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特許7529905交流モーター直接トルク制御方法、交流モーター直接トルク制御装置、電子機器及びコンピュータ可読記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】交流モーター直接トルク制御方法、交流モーター直接トルク制御装置、電子機器及びコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H02P 21/28 20160101AFI20240730BHJP
【FI】
H02P21/28
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023514156
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2020111318
(87)【国際公開番号】W WO2022040971
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】523070458
【氏名又は名称】中車株洲電力機車研究所有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馮江華
(72)【発明者】
【氏名】文宇良
(72)【発明者】
【氏名】梅文慶
(72)【発明者】
【氏名】曾小凡
(72)【発明者】
【氏名】李程
(72)【発明者】
【氏名】黄佳徳
(72)【発明者】
【氏名】鄭漢鋒
(72)【発明者】
【氏名】張朝陽
(72)【発明者】
【氏名】連国一
(72)【発明者】
【氏名】楊帆
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065392(JP,A)
【文献】特開2009-240042(JP,A)
【文献】特開平04-197097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流モーター直接トルク制御方法であって、
交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップと、
前記実際の位置が前記ステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップであって、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での前記予め設定された位置がいずれも同じであり、前記フィードバックモーメントとは、前記交流モーターのモーメントのフィードバック値である、ステップと、
前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するステップと、
前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしていると判定した場合、前記実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御するステップと、
を含むことを特徴とする交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項2】
前記交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップは具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップを含み、
それに応じて、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップは具体的に、
前記モーターモデルオブザーバによって、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項3】
前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺の中点位置である、
ことを特徴とする請求項1に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項4】
前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺における、中点に関して対称な位置である、
ことを特徴とする請求項1に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項5】
当該交流モーター直接トルク制御方法は、
現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御する場合、前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するという動作を実行しないこと、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項6】
当該交流モーター直接トルク制御方法は、
前記交流モーターの回転方向が正転であるかそれとも逆転であるかを判定するステップと、
前記回転方向に基づいて前記予め設定された条件を決定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項7】
前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が正転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界よりも小さいことを含む
ことを特徴とする請求項6に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項8】
前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が逆転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことを含む
ことを特徴とする請求項6に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項9】
当該交流モーター直接トルク制御方法は、
