(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】不溶性の経皮マイクロニードルパッチ及びその調製方法並びに応用
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20240730BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61M37/00 500
A61M37/00 505
A61K9/00
A61K45/00
A61K47/36
(21)【出願番号】P 2023537226
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2022113262
(87)【国際公開番号】W WO2023040568
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】202111073707.1
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513065550
【氏名又は名称】中国科学院理化技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】521085113
【氏名又は名称】中科微針(北京)科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高 云華
(72)【発明者】
【氏名】周 沢▲せん▼
(72)【発明者】
【氏名】張 鎖慧
(72)【発明者】
【氏名】楊 国忠
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107412201(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109364366(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
A61K 9/00
A61K 45/00
A61K 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及び基材上の針先を含み、且つ主に架橋されたアルギン酸ナトリウムで構成されるマイクロニードルと、
前記基材に結合され、且つ針先に対応する部分が中空部となっているバッキングと、を含み、
前記架橋されたアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸ナトリウム水溶液と原位置架橋剤の水溶液を均一な水溶液に混合した後、架橋して形成され、
前記原位置架橋剤は、エデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンとの混合物であり、ここで、前記エデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンとのモル比は1:0.8~1:1.2であり、
前記原位置架橋剤の水溶液において、エデト酸ナトリウムカルシウムの濃度は0.3~1.0mol/Lである、
ことを特徴とする不溶性の経皮マイクロニードルパッチ。
【請求項2】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液と原位置架橋剤の水溶液との体積比は20:1~4:1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の経皮マイクロニードルパッチ。
【請求項3】
前記アルギン酸ナトリウム水溶液の固形分含有量は12~25%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の経皮マイクロニードルパッチ。
【請求項4】
前記マイクロニードルにはさらにポロゲンが含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の経皮マイクロニードルパッチ。
【請求項5】
前記ポロゲンの添加量はマイクロニードルの全重量の0.1~10wt%を占める、
ことを特徴とする請求項4に記載の経皮マイクロニードルパッチ。
【請求項6】
前記ポロゲンは塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸及びそのナトリウム塩、トレハロース、マルトース、シクロデキストリンから選ばれる一種又は数種である、
ことを特徴とする請求項4に記載の経皮マイクロニードルパッチ。
【請求項7】
アルギン酸ナトリウム水溶液と原位置架橋剤の水溶液を混合し、均一な混合液を形成するステップと、
前記混合液をマイクロニードルの金型に置き、真空引きして、溶液を金型ピンホールに充填させると同時にアルギン酸ナトリウム架橋を完了させ、乾燥させるステップと、
乾燥後に得られたマイクロニードルを金型から取り出し、且つ基材とバッキングを結合するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の経皮マイクロニードルパッチの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬技術の分野に関する。より具体的には、不溶性の経皮マイクロニードルパッチ及びその調製方法並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮投薬は、患者のコンプライアンスを改善すると同時に、胃腸薬物の分解を回避し、バイオアベイラビリティを向上させ、皮下注射による痛みを排除できる一般的な投薬方式である。角質層の存在は、薬物の分子量と薬物の水溶性の面からその適用範囲が制限され、少数の薬物しか経皮的に投薬することができず、且つ投薬効率が制限される。近年、マイクロナノ加工技術の発展に伴い、マイクロニードル投薬の研究が急速に進められている。マイクロニードルアレイは、痛みを伴わずに皮膚の角質層を貫通することができ、経皮投薬経路において障壁を貫通する際に薬物を補助し、薬物のバイオアベイラビリティを向上させる低侵襲デバイスである。マイクロニードルは、大量生産が可能で、コストが低く、多くの薬物に適用し、患者が自主投薬できるなどの利点を有し、近年注目を浴びている。
【0003】
