(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】スロット励起を用いた小型円偏波パッチアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20240730BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240730BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/24
H01Q23/00
(21)【出願番号】P 2023557431
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 RU2021000119
(87)【国際公開番号】W WO2022203534
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505315742
【氏名又は名称】トプコン ポジショニング システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントン パブロビッチ ステパネンコ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ ビタリエビッチ アスタクホフ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ ニコラエヴィチ エメリアノフ
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0210678(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102882006(CN,A)
【文献】米国特許第6501427(US,B1)
【文献】特開2014-75693(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3624263(EP,A1)
【文献】Jae-Hoon BANG et al.,Two-Element Conformal Antenna for Multi-GNSS Reception [on line],IEEE Antennas and Wireless Propagation Letters,Vol. 16,pp.796-799,[検索日2024.06.21], インターネット<URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/7556305>,DOI: 10.1109/LAWP.2016.2604396
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 23/00
H01Q 21/24
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面と、
プリント回路基板上に配置され、導電板と複数の導電性ストリップとを備える複合放射パッチであって、所定半径を有する円によって分離される外側領域と内側領域とを備える複合放射パッチと、
前記導電板は、1)前記円上に配置された第1のアーチ形スロットセットと、2)各スロットが、一端において前記導電板の外周に接し、他端において前記第1のアーチ形スロットセットにおける対応するスロットに接する、第2のスロットセットと、を備え、
前記複数の導電性ストリップは、前記複合放射パッチの前記外側領域内に配置され、前記複数の導電性ストリップのうちの1つまたは複数の導電性ストリップは、前記導電板にガルバニック接触し、
前記プリント回路基板上に配置され、右旋円偏波を励起するための励起回路であって、複数のマイクロストリップラインと、該複数のマイクロストリップラインが接続される給電ネットワークとを備える励起回路と、を備える、
ことを特徴とする、アンテナ。
【請求項2】
前記複合放射パッチは、4回回転対称性を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1のアーチ形スロットセットは、4つのアーチ形スロットを含み、前記第2のスロットセットは、4つのスロットを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第2のスロットセットの各スロットは、直線状に形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記第2のスロットセットの各スロットは、ジグザグ線状に形成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記複数のマイクロストリップラインは、4つのマイクロストリップラインを含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記複数のマイクロストリップラインはそれぞれ、同じ長さを有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記複数のマイクロストリップラインはそれぞれ、前記第2のスロットセットのうちの対応するスロットと交差する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記給電ネットワークは、前記複合放射パッチの前記内側領域に配置される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