれがある。また、結合部が露出していると意匠性の低下が懸念される。さらに、支持部材103には、樹脂部品、アルミ樹脂積層材、積層木材、メラミン化粧板、等が用いられるところ、材料強度が、ビス102,104の材料強度よりも低いため、螺合の際に、支持部材103に亀裂が入り、外観不良となるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、結合部の露出を防ぎ、かつ、ビス等の締結部品を支持部材に螺合する必要のない円筒部材の固定構造およびそのような固定構造を備える鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の円筒部材の固定構造または鉄道車両は、次のような構成を有している。
【0011】
(1)鉄道車両の室内に円筒部材を固定するための円筒部材の固定構造において、前記室内の壁面に固定され、前記円筒部材を、前記円筒部材の軸方向の両端で支持する一対の支持部材と、前記支持部材に前記円筒部材を固定するための固定部材と、を備え、前記支持部材は、前記円筒部材に面する第1面から反対側の第2面まで貫通し、かつ、前記円筒部材の軸方向の両端部の内の一端を挿入可能な貫通孔を備え、前記固定部材は、前記第2面の側から前記貫通孔に挿入可能で、前記貫通孔の内部で前記円筒部材と連結する連結部と、前記固定部材が前記貫通孔を通して前記第2面の側から前記第1面の側へ通り抜けないよう、前記第2面に当接してストッパとなる当接部と、を備えること、を特徴とする。
【0012】
(2)(1)に記載の円筒部材の固定構造において、前記固定部材は、前記円筒部材の軸心を中心として前記連結部の外周側に、前記第2面の側から前記支持部材に挿し込むことで、前記軸心を中心とした前記固定部材の回転を防止するための凸部を備えること、が好ましい。
【0013】
(3)(1)または(2)に記載の円筒部材の固定構造を備えること、を特徴とする鉄道車両。
【発明の効果】
【0014】
上記の円筒部材の固定構造または鉄道車両によれば、結合部の露出を防ぎ、かつ、ビス等の締結部品を支持部材に螺合する必要のない円筒部材の固定構造およびそのような固定構造を備える鉄道車両とすることができる。結合部の露出を防ぐことで、ビス等の締結部品に乗客の荷物や衣服がひっかかることを防止することができる。また、結合部が露出して、意匠性が低下することを防ぐことができる。さらに、ビス等の締結部品を支持部材に螺合する必要がないため、締結部品の螺合により支持部材に亀裂が入り、外観不良となることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】客室における手すりの設置状態を示す図である。
【
図3】(a)は、
図2のA-A断面図である。(b)は、(a)の右側面図であり、円筒部材を支持する部分を部分断面図で表している。
【
図6】手すりの組み立て工程について説明する図である。
【
図7】手すりの組み立て工程について説明する図である。
【
図8】手すりの組み立て工程について説明する図である。
【
図9】従来技術に係る円筒部材の固定構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る円筒部材の固定構造および鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、
図1中の左右方向が軌道方向であり、
図1中の上下方向が高さ方向である。
図2は、客室28における手すり5の設置状態を示す図である。
図3(a)は、
図2のA-A断面図である。
図3(b)は、
図3(a)の右側面図であり、円筒部材51を支持する部分を部分断面図で表している。
図4は、手すり5を構成する支持部材52Aを示す図である。
図5は、手すり5を構成する固定部材53を示す図である。
【0017】
(鉄道車両について)
まず、本実施形態に係る鉄道車両1の概略構成について説明する。鉄道車両1は、例えば通勤車両として用いられるステンレス車両であり、
図1に示すように、車両構体2と、車両構体2を支持する台車3と、を有している。
【0018】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の一方の端部(
図1中の左端部)に立設されることで車両構体2の先頭部をなす前面妻構体22と、台枠21の軌道方向の他方の端部(
図1中の右端部)に立設されることで車両構体2の連結部を形成する連妻構体23と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで車両構体2の側面部を形成する一対の側構体24と、前面妻構体22の上端部と連妻構体23の上端部と一対の側構体24の上端部に結合されることで車両構体2の屋根部を形成する屋根構体25と、により6面体をなすように構成されている。なお、前面妻構体22側を鉄道車両1の前方とし、連妻構体23の側を鉄道車両1の後方とする。
