(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】遅延補償値確定方法、装置、機器及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H04L 27/26 20060101AFI20240730BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20240730BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20240730BHJP
H04W 72/542 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
H04L27/26 410
H04W24/10
H04W56/00 130
H04W72/542
(21)【出願番号】P 2023504795
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(86)【国際出願番号】 CN2021112458
(87)【国際公開番号】W WO2022042333
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】202010865324.7
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳詩軍
(72)【発明者】
【氏名】李俊強
(72)【発明者】
【氏名】陳大偉
(72)【発明者】
【氏名】張詩壮
(72)【発明者】
【氏名】李剛
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103188189(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04W 24/10
H04W 56/00
H04W 72/542
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得することと、
前記チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得することと、
プリセット条件及び前記時間領域インパルス応答に基づいて前記送信リンクの遅延補償値を確定することと、を含
み、
送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得することは、
前記送信回路における送信リンクに使用される少なくとも2つのモジュールを組み合わせて組合せモジュールを取得することと、
広帯域時間領域信号を前記組合せモジュールに入力して、前記送信リンクの時間領域出力信号を取得することと、
前記時間領域出力信号を周波数領域出力信号に変換することと、
前記広帯域時間領域信号を周波数領域入力信号に変換することと、
前記周波数領域出力信号を前記周波数領域入力信号で除算して、前記送信リンクの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を取得することと、を含む、
遅延補償値確定方法。
【請求項2】
送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得することは、
送信回路における複数のハードウエアモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を確定することと、
前記送信リンクに使用される前記複数のハードウエアモジュールのうちの少なくとも2つのモジュールを組み合わせることと、
組み合わせられた前記少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて、前記送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定することと、を含む、請求項1に記載の遅延補償値確定方法。
【請求項3】
送信回路における複数のハードウエアモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を確定することは、
所定の周波数帯域内で分割された異なる周波数の全てのサブキャリアを現在モジュールに順次入力し、前記現在モジュールによる全てのサブキャリアに対する出力を前記現在モジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答とすることと、
前記送信回路における次のモジュールを現在モジュールとすることと、
前記送信回路における全てのモジュールの広帯域チャネル周波数インパルス応答が確定されるまで、所定の周波数帯域内で分割された異なる周波数の全てのサブキャリアを現在モジュールに順次入力し、前記現在モジュールによる全てのサブキャリアに対する出力を前記現在モジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答とし、前記送信回路における次のモジュールを現在モジュールとするステップを繰り返し実行することと、を含む、請求項2に記載の遅延補償値確定方法。
【請求項4】
組み合わせられた前記少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて、前記送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定することは、
前記少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を乗算して、前記送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定することを含む、請求項2に記載の遅延補償値確定方法。
【請求項5】
プリセット条件及び前記時間領域インパルス応答に基づいて前記送信リンクの遅延補償