前記交流モーターのトルク最高点及びトルク最低点に基づいて目標値を計算するステップであって、前記目標値が、前記トルク最高点と前記トルク最低点との差の半分であるステップと、
所定のモーメントと前記目標値との差を計算して、前記所定のヒステリシスループの下境界を取得するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の交流モーター直接トルク制御方法。
【請求項10】
交流モーター直接トルク制御装置であって、
交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するための取得モジュールと、
前記実際の位置が前記ステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するための第1処理モジュールであって、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での前記予め設定された位置がいずれも同じであり、前記フィードバックモーメントとは、前記交流モーターのモーメントのフィードバック値である、第1処理モジュールと、
前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定し、前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしていると判定した場合、第2処理モジュールをトリガするための判定モジュールと、
前記実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御するための前記第2処理モジュールと、
を含むことを特徴とする交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項11】
前記取得モジュールは具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得し、
それに応じて、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得することは具体的に、
前記モーターモデルオブザーバによって、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得することを含む
ことを特徴とする請求項10に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項12】
前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺の中点位置である
ことを特徴とする請求項10に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項13】
前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺における、中点に関して対称な位置である
ことを特徴とする請求項10に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項14】
前記判定モジュールはさらに、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御する場合、前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するという動作を実行しないように構成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項15】
当該交流モーター直接トルク制御装置は、
前記交流モーターの回転方向が正転であるかそれとも逆転であるかを判定し、前記回転方向に基づいて予め設定された条件を決定するための事前処理モジュール、
をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項16】
前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が正転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界よりも小さいことを含む
ことを特徴とする請求項15に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項17】
前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が逆転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことを含む
ことを特徴とする請求項15に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項18】
当該交流モーター直接トルク制御装置は、
前記交流モーターのトルク最高点及びトルク最低点に基づいて目標値を計算し、所定のモーメントと前記目標値との差を計算して、前記所定のヒステリシスループの下境界を取得するための計算モジュールであって、前記目標値が、前記トルク最高点と前記トルク最低点との差の半分である計算モジュール、
をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の交流モーター直接トルク制御装置。
【請求項19】
電子機器であって、
コンピュータプログラムを記憶するためのメモリと、
前記コンピュータプログラムを実行するときに、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の交流モーター直接トルク制御方法のステップを実現するためのプロセッサーと、
を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項20】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、プロセッサーによって実行されるとき、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の交流モーター直接トルク制御方法のステップを実現する、
ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、交流モーター制御の分野に関し、特に、交流モーター直接トルク制御方法、装置及び関連コンポーネントに関している。