【0019】
また、車両構体2の側面には、客室28(
図2参照)に通じる乗客乗降口26および窓27A,27B,27C,27Dが設けられている。なお、乗客乗降口26の数および窓27A,27B,27C,27Dの数は特に限定されるものではない。そして、例えば、客室28の後方の側には、
図2に示すように、側構体24の内面側の壁面29に沿って、手すり5が配置されている。
【0020】
(手すりについて)
次に手すり5の構成について説明する。手すり5は、
図2に示すように、2本の円筒部材51と、支持部材52A,52B,52Cと、4つの固定部材53と、を主な構成要素としている。なお、円筒部材51の本数は2本に限定されるものではない。また、支持部材52A,52B,52Cについては、特に区別が必要な場合を除いて、符号のアルファベットを省略し、単に支持部材52という。
【0021】
円筒部材51は、軸方向の両端に開口を備えるステンレス鋼製のパイプである。寸法は特に限定されないが、本実施形態においては、直径が30mm程度、長さが1.5m程度とされている。また、円筒部材51は、その軸方向の両端部のそれぞれに、後述するビス55を挿通するための通し孔511を備えている(
図3(b)参照)。この通し孔511は、円筒部材51の外周面から内周面までを、軸方向に対して垂直に貫通して設けられている。
【0022】
円筒部材51は、
図2に示すように、その軸方向が鉄道車両1の軌道方向と一致するように配置され、軸方向の両端部のうち、一端(鉄道車両1の前方の側の端部)を支持部材52Aに支持され、他端(鉄道車両1の後方の側の端部)を支持部材52Bにより支持されている。さらに、円筒部材51は、その軸方向の中央部よりも支持部材52B寄りの箇所で、支持部材52Cにより支持されている。
【0023】
支持部材52は、例えば、樹脂、アルミ樹脂積層材、積層木材、メラミン化粧板等を用いた板材であり、板厚方向が鉄道車両1の軌道方向に一致するように壁面29に固定されている。
【0024】
支持部材52は、
図3および
図4に示すように、支持部材52を壁面29に固定するための固定部521と、円筒部材51を支持するための支持部522と、を備えている。固定部521は、壁面29に対して垂直に立設するように位置されている。また、固定部521には、取付金54を結合するための通し孔521a(
図3(b)参照)が板厚方向に貫通している。
【0025】
取付金54は、第1片541と第2片542とによりL字形をなすように形成されたアングルである。取付金54の第1片541は、固定部521に挿通するボルト56により固定部521に結合され、第2片542は、壁面29(より具体的には、壁面29の裏側の、側構体24を構成する骨部材241)にボルト57により結合される。これにより、支持部材52は、壁面29に固定される。
【0026】
支持部522は、支持部材52が全体として略L字状になるように、固定部521から客室28の天井の側に向かって延在している。なお、略L字状とする支持部材52の形状は、あくまでも一例であり、これに限定されるものではない。支持部522には、天井側の先端部に貫通孔522aが板厚方向に貫通し、固定部521側の端部に貫通孔522bが板厚方向に貫通している。貫通孔522a,522bは、円筒部材51を挿通可能な程度の径を備えている。
【0027】
以上説明した支持部材52の特徴は、支持部材52A,52B,52Cに共通するものである。円筒部材51を、円筒部材51の軸方向の両端部で支持する支持部材52A,52Bは、さらに以下のような特徴を備えている。なお、支持部材52A,52Bの、円筒部材51に面する側(円筒部材51が延在する側)の面を第1面524A,524Bとし、その反対側の面を第2面525A,525Bとする。支持部材52A,52Bの第2面525A,525Bに、後述する固定部材53の凸部533を挿入するための止め穴523a,523bが、第1面524A,524Bの側に向かって穿設されている。止め穴523aは貫通孔522aの外周近傍に、止め穴523bは貫通孔522bの外周近傍に、それぞれ設けられている。
【0028】
固定部材53は、例えばステンレス鋼からなり、
図3(b)および
図5に示すように、本体部531と、本体部531から立設される連結部532および凸部533と、を備えている。本体部531は、略涙滴形の板状に形成されており、一方の面が、支持部材52Aの第2面525Aまたは支持部材52Bの第2面525Bに当接する当接面531a(当接部の一例)である。
