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特許7529927窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240730BHJP
   C30B 33/00 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B33/00
H01L21/304 611B
H01L21/304 611W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023576119
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022120210
(87)【国際公開番号】W WO2023051345
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】202111155414.8
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522248559
【氏名又は名称】西安奕斯偉材料科技股▲ふん▼有限公司
【住所又は居所原語表記】Room 1-3-029, No.1888 South Xifeng Rd., Hi-Tech Zone Xi’an, Shaanxi 710100, P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】倚 娜
(72)【発明者】
【氏名】令狐 ▲ロン▼凱
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】路 穎
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-77793(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103085180(CN,A)
【文献】特表2019-517454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 -35/00
H01L 21/304
H01L 21/463
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法であって、
前記方法は、
窒素含有量分布に基づいて、切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割することであって、各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量区間に対応することと、
窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定することであって、前記加工条件は、線切断による対応する加工すべき結晶棒セグメントの反り現象を回避できるようにするものであることと、
各前記加工すべき結晶棒セグメントに対応する加工条件を用いて、各前記加工すべき結晶棒セグメントをそれぞれ切断加工し、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断して得られたウエハを取得することと、を含
前記窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定することは、
各加工すべき結晶棒セグメントに対し、線切断過程において所定の複数の径方向位置における温度値をそれぞれ収集することと、
同じ径方向位置における各加工すべき結晶棒セグメントの温度値に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差を決定することと、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部以外に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度が前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度と一致するように、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量を決定することと、を含む
窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法。
【請求項2】
前記各加工すべき結晶棒セグメントにおいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部に位置する加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量は、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部以外に位置する加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量よりも小さい
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割することは、
窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに切断することを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、さらに、
切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を検出することを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を検出することは、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の軸方向に沿った複数の軸方向サンプリング位置にそれぞれ検出サンプルを収集することと、
各検出サンプルに対して熱ドナーを除去した後に温度を迅速に下げ、フーリエ変換赤外分光計FTIRを用いて温度を下げた後の各検出サンプルに対応する窒素含有量を検出することにより、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を特徴づけるための前記複数の軸方向サンプリング位置の窒素含有量を取得することと、を含む
請求項に記載の方法。
【請求項6】
窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システムであって、
前記システムは、分割部分、決定部分及び加工部分を含み、
前記分割部分は、窒素含有量分布に基づいて、切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割するように構成され、各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量区間に対応し、
前記決定部分は、窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定するように構成され、前記加工条件は、線切断による対応する加工すべき結晶棒セグメントの反り現象を回避できるようにするものであり、
前記加工部分は、各前記加工すべき結晶棒セグメントに対応する各前記加工条件を用いて、各前記加工すべき結晶棒セグメントをそれぞれ切断加工し、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断して得られたウエハを取得するように構成され
前記決定部分は、収集機器及びデータ処理機器を含み、
前記収集機器は、各加工すべき結晶棒セグメントに対し、線切断過程において所定の複数の径方向位置における温度値をそれぞれ収集するように構成され、
前記データ処理機器は、
同じ径方向位置における各加工すべき結晶棒セグメントの温度値に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差を決定し、及び、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部以外に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度が前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度と一致するように、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量を決定するように構成され
窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システム。
【請求項7】
前記分割部分は、窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに切断するように構成される
請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、さらに、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を検出するように構成される検出部分を含む
請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年9月29日に中国に提出された中国特許出願No. 202111155414.8に基づく優先権を主張し、その全ての内容が参照によって本開示に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施例は、ウエハ製造技術分野に関し、特に窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、大サイズの半導体レベルの単結晶シリコンシートのプロセスの過程では、通常、直接引き上げ(Czochralski)法で引き上げた単結晶シリコン棒(一部の例では、結晶棒やシリコン棒とも呼ばれる)が用いられている。直接引き上げ法は、石英から作られたるつぼ中の多結晶シリコンを熔化させてシリコン溶融体を取得し、単結晶種をシリコン溶融体に浸漬させ、続いて、結晶種の移動を連続的に高めてシリコン溶融体表面から離れ、それによって、移動中の相界面に単結晶シリコン棒を成長させることを含む。
【0004】
単結晶シリコン棒を引き上げる従来の手段では、通常、窒素ドーピング技術を用いて微量の窒素を単結晶シリコン結晶にドーピングすることで、集積回路の品質に深刻な影響を与える空洞型(Crystal Originated Particle、COP)欠陥を抑制し、集積回路の歩留まりを向上させることができる。さらに、集積回路デバイスの製造過程における金属不純物の吸引除去を容易にするために、直接引き上げ単結晶シリコン中の酸素沈殿と二次誘起欠陥を促進して、その後の切断で得られたシリコンシート表面の活性領域に高品質の清浄領域を生成することができる。また、シリコンシートの機械的強度を高めることもできる。
【0005】
現在、窒素ドーピング技術を用いて結晶棒を引き上げる過程で、窒素の凝集係数が非常に小さいため、偏析現象が発生して結晶棒の軸方向に沿った各位置の窒素濃度が一致しないことを引き起こし、例えば、結晶棒尾部の窒素含有量は、通常、結晶棒頭部の窒素含有量よりも大きくなる。また、窒素ドーピング単結晶シリコンが実現する効果の程度は、通常、窒素の濃度によって決まるため、結晶棒の軸方向の各位置に窒素濃度の違いによって異なる機械的強度を体現し、それによって切断プロセスの過程中に反り現象が現れる。
【発明の概要】
【0006】
これに鑑みて、本開示の実施例は、窒素ドーピング結晶棒を切断して平坦度が良好で均一なウエハを取得できる窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法及びシステムを提供することが望ましい。
【0007】
本開示の実施例の技術的解決手段は、以下のように実現される。
【0008】
第1態様では、本開示の実施例は、窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法を提供し、前記方法は、
窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割することであって、各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量区間に対応することと、
窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定することであって、前記加工条件は、線切断による対応する加工すべき結晶棒セグメントの反り現象を回避できるようにするものであることと、
各前記加工すべき結晶棒セグメントに対応する加工条件を用いて、各前記加工すべき結晶棒セグメントをそれぞれ切断加工し、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断して得られたウエハを取得することと、を含む。
