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特許7529931電気ヒータのスケール検知方法、電気ヒータのスケール検知装置、及び、電気ボイラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電気ヒータのスケール検知方法、電気ヒータのスケール検知装置、及び、電気ボイラ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20240730BHJP
   F22B 1/28 20060101ALI20240730BHJP
   F22B 37/38 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
F22B1/28 Z
F22B37/38 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024024352
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 聡
(72)【発明者】
【氏名】永野 佑
(72)【発明者】
【氏名】大泉(碇) 真里耶
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-009506(JP,A)
【文献】特表2021-517539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 1/00 - 3/00
F22B 1/00 - 3/08
F22B 37/00 - 37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水部と、
電流が流れることにより発熱するヒータ線を備え、前記貯水部の内部に配置される電気ヒータと、
前記ヒータ線に電圧を印加して前記電気ヒータを駆動するヒータ駆動部と、を備える電気ボイラにおける電気ヒータのスケール検知方法であって、
前記ヒータ線に流れた電流の電流値を測定し、
スケールが付着していない前記電気ヒータを用いた運用における、前記電気ヒータの最大出力時の前記ヒータ線の抵抗値を基準として定められた値を閾値として設定し、前記ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び測定された電流値に基づく前記ヒータ線の抵抗値が設定された前記閾値を超えた場合に、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知する
電気ヒータのスケール検知方法。
【請求項2】
前記電気ヒータへのスケールの付着を検知した場合に、ユーザに前記電気ヒータへのスケールの付着を通知する
請求項1に記載の電気ヒータのスケール検知方法。
【請求項3】
貯水部と、
電流が流れることにより発熱するヒータ線を備え、前記貯水部の内部に配置される電気ヒータと、
前記ヒータ線に電圧を印加して前記電気ヒータを駆動するヒータ駆動部と、を備える電気ボイラに用いられる電気ヒータのスケール検知装置であって、
スケールが付着していない前記電気ヒータを用いた運用における、前記電気ヒータの最大出力時の前記ヒータ線の抵抗値を基準として定められた値を閾値として設定し、前記ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び前記ヒータ線に流れた電流の電流値に基づく前記ヒータ線の抵抗値が設定された前記閾値を超えた場合に、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知するスケール検知部を備える
電気ヒータのスケール検知装置。
【請求項4】
貯水部と、
電流が流れることにより発熱するヒータ線を備え、前記貯水部の内部に配置される電気ヒータと、
前記ヒータ線に電圧を印加して前記電気ヒータを駆動するヒータ駆動部と、
前記ヒータ線に流れた電流の電流値を測定する測定部と、
スケールが付着していない前記電気ヒータを用いた運用における、前記電気ヒータの最大出力時の前記ヒータ線の抵抗値を基準として定められた値を閾値として設定し、前記ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び前記測定部により測定された電流値に基づく前記ヒータ線の抵抗値が設定された前記閾値を超えた場合に、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知するスケール検知部と、を備える
電気ボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気ヒータのスケール検知方法、電気ヒータのスケール検知装置、及び、電気ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水管と、水管の内部に配置される電気ヒータと、電気ヒータの表面の発熱領域に配置される温度センサと、を備え、電気ヒータの温度を管理できる電気ボイラが記載されている。
【0003】
