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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】歯車、及びステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/12 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
F16H55/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023529547
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2022010695
(87)【国際公開番号】W WO2022264559
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/023087
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川村 尚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】戎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 勇基
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 友紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康介
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 康弘
(72)【発明者】
【氏名】作田 雅芳
(72)【発明者】
【氏名】梅藤 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】仲秋 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 喜章
(72)【発明者】
【氏名】山口 孝志
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和久
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127722(JP,A)
【文献】特開2018-204660(JP,A)
【文献】登録実用新案第3084778(JP,U)
【文献】中国実用新案第205155081(CN,U)
【文献】特開2015-082911(JP,A)
【文献】特開2018-009657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のスリーブと、
前記スリーブの一部を覆うように射出成型により設けられた環状の歯部と、を有し、
前記スリーブは、前記スリーブの軸方向に積層された環状の複数の鋼板を含む積層体であり、
前記スリーブは、前記スリーブを前記軸方向に貫通する複数の肉抜き孔を有し、
前記複数の肉抜き孔は、前記軸方向から見た場合の形状が互いに異なる、第1肉抜き孔と、第2肉抜き孔とを含んでおり、
前記複数の肉抜き孔は、前記スリーブが1回転する間のいずれの位相位置においても異なる状態となるように、前記スリーブの周方向に配置され、
前記複数の鋼板の各々は、前記鋼板を前記軸方向に貫通する複数の肉抜き用貫通孔を有し、
前記複数の肉抜き用貫通孔は、前記軸方向から見た場合の形状が互いに異なる、第1肉抜き用貫通孔と、第2肉抜き用貫通孔とを含んでおり、
前記複数の肉抜き用貫通孔は、前記スリーブが1回転する間のいずれの位相位置においても異なる状態となるように、前記スリーブの周方向に配置され、
前記複数の肉抜き用貫通孔は、前記複数の鋼板が積層された状態で前記複数の肉抜き孔を形成する歯車。
【請求項2】
前記スリーブは、前記歯部によって覆われる部位に結合部を有し、前記結合部は、前記歯部に対する前記スリーブの周方向への移動を抑制するべく、前記歯部と結合し、
前記複数の鋼板の各々は結合形成部を有し、前記結合形成部は、前記複数の鋼板が積層された状態で前記結合部を形成する請求項1に記載の歯車。
【請求項3】
前記結合部は、前記スリーブの外周面において前記軸方向に延びる複数の溝を含み、
前記複数の溝は、前記周方向において所定間隔を空けて配置され、
各鋼板の前記結合形成部は複数の鋼板溝を含み、前記複数の鋼板溝は、前記複数の鋼板が積層された状態で前記複数の溝を形成する請求項2に記載の歯車。
【請求項4】
前記複数の肉抜き孔は、前記スリーブの周方向に所定間隔を空けて配置され、
前記複数の肉抜き用貫通孔は、前記周方向に所定間隔を空けて配置される請求項1に記載の歯車。
【請求項5】
前記複数の鋼板の各々は、前記軸方向に突出する鋼板凸部と、前記軸方向に深さを有する鋼板凹部とを有し、
前記複数の鋼板の各々は、前記複数の鋼板が積層された状態で互いに隣接した前記鋼板の前記鋼板凸部と前記鋼板凹部とが嵌合するように構成される請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の歯車。
【請求項7】
前記鋼板凸部と前記鋼板凹部とは、前記歯部によって覆われる各鋼板の部位に設けられ、
前記鋼板凸部と前記鋼板凹部とは、夫々同数が、前記スリーブの周方向に等間隔を空けて配置されている請求項5に記載の歯車。
【請求項8】
前記鋼板凸部と前記鋼板凹部とは、前記歯部によって覆われる各鋼板の部位に設けられ、
前記鋼板凸部と前記鋼板凹部とは、夫々同数が、前記スリーブの周方向に交互に配置されている請求項5に記載の歯車。
【請求項9】
前記鋼板凸部と前記鋼板凹部とは、前記歯部によって覆われない各鋼板の部位に設けられており、
前記スリーブは、前記歯部によって覆われる部位において、前記スリーブを前記軸方向に貫通することによって前記軸方向における前記歯部の両側の部位を相互に連結する連結孔を有し、
前記複数の鋼板の各々は、前記鋼板を前記軸方向に貫通する連結用貫通孔を有し、前記連結用貫通孔は、前記複数の鋼板が積層された状態で前記連結孔を形成する請求項5に記載の歯車。
【請求項10】
前記歯部は、前記歯部の外周面において前記軸方向に延びる複数の溝を含み、
前記複数の溝は、前記スリーブの径方向において深さを有し、
前記複数の溝は、前記軸方向の両端から中央に向かって前記深さが大きくなるように構成されており、
前記スリーブは、前記軸方向の両端側に位置する第1の部位と、前記軸方向の中央領域に位置する第2の部位とを含み、
前記第1の部位の外径は、前記第2の部位の外径と比べて大きい請求項1に記載の歯車。
【請求項11】
前記複数の鋼板は、前記軸方向の両端に配置される2つの第1の鋼板と、前記2つの第1の鋼板の間に配置される1つ以上の第2の鋼板とを含み、
前記2つの第1の鋼板は前記第1の部位を含み、前記1つ以上の第2の鋼板は前記第2の部位を含む請求項10に記載の歯車。
【請求項12】
前記第2の鋼板の数は2つ以上であり、
前記2つの第1の鋼板の外径は全て同一であるとともに、前記2つ以上の第2の鋼板の外径は全て同一であり、
前記2つの第1の鋼板の外径は、前記2つ以上の第2の鋼板の外径と比べて大きい請求項11に記載の歯車。
【請求項13】
前記溝は、前記第1の部位に対応する箇所において第1の深さを有するとともに、前記第2の部位に対応する箇所において第2の深さを有し、
前記第1の部位の外径と前記第2の部位の外径との差は、前記第1の深さと前記第2の深さとの差に基づき定められる請求項10~請求項12のうちいずれか一項に記載の歯車。
【請求項15】
車両のステアリングホイールが連結されたステアリング軸と、
車両の転舵輪を転舵させるべく動作する転舵軸と、
モータと、
請求項1~請求項4、又は請求項10~請求項12のうちいずれか一項に記載の歯車を有する減速機構と、を有し、
前記減速機構は、前記モータを、前記ステアリング軸、又は前記転舵軸と連結するステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯車、及びステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、モータの回転力を伝達する場合、特許文献1に記載の減速装置が用いられる。特許文献1に記載の減速装置は、ピニオン軸と、リダクションギヤとを含んでいる。ピニオン軸は、モータの回転軸に連結されている。リダクションギヤは、出力軸に嵌合されているとともに、ピニオン軸に噛み合っている。出力軸は、ステアリング装置のステアリングシャフトに連結されている。リダクションギヤは、主歯車と、副歯車とを含んでいる。主歯車は、鉄等を含む材料により形成されている。副歯車は、芯金と、合成樹脂部材とを含んでいる。芯金は、鉄等を含む材料により環状に形成されている。合成樹脂部材は、合成樹脂により環状に形成されている。合成樹脂部材は、芯金の外周に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-222149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の芯金を軽量化する場合、たとえば芯金の一部を肉抜きする、又は削る等、芯金に対して軽量化の加工を施す必要がある。ただし、芯金に対して軽量化の加工を施す場合、軽量化の程度に限界がある。これは、軽量化の加工に用いる設備能力や加工の方法が制限されるのが理由である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る歯車は、環状のスリーブと、前記スリーブの一部を覆うように射出成型により設けられた環状の歯部と、を有している。前記スリーブは、前記スリーブの軸方向に積層された環状の複数の鋼板を含む積層体である。
