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特許7529941シリカ粒子、及び、シリカ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】シリカ粒子、及び、シリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C01B33/18 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024529858
(86)(22)【出願日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2023037831
【審査請求日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2022169313
(32)【優先日】2022-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000238164
【氏名又は名称】扶桑化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 怜実
(72)【発明者】
【氏名】平野 義宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 将也
(72)【発明者】
【氏名】河本 宗範
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 康博
(72)【発明者】
【氏名】三木 万海
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-161008(JP,A)
【文献】特開2020-176037(JP,A)
【文献】特開2017-226567(JP,A)
【文献】特開2020-084128(JP,A)
【文献】特開2020-079165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C04B 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)平均粒子径が0.2μm~1.0μmであり、
3)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、
4)吸水量が1.0質量%以下である、
シリカ粒子。
【請求項2】
前記シリカ粒子は、中空シリカ粒子である、請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項3】
シリカ粒子の製造方法であって、
コアシェル粒子を、先ず、炭化処理し、次いで、焼成処理する工程を含み、
前記炭化処理は、1時間~12時間の処理時間で、400℃~1,200℃の温度範囲で行い、
前記焼成処理は、3時間~10時間の処理時間で、350℃~1,500℃の温度範囲で行い、
シリカ粒子は、
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)平均粒子径が0.2μm~1.0μmであり、
3)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、
4)吸水量が1.0質量%以下である、
シリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ粒子、及び、シリカ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、本出願人が開示する技術であり、(1)平均粒子径が50~150nmであり、(2)シェルの平均厚みが5~25nmであり、(3)固体NMR(29Si/MAS)測定において、架橋酸素数が2個であるSiに帰属されるピーク(Q2)の積分強度(IQ2)と、架橋酸素数が4個であるSiに帰属されるピーク(Q4)の積分強度(IQ4)との比(IQ2/IQ4)が、0.20以下であり、(4)ディスク遠心式粒子径分布測定装置を用いて測定される粒子径50~500nmの範囲の粒度分布における、会合粒子のピーク強度Psaと、会合していない中空ナノシリカ粒子である主粒子のピーク強度Psmとの比Psa/Psmが、0.4以下である中空ナノシリカ粒子を開示する。この技術は、クエン酸等の有機酸の存在下で700℃焼成し、分散性を向上させる技術である。この中空ナノシリカ粒子は、会合粒子の生成が抑制されており、光の反射が抑制されているので、光の反射防止特性を要求される様々な物品に好適に用いる事が出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-176037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クエン酸を使用しないシリカ粒子の製造方法を提供し、並びに真密度と分散性に優れたシリカ粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討した結果、シリカ粒子を製造する際に、コアシェル粒子を、焼成前に、炭化処理を施す事に依り、真密度が低く、分散性に優れる、新たなシリカ粒子(好ましくは、中空シリカ粒子)を開発した。
【0006】
本発明は、次のシリカ粒子、及びシリカ粒子の製造方法を包含する。
【0007】
項1.
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、 (3)吸水量が1.0質量%以下である、
シリカ粒子。
【0008】
項2.
前記シリカ粒子は、(4)炭化され、及び焼成されている、前記項1に記載のシリカ粒子。
【0009】
項3.
前記シリカ粒子は、(5)平均粒子径が0.2μm~1.0μmである、前記項1又は2に記載のシリカ粒子。
【0010】
項4.
前記シリカ粒子は、中空シリカ粒子である、前記項1又は2に記載のシリカ粒子。
【0011】
項5.
シリカ粒子の製造方法であって、
コアシェル粒子を、先ず、炭化処理し、次いで、焼成処理する工程を含み、
シリカ粒子は、
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、 (3)吸水量が1.0質量%以下である、
シリカ粒子の製造方法。
【0012】
本発明のシリカ粒子は、真密度が低く、分散性に優れる、新たなシリカ粒子(好ましくは、中空シリカ粒子)である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、クエン酸を使用しないシリカ粒子の製造方法を提供し、並びに真密度と分散性に優れたシリカ粒子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明を表す実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解出来る説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0016】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」の何れも包含する概念である。
【0017】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、「A以上B以下」を意味する。
【0018】
本明細書において、一般に、部、%等の表示を使用する。
【0019】
本明細書において、特に断りがない限り、質量部又は質量%(wt%)を表す。
【0020】
[1]シリカ粒子
本発明は、シリカ粒子を包含する。
【0021】
本発明のシリカ粒子は、
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、 (3)吸水量が1.0質量%以下である。
【0022】
シリカ粒子は、好ましくは、(4)炭化され、及び焼成されている。
【0023】
シリカ粒子は、好ましくは、(5)平均粒子径が0.2μm~1.0μmである。
【0024】
シリカ粒子は、好ましくは、中空シリカ粒子である。
【0025】
本発明のシリカ粒子は、真密度が低く、分散性に優れる、新たなシリカ粒子である。
【0026】
本発明のシリカ粒子は、多層プリント基板、電線被覆材、半導体封止材等に有用である。
【0027】
シリカ系化合物及び金属酸化物
シリカ粒子を形成するシリカ系化合物は、シリカを含有していれば、特に限定されず、シリカのみで形成されていても良い。
【0028】
シリカ系化合物がシリカ以外の化合物を含有する場合は、シリカ粒子は、好ましくは、シリカ及び金属酸化物を含む。
【0029】