特許文献2には、COD(Chemical Oxygen Demand)処理等の排水処理が不要で且つ短時間で、容易に属面表面に緻密に固着している水蒸気酸化スケールを除去しうる水蒸気酸化スケール除去方法とその装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、水管と、水管の内部に配置される電気ヒータと、水管の水位が所定水位範囲に維持されるように水管に給水する給水手段と、制御装置と、を備え、異常の発生を早期に発見できる電気ボイラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-086222号公報
【文献】特開2002-005596号公報
【文献】特開2020-041708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気ボイラの熱源に用いられる電気ヒータは、経年により表面にスケールが付着することで伝熱効率が低下し、その結果として電気ヒータが異常過熱して、電気ヒータの損傷のリスクが高まるという問題がある。
【0007】
このような問題を解消するために、電気ヒータの表面近傍に温度センサを配置して、電気ヒータの異常過熱を検知することにより、電気ヒータへのスケールの付着を検知することが考えられる。
【0008】
しかしながら、温度センサを用いて電気ヒータへのスケールの付着を検知する場合、電気ヒータに対する温度センサの位置ずれ、又は、温度センサの表面へのスケールの付着により、電気ヒータへのスケールの付着を正確に検知できなくなるおそれがある。
【0009】
本開示は、温度センサを用いずに電気ヒータへのスケールの付着を検知可能な電気ヒータのスケール検知方法、電気ヒータのスケール検知装置、及び、電気ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の電気ヒータのスケール検知方法は、貯水部と、電流が流れることにより発熱するヒータ線を備え、前記貯水部の内部に配置される電気ヒータと、前記ヒータ線に電圧を印加して前記電気ヒータを駆動するヒータ駆動部と、を備える電気ボイラにおける電気ヒータのスケール検知方法であって、前記ヒータ線に流れた電流の電流値を測定し、前記ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び測定された電流値に基づく前記ヒータ線の抵抗値が設定された閾値を超えた場合に、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知する。
【0011】
本開示の電気ヒータのスケール検知方法においては、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知した場合に、ユーザに前記電気ヒータへのスケールの付着を通知してもよい。
【0012】
また、前記閾値は、スケールが付着していない前記電気ヒータを用いた運用における、前記ヒータ線の抵抗値の最大値を基準として定められた値としてもよい。
【0013】
また、前記閾値は、スケールが付着していない前記電気ヒータを用いた運用における、前記電気ヒータの最大出力時の前記ヒータ線の抵抗値を基準として定められた値としてもよい。
【0014】
本開示の電気ヒータのスケール検知装置は、貯水部と、電流が流れることにより発熱するヒータ線を備え、前記貯水部の内部に配置される電気ヒータと、前記ヒータ線に電圧を印加して前記電気ヒータを駆動するヒータ駆動部と、を備える電気ボイラに用いられる電気ヒータのスケール検知装置であって、前記ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び前記ヒータ線に流れた電流の電流値に基づく前記ヒータ線の抵抗値が設定された閾値を超えた場合に、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知するスケール検知部を備える。
【0015】
本開示の電気ボイラは、貯水部と、電流が流れることにより発熱するヒータ線を備え、前記貯水部の内部に配置される電気ヒータと、前記ヒータ線に電圧を印加して前記電気ヒータを駆動するヒータ駆動部と、前記ヒータ線に流れた電流の電流値を測定する測定部と、前記ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び前記測定部により測定された電流値に基づく前記ヒータ線の抵抗値が設定された閾値を超えた場合に、前記電気ヒータへのスケールの付着を検知するスケール検知部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示の電気ヒータのスケール検知方法、電気ヒータのスケール検知装置、及び、電気ボイラによれば、温度センサを用いずに電気ヒータへのスケールの付着を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の第1の実施形態の電気ボイラの概略構成を示す図である。
図2】上記電気ボイラにおける電気ヒータ周辺の概略構成を示す図である。
図3】上記電気ボイラにおけるスケール検知時の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】上記電気ボイラの変形例における電気ヒータ周辺の概略構成を示す図である。
図5】本開示の第2の実施形態の電気ボイラの概略構成を示す図である。
図6】上記電気ボイラにおける電気ヒータ周辺の概略構成を示す図である。