【背景技術】
【0002】
交流伝動分野において、現在の制御方法はベクトル制御と直接トルク制御があり、ベクトル制御は、デカップリング制御の思想を使用して、モーターの三相電流を、同期回転座標系での直流電流に変換して閉ループ制御を行い、ベクトル制御は、連続制御システムであり、中高スイッチング周波数での動的・静的性能が比較的よいが、低スイッチング周波数での動的性能が悪いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
直接トルク制御は、デカップリング制御の思想を捨て、瞬時電圧ベクトル理論を使用して、ステータ座標系で上下境界のヒステリシスループ比較制御を直接行って、トルク及び鎖交磁束を一定の許容誤差範囲内に制御し、その制御システムのトルク応答は、迅速且つオーバーシュートがなく、高動、静的性能を有する交流調速方法である。伝統的な直接トルク制御は、ステータ鎖交磁束を固定の多角形鎖交磁束軌跡、例えば十八角形及び六角形鎖交磁束軌跡上で動作させることができ、この場合、トルクは、上下境界のヒステリシスループ比較を使用して、モーメントを一定の許容誤差範囲内に制御し、許容誤差範囲の大きさは、スイッチング周波数調節器によって調節される。ところが、この解決策は、スイッチング周波数が一定ではなく、電流高調波含有量が大きいという問題が存在するため、その応用範囲をある程度制限する。
【0004】
そこで、上記の技術問題を解决するための解決策を提供することは、当業者が現在解决すべき問題である。
【0005】
本出願は、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たすことができ、出力電圧高調波を減少させるとともに、固定されたスイッチング周波数に従って直接トルク制御を実現し、パルス出力を最適化することができ、適用範囲が広い交流モーター直接トルク制御方法、装置、電子機器及びコンピュータ可読記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術問題を解决するために、本出願は、交流モーター直接トルク制御方法を提供し、
交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップと、
前記実際の位置が前記ステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップであって、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での前記予め設定された位置がいずれも同じであるステップと、
前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するステップと、
そうである場合、前記実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御するステップと、を含む。
【0007】
好ましくは、前記交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップは具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップを含み、
それに応じて、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップは具体的に、
前記モーターモデルオブザーバによって、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップを含む。
【0008】
好ましくは、前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺の中点位置である。
【0009】
好ましくは、前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺における中点に関して対称な位置である。
【0010】
好ましくは、当該交流モーター直接トルク制御方法は、
現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御する場合、前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するという動作を実行しないことをさらに含む。
【0011】
好ましくは、当該交流モーター直接トルク制御方法は、
前記交流モーターの回転方向が正転であるかそれとも逆転であるかを判定するステップと、
前記回転方向に基づいて前記予め設定された条件を決定するステップと、をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が正転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界よりも小さいことを含む。
【0013】
好ましくは、前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が逆転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことを含む。
【0014】
好ましくは、当該交流モーター直接トルク制御方法は、
前記交流モーターのトルク最高点及びトルク最低点に基づいて目標値を計算するステップであって、前記目標値が、前記トルク最高点と前記トルク最低点との差の半分であるステップと、
所定のモーメントと前記目標値との差を計算して、前記所定のヒステリシスループの下境界を取得するステップと、をさらに含む。
【0015】
上記の技術問題を解决するために、本出願は、交流モーター直接トルク制御装置をさらに提供し、
交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するための取得モジュールと、
前記実際の位置が前記ステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するための第1処理モジュールであって、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での前記予め設定された位置がいずれも同じである第1処理モジュールと、
前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定し、そうである場合、第2処理モジュールをトリガするための判定モジュールと、