金属酸化物は、好ましくは、金属アルコキシドを形成する事が出来る金属の酸化物である。金属酸化物は、具体的には、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等の酸化物である。
【0030】
金属酸化物は、これらの金属酸化物を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0031】
金属酸化物として、アルミニウムの酸化物を用いると、シリカ粒子のシェルの表面電荷(ゼータ電位等)を調整する事が出来る。
【0032】
金属酸化物として、チタン、ジルコニウムの酸化物を用いると、シリカ粒子のシェルの屈折率を調整する事が出来る。
【0033】
(1)シリカ粒子の真密度
本発明のシリカ粒子は、真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3である。
【0034】
本発明のシリカ粒子は、密度が低い空気層を有する事に依り、真密度が一般的なシリカの真密度(2.2g/cm3)に比べて低くなる。
【0035】
シリカ粒子の真密度は、窒素ガスピクノメーター(Ultrapyc 5000 Micro、株式会社アントンパール・ジャパン製)を用いて、シリカ粒子(粉末0.2g)の真密度を測定した値である。
【0036】
真密度を測定するシリカ粒子は、その粉末を、120℃の温度で、2時間、減圧乾燥した後に、その乾燥したシリカ粒子の粉末の真密度を測定する事が良い。
【0037】
シリカ粒子の真密度は、0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、好ましくは、0.8g/cm3~1.3g/cm3であり、より好ましくは、0.9g/cm3~1.2g/cm3であり、更に好ましくは、0.9g/cm3~1.1g/cm3である。シリカ粒子は、真密度を前記範囲に調整する事に依り、良好に製造する事が出来、シェルが破損せず、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0038】
(2)シリカ粒子の粒度分布
本発明のシリカ粒子は、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下である。
【0039】
「平均粒子径の2倍より大きい粒子」は、その対象が、平均粒子径の2倍の大きさの粒子を含まず、平均粒子径の2倍の大きさの粒子を超える大きさの粒子である。
【0040】
シリカ粒子の、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950、株式会社堀場製作所製)を用いて、シリカ粒子の粉末の粒度分布を測定し、シリカ粒子の粉末の内、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度(%)を算出した値である。
【0041】
シリカ粒子の、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度は、その値が低い程、好ましい。シリカ粒子の、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度は、15%以下であり、好ましくは、12%以下であり、より好ましくは、9%以下であり、更に好ましくは、6%以下である。シリカ粒子の、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度の下限値は、0%程度である。シリカ粒子は、粒度分布における、粒子径が1μm以上の粒子の頻度を前記範囲に調整する事に依り、良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0042】
(3)シリカ粒子の吸水量
本発明のシリカ粒子は、吸水量が1.0質量%以下である。
【0043】
シリカ粒子の吸水性試験
シリカ粒子の吸水量は、シリカ粒子(粉末1g)を、温度50℃、湿度75%環境下で、7日間保管した後、粉末0.1gをサンプリングし、カールフィッシャー水分計(MKA-610、京都電子工業株式会社製)を用いて、シリカ粒子の水分量を測定した値である。
【0044】
シリカ粒子の吸水量は、その値が低い程、好ましい。シリカ粒子の吸水量は、1.0質量%以下であり、好ましくは、0.9質量%以下であり、より好ましくは、0.8質量%以下であり、更に好ましくは、0.7質量%以下である。シリカ粒子の吸水量の下限値は、0.1質量%程度である。シリカ粒子は、吸水量を前記範囲に調整する事に依り、良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0045】
(4)シリカ粒子の炭化、及び焼成
本発明のシリカ粒子は、好ましくは、炭化され、及び焼成されている。シリカ粒子は、炭化され、及び焼成されている事に依り、良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0046】
(5)シリカ粒子の平均粒子径
本発明のシリカ粒子は、好ましくは、平均粒子径が0.2μm~1.0μmである。
【0047】
シリカ粒子の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡:JSM-7900F、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧8kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して、その平均値を算出した値である。
【0048】
画像解析は、画像解析・計測ソフトウェアWinROOFを使用する。
【0049】
シリカ粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.2μm~1.0μmであり、より好ましくは、0.3μm~0.9μmであり、更に好ましくは、0.4μm~0.8μmであり、特に好ましくは、0.4μm~0.7μmである。シリカ粒子は、平均粒子径を前記範囲に調整する事に依り、より良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0050】
(6)シリカ粒子の中空型
本発明のシリカ粒子は、粒子の構造として、緻密型、多孔質型、中空型等の形態を採っても良い。
【0051】
シリカ粒子は、好ましくは、中空シリカ粒子である。中空シリカ粒子は、好ましくは、シリカ粒子が中空部(空洞)を形成しているシリカ粒子である。
【0052】
シリカ粒子は、中空シリカ粒子である事に依り、より良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0053】
(7)シリカ粒子のMEK濾過性
本発明のシリカ粒子は、好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)濾過性が80質量%以上である。
【0054】
シリカ粒子のMEK濾過性は、先ず、シリカ粒子(粉末2g)とメチルエチルケトン(MEK)(8g)とを、2時間、500rpm撹拌混合し、次いで、そのシリカ粒子とMEKとの混合液を孔径5μmシリンジフィルター(大きさが5μm以下の物質を通す濾紙)を用いて濾過する。
【0055】
シリカ粒子のMEK濾過性(質量%)は、その混合液の通液量を秤量し、以下の式に依り算出した値である。
(MEK濾過性(質量%、wt%))
=[通液量(g)]÷[シリカ粒子のMEK分散液量(10g)]×100
【0056】
シリカ粒子のMEK濾過性は、その値が高い程、好ましい。シリカ粒子のMEK濾過性は、好ましくは、80質量%以上であり、より好ましくは、85%質量以上であり、更に好ましくは、90質量%以上ある。シリカ粒子のMEK濾過性の上限値は、100%程度である。シリカ粒子は、MEK濾過性を前記範囲に調整する事に依り、良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0057】
シリカ粒子のシェル(膜)の平均厚み
本発明のシリカ粒子を形成するシェル(膜)の平均厚みは、好ましくは、25nm~170nmであり、より好ましくは、30nm~150nmであり、更に好ましくは、35nm~100nmである。
【0058】
シリカ粒子を形成するシェルの平均厚みは、TEM(透過型電子顕微鏡:JEM-2010、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧200kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子のシェル厚みを測長して、その平均値を算出した値である。
【0059】
シリカ粒子は、シェルの平均厚みを前記範囲に調整する事に依り、良好に製造する事が出来、シェルが破損せず、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0060】