値を確定することは、
前記時間領域インパルス応答のうち信号強度がプリセット閾値を超えたパルス信号を確定することと、
前記パルス信号の遅延に基づいて前記送信リンクの遅延補償値を確定することと、を含む、請求項1~請求項
4のいずれか一項に記載の遅延補償値確定方法。
【請求項6】
前記パルス信号の遅延に基づいて前記送信リンクの遅延補償値を確定することは、
前記パルス信号のうちの1つ目のパルス信号の遅延を前記送信リンクの遅延補償値として確定することを含む、請求項
5に記載の遅延補償値確定方法。
【請求項7】
送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得するように構成される確定モジュールと、
前記チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得するように構成される変換モジュールと、
プリセット条件及び前記時間領域インパルス応答に基づいて前記送信リンクの遅延補償値を確定するようにさらに構成される前記確定モジュールと、を備
え、
前記確定モジュールは、変換ユニット及び算出ユニットを備え、
確定モジュールは、前記送信回路における前記送信リンクに使用される少なくとも2つのモジュールを組み合わせて組合せモジュールを取得し、及び、広帯域時間領域信号を前記組合せモジュールに入力して、前記送信リンクの時間領域出力信号を取得するように構成され、
変換ユニットは、前記時間領域出力信号を周波数領域出力信号に変換し、及び、前記広帯域時間領域信号を周波数領域入力信号に変換するように構成され、
算出ユニットは、前記周波数領域出力信号を前記周波数領域入力信号で除算して、前記送信リンクの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を取得するように構成される、
遅延補償値確定装置。
【請求項8】
メモリ、プロセッサ、及びメモリに記憶されてプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含む、前記プロセッサにより前記コンピュータプログラムが実行されると、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の遅延補償値確定方法が実現される、機器。
【請求項9】
コンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されると、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の遅延補償値確定方法が実現される、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、無線通信の技術分野に関し、例えば、遅延補償値確定方法、装置、機器及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信技術(5th generation wireless systems、5G)分野では、通常、受信信号強度指示(Received Signal Strength Indication、RSSI)、到達時間差(Time Difference of Arrival、TDOA)、信号到達角度(Angle of Arrival、AOA)、往復時間(Round-Trip Time、RTT)などの方法を用いて、5G通信システムにおける測位を行い、そのうち、TDOA、RTTなどの時間に基づく測位方法は、通常、高精度測位に用いられる。しかし、時間に基づく測位方法では、送信機器が高精度の同期性能を有する、又は同期誤差に対して測定補償を行えることは要求される。
図1に示すように、ハードウエアリンクは、ベースバンド信号からアンテナポート送信まで、ベースバンドモジュール、デジタル・アナログ変換、同相直交変調、ビデオグラフィックスアレイ、電力増幅器、電力増幅器、サーキュレータ+スイッチ、アンテナ素子を含める一連のハードウエアモジュール及びリンクを通過する必要がある。これらのリンクは、遅延誤差を引き起こし、さらに信号同期の精度及び最終的な測位精度を影響する。
【0003】
関連技術において、
図2に示すように、複数のテスト信号を入力して複数のモジュールの遅延をテストし、その後、複数のモジュールの遅延の平均値を取り補償値とする。しかし、このような方式は比較的大きな誤差が存在し、複数のハードウエアモジュールが重畳されると遅延誤差がさらに拡大され、高精度の遅延補償を実現することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、ハードウエアモジュールの組合せにより送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定して、さらに送信リンクの遅延補償値を確定することにより複雑なハードウエアリンクの高精度の遅延補償を実現することを目的とする、遅延補償値確定方法、装置、機器及び記憶媒体を提出する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例は、
送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得することと、
チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得することと、
プリセット条件及び時間領域インパルス応答に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定することと、を含む、遅延補償値確定方法を提供する。
【0006】
本願の実施例は、
送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得するように構成される確定モジュールと、
チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得するように構成される変換モジュールと、
プリセット条件及び時間領域インパルス応答に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定するようにさらに構成される確定モジュールと、を備える、遅延補償値確定装置を提供する。
【0007】
本願の実施例は、メモリ、プロセッサ、及びメモリに記憶されてプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含む、プロセッサによりコンピュータプログラムが実行されると、本願の実施例に係る遅延補償値確定方法が実現される、機器を提供する。
【0008】
本願の実施例は、コンピュータプログラムが記憶され、コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されると、本願の実施例に係る遅延補償値確定方法が実現される、コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】関連技術における無線信号送信リンクの模式図である。
【
図2】関連技術における平均方法補償原理の模式図である。
【
図3】本願の実施例に係る遅延補償値確定方法のフローチャートである。
【
図4】本願の他の1つの実施例に係る遅延補償値確定方法のフローチャートである。
【
図5】本願の他の1つの実施例に係る遅延補償値確定方法のフローチャートである。
【
図6】本願の実施例に係る、送信リンクに使用されるモジュールに対応する時間領域インパルス応答を組み合わせる模式図である。
【
図7】関連技術において複数のサブキャリア平均遅延を推定する模式図である。
【
図8】関連技術においてモジュール一体化の遅延平均値を推定する模式図である。
【
図9】本願の実施例に係る組合せモジュールに対応する時間領域インパルス応答の模式図である。
【
図10】本願の実施例に係る遅延補償値確定装置の構造模式図である。
【
図11】本願の実施例に係る機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下は、図面を参照しながら本願の実施例について詳しく説明する。なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに任意に組み合わせることができる。
【0011】
図3は、本願の実施例に係る遅延補償値確定方法のフローチャートであり、該方法は、ハードウエア送信回路に適用されることができ、
図3に示すように、該方法は、以下のステップを含むことができる。
【0012】
S301において、送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得する。
【0013】
例示的に、ハードウエア送信回路には、ハードウエアチップ、スイッチ、アセンブリ、線路などを備えることができ、本ステップにおいて、組み合わせることにより送信リンクを取得することは、即ち、ハードウエア送信回路におけるハードウエアチップ、スイッチ、アセンブリ、線路などを実際のニーズに基づいて組み合わせて、ハードウエアモジュール集合を取得する、と理解されることができ、該ハードウエアモジュール集合のうちの複数のモジュールは、送信リンクを構成し、さらに、組み合わせることにより得られた送信リンクに基づいてそのチャネル周波数領域インパルス応答を確定する。
【0014】
S302において、チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得する。
【0015】
得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を換算して時間領域インパルス応答を取得し、例えば、逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform、IFFT)により、チャネル周波数領域インパルス応答を時間領域インパルス応答に変換する。
【0016】
S303において、プリセット条件及び時間領域インパルス応答に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定する。
【0017】
複数の時間領域インパルス応答が存在するため、この場合、プリセット条件に基づいて条件を満たす時間領域インパルス応答を選択し、選択された時間領域インパルス応答に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定することができ、そのうち、該時間領域インパルス応答は、径信号又は衝撃パルスであってもよい。
【0018】
例示的に、上記プリセット条件は、プリセット閾値を超えることであってもよく、即ち、信号強度がプリセット閾値を超えたパルス信号を確定して、さらにプリセット閾値を超えたパルス信号の遅延に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定する。
【0019】
本願の実施例は、送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得し、チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得し、さらにプリセット条件及び時間領域インパルス応答に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定する、遅延補償値確定方法を提供する。このように、複雑なハードウエアリンクの高精度の遅延補償を実現し、さらに該遅延補償値に基づいて得られた測位精度を高めることができる。
【0020】
図4に示すように、1つの実施例では、上記ステップS301における、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得することの実現方式は、以下のステップを含むことができるが、これらには限定されない。
