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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B62D5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023529404
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024116
(87)【国際公開番号】W WO2022269900
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川村 尚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】戎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 勇基
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 友紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康介
(72)【発明者】
【氏名】梅藤 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】仲秋 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 喜章
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和久
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156383(JP,A)
【文献】特開2017-024702(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069423(WO,A1)
【文献】米国特許第8584359(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジを有し、ステアリングシャフトを回転可能に支持する円筒状の支持筒と、
前記ステアリングシャフトにトルクを付与するように構成された減速機と、
前記減速機を収容する円筒部分を有し、前記円筒部分が前記フランジと同軸に配置されるハウジングと、
前記フランジと前記円筒部分とを互いに連結するボルトと、を有し、
前記フランジおよび前記円筒部分は、前記ボルトが設けられる箇所とは異なる箇所に、前記フランジの半径方向に互いに係合する係合部分を有するステアリング装置。
【請求項2】
前記係合部分は、前記支持筒の円周方向において、前記ボルトが設けられる前記箇所から離れた箇所に位置する、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記ボルトは複数のボルトを含み、
複数の前記ボルトは、前記支持筒の軸線を中心とする円に沿って互いに間隔をあけて配置され、
複数の前記ボルトの各々は頭部および軸部を有し、
前記係合部分は、前記支持筒の軸方向からみて、複数の前記ボルトの頭部に外接する仮想円の内側に位置する、請求項1または請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記係合部分は、前記支持筒の軸方向からみて、前記ハウジングの輪郭の内側に位置する、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記係合部分は、前記円筒部分の外周面に設けられる複数の規制部を含み、
複数の前記規制部は前記円筒部分の円周方向に互いに間隔をあけて配置され、
複数の前記規制部の各々は、前記フランジの半径方向において前記フランジの外周面と向き合いかつ係合する内側面を有する、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記係合部分は、前記フランジの外周面に設けられる複数の規制部を含み、
複数の前記規制部は前記フランジの円周方向に互いに間隔をあけて配置され、
複数の前記規制部の各々は、前記フランジの半径方向において前記円筒部分の外周面と向き合いかつ係合する内側面を有する、請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
複数の前記規制部のうちの少なくとも一部は、前記支持筒の軸方向からみて、前記ハウジングの輪郭の内側に位置する請求項5または請求項6に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記減速機は、前記ステアリングシャフトと一体回転するウォームホイール、および前記ウォームホイールに噛み合うウォームを有し、
前記ハウジングは、前記ウォームホイールが収容されるウォームホイールハウジング部材、および前記ウォームが収容されるウォームハウジング部材を有し、
前記円筒部分は、前記ウォームホイールハウジング部材である請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを利用してステアリングホイールの操作を補助する電動パワーステアリング装置が存在する。たとえば特許文献1の電動パワーステアリング装置は、電動アシスト装置を有している。電動アシスト装置はモータおよびハウジングを有している。ハウジングはモータを支持する。ハウジングの内部には、ウォーム式の減速機が収容されている。モータのトルクは、減速機を介してステアリングシャフトに伝達される。