【0029】
連結部532は、筒状に形成されており、当接面531aに対して軸方向が垂直になるよう立設されている。連結部532の直径は、円筒部材51の軸方向の端部の開口に挿入可能な大きさとされている。また、連結部532は、円筒部材51の通し孔511に対応する位置に、雌ねじ部532aを備えている(本実施形態では、当接面531aから支持部材52の厚さの略半分の長さ離間した位置に設けているが、手すり5を組み立てたときにビス55の頭部が支持部材52で覆われる位置に設ければよい)。雌ねじ部532aには、通し孔511に挿通したビス55を螺合することが可能であり、このビス55の螺合によって、固定部材53と円筒部材51とを結合することが可能である。ビス55による固定部材53と円筒部材51との結合部は、支持部材52A,52Bの貫通孔522a,522bの内部に位置しており、手すり5の外部からは視認できないようになっている。
【0030】
また、当接面531aには、連結部532に隣接して、円柱状の凸部533が立設されている。連結部532と凸部533の軸心同士の距離は、支持部材52A,52Bにおける貫通孔522a,522bと止め穴523a,523bの軸心同士の距離に対応している。凸部533の直径は、止め穴523a,523bに挿入可能な大きさとされており、凸部533が止め穴523a,523bに挿入されることで、円筒部材51が軸心を中心として回転することを防止している。
【0031】
(手すりの組み立てについて)
以上のような構成を備える手すり5の組み立て工程について、
図6-
図8を用いて説明する。
図6-
図8は、手すり5の組み立て工程について説明する図である。なお、
図6-
図8においては、支持部材52A,52B,52Cは、全て固定部521が奥側、支持部522が手前側に位置されている。
【0032】
まず、
図6に示すように、2本の円筒部材51を、支持部材52A,52B,52Cのそれぞれの貫通孔522a,522bに挿通する。支持部材52A,52Bは、円筒部材51,51の軸方向の両端部を支持するために用いられることから、支持部材52Cを挟んで外側に位置されている。この段階では、円筒部材51A,51Bの両端部を、支持部材52A,52Bの第2面525A,525Bから突出させておく。
【0033】
次に、
図7に示すように、2本の円筒部材51それぞれの軸方向両端部に固定部材53を結合する。具体的には、円筒部材51の軸方向両端の開口に、固定部材53の連結部532を挿入する。このとき、円筒部材51の通し孔511と、連結部532の雌ねじ部532aの位置が合うようにする(
図3(b)参照)。そして、ビス55を、通し孔511に挿通し、雌ねじ部532aに螺合する。円筒部材51は2本あり、ともに両端部に固定部材53を連結するため、合計で4個の固定部材53を用いる。
【0034】
次に、
図8に示すように、支持部材52A,52Bを円筒部材51の軸方向両端の側へ移動させ、固定部材53の当接面531aを支持部材52A,52Bの第2面525A,525Bに当接させる。これにより、固定部材53の連結部532と円筒部材51との結合部が貫通孔522a,522bの内部に入り込む。また、このとき、固定部材53の凸部533を、支持部材52A,52Bの止め穴523a,523bに挿入する。
【0035】
そして、
図2に示すように、支持部材52A,52B,52Cを、取付金54を用いて客室28の壁面29に固定し、手すり5の組み立てが完了する。円筒部材51は、支持部材52A,52B,52Cに連結されていないが、円筒部材51は支持部材52A,52B,52Cの貫通孔522a,522bに挿通されているため、軸方向に対して垂直方向への動きが制限されている。また、円筒部材51の両端において固定部材53の当接面531aが支持部材52A,52Bの第2面525A,525Bに接触しているために、円筒部材51は、軸方向への動きが制限されている。加えて、固定部材53の凸部533が支持部材52A,52Bの止め穴523a,523bに挿入されているため、円筒部材51が軸心を中心に回転することが防止されている。さらに、固定部材53の連結部532と円筒部材51との結合部は、貫通孔522a,522bの内部に位置しているため、手すり5の外部からは視認できないようになっている。