本発明のシリカ粒子は、真密度が低く、分散性に優れる、シリカ粒子である。本発明のシリカ粒子は、焼成条件(炭化前処理)の最適化に依り、低真密度、及び高分散性を発揮するシリカ粒子である。
【0061】
[2]コアシェル粒子
本発明は、コアシェル粒子を包含する。
【0062】
本発明のコアシェル粒子は、有機ポリマー粒子をコアとし、この有機ポリマー粒子を被覆するシリカをシェルとするコアシェル粒子である。コアシェル粒子の有機ポリマー粒子を熱分解する事に依り、良好に、本発明のシリカ粒子を製造する事が出来る。
【0063】
有機ポリマー粒子
有機ポリマー粒子は、特に限定されない。有機ポリマー粒子は、好ましくは、シェルを形成した後に、熱分解に依り容易に焼失する有機ポリマー粒子である。有機ポリマー粒子は、具体的には、ポリスチレン粒子、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(樹脂)粒子等である。
【0064】
有機ポリマー粒子として、ポリスチレン粒子を用いると、ポリスチレン粒子に正のゼータ電位を付与し、会合粒子の生成を抑制する事が出来る。
【0065】
分散剤
有機ポリマー粒子は、好ましくは、分散剤を含む。有機ポリマー粒子が分散剤を含む事に依り、有機ポリマー粒子の表面に分散剤が存在し、有機ポリマー粒子の凝集をより抑制する事が出来る。
【0066】
分散剤は、有機ポリマー粒子を製造する事が出来れば、特に限定されない。分散剤は、具体的には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、コラーゲン、多糖類(アラビアガム)等である。
【0067】
分散剤として、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等を用いると、有機ポリマー粒子の凝集を抑制して、コアシェル粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0068】
分散剤は、これらの分散剤を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0069】
有機ポリマー粒子中の分散剤の含有量は、特に限定されない。有機ポリマー粒子中の分散剤の含有量は、有機ポリマー粒子100質量%に対して、好ましくは、0.01質量%~100質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~100質量%である。分散剤の含有量を前記範囲に調整する事に依り、有機ポリマー粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0070】
有機ポリマー粒子を被覆するシリカ
有機ポリマー粒子を被覆するシェルを形成するシリカ系化合物は、前記シリカ粒子を形成するシリカ系化合物と同一である。コアシェル粒子のシェル(膜)の平均厚みは、前記シリカ粒子を形成するシェル(膜)の膜厚(平均厚み)と同一である。
【0071】
コアシェル粒子の平均粒子径
コアシェル粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.2μm~1μmであり、より好ましくは、0.3μm~0.9μmであり、更に好ましくは、0.4μm~0.8μmである。
【0072】
コアシェル粒子の平均粒子径は、前記シリカ粒子の平均粒子径と同様に、SEM(走査型電子顕微鏡:JSM-7900F、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧8kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して、その平均値を算出した値である。
【0073】
画像解析は、画像解析・計測ソフトウェアWinROOFを使用する。
【0074】
コアシェル粒子を用いる事に依り、シリカ粒子を、良好に製造する事が出来、真密度が低く、分散性に優れるシリカ粒子と成る。
【0075】
[3]シリカ粒子の製造方法
本発明のシリカ粒子の製造方法は、好ましくは、
(1)有機モノマーと、分散剤と、溶媒とを含む溶液中で、有機モノマーの重合反応を行い、有機ポリマー粒子を調製する工程1、
(2)溶媒に、工程1で得られた有機ポリマー粒子と、アルコシキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、塩基性触媒とを添加し、撹拌して溶液を調製し、溶液中で、有機ポリマー粒子をコアとし、有機ポリマー粒子を被覆するシェルを有するコアシェル粒子を形成する工程2、
(3)工程2で得られたコアシェル粒子を、先ず、炭化処理(熱分解する事)し、次いで、焼成処理し、コアシェル粒子のコアである有機ポリマー粒子を除去する工程3、及び (4)工程3の後に、工程3で得られた中空シリカ粒子に疎水化処理(疎水化表面処理)を行う工程4
を含む。
【0076】
本発明のシリカ粒子の製造方法では、前記工程3は、
コアシェル粒子を、先ず、炭化処理し、次いで、焼成処理する工程を含み、
シリカ粒子は、
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、 (3)吸水量が1.0質量%以下であるシリカ粒子を製造する事が出来る。
【0077】
本発明のシリカ粒子の製造方法では、シリカ粒子を製造する際に、コアシェル粒子を、焼成前に、炭化処理を施す事に依り、真密度が低く、分散性に優れる、新たなシリカ粒子を製造する事が出来る。
【0078】
本発明のシリカ粒子の製造方法では、好ましくは、
前記炭化処理は、400℃~1,200℃で行い、
前記焼成処理は、3時間以上行う。
【0079】
本発明のシリカ粒子は、好ましくは、以下の工程を経る事により、良好に製造出来る。
【0080】
(1)工程1(有機ポリマー粒子の製造)
工程1は、有機モノマーと、分散剤と、溶媒とを含む溶液中で、有機モノマーの重合反応を行い、有機ポリマー粒子を調製する工程である。
【0081】
有機モノマー
有機モノマーは、有機ポリマー粒子を製造する事が出来れば、特に限定されない。
【0082】
有機モノマーは、好ましくは、シェルを形成した後に、熱分解により容易に焼失する有機ポリマー粒子を形成する事が出来る有機モノマーである。有機モノマーは、具体的には、ポリスチレンを製造する為のスチレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(樹脂)を製造する為のメタクリル酸メチル等である。
【0083】
有機モノマーとして、スチレンを用いると、ポリスチレン粒子に正のゼータ電位を付与し、会合粒子の生成を抑制する事が出来る。
【0084】
ポリスチレンは、特に限定されない。ポリスチレンは、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレート等の疎水性モノマーに由来する構成単位、その他の共重合可能なモノマー構成単位を含むポリスチレンである。ポリスチレン、好ましくは、炭素数3~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートスチレン、2-メチルスチレン等である。
【0085】
工程1では、溶液中の有機モノマーの濃度は特に限定されない。有機モノマーの濃度は、溶液中、溶液100質量%に対して、好ましくは、0.1質量%~20質量%であり、より好ましくは、0.2質量%~10質量%である。有機モノマーの濃度を前記範囲に調整する事に依り、最終生成物のシリカ粒子の平均粒子径を良好に制御出来る。
【0086】
分散剤
分散剤は、有機ポリマー粒子を製造する事が出来れば、特に限定されない。分散剤は、具体的には、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、コラーゲン、多糖類(アラビアガム)等である。
【0087】
分散剤として、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースを用いると、ポリスチレン粒子の凝集を抑制し、次の工程2で形成するコアシェル粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0088】
分散剤は、これらの分散剤を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0089】
工程1では、溶液中の分散剤の濃度は、特に限定されない。分散剤の濃度は、溶液中、溶液100質量%に対して、好ましくは、0.01質量%~10質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~5質量%である。分散剤の濃度を前記範囲に調整する事に依り、有機ポリマー粒子の凝集を抑制する事が出来、次の工程2で形成するコアシェル粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0090】