【0003】
ハウジングは第一ハウジング部材および第二ハウジング部材を有している。第一ハウジング部材および第二ハウジング部材は、ステアリングシャフトの軸方向において互いに嵌め合わせられている。第一ハウジング部材の第二ハウジング部材とは反対側の側面には、円筒状のステアリングコラムがボルトによって連結されている。ステアリングコラムの内部には、ステアリングシャフトが回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-71590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電動式パワーステアリング装置では、つぎのようなことが懸念される。すなわち、第一ハウジング部材とステアリングコラムとの同軸度が確保されない場合、第一ハウジング部材の内部に設けられる部材およびステアリングコラムの内部に設けられる部材のうち、互いに同一直線上に位置すべき部材同士の同軸度も確保されない。
【0006】
このため、第一ハウジング部材にステアリングコラムを取り付ける際、いわゆる芯出しを行う必要がある。芯出しとは、第一ハウジング部材の軸線とステアリングコラムの軸線とが同一直線上に位置するように、第一ハウジング部材とステアリングコラムとの相対的な位置関係を調節する作業をいう。ただし、芯出し作業は手間である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るステアリング装置は、フランジを有し、ステアリングシャフトを回転可能に支持する円筒状の支持筒と、前記ステアリングシャフトにトルクを付与するように構成された減速機と、前記減速機を収容する円筒部分を有し、前記円筒部分が前記フランジと同軸に配置されるハウジングと、前記フランジと前記円筒部分とを互いに連結するボルトと、を有している。前記フランジおよび前記円筒部分は、前記ボルトが設けられる箇所とは異なる箇所に、前記フランジの半径方向に互いに係合する係合部分を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ステアリング装置の一実施の形態の構成を示す模式図。
図2図1のステアリングコラムとハウジングとが連結された状態を示す斜視図。
図3図2のハウジングとロアーチューブとの連結部分を示す斜視図。
図4図2のハウジングの斜視図。
図5図2のハウジングの平面図。
図6図2のハウジングの輪郭を示す平面図。
図7】比較例のステアリングコラムとハウジングとの連結部分を示す斜視図。
図8】比較例のステアリングコラムとハウジングとの連結部分をそれらの軸線に沿って切断した半断面図。
図9】他の実施の形態におけるハウジングの輪郭を示す平面図。
図10】他の実施の形態におけるハウジングの平面図。
図11】他の実施の形態におけるステアリングコラムとハウジングとの連結部分を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ステアリング装置の一実施の形態を説明する。
【0010】
図1に示すように、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト2、中間軸3、ピニオン軸4、およびラック軸5を有している。ステアリングシャフト2の第1の端部には、ステアリングホイール6が連結されている。ステアリングシャフト2の第2の端部には、自在継手7を介して中間軸3の第1の端部が連結されている。中間軸3の第2の端部には自在継手8を介してピニオン軸4の第1の端部が連結されている。ピニオン軸4の第2の端部には、ピニオン4aが設けられている。ピニオン4aは、ラック軸5に設けられたラック5aに噛み合っている。ラック軸5は、車体のフレーム9に固定されるハウジング10の内部に支持されている。ラック軸5は、車両の進行方向に対する左方向または右方向へ移動可能である。ラック軸5の両端部はタイロッド(図示略)を介して左右の転舵輪(図示略)に連結される。
【0011】
ステアリングシャフト2は、アウタシャフト11およびインナシャフト12を有している。アウタシャフト11およびインナシャフト12は、たとえばスプライン結合によって互いに連結されている。アウタシャフト11およびインナシャフト12は、一体回転可能かつ軸方向に沿って相対移動可能である。ステアリングシャフト2は、ステアリングホイール6を上にして車両の前後方向に対して斜めに設けられる。
【0012】
ステアリング装置1は、ステアリングコラム15を有している。ステアリングコラム15には、ステアリングシャフト2が挿通されている。ステアリングシャフト2は、軸受(図示略)を介してステアリングコラム15に対して回転可能に支持される。ステアリングコラム15は、車体に設けられる2つのフレーム13,14に取り付けられる。一方のフレーム13は、車両の前後方向において、他方のフレーム14よりも後方に位置している。
【0013】
