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特許7529887ポリマー製インサートを用いて硬質材料によって作られた部品を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ポリマー製インサートを用いて硬質材料によって作られた部品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 3/04 20060101AFI20240730BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20240730BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20240730BHJP
   G04B 37/18 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
G04B3/04 Z
G04B37/22 H
A44C5/00 501A
A44C5/00 502B
G04B37/22 V
G04B37/18 K
G04B37/18 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023503436
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021073582
(87)【国際公開番号】W WO2022048983
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】20194714.0
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アレーデ,パウロ
(72)【発明者】
【氏名】カルティエ,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ブルティヨ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ヴュイユ,ピエリ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-9860(JP,A)
【文献】国際公開第01/60581(WO,A1)
【文献】特表2011-503343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029373(US,A1)
【文献】特表2013-525145(JP,A)
【文献】特表2019-501780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
A44C 1/00-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾性部品(20、30)作る方法(1)であって、
前記装飾性部品(20、30)は、ビッカース硬度が1000HVよりも大きい硬質材料を少なくとも部分的に含み、
前記方法は、
少なくとも1つの粉末材料とバインダーとの混合物から前駆物質を作るステップ(2)と、
前記装飾性部品の少なくとも一部のために望まれる形状に対するネガ形状を少なくとも部分的に有する、ポリマー材料によって作られたインサート(11、45、51)を作るステップ(3)と、
型(41、42)内に前駆物質を注入することによってポリマー材料によって作られた前記インサート(11、45、51)上に前駆物質をオーバーモールドして成形体(10、50)を形成するステップ(4)であって、前記インサート(51)全体の周りにてオーバーモールドして前記成形体(50)を作る、ステップ(4)と、
閉じた空洞(52)が形成された部品(20、30)を得るために、ポリマー製の前記インサート(11、45、51)を除去するステップ(6)と、
前記硬質材料によって作られた将来の装飾性部品(20、30)の材料体を形成するように、前記成形体(10、50)を焼結するステップ(7)と、を主に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
さらに、前記装飾性部品(20、30)を組み付けるステップ(9)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記成形体(10、50)を機械加工するステップ(5)を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インサート(11、45)には、前記成形体にタッピングを形成するようにねじ山(14、47)がある