記給電ネットワークは、1つの直交分配器と、2つの同相分離電力分配器と、を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記給電ネットワークは、1)前記複数のマイクロストリップラインのうちの第1および第3のマイクロストリップラインにおいて同相波を、2)前記複数のマイクロストリップラインのうちの第2および第4のマイクロストリップラインにおいて同相波を、3)前記第1および第2のマイクロストリップラインにおいて90度シフトされた電波を、励起する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記第1および第3のマイクロストリップラインは、前記複合放射パッチの中心を通る第1の軸を中心として鏡面対称となっており、前記第2および第4のマイクロストリップラインは、前記複合放射パッチの中心を通る第2の軸を中心として鏡面対称となっており、前記第1の軸および前記第2の軸は、前記プリント回路基板の平面内で互いに垂直である、
ことを特徴とする、請求項11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記複合放射パッチの前記内側領域において前記プリント回路基板上に配置された低ノイズアンプ、をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項14】
水平基部と、該水平基部の外周に沿った垂直ピンのセットと、を備える底部導電板であって、前記水平基部は前記接地面に接し、前記垂直ピンのセットが前記複合放射パッチ側に向けられる、底部導電板、をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項15】
水平基部と、該水平基部の外周に沿った垂直ピンのセットと、を備える上部導電板であって、前記水平基部の半径は前記所定半径以下であり、前記水平基部は前記複合放射パッチの前記内側領域に接し、前記垂直ピンのセットは前記接地面側に向けられる、上部導電板、をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にアンテナに関し、特に衛星測位システム(GNSS)から信号を受信するための低コスト小型広帯域円偏波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
GNSS衛星によって送信される信号は、右旋円偏波(RHCP)を有する。全GNSS周波数帯域は、低周波数(LF)(およそ1165~1300MHZ)と高周波数(HF)(およそ1525~1605MHZ)の2つの周波数帯域に分けられる。
【0003】
これら2つの周波数帯域におけるアンテナ動作を容易にするために、異なる積層パッチアンテナが用いられることが多い。このようなアンテナは、例えば、米国特許第8,174,450号に記載されている。LF帯域パッチアンテナにおける放射パッチは、HF帯域パッチアンテナにおける放射パッチの上方に位置する。アンテナ設計には複数の段階が含まれるため、アンテナ全体の高さが増加し、アンテナを組み立てるプロセスがより複雑になり、その結果、コストが増加する。
【0004】
垂直プローブによって励起される1つの放射パッチを備える広帯域アンテナを設計することの複雑さは、4つのプローブによって放射パッチを励起することにより、天頂方向において最大放射を有する対称的な放射パターン(RP)および安定した位相中心位置を確保できるという事実に関係している。尚、プローブの鏡面対称ペアは逆位相励起でなければならない。損失のない広帯域逆位相分配器は、プリント回路基板(PCB)上において多大なスペースを占めることがよく知られている。米国特許第8,624,792号には、給電ネットワークを用いて4点で励起される1つのラジエータを有する広帯域GNSSアンテナが開示されている。このようなアンテナは、非常に単純なラジエータ設計を有するが、給電ネットワークは、PCB上において多大なスペースを占め、接地面上に位置する。PCB上において給電ネットワークが多大なスペースを占める要因の一部は、そこで用いられるラットレース分配器によるものであり、ラットレース分配器は、3/4波長のサイズのマイクロストリップラインを含むことが知られている。
【0005】
米国特許第7,250,916号には、接地面上方に配置されたPCBの金属化層内に1組のスロットを有するアンテナが開示されている。このアンテナは、高さが低く、導電面の上方に1つのPCBが配置された単純な設計となっている。このように単純なアンテナは、励起垂直プローブをなくすことによっても得られる。そこでは、励起回路はマイクロストリップ給電線として形成され、ラジエータおよび励起回路は同じPCB上に配置される。しかしながら、このアンテナは横方向の大きさが非常に大きく、およそ6.25インチである。このアンテナの他の欠点として、励起マイクロストリップ給電線が上記PCBの中央エリアに位置し、これにより、このエリアに低ノイズアンプ(LNA)または垂直モノポールアンテナを配置するのが困難なことがある。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に記載の実施形態において、GNSS用の広帯域円偏波アンテナを提供する。このアンテナは、寸法が小さく、単純な構造で、低コストである。また、このアンテナは、放射素子と、給電ネットワークおよび低ノイズアンプを同一のプリント回路基板上に有する励起回路と、の両方を収容できる。
【0007】