【0009】
第2態様では、本開示の実施例は、窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システムを提供し、前記システムは、分割部分、決定部分及び加工部分を含み、
前記分割部分は、窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割するように構成され、各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量区間に対応し、
前記決定部分は、窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定するように構成され、前記加工条件は、線切断による対応する加工すべき結晶棒セグメントの反り現象を回避できるようにするものであり、
前記加工部分は、各前記加工すべき結晶棒セグメントに対応する各前記加工条件を用いて、各前記加工すべき結晶棒セグメントをそれぞれ切断加工し、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断して得られたウエハを取得するように構成される。
【0010】
本開示の実施例に係る窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法及びシステムによれば、窒素含有量区間に応じて切断すべき窒素ドーピング結晶棒を異なる加工すべき結晶棒セグメントに分割し、各加工すべき結晶棒セグメントに対してそれぞれ反り現象を回避可能な加工条件を決定した後、対応する加工条件に従ってそれぞれの対応する加工すべき結晶棒セグメントを切断加工することにより、平坦度が良好で均一なウエハを取得し、反り現象の発生確率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施例に係る窒素ドーピング単結晶シリコン棒の窒素含有量分布の概略図である。
図2】本開示の実施例に係る窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法のフロー概略図である。
図3】本開示の実施例に係る窒素ドーピング結晶棒を切断して得られた加工すべき結晶棒セグメントの概略図である。
図4】本開示の実施例に係る多線切断装置構成の概略図である。
図5】本開示の実施例に係る効果比較の概略図である。
図6】本開示の実施例に係る窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システム構成の概略図である。
図7】本開示の実施例に係る別の窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システム構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施例における図面を参照しながら本開示の実施例における技術的解決手段について明確に、完全に説明する。
【0013】
固液界面にとって、不純物の相における溶解度は異なるため、界面の両側の材料における不純物の分布濃度は異なることになり、これが不純物の凝集現象であり、不純物の凝集作用の大きさは、通常、凝集係数で記述される。直接引き上げ法で単結晶シリコン棒を引き上げる過程で、シリコン溶融体と単結晶シリコン棒は固液界面を形成し、窒素元素を不純物とみなすと、溶融体の対流による溶質凝集に対する影響を考慮する際に、バートン(Burton)近似を利用した後、式(1)に示すような不純物凝集の有効凝集係数を得ることができる。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、Cは、固相不純物濃度を表し、Cは、溶融体内の不純物濃度を表し、kは、不純物のバランス凝集係数を表し、本開示の実施例では、窒素元素を不純物と見なし、該値は、7×10-4であり得る。
【0016】
上記式から分かるように、窒素の有効凝集係数が通常非常に小さいため、直接引き上げ法で単結晶シリコン棒を引き上げる過程で、結晶棒の引張に伴い、窒素元素は、結晶棒の軸方向に偏析現象が現れ、最終的に結晶棒全体の軸方向の窒素元素濃度が一致せず、通常、図1に示すように、窒素含有量は、結晶棒尾部から結晶棒頭部にかけて徐々に低下し、具体的には、結晶棒尾部の窒素含有量は、結晶棒頭部の窒素含有量より明らかに大きい。窒素含有量と機械的強度が正の相関関係を示すため、上記偏析現象の発生に基づき、結晶棒の各部分の機械的強度も窒素含有量の変化に応じて差が現れ、例えば、結晶棒の後端部分の窒素含有量が前端部分より大きいと、結晶棒の後端部分の機械的強度も前端部分の機械的強度より明らかに大きくなる。このように、窒素ドーピング単結晶シリコン棒全体に対して線切断又は多線切断する際に、窒素ドーピング単結晶シリコン棒全体を同じ加工条件で加工する場合、結晶棒の後端部分の機械的強度が大きく且つ切断鋼線の送り量が不足しているため、加工過程で発生した熱が適時に散逸できず、この時に集まった熱は、結晶棒の後端部分を切断して得られたウエハに深刻な反り現象を引き起こす。
【0017】
以上の説明に基づき、本開示の実施例は、窒素ドーピング単結晶シリコン棒全体の窒素含有量の状況について異なる線切断加工条件をそれぞれ用いて行うことにより、切断効率を向上させ、反り現象の発生確率を低下させ、平坦度が良好で均一なウエハを取得する、窒素ドーピングウエハの反り度を改善可能な加工方法を提供することが望ましい。これに基づき、図2は、本開示の実施例に係る窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法を示す。該方法は、以下のS201~S203を含み得る。
【0018】
S201では、窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割し、各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量区間に対応する。
【0019】
S202では、窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定し、前記加工条件は、線切断による対応する加工すべき結晶棒セグメントの反り現象を回避できるようにするものである。
【0020】