【0006】
本開示の一態様に係るステアリング装置は、車両のステアリングホイールが連結されたステアリング軸と、車両の転舵輪を転舵させるべく動作する転舵軸と、モータと、上述の歯車を有する減速機構と、を有している。前記減速機構は、前記モータを、前記ステアリング軸、又は前記転舵軸と連結する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ステアリング装置の模式図。
図2】第1実施形態に係るウォームホイールの斜視図。
図3図2のウォームホイールが備えるスリーブの斜視図。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5図3のスリーブを構成するプレートの1つを示す正面図。
図6図5のVI-VI線に沿った断面図。
図7図5のVII-VII線に沿った断面図。
図8図3のスリーブを構成するプレート同士の嵌合構造を示す模式図。
図9】第2実施形態に係るウォームホイールの斜視図。
図10図9の範囲Aの拡大図。
図11図9のウォームホイールのスリーブを構成するプレートの1つを示す斜視図。
図12】第3実施形態に係るウォームホイールの拡大図。
図13図12のウォームホイールのスリーブを構成するプレートの1つを示す正面図。
図14図12の歯部に設けられた溝の底面に対応する位置での断面構造を示す断面図。
図15】他の実施形態に係るプレートの積層の状態を示す模式図。
図16】他の実施形態に係るスリーブの斜視図。
図17】他の実施形態に係るステアリング装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下、図1図8を参照して第1実施形態を説明する。
図1に示すように、車両は、ステアリング装置1を搭載している。ステアリング装置1は、操舵機構2と、アクチュエータ3と、操舵制御装置4とを有している。操舵機構2は、車両のステアリングホイール10に対する運転者による操作であるステアリング操作に基づいて、車両の転舵輪15を転舵させる。アクチュエータ3は、モータトルクを操舵機構2に付与する。モータトルクは、ステアリング操作を補助するための補助力であるとともに、転舵輪15を転舵させるための転舵力である。つまり、ステアリング装置1は、ステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置である。操舵制御装置4は、アクチュエータ3の動作を制御する。
【0009】
<操舵機構の構成>
操舵機構2は、ステアリング軸11と、ラック軸12と、ラックアンドピニオン機構13とを有している。
【0010】
ステアリング軸11は、コラム軸11aと、中間軸11bと、ピニオン軸11cとを有している。コラム軸11aの第1端は、車両のステアリングホイール10に連結されている。コラム軸11aの第2端は、中間軸11bの第1端に連結されている。中間軸11bの第2端は、ピニオン軸11cの第1端に連結されている。ピニオン軸11cの第2端は、ラック軸12に連結されている。ピニオン軸11cと、ラック軸12とは、ラックアンドピニオン機構13を介して連結されている。ラック軸12の両端は、タイロッド14を介して車両の左右の転舵輪15にそれぞれ連結されている。ラックアンドピニオン機構13は、ラック軸12に設けられた図示しないラック歯と、ピニオン軸11cに設けられた図示しないピニオン歯とが噛合されることで構成されている。本実施形態において、ラック軸12は、転舵軸の一例である。
【0011】
これにより、ステアリング軸11は、ステアリングホイール10の回転に連動して回転する。ステアリング軸11の回転は、ラックアンドピニオン機構13を介してラック軸12の軸方向の往復動に変換される。当該往復動は、タイロッド14を介して左右の転舵輪15にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪15の転舵角を変化させる。
【0012】
<アクチュエータの構成>
アクチュエータ3は、モータ20と、減速機構22とを有している。モータ20は、回転力であるモータトルクを出力する出力軸21を有している。モータ20は、たとえば三相のブラシレスモータである。
【0013】
減速機構22は、ウォーム軸23と、ウォームホイール24とを有している。ウォーム軸23は、モータ20の出力軸21の先端に連結されている。ウォームホイール24は、ウォーム軸23に設けられたウォームに噛合されている。ウォームホイール24は、コラム軸11aに嵌合されている。ウォームホイール24は、コラム軸11aに一体回転可能に連結されている。
【0014】
モータ20のモータトルクは、ウォーム軸23、及びウォームホイール24、すなわち減速機構22を介してコラム軸11aへと伝達される。こうして伝達されるモータトルクは、ステアリング軸11を回転させる。つまり、モータ20のモータトルクは、ステアリング軸11を回転させてラック軸12を軸方向に往復動させる力に変換される。当該往復動させる力は、ステアリング操作を補助する補助力となる。
【0015】
<操舵制御装置の構成>
操舵制御装置4は、モータ20に接続されている。操舵制御装置4は、モータ20の作動を制御する。操舵制御装置4は、たとえば図示しない中央処理装置(CPU)、及びメモリを有している。所定の演算周期ごとに、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行する。これにより、各種の制御が実行される。
【0016】
操舵制御装置4には、車両に設けられる各種のセンサが接続されている。操舵制御装置4は、各種のセンサの検出結果に基づきモータ20の制御量である電流の供給を制御する。これにより、操舵制御装置4は、モータ20の動作を制御する。各種のセンサは、たとえばトルクセンサ40と、回転角センサ41と、車速センサ42とを含む。トルクセンサ40は、コラム軸11aに設けられている。トルクセンサ40は、ステアリング操作によりステアリング軸11に付与された操舵トルクThを検出する。回転角センサ41は、モータ20に設けられている。回転角センサ41は、モータ20の出力軸21の回転角θmを検出する。車速センサ42は、車両の走行速度である車速Vを検出する。
【0017】
<ウォームホイールの構成>
図2に示すように、ウォームホイール24は、スリーブ50と、歯部60とを有している。本実施形態において、ウォームホイール24は、歯車の一例である。
【0018】
スリーブ50には、鋼等の金属材料が用いられている。スリーブ50の形状は、円筒状、又は環状である。スリーブ50は、径方向における中央部を軸方向に貫通する軸孔51を有している。図2中に二点鎖線で示すように、軸孔51には、コラム軸11aが挿入されている。スリーブ50は、コラム軸11aに一体回転可能に連結されている。
【0019】
歯部60の材料には、合成樹脂等の高分子材料が用いられている。歯部60の形状は、円筒状、又は環状である。歯部60は、スリーブ50の一部を覆うように射出成型により形成されている。歯部60は、スリーブ50の外周側部位を覆う。歯部60は、スリーブ50を軸方向両側から部分的に覆うとともに、スリーブ50を径方向外側から覆う。歯部60は、スリーブ50に対して一体化されている。歯部60は、その外周面において、歯面61を有している。図2中に二点鎖線で示すように、歯面61は、ウォーム軸23に設けられたウォームに噛み合う面である。
【0020】
<スリーブの構成>
図3、及び図4に示すように、スリーブ50は、複数のプレート70を有している。本実施形態において、プレート70の数は4つである。なお、プレート70の数は、複数であれば、4つ未満や5つ以上等、適宜変更可能である。プレート70は、板状の鋼、いわゆる鋼板である。プレート70は、たとえばプレス等の加工によって鋼板を環状に打ち抜いて製造される。プレート70は、スリーブ50の軸方向に積層されている。スリーブ50は、積層された複数のプレート70を含む積層体である。各プレート70の軸方向は、スリーブ50の軸方向と一致する。各プレート70の板厚方向は、スリーブ50の軸方向と一致する。
【0021】
<溝について>