ステアリングコラム15は、アッパーチューブ16、ロアーチューブ17およびハウジング18を有している。アッパーチューブ16は円筒状である。ロアーチューブ17は、円筒状であり、フランジ31を有している。アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、互いに嵌め合わされている。一例として、アッパーチューブ16は、ロアーチューブ17の第1の端部に挿入されている。第1の端部は、フランジ31が設けられた第2の端部と反対側の端部である。アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、ステアリングシャフト2の軸方向に互いに相対移動可能である。ロアーチューブ17は、コラムブラケット17Aを有している。ロアーチューブ17は、コラムブラケット17Aを介して車体のフレーム13に取り付けられる。
【0014】
アッパーチューブ16およびロアーチューブ17は、ステアリングシャフト2を回転可能に支持する支持筒を構成する。
【0015】
ハウジング18は、ロアーチューブ17の第2の端部に連結されている。ハウジング18は、2つの支持部18A(図1では1つのみ図示)および支持軸18Bを有している。2つの支持部18Aは、ハウジング18のロアーチューブ17とは反対側の側面に設けられている。2つの支持部18Aは、車体の幅方向において互いに対向している。支持軸18Bは、2つの支持部18Aの間を延びている。支持軸18Bは、車体のフレーム14に固定されたブラケット24に対して回転可能に連結される。
【0016】
ハウジング18の外部には、操舵補助用のモータ19が設けられている。ハウジング18の内部には、減速機20が収容されている。減速機20は、モータ19の回転を減速し、この減速される回転をインナシャフト12に伝達する。減速機20は、ウォーム21およびウォームホイール22を有するウォーム減速機である。ウォーム21は、モータ19の出力軸(図示略)に対して一体回転可能に連結される。ウォーム21の軸線およびモータ19の出力軸の軸線は、同一の直線上に位置している。ウォームホイール22は、ウォーム21と噛み合っている。ウォームホイール22は、インナシャフト12と一体回転可能に設けられている。ウォームホイール22の軸線およびインナシャフト12の軸線は、同一の直線上に位置している。
【0017】
ステアリング装置1はロック機構(図示略)を有している。ロック機構は、レバー(図示略)の操作を通じて、ステアリングコラム15の支持軸18Bを中心とする揺動およびステアリングコラム15の伸縮を選択的にロック及びアンロックする。レバーをアンロック操作することにより、ステアリングコラム15は支持軸18Bを中心としてコラムブラケット17Aに対して揺動することが可能となる。レバーをアンロック操作した後、ステアリングホイール6を上または下へ移動させることによって、ステアリングホイール6の上下位置を調節することが可能である。また、レバーをアンロック操作することにより、アッパーチューブ16はロアーチューブ17に対してステアリングシャフト2の軸方向に移動することが可能となる。レバーをアンロック操作した後、ステアリングホイール6をステアリングシャフト2の軸方向に移動させることにより、ステアリングホイール6の軸方向における位置を調節することが可能である。
【0018】
つぎに、ロアーチューブ17の構成を詳細に説明する。
【0019】
図2に示すように、ロアーチューブ17はフランジ31を有している。フランジ31はロアーチューブ17の第2の端部に設けられている。ロアーチューブ17の第2の端部は、アッパーチューブ16が挿入される第1の端部と反対側の端部である。フランジ31は円環状の平板である。フランジ31は2つの取付部31Aを有している。2つの取付部31Aは、フランジ31の外周面に設けられている。2つの取付部31Aは、フランジ31の外周面から半径方向外側に突出している。2つの取付部31Aは、フランジ31の軽方向において互いに反対側に位置している。図3に示すように、2つの取付部31Aは、それぞれ挿通孔31Bを有している。挿通孔31Bにはボルト30が挿通される。このボルト30をハウジング18に締め付けることにより、フランジ31はハウジング18に固定される。ボルト30は頭部30Aおよび軸部30Bを有する。
【0020】
つぎに、ハウジング18の構成を詳細に説明する。
【0021】
図4に示すように、ハウジング18は、ウォームホイールハウジング部材41およびウォームハウジング部材42を有している。ウォームホイールハウジング部材41は円筒状であり、開口部41Aを有する。開口部41Aは、ウォームホイールハウジング部材41の軸線に沿ってロアーチューブ17へ向けて開口している。ウォームホイールハウジング部材41の外径は、フランジ31の外径と実質的に同じである。ウォームハウジング部材42は、ウォームホイールハウジング部材41の外周面に連結されている。ウォームハウジング部材42は円筒状であって、ウォームホイールハウジング部材41の軸線に対して直交する方向に延びている。ウォームホイールハウジング部材41の内部とウォームハウジング部材42の内部とは、連通孔43を介して互いに連通している。ウォームホイールハウジング部材41はハウジング18の円筒部分を構成する。
【0022】
ウォームホイールハウジング部材41の内部には、ウォームホイール22が回転可能に収容される。ウォームハウジング部材42の内部には、ウォーム21が軸受(図示略)を介して回転可能に支持される。ウォームホイール22とウォーム21とは、ハウジング18の連通孔43を介して互いに噛み合う。
【0023】