前記実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御するための前記第2処理モジュールと、を含む。
【0016】
好ましくは、前記取得モジュールは具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得し、
それに応じて、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得する過程は具体的に、
前記モーターモデルオブザーバによって、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得するステップを含む。
【0017】
好ましくは、前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺の中点位置である。
【0018】
好ましくは、前記予め設定された位置は、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺における中点に関して対称な位置である。
【0019】
好ましくは、前記判定モジュールはさらに、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御する場合、前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するという動作を実行しないように構成される。
【0020】
好ましくは、当該交流モーター直接トルク制御装置は、
前記交流モーターの回転方向が正転であるかそれとも逆転であるかを判定し、前記回転方向に基づいて予め設定された条件を決定するための事前処理モジュールをさらに含む。
【0021】
好ましくは、前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が正転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界よりも小さいことを含む。
【0022】
好ましくは、前記予め設定された条件は、
前記交流モーターの回転方向が逆転である場合、前記フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことを含む。
【0023】
好ましくは、当該交流モーター直接トルク制御装置は、
前記交流モーターのトルク最高点及びトルク最低点に基づいて目標値を計算し、所定のモーメントと前記目標値との差を計算して、前記所定のヒステリシスループの下境界を取得するための計算モジュールであって、前記目標値が、前記トルク最高点と前記トルク最低点との差の半分である計算モジュール、をさらに含む。
【0024】
上記の技術問題を解决するために、本出願は電子機器をさらに提供し、
コンピュータプログラムを記憶するためのメモリと、
前記コンピュータプログラムを実行するときに、以上のいずれか1項に記載の交流モーター直接トルク制御方法のステップを実現するためのプロセッサーと、を含む。
【0025】
上記の技術問題を解决するために、本出願は、コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータプログラムは、プロセッサーによって実行されるとき、以上のいずれか1項に記載の交流モーター直接トルク制御方法のステップを実現する。
【発明の効果】
【0026】
本出願は、交流モーター直接トルク制御方法を提供し、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置に零ベクトルを挿入し、各辺での予め設定された位置がいずれも同じであり、直接トルク制御を行う際に、所定のヒステリシスループの単一境界とフィードバックモーメントとを比較する単一境界比較スキームを選択して、対応するパルス信号を選択して出力し、インバータの動作を制御し、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たし、出力電圧高調波を減少させるとともに、固定されたスイッチング周波数に従って直接トルク制御を実現し、パルス出力を最適化することができ、適用範囲が広い。本出願は、交流モーター直接トルク制御装置、電子機器及びコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、上記の交流モーター直接トルク制御方法と同じ有益効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本出願による永久磁石同期モーターの、ステータαβ座標系及びdq座標系における空間ベクトル図である。
図2】本出願による電圧ベクトル及びステータ鎖交磁束軌跡の模式図である。
図3】本出願による交流モーター直接トルク制御方法のステップのフローチャートである。
図4】本出願の実施例による同期三分周六角形ステータ鎖交磁束軌跡の模式図である。
図5】本出願の実施例による予め設定された位置の模式図である。
図6】本出願の実施例による別の予め設定された位置模式図である。
図7】本出願の実施例による別の予め設定された位置模式図である。
図8】本出願の実施例によるモーメント波形及びモーメント比較の模式図である。
図9】本出願の実施例による永久磁石同期モーター直接トルク制御の構成概略図である。
図10】本出願による交流モーター直接トルク制御装置の構成概略図である。
図11】本出願による電子機器の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本出願の実施例をより明らかに説明するために、以下、実施例において使用される必要がある図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の記載の図面は本出願のいくつかの実施例のみであり、当業者にとって、進歩性に値する労働をしないことを前提として、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0029】
本出願は、交流モーター直接トルク制御方法、装置、電子機器及コンピュータ可読記憶媒体を提供することを目的とし、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たすことができ、出力電圧高調波を減少させるとともに、固定されたスイッチング周波数に従って直接トルク制御を実現し、パルス出力を最適化することができ、適用範囲が広い。