S203では、各加工すべき結晶棒セグメントに対応する加工条件を用いて、各加工すべき結晶棒セグメントをそれぞれ切断加工し、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断して得られたウエハを取得する。
【0021】
図2に示す技術的解決手段により、窒素含有量区間に応じて切断すべき窒素ドーピング結晶棒を異なる加工すべき結晶棒セグメントに分割し、各加工すべき結晶棒セグメントに対してそれぞれ反り現象を回避可能な加工条件を決定した後、対応する加工条件に従ってそれぞれの対応する加工すべき結晶棒セグメントを切断加工することにより、平坦度が良好で均一なウエハを取得し、反り現象の発生確率を低減することができる。
【0022】
図2に示す技術的解決手段について、いくつかの可能な実現態様では、ステップS201を実行する前、前記方法は、さらに、切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を検出することを含み得る。
【0023】
上記実現態様について、一部の例では、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を検出することは、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の軸方向に沿った複数の軸方向サンプリング位置にそれぞれ検出サンプルを収集することと、
各検出サンプルに対して熱ドナーを除去した後に温度を迅速に下げ、フーリエ変換赤外分光計(Fourier Transform infrared spectroscopy、FTIR)を用いて温度を下げた後の各検出サンプルに対応する窒素含有量を検出することにより、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を特徴づけるための前記各軸方向サンプリング位置の窒素含有量を取得することと、を含む。
【0024】
なお、上記実現態様により、切断すべき窒素ドーピング結晶棒全体の窒素含有量分布を得ることができる。例えば、図1に示すように、適切な窒素含有量閾値を設定して窒素含有量分布を3つの区間に分割することができ、それぞれ図1に示すようにI、II、IIIと表記され、ここで、I区間は、切断すべき窒素ドーピング結晶棒全体の頭部部分に対応し、III区間は、切断すべき窒素ドーピング結晶棒全体の尾部部分に対応し、II区間は、切断すべき窒素ドーピング結晶棒全体の中間部分に対応する。表記された窒素分布区間に応じて、切断すべき窒素ドーピング結晶棒を3つの部分に分割することができ、具体的には、図3に示すように、切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断する方式で、3つの加工すべき結晶棒セグメントを得ることができる。各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量分布区間に対応するため、本実施例では、各加工すべき結晶棒セグメントの識別子を、対応する窒素含有量分布区間の識別子と一致するように表記し、つまり、I、II及びIIIとして表記することができる。図3に示す3つの加工すべき結晶棒セグメントについて、切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部部分に対応する加工すべき結晶棒セグメントIの窒素含有量は、最も低く、切断すべき窒素ドーピング結晶棒の尾部部分に対応する加工すべき結晶棒セグメントIIIの窒素含有量は、最も高く、切断すべき窒素ドーピング結晶棒の中間部分に対応する加工すべき結晶棒セグメントIIの窒素含有量は、加工すべき結晶棒セグメントIの窒素含有量と、加工すべき結晶棒セグメントIIIの窒素含有量との間にある。
【0025】
図2に示す技術的解決手段について、いくつかの可能な実現態様では、前記窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定することは、
各加工すべき結晶棒セグメントに対し、線切断過程において所定の複数の径方向位置における温度値をそれぞれ収集することと、
同じ径方向位置における各加工すべき結晶棒セグメントの温度値に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差を決定することと、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部以外に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度が前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度と一致するように、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量を決定することと、を含む。
【0026】
上記実現態様について、一部の例では、前記各加工すべき結晶棒セグメントにおいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部に位置する加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量は、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部以外に位置する加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量よりも小さい。
【0027】
上記実現態様及びその例について、具体的には、上述した図3に示す3つの加工すべき結晶棒セグメントを例にとる場合、各加工すべき結晶棒セグメントの窒素含有量が一致しないため、窒素含有量と機械的強度との間の正相関関係を結合すると、加工すべき結晶棒セグメントIの機械的強度は、加工すべき結晶棒セグメントIIの機械的強度より弱く、加工すべき結晶棒セグメントIIIの機械的強度は、3つの加工すべき結晶棒セグメントの中で最も高いことが分かる。線切断又は多線切断を行う過程で、これら3本の加工すべき結晶棒セグメントに対していずれも加工すべき結晶棒セグメントIに適合する加工条件を用いて切断加工を行うと、加工すべき結晶棒セグメントIIと加工すべき結晶棒セグメントIIIの機械的強度が大きすぎて熱が発生しすぎて加工温度が上昇し、加工すべき結晶棒セグメントIの加工温度との温度差が形成され、それによって加工すべき結晶棒セグメントIIと加工すべき結晶棒セグメントIIIを切断して得られたシリコンシートに反り現象が発生する確率が増加する。