【0021】
S401において、送信回路における複数のハードウエアモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を確定する。
【0022】
例示的に、本ステップの実現方式は、以下の過程を含むことができる。
【0023】
ステップ1:所定の周波数帯域内で分割された異なる周波数の全てのサブキャリアを現在モジュールに順次入力し、現在モジュールによる全てのサブキャリアに対する出力を現在モジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答とする。
【0024】
ステップ2:送信回路における次のモジュールを現在モジュールとする。
【0025】
送信回路における全てのモジュールの広帯域チャネル周波数インパルス応答が確定されるまで、上記ステップ1ないしステップ2を繰り返す。
【0026】
即ち、所定の周波数帯域を複数の異なる周波数のサブキャリアに分割した後、分割後の各サブキャリアをハードウエア送信回路における全てのハードウエアモジュールに入力して、各ハードウエアモジュールによる各サブキャリアに対するチャネル周波数領域インパルス応答を取得する。
【0027】
S402において、送信リンクに使用される送信回路における複数のハードウエアモジュールのうちの少なくとも2つのモジュールを組み合わせる。
【0028】
送信リンクに使用されるモジュールは、例えば、スイッチ、ハードウエアチップなど、ハードウエアモジュールのうちの任意のモジュールであってもよく、状況に基づいて、送信回路におけるハードウエアモジュールの中で必要なモジュールを選択して、送信リンクにより選択されるモジュールを組み合わせることができる。
【0029】
S403において、組み合わせられた少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定する。
【0030】
ステップS401においてハードウエア送信回路における全てのハードウエアモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答が確定されたため、上記組み合わせられた少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定することができる。
【0031】
例えば、組合せにおける少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を乗算して、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得する。
【0032】
図5に示すように、1つの実施例では、上記ステップS301における、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得することの実現方式は、以下のステップを含むことができるが、これらには限定されない。
【0033】
S501において、送信回路における送信リンクに使用されるモジュールを組み合わせて組合せモジュールを取得する。
【0034】
即ち、ハードウエア送信回路から、送信リンクに使用されるモジュールを選出し、送信リンクに使用されるモジュールを組み合わせて、1つの全体のモジュールを取得し、該全体のモジュールを組合せモジュールとして確定する。
【0035】
送信リンクに使用されるモジュールが、送信回路における任意のモジュールであってもよいことを理解すべきである。
【0036】
S502において、広帯域時間領域信号を組合せモジュールに入力して、送信リンクの時間領域出力信号を取得する。
【0037】
得られた組合せモジュールを1つの全体として見なしているため、この場合、広帯域時間領域信号を組合せモジュールに入力した後、組合せモジュールにより出力された時間領域出力信号は、即ち送信リンクの時間領域出力信号である。
【0038】
S503において、時間領域出力信号を周波数領域出力信号に変換する。
【0039】
例えば、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation、FFT)により時間領域出力信号を周波数領域出力信号に変換することができる。
【0040】
S504において、広帯域時間領域信号を周波数領域入力信号に変換する。
【0041】
同様に、FFTを用いて組合せモジュールに入力された広帯域時間領域信号を周波数領域入力信号に変換することができる。
【0042】
S505において、周波数領域出力信号を周波数領域入力信号で除算して、送信リンクの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を取得する。
【0043】
1つの例示では、上記ステップS303における、プリセット閾値を超えたパルス信号の遅延に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定することの実現方式は、パルス信号のうちの1つ目のパルス信号の遅延を送信リンクの遅延補償値として確定する、ことであってもよい。
【0044】
例えば、得られた複数のパルス信号に対し遅延に従って順位付けを行い、即ちPi.t<Pi+1.tであり、Px.aがプリセット閾値よりも大きく、且つPx.a>PY.a、Px.t>PY.tである場合、確定される送信リンクの遅延は、即ちPx.tである。
【0045】
そのうち、Px.aは、x番目のパルス信号の強度を表し、Px.tは、x番目のパルス信号の遅延を表す。
【0046】