1つまたは複数の実施形態において、接地面と、複合放射パッチと、励起回路とを備えるアンテナを提供する。複合放射パッチは、プリント回路基板上に配置され、導電板と複数の導電性ストリップとを備える。複合放射パッチは、所定半径を有する円によって分離される外側領域と内側領域とを備える。導電板は、1)円上に配置された第1のアーチ形スロットセットと、2)各スロットが一端において前記導電板の外周に接し、他端において前記第1のアーチ形スロットセットにおける対応するスロットに接する、第2のスロットセットと、を備える。複数の導電性ストリップは、複合放射パッチの外側領域内に配置され、複数の導電性ストリップのうちの1つまたは複数の導電性ストリップは、導電板にガルバニック接触する。励起回路は、プリント回路基板上に配置され、右旋円偏波を励起する。励起回路は、複数のマイクロストリップラインと、複数のマイクロストリップラインが接続される給電ネットワークとを備える。
【0008】
1つの実施形態において、前記複合放射パッチは、4回回転対称性を有する。
【0009】
1つの実施形態において、前記第1のアーチ形スロットセットは、4つのアーチ形スロットを含み、前記第2のスロットセットは、4つのスロットを含む。前記第2のスロットセットの各スロットは、直線状またはジグザグ線状に形成される。
【0010】
1つの実施形態において、前記複数のマイクロストリップラインは、4つのマイクロストリップラインを含む。前記複数のマイクロストリップラインはそれぞれ、同じ長さを有してもよい。前記複数のマイクロストリップラインはそれぞれ、前記第2のスロットセットのうちの対応するスロットと交差してもよい。
【0011】
1つの実施形態において、前記給電ネットワークは、前記複合放射パッチの前記内側領域に配置される。前記給電ネットワークは、1つの直交分配器と、2つの同相分離電力分配器と、を備えてもよい。前記給電ネットワークは、1)前記複数のマイクロストリップラインのうちの第1および第3のマイクロストリップラインにおいて同相波を、2)前記複数のマイクロストリップラインのうちの第2および第4のマイクロストリップラインにおいて同相波を、3)前記第1および第2のマイクロストリップラインにおいて90度シフトされた電波を、励起してもよい。
【0012】
1つの実施形態において、前記第1および第3のマイクロストリップラインは、前記複合放射パッチの中心を通る第1の軸を中心として鏡面対称となっており、前記第2および第4のマイクロストリップラインは、前記複合放射パッチの中心を通る第2の軸を中心として鏡面対称となっており、前記第1の軸および前記第2の軸は、前記プリント回路基板の平面内で互いに垂直である。
【0013】
1つの実施形態において、前記複合放射パッチの前記内側領域において前記プリント回路基板上に配置された低ノイズアンプを備える。
【0014】
1つの実施形態において、前記アンテナはさらに、水平基部と、該水平基部の外周に沿った垂直ピンのセットと、を備える底部導電板を備える。前記水平基部は前記接地面に接し、前記垂直ピンのセットは前記複合放射パッチ側に向けられる。前記アンテナはさらに、水平基部と、該水平基部の外周に沿った垂直ピンのセットと、を備える上部導電板を備えてもよい。前記水平基部の半径は、前記所定半径以下であってもよい。前記水平基部は、前記複合放射パッチの前記内側領域に接する。前記垂直ピンのセットは、前記接地面側に向けられる。
【0015】
本発明のこれらおよびその他の効果については、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、当業者にとって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、1つまたは複数の実施形態に係るアンテナの側面図である。
【
図1B】
図1Bは、1つまたは複数の実施形態に係るアンテナの等角図である。
【
図2A】
図2Aは、1つまたは複数の実施形態に係る複合放射パッチの底部金属化層を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、1つまたは複数の実施形態に係る複合放射パッチの上部金属化層を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、1つまたは複数の実施形態に係る底部金属化層の拡大図である。
【
図2D】
図2Dは、1つまたは複数の実施形態に係る上部金属化層の拡大図である。
【
図2E】
図2Eは、1つまたは複数の実施形態に係るジグザグ線状に形成された第2のスロットセットを示す図である。
【
図3A】
図3Aは、1つまたは複数の実施形態に係る上部導電板を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、1つまたは複数の実施形態に係る底部導電板を示す図である。
【
図4】
図4は、1つまたは複数の実施形態に係る、上方に励起回路が配置された上部金属化層を示す図である。
【
図5】
図5は、1つまたは複数の実施形態に係るアンテナの周波数に対する電圧定在波比(VSWR)の依存性を示す実験グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に開示される実施形態は、図面を参照して説明され、同様の参照番号は、同一または同様の要素を示す。
図1A、
図1Bに、1つまたは複数の実施形態に係るアンテナ100を示す。
図1Aはアンテナ100の側面図であり、