スリーブ50は、その外周面において、複数の溝52を有している。本実施形態において、溝52の数は、たとえば歯部60の歯面61に設けられた溝の数より多い。なお、溝52の数は歯部60の歯面61に設けられた溝の数以下等、適宜変更可能である。溝52は、スリーブ50の軸方向に真っ直ぐ延びている。溝52は、スリーブ50の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。スリーブ50において、溝52が設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。スリーブ50は、溝52によって歯部60の内周側部位と結合する。本実施形態において、溝52は、結合部の一例である。
【0022】
<肉抜き孔について>
スリーブ50は、軸孔51の周囲に配置された複数の肉抜き孔53を有している。本実施形態において、肉抜き孔53の数は10個である。なお、肉抜き孔53の数は、10個未満や11個以上等、適宜変更可能である。肉抜き孔53は、スリーブ50を軸方向に貫通する。各肉抜き孔53は、スリーブ50の軸方向に真っ直ぐ延びている。肉抜き孔53は、スリーブ50の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。スリーブ50において、肉抜き孔53が設けられている部位は、歯部60によって覆われない部位である。肉抜き孔53は、スリーブ50の軽量化を目的として設けられている。スリーブ50は、肉抜き孔53の分だけ軽量化されている。
【0023】
肉抜き孔53は、第1肉抜き孔53aと、第2肉抜き孔53bとを含んでいる。第1肉抜き孔53aと、第2肉抜き孔53bとは、スリーブ50の軸方向から見た場合の形状が互いに異なる。第1肉抜き孔53aの形状は、スリーブ50の軸方向から見た場合に、台形状である。スリーブ50の周方向における第1肉抜き孔53aの寸法は、スリーブ50の径方向外側に向かって次第に大きくなる。第2肉抜き孔53bの形状は、スリーブ50の軸方向から見た場合に、台形の非平行な一対の対片が、スリーブ50の径方向における第2肉抜き孔53bの中間部分で互いに近付くように変形した形状である。言い換えれば、第2肉抜き孔53bの形状は、スリーブ50の周方向における第2肉抜き孔53bの寸法が、径方向における中間部分で他の部分よりも小さくなっている点で、第1肉抜き孔53aの形状と異なる。なお、第1肉抜き孔53aの形状と、第2肉抜き孔53bの形状とは、互いに異なっていれば、適宜変更可能である。
【0024】
本実施形態において、10個の肉抜き孔53のうち、7個が第1肉抜き孔53aであるとともに、3個が第2肉抜き孔53bである。第2肉抜き孔53bは、スリーブ50の周方向において、第1の箇所、第2の箇所、及び第3の箇所に配置されている。第1の箇所と第2の箇所との間に、3個の第1肉抜き孔53aが配置されている。第1の箇所と第3の箇所との間に、2個の第1肉抜き孔53aが配置されるとともに、第2の箇所と第3の箇所との間に、2個の第1肉抜き孔53aが配置されている。これにより、10個の肉抜き孔53は、スリーブ50が1回転する間のいずれの位相位置においても異なる状態になる。よって、スリーブ50の周方向の位相は、一義的に決まる。
【0025】
<凸部と、凹部とについて>
スリーブ50は、肉抜き孔53よりも径方向外側の部位において、複数の凸部54と、複数の凹部55とを有している。凸部54、及び凹部55は、スリーブ50の軸方向の両面の各々に設けられている。本実施形態において、凸部54の数は、スリーブ50の軸方向の両面の各々で10個である。また、凹部55の数は、スリーブ50の軸方向の両面の各々で10個である。つまり、凸部54の数は、スリーブ50の軸方向の両面で互いに同じであり、凹部55の数は、スリーブ50の軸方向の両面で互いに同じである。さらに、スリーブ50の軸方向の両面の各々において、凸部54の数と凹部55の数とは互いに同じである。なお、凸部54の数と、凹部55の数とは、それぞれ、10個未満や11個以上等、適宜変更可能である。
【0026】
凸部54は、スリーブ50の軸方向の一面から当該軸方向に突出する。凸部54の形状は、円柱状である。凸部54の突出長さ、すなわち円柱の長さは、1つのプレート70の板厚よりも小さい。凹部55は、スリーブ50の軸方向の一面から当該軸方向に深さを有する。凹部55の形状は、スリーブ50の軸方向から見て、スリーブ50の周方向に長径を有する楕円形状である。凹部55の深さは、凸部54の突出長さとほぼ同一である。つまり、凹部55の深さは、1つのプレート70の板厚よりも小さい。円形の断面形状を有する凸部54の直径は、楕円形の断面形状を有する凹部55の短径より若干大きいとともに、凹部55の長径より小さい。
【0027】
スリーブ50の両面の各々において、凸部54と凹部55とは、スリーブ50の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて交互に配置されている。スリーブ50の両面の各々において、1つの凸部54と1つの凹部55とが、各肉抜き孔53の径方向外側の両角に対応する位置に配置されている。スリーブ50において、凸部54と凹部55とが設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。スリーブ50は、凸部54と凹部55とによって、歯部60の内周側部位と結合する。
【0028】
<プレートの構成>
図5は、1つのプレート70を示している。本実施形態において、スリーブ50を構成する4つのプレート70は、互いに同一構成である。プレート70は環状であり、径方向における中央部にプレート軸孔71を有する。プレート軸孔71は円形であり、プレート70の中央部を軸方向に貫通している。プレート軸孔71は、プレート70の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を打ち抜いて形成される。プレート軸孔71を形成する方法は、たとえばプレス等の加工によって環状に打ち抜かれた後の鋼板に対して、切削加工によってプレート軸孔71を形成する等、適宜変更可能である。
【0029】
<プレート溝について>
プレート70は、その外周面において、鋼板溝である複数のプレート溝72を有している。本実施形態において、プレート溝72の数は、スリーブ50の溝52の数と同数である。プレート溝72は、プレート70の板厚方向に真っ直ぐ延びている。プレート溝72は、プレート70の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて設けられている。プレート70において、プレート溝72が設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。プレート溝72は、プレート70の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を打ち抜いて形成される。プレート溝72を形成する方法は、たとえばプレス等の加工によって環状に打ち抜かれた後の鋼板に対して、切削加工によってプレート溝72を形成する等、適宜変更可能である。本実施形態において、各プレート溝72は、結合形成部の一例である。
【0030】
<肉抜き用貫通孔について>
プレート70は、プレート軸孔71の周囲に配置された複数の肉抜き用貫通孔73を有している。本実施形態において、肉抜き用貫通孔73の数は、スリーブ50の肉抜き孔53の数と同じである。各肉抜き用貫通孔73は、プレート70を板厚方向に貫通している。肉抜き用貫通孔73は、プレート70の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。プレート70において、肉抜き用貫通孔73が設けられている部位は、歯部60によって覆われない部位である。
【0031】
肉抜き用貫通孔73は、第1肉抜き用貫通孔73aと、第2肉抜き用貫通孔73bとを含んでいる。第1肉抜き用貫通孔73aと、第2肉抜き用貫通孔73bとは、プレート70の板厚方向から見た場合の形状が互いに異なる。第1肉抜き用貫通孔73aの形状は、スリーブ50の第1肉抜き孔53aの形状と同一である。第2肉抜き用貫通孔73bの形状は、スリーブ50の第2肉抜き孔53bの形状と同一である。肉抜き用貫通孔73は、プレート70の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を打ち抜いて形成される。なお、肉抜き用貫通孔73を形成する方法は、たとえばプレス等の加工によって環状に打ち抜かれた後の鋼板に対して、切削加工によって肉抜き用貫通孔73を形成する等、適宜変更可能である。
【0032】