【0030】
本出願の実施例の目的、技術解決策及び利点がより明瞭になるために、以下、本出願の実施例の図面を結合して、本出願の実施例の技術案を明らか且つ完全に記載し、明らかに、記載された実施例は全ての実施例ではなく、本出願の一部の実施例である。本出願の実施例に基づいて、当業者が進歩性に値する労働をしないことを前提として、取得した他の全ての実施例はいずれも本出願の保護範囲に該当する。
【0031】
本出願による交流モーター直接トルク制御方法を容易に理解するために、以下、永久磁石同期モーターを例として、直接トルク制御原理を説明し、永久磁石同期モーターの、ステータ
座標系及び
座標系における空間ベクトルについて図1を参照すればよく、d軸を永久磁石励起磁場の軸線方向とする。モーター電磁トルクの方程式は、次のようになり、
【数1】

ここで、
はステータ鎖交磁束ベクトル
とロータ鎖交磁束ベクトル
との夾角であり、一般的にトルク角と呼ばれ、
を変更すると
を変更できることを示す。
【0032】
直接トルク制御の制御変数は、ステータ鎖交磁束ベクトル
であり、モーター静止座標系でのモーターモデルに基づいて、ステータ鎖交磁束
とステータ電圧ベクトル
との関係は、次のようになり、
【数2】

以上の式は、ステータ鎖交磁束
がステータ電圧
によって制御され、静止ベクトルを合理的に選択することで、
の振幅値及び角度を調節することができることを示す。
【0033】
定常状態の場合、ステータ鎖交磁束ベクトル
及びロータは、いずれも同期速度で回転し、負荷角
は不変である。ところが、過渡状況で、ステータ鎖交磁束ベクトル
の回転速度がロータ速度を超えると、負荷角
が大きくなり、さらに、ステータ鎖交磁束
振幅値をそのまま保持すると、電磁トルクが増える。その逆に、ステータ鎖交磁束
振幅値をそのまま保持し、その回転速度をロータ速度より低くすると、負荷角
が小さくなり、電磁トルクが低減する。
【0034】
インバータの8つのスイッチング状態において、図2に示すように、適切なスイッチング電圧ベクトルを選択することで、ステータ鎖交磁束
の回転方向及び振幅値を制御することができ、さらに、トルクを制御することができる。ステータ鎖交磁束が鎖交磁束セクタ1における
にある場合、ステータ鎖交磁束の振幅値の上境界の閾値に達し、トルクを大きくするには、
を選択してステータ鎖交磁束を前に回転させ、負荷角を大きくしながらステータ鎖交磁束の振幅値を低減させることができる。トルクを低減させるには、
を選択してステータ鎖交磁束を後方に回転させ、負荷角を大きくしながらステータ鎖交磁束の振幅値を低減させることができ、トルクを保持するには、零ベクトルを選択することができる。
【0035】
以下、本出願による交流モーター直接トルク制御方法について詳しく説明する。
【0036】
図3を参照して、図3は、本出願による交流モーター直接トルク制御方法のステップのフローチャートであり、当該交流モーター直接トルク制御方法は、以下のステップを含む。
ステップS101:交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得する;
具体的に、直接トルク制御は、ステータ鎖交磁束を、例えば十八角形のステータ鎖交磁束軌跡、六角形のステータ鎖交磁束軌跡などの固定された多角形鎖交磁束軌跡上で動作させることができる。本実施例は、同期三分周六角形ステータ鎖交磁束軌跡を例として説明し、無論、本出願は、他のマルチレベルコンバータ、多角形ステータ鎖交磁束軌跡及びマルチ分周に対しても同様に適用することができる。
【0037】
図4を参照して、図4は、本出願の実施例による同期三分周六角形ステータ鎖交磁束軌跡の模式図であり、ステータ鎖交磁束は、当該ステータ鎖交磁束軌跡に沿って動作する。ここで、ステータ鎖交磁束が当該ステータ鎖交磁束軌跡の異なる位置で動作する場合、選択する必要がある電圧ベクトルが異なり、出力するパルス信号が異なり、パルス出力を最適化するために、本実施例はまず、ステータ鎖交磁束が当該ステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を決定する。具体的に、本出願は、所定の時間周期に従って、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得してもよいし、取得指令を受信した後、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得してもよく、実際の位置を取得するトリガ条件について、本実施例は、限定していない。
【0038】
S102:実際の位置がステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、交流モーターのフィードバックモーメントを取得し、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置はいずれも同じである。
【0039】
具体的に、当該ステップを実行する前に、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置に零ベクトルを挿入する操作を含んでもよく、これにより、ステータ鎖交磁束が当該予め設定された位置まで動作した場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、直接トルク制御を実現する。出力電圧高調波を低減させるために、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置がいずれも同じである。好適な実施例として、図5を参照して、予め設定された位置は、各辺の中点位置であってもよく、別の好適な実施例として、図6を参照して、予め設定された位置は、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺における、中点に関して対称な位置であってもよく、別の好適な実施例として、予め設定された位置は、隣接する2つのセクタの境界に関して対称な位置であってもよく、図7を参照して、セクタ1及びセクタ2に挿入された零ベクトルは、セクタ1とセクタ2との境界に関して対称であり、上記の予め設定された位置に零ベクトルを挿入することで、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たし、出力電圧高調波をさらに低減させることができ、この場合、出力相電圧波形について、図8に示すようになる。
