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  • 特許-組電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/35 20210101AFI20240730BHJP
   H01M 50/358 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/35 101
H01M50/358
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023503356
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035357
(87)【国際公開番号】W WO2022185590
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021031742
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千田 浩二
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008673(JP,A)
【文献】特開2014-072091(JP,A)
【文献】特開2013-037873(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161655(WO,A1)
【文献】実開平06-085905(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電体と電解液とを収容し一面にガス排出部が設けられた容器を有し、各々の前記一面が同一面上に並ぶように積層された複数の電池と、
前記ガス排出部が設けられた面に対向して配置され、前記複数の電池の各々のガス排出部から排出されたガスの流路である第1流路部を構成する、金属からなる第1流路部材と、
前記第1流路部よりも流路断面積が小さい第2流路部を形成する第2流路部材と、
開口部を介して前記第1流路部と前記第2流路部とを連結する連結部と、
前記連結部の内部であって前記開口部に臨む空間を仕切るガイド部材と、を備え
前記第1流路部材は、前記開口部を含む部分がドーム形状に形成され、前記開口部の周囲が湾曲または屈折している、組電池。
【請求項2】
前記ガイド部材は、板状、半球形状、または、柱状に形成され、前記第2流路部の流路方向に沿う面を有する、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記第1流路部材の内面に接合、または前記内面に一体に形成されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記第2流路部材の端部に接合、または前記第2流路部材の端部に一体に形成されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項5】
前記第2流路部材は、金属からなり、前記第1流路部材と溶接によって接合されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項6】
前記第2流路部材は、樹脂からなり、前記第1流路部材と溶着によって接合されている、請求項1に記載の組電池。
【請求項7】
前記第2流路部材は、前記一面の法線方向に沿い前記第1流路部材から離れる方向に延びている、請求項1に記載の組電池。
【請求項8】
組電池本体、前記第1流路部材、前記第2流路部材のうち、1または複数の場所に、前記ガイド部材を1または複数備える、請求項1に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの流路を有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2000-044385号公報(特許文献1)がある。この公報には、「簡素な構造で、流速や圧力条件に拘わらず、均一な流れを形成するガス整流器の提供」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-044385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、第1流路と第2流路の長さや圧力差等を利用して、ガスの流速分布を均一化している。しかし、これらの条件を満たすことができない場合には、ガスの放出を効率的に行うことができない。例えば、複数の電池セルから各々排出されたガスを第1流路で集約し、第2流路へ流す構造を採用した組電池では、第1流路の長さを十分にとることが難しい。また、第1流路と第2流路の連結部において、理想的な流路から外れた空間が存在すると、当該空間でガスが滞留し、放出の効率が低下する。理想的な流路以外に空間が生まれないように第1流路及び第2流路を形成するためには、高い加工精度が要求され、素材や工法に制限が生じる。
このように、構造、素材、加工方法の選択によっては、ガス排出時、流路部材の途中でガスが旋回等して滞留することによって、流路部の外部に十分に放出されないことがある。
【0005】