マイクロニードルの研究は多く、マイクロニードルの溶解性能によって溶解性マイクロニードルと不溶性マイクロニードルに分けられる。溶解性マイクロニードルは臨床に応用する前に、皮内に溶解可能な成分の代謝と排除経路の研究を行い、材料の生体安全性を判断する必要があるため、商用化の進行を遅らせることは避けられない。不溶性マイクロニードルは金属、単結晶シリコン又は高分子材料からなることが多く、マイクロニードルは皮膚に適用した後に完全に除去されることができ、体内に材料蓄積が生じず、材料代謝負担が軽減される。このため、現在臨床応用においては依然として不溶性マイクロニードルが主である。一般的な不溶性マイクロニードルは、薬物の経皮を補助する場合、マイクロニードルが除去された後、薬物をマイクロニードルが形成する皮膚の穴を通過させるために、薬物を塗布し又は貼り付ける必要がある。皮膚の微細孔は、マイクロニードルが除去されると治癒を開始し、マイクロニードルの微細孔の残存時間は、皮膚の自己修復によって制限され、薬物の経皮吸収の全体的な効率をさらに向上させることは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、不溶性の経皮マイクロニードルパッチを提供することであり、当該経皮マイクロニードルパッチに活性物質が含まれず、且つ投薬した後、当該経皮マイクロニードルパッチを除去した後、薬物の吸収を促進するために薬物を塗布し又は貼り付けることなく、良好なバイオアベイラビリティを得ることができる。
【0005】
本発明の第2の目的は、不溶性の経皮マイクロニードルパッチの調製方法を提供することである。
【0006】
本発明の第3の目的は、不溶性の経皮マイクロニードルパッチの応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用し、
不溶性の経皮マイクロニードルパッチは、
基材及び基材上の針先を含み、且つ主に架橋されたアルギン酸ナトリウムで構成されるマイクロニードルと、
前記基材に結合され、且つ針先に対応する部分が中空部となっているバッキングと、を含む。
【0008】
当該経皮マイクロニードルパッチにおいて、基材及び針先は一体に成形してもよく、別々に成形してもよく、具体的には異なるプロセスによって選択してもよい。また、当該マイクロニードルは主に架橋されたアルギン酸ナトリウムで構成され、当該マイクロニードルの本体部分は架橋されたアルギン酸ナトリウムであると理解されてもよい。
【0009】
さらに、前記架橋されたアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸ナトリウムと原位置架橋剤で架橋された構造である。当該システムで得られた架橋されたアルギン酸ナトリウムは、マイクロニードル本体として高い強度を有し、皮膚内に良好に適用することができ、また、皮膚に対する刺激がなく、安全で無害であるだけでなく、また、当該架橋されたアルギン酸ナトリウムは高い膨潤度を有し、活性物質を皮下によく投与することができ、高いバイオアベイラビリティを有し、最後に、当該マイクロニードルは水に不溶であり、投薬時に、随時に投与及び停止することができ、投薬量を良好に制御することができる。
【0010】
さらに、前記架橋されたアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸ナトリウム水溶液と原位置架橋剤の水溶液を均一な水溶液に混合した後、架橋して形成される。
【0011】
さらに、前記原位置架橋剤は、エデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンとの混合物であり、ここで、前記エデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンとのモル比は1:0.8~1:1.2である。この条件下で調製されたマイクロニードルは、高い膨潤度を有することを保証しながら、マイクロニードルは高い強度を有し、皮膚刺激性がより小さい。
【0012】
さらに、前記原位置架橋剤の水溶液において、エデト酸ナトリウムカルシウムの濃度は0.3~1.0mol/Lである。
【0013】
さらに、前記アルギン酸ナトリウム水溶液と原位置架橋剤の水溶液との体積比は20:1~4:1である。
【0014】
さらに、前記アルギン酸ナトリウム水溶液の固形分含有量は12~25%である。
【0015】
さらに、前記原位置架橋剤において、グルコノラクトンとエデト酸ナトリウムカルシウムとのモル比は0.8~1.2である。
【0016】
さらに、前記マイクロニードルにはさらにポロゲンが含まれる。ポロゲンの存在は、皮内の水分子が上段針先基質内部に入ることに役立ち、薬物放出速度を調節する。
【0017】
さらに、前記ポロゲンの添加量はマイクロニードルの全重量の0.1~10wt%を占める。
【0018】
さらに、前記ポロゲンは塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸及びそのナトリウム塩、セルロース系誘導体、トレハロース、マルトース、シクロデキストリン類から選ばれる一種又は数種である。
【0019】
さらに、バッキングはバッキングフィルムである。バッキングフィルムは、マイクロニードル基材との良好な結合を可能にするように選択される。
【0020】
上記第2の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用し、
不溶性の経皮マイクロニードルパッチの調製方法であって、
アルギン酸ナトリウム水溶液と原位置架橋剤の水溶液を混合し、均一な混合液を形成するステップと、
当該混合液をマイクロニードルの金型に置き、真空引きして、溶液を金型ピンホールに充填させると同時にアルギン酸ナトリウム架橋を完了させ、乾燥させるステップと、
乾燥後に得られたマイクロニードルを金型から取り出し、且つ基材とバッキングを結合するステップと、を含む。
【0021】
さらに、前記乾燥は送風乾燥であり、時間は20~40minであることが好ましい。
【0022】
さらに、注液成形時に、架橋剤の異なる添加量に基づき、真空引き時間は15~30minである。
【0023】
上記第3の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用し、
不溶性の経皮マイクロニードルパッチの経皮投薬における応用である。
【0024】
さらに、当該応用は、
当該経皮マイクロニードルパッチのマイクロニードルを人体皮膚内に施すステップと、
バッキングの中空部によって、マイクロニードルに活性物質を施すステップと、
投薬が完了すると、当該経皮マイクロニードルパッチを取り出すればよいステップと、を含む。
【0025】