図1Bはアンテナ100の等角図である。アンテナ100は、導電性の接地面101と、PCB(プリント回路基板)102と、を含む。複合放射パッチ(
図2A~
図2Eに示す)および励起回路(
図4に示す)は、PCB102上に配置される。PCB102は、固定ねじ103がねじ込まれるプラスチック製のスタンドオフブロック(
図1A、
図1bには図示しない)を用いて、接地面101の上方に機械的に固定できる。シールド104によって囲まれたLNA(低ノイズアンプ)(
図4に示す)は、PCB102上に配置できる。LNAの出力はケーブル105に接続される。ケーブル105は、PCB102から接地面101を通る。PCB102と接地面101との間において、ケーブル105は、本願のアンテナにおける垂直対称軸106上に配置される。
【0018】
アンテナ100のPCB102と接地面101との間の高さHの空間寸法を低減するために、
図3A~
図3Bに関連してさらに詳細に説明するが、折曲された導電板107と導電板108とのインターデジタル櫛状構造を利用してもよい。
【0019】
図2A~
図2Eに、1つまたは複数の実施形態に係るアンテナ100のPCB102上に配置された複合放射パッチを示す。
図2Aは、PCB102上に配置された複合放射パッチの底部金属化層200を示す図であり、
図2Bは、PCB102上に配置された複合放射パッチの上部金属化層211を示す図である。PCB102は、半径R1の外周201を有する。複合放射パッチは、導電板202と、複数の導電性ストリップ203、204、205、210とを含む。導電板202は、PCB102上の底部金属化層200上に配置できる。また、異なる導電性ストリップを複合放射パッチにおける底部金属化層200と上部金属化層211との両方の上に配置できる。
【0020】
複合放射パッチは、半径R2の円209によって分離または区画される外側領域と内側領域とを備える。複合放射パッチの内側領域は、円209の境界内に規定される。複合放射パッチの外側領域は、円209の境界とPCB102の外周201との間に規定される。導電板202は、第1のアーチ形スロットセットと、第2のスロットセットとを備える。第1のアーチ形スロットセットは、対称軸106上に中心を有する半径R2の円209上に配置された円弧である4つのアーチ形スロット206を備える。第2のスロットセットは、4つのスロット207を含む。第2のスロットセットの4つのスロット207はそれぞれ、一端において導電板202の外周201に接し、他端において第1のアーチ形スロットセットの4つのアーチ形スロット206のうちの対応するスロットに接する。
【0021】
また、複合放射パッチは、複合放射パッチの外側領域内に配置された複数の導電性ストリップ203、204、205、210を備える。複数の導電性ストリップ203、204、205、210のうちの1つまたは複数の導電性ストリップは、導電板202にガルバニック接触するためのガルバニック接触部を有してもよく、一方、複数の導電性ストリップ203、204、205、210のうちの1つまたは複数の導電性ストリップは、導電板202にガルバニック接触するためのガルバニック接触部を有さなくてもよい。導電性ストリップ203は、複合放射パッチの底部金属化層200上に配置され、導電板202とのガルバニック接触部を有さない。導電性ストリップ204、205は、複合放射パッチの上部金属化層211上に配置され、導電板202とのガルバニック接触部を有する。導電性ストリップ204、205のガルバニック接触部は、
図2C、
図2Dに示される金属化孔208によって得られる。
図2Cは、1つまたは複数の実施形態に係る
図2Aの底部金属化層200の拡大図であり、
図2Dは、
図2Bに示される上部金属化層211の拡大図である。導電性ストリップ210は、上部金属化層211上に配置され、導電板202とのガルバニック接触部を有さない。複数の導電性ストリップのうちの1つまたは複数の導電性ストリップは、導電板202の外周の外側にあってもよく、導電板202の外周と交差してもよく、および/または導電板202の外周上にあってもよい。したがって、導電性ストリップ203、205は導電板202の外周の外側にあり、導電性ストリップ210は導電板202の外周上に配置され、導電性ストリップ204は導電板202の外周と交差する。
【0022】
1つの実施形態において、導電板の外周に近い導電性ストリップ204、205は、スロット207に隣接する導電板202とのガルバニック接触部を有する。
図2Cおよび
図2Dに、導電性ストリップ204、205に対して導電板202とのガルバニック接触部を提供する金属化孔208を示す。金属化孔208は、スロット207の反対側同士近くに位置する。
【0023】
図2Cに、1つまたは複数の実施形態に係る、直線状に形成された底部金属化層200上のスロット207を示す。
図2Eに、1つまたは複数の実施形態に係る、ジグザグ線状に形成された底部金属化層200上のスロット207を示す。
【0024】
スロット206、207を備える導電板202と、導電性ストリップ203、204、205、210とは、それらによって形成される複合放射パッチが、垂直軸106を中心とした4回回転対称性を有するように、すなわち、90度回転されると複合放射パッチがそれ自体に変化するように位置する。
【0025】
図3A、3Bに、1つまたは複数の実施形態に係るアンテナ100における折曲された導電板107、108を示す。
図3Aは上部導電板108を示し、