図7】上記電気ボイラの変形例における電気ヒータ周辺の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
次に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本開示の第1の実施形態の電気ボイラ1の概略構成を示す図である。図2は、電気ボイラ1における電気ヒータ11の周辺の概略構成を示す図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の電気ボイラ1は、一例として丸型の蒸気ボイラであって、貯水部10と、電気ヒータ11と、ヒータ駆動部12と、水位センサ13と、供給水量調整部14と、気水分離部15と、圧力計16と、制御部17と、通知部18と、を備える。
【0020】
貯水部10は、内部に水を貯留可能な円筒形の缶である。
【0021】
電気ヒータ11は、貯水部10の内部に配置され、貯水部10内に貯留された水を加熱する。電気ヒータ11は、電流が流れることにより発熱するヒータ線20と、ヒータ線20を覆うカバー11aと、を備える。
【0022】
なお、電気ヒータ11は、ヒータ線20を覆うカバー11aを備えたものに限定されるものではなく、カバー11aを備えず、ヒータ線20が外部に露出したものであってもよい。
【0023】
ヒータ線20は、ヒータ駆動部12に接続されており、ヒータ駆動部12により電圧が印加されたことにより流れた電流により発熱して、電気ヒータ11の表面を加熱する。また、ヒータ線20には、電流計21が直列に接続されている。電流計21は、本開示の技術における測定部の一例であり、ヒータ線20に流れた電流の電流値を測定する。
【0024】
図1に戻り、ヒータ駆動部12は、ヒータ線20に電圧を印加して電気ヒータ11を駆動する。水位センサ13は、貯水部10内に貯留された水の水位を計測する。供給水量調整部14は、給水バルブ及び給水ポンプを備え、制御部17による制御に基づいて貯水部10に供給する水の供給量を調整する。
【0025】
気水分離部15は、貯水部10から排出された気水混合蒸気のうち、液体部分を分離し、気体部分のみを外部に供給する。気水分離部15は、蒸気の供給量を調整する不図示のバルブを備える。また、気水分離部15により分離された液体部分である水は、貯水部10に供給される。
【0026】
圧力計16は、貯水部10から排出された気水混合蒸気の圧力を計測する。
【0027】
制御部17は、電気ボイラ1の全体の動作を制御する。また、制御部17は、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知するスケール検知部としても機能する。
【0028】
制御部17は、プロセッサ17aと、メモリ17bと、記憶部17cと、を備える。プロセッサ17aは、メモリ17bに格納された制御プログラムに基づいて予め定められた処理を実行する。記憶部17cは、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等から構成され、必要とされるソフトウエアやデータが記憶されている。
【0029】
通知部18は、制御部17が電気ヒータ11へのスケールの付着を検知した場合に、ユーザに電気ヒータ11へのスケールの付着を通知する。通知部18は、例えば、LED(Light Emitting Diode)インジケータ、モニタでのメッセージ表示、又は、スピーカによる通知音又はメッセージの発音等、スケールの付着を通知可能なものであればどのようなものであってもよい。
【0030】
次に、電気ボイラ1の動作について説明する。
先ず、電気ボイラ1の立ち上げから立ち下げまでの一連の動作について説明する。
【0031】
なお、以下の動作は、制御部17が、水位センサ13及び圧力計16の計測値に基づいて、ヒータ駆動部12及び供給水量調整部14を統合制御することにより行われる。
【0032】
最初に、制御部17は、ユーザからの立ち上げ指示を受けて、貯水部10に規定量まで水を貯める。
【0033】
次に、制御部17は、初期加熱として、電気ヒータ11を駆動させて貯水部10内の水を加熱する。
【0034】
気水混合蒸気の圧力が設定値に到達したら、制御部17は、定常加熱として、電気ヒータ11の出力を初期加熱時よりも抑え、かつ、電気ヒータ11の出力を調整して気水混合蒸気の圧力が一定の幅に収まるように制御する。
【0035】
また、制御部17は、気水分離部15からの蒸気の供給による貯水部10内の水位の変動に追従して、貯水部10への給水と、貯水部10内の水への加熱を指示する。
【0036】
最後に、制御部17は、ユーザからの立ち下げ指示を受けて、電気ボイラ1の動作を停止させる。
【0037】
ところで、電気ヒータ11は、経年により表面にスケールが付着することで伝熱効率が低下し、その結果として電気ヒータ11が異常過熱して、電気ヒータ11の損傷のリスクが高まるという問題がある。
【0038】
そのため、電気ヒータ11の表面近傍に温度センサを配置して、電気ヒータ11の異常過熱を検知することにより、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知することが考えられる。しかしながら、温度センサを用いて電気ヒータ11へのスケールの付着を検知する場合、電気ヒータ11に対する温度センサの位置ずれ、又は、温度センサの表面へのスケールの付着により、電気ヒータ11へのスケールの付着を正確に検知できなくなるおそれがある。