ウォームホイールハウジング部材41は、2つの締付部44を有している。各締付部44は、フランジ31をハウジング18に固定する際にボルト30が締め付けられる部分である。各締付部44は、ウォームホイールハウジング部材41の外周面から半径方向外側に突出している。2つの締付部44は、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向において互いに反対側に位置している。各締付部44は、ねじ穴44Aを有している。ねじ穴44Aが開口する各締付部44の端面は、開口部41Aが開口するウォームホイールハウジング部材41の端面と面一である。
【0024】
ウォームホイールハウジング部材41は、3つの規制部41Bを有している。各規制部41Bはウォームホイールハウジング部材41の外周面に設けられている。各規制部41Bは、板状であり、ウォームホイールハウジング部材41の外周面に沿って湾曲している。各規制部41Bは、開口部41Aが開口しているウォームホイールハウジング部材41の端面から、フランジ31の装着方向DWと反対方向へ突出している。装着方向DWは、ウォームホイールハウジング部材41の軸線に沿った方向であり、開口部41Aと向き合う位置からウォームホイールハウジング部材41に近づく方向である。フランジ31をウォームホイールハウジング部材41に取り付ける際には、フランジ31をウォームホイールハウジング部材41に対して装着方向DWへ移動させてウォームホイールハウジング部材41に当接させる。規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の円周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各規制部41Bの内側面には規制面41Cが設けられている。規制面41Cは、ウォームホイールハウジング部材41の外周面に沿って湾曲する円弧面であり、半径方向内側を向いている。
【0025】
図5に示すように、ステアリングコラム15の軸方向からみて、ウォームホイールハウジング部材41は直線L1を境として2つの領域A1,A2に分けられている。直線L1は、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向中心および2つのねじ穴44Aの半径方向中心を通る。ウォームハウジング部材42は領域A1に位置している。3つの規制部41Bのうちの2つは領域A1に、残りの1つは領域A2に位置している。
【0026】
また、ステアリングコラム15の軸方向からみて、領域A1内の2つの規制部41Bは、直線L2を基準として互いに反対側に位置している。直線L2は、直線L1に直交し、かつウォームホイールハウジング部材41の半径方向中心を通る。領域A2内の規制部41Bは、直線L2上に位置している。より具体的には、つぎの通りである。すなわち、ステアリングコラム15の軸方向からみて、領域A1内の2つの規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向中心を基準として、それぞれ、おおよそ10時30分の方向とおおよそ1時の方向とに位置している。領域A2内の規制部41Bは、おおよそ6時の方向に位置している。
【0027】
ステアリングコラム15の軸方向からみて、各規制部41Bは仮想円CBの内側に位置している。仮想円CBは、直線L1に沿った方向においてウォームホイールハウジング部材41の互いに反対側に位置する2つのボルト30の頭部30Aに外接する円である。図6に示すように、ハウジング18の軸方向からみて、領域A1内の2つの規制部41Bは、ハウジング18の輪郭18Cの内側に位置している。すなわち、領域A1内の2つの規制部41Bは、ハウジング18の輪郭18Cを構成しない。これに対し、領域A2内の規制部41Bは、ハウジング18の輪郭18Cの一部を構成する。
【0028】
<ステアリングコラムの組み立て方法>
つぎに、ステアリングコラム15の組み立て方法を説明する。アッパーチューブ16とロアーチューブ17とは予め組み立てられている。
【0029】
ロアーチューブ17とハウジング18とを連結する際、ロアーチューブ17のフランジ31とハウジング18の開口部41Aとをそれらの軸方向において互いに対向させる。この状態で、フランジ31とハウジング18とをそれらの軸方向に沿って互いに近接させる。このとき、フランジ31の各挿通孔31Bとハウジング18の対応するねじ穴44Aとを一致させるようにフランジ31の回転位置を調節しながら、フランジ31を複数の規制部41Bによって囲まれた領域に配置する。やがて、開口部41Aが開口するウォームホイールハウジング部材41の端面にフランジ31の周縁が当接する。この当接した状態を維持しつつ、フランジ31の挿通孔31Bにハウジング18と反対側からボルト30を挿通し、この挿通されるボルト30をハウジング18の締付部44に締め付ける。これにより、フランジ31はハウジング18に固定される。すなわち、ロアーチューブ17は、フランジ31を介してハウジング18に連結される。また、ハウジング18の開口部41Aは、フランジ31によって塞がれた状態に維持される。フランジ31はハウジング18の開口部41Aを閉塞するカバーでもある。
【0030】
<本実施の形態の作用>
つぎに、本実施の形態の作用を説明する。
【0031】