本実施形態において、10個の肉抜き用貫通孔73のうち、7個が第1肉抜き用貫通孔73aであるとともに、3個が第2肉抜き用貫通孔73bであることは、スリーブ50の肉抜き孔53と同様である。第2肉抜き用貫通孔73bは、プレート70の周方向において、第1の箇所、第2の箇所、及び第3の箇所に配置されている。第1の箇所と第2の箇所との間に、3個の第1肉抜き用貫通孔73aが配置されている。第1の箇所と第3の箇所との間に、2個の第1肉抜き用貫通孔73aが配置されるとともに、第2の箇所と第3の箇所との間に、2個の第1肉抜き用貫通孔73aが配置されている。これにより、プレート70の周方向の位相は、一義的に決まる。
【0033】
<プレート凸部と、プレート凹部とについて>
プレート70は、肉抜き用貫通孔73よりも径方向外側の部位において、鋼板凸部である複数のプレート凸部74と、鋼板凹部である複数のプレート凹部75とを有している。プレート凸部74、及びプレート凹部75は、プレート70の板厚方向の両面の各々に設けられている。本実施形態において、プレート70の各面にあるプレート凸部74の数は、スリーブ50の各面にある凸部54の数と同じである。プレート70の各面にあるプレート凹部75の数は、スリーブ50の各面にある凹部55の数と同じである。つまり、プレート凸部74の数は、プレート70の両面で互いに同じであり、プレート凹部75の数は、プレート70の両面で互いに同じである。さらに、プレート70の両面の各々において、プレート凸部74の数とプレート凹部75の数とは互いに同じである。プレート70において、プレート凸部74とプレート凹部75とが設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。
【0034】
プレート凸部74は、プレート70の軸方向の一面から当該軸方向に突出する。プレート凸部74の形状は、凸部54の形状と同一である。プレート凸部74の突出長さ、すなわち円柱の長さは、1つのプレート70の板厚よりも小さい。プレート凹部75の形状は、凹部55の形状と同一である。プレート凹部75の深さは、プレート凸部74の突出長さとほぼ同一である。プレート凹部75の深さは、1つのプレート70の板厚よりも小さい。円形の断面形状を有するプレート凸部74の直径が、楕円形の断面形状を有するプレート凹部75の短径より若干大きいとともに、プレート凹部75の長径より小さいことは、凸部54と凹部55との関係と同様である。プレート70のプレート凸部74は、他のプレート70のプレート凹部75に対して圧入可能に構成されている。プレート凸部74は、プレート70の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を張り出すように金型に押し込んで形成される。プレート凹部75は、プレート70の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所に金型を押し込んで形成される。
【0035】
プレート凸部74とプレート凹部75とは、プレート70の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて交互に配置されている。1つのプレート凸部74と1つのプレート凹部75とが、各肉抜き用貫通孔73の径方向外側の両角に対応する位置に配置されている。
【0036】
図6、及び図7に示すように、プレート70の一方の面にあるプレート凸部74の各々は、プレート70の他方の面にあるプレート凹部75の1つと、プレート70の周方向、及び径方向において一致するように配置される。つまり、図5に示すように、プレート70の板厚方向から見て、プレート70の一方の面にあるプレート凸部74の各々は、プレート70の他方の面にあるプレート凹部75の1つと重なるように配置されている。これと同様、プレート70の板厚方向から見て、プレート70の一方の面にあるプレート凹部75の各々は、プレート70の他方の面にあるプレート凸部74の1つと重なるように配置されている。
【0037】
<プレートの積層について>
プレート70は、板厚方向において互いに反対向きの第1面及び第2面を有する。例えば、図5中の紙面表側の面がプレート70の第1面であり、図5中の紙面裏側の面がプレート70の第2面である。全てのプレート70の第1面が同じ方向を向いた状態で、すなわち、各プレート70の第1面が隣接するプレート70の第2面と向き合う状態で、複数のプレート70が板厚方向に積層される。また、複数のプレート70は、肉抜き用貫通孔73の形状が板厚方向から見て互いに一致する状態で、板厚方向に積層される。
【0038】
これにより、全てのプレート70の周方向の相対的な位相は一義的に決まる。つまり、全てプレート70の間では、プレート軸孔71の位置が板厚方向から見て一致する。全てのプレート70の間では、プレート溝72の位置が板厚方向から見て一致する。全てのプレート70の間では、肉抜き用貫通孔73の位置、及び形状が板厚方向から見て一致する。詳細には、全てのプレート70の間では、第1肉抜き用貫通孔73aの位置が板厚方向から見て一致するとともに、第2肉抜き用貫通孔73bの位置が板厚方向から見て一致する。さらに、全てのプレート70の間では、プレート凸部74、及びプレート凹部75の位置が板厚方向から見て一致する。隣接する2つのプレート70の間では、一方のプレート70のプレート凸部74の各々が、他方のプレート70のプレート凹部75の1つと板厚方向において対向する。
【0039】
図8に示すように、隣接する2つのプレート70の間では、一方のプレート70のプレート凸部74の各々が、他方のプレート70のプレート凹部75の1つに嵌合される、詳細には圧入される。隣接するプレート70は、プレート凸部74とプレート凹部75とが嵌合することによって互いに一体化される。これにより、複数のプレート70が板厚方向に積層された積層体であるスリーブ50が完成する。
【0040】
図3、及び図4に示すように、積層された複数のプレート70のプレート軸孔71は、板厚方向に並ぶことによってスリーブ50の軸孔51を形成する。積層された複数のプレート70のプレート溝72は、板厚方向に並ぶことによってスリーブ50の溝52を形成する。積層された複数のプレート70の肉抜き用貫通孔73は、板厚方向に並ぶことによってスリーブ50の肉抜き孔53を形成する。特に、積層された複数のプレート70の第1肉抜き用貫通孔73aは、板厚方向に並ぶことによってスリーブ50の第1肉抜き孔53aを形成する。積層された複数のプレート70の第2肉抜き用貫通孔73bは、板厚方向に並ぶことによってスリーブ50の第2肉抜き孔53bを形成する。
【0041】
図4に破線で示すように、隣接するプレート70の互いに嵌合しているプレート凸部74及びプレート凹部75は、スリーブ50の内部に埋まって外部に露出されない。一方、図4に示すように、スリーブ50の軸方向における両面に位置するプレート凸部74及びプレート凹部75は、他のプレート凸部74又はプレート凹部75と嵌合しておらず、スリーブ50の外部に露出されることによってスリーブ50の凸部54及び凹部55を形成する。スリーブ50の凸部54及び凹部55を形成するプレート凸部74及びプレート凹部75は、スリーブ50の軸方向の両端に配置される2つのプレート70a,70bの第1面又は第2面に設けられる。
【0042】
<本実施形態の作用>
本実施形態によれば、スリーブ50は、肉抜き孔53を有する分だけ軽量化されている。肉抜き孔53は、積層された複数のプレート70の肉抜き用貫通孔73が板厚方向に並ぶことによって形成されている。スリーブ50の軽量化は、プレート70の積層前の過程において、各プレート70に対し、肉抜き用貫通孔73を形成するための加工を施すことで実現できる。
【0043】
本実施形態のように、スリーブ50を複数のプレート70の積層体によって構成する場合、スリーブ50の軽量化は、各プレート70の製造時に肉抜き用貫通孔73を形成するための加工を各プレート70に施せば実現できる。このように、積層前の各プレート70に対して加工を施して肉抜き用貫通孔73を形成する場合には、積層体であるスリーブ50に対して加工を施して肉抜き孔53を形成する場合と比べて、スリーブ50を容易に軽量化できる。これは、軽量化の加工に用いる設備能力を低減できたり、軽量化の加工の方法を容易にできたりするのが理由である。
【0044】
<第1実施形態の効果>
(1-1)積層前の各プレート70に対して軽量化の加工を施す場合には、積層体であるスリーブ50に対して軽量化の加工を施す場合と比べて、軽量化の加工に用いる設備能力を低減できたり、軽量化の加工の方法を容易にできたりする。つまり、スリーブ50を複数のプレート70の積層体によって構成することにより、軽量化の加工の設備能力や加工の方法に対する制限を緩和することができる。したがって、スリーブ50の軽量化の加工について、軽量化の程度の限界を引き上げることができる。
【0045】
(1-2)スリーブ50は、歯部60によって覆われる部位に溝52を有している。スリーブ50は、溝52によって歯部60の内周側部位と結合する。スリーブ50と歯部60との間での周方向への相対移動は、溝52によって抑制される。したがって、スリーブ50と歯部60との間の結合の強度を高めることができる。
【0046】