【0039】
このような事情を考慮して、本実施形態の電気ボイラ1は、温度センサを用いずに電気ヒータ11へのスケールの付着を検知可能としたものである。
【0040】
電気ヒータ11が備えるヒータ線20の抵抗値は、温度が上昇するにつれて高くなる特性を有する。
【0041】
そのため、制御部17は、ヒータ線20に印加された電圧の電圧値及びヒータ線20に流れた電流の電流値に基づくヒータ線20の抵抗値が設定された閾値を超えた場合、すなわち、ヒータ線20の温度が想定外の高さになった場合に、スケールによる異常過熱が発生しているとみなして、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知する。
【0042】
なお、ヒータ線20の抵抗値Rは、下記の式(1)により求めることができる。
R=V/I (1)
ただし、
R:ヒータ線20の抵抗値
V:ヒータ線20に印加された電圧の電圧値
I:ヒータ線20に流れた電流の電流値
【0043】
ヒータ線20に印加された電圧の電圧値Vは、制御部17による制御に基づいてヒータ駆動部12が印加した電圧の電圧値であるため、既知である。また、ヒータ線20に流れた電流の電流値Iは、電流計21により測定された電流値である。
【0044】
次に、制御部17による電気ヒータ11へのスケールの付着の検知の詳細な処理について説明する。
【0045】
制御部17は、予め設定された抵抗値における閾値を基準データとし、電気ボイラ1の運用時のヒータ線20の抵抗値を運用時データとし、基準データと運用時データとを比較することにより、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知する。基準データは、制御部17内の不図示の記憶部に登録される。
【0046】
基準データについては、例えば、態様1として、スケールが付着していない電気ヒータ11が搭載された電気ボイラ1において、電気ボイラ1の一度の運用の中で、すなわち、電気ボイラ1の立ち上げから立ち下げまでの一連の動作の中で、ヒータ線20の抵抗値の最大値を基準として定められた値を基準データとしてもよい。
【0047】
ここで、「ヒータ線20の抵抗値の最大値を基準として定められた値」とは、ヒータ線20の抵抗値の最大値そのものであってもよいし、所定の変換式にヒータ線20の抵抗値の最大値を代入することにより変換された値であってもよい。例えば、基準データは、スケールの誤検知を防ぐために、ヒータ線20の抵抗値の最大値を基準として、+5%以上+10%以下の値としてもよい。また、基準データは、スケールの誤検知を防ぎつつ、より厳密にスケールを検知するために、ヒータ線20の抵抗値の最大値を基準として、+1%以上+5%未満の値としてもよい。
【0048】
定常加熱時のように電気ヒータ11の周辺の水温が高い場合、電気ヒータ11の出力が最大でなくても、ヒータ線20の抵抗値が高くなることが起こり得る。そのため、態様1の基準データを用いることにより、電気ヒータ11の出力が最大となる初期加熱時だけでなく、定常加熱時においても、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知することができる。
【0049】
また、基準データについては、態様2として、スケールが付着していない電気ヒータ11が搭載された電気ボイラ1において、電気ボイラ1の運用中に設定される電気ヒータ11の最大出力時のヒータ線20の抵抗値を基準として定められた値を基準データとしてもよい。
【0050】
ここで、「最大出力時のヒータ線20の抵抗値を基準として定められた値」とは、最大出力時のヒータ線20の抵抗値そのものであってもよいし、所定の変換式に最大出力時のヒータ線20の抵抗値を代入することにより変換された値であってもよい。例えば、基準データは、スケールの誤検知を防ぐために、最大出力時のヒータ線20の抵抗値を基準として、+5%以上+10%以下の値としてもよい。また、基準データは、スケールの誤検知を防ぎつつ、より厳密にスケールを検知するために、最大出力時のヒータ線20の抵抗値を基準として、+1%以上+5%未満の値としてもよい。
【0051】
態様2の基準データを用いることにより、特に電気ヒータ11の出力が最大となる初期加熱時において、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知することができる。
【0052】
なお、態様2の基準データを用いて、基準データと運用時データとを比較する場合には、例えば、電気ヒータ11の出力が100%で、気水混合蒸気の圧力が0.9Mpaの場合等のように、電気ヒータ11の出力、及び、気水混合蒸気の圧力の条件が同じデータ同士を比較することが好ましい。なお、気水混合蒸気の圧力は、貯水部10内の水温に対応する。これにより、周辺温度の影響等の外乱によるスケール検知精度の低下を抑えることができる。
【0053】
さらに、電気ヒータ11の最大出力時かつ特定の気水混合蒸気の圧力におけるヒータ線20の抵抗値のデータに加えて、電気ヒータ11の最大出力時以外かつ既知の気水混合蒸気の圧力におけるヒータ線20の抵抗値のデータを複数取得して、電気ヒータ11の性能曲線データを取得し、この性能曲線データを基準データとしてもよい。