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係る円筒部材の固定構造または鉄道車両は、(1)鉄道車両1の室内(例えば、客室28内)に円筒部材51を固定するための円筒部材の固定構造において、室内(客室28内)の壁面29に固定され、円筒部材51を、円筒部材51の軸方向の両端で支持する一対の支持部材52A,52Bと、支持部材52A,52Bに円筒部材51を固定するための固定部材53と、を備え、支持部材52A,52Bは、円筒部材51に面する第1面524A,524Bから反対側の第2面525A,525Bまで貫通し、かつ、円筒部材51の軸方向の両端部の内の一端を挿入可能な貫通孔522a,522bを備え、固定部材53は、第2面525A,525Bの側から貫通孔522a,522bに挿入可能で、貫通孔522a,522bの内部で円筒部材51と連結する連結部532と、固定部材53が貫通孔522a,522bを通して第2面525A,525Bの側から第1面524A,524Bの側へ通り抜けないよう、第2面525A,525Bに当接してストッパとなる当接部(例えば、当接面531a)と、を備えること、を特徴とする。
【0037】
(2)(1)に記載の円筒部材の固定構造において、固定部材53は、円筒部材51の軸心を中心として連結部532の外周側に、第2面525A,525Bの側から支持部材52A,52Bに挿し込むことで、軸心を中心とした固定部材53の回転を防止するための凸部533を備えること、が好ましい。
【0038】
(3)(1)または(2)に記載の円筒部材の固定構造を備えること、を特徴とする鉄道車両1。
【0039】
上記の円筒部材の固定構造または鉄道車両1によれば、結合部の露出を防ぎ、かつ、ビス等の締結部品を支持部材52A,52Bに螺合する必要のない円筒部材の固定構造およびそのような固定構造を備える鉄道車両とすることができる。結合部の露出を防ぐことで、ビス等の締結部品に乗客の荷物や衣服がひっかかることを防止することができる。また、結合部が露出して、意匠性が低下することを防ぐことができる。さらに、ビス等の締結部品を支持部材52A,52Bに螺合する必要がないため、締結部品の螺合により支持部材52A,52Bに亀裂が入り、外観不良となることを防ぐことができる。
【0040】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。
【0041】
例えば、手すり5は、単に手すりとして用いられるものではなく、特開2023-141762号公報に開示されるように、円筒部材51にクッション部材を取り付けることで、乗客が座り又はもたれかかることが出来るヒップレストとしても良い。
【0042】
また、本実施形態においては、円筒部材51の両端部を支持する支持部材52A,52Bに挟まれて、支持部材53Cを1つ用いているが、支持部材53Cの数はこれに限定されない。円筒部材51の長さに応じて、複数個の支持部材52Cを用いても良い。
【0043】
また、固定部材53の凸部533は、本実施形態のように円柱状の突起物である必要はない。回転防止のためには、支持部材52A,52Bの第2面525A,525Bに挿し込むことが可能なものであればどのような形状でも良く、例えば、連結部532を取り囲むように、当接面531aに垂直な壁状の突起物を設けるものとしても良い。
さらにまた、固定部材53の本体部531は、略涙滴形に形成されているが、形状はこれに限定されない。例えば、四角形や丸形、その他の形状としても良い。
【0044】
さらにまた、本発明の円筒部材の固定構造について、本実施形態においては、手すり5の円筒部材51を固定するものとして説明しているが、荷棚や握り棒、保護棒、つり手棒等、円筒部材を用いるその他のものに適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄道車両
28 客室
29 壁面
51 円筒部材
52A 支持部材
52B 支持部材
53 固定部材
524A 第1面
524B 第1面
525A 第2面
525B 第2面
522a 貫通孔
522b 貫通孔
531a 当接面(当接部の一例)
532 連結部
【要約】
【課題】結合部の露出を防ぎ、かつ、ビス等の締結部品を支持部材に螺合する必要のない円筒部材の固定構造およびそのような固定構造を備える鉄道車両を提供すること。
【解決手段】支持部材52A,52Bは、円筒部材51に面する第1面524A,524Bから反対側の第2面525A,525Bまで貫通し、かつ、円筒部材51の軸方向の両端部の内の一端を挿入可能な貫通孔522a,522bを備え、固定部材53は、第2面525A,525Bの側から貫通孔522a,522bに挿入可能で、貫通孔522a,522bの内部で円筒部材51と連結する連結部532と、固定部材53が貫通孔522a,522bを通して第2面525A,525Bの側から第1面524A,524Bの側へ通り抜けないよう、第2面525A,525Bに当接してストッパとなる当接面531aと、を備えること。
【選択図】
図3