図3Bは底部導電板107を示す。導電板107、108は、水平基部1071、1081と、垂直ピン1072、1082のセットとをそれぞれ有する。垂直ピン1072、1082は、水平基部1071、1081の外周にそれぞれ沿っている。アンテナ100において、底部導電板107は接地面101に接しており、上部導電板108はPCB102の下に配置される。上部導電板108における水平基部の半径は円209の半径R2以下であり、上部導電板108は複合放射パッチの外側領域に接しない。導電板107、108は、シート状の導電性材料を切断し、さらに折曲することによって形成できる。導電板107、108は、垂直ピン1072、1082のセットからインターデジタル構造を形成し、垂直ピン1072のセットは複合放射パッチ側に向けられ、垂直ピン1082のセットは接地面101側に向けられる。接地面101に対するピン1072の接触は、水平基部1071を接地面101に隣接させることによって得られる。ピン1082と複合放射パッチとの接触は、水平基部1081を複合放射パッチのPCB102上の底部金属化層200の内側領域に隣接させることによって確保できる。このようなインターデジタル構造により、アンテナ寸法が低減される。インターデジタル構造は、はんだ付けせずに2つの部品だけで形成され、アンテナ設計が単純かつ安価となる。
【0026】
図4に、1つまたは複数の実施形態に係る、PCB102における、上に励起回路が配置された上部金属化層211を示す。励起回路は、複数のマイクロストリップライン401a、401b、401c、401dと、これらのラインに接続された給電ネットワークとを備える。PCB102の上部金属化層211上の各マイクロストリップライン401a、401b、401c、401dは、PCB102の底部金属化層200内に配置された導電板202における対応するスロット207と交差する。マイクロストリップライン401a、401bは互いに交差するため、コンデンサ402は、上記ライン間のガルバニック接触部を回避するようライン401bに設けられる。コンデンサ402は、動作周波数上において短絡に近いインピーダンスを有する。
【0027】
マイクロストリップライン401a、401b、401c、401dは、同一の長さを有する。ライン401a、401dは、軸405aを中心として鏡面対称となっている。これらのラインに沿って流れる電流は同相である。これらは軸405aに平行な直線偏波を励起する。ライン401b、401cは、軸405bを中心として鏡面対称となっている。これらのラインに沿って流れる電流は同相である。これらは軸405bに平行な直線偏波を励起する。軸405a、405bは、PCB102の中心を通り、互いに垂直である。
【0028】
給電ネットワークは、複合放射パッチの内側領域に配置され、2つの同相分離電力分配器403a、403bと、1つの直交電力分配器404とを備える。同相分離電力分配器403aは、マイクロストリップライン401a、401dにおいて同相波を励起し、同相分離電力分配器403bは、マイクロストリップライン401b、401cにおいて同相波を励起する。直交電力分配器404は、給電ネットワークがマイクロストリップライン401a、401bならびにマイクロストリップライン401c、401dにおいて90度シフトされた波を励起するように、同相分離電力分配器403a、403bの入力に接続される。同相分離電力分配器403a、403bは、ウィルキンソン分配器として構成できる。
【0029】
同相分配器403a、403bは、直交分配器404に接続され、これは、直交チップ電力分配器として形成される。このようにして、励起回路によって右旋円偏波(RHCP)が励起される。この電波は垂直軸106を中心として対称となっている。励起回路には同相分配器および直交分配器のみが存在し、これら分配器は広域の動作周波数帯域を有する。これらの出力は、バラスト抵抗により互いに絶縁される。ここで、スロット207は、等しい長さを有するラインによって励起される。上記励起回路は、PCB102上でほとんどスペースをとらず、依然として、広い周波数範囲内で対称的な放射パターンと、安定した位相中心とを提供する。
【0030】
直交分配器404の出力は、アンテナ出力ポートである。これは、PCB102上に配置されたLNA406に接続できる。LNA406は、複合放射パッチの内側領域においてPCB102に配置される。
【0031】
図5は、1つまたは複数の実施形態に係る、直線偏波のみの場合の本願のアンテナの周波数に対する電圧定在波比(VSWR)の依存性を示す実験グラフ501を示す。このアンテナは以下の幾何学的パラメータを有する:R1=63mm、R2=53mm、H=14mm。導電性ストリップがない場合の実験グラフ502も示す。導電性ストリップがある場合、動作周波数範囲をかなり拡大できることが分かる。この場合に達成できるVSWRのレベルは、GNSSの全帯域において2.5以上である。
【0032】
上記の詳細な説明は、あらゆる点で、説明と例示のためのものであり、本発明を限定するものではなく、また、本明細書に開示されている本発明の範囲は、詳細な説明から判断されるべきものではなく、特許法により許容される最も広い範囲に従って解釈される請求項の範囲から決定されるべきものである。本明細書に記載かつ示された実施形態は、本発明の原理を例示するものにすぎず、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者が種々の変更を実施し得ることを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な他の特徴の組み合わせを実施することが可能であろう。