【0054】
態様1の基準データ及び態様2の基準データについては、1回の運用により取得されたデータにより決定してもよいし、複数回の運用により取得された複数のデータの代表値により決定してもよい。なお、複数のデータの代表値としては、例えば、平均値、又は、中央値等、複数のデータの傾向を示す値であればどのような値でもよい。
【0055】
また、態様1の基準データ及び態様2の基準データの両方を制御部17に登録してもよいし、いずれか一方のみを制御部17に登録してもよい。
【0056】
基準データの取得については、製造時に電気ボイラ1の個体毎に新品の電気ヒータ11を組み込んで仮運用を行うことにより基準データを取得し、取得した基準データを制御部17に登録してもよい。また、共通の機種において予め取得されている基準データを、制御部17に登録してもよい。
【0057】
また、制御部17は、通知部18による通知を段階的に行うようにしてもよい。ここでは、一例として、LEDインジケータの色を段階的に変化させる態様について説明する。
【0058】
通知部18による通知を段階的に行う場合は、基準データの閾値に基づいて、基準データの閾値よりも低い値を初期警告表示時の閾値として設定すればよい。ここでは、一例として、基準データの閾値の90%の値を第1基準データとし、基準データの閾値を第2基準データとする。
【0059】
次に、スケール検知時の処理の流れについて、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
最初に、制御部17は、ステップS1において、電気ボイラ1の立ち上げを行う。
【0061】
次に、制御部17は、ステップS2において、運用時データの取得を行う。
【0062】
次に、制御部17は、ステップS3において、運用時データと第1基準データとの比較判定を行う。
【0063】
ステップS3において、運用時データが第1基準データの閾値内と判定された場合、制御部17は、ステップS4において、青色インジケータを表示し、ステップS2に遷移する。
【0064】
ステップS3において、運用時データが第1基準データの閾値を超えたと判定された場合、すなわち、運用時データが第1基準データの閾値外と判定された場合、制御部17は、ステップS5において、運用時データと第2基準データとの比較判定を行う。
【0065】
ステップS5において、運用時データが第2基準データの閾値内と判定された場合、制御部17は、ステップS6において、黄色インジケータを表示し、ステップS2に遷移する。
【0066】
ステップS5において、運用時データが第2基準データの閾値を超えたと判定された場合、すなわち、運用時データが第2基準データの閾値外と判定された場合、制御部17は、ステップS7において、赤色インジケータを表示し、ステップS2に遷移する。
【0067】
上述した通り、本実施形態の電気ボイラ1によれば、温度センサを用いずに電気ヒータ11へのスケールの付着を検知することができる。
【0068】
なお、本実施形態の電気ボイラ1においては、ヒータ線20に印加された電圧の電圧値Vについて、制御部17による制御に基づいてヒータ駆動部12が印加した電圧の電圧値を用いていたが、図4に示すように、ヒータ線20の両端に電圧計22を並列に接続し、電圧計22により測定された電圧値を用いてもよい。このように、電圧計22を用いて、ヒータ線20に印加された有効電圧を確認することにより、スケールの検知精度を高めることができる。
【0069】
[第2の実施形態]
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知する機能を持たない電気ボイラ2に対して、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知するスケール検知装置30を後付けで追加したものである。図5は、本開示の第2の実施形態の電気ボイラ2の概略構成を示す図である。図6は、電気ボイラ2における電気ヒータ11の周辺の概略構成を示す図である。
【0070】
第2の実施形態の電気ボイラ2は、第1の実施形態の電気ボイラ1と比較して、制御部17がスケール検知部としても機能を持たず、図5に示すように、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知するスケール検知装置30が別に接続されている点が異なる。
【0071】
なお、本実施形態の電気ボイラ2において、第1の実施形態の電気ボイラ1と同じ構成要素には同じ参照番号を付し、特に必要が無い限り説明は省略する。また、スケール検知装置30における電気ヒータ11へのスケールの付着の検知処理については、第1の実施形態の電気ボイラ1の制御部17における検知処理と基本的に同様であるため、相違点以外の詳細な説明は省略する。
【0072】
図6に示すように、スケール検知装置30は、プロセッサ30aと、メモリ30bと、記憶部30cと、通知部30dと、を備える。プロセッサ30aは、スケール検知装置30の全体の動作を制御する制御部、及び、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知するスケール検知部として機能する。プロセッサ30aは、メモリ30bに格納された制御プログラムに基づいて予め定められた処理を実行する。記憶部30cは、例えばHDD又はSSD等から構成され、必要とされるソフトウエアやデータが記憶されている。