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー材料は、PVB(可塑化ポリビニルブチラール)、CAB(可塑化セルロースアセテートブチレート)、及びPBMA(ポリブチルメタクリレート)タイプのアクリル樹脂からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記硬質材料は、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、アルミナ、サーメット、金属又はこれらの金属の複合体のような材料から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
装飾性部品あって、
前記装飾性部品は、ビッカース硬度が1000HVよりも大きい硬質材料によって作られた材料体を含み、
前記装飾性部品には、前記材料体の厚み内に、前記材料体の材料によって連続的に囲まれている閉じた空洞が形成される
ことを特徴とする装飾性部品。
【請求項8】
携行型時計ケースであって、
請求項7に記載の装飾性部品と、
風防と、
前記風防を前記装飾性部品に保持するためのベゼルと、
前記携行型時計ケースを閉じるためのケース裏部と、を備える
ことを特徴とする携行型時計ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質材料によって作られた、装飾性部品、特に、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)、宝飾品又はテレフォニーにおいて用いられる部品、の製造に関する。本発明は、特に、ポリマー材料によって作られたインサートを用いて、携行型時計の部品、例えば、リュウズやケースミドル部、を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携行型時計製造や宝飾品の業界において、異なる外観を有するケースやブレスレットを製造するために様々な材料が用いられている。特に、計時器、特に、携行型時計ケースやブレスレットリンクは、硬質材料を用いて製造されることが知られている。硬質材料とは、ビッカース硬度が1000HVよりも大きい材料を意味すると理解することができる。このような硬質材料の例としては、セラミックス、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、サファイア、アルミナがある。
【0003】
携行型時計の製造において、このような硬質材料は、それらの機械的性質のために、特にひっかき傷が発生しにくいために、用いられる。このような硬質材料は、例えば、携行型時計のケースミドル部やブレスレットリングのような部品を製造するために用いられる。
【0004】
装飾性部品は、その部品に所望の形状を与える注入ステップの後に、材料を硬化させる焼結ステップを経て得られる。
【0005】
しかし、この種の注入方法によって得られる寸法構成は、十分に精密ではない。例えば、ブレスレット内のリンクやリングにタッピング穴を形成して、ねじ又はねじ山付き要素をその中にねじ込むことができるようにすることが必要である。携行型時計のケースミドル部には、例えばリュウズをねじ込むために、タッピング穴が必要なことがある。しかし、硬質材料によって作られたケースミドル部においては、リュウズを組み付けるために押し込む操作しか行うことができない。また、押し部品のためにも穴を形成する必要があり、このような穴は、注入法では得られない。特に、ねじ山やタッピングは、硬質材料においては形成することが難しい。
【0006】
これを達成するために、ケースミドル部を機械加工してタッピングを形成しなければならない。しかし、硬質材料の機械加工は、その硬さのために難しい。このために、非常に高価であり寿命が短いダイヤモンド工具を用いる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
硬質材料、特に、セラミックス材料、の機械加工をほとんど必要としない又はまったく必要としないにもかかわらず、例えば機能的面があるような、硬質材料によって作られた部品を作ることは有利である。
【0008】
本発明は、このような方法を提案するものである。この方法は、硬質材料及びポリマー材料によって作られたインサートを用いることによって、硬質材料を直接機械加工する必要性を回避する。これによって、可能な限り硬質材料を機械加工する必要性をなくすことによって、部品の製造コストを低減させることができる。また、必要に応じてタッピングするおかげで、選択された寸法構成まで穴を形成することができる。
【0009】
具体的には、本発明は、部品、例えば、携行型時計、宝飾品又はテレフォニーの部品、特に、携行型時計のケースミドル部、を作る方法に関し、前記装飾性部品は、ビッカース硬度が1000HVよりも大きい硬質材料を少なくとも部分的に含む。
【0010】
本発明によると、本方法は、少なくとも1つの粉末材料とバインダーとの混合物から前駆物質を作るステップと、
前記装飾性部品の少なくとも一部のために望まれる形状に対するネガ形状を少なくとも部分的に有する、ポリマー材料によって作られたインサートを作るステップと、
型内に前駆物質を注入することによってポリマー材料によって作られた前記インサート上に前駆物質をオーバーモールドして成形体を形成するオーバーモールドステップと、