ステアリングコラム15を組み立てる際、フランジ31の外周面の一部分が各規制面41Cに対して摺動しながら、複数の規制部41Bによって囲まれた領域にフランジ31が配置される。規制部41Bはフランジ31の軸方向への移動を案内する。フランジ31の外周面の円周方向における複数箇所がフランジ31の半径方向においてそれぞれ規制面41Cに当接する。すなわち、フランジ31およびウォームホイールハウジング部材41は、ボルト30が設けられる取付部31Aおよび締付部44の箇所とは異なる箇所に、フランジ31の半径方向に互いに係合する係合部分を有する。これにより、ウォームホイールハウジング部材41に対するフランジ31の半径方向への移動が規制される。このため、ロアーチューブ17とハウジング18とが同軸に配置された状態に維持される。したがって、ロアーチューブ17とハウジング18とが同軸に配置されるように、ロアーチューブ17とハウジング18との相対的な位置関係を調節する作業が不要となる。いわゆる芯出し作業を行う必要がないため、ステアリングコラム15をより簡単に組み立てることが可能となる。
【0032】
図7は比較例の構成を示す。
【0033】
図7に示すように、フランジ31の取付部31Aの先端には、フランジ31の半径方向に対して直交する平面31Dが設けられている。規制部41Bは締付部44に設けられている。各規制部41Bは、フランジ31の対応する取付部31Aに対してフランジ31の半径方向における外側に位置している。各規制面41Cは、対応する取付部31Aの平面31Dに対して平行な平面である。ロアーチューブ17とハウジング18とが組み立てられた状態において、規制面41Cと平面31Dとは互いに接触した状態に維持される。
【0034】
ロアーチューブ17とハウジング18とを組み立てる際、フランジ31の各平面31Dが同じく平面である対応する規制面41Cに案内されることにより、フランジ31の軸線を中心とした回転が規制される。このため、フランジ31の回転方向における取り付け姿勢が決まる。また、各平面31Dがフランジ31の半径方向において対応する規制面41Cに当接することにより、フランジ31の半径方向への移動が規制される。このため、ロアーチューブ17とハウジング18とが同軸に配置された状態に維持される。
【0035】
この比較例によっても、いわゆる芯出し作業を不要とすることが可能である。ただし、この比較例では、つぎのことが懸念される。
【0036】
図8に示すように、規制部41Bは、フランジ31の取付部31Aに対してフランジ31の半径方向における外側に位置している。このため、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向における規制部41Bの厚みの分だけ、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向における体格が大きくなる。
【0037】
この点、本実施の形態によれば、フランジ31およびウォームホイールハウジング部材41の係合部分、すなわち規制部41Bが、フランジ31およびウォームホイールハウジング部材41の円周方向において、ボルト30が設けられる箇所から離れた箇所に位置する。そのため、各規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の軸方向からみて、2つのボルト30の頭部30Aに外接する仮想円CBの内側に位置することができる。このため、規制部41Bがフランジ31の取付部31Aに対してフランジ31の半径方向における外側に位置する比較例に比べて、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向における体格の大型化が抑えられる。
【0038】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0039】
(1)ロアーチューブ17とハウジング18とを組み立てる際、フランジ31の軸方向に沿った移動が各規制部41Bによって案内される。すなわち、フランジ31の半径方向への移動が各規制部41Bによって規制される。このため、ロアーチューブ17とハウジング18とが同軸に配置された状態に維持される。いわゆる芯出し作業を行う必要がないため、ロアーチューブ17とハウジング18との組立作業の効率が向上する。したがって、ステアリングコラム15をより簡単に組み立てることができる。
【0040】
(2)ウォームホイールハウジング部材41は、ボルト30が通される締付部44の箇所とは異なる箇所に規制部41Bを有する。このため、各規制部41Bは、ステアリングコラム15の軸方向からみて、2つのボルト30の頭部30Aに外接する仮想円CBの内側に位置するように設けることが可能となる。したがって、図7の比較例のように各規制部41Bが仮想円CBの外側へはみ出して設けられる場合に比べて、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向における体格の大型化を抑えることができる。また、車両におけるステアリング装置1の設置スペースを確保しやすくなる。
【0041】
(3)ハウジング18の軸方向からみて、領域A1内の2つの規制部41Bは、ハウジング18の輪郭18Cの内側に位置している。すなわち、領域A1内の2つの規制部41Bは、ハウジング18の輪郭18Cを構成しない。このため、ステアリング装置1の組立作業時、あるいは車両に対するステアリング装置1の取付作業時、各規制部41Bと他の部品との干渉を抑えることができる。