【0040】
具体的に、ステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置まで動作した場合、予め設定された位置には零ベクトルが事前に挿入されたため、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御する。零ベクトルに対応するパルス信号を出力する過程では、モーメントを一定の許容誤差範囲内に制御するように、交流モーターのフィードバックモーメントを取得してヒステリシスループ比較を行う。本実施例において、所定の取得周期に従って交流モーターのフィードバックモーメントを取得してもよいし、取得指令を受信した後、交流モーターのフィードバックモーメントを取得してもよく、交流モーターのフィードバックモーメントを取得するトリガ条件について、本実施例は具体的に限定していない。
【0041】
S103:フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定し、そうである場合、S104を実行する;
具体的に、当該ステップは、フィードバックモーメントに基づいてヒステリシスループ比較を行って、モーメントを調整する必要があるかどうかを判定し、モーメントを一定の許容誤差範囲内に制御することを目的とする。好適な実施例として、本出願は、ヒステリシスループ単一境界比較スキームを使用して、フィードバックモーメントと、所定のヒステリシスループの上境界又は所定のヒステリシスループの下境界とを比較し、それに対応して、予め設定された条件は、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界より小さいこと、又はフィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことである。ここで、交流モーターの正転又は逆転時に、異なる実効電圧ベクトル及び零ベクトルの、モーメントに対する作用が異なり、交流モーターの正転に対して、零ベクトルが作用する場合、モーメントが低減し、モーメントが所定のヒステリシスループ下境界に低減した場合、実効電圧ベクトルを選択してモーメントを増やし、交流モーターの逆転に対して、零ベクトルが作用する場合、モーメントが増えて、モーメントが所定のヒステリシスループの上境界に増えた場合、有効ベクトルを選択してモーメントを低減させる。直流トルク制御の精度を向上させるために、好適な実施例として、本出願による交流モーター直接トルク制御方法は、交流モーターの回転方向が正転であるかそれとも逆転であるかを判定し、回転方向に基づいて予め設定された条件を決定するステップをさらに含む。具体的に、交流モーターが正転している場合、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界よりも小さいことを予め設定された条件として選択し、交流モーターが逆転している場合、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことを予め設定された条件として選択する。ここで、交流モーターが正転している場合、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界以上であると、予め設定された条件を満たさないと判定し、それに対応して、交流モーターが逆転している場合、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界以下であると、予め設定された条件を満たさないと判定する。
【0042】
好適な実施例として、以下の解決策によって所定のヒステリシスループの下境界を取得し、即ち、交流モーターのトルク最高点及びトルク最低点に基づいて目標値を計算し、目標値は、トルク最高点とトルク最低点との差の半分であり、設定モーメントと目標値との差を計算して所定のヒステリシスループの下境界を取得する。
【0043】
S104:実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、インバータの動作を制御する。
【0044】
具体的に、図5から図7を参照して、実効電圧ベクトル

はステータ鎖交磁束軌跡を6つのセクタに区画し、ステータ鎖交磁束が異なるセクタで動作する場合、選択された現在の実効電圧ベクトルが異なるため、ステータ鎖交磁束の実際の位置に応じて実効電圧ベクトルを選択してから、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、インバータの動作を制御する必要がある。
【0045】
具体的に、図5を参照して、予め設定された位置が各辺の中点位置であることを例として、例えば、現在のステータ鎖交磁束が第1セクタで動作すると仮定すると、交流モーターが正転しており、モーメントを低減させる必要がある場合、零ベクトル
を発し、モーメントが所定のヒステリシスループの下境界に低減した場合、現在の実効電圧ベクトルとして、現在のステータ鎖交磁束の実際の位置が所在する辺に平行する電圧ベクトル
を選択してモーメントを増やし、実効電圧ベクトルを発している間、S103の、フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するという動作を実行しない。ここで、実効電圧ベクトルを発している間、モーメントが増え、ステータ鎖交磁束が反時計回りに動作し、予め設定された位置まで動作した場合、零ベクトル
を出力し、モーメントを低減させ、零ベクトルを発している過程では、S103からS104のステップを繰り返し、モーメント波形及びモーメント比較の模式図について、図8を参照すればよく、交流モーターが逆転しており、モーメントを増やす必要がある場合、零ベクトル
を発し、モーメントが所定のヒステリシスループの上境界に増えた場合、現在の実効電圧ベクトルとして、現在ステータ鎖交磁束の実際の位置が所在する辺に平行する電圧ベクトル