であって、前記インサート全体の周りにてオーバーモールドして前記成形体を作る、オーバーモールドステップと、
前記硬質材料によって作られた将来の装飾性部品の材料体を形成するように、前記成形体を焼結するステップと、を主に含む。
【0011】
本発明の1つの特定の実施形態において、本方法は、さらに、前記焼結ステップの前に、所定の形状を有する部品を得るように、ポリマー製の前記インサートを除去するステップを含む。
【0012】
本発明の1つの特定の実施形態において、本方法は、さらに、前記装飾性部品を組み付けるステップを含む。
【0013】
本発明の1つの特定の実施形態において、本方法は、さらに、前記成形体を機械加工するステップを含む。
【0014】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記オーバーモールドステップは、前記成形体内に穴を形成するために、前記成形体内に対応する箇所に部分的に挿入されるインサート上にオーバーモールドして前記成形体を形成することを伴う。
【0015】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記オーバーモールドステップは、インサートのまわりにオーバーモールドして成形体を形成して、その成形体内に閉じた空洞を形成することを伴う。
【0016】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記インサートには、前記成形体にタッピングを形成するようにねじ山がある。
【0017】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記ポリマーは、PVB(可塑化ポリビニルブチラール)、CAB(可塑化セルロースアセテートブチレート)、及びPBMA(ポリブチルメタクリレート)タイプのアクリル樹脂からなる群から選択される。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記硬質材料は、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、アルミナ、サーメット、金属又はこれらの金属の複合体のような材料から選択される。
【0019】
また、本発明は、さらに、装飾性部品、例えば、計時器、宝飾品、テレフォニーの部品、特に、携行型時計のケースミドル部、に関し、前記装飾性部品は、ビッカース硬度が1000HVよりも大きい硬質材料によって作られた材料体を含み、前記装飾性部品には、前記材料体の厚み内に、閉じた空洞が形成される。
【0020】
また、本発明は、携行型時計ケースであって、このような装飾性部品と、風防と、前記風防を前記装飾性部品に保持するためのベゼルと、前記携行型時計ケースを閉じるためのケース裏部と、を備えるものに関する。
【0021】
添付の図面を参照することによって、本発明を一層理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る方法を示しているブロック流れ図である。
図2図2a~2cは、本発明に係る方法を用いていくつかの特定のステップを経た後に得られた部品の断面図である。
図3図3a~3bは、本発明に係る方法を用いて得られたタッピング穴が形成された携行型時計のケースミドル部の斜視図である。
図4】携行型時計のケースミドル部に取り付けられたリュウズの断面図である。
図5】本発明に係る方法を用いて得られたブレスレットリンクの斜視図である。
図6図6a及び6bは、本発明に係る方法を実行するシステムを示している。
図7図7a~7bは、本発明に係る方法を用いて得られる閉じた空洞が形成された携行型時計ケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、装飾性部品10、例えば、計時器、宝飾品、テレフォニーの部品、を製造する方法1を示している。装飾性部品は、例えば、携行型時計のケースミドル部、ベゼル、携行型時計のケース裏部、計時器のストーン又は押し部品、宝飾品のブレスレット又はリング、さらには、移動体電話のケースである。部品10は、ビッカース硬度が1000HVよりも大きい硬質材料を少なくとも部分的に含む。硬質材料は、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ジルコニウム(ZrO2)のようなセラミックス材料、炭化物、窒化物、サーメット、硬質金属、又はビッカース硬度が1000HVよりも大きい任意の他の材料である。
【0024】