以下は具体的な例示をもって上記過程を詳しく説明する。例えば、それぞれがモジュールa、モジュールb、モジュールcである3つのモジュールが存在すると仮定し、この3つのモジュールに対して広帯域時間領域信号を入力し、そのサンプリング周期Ts=8nsであり、オーバーサンプリング倍数は16であり、1つ目のパルス信号遅延に対応する時間位置は65537である。モジュールaに対して1つのパルス信号の時間領域チャネルを構築し、該信号は減衰せず、遅延は1Tsであり、モジュールbに対して2つのパルス信号の時間領域チャネルを構築し、減衰はそれぞれ0.5及び1であり、遅延はそれぞれ2Ts及び4Tsであり、モジュールcに対して2つのパルス信号の時間領域チャネルを構築し、減衰はそれぞれ0.7及び1であり、遅延はそれぞれ6Ts及び8Tsである。3つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を個々に測定し、組み合わせて算出し送信リンク全体のチャネル周波数領域インパルス応答を取得し、
図6に示すように、得られたチャネル周波数領域インパルス応答を時間領域インパルス応答に変換する。送信リンクの時間領域インパルス応答に対して遅延推定を行い、プリセット閾値を超えた1つ目のパルス信号の遅延を送信リンクの遅延補償値とし、
図6に示すように、1つ目のパルス信号の推定遅延に対応する時間位置は65684であり、即ち対応する送信リンクの遅延補償値は(65684-65537)/16≒9.1875Tsである。一方、関連技術において、受信データが周波数領域に変化することにより、各サブキャリアの遅延は求められ、また各サブキャリアの平均値は遅延補償値として求められ、最終的に得られた平均遅延補償値は、
図7に示すように、約5.9183*10
-8であり、即ち59.183nsで、約7.3979Tsである。それに比べ、本願の実施例に係る方法は、関連技術で推定して得られた遅延補償値よりも1.7896Tsの誤差を改善することができる。
【0047】
他の1つの方式では、組み合わせた後のモジュールを1つの一体化のモジュール、即ち組合せモジュールとして見なし、チャネルインパルス応答をリンク全体の全てのモジュールからなるシステムを通し、リンクにより出力されたインパルス応答を送信リンク全体のチャネル周波数領域インパルス応答とし、さらに遅延補償値を取得する。
【0048】
図8に示すように、関連技術において、受信した一体化の出力データを周波数領域に変化させて、各サブキャリアの遅延を求め、その平均値を確定し、それは即ち送信リンク全体の遅延補償値であり、算出で得られた平均遅延補償値は約2.6164*10
-8であり、即ち26.164nsで、約3.2705Tsである。
【0049】
本願の実施例に係る方法に基づいて、得られた一体化の時間領域インパルス応答に対して遅延推定を行い、プリセット条件を満たす1つ目のパルス信号の遅延を遅延補償値とし、
図9に示すように、1つ目のパルス信号の推定遅延に対応する位置は65570であり、即ち対応する遅延補償値は(65570-65537)/16≒2.0625Tsである。
【0050】
図10は、本願の実施例に係る遅延補償値確定装置であり、
図10に示すように、該装置は、確定モジュール1001、変換モジュール1002を備える。
【0051】
そのうち、確定モジュールは、送信回路における少なくとも2つのハードウエアモジュールの組合せにより得られた送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を取得するように構成され、
変換モジュールは、チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて時間領域インパルス応答を取得するように構成され、
確定モジュールは、プリセット条件及び時間領域インパルス応答に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定するようにさらに構成される。
【0052】
1つの例示では、上記確定モジュールは、送信回路における複数のハードウエアモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を確定し、送信リンクに使用される少なくとも2つのモジュールを組み合わせて、組み合わせられた少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答に基づいて、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定するように構成される。そのうち、送信リンクに使用されるモジュールは、ハードウエアモジュールにおける任意のモジュールである。
【0053】
例示的に、確定モジュールが上記複数のハードウエアモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を確定することは、以下の方式により実現されることができる。
【0054】
ステップ1:所定の周波数帯域内で分割された異なる周波数の全てのサブキャリアを現在モジュールに順次入力し、現在モジュールによる全てのサブキャリアに対する出力を現在モジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答とし、
ステップ2:送信回路における次のモジュールを現在モジュールとし、
送信回路における全てのモジュールの広帯域チャネル周波数インパルス応答が確定されるまで、上記ステップ1ないしステップ2を繰り返す。
【0055】
1つの例示では、上記確定モジュールは、少なくとも2つのモジュールの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を乗算して、送信リンクのチャネル周波数領域インパルス応答を確定するようにさらに構成されてもよい。
【0056】
1つの例示では、上記確定モジュールは、変換ユニット及び算出ユニットを備えることができ、
そのうち、確定モジュールは、送信回路における送信リンクに使用されるモジュールを組み合わせて組合せモジュールを取得し、及び、広帯域時間領域信号を組合せモジュールに入力して、送信リンクの時間領域出力信号を取得するように構成され、そのうち、送信リンクに使用されるモジュールは、送信回路における任意のモジュールであり、