本発明の目的は、効率的にガスを放出する組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、「充放電体と電解液とを収容し一面にガス排出部が設けられた容器を有し、各々の前記一面が同一面上に並ぶように積層された複数の電池と、前記ガス排出部が設けられた面に対向して配置され、前記複数の電池の各々のガス排出部から排出されたガスの流路である第1流路部を構成する、金属からなる第1流路部材と、前記第1流路部よりも流路断面積が小さい第2流路部を形成する第2流路部材と、開口部を介して前記第1流路部と前記第2流路部とを連結する連結部と、前記連結部の内部であって前記開口部に臨む空間を仕切るガイド部材と、を備える、組電池」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率的にガスを放出する組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ガスダクトを搭載した組電池の概略図である。
図2】第1流路部と第2流路部からなるガスダクト構造の斜視図である。
図3】実施例1に係るガスダクト構造の部分断面図である。
図4】実施例2に係るガスダクト構造の部分断面図である。
図5】組電池の構成例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて実施例の説明をする。
【0010】
以下では、一例として、ハイブリッド自動車(HEV)の電源を構成する蓄電装置に用いる組電池に対して適用した実施形態を説明する。なお、以下の実施形態に係る組電池は、HEVの他、EVなどの乗用車やハイブリッド鉄道車両などの産業用車両の電源にも適用可能である。組電池としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などを用いることができる。
【0011】
組電池は、直流電流の充放電によって電気エネルギーの蓄積および放出が可能な複数の電池セル(単電池)を直列に接続した構成を有している。個々の単電池の仕様は特に限定されないが、たとえば、出力電圧が約3.0[V]から約4.2[V]であり、平均出力電圧が約3.6[V]である。
【0012】
組電池は、複数の電池セルがたとえばバスバーを介して直列に接続されて電池群が構成され、複数の電池群がたとえばバスバーを介して直列に接続された構成を有している。組電池が備える電池群の数、直列または並列などの電池群の接続方法、および、各々の電池群が備える電池セルの数などは、特に限定されない。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例のガスダクトを搭載した組電池の構成図の例である。本実施例の組電池100は、組電池本体100aに第1流路部材102が組付けられ、第1流路部材102の端部に円筒形の第2流路部材103が固定されている。
【0014】
組電池本体100aは、複数の電池セルを第1流路部材102の長手方向に積層して形成される。各電池セルは、充放電体(正極、セパレータ、負極、を含む捲回群)と電解液とを収容し一面にガス排出部が設けられた容器(ケース)を有し、ガス排出部が設けられた一面が同一面上に並ぶように積層されている。
【0015】
第1流路部材102は、各電池セルのガス排出部の上方を覆い、第1流路部を形成する。また、第2流路部材103の内部は、第1流路部よりも流路断面積が小さい第2流路部であり、第1流路部及び第2流路部によってガスダクト101が形成される。すなわち、組電池本体100aの各電池セルから排出されたガスは、第1流路部から第2流路部を通って外部に排出されることになる。
【0016】
第2流路部材103は、例えば金属からなり、第1流路部材102と溶接によって接合されている。または、第2流路部材103は、樹脂からなり、第1流路部材102と溶着によって接合されていてもよい。
第2流路部材103は、例えば、ガス排出部が設けられた面の法線方向に沿い、第1流路部材102から離れる方向に延びている。
【0017】
図2は、第1流路部と第2流路部からなるガスダクト構造の斜視図である。また、図3は、実施例1に係るガスダクト構造の部分断面図である。図2及び図3に示した第1流路部材102は、例えば、厚さが一定の金属板であり、板金加工により形成される。
【0018】
第1流路部材102は、各電池セルのガス排出部に対向する主面部102aと、主面部102aの長手方向に沿った両端から、主面部102aに対して同じ側であって、主面部102aと交差する方向に延びた一対の側面部102bを備える。
【0019】
主面部102aと一対の側面部102bとで区画された空間は、ガス排出部が設けられた面と対向してガスの流路である第1流路部を構成する。
【0020】
また、第1流路部材102の長手側の端は、板金の折り曲げ加工が施されている。この形状により、第1流路部材102の剛性が向上し、第1流路部材102の位置決めが容易となる。
【0021】
第1流路部の長手方向の一端には、第2流路部と、開口部を介して連結する連結部104が設けられている。連結部104及び開口部は、例えば、第1流路部材102の長手方向の端部近傍を打抜き加工により抜くことで形成される。この加工により、第1流路部材102の端部近傍が湾曲又は屈折してドーム形状が形成され、ドーム形状の中央部が開口部となる。
【0022】
換言するならば、連結部104は、第1流路部材102のドーム形状と組電池本体100aの一面により区画された空間であり、第1流路部の端部である。また、開口部は、ドーム形状の中央に位置するため、開口部は、連結部104における第1流路部の長手方向の最端部104aから離れた位置に形成されることになる。
【0023】
連結部104では、ガス排出部側から第2流路部への流路が理想的な流路である。しかし、連結部104がドーム形状であり、その中央部に開口部が位置する構造では、理想的な流路から外れた空間が存在することになり、当該空間でガス旋回流が発生し、第2流路部へのスムースなガス排出を阻害するため、放出の効率が低下する。