方法1は、少なくとも1つの粉末材料とバインダーとの混合物から前駆物質を作る第1のステップ2を含む。これに関連して、セラミックスベースの粉末は、少なくとも、金属酸化物、金属窒化物、又は金属炭化物を含むことができる。例として、セラミックスベースの粉末は、合成ルビーを形成するように酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムと酸化クロムとの混合物、場合によって着色されていてもよい酸化ジルコニウム、場合によって着色されていてもよいアルミナ、窒化ケイ素、サーメット、金属、又はこれらの金属の複合体を含むことができる。前記サーメットは、例えば、炭化チタンや炭化タングステンである。前記金属は、例えば、タングステン、チタン、316Lステンレス鋼又は鋼、好ましくはニッケルを含まないもの、である。また、前記バインダーは、有機タイプのものである。
【0025】
前記方法1は、前記部品の少なくとも一部のために望まれる形状に対するネガ形状を少なくとも部分的に有する、ポリマー材料によって作られたインサートを作る第2のステップ3を含む。前記インサートの少なくとも一部は、硬質材料によって作られた最終体の一部分のために望まれる形状に対するネガ形状を有する。ポリマーは、例えば、PVB(可塑化ポリビニルブチラール)、CAB(可塑化セルロースアセテートブチレート)、及びPBMA(ポリブチルメタクリレート)タイプのアクリル樹脂からなる群から選択される。
【0026】
第3のステップ4は、成形体を形成するために、ポリマー材料によって作られたインサート上に前駆物質をオーバーモールドすることを伴う。オーバーモールドは、特に、型内への注入によって行う。前記型は、部品の収縮率を考慮した所望の部品の形状を少なくとも部分的に有する。前記前駆物質は、管状体を通して、その後に、型全体にわたって前駆物質分配回路を通して、型内に注入される。したがって、前記前駆物質は、型の形状となり、例えば、本明細書において記載される例におけるような、携行型時計のケースミドル部の形状である。代わりに、注入は、円形のタブ又はチャネルを用いて行うこともできる。前記成形体は、型の形状となり、少なくとも部分的には、オーバーモールドするときに存在するインサートの形状となる。
【0027】
第4のステップ5において、成形体を機械加工して、注入によって発生した成形体の不必要な部分を除去する。例えば、注入システムにおける分配回路又は管状体に起因して形成された管状体やチャネルが除去される。これによって、機械加工された成形体が得られる。
【0028】
第5のステップ6において、ポリマー製インサートは、熱的脱バインディングによって除去される。好ましくは、インサート上にオーバーモールドされた成形体は、80度のアルコール槽中に浸漬される。このアルコール槽は、ポリマー製インサートを溶解して、インサートによって与えられる所望の形状を有する成形体が得られる。代わりに、熱的脱バインディングを行って、ポリマー製インサートを除去することもできる。このようにして、インサート上にオーバーモールドされた成形体を高温まで加熱して、ポリマーを除去する。このようにして、成形体からポリマー製インサートを剥離する。インサートは、成形体にて、タッピング穴などのポジ形状を残す。
【0029】
第6のステップ7は、前記少なくとも1つの硬質材料にて将来の装飾性部品の材料体を形成するように、機械加工された前記成形体を焼結することを目的とする。この焼結は、粉末の粒子が凝集するように前駆物質を加熱することを伴う。焼結中に、成形体が収縮して硬化して、特定の焼結率を有する硬質体を作る。好ましくは、本発明によると、焼結ステップにおいて、熱分解をさせることができる。得られる部品の材料体は、実質的にこのステップによって硬化される。したがって、部品の材料体は、最終的な形状を有する。
【0030】
また、硬質材料の平滑化仕上げ及び/又は研磨のために、第7のステップ8を必要とする場合がある。これによって、ケースミドル部の美的外観が改善される。
【0031】
最後に、第8のステップ9において、この方法を用いて得られる形状のおかげで、前記部品は、ねじ込むことなどによって、他の要素に組み付けられる。例えば、前記部品が、タッピング穴がある携行型時計のケースミドル部である場合、ボタンやリュウズがケースミドル部に組み付けられる。
【0032】
図2a~2cは、成形体10及びインサート11を示しており、このインサート11は、本方法のいくつかの特定のステップの後にリュウズを作るために用いることができる。第2の作成ステップの終わりにおいて、図2aに示しているような好ましい形状を有するインサート11が得られる。この例において、インサート11は、第1の区画12と第2の区画13がある円筒状の要素であり、第2の区画13は、成形体10に内側の形を与えるように意図されている。第2の区画13は、第1の区画12よりも幅が狭く、周部にねじ山14がある。インサート11は、成形体10に円筒状の穴15を形成するために用いられ、穴15には、リュウズの内周壁にタッピング16が形成される。これのおかげで、組み付けステップのときに完成部品をねじ込むことができる。
【0033】