溶媒
工程1で用いる溶媒は、好ましくは、水を用いる。
【0091】
溶媒は、好ましくは、親水性溶媒を用いる。
【0092】
親水性溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類を用いる。親水性溶媒は、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いる。親水性溶媒は、好ましくは、酢酸エチル等のエステル類を用いる。
【0093】
親水性溶媒は、好ましくは、アルコール類を用い、より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を用いる。
【0094】
溶媒は、これらの溶媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0095】
工程1で用いる溶媒は、好ましくは、水とメタノールとの混合溶媒である。水とメタノールとの混合溶媒を用いると、有機ポリマー粒子の凝集を抑制する事が出来、次の工程2で形成するコアシェル粒子の凝集を抑制する事が出来る。
【0096】
水とメタノールとの質量比(水:メタノール)は、混合溶媒中、好ましくは、5:95~50:50であり、より好ましくは、8:92~40:60であり、更に好ましくは、10:90~30:70である。水とメタノールとの質量比を前記範囲に調整する事に依り、有機ポリマー粒子の凝集を抑制する事が出来、次の工程2で形成するコアシェル粒子の凝集を抑制することができる。
【0097】
カチオン性重合開始剤
工程1では、溶液は、好ましくは、カチオン性重合開始剤を含む。カチオン性重合開始剤は、有機ポリマー粒子を得る事が出来れば、特に限定されない。カチオン性重合開始剤は、好ましくは、無機過酸化物、有機系開始剤、レドックス剤等を用いる。カチオン性重合開始剤、より好ましくは、有機酸化物、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用いる。
【0098】
有機酸化物は、一般式RO-ORで示される。
【0099】
アゾ化合物は、一般式A-CN=CN-Aで示される。
【0100】
カチオン性重合開始剤は、具体的には、過酸化ベンゾイル、2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド、アゾビスイソブチロニトニル(AIBN)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオアミド)ジヒドロクロライド(AAPH)等を用いる。
【0101】
カチオン性重合開始剤は、好ましくは、2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオアミド)ジヒドロクロライド(AAPH)であり、より好ましくは、2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)、4,4'-アゾビス-4-シアノバレリックアシッド等であり、更に好ましくは、2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド(AIBA)である。
【0102】
カチオン性重合開始剤は、これらのカチオン性重合開始剤を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0103】
工程1では、溶液中のカチオン性重合開始剤の濃度は、特に限定されない。カチオン性重合開始剤の濃度は、溶液を100質量%として、好ましくは、0.01質量%~1質量%である。カチオン性重合開始剤の濃度を前記範囲に調整する事に依り、最終生成物のシリカ粒子の平均粒子径を良好に制御出来る。
【0104】
重合反応
工程1では、有機モノマー、分散剤、及び溶媒を含む溶液中で、有機モノマーの重合反応を行う。重合反応は、好ましくは、溶液を混合撹拌する事に依り行う。
【0105】
工程1の溶液の重合反応の際の温度は、特に限定されない。重合反応の反応温度は、好ましくは、40℃以上であり、使用する溶媒の沸点以下とし、より好ましくは、50℃~90℃である。重合反応の反応温度を前記範囲に調整する事に依り、溶媒は蒸発せず、良好に重合反応を進める事が出来る。
【0106】
重合反応の反応時間は、特に限定されない。重合反応の反応時間は、好ましくは、1分~12時間であり、より好ましくは、10分~10時間である。重合反応の反応時間を前記範囲に調整する事に依り、良好に重合反応を進める事が出来る。
【0107】
重合反応を行う事に依り、有機ポリマー粒子を調製する。有機ポリマー粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.1μm~0.9μmであり、より好ましくは、0.2μm~0.8μmであり、更に好ましくは、0.3μm~0.7μmである。有機ポリマー粒子の平均粒子径を前記範囲に調整する事に依り、次の工程2で形成すコアシェル粒子の平均粒子径、及び工程3で製造する中空シリカ粒子の平均粒子径を適切な範囲とする事が出来る。
【0108】
工程1に依り、良好に、有機ポリマー粒子を製造する事が出来る。
【0109】
有機ポリマー粒子(ポリスチレン粒子等)の収率
シャーレで、有機ポリマー粒子の反応液2gを量り取り、ホットプレート上で、120℃の温度で1時間乾燥して、下記式に依り、有機ポリマー粒子の収率を算出する。
【0110】
(有機ポリマー粒子の収率(%))
={[(乾燥後サンプル重量(g))
-(乾燥前サンプル中の分散剤(PVP等)仕込み重量(g))]
÷[乾燥前サンプル中有機モノマー(スチレン等)仕込み重量(g)]}×100
【0111】
(2)工程2(コアシェル粒子の製造)
工程2は、溶媒に、工程1で調製した有機ポリマー粒子と、アルコキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、塩基性触媒とを添加し、撹拌して溶液を調製し、溶液中で、有機ポリマー粒子をコアとし、有機ポリマー粒子を被覆するシェルを有するコアシェル粒子を形成する工程である。
【0112】
溶媒
工程2で用いる溶媒は、好ましくは、水を用いる。水を用いると、安価で、且つ安全にコアシェル粒子を形成する事が出来る。
【0113】
溶媒は、好ましくは、親水性溶媒を用いる。
【0114】
親水性溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類を用いる。親水性溶媒は、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いる。親水性溶媒は、好ましくは、酢酸エチル等のエステル類を用いる。
【0115】
親水性溶媒は、好ましくは、アルコール類を用い、より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を用いる。
【0116】
溶媒は、好ましくは、ケイ素化合物の加水分解に依り生成するアルコールと同種のアルコールを用いる。ケイ素化合物の加水分解に依り生成するアルコールと同種のアルコールを用いると、溶媒の回収、再利用を容易に行なう事が出来る。
【0117】
溶媒は、これらの溶媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0118】
溶媒は、好ましくは、水と親水性溶媒との混合溶媒を用いる。混合溶媒中、親水性溶媒(メタノール等)と水との質量比は、特に限定されない。混合溶媒中、親水性溶媒:水(質量比)は、好ましくは、50:50~90:10であり、より好ましくは、60:40~80:20である。混合溶媒中、親水性溶媒と水との質量比を、前記範囲に調整する事に依り、シリカ粒子の平均粒子径を適切な範囲とする事が出来る。
【0119】
溶媒は、好ましくは、疎水性溶媒を用いる。疎水性溶媒は、好ましくは、100℃で、100g当たり約1g未満の水溶性を有する有機炭化水素系溶媒を用いる。疎水性溶媒は、好ましくは、炭素数6~10の直鎖状又は分岐状又は環状のアルカンを用いる。疎水性溶媒は、具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等を用いる。疎水性溶媒は、より好ましくは、オクタンを用いる。
【0120】
有機ポリマー粒子
工程2で用いる有機ポリマー粒子は、前記工程1で調製した有機ポリマー粒子を用いる。
【0121】
溶液中の有機ポリマー粒子の濃度は、好ましくは、0.01質量%~50質量%であり、より好ましくは、0.01質量%~20質量%である。
【0122】
アルコキシシラン
工程2で用いるアルコキシシランは、特に限定されない。