変換ユニットは、時間領域出力信号を周波数領域出力信号に変換し、及び、広帯域時間領域信号を周波数領域入力信号に変換するように構成され、
算出ユニットは、周波数領域出力信号を周波数領域入力信号で除算して、送信リンクの広帯域チャネル周波数領域インパルス応答を取得するように構成される。
【0057】
1つの例示では、上記確定モジュールは、時間領域インパルス応答のうち信号強度がプリセット閾値を超えたパルス信号を確定し、パルス信号の遅延に基づいて送信リンクの遅延補償値を確定するようにさらに構成されてもよい。
【0058】
例示的に、確定モジュールが送信リンクの遅延補償値を確定することの実現方式は、パルス信号のうちの1つ目のパルス信号の遅延を送信リンクの遅延補償値として確定することを含むことができる。
【0059】
本実施例に係る遅延補償値確定装置は、
図3、
図4、
図5に示す実施例の遅延補償値確定方法を実現するように構成され、その実現原理及び技術効果は類似し、ここでは繰り返し説明しない。
【0060】
図11は、本願の実施例に係る機器の構造模式図であり、
図11に示すように、該機器は、プロセッサ1101及びメモリ1102を備え、機器におけるプロセッサ1101の数量は、1つ又は複数であってもよく、
図11では1つのプロセッサ1101を例に取り、機器におけるプロセッサ1101とメモリ1102は、バス又は他の方式により接続されることができ、
図11では、バスにより接続されることを例に取る。
【0061】
メモリ1102は、1つのコンピュータ可読記憶媒体として、ソフトウェアプログラム、コンピュータ実行可能なプログラム及びモジュールを記憶するように構成されることができ、例えば本願の
図1、
図2、
図3の実施例における方法に対応するプログラム指令/モジュール(例えば、
図10における確定モジュール1001、変換モジュール1002)である。プロセッサ1101は、メモリ1102に記憶されているソフトウェアプログラム、指令及びモジュールを運行することにより、上記の
図3、
図4、
図5の実施例における方法を実現する。
【0062】
メモリ1102は、主にプログラム記憶エリア及びデータ記憶エリアを含むことができ、そのうち、プログラム記憶エリアは、システム、少なくとも1つの機能を操作するために必要なアプリケーションプログラムを記憶することができ、データ記憶エリアは、セットトップボックスの使用に基づいて作成されたデータなどを記憶することができる。また、メモリ1102は、高速ランダムアクセスメモリを含むことができるほか、不揮発性メモリ、例えば少なくとも1つの磁気ディスク記憶デバイス、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶デバイスを含んでもよい。
【0063】
1つの例示では、可能な場合において、上記ノードにおけるプロセッサは、その内部の論理回路、ゲート回路などのハードウエア回路により、上記の遅延補償値確定方法を実現することもできる。
【0064】
本願の実施例は、コンピュータ記憶として構成される読み書き可能な記憶媒体をさらに提供し、記憶媒体には、1つ又は複数のプログラムが記憶され、1つ又は複数のプログラムが1つ又は複数のプロセッサによって実行できる場合、例えば
図3、
図4、
図5の実施例に係る方法を実現できる。
【0065】
当業者であれば、上記明細書に開示された方法における全て又はいくつかのステップ、機器における機能モジュール/ユニットは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウエア及びその適切な組合せとして実施されることができることを理解すべきである。
【0066】
ハードウエアの実施形態では、以上の説明で言及された機能モジュール/ユニットの間の分割は、必ずしも物理的コンポーネントの分割に対応するとは限らず、例えば、1つの物理的コンポーネントは、複数の機能を有することができ、或いは1つの機能又はステップは、いくつかの物理的コンポーネントが連携することによって実行されることができる。いくつかの物理的コンポーネント又は全ての物理的コンポーネントは、プロセッサ、例えば中央処理装置、デジタル信号プロセッサ又はマイクロプロセッサにより実行されるソフトウェアとして実施されてもよいし、又はハードウエアとして実施されてもよいし、又は集積回路、例えば専用の集積回路として実施されてもよい。このようなソフトウェアは、コンピュータ可読媒体に分布されることができ、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体(又は非一時的媒体)及び通信媒体(又は一時的媒体)を含むことができる。当業者に公知のように、用語のコンピュータ記憶媒体は、情報(例えば、コンピュータ可読指令、データ構造、プログラムモジュール又は他のデータ)を記憶するためのあらゆる方法又は技術において実施される揮発性及び不揮発性、リムーバブル及びリムーバブルでない媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又は他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多機能ディスク(DVD)又は他の光ディスク記憶、磁気ケース、磁気テープ、磁気ディスク記憶又は他の磁気記憶装置、或いは所望の情報を記憶するために用いられうる、且つコンピュータからアクセス可能なあらゆる他の媒体を含むが、これらには限定されない。また、当業者であれば、通信媒体には、通常、コンピュータ可読指令、データ構造、プログラムモジュール、又は例えばキャリア又は他の伝送メカニズムなどの変調データ信号における他のデータが組み込まれ、且つあらゆる情報搬送媒体が含まれうることは、公知のことである。