を選択し、モーメントを低減させる。ここで、本出願の解決策を使用することで、固定キャリア比の制御を実現することができ、キャリア比は、現在のスイッチング周波数を現在の動作周波数で割ることで得られ、動作周波数が固定であるため、スイッチング周波数が固定である。
【0046】
なお、零ベクトルは
及び
を含み、ここで、
と総称され、具体的に、スイッチング回数が最小であるという原則に従って
及び
を選択して使用すべきである。
【0047】
このように、本実施例において、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置に零ベクトルを挿入し、各辺での予め設定された位置がいずれも同じであり、直接トルク制御を行う際に、所定のヒステリシスループの単一境界とフィードバックモーメントとを比較する単一境界比較スキームを選択して、対応するパルス信号を選択して出力しインバータの動作を制御し、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たし、出力電圧の高調波を減少させるとともに、固定されたスイッチング周波数に従って直接トルク制御を実現し、パルス出力を最適化することができ、適用範囲が広い。
【0048】
上記実施例に基づいて、
好適な実施例として、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得する過程は具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するステップを含み、
それに応じて、交流モーターのフィードバックモーメントを取得する過程は具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのフィードバックモーメントを取得することを含む。
【0049】
具体的に、図9を参照して、図9は、本出願による永久磁石同期モーター直接トルク制御の構成概略図であり、コンバータは中間電圧及び2つのステータ電流を収集し、モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束、電磁トルク及び回転速度情報を観測する。
【0050】
図10を参照して、図10は、本出願による交流モーター直接トルク制御装置の構成概略図であり、当該交流モーター直接トルク制御装置は、
交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得するための取得モジュール11と、
実際の位置がステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、交流モーターのフィードバックモーメントを取得するための第1処理モジュール12であって、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置がいずれも同じである第1処理モジュール12と、
フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定し、そうである場合、第2処理モジュール14をトリガするための判定モジュール13と、
実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、インバータの動作を制御するための前記第2処理モジュール14と、を含む。
【0051】
このように、本実施例において、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置に零ベクトルを挿入し、各辺での予め設定された位置がいずれも同じであり、直接トルク制御を行う際に、所定のヒステリシスループの単一境界とフィードバックモーメントとを比較する単一境界比較スキームを選択して、対応するパルス信号を選択して出力しインバータの動作を制御し、それにより、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たし、出力電圧の高調波を減少させるとともに、固定されたスイッチング周波数に従って直接トルク制御を実現し、パルス出力を最適化することができ、適用範囲が広い。
【0052】
好適な実施例として、取得モジュール11は具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得し、
それに応じて、交流モーターのフィードバックモーメントを取得する過程は具体的に、
モーターモデルオブザーバによって、交流モーターのフィードバックモーメントを取得することを含む。
【0053】
好適な実施例として、予め設定された位置は、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺の中点位置である。
【0054】
好適な実施例として、予め設定された位置は、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺における、中点に関して対称な位置である。
【0055】
好適な実施例として、判定モジュール13はさらに、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、インバータの動作を制御する場合、フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定するという動作を実行しないように構成される。
【0056】
好適な実施例として、当該交流モーター直接トルク制御装置は、
交流モーターの回転方向が正転であるかそれとも逆回転であるかを判定し、回転方向に基づいて予め設定された条件を決定するための事前処理モジュールをさらに含む。
【0057】
好適な実施例として、予め設定された条件は、
交流モーターの回転方向が正転である場合、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの下境界よりも小さいことを含む。
【0058】
好適な実施例として、予め設定された条件は、
交流モーターの回転方向が逆転である場合、フィードバックモーメントが所定のヒステリシスループの上境界よりも大きいことを含む。
【0059】
好適な実施例として、当該交流モーター直接トルク制御装置は、
交流モーターのトルク最高点及びトルク最低点に基づいて目標値を計算し、所定のモーメントと目標値作との差を計算して所定のヒステリシスループの下境界を取得するための計算モジュールであって、目標値が、トルク最高点とトルク最低点との差の半分である計算モジュールをさらに含む。