【0123】
アルコキシシランは、好ましくは、一般式(1):
Si(OR14 (1)
で示されるテトラアルコキシシラン又はその誘導体を用いる。
【0124】
一般式(1)において、R1は、同一又は異なって、アルキル基であり、好ましくは、炭素数1~8の低級アルキル基であり、より好ましくは、炭素数1~4の低級アルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1~3の低級アルキル基である。
【0125】
一般式(1)において、R1は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基である。
【0126】
一般式(1)において、R1がメチル基であるテトラメトキシシラン(TMOS)、R2がエチル基であるテトラエトキシシラン(TEOS)を用いると、良好にシリカを生成し、緻密なシェルを得る事が出来る。工程2で用いるアルコキシシランは、より好ましくは、テトラメトキシシラン(TMOS)を用いる。緻密なシェルとは、シロキサン結合がより形成されて(略形成されて)、残存するシラノール基が少ないシェルである。
【0127】
アルコキシシランは、好ましくは、一般式(2):
Si(OR13R2 (2)
で示されるトリアルコキシシラン又はそのこれらの誘導体を用いる。
【0128】
一般式(2)において、R1は、前記一般式(1)のR1と同じである。一般式(2)において、R2は、水素、又は前記R1のアルキル基(一般式(1)のR1)と同一のアルキル基である。
【0129】
アルコキシシランの誘導体は、好ましくは、アルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合体である。
【0130】
アルコキシシランは、これらのアルコキシシランを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0131】
アルコキシシランは、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランを用いると、コアシェル粒子の段階で凝集を防ぐ事が出来、シランカップリング剤等での表面改質が容易である。
【0132】
溶液中のアルコキシシランの濃度は、好ましくは、0.1質量%~70質量%であり、より好ましくは、1質量%~60質量%であり、更に好ましくは、5質量%~50質量%であり、特に好ましくは、10質量%~40質量%である。
【0133】
金属アルコキシド
工程2では、アルコシシシラン及び金属アルコキシドを混合して、用いても良い。
【0134】
金属アルコキシドは、特に限定されない。金属アルコキシドは、好ましくは、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等を用いる。
【0135】
アルミニウムアルコキシドを用いると、シェルの表面電荷(ゼータ電位等)を調整する事が出来る。
【0136】
チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドを用いると、シェルの屈折率を調整する事が出来る。
【0137】
金属アルコキシドは、これらの金属アルコキシドを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0138】
溶液中の金属アルコキシドの濃度は、好ましくは、0.01質量%~50質量%であり、より好ましくは、0.01質量%~20質量%である。
【0139】
工程2では、アルコキシシランと金属アルコキシドとを別々に添加して、溶液を調製しても良い。
【0140】
工程2では、アルコキシシランと金属アルコキシドとを混合し、加水分解した後、溶液中に添加しても良い。アルコキシシランと金属アルコキシドとを混合し、加水分解した後、溶液中に添加する事に依り、下記式(1):
Si-O-M (1)
で示される結合を有し、式(1)中、Mで示される金属が均一に含まれるシェルを形成する事が出来る。
【0141】
式(1)中、Mは金属を示し、金属アルコキシド由来の金属であり、好ましくは、アルミニウム、チタン、ジルコニウムを示す。
【0142】
上記アルコキシシランと金属アルコキシドとを混合し、加水分解してから溶液中に添加する方法は、例えば、特開2005-41722号公報に記載された方法を採用する。
【0143】
塩基性触媒
工程2で用いる塩基性触媒は、特に限定されない。
【0144】
塩基性触媒は、金属成分を含まない有機系塩基触媒、金属成分を含まない無機系触媒を用いると、製造工程において、金属不純物の混入を回避する事が出来る。
【0145】
有機系塩基触媒は、好ましくは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラメチルグアニジン、塩基性アミノ酸等の含窒素有機系塩基触媒を用いる。
【0146】
工程2において、揮発性の低い有機系塩基触媒を用いると、工程2を行う際の温度範囲で揮散せず、良好に反応を進める事が出来る。揮散する塩基を用いる場合、連続的に塩基を添加して、溶液のpHを維持する事が出来る。
【0147】
無機系塩基触媒は、好ましくは、アンモニア水を用いる。アンモニア水を用いると、価格が安価であり、経済的に優れ、良好に反応を進める事が出来る。
【0148】
塩基性触媒は、これらの塩基性触媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0149】
溶液中の塩基性触媒の濃度は、好ましくは、0.1質量%~5質量%であり、より好ましくは、0.5質量%~3質量%である。
【0150】
工程2では、溶媒に、工程1で調製した有機ポリマー粒子(ポリスチレン粒子等)と、アルコキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、塩基性触媒とを添加し、撹拌して溶液を調製し、溶液中で、有機ポリマー粒子をコアとし、有機ポリマー粒子を被覆するシェルを有するコアシェル粒子を形成する事が出来る。
【0151】
コアシェル粒子の製造
工程2における溶液の温度は、特に限定されない。工程2における溶液の温度は、好ましくは、5℃~200℃であり、より好ましくは、5℃~150℃である。工程2における溶液の温度を前記範囲に調整する事に依り、溶媒は蒸発せず、良好に反応を進める事が出来る。
【0152】
工程2における撹拌の時間は、特に限定されない。工程2における撹拌の時間は、好ましくは、1分~1,200分であり、より好ましくは、1分~600分である。工程2における撹拌の時間を前記範囲に調整する事に依り、良好に重合反応を進める事が出来る。
【0153】
工程2に依り、良好に、工程1で調製した有機ポリマー粒子(ポリスチレン粒子等)をコアとし、このポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成する事が出来る。
【0154】
(3)工程3(シリカ粒子の製造)
本発明のシリカ粒子の製造方法は、コアシェル粒子(工程2で得られたコアシェル粒子)を、先ず、炭化処理(熱分解)し、次いで、焼成処理する工程(工程3)を含む。これに依り、コアシェル粒子のコアである有機ポリマー粒子を除去する。
【0155】
炭化処理は、好ましくは、400℃~1,200℃の温度範囲で行う。
【0156】
焼成処理は、好ましくは、3時間以上の処理時間で行う。
【0157】
工程3は、工程2で得られたコアシェル粒子を炭化処理(熱分解)に依り、コアシェル粒子のコアである有機ポリマー粒子を除去する工程である。コアシェル粒子の内部は、コアとして有機ポリマー粒子が充填された状態であり、この有機ポリマー粒子を炭化処理(熱分解する事)に依り、コアシェル粒子のコアである有機ポリマー粒子を除去し、シェル内を中空とし、良好に、高機能性材料として使用出来るシリカ粒子を製造する事が出来る。
【0158】
本発明のシリカ粒子の製造方法では、シリカ粒子を製造する際に、コアシェル粒子を、焼成前に、炭化処理を施す事に依り、真密度が低く、分散性に優れる、新たなシリカ粒子を製造する事が出来る。
【0159】
工程3において、有機ポリマー粒子は、熱分解により除去される。熱分解は、先ず、炭化処理し、次いで、焼成処理する事に依り行う。炭化処理及び焼成処理の温度を調整して、シリカ粒子(中空シリカ粒子)のシェルが破壊せず、シリカ粒子内の有機ポリマー粒子、残存し得る他の有機成分を除去する。
【0160】
炭化処理
工程3は、コアシェル粒子を、先ず、炭化処理し、次いで、焼成処理する事に依り行う。
【0161】
コアシェル粒子を、空気中で熱処理すると、シリカ粒子のコアの有機ポリマーが分解し、ガス化(分解ガス)する。この様に、分解ガスが発生すると、電気炉内で発火したり、また、分解ガスがシリカ粒子のシェルを通過して噴出する事で、シェルに貫通孔が生じ、中空シリカの真密度が低下したりする可能性が有る。