(1-3)スリーブ50の軽量化は、肉抜き孔53によって実現されている。つまり、スリーブ50の軽量化は、積層された複数のプレート70の肉抜き用貫通孔73によって実現されている。スリーブ50の軽量化の加工に必要な設備能力としては、プレート70の製造時において、たとえばプレス等の加工によって肉抜き用貫通孔73を打ち抜くことができる設備能力があればよい。
【0047】
(1-4)肉抜き孔53は、スリーブ50の軸方向から見た場合の形状が互いに異なる第1肉抜き孔53aと第2肉抜き孔53bとを含んでいる。肉抜き用貫通孔73は、プレート70の板厚方向から見た場合の形状が互いに異なる第1肉抜き用貫通孔73aと第2肉抜き用貫通孔73bとを含んでいる。これにより、複数のプレート70が積層された状態では、周方向における位相を複数のプレート70の間で一致させることができる。これは、スリーブ50において、軸孔51、溝52、肉抜き孔53、凸部54、及び凹部55の芯出しをするのに効果的である。
【0048】
(1-5)たとえばプレス等の加工によってプレート軸孔71、プレート溝72、及び肉抜き用貫通孔73を打ち抜くと、プレート70にはバリが生じる。こうしたバリは、同一の加工の設備の場合、プレート70の同一の部位において、大きさや形状が近似する。複数のプレート70が積層された状態では、周方向における位相がプレート70の間で一致する場合、大きさや形状が近似したバリを有する部位同士が隣接する。この場合、大きさや形状が近似しないバリを有する部位同士が隣接する場合と比べて、プレート70の間のクリアランスを小さくすることができる。したがって、スリーブ50において、軸孔51、溝52、肉抜き孔53、凸部54、及び凹部55の芯出しを好適に実現することができる。
【0049】
(1-6)隣接したプレート70の間では、プレート凸部74がプレート凹部75に対して圧入されている。隣接したプレート70の間での周方向への相対移動は、プレート凸部74とプレート凹部75との嵌合によって抑制される。これは、隣接したプレート70の間での板厚方向への相対移動についても同様である。したがって、隣接したプレート70の間の嵌合の強度を高めることができる。
【0050】
(1-7)プレート凸部74とプレート凹部75とが設けられているプレート70の部位は、歯部60によって覆われる部位である。プレート凸部74及びプレート凹部75のうちの一部は、歯部60の内周側部位と結合する凸部54及び凹部55を形成する。スリーブ50と歯部60との間での周方向への相対移動は、凸部54と凹部55とによって抑制される。したがって、スリーブ50と歯部60との間の結合の強度を高めることができる。
【0051】
(1-8)軸方向の荷重に対する歯部60の変形、いわゆる倒れは凸部54と凹部55とによって抑制される。凸部54及び凹部55を形成する一部のプレート凸部74及びプレート凹部75は、隣接したプレート70の間の結合の強度を高める効果と、スリーブ50と歯部60との間の結合の強度を高める効果とを発揮する。さらに加えて、凸部54及び凹部55を形成する一部のプレート凸部74及びプレート凹部75は、軸方向の荷重に対する歯部60の強度を高める効果を発揮する。この場合、各種の効果を発揮する構成を個別に形成する場合と比べて、プレート70の構成を簡素化することができる。これは、プレート70を製造する際の加工に用いる設備能力を低減したり、加工の方法を容易にしたりするのに効果的である。
【0052】
(1-9)本実施形態では、スリーブ50を複数のプレート70の積層体によって形成することにより、軽量化の加工での軽量化の程度の限界を引き上げることができるステアリング装置1を実現できる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、図9図11を参照して第2実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、上記第1実施形態と同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図9に示すように、スリーブ80は、積層された複数のプレート90を含む積層体である。スリーブ80は、第1実施形態のスリーブ50が肉抜き孔53、凸部54、及び凹部55を有しているのに対して、肉抜き孔83、凸部84、凹部85、及び連結孔86を有している点が、第1実施形態と異なる。また、各プレート90は、第1実施形態の各プレート70が肉抜き用貫通孔73、プレート凸部74、及びプレート凹部75を有しているのに対して、肉抜き用貫通孔93、プレート凸部94、プレート凹部95、及び連結用貫通孔96を有している点が、第1実施形態と異なる。
【0055】
<肉抜き孔について>
図9に示すように、スリーブ80は、外周側部位に複数の肉抜き孔83を有している。本実施形態において、肉抜き孔83の数は、8個である。なお、肉抜き孔83の数は、8個未満や9個以上等、適宜変更可能である。各肉抜き孔53は、スリーブ50を軸方向に貫通する。各肉抜き孔83は、スリーブ80の軸方向に真っ直ぐ延びている。肉抜き孔83は、スリーブ80の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。スリーブ80において、肉抜き孔83が設けられている部位は、歯部60によって覆われない部位である。肉抜き孔83がスリーブ80の軽量化を目的として設けられていることは、スリーブ50の肉抜き孔53と同様である。
【0056】
肉抜き孔83の形状は互いに同一である。肉抜き孔83の形状は、スリーブ80の周方向に延びる長孔の形状である。なお、肉抜き孔83の形状は、全ての肉抜き孔83の形状が同一であれば、適宜変更可能である。
【0057】
<凸部と、凹部とについて>
スリーブ80は、肉抜き孔83よりも径方向内側の部位において、複数の凸部84と、複数の凹部85とを有している。凸部84は、スリーブ80の軸方向の両面のうち、第1面に設けられる。凹部85は、スリーブ80の軸方向の両面のうち、第2面に設けられる。本実施形態において、凸部84の数は、図9中の紙面表側のスリーブ80の第1面で8個である。凹部85の数は、図9中の紙面裏側のスリーブ80の第2面で8個である。
【0058】
凸部84は、スリーブ80の第1面から軸方向に突出する。凸部84の形状は、円柱状である。凸部84の突出長さ、すなわち円柱の長さは、1つのプレート90の板厚よりも小さい。各凹部85は、スリーブ80の第2面から軸方向に深さを有する。凹部85の形状は、スリーブ80の軸方向からみて円形である。凹部85の深さは、各凸部84の突出長さとほぼ同一である。凹部85の深さは、1つのプレート90の板厚よりも小さい。円形の断面形状を有する凸部84の直径は、円形の断面形状を有する凹部85の直径よりも若干大きい。
【0059】
凸部84は、スリーブ80の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。凹部85は、スリーブ80の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。凸部84は、肉抜き孔83の周方向中央に対応する位置に一つずつ配置されている。凹部85も同様に、肉抜き孔83の周方向中央に対応する位置に一つずつ配置されている。スリーブ80において、凸部84と凹部85とが設けられている部位は、歯部60によって覆われない部位である。
【0060】
<連結孔について>
スリーブ80は、肉抜き孔83よりも径方向外側の部位において、複数の連結孔86を有している。本実施形態において、連結孔86の数は、溝52の数の半分である。なお、連結孔86の数は溝52数の半分未満等、適宜変更可能である。各連結孔86は、スリーブ80を軸方向に貫通する。各連結孔86は、スリーブ80の軸方向に真っ直ぐ延びている。各連結孔86の形状は、スリーブ80の軸方向から見て円形である。
【0061】
連結孔86は、スリーブ80の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。連結孔86は、溝52の配列間隔の2倍の間隔を空けて配置されている。周方向に隣り合う2つの連結孔86の間に、1つの溝52が配置されている。スリーブ80において、連結孔86が設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。
【0062】
図10図9の範囲Aを拡大して示すように、連結孔86は、軸方向における歯部60の両側の部位を相互に連結している。連結孔86には、歯部60を射出成型する際に歯部60の材料が流れ込む。連結孔86に流れ込んだ材料は、各連結孔86の内部にて、スリーブ80の軸方向の両側に存在する材料に接続された状態で硬化する。つまり、スリーブ80は、連結孔86によって歯部60の内周側部位と結合する。
【0063】
<肉抜き用貫通孔について>