【0060】
また、本出願は、電子機器をさらに提供し、図11を参照して、本出願の実施例の電子機器の構成概略図を示し、本実施例の電子機器は、プロセッサー21及びメモリ22を含んでもよい。
【0061】
好ましくは、当該電子機器は、通信インタフェース23、入力ユニット24、ディスプレイ25及び通信バス26を含んでもよい。
【0062】
プロセッサー21、メモリ22、通信インタフェース23、入力ユニット24、ディスプレイ25は、いずれも通信バス26によって相互の間の通信を完了する。
【0063】
本出願の実施例において、当該プロセッサー21は、中央演算処理装置(Central Processing Unit、CPU)、特定用途向け集積回路、デジタル信号プロセッサー、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又は他のプログラマブルロジックデバイスなどであってもよい。
【0064】
当該プロセッサーは、メモリ22に記憶されたプログラムを呼び出すことができる。具体的に、プロセッサーは、以下の交流モーター直接トルク制御方法の実施例における、電子機器側で実行される操作を実行することができる。
【0065】
メモリ22には、1つ又は複数のプログラムが記憶され、プログラムはプログラムコードを含むことができ、前記プログラムコードは、コンピュータ操作指令を含み、本出願の実施例において、当該メモリには少なくとも、
交流モーターのステータ鎖交磁束がステータ鎖交磁束軌跡上で動作する実際の位置を取得する機能と、
前記実際の位置が前記ステータ鎖交磁束軌跡のいずれかの辺での予め設定された位置である場合、零ベクトルに対応するパルス信号を出力してインバータの動作を制御し、前記交流モーターのフィードバックモーメントを取得する機能であって、前記ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での前記予め設定された位置がいずれも同じである機能と、
前記フィードバックモーメントが予め設定された条件を満たしているかどうかを判定する機能と、
そうである場合、前記実際の位置に応じて現在の実効電圧ベクトルを決定し、現在の実効電圧ベクトルに対応するパルス信号を出力して、前記インバータの動作を制御する機能と、を実現するためのプログラムが記憶される。
【0066】
このように、本実施例において、ステータ鎖交磁束軌跡の各辺での予め設定された位置に零ベクトルを挿入し、各辺での予め設定された位置がいずれも同じであり、直接トルク制御を行う際に、所定のヒステリシスループの単一境界とフィードバックモーメントとを比較する単一境界比較スキームを選択して、対応するパルス信号を選択して出力しインバータの動作を制御し、それにより、出力電圧の三相対称、半波対称、及び四分の一対称の要件を満たし、出力電圧の高調波を減少させるとともに、固定されたスイッチング周波数に従って直接トルク制御を実現し、パルス出力を最適化することができ、適用範囲が広い。
【0067】
可能な実現形態において、当該メモリ22は、プログラム記憶領域及びデータ記憶領域を含み、プログラム記憶領域はオペレーティングシステム、及び少なくとも1つの機能(例えば、所定のヒステリシスループの下境界の計算機能など)に必要なアプリケーションプログラムなどを記憶することができ、データ記憶領域は、コンピュータの使用中に作成されたデータを記憶することができる。
【0068】
また、メモリ22は、高速ランダムアクセスメモリを含んでもよいし、不揮発性メモリ、例えば少なくとも1つの磁気ディスク記憶装置、又は他の揮発性固体記憶装置を含んでもよい。
【0069】
当該通信インタフェース23は、例えば、GSM(登録商標)モジューのインタフェースのような、通信モジュールのインタフェースであってもよい。
【0070】
本出願は、ディスプレイ24及び入力ユニット25などを含んでもよい。
【0071】
無論、図11に示すモノのインターネット機器の構造は、本出願の実施例におけるモノのインターネット機器に対する限定を構成するものではなく、実際の応用において、電子機器は、図11に示すより多く又は少ない部品、或いはいくつかの部品の組み合わせを含んでもよい。
【0072】
また、本出願は、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供し、前記コンピュータ可読記憶媒体にはコンピュータプログラムが記憶され、前記コンピュータプログラムはプロセッサーによって実行されるとき、以上のいずれか1つの実施例に記載の交流モーター直接トルク制御方法のステップを実現する。
【0073】
本出願によって提供されるコンピュータ可読記憶媒体の紹介について、上記の実施例を参照すればよく、ここで、本出願は贅言していない。
【0074】
本出願によって提供されるコンピュータ可読記憶媒体は、上記の交流モーター直接トルク制御方法と同じ有益効果を有する。
【0075】
また、本明細書において、第1及び第2のような関係用語は、1つのエンティティ又は操作を他のエンティティ又は操作と区別するためのものであり、これらのエンティティ又は操作同士の間にはこのような実際の関係又は順序があることを要件又は暗示するとは限らない。且つ、「含む」「包含」という用語又はそれらの他の任意の変形は、非排他的包含を含むことを意図し、それにより、一連の要素を含む過程、方法、品物又は機器はそれらの要素を含むだけでなく、更に明確に列挙されていない他の要素を含み、或いは、更にこのような過程、方法、品物又は機器に固有の要素を含む。これ以上限定しない限り、「○○を含む」という文で限定された要素は、該要素を含む過程、方法、品物又は機器には更に他の同じ要素があることを排除しない。
【0076】
開示された実施例に対する上記の説明によって、当業者は、本出願を実現又は使用できる。これらの実施例に対する多種の補正は、当業者にとって自明であり、本明細書に定義された一般的な原理は、本出願の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施例において実現されてもよい。従って、本出願は、本明細書に示されるこれらの実施例に限定されず、本明細書が開示した原理及び新規特点と一致する最も幅広い範囲に合う。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11