【0162】
この点から、炭化処理は、好ましくは、低酸素状態での熱処理を行う。
【0163】
炭化処理は、好ましくは、低酸素状態での熱処理であり、例えば、不活性ガス(Arガス、CO2等)、N2ガス、或は水蒸気(H2O)を加熱炉内に充満させ、分解ガスの発生を防ぐ方法を採用する。炭化処理は、不活性ガス、N2ガス、或は水蒸気(H2O)の雰囲気下で、適宜、使用出来る炭化装置を用いれば良い。
【0164】
炭化処理を不活性ガス、或はN2ガス雰囲気下で行う時、例えば、バッチ炉(N2、CO2、Ar等の不活性ガスを炉内に導入し、低酸素濃度中での熱処理を行うガス雰囲気装置、熱処理温度:550℃程度、例えば、株式会社サーマル、熱風循環式不活性ガス雰囲気装置、中温熱処理機RBA型)を好ましく用いる。
【0165】
炭化処理を不活性ガス、或はN2ガス雰囲気下で行う時、例えば、連続炉(熱処理温度:450℃~800℃程度、一本の管体内で、炭化処理を連続的に行うガス加熱装置、例えば、高砂工業株式会社、ガス加熱式ロータリキルン)を好ましく用いる。
【0166】
炭化処理を過熱水蒸気雰囲気下で行う時、例えば、バッチ炉(例えば、CYC株式会社、バッチ式炭化装置、CYTシリーズ、CYT-200等)を好ましく用いる。
【0167】
炭化処理(熱分解)は、炭化装置を用いて行い、好ましくは、バッチ式炭化装置を用いて行う。
【0168】
バッチ式炭化装置を用いると、1.直接加熱に依る熱効果が優れており、2.対流効果に依る炭化処理室(熱分解室、乾留ボックス)内の温度を均一化する事が出来、3.対流効果に依る炭化処理する物質に対する接触面積を拡大する事が出来、4.(二重構造の)密閉式であり、酸素を遮断して(無酸素条件で)、熱分解室を加熱する為、良好に炭化を進める事が出来る。
【0169】
炭化装置を用いて、コアシェル粒子(乾燥粉末)を、炭化処理する事に依り、効率良く炭化処理する事が出来る。炭化装置では、炭化処理室を加熱し、過熱水蒸気を用いて、温度が400℃前後に達した時に、炭化処理する有機ポリマー粒子の水分が蒸発させる。
【0170】
炭化処理は、コアシェル粒子(乾燥粉末)を、炭化処理室(乾留ボックス)に収容し、この炭化処理室(乾留ボックス)内に過熱水蒸気を供給しながら、炭化処理室(乾留ボックス)の外側から燃焼ガスによって加熱する。炭化処理は、コアシェル粒子(乾燥粉末)を、炭化処理室(乾留ボックス)内に過熱水蒸気を供給して、炭化させる。
【0171】
炭化処理は、コアシェル粒子(乾燥粉末)を、好ましくは、400℃~1,200℃の温度範囲で、過熱水蒸気を用いて、炭化する。炭化工程において、コアシェル粒子(乾燥粉末)を、より好ましくは、450℃~800℃の温度範囲で、更に好ましくは、500℃~700℃の温度範囲(低温度領域)で、過熱水蒸気に依って炭化処理する。
【0172】
炭化処理の時間は、特に限定されない。炭化処理の時間は、適宜調整し、好ましくは、1時間~12時間であり、より好ましくは、2時間~10時間であり、更に好ましくは、4時間~8時間である。
【0173】
炭化処理は、過熱水蒸気を使用する事に依り、対流効果に依り、炭化処理室(乾留ボックス)内の温度差を少なくして、炭化処理を進める事が出来る。
【0174】
炭化処理は、好ましくは、市販の炭化装置を用いて、450℃~550℃程度の温度範囲で、過熱水蒸気を用いて、4時間~8時間、炭化処理する事が出来る。炭化装置は、例えば、CYC株式会社製のバッチ式炭化装置(CYTシリーズ、CYT-200等)を用いる事が出来る。
【0175】
本発明のシリカ粒子の製造方法では、シリカ粒子を製造する際に、コアシェル粒子を、焼成前に、炭化処理を施す事に依り、真密度が低く、分散性に優れる、新たなシリカ粒子を製造する事が出来る。
【0176】
焼成処理
工程3は、先ず、炭化処理し、次いで、焼成処理する事に依り行う。
【0177】
焼成処理は、好ましくは、電気炉を用いて行う。
【0178】
焼成処理は、炭化処理後のコアシェル粒子(乾燥粉末)を、電気炉内で、好ましくは、350℃~1,500℃の温度範囲で、より好ましくは、400℃~1,200℃の温度範囲で、更に好ましくは、600℃~1,100℃の温度範囲(高温度領域)で焼成処理する。
【0179】
焼成処理の時間は、好ましくは、3時間以上の処理時間で行う。焼成処理の時間は、より好ましくは、4時間以上であり、更に好ましくは、5時間以上であり、特に好ましくは、6時間以上である。焼成処理の時間の上限は、10時間程度である。
【0180】
有機ポリマー粒子を除去する為に、炭化処理後、焼成処理を行う事に依り、シェルの破壊を抑制し、良好に、コアシェル粒子から有機ポリマー粒子を除去する事が出来る。
【0181】
焼成処理は、好ましくは、市販の電気炉を用いて、1,000℃~1,100℃程度の温度範囲で、3時間以上の処理時間で、焼成処理する事が出来る。
【0182】
この有機コアシェル粒子から有機ポリマー粒子を除去して得られた中空シリカ粒子の粉末を、中空シリカ粒子と称する。得られた中空シリカ粒子の粉末は、分散機により溶媒中に分散する事が出来、引き続き、疎水化の処理を行う事が出来る。
【0183】
分散機、好ましくは、超音波ホモジナイザー、ビーズミル等を用いる。
【0184】
工程3に依り、コアシェル粒子のコアである、有機ポリマー粒子が熱分解されて、有機ポリマー粒子を除去する事が出来る。
【0185】
工程3に依り、その後の工程を経て、良好に、
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、
(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、 (3)吸水量が1.0質量%以下であるシリカ粒子(中空シリカ粒子)を製造する事が出来る。
【0186】
(4)シェルを被覆する工程
本発明のシリカ粒子の製造方法は、工程3の後に、シリカ粒子(中空シリカ粒子)の表面に、更に、シェルを被覆する工程を有していても良い。
【0187】
シリカ粒子の表面に、更に、シェルを被覆する工程に依り、シリカ粒子のシェルの平均厚みを調整する事が出来る。
【0188】
シリカ粒子の表面にシェルを被覆する方法は、特に限定されない。シリカ粒子の表面にシェルを被覆する方法は、好ましくは、工程2のコアシェル粒子を製造する方法に倣い、工程2における有機ポリマー粒子を、工程3で得られた中空シリカ粒子に変えて、中空シリカ粒子の表面に、更にシェルを被覆する事が出来る。
【0189】
(5)工程4(中空シリカ粒子の疎水化処理)
本発明のシリカ粒子の製造方法は、工程3、又はシェルを被覆する工程の後に、好ましくは、工程3で得られた中空シリカ粒子に疎水化処理(疎水化表面処理)を行う工程4を有する。工程4に依り、良好に、中空シリカ粒子の表面に疎水性を付与する事が出来る。
【0190】
疎水化処理の方法は、特に限定されない。疎水化処理の方法は、工程3、又はシェルを被覆する工程の後に、好ましくは、工程3、又はシェルを被覆する工程で得られた中空シリカ粒子に、溶媒中、トリアルコキシシラン、オルガノシラザンを添加して、加熱する方法である。
【0191】
トリアルコキシシランとオルガノシラザンとを併用しても良い。
【0192】
溶媒
工程4で用いる溶媒は、好ましくは、水を用いる。
【0193】
溶媒は、好ましくは、親水性溶媒を用いる。
【0194】
親水性溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール(IPA)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルコール類を用いる。親水性溶媒は、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類を用いる。親水性溶媒は、好ましくは、酢酸エチル等のエステル類を用いる。
【0195】
親水性溶媒は、好ましくは、アルコール類を用い、より好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を用いる。
【0196】
溶媒として、イソプロパノール等のアルコールを用いると、良好に、中空シリカ粒子に疎水化処理を行う事が出来る。
【0197】
溶媒は、これらの溶媒を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0198】
溶媒は、好ましくは、水と親水性溶媒との混合溶媒を用いる。混合溶媒中、親水性溶媒(メタノール等)と水との質量比は、特に限定されない。混合溶媒中、親水性溶媒:水(質量比)は、好ましくは、90:10~10:90であり、より好ましくは、30:70~10:90である。がより好ましい。混合溶媒中、親水性溶媒と水との質量比を、前記範囲に調整する事に依り、良好に、中空シリカ粒子に疎水化処理を行う事が出来る。