【0024】
そこで、本実施例1では、連結部の内部であって、開口部に臨む空間を仕切るガイド部材を設けて、ガスの旋回を防止している。
【0025】
図3では、3枚のガイド部材105が、組電池本体100aに固定または一体成型されている。3枚のガイド部材105は、板状に形成され、第2流路部材の流路方向に沿う面を有する。また、図3では、3枚のガイド部材105は、ドーム形状の内側で、放射状に配置されている。
【0026】
このガイド部材105により、ガス排出時、第1流路部材と第2流路部材との間の部分でガスが旋回等して滞留することが抑制される。また、ガスの流れの方向がガイド部材によって規制される。
したがって、ガスを第2流路部材の外部に効率的に放出することができる。
【実施例2】
【0027】
図4は、実施例2に係るガスダクト構造の部分断面図である。
実施例1では、3枚のガイド部材105を組電池本体100aに固定したが、本実施例2に示したガイド部材106は、第1流路部材102の内面に接合されている。このように第1流路部材102の内面にガイド部材106を接合することで、理想的な流路の形状を簡易に実現することができ、ガスを効率よく外部に放出することができる。
【0028】
図4では、ガイド部材106は、第1流路部材102の内面に接合した構成を例示したが、ガイド部材106を第1流路部材102の内面と一体に形成してもよい。また、第2流路部材103の端部にガイド部材を接合する構成や、第2流路部材103の端部と一体にガイド部材を形成する構成としてもよい。
【0029】
(変形例)
図5は、組電池100の構成例の説明図である。図5に示したように、上記各実施例にて説明した組電池100を複数組み合わせることで、さらに大きい組電池200を形成することができる。組電池200は、複数の組電池100と、コントローラ201を有する。このように、より大きな組電池200への搭載に用いる他、上記各実施例に開示した組電池100は、任意の用途に適用可能である。
【0030】
上述してきたように、上記各実施例に係る組電池100は、充放電体と電解液とを収容し一面にガス排出部が設けられた容器を有し、各々の前記一面が同一面上に並ぶように積層された複数の電池と、前記ガス排出部が設けられた面に対向して配置され、前記複数の電池の各々のガス排出部から排出されたガスの流路である第1流路部を構成する、金属からなる第1流路部材102と、前記第1流路部よりも流路断面積が小さい第2流路部を形成する第2流路部材103と、開口部を介して前記第1流路部と前記第2流路部とを連結する連結部と、前記連結部の内部であって前記開口部に臨む空間を仕切るガイド部材105,106と、を備える。
かかる構成により、ガス排出時、第1流路部材と第2流路部材との間の部分で旋回等して滞留することが抑制される。また、ガスの流れの方向がガイド部材によって規制される。
したがって、ガスを第2流路部材の外部に効率的に放出することができる。
【0031】
また、第1流路部材102は、前記開口部を含む部分がドーム形状に形成され、前記開口部の周囲が湾曲または屈折している。すなわち、板金加工により低コストで第1流路、連結部及び開口部を形成した場合にも、効率的にガスを放出する組電池を提供することができる。
【0032】
また、実施例1のガイド部材105は、板状に形成され、側面が前記第2流路部の流路方向に沿う面を有する。かかる構成では、ガスの旋回を抑制し、第2流路に誘導することができる。なお、ガイド部材105は、板状に限定されず、半球形状、柱状等、任意の形状とすることができる。
【0033】
また、実施例2のガイド部材106は、前記第1流路部材102の内面に接合、または前記内面に一体に形成されている。かかる構成により、理想的な流路の形状を簡易に実現し、ガスを第2流路部材103の外部に効率的に放出することができる。
また、ガイド部材は、前記第2流路部材103の端部に接合、または前記第2流路部材の端部に一体に形成されていてもよい。この場合にも、理想的な流路の形状を簡易に実現し、ガスを第2流路部材103の外部に効率的に放出することができる。
【0034】
また、前記第2流路部材103は、一例として、金属からなり、前記第1流路部材102と溶接によって接合されている。もしくは、前記第2流路部材103は、樹脂からなり、前記第1流路部材102と溶着によって接合されている。
このように、本発明は、第2流路部材103の素材に制限がなく、任意の素材を用いることができる。
【0035】
また、前記第2流路部材103は、一例として、前記一面の法線方向に沿い前記第1流路部材から離れる方向に延びている。かかる構成では、簡易な構成で効率的にガスを排出することができる。
【0036】
また、ガイド部材は、上記の実施例に限定されることなく、任意の数を設けてよく、その設置場所も任意である。すなわち、組電池は、組電池本体、第1流路部材、第2流路部材のうち、1または複数の場所に、ガイド部材を1または複数備えることができる。
【0037】
なお、上記各実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明は、例示した構造を適宜変更して実施することができる。また、本発明は、例示した組電池をはじめとして、任意の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
100,200:組電池、100a:組電池本体、101:ガスダクト、102:第1流路部材、103:第2流路部材、104:連結部、105,106:ガイド部材、201:コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5