【0073】
通知部30dは、スケール検知装置30(詳細には、プロセッサ30a)が電気ヒータ11へのスケールの付着を検知した場合に、ユーザに電気ヒータ11へのスケールの付着を通知する。通知部30dは、例えば、LEDインジケータ、モニタでのメッセージ表示、又は、スピーカによる通知音又はメッセージの発音等、スケールの付着を通知可能なものであればどのようなものであってもよい。
【0074】
本実施形態のスケール検知装置30は、ヒータ線20に印加された電圧の電圧値及びヒータ線20に流れた電流の電流値に基づくヒータ線20の抵抗値が設定された閾値を超えた場合、すなわち、ヒータ線20の温度が想定外の高さになった場合に、スケールによる異常過熱が発生しているとみなして、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知する。
【0075】
なお、ヒータ線20の抵抗値Rは、上記の第1の実施形態の電気ボイラ1の制御部17と同様に、下記の式(1)により求めることができる。
R=V/I (1)
ただし、
R:ヒータ線20の抵抗値
V:ヒータ線20に印加された電圧の電圧値
I:ヒータ線20に流れた電流の電流値
【0076】
ヒータ線20に印加された電圧の電圧値Vは、制御部17による制御に基づいてヒータ駆動部12が印加した電圧の電圧値であるため、既知である。また、ヒータ線20に流れた電流の電流値Iは、電流計21により測定された電流値である。
【0077】
スケール検知装置30は、制御部17からヒータ駆動部12が印加した電圧の電圧値Vを取得し、電流計21から電流値Iを取得して、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知する。
【0078】
スケール検知装置30は、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知した場合、通知部30dにおいて、ユーザに電気ヒータ11へのスケールの付着を通知する。
【0079】
なお、本実施形態のスケール検知装置30においては、ヒータ線20に印加された電圧の電圧値Vについて、制御部17による制御に基づいてヒータ駆動部12が印加した電圧の電圧値を用いていたが、図7に示すように、ヒータ線20の両端に電圧計22を並列に接続し、電圧計22により測定された電圧値を用いてもよい。このように、電圧計22を用いて、ヒータ線20に印加された有効電圧を確認することにより、スケールの検知精度を高めることができる。
【0080】
また、スケール検知装置30においては、通知部30dを持たず、電気ヒータ11へのスケールの付着を検知した場合に、電気ボイラ2の制御部17に通知し、電気ボイラ2が備える通知部18において、ユーザに電気ヒータ11へのスケールの付着を通知するようにしてもよい。
【0081】
[変形例]
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示の技術は上記実施形態に限定されず、適宜変更することもできる。
【0082】
例えば、上記の式(1)においては、ヒータ線20に印加された電圧の電圧値Vが既知である場合に、ヒータ線20に流れた電流の電流値Iとヒータ線20の抵抗値Rとは相関関係がある。
【0083】
そのため、ヒータ線20の抵抗値が設定された閾値を超えたことによる電気ヒータ11へのスケールの付着の検知については、上記の通りヒータ線20の抵抗値Rを算出し、算出した抵抗値Rと抵抗値における閾値とにより直接的に比較する代わりに、ヒータ線20の抵抗値Rを算出せずに、抵抗値における閾値に対応する電流値における閾値を設定し、電流値Iと電流値における閾値とにより間接的に比較するようにしてもよい。
【0084】
また、電気ボイラの種類は、上記の蒸気ボイラに限らず、例えば温水ボイラ等、他の種類のボイラとしてもよい。
【0085】
また、ボイラの形状は、上記の丸ボイラに限らず、例えば水管ボイラ等、他の種類のボイラとしてもよい。
【0086】
また、上記以外にも、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりする等、適宜変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 電気ボイラ
10 貯水部
11 電気ヒータ
12 ヒータ駆動部
13 水位センサ
14 供給水量調整部
15 気水分離部
16 圧力計
17 制御部
17a プロセッサ
17b メモリ
17c 記憶部
18 通知部
20 ヒータ線
21 電流計
22 電圧計
30 スケール検知装置
30a プロセッサ
30b メモリ
30c 記憶部
30d 通知部
【要約】
【課題】温度センサを用いずに電気ヒータへのスケールの付着を検知可能な電気ヒータのスケール検知方法、電気ヒータのスケール検知装置、及び、電気ボイラを提供する。
【解決手段】ヒータ線に流れた電流の電流値を測定し、ヒータ線に印加された電圧の電圧値及び測定された電流値に基づくヒータ線の抵抗値が設定された閾値を超えた場合に、電気ヒータへのスケールの付着を検知する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7