【0199】
トリアルコキシシラン
トリアルコキシシランは、特に限定されない。トリアルコキシシランは、好ましくは、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を用いる。トリアルコキシシランは、より好ましくは、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を用いる。
【0200】
トリアルコキシシランは、これらのトリアルコキシシランを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0201】
溶液中のトリアルコキシシランの濃度は、好ましくは、0.01質量%~30質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~25質量%である。
【0202】
トリアルコキシシランの使用量は、特に限定されない。トリアルコキシシランの使用量は、シリカ100質量%に対して、好ましくは、0.01質量%~10質量%であり、より好ましくは、0.05質量%~5質量%であり、更に好ましくは、0.1質量%~3質量%である。トリアルコキシシランの使用量を前記範囲に調整する事に依り、良好に、中空シリカ粒子に疎水化処理を行う事が出来る。
【0203】
トリアルコキシシランに依る疎水化処理は、加熱して行い、好ましくは、30℃以上であり、より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上で加熱して行う。加熱温度の上限は、好ましくは、90℃以下であり、より好ましくは、80℃以下である。トリアルコキシシランに依る疎水化処理の加熱温度を前記範囲に調整する事に依り、良好に、シリカ粒子とトリアルコキシシランとの反応を、溶媒中で凝集せずに、進める事が出来る。
【0204】
トリアルコキシシランに依る疎水化処理の加熱時間は、特に限定されない。トリアルコキシシランに依る疎水化処理の加熱時間は、好ましくは、10分~48時間であり、より好ましくは、30分~24時間であり、更に好ましくは、1時間~20時間である。
【0205】
オルガノシラザン
オルガノシラザンは、特に限定されない。オルガノシラザンは、好ましくは、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ペンタメチルジシラザン等を用いる。
【0206】
オルガノシラザンは、これらのオルガノシラザンを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0207】
オルガノシラザンの使用量は、特に限定されない。オルガノシラザンの使用量は、シリカ100質量%に対して、好ましくは、10質量%~100質量%であり、より好ましくは、20質量%~90質量%であり、更に好ましくは、40質量%~80質量%である。トリアルコキシシランの使用量を前記範囲に調整する事に依り、良好に、中空シリカ粒子に疎水化処理を行う事が出来る。
【0208】
オルガノシラザンに依る疎水化処理は、加熱して行い、好ましくは、30℃以上であり、より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、50℃以上で加熱して行う。加熱温度の上限は、好ましくは、90℃以下であり、より好ましくは、80℃以下である。オルガノシラザンに依る疎水化処理の加熱温度を前記範囲に調整する事に依り、良好に、シリカ粒子とオルガノシラザンとの反応を、溶媒中で凝集せず、進める事が出来る。
【0209】
オルガノシラザンに依る疎水化処理の加熱時間は、特に限定されない。オルガノシラザンに依る疎水化処理の加熱時間は、好ましくは、10分~48時間であり、より好ましくは、30分~24時間であり、更に好ましくは、1時間~20時間である。
【0210】
トリアルコキシシランとオルガノシラザンとを併用しても良い。
【0211】
疎水化された中空シリカ粒子を含む溶液は、溶媒を他の溶媒(水等)と置換しても良い。疎水化された中空シリカ粒子を含む溶液は、これを濾過したり、乾燥(真空乾燥等)したりして、溶媒を除去し、疎水化された中空シリカ粒子を含む溶液粉末を調製しても良い。
【0212】
[4]コアシェル粒子の製造方法
本発明のコアシェル粒子の製造方法は、好ましくは、
(1)有機モノマーと、分散剤と、混合溶媒とを含む溶液中で、有機モノマーの重合反応を行い、有機ポリマー粒子を調製する工程1、及び、
(2)溶媒に、工程1で得られた有機ポリマー粒子と、アルコシキシシラン、又は、アルコキシシラン及び金属アルコキシドと、塩基性触媒とを添加し、撹拌して溶液を調製する事に依り、溶液中で、有機ポリマー粒子をコアとし、有機ポリマー粒子を被覆するシェルを有するコアシェル粒子を形成する工程2を含む。
【0213】
工程1及び工程2は、前記シリカ粒子の製造方法において説明した工程1及び2と同一である。
【0214】
本発明のコアシェル粒子の製造方法に依り製造されたコアシェル粒子は、そのコアシェル粒子のコアである有機ポリマー粒子を炭化処理(熱分解する事)に依り除去し、本発明のシリカ粒子の製造方法の工程3において用いられるコアシェル粒子として好適である。
【実施例
【0215】
本発明を、実施例を示して具体的に説明する。
【0216】
但し、本発明は実施例に限定されない。
【0217】
表1の配合及び製造条件に依り、ポリスチレン粒子及びコアシェル粒子を調製し、中空シリカ粒子を製造した。具体的には、以下の通りである。
【0218】
(1)実施例及び比較例
実施例1
工程1:ポリスチレン粒子の製造
先ず、四ツ口フラスコに、超純水737g、メタノール2949g、スチレンモノマー(有機モノマー)369gを注入し、窒素雰囲気中で250rpmの撹拌条件で撹拌しながら、内温55℃~70℃になるまで加温した。
【0219】
次いで、重合開始剤として予め超純水に溶解させた5wt% AIBA(2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン)ジヒドロクロライド)水溶液(AIBA 7g、超純水140g)を添加して、55℃~75℃で3時間重合反応を行った。
【0220】
その後、分散剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)5%メタノール水溶液(PVP 37g、メタノール560g、水140g)を添加して、更に昇温して還流下で3時間加熱し、ポリスチレン粒子反応液を作製した。
【0221】
PVPとして、「Ashaland製PVP K-90」、及び「第一工業株式会社製ピッツコールK-60L」が入手できる。実施例では、PVPとして、「Ashaland製PVP K-90」を使用した。
【0222】
ポリスチレン粒子反応液を別の四ツ口フラスコに注入し、マントルヒーターで加熱してメタノール置換し、内温70℃で終了とした。
【0223】
メタノール中で有機ポリマー粒子であるポリスチレン粒子を調製した。
【0224】
<ポリスチレン粒子の収率>
ポリスチレン粒子反応液2gをシャーレで量り取り、ホットプレート上で120℃の温度で1時間乾燥して、下記式に依り、ポリスチレン粒子の収率を算出した。
【0225】
(ポリスチレン粒子の収率(%))
={[(乾燥後サンプル重量(g))-(乾燥前サンプル中PVP仕込み重量(g))] ÷[乾燥前サンプル中スチレン仕込み重量(g)]}×100
【0226】
工程2:コアシェル粒子の製造
先ず、四ツ口フラスコ、撹拌羽、ウォーターバスを備える反応装置を用意した。
【0227】
TMOS(テトラメトキシシラン)(アルコキシシラン)376g及びメタノール744gを混合して、A液を調製した。
【0228】
また、フラスコ内に、前記工程1で製造したポリスチレン粒子分散液(ポリスチレン濃度7.6wt%)1,427gを入れ、溶媒として水829g、メタノール823gを添加し、28%アンモニア水溶液268g(塩基性触媒)を添加して、B液を調製した。
【0229】
B液を30℃に保ちながら、250rpmで撹拌し、A液を190分かけて添加した。
【0230】
溶液中でポリスチレン粒子をコアとし、ポリスチレン粒子を被覆するシリカ系シェルを有するコアシェル粒子を形成し、コアシェル粒子分散液を調製した。次いで、水を滴下し、同一容量以上に保ちながら、加熱常圧蒸留により濃縮液中の水、アンモニアを水に置換し、コアシェル粒子水分散液を調製した。
【0231】
工程3:中空シリカ粒子の製造(炭化処理)
前記工程2で得られたコアシェル粒子水分散液を、ホットプレート上で、130℃の温度で、乾燥する事に依り、コアシェル粒子の粉末を得た。
【0232】
先ず、得られたコアシェル粒子粉末を、バッチ式炭化装置(CYC株式会社、CYT-200)で、過熱水蒸気を用いて、500℃の温度で、4時間、炭化処理した。