【0042】
(4)3つの規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の円周方向に互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、フランジ31は異なる3つの半径方向から支持される。このため、ロアーチューブ17とハウジング18とを組み立てる際、フランジ31の半径方向の移動を適切に規制することができる。
【0043】
(5)3つの規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の軸方向からみて、直線L1を境とするウォームホイールハウジング部材41の2つの領域A1,A2に分散して設けられている。このため、フランジ31を支持する方向をより大きく異ならせることができる。したがって、フランジ31の半径方向の移動をより適切に規制することができる。
【0044】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0045】
図9に示すように、ウォームホイールハウジング部材41は2つの規制部41Bを有していてもよい。この場合、2つの規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向において互いに反対側に位置していることが好ましい。たとえば、ウォームホイールハウジング部材41の軸方向からみた場合、ウォームホイールハウジング部材41の半径方向中心を基準として、領域A1内の規制部41Bはおおよそ10時30分の方向に、領域A2内の規制部41Bはおおよそ4時30分の方向に設けられる。このようにしても、ロアーチューブ17とハウジング18とを組み立てる際、フランジ31の半径方向への移動を規制することができる。ウォームホイールハウジング部材41は、4つ以上の規制部41Bを有していてもよい。
【0046】
図10に示すように、領域A2内の規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41の軸方向からみて、ウォームホイールハウジング部材41の外周面から外側へはみ出さないように設けられてもよい。たとえば、領域A2内の規制部41Bは、開口部41Aが開口するウォームホイールハウジング部材41の端面に設けられる。ただし、領域A2内の規制部41Bの外側面は、ウォームホイールハウジング部材41の外周面と面一であるか、あるいは、ウォームホイールハウジング部材41の外周面よりも半径方向内側に位置する。フランジ31の周縁部分には、領域A2内の規制部41Bに対応する切欠31Cが設けられる。フランジ31とハウジング18とを組み立てる際、領域A2内の規制部41Bはフランジ31の切欠31Cの内部に収まる。このようにすれば、ウォームホイールハウジング部材41の外周面から外側へはみ出す部分を減らすことができる。また、規制部41Bを設けることで、フランジ31をハウジング18に180度間違えて組み付けようとしても、切欠31Cがないためフランジ31をハウジング18に組み付けることができない。このため、誤組付を抑制することができる。
【0047】
図11に示すように、各規制部41Bはフランジ31に設けられてもよい。たとえば、各規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41から省かれ、代わりにフランジ31の外周面に連結される。所定の形状に打ち抜いた金属板材を塑性変形させることによってフランジ31に各規制部41Bを一体に設けてもよい。各規制部41Bのサイズは適宜に変更可能である。各規制部41Bは、ウォームホイールハウジング部材41に面するフランジ31の裏面から、フランジ31の装着方向DWへ突出する。このようにしても、フランジ31およびウォームホイールハウジング部材41は、ボルト30が設けられる取付部31Aおよび締付部44の箇所とは異なる箇所に、フランジ31の半径方向に互いに係合する係合部分を有することができる。すなわち、フランジ31の規制部41Bがウォームホイールハウジング部材41の外周面の円周方向における複数箇所に対してフランジ31の半径方向において当接する。このため、ロアーチューブ17とハウジング18とを組み立てる際、フランジ31の半径方向への移動が規制される。ウォームホイールハウジング部材41およびフランジ31の両方に規制部41Bを設けてもよい。
【0048】
・製品の仕様などによっては、ステアリング装置1にステアリングホイール6の上下位置を調節するための構成、およびステアリングホイール6の軸方向における位置を調節するための構成を設けなくてもよい。この場合、アッパーチューブ16およびロアーチューブ17に替えて、伸縮しない単一の支持筒を設ける。この単一の支持筒によってステアリングシャフト2を回転可能に支持する。また、ハウジング18は、車体のフレーム14に固定する。ハウジング18として支持部18Aおよび支持軸18Bを割愛した構成を採用することができる。また、ステアリングコラム15の支持軸18Bを中心とする揺動およびステアリングコラム15の伸縮を選択的にロック及びアンロックするロック機構も不要となる。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11