反り現象の発生を回避するために、温度差を補う必要がある。詳細には、加工すべき結晶棒セグメントI、加工すべき結晶棒セグメントII及び加工すべき結晶棒セグメントIIIについて、切断すべき窒素ドーピング結晶棒の軸方向に沿って選択した頭部から330mm、1060mm、1730mm離れた位置は、それぞれ、加工すべき結晶棒セグメントI、加工すべき結晶棒セグメントII及び加工すべき結晶棒セグメントIIIの径方向温度収集が行われる位置に対応する。具体的には、切断過程の温度は、それぞれの径方向位置76mm、151.35mm及び259.11mmでそれぞれ収集することができる。図3に示すように、加工すべき結晶棒セグメントIの径方向位置76mm、151.35mm及び259.11mmでそれぞれ収集した温度値がa、b、cであり、加工すべき結晶棒セグメントIIの径方向位置76mm、151.35mm及び259.11mmでそれぞれ収集した温度値がa’、b’、c’であり、加工すべき結晶棒セグメントIIIの径方向位置76mm、151.35mm及び259.11mmでそれぞれ収集した温度値がa’’、b’’、c’’である。その後、上記収集した温度値に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差を算出し、つまり本実施例では、加工すべき結晶棒セグメントIと加工すべき結晶棒セグメントIIとの間の温度差及び加工すべき結晶棒セグメントIIと加工すべき結晶棒セグメントIIIとの間の温度差を算出する。具体な温度差の算出結果は、表1に示すとおりである。
【0028】
【表1】
【0029】
ここで、ΔT1は、加工すべき結晶棒セグメントIと加工すべき結晶棒セグメントIIとの間の温度差を表し、ΔT2は、加工すべき結晶棒セグメントIIと加工すべき結晶棒セグメントIIIとの間の温度差を表す。
【0030】
表1から得られたデータにより、加工中の温度差を補うために、機械的強度が大きく且つ切断の発熱が多いために発生するシリコンシートの反り現象を回避し、加工すべき結晶棒セグメントIIと加工すべき結晶棒セグメントIIIの加工温度が加工すべき結晶棒セグメントIの加工温度と一致するように各加工すべき結晶棒セグメントの加工条件を調整する必要がある。本開示の実施例では、加工条件は、具体的に加工時の鋼線送り量として選択することができる。図3及び上記内容と結合して、加工すべき結晶棒セグメントI、加工すべき結晶棒セグメントII及び加工すべき結晶棒セグメントIIIは、窒素含有量が徐々に上昇するため機械的強度もそれに応じて上昇し、このように、切断加工中の加工温度を、常に、加工すべき結晶棒セグメントIに対して切断を行う際の加工温度に維持するために、本開示の実施例は、加工すべき結晶棒セグメントIIと加工すべき結晶棒セグメントIIIの鋼線送り量を上昇させることにより、加工温度を維持する。詳細には、鋼線の送り割合で鋼線送り量を特徴付け、加工すべき結晶棒セグメントI、加工すべき結晶棒セグメントII及び加工すべき結晶棒セグメントIII対応する鋼線送り量は、表2に示すとおりである。
【0031】
【表2】
【0032】
上記鋼線送り量という概念に対して、本実施例では、具体的に、1つの加工サイクルタイム(cycle time)内で、最初の線送り量がxであり、収線量がyであると設定した場合、鋼線送り量はx-yとなり、送り割合は100%と見なす。同じcycle time内で、線送り量が2x-yであり、収線量がyであると設定した場合、鋼線送り量は2*(x-y)となり、送り割合は200%となる。線送り量が3x-2yであり、収線量がyであると設定した場合、鋼線送り量は3*(x-y)となり、送り割合は300%となる。このように類推することができる。
【0033】
上記説明により、表2に示す加工すべき結晶棒セグメントI、加工すべき結晶棒セグメントII及び加工すべき結晶棒セグメントIIIのそれぞれに対応する鋼線送り量を取得した後、図4に示す多線切断装置を例にして、図4では、該装置は、放線軸1、収線軸2、ガイドホイール3、結晶棒送り台5及び鋼線6を含む。図4に示す装置を用いて切断すべき窒素ドーピング結晶棒4を切断する過程で、硬度の小さい加工すべき結晶棒セグメントIを切断する際に、表2の180%のように、放線軸1の鋼線供給量を小さい値に制御し、加工すべき結晶棒セグメントIの加工が完了したら、硬度が中程度の加工すべき結晶棒セグメントIIを図4中の結晶棒送り台5上に貼り付け、加工すべき結晶棒セグメントIIを切断する際に、表2の200%のように、加工すべき結晶棒セグメントIを切断する鋼線送り量より大きいように放線軸1の鋼線供給量を制御し、加工すべき結晶棒セグメントIIの加工が完了したら、硬度の最高の加工すべき結晶棒セグメントIIIを図4中の結晶棒送り台5上に貼り付け、硬度の大きい加工すべき結晶棒セグメントIIIを切断する際に、表2の220%のように放線軸1の鋼線供給量を最大に制御する。この場合、新鋼線の供給量は大きく、機械加工で発生した熱をタイムリーに持ち去ることができ、温度が高すぎることによる切断されたシリコンシートに発生する深刻な反り現象を回避し、温度差が発生する確率を大幅に低下させることができる。
【0034】
上記技術的解決手段、その実現態様及び例によって鋼線送り量を調整した後に切断したウエハのたわみ(warp)品質は、従来技術における鋼線送り量を調整せずに同一の加工条件を用いて切断したウエハのwarp品質と比較して、図5に示すように、図中の横軸は、切断すべき窒素ドーピング結晶棒の位置であり、縦軸は、ウエハのwarp値であり、単位は、ミクロン(μm)である。図5における純黒色の中実点は、鋼線送り量を調整した後のwarpを示し、灰色の中実点は、鋼線送り量を調整しないwarpを示す。図5から分かるように、本開示の実施例の技術的解決手段を採用すれば、従来技術に比べて、平坦度がより良好で均一なウエハを得ることができ、反り現象の発生確率を低減することができる。
【0035】
上記技術的解決手段と同様の発明の概念に基づき、図6は、本開示の実施例に係る窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システム60を示し、該システム60は、分割部分601、決定部分602及び加工部分603を含む。
【0036】
前記分割部分601は、窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに分割するように構成され、各加工すべき結晶棒セグメントは、いずれも、1つの窒素含有量区間に対応する。