【0233】
次いで、電気炉で、1,050℃の温度で、3時間、焼成処理(熱処理)する事に依り、ポリスチレン粒子を除去して中空シリカ粒子の粉末を製造した。
【0234】
得られた中空シリカ粒子の粉末に純水を添加し(シリカ濃度20wt%)、超音波ホモジナイザー(UP-400S、ヒールッシャー社製)を用いて、135分の分散処理をした。
【0235】
得られた分散液を、微量高速遠心機(日立工機株式会社、himac CF-16N)を用いて、回転数3,200rpm、10分で遠心分離して上澄み液を回収し、7μm定量濾紙を用いて濾過し、中空シリカ粒子分散液を得た(シリカ濃度16wt%)。
【0236】
シリカ濃度は、中空シリカ粒子分散液を乾固後、800℃で灼熱し、その残量より算出した。
【0237】
工程4:表面処理された中空シリカ粒子の製造
先ず、四ツ口フラスコ、撹拌羽、ウォーターバスを備える反応装置を用意した。フラスコ内に、前記工程3で得られた中空シリカ水分散液400g、超純水274g、IPA(イソプロパノール)404g、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製、KBM-573)(トリアルコキシシラン)1.4gを混合して撹拌し、75℃で1時間加熱した。
【0238】
次いで、ヘキサメチルジシラザン(信越化学株式会社製、SZ-31)(オルガノシラザン)39gを滴下し、更に2時間加熱した。
【0239】
次いで、反応液を50℃まで冷却し、超純水559g、3M硫酸31gを順次添加した後、減圧濾過にて固形分を回収した。
【0240】
回収した固形分を超純水で洗浄し、120℃で真空乾燥して、中空シリカ粒子を調製した。
【0241】
実施例2
前記実施例1の工程4において、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを混合せず、ヘキサメチルジシラザン394gのみを滴下した。
【0242】
それ以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0243】
実施例3
前記実施例1の工程4において、中空シリカ粒子水分散液400g、超純水274g、IPA 404g、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン1.1gを混合して撹拌し、75℃で、1時間、加熱した。
【0244】
それ以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0245】
比較例1
前記実施例1の工程3において、コアシェル粒子粉末を炭化処理せずに、電気炉で、1,050℃の温度で、3時間、焼成処理(熱処理)した。
【0246】
それ以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0247】
比較例2
前記実施例1の工程3において、コアシェル粒子粉末を、先ず、バッチ式炭化装置(CYC株式会社、CYT-200)で過熱水蒸気を用いて、500℃の温度で、4時間炭化処理し、次いで、電気炉で1,075℃の温度で、2時間、焼成処理(熱処理)した。
【0248】
それ以外は実施例1と同一の条件で実施した。
【0249】
比較例3
前記実施例1の工程3において、コアシェル粒子粉末を、先ず、バッチ式炭化装置(CYC株式会社、CYT-200)で過熱水蒸気を用いて、500℃の温度で、4時間炭化処理し、次いで、電気炉で1,000℃の温度で、1時間、焼成処理(熱処理)した。
【0250】
それ以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0251】
比較例4
前記実施例1の工程3において、コアシェル粒子水分散液に、クエン酸7.7g(扶桑化学工業株式会社製、クエン酸(無水))を添加して、ホットプレート上で、130℃の温度で、乾燥する事に依り、コアシェル粒子の粉末を得た。
【0252】
得られたコアシェル粒子粉末を、炭化処理せず、電気炉で、1,050℃の温度で、3時間熱処理した。
【0253】
それ以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0254】
実施例及び比較例で得られた粒子の特性を、以下の方法により測定した。
【0255】
(2)評価試験
粒子径
工程4で得られた中空シリカ粒子の粉末を、SEM(走査型電子顕微鏡:JSM-7900F、日本電子株式会社製)を用いて、加速電圧8kVの条件で粒子の写真を撮影し、任意に選んだ100個の粒子短径を測長して、その平均値を求めた。
【0256】
画像解析は、画像解析・計測ソフトウェアWinROOFを使用した。
【0257】
真密度
工程4で得られた中空シリカ粒子の粉末0.3gを、窒素ガスピクノメーター(Ultrapyc 5000 Micro、株式会社アントンパール・ジャパン製)を用いて、中空シリカ粒子の粉末の真密度を測定した。
【0258】
吸水性試験
工程4で得られた中空シリカ粒子の粉末1gを、温度50℃、湿度75%環境下で、7日間保管し、粉末0.1gをサンプリングし、カールフィッシャー水分計(MKA-610、京都電子工業株式会社製)を用いて、水分量(質量%)を測定した。
【0259】
MEKろ過性
工程4で得られた中空シリカ粒子の粉末2gとメチルエチルケトン(MEK)8gとを2時間撹拌混合し、5μm孔径シリンジフィルター(大きさが5μm以下の物質を通す濾紙)を用いて濾過し、通液量を秤量した。
【0260】
(MEKろ過性(質量%、wt%))
=[通液量(g)]÷[中空シリカ粒子のMEK分散液量(10g)]×100
【0261】
1μm以上粒子数(粒度分布)
工程4で得られた中空シリカ粒子の粉末の粒度分布を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-950、株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、中空シリカ粒子の粉末の内、粒子径1μm以上の頻度(%)を算出した。
【0262】
結果を表1に示す。
【0263】
【表1】
【0264】
(3)評価結果
比較例1は、コアシェル粒子粉末を炭化処理せずに、焼成処理のみ行う事に依り調製した中空シリカ粒子である。比較例1の中空シリカ粒子は、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%を超えた。
【0265】
比較例2は、コアシェル粒子粉末を炭化処理し、2時間の処理時間で焼成処理を行う事に依り調製した中空シリカ粒子である。比較例2の中空シリカ粒子は、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%を超えた。
【0266】
比較例3は、コアシェル粒子粉末を炭化処理し、1時間の処理時間で焼成処理を行う事に依り調製した中空シリカ粒子である。比較例3の中空シリカ粒子は、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%を超え、吸水量が1.0質量%を超えた。
【0267】
比較例4は、コアシェル粒子水分散液にクエン酸を添加した後、コアシェル粒子粉末を炭化処理せずに、焼成処理のみ行う事に依り調製した中空シリカ粒子である。比較例3の中空シリカ粒子は、粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%を超えた。
【0268】
実施例1~3は、本発明の態様であり、コアシェル粒子粉末を、400℃~1,200℃の温度範囲で炭化処理を行い、3時間以上の処理時間で焼成処理を行う事に依り調製した中空シリカ粒子である。実施例1~3の中空シリカ粒子は、(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、(3)吸水量が1.0質量%以下である事を満たす中空シリカ粒子であった。
【0269】
(4)産業上の利用可能性
本発明の中空シリカ粒子は、真密度が低く、分散性に優れる、新たな中空シリカ粒子である。
【0270】
本発明の中空シリカ粒子の製造方法に依り、中空シリカ粒子を製造する際に、コアシェル粒子を、焼成前に、炭化処理を施す事に依り、真密度が低く、分散性に優れる、新たな中空シリカ粒子を製造する事が出来る。
【0271】
本発明の中空シリカ粒子は、多層プリント基板、電線被覆材、半導体封止材等に有用である。
【要約】
本発明は、クエン酸を使用しないシリカ粒子の製造方法を提供し、並びに真密度と分散性に優れたシリカ粒子を提供する。
(1)真密度が0.8g/cm3~1.4g/cm3であり、(2)粒度分布における、平均粒子径の2倍より大きい粒子の頻度が15%以下であり、(3)吸水量が1.0質量%以下である、シリカ粒子。