図11に示すように、プレート90は、外周側部位に複数の肉抜き用貫通孔93を有している。本実施形態において、肉抜き用貫通孔93の数は、スリーブ80の肉抜き孔83の数と同じである。肉抜き用貫通孔93は、プレート90を板厚方向に貫通している。肉抜き用貫通孔93は、プレート90の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。プレート90において、肉抜き用貫通孔93が設けられている部位は、歯部60によって覆われない部位である。
【0064】
肉抜き用貫通孔93の形状は互いに同一であるとともに、肉抜き孔83の形状と同一である。肉抜き用貫通孔93は、プレート90の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を打ち抜いて形成される。なお、肉抜き用貫通孔93を形成する方法は、たとえばプレス等の加工によって環状に打ち抜かれた後の鋼板に対し、切削加工によって肉抜き用貫通孔93形成する等、適宜変更可能である。
【0065】
<プレート凸部と、プレート凹部とについて>
プレート90は、肉抜き用貫通孔93よりも径方向内側の部位において、鋼板凸部である複数のプレート凸部94と、鋼板凹部である複数のプレート凹部95とを有している。プレート凸部94は、プレート90の軸方向の両面のうち、第1面に設けられる。プレート凹部95は、プレート90の軸方向の両面のうち、第2面に設けられる。本実施形態において、プレート凸部94の数は、図11中の紙面表側のプレート90の第1面で、凸部84の数と同じである。プレート凹部95の数は、図11中の紙面裏側のプレート90の第2面で、凹部85の数と同じである。
【0066】
プレート凸部94は、プレート90の第1面から軸方向に突出する。プレート凸部94の形状は、凸部84の形状と同一である。プレート凸部74の突出長さは、1つのプレート90の板厚よりも小さい。プレート凹部95は、プレート90の第2面から軸方向に深さを有する。プレート凹部95の形状は、凹部85の形状と同一である。プレート凹部95の深さは、1つのプレート90の板厚よりも小さい。円形の断面形状を有するプレート凸部94の直径が、円形の断面形状を有するプレート凹部95の直径と比べて若干大きいことは、凸部84と凹部85との関係と同様である。プレート90のプレート凸部94は、他のプレート90のプレート凹部95に対して圧入可能に構成されている。プレート凸部94は、プレート90の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を張り出すように金型に押し込んで形成される。プレート凹部95は、プレート90の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所に金型を押し込んで形成される。
【0067】
プレート凸部94は、プレート90の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。プレート凹部95は、プレート90の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。プレート凸部94は、肉抜き用貫通孔93の周方向中央に対応する位置に一つずつ配置されている。プレート凹部95も同様に、肉抜き用貫通孔93の周方向中央に対応する位置に一つずつ配置されている。プレート90において、プレート凸部94とプレート凹部95とが設けられている部位は、歯部60によって覆われない部位である。
【0068】
図11に示すように、プレート90の板厚方向から見て、プレート90の第1面にあるプレート凸部94の各々は、プレート90の第2面にあるプレート凹部95の1つと重なるように配置されている。つまり、プレート90の第1面にあるプレート凸部94の各々は、プレート90の第2面にあるプレート凹部95の1つと、プレート90の周方向及び径方向において一致するように配置される。
【0069】
<連結用貫通孔について>
プレート90は、肉抜き用貫通孔93よりも径方向外側の部位に複数の連結用貫通孔96を有している。本実施形態において、連結用貫通孔96の数は、スリーブ80の連結孔86の数と同じである。各連結用貫通孔96は、プレート90を板厚方向に貫通している。各連結用貫通孔96の形状は、各連結孔86の形状と同一である。
【0070】
連結用貫通孔96は、プレート90の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。連結用貫通孔96は、プレート溝72の配列間隔の2倍の間隔を空けて配置されている。周方向に隣り合う2つの連結用貫通孔96の間に、1つのプレート溝72が配置されている。プレート90において、連結用貫通孔96が設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。連結用貫通孔96は、プレート90の製造時において、たとえばプレス等の加工によって、鋼板の対応する箇所を打ち抜いて形成される。なお、連結用貫通孔96を形成する方法は、たとえばプレス等の加工によって環状に打ち抜かれた後の鋼板に対し、切削加工によって連結用貫通孔96を形成する等、適宜変更可能である。
【0071】
<プレートの積層について>
全てのプレート90の第1面が同じ方向を向いた状態で、すなわち、各プレート90の第1面が隣接するプレート90の第2面と向き合う状態で、複数のプレート90が板厚方向に積層される。複数のプレート90が積層された状態では、プレート軸孔71が板厚方向に並び、プレート溝72が板厚方向に並び、肉抜き用貫通孔93が板厚方向に並ぶ。複数のプレート90が積層された状態では、プレート凸部94が板厚方向に並び、プレート凹部95が板厚方向に並び、連結用貫通孔96が板厚方向に並ぶ。隣接する2つのプレート90の間では、一方のプレート90のプレート凸部94の各々が、他方のプレート90のプレート凹部95の1つと板厚方向において対向する。
【0072】
隣接する2つのプレート90の間では、一方のプレート90のプレート凸部94の各々が、他方のプレート90のプレート凹部95の1つに嵌合される、詳細には圧入される。隣接するプレート90は、プレート凸部94とプレート凹部95とが嵌合することによって互いに一体化される。これにより、複数のプレート90が板厚方向に積層された積層体であるスリーブ80が完成する。
【0073】
図9に示すように、積層された複数のプレート90の肉抜き用貫通孔93は、板厚方向に並ぶことによってスリーブ80の肉抜き孔83を形成する。隣接するプレート90の互いに嵌合しているプレート凸部94及びプレート凹部95は、スリーブ80の内部に埋まって外部に露出されない。一方、図9に示すように、スリーブ80の軸方向における両面に位置するプレート凸部94及びプレート凹部95は、他のプレート凸部94又はプレート凹部95と嵌合しておらず、スリーブ80の外部に露出されることによってスリーブ80の凸部84及び凹部85を形成する。スリーブ80の凸部84を形成するプレート凸部94は、スリーブ80の軸方向の第1端に配置される1つのプレート90aの第1面に設けられる。スリーブ80の凹部85を形成するプレート凹部95は、スリーブ80の軸方向の第2端に配置される1つのプレート90bの第2面に設けられる。
【0074】
<第2実施形態の効果>
(2-1)スリーブ80において、連結孔86が設けられている部位は、歯部60によって覆われる部位である。連結孔86が歯部60の内周側部位と結合する。スリーブ50と歯部60との間での周方向への相対移動は、連結孔86によって抑制される。したがって、スリーブ50と歯部60との間の結合の強度を高めることができる。
【0075】
(2-2)スリーブ80と歯部60との間での周方向への相対移動は、連結孔86によって抑制される。軸方向の荷重に対する歯部60の変形、いわゆる倒れは連結孔86によって抑制される。連結孔86は、スリーブ80と歯部60との間の結合の強度を高める効果と、軸方向の荷重に対する歯部60の強度を高める効果とを発揮する。この場合、各種の効果を発揮する構成を個別に形成する場合と比べて、プレート90の構成を簡素化することができる。これは、プレート90を製造する際の加工に用いる設備能力を低減したり、加工の方法を容易にしたりするのに効果的である。
【0076】
<第3実施形態>
次に、図12図14を参照して第3実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、上記第1実施形態と同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図12に示すように、スリーブ100は、積層された複数のプレート110を含む積層体である。スリーブ100は、第1実施形態のスリーブ50が外径を同一とするプレート70の積層体であるのに対して、外径の異なる2種類のプレート110の積層体である点が、第1実施形態と異なる。なお、スリーブ100は、外径の異なる2種類のプレート110の積層体である以外の構成が、第1実施形態と同一構成である。
【0078】