【0037】
前記決定部分602は、窒素含有量区間と加工条件との間の対応関係に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントのそれぞれに対応する加工条件を決定するように構成され、前記加工条件は、線切断による対応する加工すべき結晶棒セグメントの反り現象を回避できるようにするものである。
【0038】
前記加工部分603は、各前記加工すべき結晶棒セグメントに対応する各前記加工条件を用いて、各前記加工すべき結晶棒セグメントをそれぞれ切断加工し、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を切断して得られたウエハを取得するように構成される。
【0039】
具体的には、前記加工部分603は、上記図4に示す多線切断装置であり得る。本開示の実施例はこれについては詳細には述べない。
【0040】
一部の例では、図7に示すように、前記決定部分602は、収集機器6021及びデータ処理機器6022を含む。
【0041】
前記収集機器6021は、各加工すべき結晶棒セグメントに対し、線切断過程において所定の複数の径方向位置における温度値をそれぞれ収集するように構成される。
【0042】
前記データ処理機器6022は、
同じ径方向位置における各加工すべき結晶棒セグメントの温度値に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差を決定し、及び、
前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部以外に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度が前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の頭部に位置する加工すべき結晶棒セグメントの加工温度と一致するように、各加工すべき結晶棒セグメント間の温度差に基づいて、各加工すべき結晶棒セグメントに対応する鋼線送り量を決定するように構成される。
【0043】
一部の例では、前記分割部分601は、窒素含有量分布に基づいて、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒を複数の加工すべき結晶棒セグメントに切断するように構成される。
【0044】
一部の例では、図7に示すように、前記システム60は、さらに、前記切断すべき窒素ドーピング結晶棒の窒素含有量分布を検出するように構成される検出部分604を含む。
【0045】
理解できるように、本実施例では、「部分」は、部分回路、部分プロセッサ、部分プログラム又はソフトウェアなどであってもよく、もちろんユニットであってもよく、モジュールであっても非モジュールであってもよい。
【0046】
また、本実施例における各組成要素は、1つの処理ユニットに集積されていてもよいし、各ユニットが単独で物理的に存在していてもよいし、2つ以上のユニットが1つのユニットに集積されていてもよい。上記統合されたユニットは、ハードウェアの形態で実現してもよいし、ソフトウェア機能モジュールの形態で実現してもよい。
【0047】
前記統合されたユニットは、独立した製品として販売又は使用されていないソフトウェア機能モジュールの形で実現される場合、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納することができ、このような理解に基づいて、本実施例の技術的解決手段は、本質的に又は関連技術に貢献した部分、又は該技術的解決手段の全部又は一部をソフトウェア製品の形で表現することができ、コンピュータソフトウェア製品は、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワークデバイスなどであってもよい)又はプロセッサ(processor)が本実施例で説明した方法の全部又は一部のステップを実行するようにするためのいくつかの命令を含む記憶媒体に記憶される。上記記憶媒体は、Uディスク、リムーバブルハードディスク、読み取り専用メモリ(Read Only Memory,ROM,)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory,RAM)、磁気ディスク、又は光ディスクなど、プログラムコードを記憶することができる様々な媒体を含む。
【0048】
そのため、本実施例は、コンピュータ記憶媒体を提供し、前記コンピュータ記憶媒体に窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工プログラムが記憶されており、前記窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工プログラムが、少なくとも1つのプロセッサによって実行される場合、上記技術的解決手段における前記窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法のステップを実現する。
【0049】
上記窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システム60の例示的な技術的解決手段は、上記窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法の技術的解決手段と同一の構想に属するため、上記窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工システム60の技術的解決手段について詳しく説明されていない詳細は、いずれも上記窒素ドーピングウエハの反り度を改善する加工方法の技術的解決手段の説明を参照することができる。本開示の実施例は、これについて詳しく説明しない。
【0050】
なお、本開示の実施例に記載した技術的解決手段間は、競合しない場合には、任意に組み合わせてもよい。
【0051】
上記は、本開示の具体的な実施形態にすぎないが、本開示の保護範囲はこれに限定されるものではなく、本開示が開示した技術範囲内において、当技術分野に精通している技術者は、容易に変更や置換を思いつくことができ、いずれも本開示の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本開示の保護範囲は、特許請求の範囲に準じなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7