本発明において、活性物質は、薬物、薬物クリーム、薬物ゲルなどであってもよい。ここで、前記薬物は可溶性薬物及び不溶性薬物であってもよい。不溶性薬物は、トコフェロール、抗真菌/細菌性薬物などの脂溶性薬物であってもよく、可溶性薬物は、L-アスコルビン酸などの酸性水溶性薬物、トラネキサム酸などの中性水溶性薬物、マトリンなどの水溶性アルカリ、メタセナチドなどのポリペプチド系薬物、ヘパリンなどの多糖類薬物、トリアゾールヌクレオシドなどの核酸系薬物などが挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の有益な効果は以下のとおりであり、
本発明により提供される不溶性の経皮マイクロニードルパッチは、皮膚に長時間作用でき、且つ経皮投薬に用いる場合、皮膚に作用する膨潤したマイクロニードルが吸水した穴を通じて、薬物が皮膚の微細孔に入り、体内に吸収されることで、薬物の経皮投薬時のバイオアベイラビリティを向上させることができる。投薬終了後にはマイクロニードルは完全に取り出されることができ、体内の代謝負担を増やすことはなく、且つ可溶性材料が体内に蓄積することを回避し、良好な生体安全性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下図面を参照して本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明する。
【
図1】実施例1におけるアルギン酸ナトリウム膨潤マイクロニードルの蛍光顕微鏡図を示す。
【
図2】実施例1におけるアルギン酸ナトリウム膨潤マイクロニードルの吸水後の蛍光顕微鏡図を示す。
【
図3】実施例4、6、8におけるアルギン酸ナトリウム膨潤マイクロニードルによるL-アスコルビン酸の透過を補助する経皮浸透曲線を示す。
【
図4】実施例4、6、8におけるアルギン酸ナトリウム膨潤マイクロニードルによるトラネキサム酸の透過を補助する経皮浸透曲線を示す。
【
図5】実施例4、6、8におけるアルギン酸ナトリウム膨潤マイクロニードルによるマトリンの透過を補助する経皮浸透曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明をより明確に説明するために、以下、好ましい実施例及び図面を合わせて本発明についてさらに説明する。図面において同様の構成要素は同じ参照符号で示されている。以下に具体的に記載される内容は、例示的であって限定的ではなく、それにより本発明の保護範囲が限定されるべきではないことが、当業者によって理解されるであろう。
【0029】
(実施例1)
表1のデータに従い、1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.112gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.0534gのグルコノラクトンを秤量し、1mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。得られたマイクロニードルの蛍光顕微鏡図を
図1に示し、得られたマイクロニードルが吸水して膨潤した後の蛍光顕微鏡図を
図2に示し、吸水後も形状は依然として完全を保っており、体積が大きくなることがわかる。
【0030】
(実施例2)
表1のデータに従い、1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.224gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.125gのグルコノラクトンを秤量し、1mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0031】
(実施例3)
表1のデータに従い、1.5gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、8.5mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.281gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.133gのグルコノラクトンを秤量し、1.5mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0032】
(実施例4)
表1のデータに従い、1.5gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、8.5mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.393gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.214gのグルコノラクトンを秤量し、1.5mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0033】
(実施例5)
表1のデータに従い、2gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、8mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.449gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.214gのグルコノラクトンを秤量し、2mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0034】
(実施例6)
表1のデータに従い、2gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、8mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.598gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.285gのグルコノラクトンを秤量し、2mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0035】
(実施例7)
表1のデータに従い、1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.561gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.267gのグルコノラクトンを秤量し、2.5mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0036】
(実施例8)