歯部60は、その外周面である歯面61においてスリーブ100の軸方向に延びる複数の溝62を有する。本実施形態において、溝62の数は、たとえばスリーブ100の外周面に設けられた溝102a,102bの数より少ない。なお、溝62の数はスリーブ100の外周面に設けられた溝102a,102bの数以上等、適宜変更可能である。溝62は、スリーブ100の軸方向に対して微小の角度を有する方向に真っ直ぐ延びている。溝62は、スリーブ100の周方向において所定間隔を空けて、たとえば等間隔を空けて配置されている。つまり、複数の溝62は、歯面61において斜歯である。なお、複数の溝62は、スリーブ100の軸方向に対する角度を変更する等、適宜変更可能である。たとえば複数の溝62は、歯面61において平歯であってもよい。歯部60の軸方向は、スリーブ100の軸方向と一致する。歯部60の周方向は、スリーブ100の周方向と一致する。
【0079】
溝62は、スリーブ100の径方向において深さを有する。溝62は、軸方向の両端から中央に向かって深さが大きくなるように構成されている。溝62の底面62aの軸方向の両端は、底面62aのうち最も径方向外側に位置する部位である。底面62aの軸方向の中央は、底面62aのうち最も径方向内側に位置する部位である。底面62aは、軸方向の両端の間でスリーブ100の径方向内側に向かって円弧上に湾曲している。
【0080】
<プレートの構成>
本実施形態において、スリーブ100を構成する4つのプレート110は、互いに外径の異なる大径プレート110aと小径プレート110bとを含む。本実施形態において、大径プレート110aの数と小径プレート110bの数とはそれぞれ2つである。なお、プレート110の数は、大径プレート110aが2つ以上且つ小径プレート110bが1つ以上であればよく、例えば、大径プレート110aが2つ且つ小径プレート110bが1つや3つ等、適宜変更可能である。大径プレート110aと小径プレート110bとは、たとえばプレス等の加工によってそれぞれに対応する外径となるように鋼板を環状に打ち抜いて製造される。本実施形態において、大径プレート110aは、第1の鋼板の一例である。小径プレート110bは、第2の鋼板の一例である。
【0081】
図13は、1つの大径プレート110aを実線で示している。また、同図は、1つの小径プレート110bを一点鎖線で示している。大径プレート110aの外径は、小径プレート110bの外径と比べて大きい。本実施形態において、小径プレート110bの外径は、第1実施形態のプレート70の外径と同一である。つまり、大径プレート110aの外径は、第1実施形態のプレート70の外径と比べて大きい。2つの大径プレート110aの外径は、同一である。2つの小径プレート110bの外径は、同一である。
【0082】
<スリーブの構成>
図12に示すように、2つの大径プレート110aと2つの小径プレート110bとは、スリーブ100の軸方向に積層されている。スリーブ100の軸方向の両端には、大径プレート110aが1つずつ配置されている。2つの大径プレート110aの間には、これらに挟まれるように2つの小径プレート110bが配置されている。スリーブ100は、スリーブ100の軸方向の両端側に位置する2つの軸端部位101aを含む。スリーブ100は、スリーブ100の軸方向の中央領域に位置する1つの中央部位101bを含む。中央部位101bは2つの軸端部位101aの間に位置する。
【0083】
各軸端部位101aは、1つの大径プレート110aに対応する部位である。軸端部位101aは、スリーブ100の周全体に亘って設けられている。軸端部位101aの外径は、大径プレート110aの外径である。中央部位101bは、2つの小径プレート110bに対応する部位である。中央部位101bは、スリーブ100の周全体に亘って設けられている。中央部位101bの外径は、小径プレート110bの外径である。したがって、軸端部位101aの外径は、中央部位101bの外径と比べて大きい。軸端部位101aは、大径プレート110aの半径と小径プレート110bの半径との差分だけ中央部位101bよりも径方向外側に突出する。スリーブ100の外周面は段差形状を有し、スリーブ100の軸方向の両端の間に径方向内側に凹んだ凹部を有する。本実施形態において、軸端部位101aは、第1の部位の一例である。中央部位101bは、第2の部位の一例である。
【0084】
<大径プレートの外径と小径プレートの外径との差について>
図14は、スリーブ100の一部が歯部60により覆われた状態において、歯部60に設けられた溝62の底面62aに対応する位置での断面構造を示している。図14には、溝62の底面62a上の3つの点P1,P2,P3が示されている。点P1,P3は軸端部位101aに対応する箇所であり、点P2は中央部位101bに対応する箇所である。点P1の箇所における底面62aの位置と点P2の箇所における底面62aの位置とは、スリーブ100の径方向において差分Aだけ異なる。言い換えれば、点P1の箇所における溝62の深さと点P2の箇所における溝62の深さとは、スリーブ100の径方向において差分Aだけ異なる。同様に、点P1の箇所における底面62aの位置と点P3の箇所における底面62aの位置とは、スリーブ100の径方向において差分Aだけ異なる。言い換えれば、点P1の箇所における溝62の深さと点P3の箇所における溝62の深さとは、スリーブ100の径方向において差分Aだけ異なる。点P1,P3の箇所における溝62の深さは第1の深さであり、点P2の箇所における溝62の深さは第2の深さである。つまり、溝62は、軸端部位101aに対応する箇所において第1の深さを有するとともに、中央部位101bに対応する箇所において第2の深さを有する。
【0085】
図14には、スリーブ100の外周面上の3つの点Q1,Q2,Q3が示される。点Q1は、スリーブ100の軸方向の一端側に配置される軸端部位101aの軸方向中央、つまりスリーブ100の軸方向の一端側に配置される大径プレート110aの板厚方向の中央、に位置する。点Q1と点P1とは、スリーブ100の軸方向において互いに同じ位置にある。点Q2は、スリーブ100の中央部位101bの軸方向中央、つまり2つの小径プレート110bの境界、に位置する。点Q2と点P2とは、スリーブ100の軸方向において互いに同じ位置にある。点Q3は、スリーブ100の軸方向の他端側に配置される軸端部位101aの軸方向中央、つまりスリーブ100の軸方向の他端側に配置される大径プレート110aの板厚方向の中央、に位置する。点Q3と点P3とは、スリーブ100の軸方向において互いに同じ位置にある。軸端部位101aの半径と中央部位101bの半径とは、差分Bだけ異なる。言い換えれば、大径プレート110aの半径と小径プレート110bの半径とは、差分Bだけ異なる。半径に関する差分Bは、外径に関する差分(2×B)と言い換えることができる。
【0086】
図14に示される断面において、スリーブ100の外周面の形状は、3つの点Q1,Q2,Q3を曲線で結んだ場合に得られる形状、すなわち、スリーブ100の軸方向の両端の間でスリーブ100の径方向内側に向かって湾曲している円弧形状に近似できる。つまり、スリーブ100の外周面の形状は、歯部60の溝62の底面62aに倣った形状である。
【0087】
スリーブ100の半径に関する差分Bは、歯部60の溝62の深さに関する差分Aに基づき定められている。言い換えれば、スリーブ100の外径に関する差分(2×B)は、歯部60の溝62の深さに関する差分Aに基づき定められている。本実施形態において、差分Bは、たとえば差分Aと同一である。図14において、点P1,P3と点Q1,Q3との間の距離Cは、点P2と点Q2との間の距離Dと同一である。つまり、差分Aと差分Bとが同一の場合、距離Cと距離Dとは同一である。距離Cと距離Dとは、歯部60の径方向における厚みを定義する。歯部60の径方向における厚みは、点P1,Q1に対応する部位と、点P2,Q2に対応する部位と、点P3,Q3に対応する部位とで同一である。
【0088】
<第3実施形態の効果>
(3-1)スリーブ100の軸方向の両端側に位置する軸端部位101aの外径は、スリーブ100の軸方向の中央領域に位置する中央部位101bの外径と比べて大きい。歯部60においてスリーブ100が存在する部位では、径方向の厚みのばらつきを低減することができる。したがって、歯部60の強度のばらつきを低減することができる。
【0089】
(3-2)軸端部位101aと中央部位101bとは、積層前の大径プレート110a及び小径プレート110bにそれぞれ加工を施すことによって実現される。この場合、積層体であるスリーブ100に対して加工を施す場合と比べて、軸端部位101a及び中央部位101bの加工に用いる設備能力を低減できたり、これらの加工の方法を容易にできたりする。
【0090】
(3-3)大径プレート110aと小径プレート110bとの作製では、2種類の外径の鋼板を作製すればよい。この場合、3種類の外径の鋼板を作製する場合と比べて、作製の手間を省くことができる。
【0091】