図2aにおいて、インサート11上に前駆物質をオーバーモールドして、図2bに示しているアセンブリーとなる。この例において、インサート11上に携行型時計用リュウズの形状の成形体10が形成される。このリュウズは円筒状であり、その一端に厚い部分17がある。成形体10は、インサート11の第2の区画13が成形体10内に入り込むように、インサート11の第2の区画13上にオーバーモールドされる。したがって、インサート11が除去されると、図2cに示している成形体10に穴15が形成される。また、インサート11のねじ山14が、成形体10の穴15内にてタッピング16の形を形成することもわかる。ポリマー製インサート11を除去して成形体10を焼結するステップの後で、タッピング穴があるリュウズが得られる。このリュウズを、携行型時計のケースミドル部を通して計時器用ムーブメントのステムにねじ込むことができる。
【0034】
図3a及び3bは、この方法を用いて作られる部品の別の例を示している。この部品は、タッピング穴22が形成されたケースミドル部20であり、このタッピング穴22は、このタッピング穴22内にボタンなどをねじ込むことによって、そのボタンなどの組み付けを容易にする。タッピング穴22は、ケースミドル部の周面21に形成される。図3bにおける穴22の拡大図は、内側タッピングを示している。
【0035】
図4は、本発明に係る方法を用いて作られる装飾性部品の別の例を示している図である。携行型時計のケースミドル部29には、リュウズ26の管状体28をねじ込むためのタッピング27が形成された穴35がある。リュウズ26においては、管状体28とリュウズ26の頭部36が一緒に組み付けられる。管状体28には、その周壁上にねじ山37があり、このねじ山37は、穴35のタッピング27と連係する。タッピング穴35があるケースミドル部20は、本発明に係る方法を用いて得られ、特に、タッピング穴35はポリマー製インサートを用いて形成される。
【0036】
図5に示しているブレスレットリンク又はリング30は、本発明に係る方法を用いて作られる装飾性部品の別の例である。このリンク30は、実質的に平坦であり、細長い。このリンク30には、携行型時計のケースミドル部との組み付けのためのピンを収容するための、縦方向に貫通している開口34がある。リンク30には、2つのタッピング穴31、32があり、これのおかげで、ねじ込みによってリンク30を別のリンクとつなげることができる。穴31、32は、ポリマー製インサートを用いて得られる。また、この方法のおかげで、穴31、32どうしを近くすることができる。
【0037】
図6a及び6bに、リンク30をオーバーモールドするステップを行うシステム40の一例を示している。リンク形状を有する2つの型41、42を示しており、各型41、42は、前駆物質供給ダクト43、44の端に配置されている。主ダクト46は、前駆物質を注入することを可能にし、その前駆物質は、2つの供給ダクト43、44を介して型41、42内に分配される。型41、42には、インサート45を配置することができる開口がある。インサート45は、図6aにおいて拡大図を示しており、円筒状であり、このインサート45には、少なくとも部分的に周部のねじ山47がある。ねじ山部は、開口を介して型41、42内に挿入される。この開口よりも幅が広い第2の部分は、型41、42の外側に留まる。したがって、型41、42内に前駆物質が注入されると、リンクの形状の成形体が得られ、型41、42内にて同時にインサート45上にオーバーモールドされる。そして、リンクが、一又は複数のインサートとともに型から取り外され、インサート45を除去することを含む、その後のステップが行われる。
【0038】
本発明に係る方法は、さらに、インサート51のまわりにオーバーモールドして成形体50を形成して、閉じた空洞52を成形体50内に形成することを可能にする。「閉じた」とは、材料、すなわち、材料体の材料、によって連続的に囲まれることを意味すると理解することができる。インサート51は、前駆物質によって完全に囲まれる。そして、ポリマー製インサートは、部分的にオーバーモールドされるインサートの場合と同様に、除去ステップ中に除去される。このような方法のおかげで、例えば、より軽い携行型時計のケースミドル部を作ることが可能になる。ケースミドル部に部分的に材料がないためである。図7aは、ケースミドル部の材料にインサート51が囲まれている、携行型時計のケースミドル部の形態である成形体50を示している。図7bに示しているように、インサート51を除去すると、ケースミドル部を形成する材料の厚み内において空隙52が発生する。この方法によって、部品を軽量化し、部品を製造するために用いられる材料の量を削減することができる。
【0039】
上述の方法を用いて他の部品を作ることができる。例えば、計時器のベゼル、ケース裏部、ストーン、又は押し部品、そして、宝飾品のブレスレット又はリング、又は電話ケースを作ることができる。これらの部品のすべては、穴ないし空洞が形成された硬質材料によって作られる材料体を含む。
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図3a)】
図3b)】
図4
図5
図6a)】
図6b)】
図7a)】
図7b)】