表1のデータに従い、1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.748gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.356gのグルコノラクトンを秤量し、2.5mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0037】
【0038】
(比較例1)
1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.561gのエデト酸ナトリウムカルシウムを秤量し、2.5mLの超純水に溶解し、グルコノラクトンフリーの架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0039】
(比較例2)
1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.438gのエチレンジアミン四酢酸、0.267gのグルコノラクトンを秤量し、2.5mLの超純水に溶解し、架橋液とした。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0040】
(比較例3)
1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.112gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.0267gのグルコノラクトンを秤量し、1mLの超純水に溶解し、架橋液とした。このとき、架橋液におけるエデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンとのモル比は1:0.5であった。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。
【0041】
(比較例4)
1gのアルギン酸ナトリウム粉末を秤量し、9mLの超純水に溶解し、アルギン酸ナトリウム溶液とした。0.561gのエデト酸ナトリウムカルシウム、0.401gのグルコノラクトンを秤量し、2.5mLの超純水に溶解し、架橋液とした。このとき、架橋液におけるエデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンとのモル比は1:1.5であった。アルギン酸ナトリウム溶液及び架橋液を混合し、混合した溶液をマイクロニードル金型に敷き詰め、各マイクロニードルユニットに加えられた溶液の体積は40μLであった。金型を20min真空引きし、30min送風乾燥した後、成形した架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを取り出し、マイクロニードルの背部にバッキングフィルムを貼り付けた。当該アルギン酸ナトリウム溶液と架橋液との混合溶液は、マイクロニードルを作製するプロセスにおいて安定的且つ均一な粘度を保持することができず、マイクロニードルユニットの溶液体積が不正確になる。作製されたマイクロニードルには、肉眼で視認できる未溶解のエデト酸ナトリウムカルシウムとグルコノラクトンの粒子があった。
【0042】
(膨潤度テスト)
実施例1~8の膨潤マイクロニードルを恒量になるまで乾燥し、その質量をm1と測定し、純水に浸漬して37℃恒温槽で質量が一定になるまで浸漬し、取り出し、表面水分を拭取った後に秤量して質量をm2とし、下記式:
SR=(m2-m1)/m1×100に従ってハイドロゲル膨潤率を計算する。
(皮膚刺激性試験)
実験動物:ニュージーランド白ウサギ、体重2.5kg。
試験サンプル:各実施例のパッチを、直径2cmの円盤状に裁断したサンプルを4個並列に採取した。
サンプル法:国家食品医薬品監督管理局が発行した「化学薬興奮性、アレルギー性、溶血性研究技術指導原則」に関する規定及び内容を採用した。白ウサギの背部の片側にパッチを貼り付けて7日後に剥がし、評点基準によると、(1)0~0.49は無刺激性であり、(2)0.5~2.99は軽度刺激性であり、(3)3.0~5.99は中度刺激性であり、(4)6.0~8.00は強刺激性である。得られたスコアを平均して、皮膚に対するパッチの刺激性を評価し、その結果を表2に示した。
【0043】
【0044】
ここで、溶解とは、マイクロニードルが水と均一相を形成することを意味し、崩壊とは、マイクロニードルが水の中に複数の部分に分散し、水と均一相を形成しないことを意味する。
【0045】
(薬物経皮浸透性試験)
使用した装置は米国ロゴン会社のSYSTEM912-24全自動経皮拡散サンプリングシステムであり、使用した経皮カップは有効透過面積が0.625cm
2であった。使用した皮膚は厚さが800μmの新鮮な豚耳皮膚であった。各実施例の架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを皮膚の角質層側に応用させ、真皮層が収容セルに向かうようにした。収容セルの容積は2.7mLであり、各実施例で得られたマイクロニードルパッチのそれぞれについて、インビトロ経皮透過性試験を行った。ここで、実施例4、6、8は、インビトロ経皮透過性試験を行い、対照群は単結晶シリコン穿刺処理済み皮膚と無処理皮膚であった。透過薬としては、L-アスコルビン酸、トラネキサム酸、及びマトリンをそれぞれ選択した。単結晶シリコン穿刺処理済み皮膚及び無処理皮膚を用いて対照群とした。曲線の描画結果は
図3、
図4、
図5に示すように、架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを補助として用いてアスコルビン酸を透過した場合、累積透過量は単結晶シリコンマイクロニードル対照群の2.74~2.08倍であり、無処理皮膚は透過しなかった。架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを補助として用いてトラネキサム酸を透過した場合、累積透過量は単結晶シリコンマイクロニードル対照群の2.35~1.75倍であり、無処理皮膚は透過しなかった。架橋アルギン酸ナトリウムマイクロニードルを補助として用いてマトリンを透過した場合、累積透過量は単結晶シリコンマイクロニードル対照群の1.83~1.5倍であり、無処理対照群に比べて3.16~2.68倍向上した。
【0046】
実施例1~8の24時間累積経皮浸透率を表3に示す。
【0047】
【0048】
明らかなように、本発明の上記実施例は、本発明を明確に説明するために例示するものに過ぎず、本発明の実施形態を限定するものではなく、当業者にとって、上記説明に加えて、他の異なる形態の変化又は変動を行ってもよく、ここで、全ての実施形態を網羅することはできず、本発明の技術的解決手段による明らかな変化又は変動は、本発明の保護範囲の列挙に含まれる。