(3-4)スリーブ100の外周面では、歯部60の溝62の底面62aに倣った形状を実現することができる。これは、歯部60において、スリーブ100が存在する部位の径方向における厚みのばらつきを低減するのに効果的である。
【0092】
(3-5)歯部60においてスリーブ100が存在する部位では、径方向における厚みのばらつきを低減することができる部位を周全体に亘って設けることができる。これは、歯部60の強度のばらつきを低減するのに効果的である。
【0093】
<他の実施形態>
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0094】
図15に示すように、上記第1実施形態において、スリーブ50を構成する複数のプレート70は、隣接するプレート70のプレート溝72が周方向にずれた状態となるように構成されてもよい。これは、スリーブ50と歯部60との間の結合の強度をさらに高めるのに効果的である。この図15の実施形態は、上記第2実施形態及び上記第3実施形態に対しても同様に適用できる。
【0095】
図16に示すように、上記第1実施形態において、スリーブ50の軸方向の両端に配置される2つのプレート70a,70bの少なくとも一方のプレート軸孔71は、プレート軸孔71に挿入されたステアリング軸11の外周に対して食い込むように構成された内周縁を有してもよい。この場合、プレート軸孔71の内径は、ステアリング軸11の外径よりも小さく設定されている。プレート70a,70bの少なくとも一方は、プレート軸孔71の内周縁から径方向外側に向かって延びる複数のスリット120を有している。これは、スリーブ50とステアリング軸11との間の結合の強度をさらに高めるのに効果的である。この図16の実施形態は、上記第2実施形態及び上記第3実施形態に対しても同様に適用できる。
【0096】
・上記第1実施形態において、凸部54と凹部55との形状は、互いに嵌合可能な形状である限り、適宜変更可能である。これは、上記第2実施形態及び上記第3実施形態についても同様である。
【0097】
・上記第1実施形態において、複数のプレート70を一体化させる方法は、適宜変更可能である。たとえば、複数のプレート70は、レーザー溶接やスポット溶接等の溶接、又は接着剤等を利用した接着によって一体化されてもよい。また、複数のプレート70は、積層された状態で複数のプレート70に跨って挿通されるボルトやピン等の別部材によって一体化されてもよい。別部材がピンの場合、当該ピンの先端をかしめることもできる。ここに記載した他の実施形態を採用する場合、プレート凸部74及びプレート凹部75は削除できる。つまり、凸部54及び凹部55は削除できる。ここに記載した他の実施形態は、上記第2実施形態に対しても同様に適用できる。この場合、プレート凸部94及びプレート凹部95は削除できる。つまり、凸部84及び凹部85は削除できる。これは、上記第3実施形態についても同様である。
【0098】
・上記第1実施形態では、スリーブ50と歯部60との間での周方向への相対移動を抑制する構成は、1)溝52、及び、2)凸部54と凹部55との組み合わせ、のうち少なくともいずれか1つを含んでいればよい。たとえば、凸部54及び凹部55を採用する場合、溝52は削除できる。この場合、凸部54及び凹部55は、連結部に対応する。プレート凸部74及びプレート凹部75は、連結形成部に対応する。これは、上記第2実施形態についても同様である。つまり、スリーブ80と歯部60との間での周方向への相対移動を抑制する構成は、溝52と、連結孔86とのうち少なくともいずれか一つを含んでいればよい。たとえば、連結孔86を採用する場合、溝52は削除できる。この場合、連結孔86は、連結部に対応する。連結用貫通孔96は、連結形成部に対応する。これは、上記第3実施形態についても同様である。
【0099】
・上記第1実施形態において、肉抜き孔53は、歯部60によって覆われるスリーブ50の部位に設けられていてもよい。この場合であっても、スリーブ50の軽量化については実現できる。ここに記載した他の実施形態は、上記第2実施形態及び上記第3実施形態に対しても同様に適用できる。
【0100】
・上記第1実施形態において、肉抜き孔53は、上記第2実施形態と同様、全て同一形状であってもよい。肉抜き用貫通孔73は、全て同一形状であってもよい。一方、上記第2実施形態において、肉抜き孔83は、上記第1実施形態と同様、互いに異なる形状の肉抜き孔を含んでいてもよい。肉抜き用貫通孔93は、互いに異なる形状の肉抜き用貫通孔を含んでいてもよい。これは、上記第3実施形態についても同様である。
【0101】
・上記第1実施形態において、凹部55は、上記第2実施形態と同様、円形の断面形状を有してもよい。プレート凹部75は、円形の断面形状を有してもよい。一方、上記第2実施形態において、凹部85は、上記第1実施形態と同様、楕円形の断面形状を有してもよい。プレート凹部95は、楕円形の断面形状を有してもよい。これは、上記第3実施形態についても同様である。
【0102】
・上記第3実施形態において、小径プレート110bは、軸方向一方側に位置する大径部と、軸方向の他方側に位置する小径部とを有していてもよい。小径部の外径は大径部の外径よりも小さい。大径部の外径は、たとえば大径プレート110aと同一であればよい。4つのプレート110が積層された状態では、2つの小径プレート110bは、小径部同士が互いに対向するように配置されていればよい。大径部の外径は、大径プレート110aより小さくてもよい。この場合、スリーブ100の外周面の外径は、スリーブ100の軸方向の両端の間において複数段階で変化する。
【0103】
・上記第3実施形態において、大径プレート110aは、軸方向一方側に位置する大径部と、軸方向の他方側に位置する小径部とを有していてもよい。小径部の外径は大径部の外径よりも小さい。小径部の外径は、たとえば小径プレート110bと同一、又は小径プレート110bよりも大きくてよい。4つのプレート110が積層された状態では、2つの大径プレート110aは、小径部が小径プレート110bに対向するように配置されていればよい。小径部の外径が小径プレート110bよりも大きい場合、スリーブ100の外周面の外径は、スリーブ100の軸方向の両端の間において複数段階で変化する。
【0104】
・上記第3実施形態において、スリーブ100は、積層された5つ以上のプレート110を含む場合、外径の異なる3種類以上のプレート110の積層体であってもよい。たとえば5つのプレート110を含む場合、スリーブ100の軸方向の両端には、最も大きい外径を有するプレートが1つずつ配置されていればよい。2つの最も大きい外径を有するプレートの間には、2番目に大きい外径を有するプレートが配置されていればよい。2番目に大きい外径を有するプレートの間には、最も小さい外径を有する1つのプレートが配置されていればよい。この場合、スリーブ100の外周面の外径は、スリーブ100の軸方向の両端の間において複数段階で変化する。ここに記載した他の実施形態において、中央部位101bは、最も小さい外径を有する1つのプレートに対応する部位である。つまり、中央部位101bの外径は、最も小さい外径を有する1つのプレートの外径である。
【0105】
・上記第3実施形態において、軸端部位101aは、スリーブ100の周方向において非連続的に設けられていてもよい。中央部位101bは、スリーブ100の周方向において非連続的に設けられていてもよい。この場合、スリーブ100において、軸端部位101a及び中央部位101bが設けられていない部位では、スリーブ100の軸方向において外径が同一である。
【0106】
・上記第3実施形態において、歯部60の歯面61の先端の形状は、溝62の底面62aと同様の円弧形状であってもよいし、平面形状であってもよい。なお、上記第1実施形態及び上記第2実施形態の歯部60は、上記第3実施形態と同様の溝62を有していてもよいし、ここに記載した他の実施形態の歯面61を有していてもよい。
【0107】
図17に示すように、上記各実施形態において、ステアリング装置1のアクチュエータ3は、モータ20のモータトルクをラック軸12へと伝達するように構成されてもよい。モータ20は、減速機構22を介してピニオン軸17に連結される。ピニオン軸17は、ラックアンドピニオン機構16を介してラック軸12に連結される。
【0108】
・上記各実施形態において、ステアリング装置1は、ステアリングホイール10と転舵輪15との間の動力伝達路が機械的に分離したステアバイワイヤ式のステアリング装置であってもよい。この場合、アクチュエータ3のモータトルクは、ステアリングホイール10に付与する反力、及び転舵輪15を転舵させる転舵力のうち少なくともいずれかとして用いられてもよい。その他、ステアリング装置1は、車両の左右の後輪を転舵させる後輪用のステアリング装置であってもよい。この場合、アクチュエータ3のモータトルクは、左右の後輪を転舵させる転舵力として用いられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17